以下の説明においては、図中に記した矢印に従って、上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義する。
以下では、本発明の第一実施形態に係る制振部材100を具備する天井構造1について説明する。
図1及び図2に示す天井構造1は、建物の天井Dを形成するためのものである。天井構造1は、例えば、店舗及び商業施設等の建物に採用される。天井構造1には、建物の構造躯体A10に天井面材50を吊り下げる吊り構造が採用される。
まず、構造躯体A10の構成について簡単に説明する。なお、以下においては、図1及び図2に示す部分(建物の前部)に着目し、構造躯体A10及び天井構造1について説明する。
構造躯体A10は、建物の主要な構造を成すものである。構造躯体A10は、縦胴縁A11及び横桟A12を具備する。
縦胴縁A11は、建物の壁を形成するためのものである。縦胴縁A11は、その長手方向を上下方向に向けた長尺状に形成される。縦胴縁A11は、平面視略C字状に形成され、その前部(建物の室外側)に外壁面材A20が固定される。縦胴縁A11は、左右方向に適宜間隔をあけて複数配置される。
横桟A12は、後述する制振部材100を支持するためのものである。横桟A12は、その長手方向を左右方向に向けた長尺状に形成される。横桟A12は、側面視略矩形環状に形成される。横桟A12は、縦胴縁A11に固定されて縦胴縁A11の後方(建物の室内側)に配置される。横桟A12は、複数の縦胴縁A11を跨ぐように配置される。
なお、本実施形態に係る構造躯体A10には、縦胴縁A11や横桟A12だけではなく、建物に適宜設けられる柱A13(図11参照)や天井スラブ等も含まれる。
次に、図1から図4までを参照して、天井構造1について説明する。
図1及び図2に示すように、天井構造1は、吊りボルト10、ハンガー20、野縁受け30、野縁40、天井面材50及び制振部材100を具備する。
吊りボルト10は、構造躯体A10から吊り下げられるものである。吊りボルト10は、吊りボルト支持金具(不図示)を用いて構造躯体A10に固定される。吊りボルト10は、左右方向及び前後方向に間隔をあけて複数設けられる。
ハンガー20は、後述する野縁受け30を支持するためのものである。ハンガー20は、その上部が開口する側面視略U字状に形成される。ハンガー20は、ナット等の締結部材を介して吊りボルト10の下端部に固定される。ハンガー20は、複数の吊りボルト10にそれぞれ固定される。
野縁受け30は、後述する野縁40を支持するためのものである。野縁受け30は、その長手方向を左右方向に向けた長尺状に形成される。野縁受け30は、ハンガー20の内側に配置され、複数のハンガー20を跨ぐように配置される。野縁受け30は、前後方向に間隔をあけて複数設けられる。
図2及び図3に示す野縁40は、後述する天井面材50を支持するためのものである。野縁40は、その長手方向を前後方向に向けた長尺状に形成される。野縁40は、その上部が開口する正面視略U字状に形成される。野縁40は、クリップCを介して野縁受け30に支持されて、横桟A12よりも下方に配置される。野縁40は、左右方向に間隔をあけて複数設けられる。
図1及び図2に示す天井面材50は、その板面を上下方向に向けた略板状の部材である。天井面材50は、野縁40に固定され、複数の野縁40及び野縁受け30を跨ぐように配置される。天井面材50は、縦胴縁A11に対して前後方向に間隔をあけて配置される。天井面材50には、エアコン等の設備機器(不図示)が適宜設置される。
以上の如く構成された吊りボルト10、ハンガー20、野縁受け30、野縁40及び天井面材50等により、天井Dが形成される。当該天井Dは、地震等が発生した場合に、構造躯体A10に対して揺れて構造躯体A10に衝突する場合がある。具体的には、例えば、天井面材50が縦胴縁A11に衝突する。これによって、天井Dの衝突部分が破損し、最終的には天井Dが脱落する可能性がある。そこで、本実施形態に係る天井構造1は、天井Dの衝突に起因する天井Dの脱落を抑制するために、制振部材100を設けている。
図4に示す制振部材100は、天井Dの揺れを抑制するためのものである。制振部材100は、金属製の板状部材に折り曲げ加工を施すことで板バネ状に形成される。制振部材100は、構造躯体側取付部110、第一制振部120、第二制振部130及び天井側取付部140を具備する。
構造躯体側取付部110は、制振部材100を構造躯体A10の横桟A12に取り付けるための部分である。構造躯体側取付部110は、その板面を前後方向に向けた板状に形成される。構造躯体側取付部110は、その上下方向幅(高さ)が横桟A12の上下方向幅(高さ)よりも大きくなるように形成される。構造躯体側取付部110は、対向部111、非対向部112及び挿通孔113を具備する。
対向部111は、構造躯体側取付部110の上部である。より詳細には、対向部111は、構造躯体側取付部110のうち、横桟A12と対向する部分(正面視で重複する部分)である(図3参照)。非対向部112は、構造躯体側取付部110の下部(対向部111を除く部分)である。挿通孔113は、構造躯体側取付部110を前後方向に貫通する孔である。挿通孔113は、構造躯体側取付部110の上部(対向部111)に形成される。挿通孔113は、上下方向に間隔をあけて2つ形成される。
第一制振部120は、天井Dの揺れを抑制するための部分である。第一制振部120は、その板面を上下方向に向けた板状に形成される。第一制振部120は、構造躯体側取付部110の下端部から後方へ折れ曲がるように形成される。
第二制振部130は、天井Dの揺れを抑制するための部分である。第二制振部130は、その板面を前後方向に向けた板状に形成される。第二制振部130は、第一制振部120の後端部から下方へ折れ曲がるように形成される。
天井側取付部140は、制振部材100を天井Dの野縁40に取り付けるための部分である。天井側取付部140は、その下部が開口する正面視略逆U字状に形成される。天井側取付部140は、載置部141及び側壁142を具備する。
載置部141は、天井側取付部140の上部であると共に、野縁40に載置される部分である。載置部141は、その板面を上下方向に向けた板状に形成される。載置部141は、第二制振部130の下端部から後方へ折れ曲がるように形成される。
側壁142は、天井側取付部140の左部及び右部である。側壁142は、その板面を左右方向に向けた板状に形成される。側壁142は、載置部141の左端部及び右端部からそれぞれ下方へ折れ曲がるように形成される。左右の側壁142は、その内側(左右方向内側)に野縁40を配置可能となるように、野縁40の左右方向幅と略同一の間隔をあけて配置される。左右の側壁142は、その板面を左右方向に貫通する挿通孔142aを具備する。
このように構成される制振部材100は、図3に示すように、天井側取付部140が野縁40に嵌め合わされると共に、構造躯体側取付部110の対向部111が横桟A12に当接された状態で、野縁40及び横桟A12に固定される。このとき、制振部材100は、構造躯体側取付部110及び天井側取付部140の挿通孔113・142aにビスBが挿通されることで固定される。これによって、制振部材100は、壁際に設けられる。当該制振部材100は、図2に示すように、左右方向に互いに間隔をあけて複数配置される。
本実施形態に係る制振部材100は、天井側取付部140が下方に開口しているため、野縁40に上方から簡単に嵌め合わせることができる。また、左右の側壁142で野縁40を挟むことができるため、野縁40に対して左右方向の位置を簡単に決めることができる。以上により、制振部材100は、野縁40に簡単に取り付けることができる。
次に、図5を参照して、地震等が発生して天井Dに前後方向への力(例えば、地震力)が作用した場合の天井構造1の動作について説明する。なお、図5及び後述する図6に白塗りで示す矢印は、天井Dが揺れる方向を示している。また、図5、図6及び後述する図7に黒塗りで示す矢印は、制振部材100が弾性変形する方向を示している。
図5(a)に示すように、天井Dに前方への力が作用すると、ハンガー20、野縁受け30、野縁40及び天井面材50は、前方へ移動する。このとき、野縁40に固定された制振部材100も前方へ移動しようとする。しかし、制振部材100は、構造躯体A10の横桟A12に固定されているため、これ以上前方へ移動することができず、その結果、野縁40によって前方へ押圧されることとなる。
構造躯体側取付部110の非対向部112は、当該押圧によって、その上端部(構造躯体側取付部110と横桟A12の下端部とが当接する部分の近傍)を中心に前方へ揺動するように弾性変形される。また、第二制振部130は、当該押圧によって、その上端部を中心に前方へ揺動するように弾性変形される。制振部材100は、非対向部112及び第二制振部130の弾性変形によって前方への力を吸収し、天井Dの前方への揺れを吸収して抑制することができる。
また、図5(b)に示すように、地震等が発生して天井Dに後方への力が作用した場合、制振部材100は、野縁40によって後方へ押圧される。これにより、非対向部112及び第二制振部130は、その上端部を中心に後方へ揺動するように弾性変形される。これによって、制振部材100は、後方への力を吸収し、天井Dの後方への揺れを抑制することができる。
制振部材100は、天井Dの前後方向への揺れを抑制することで、天井Dの揺れる幅を小さくすることができる。これによって、制振部材100は、天井D(天井面材50)が構造躯体A10(縦胴縁A11)に衝突するのを抑制することができる。また、制振部材100は、天井Dが構造躯体A10に衝突したとしても、当該衝突による衝撃を小さくすることができる。このため、制振部材100は、天井Dの衝突部分が破損するのを抑制できる。以上により、制振部材100は、天井Dが脱落するのを抑制することができる。
ここで、地震が発生すると、天井Dは、前後方向への力だけではなく、様々な方向(例えば、上下方向や左右方向)に力が作用して揺れることとなる。そこで、本実施形態に係る制振部材100は、第一制振部120によって、前後方向以外の方向、具体的には、上下方向(鉛直方向)への天井Dの揺れを抑制可能に構成している。
具体的には、図6(a)に示すように、地震等が発生して天井Dに上方への力が作用した場合、制振部材100は、野縁40によって上方へ押圧される。これにより、第一制振部120は、その前端部を中心に上方へ揺動するように弾性変形される。これによって、制振部材100は、上方への力を吸収し、天井Dの上方への揺れを抑制することができる。
また、図6(b)に示すように、地震等が発生して天井Dに下方への力が作用した場合、制振部材100は、野縁40によって下方へ押圧される。これにより、第一制振部120は、その前端部を中心に下方へ揺動するように弾性変形される。これによって、制振部材100は、下方への力を吸収し、天井Dの下方への揺れを抑制することができる。
制振部材100は、天井Dの上下方向への揺れを抑制することで、天井面材50に上下方向の負荷がかかるのを抑制することができる。これにより、制振部材100は、天井面材50が破損するのを抑制することができる。これによって、天井Dが脱落するのを抑制できる。
以上のように、本実施形態に係る制振部材100は、天井Dの左右方向の揺れに加えて、上下方向の揺れも抑制することができる。このように、1つの制振部材100で直交する2方向の天井Dの揺れを抑制できるため、天井Dの揺れを効果的に抑制することができる。
また、制振部材100は、ビスBによって横桟A12及び野縁40に固定されることで、特殊な工具を用いることなく簡単に取り付けることができる。これによって、天井Dの施工(ハンガー20、野縁受け30、野縁40及び天井面材50の施工)時に、制振部材100をまとめて施工し易くすることができる。
また、制振部材100は、既存の天井Dに取り付けることもできる。これにより、既存の天井Dにおいて、天井Dの揺れを抑制することができる。
なお、本実施形態においては、天井面材50の前部に配置された制振部材100を例に挙げて天井Dの揺れの抑制について説明したが、天井構造1は、制振部材100を壁際の全域に(天井面材50の周囲に点在するように)複数配置して、前後方向、上下方向及び左右方向の揺れを抑制している。
具体的には、天井構造1は、天井Dの前部に配置された制振部材100(図1に示す制振部材100)に対して前後対称となるように、天井Dの後部に制振部材100を配置している。天井構造1は、天井Dの後部に配置された制振部材100によっても、天井Dの前後方向及び上下方向の揺れを抑制することができる。
また、天井構造1は、構造躯体側取付部110及び第二制振部130の板面が左右方向を向くように(図1に示す制振部材100の向きを90度変えて)、天井Dの左部及び右部に制振部材100を配置している。当該制振部材100は、天井Dに左右方向の力が作用した場合に、非対向部112及び第二制振部130が弾性変形され、天井Dの左右方向への揺れを抑制することができる。
以上の如く、本実施形態に係る制振部材100は、建物の構造躯体A10に吊り構造を用いて天井面材50が吊られた天井Dの構造(天井構造1)において、前記構造躯体A10と前記天井Dとの間に設けられ、前記構造躯体A10に対する前記天井Dの揺れを抑制する制振部材100であって、板バネ状に形成され、所定の第一方向(上下方向)に弾性変形可能な第一制振部120と、前記第一方向に対して垂直な第二方向(前後方向)に弾性変形可能な第二制振部130及び非対向部112と、を具備するものである。
このように構成することにより、建物の構造躯体A10に対する天井Dの揺れを効果的に抑制することができる。具体的には、例えば地震が発生した場合には、天井Dが構造躯体A10に対して様々な方向に揺れることになるが、少なくとも互いに直交する二方向の天井Dの揺れを吸収して効果的に抑制することができる。
また、前記制振部材100は、1枚の板状部材から折り曲げ加工により形成されているものである。
このように構成することにより、比較的容易に製造することができるため、製造コストを削減することができる。
また、本実施形態に係る天井構造1は、制振部材100を具備するものである。
このように構成することにより、建物の構造躯体A10に対する天井Dの揺れを効果的に抑制することができる。
また、前記制振部材100は、複数の制振部120・130及び非対向部112のうち、少なくとも一つの制振部(第二制振部130及び非対向部112)が水平方向(前後方向)に弾性変形可能に取り付けられているものである。
このように構成することにより、構造躯体A10に対して天井Dが水平方向に揺れるのを抑制することができる。これにより、構造躯体A10と天井D(天井面材50)との衝突に起因する天井Dの脱落を抑制することができる。
また、前記制振部材100は、複数の制振部120・130及び非対向部112のうち、少なくとも一つの制振部(第一制振部120)が鉛直方向(上下方向)に弾性変形可能に取り付けられているものである。
このように構成することにより、構造躯体A10に対して天井Dが鉛直方向に揺れるのを抑制することができる。これによって、天井D(天井面材50)が破壊されるのを抑制し、天井Dが脱落するのを抑制することができる。
なお、本実施形態に係る第二制振部130及び非対向部112は、本発明に係る第二制振部の実施の一形態である。
また、本実施形態における上下方向は、本発明に係る第一方向に対応する。
また、本実施形態における前後方向は、本発明に係る第二方向に対応する。
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、構造躯体側取付部110は、構造躯体A10に取り付けられていれば、必ずしも横桟A12に取り付けられる必要はない。構造躯体側取付部110は、縦胴縁A11等に取り付けられていてもよい。
また、天井側取付部140は、天井Dに取り付けられていれば、必ずしも野縁40に取り付けられる必要はない。天井側取付部140は、例えば、野縁受け30や天井面材50等に取り付けられていてもよい。
また、制振部材100は、ビスBを用いて取り付けられるものとしたが、これに限定されるものではなく、ビスBとは異なる手段によって取り付けられていてもよい。具体的には、制振部材100は、ボルト及びナットや溶接等によって取り付けられていてもよい。
また、制振部材100を取り付ける姿勢は、本実施形態に限定されるものではなく、任意の姿勢とすることができる。制振部材100は、例えば、図4に示す姿勢から横(左方や右方)に倒した姿勢で取り付けられていてもよい。これにより、水平方向の2方向(例えば、前後方向及び左右方向等)の揺れを抑制することができる。このように、制振部材100は、抑制したい揺れの方向に応じて取り付ける姿勢を変えることで、種々の天井Dに対して効果的に揺れを抑制することができる。
また、制振部材100は、図7に示すように、非対向部112及び第二制振部130が弾性変形された状態で取り付けられるものであってもよい。図7に示す制振部材100は、非対向部112及び第二制振部130が、その上端部を中心に前後方向外側(壁際)へ揺動するように弾性変形された状態で固定される。このように構成することで、制振部材100は、地震等が発生していない場合でも、非対向部112及び第二制振部130の元に戻ろうとする力を利用して、野縁40を前後方向内側へ付勢する(保持する)ことができる。これによって、制振部材100は、地震等が発生した場合に、天井Dが揺れる幅をより小さくすることができるため、天井Dの左右方向の揺れをより効果的に抑制することができる。
以上の如く、図7に示す制振部材100は、複数の制振部120・130及び非対向部112のうち、水平方向(前後方向)に弾性変形可能に取り付けられている前記制振部(第二制振部130及び非対向部112)が、前記構造躯体A10に近接離間する方向(前後方向)へ向けて復元するよう弾性変形された状態で取り付けられているものである。
このように構成することにより、建物の構造躯体A10に対する天井Dの揺れをより効果的に抑制することができる。
なお、制振部材100は、地震等が発生していない場合に野縁40を前後方向外側へ付勢するものであってもよい。この場合、図7に示す制振部材100は、非対向部112及び第二制振部130が、その上端部を中心に前後方向内側へ揺動するように弾性変形された状態で取り付けられていればよい。
また、制振部材100が野縁40を付勢する方向は、前後方向に限定されるものではなく、例えば、左右方向等であってもよい。
また、構造躯体側取付部110の挿通孔113は、図8に示す変形例に係る制振部材100Aの挿通孔114のように、長孔状に形成されていてもよい。変形例に係る挿通孔114は、その長手方向を左右方向に向けた長孔状に形成される。制振部材100Aは、当該挿通孔114にビスBを挿通することで、横桟A12に左右方向に相対移動可能に支持される。これによれば、制振部材100Aは、天井Dが左右方向に揺れた場合に、構造躯体A10に対して左右方向に相対的に移動することができる。これによって、制振部材100Aに左右方向の荷重が作用するのを抑制し、制振部材100Aが破損するのを抑制できる。
以上の如く、変形例に係る制振部材100Aは、前記構造躯体A10に取り付けられる構造躯体側取付部110と、前記天井Dに取り付けられる天井側取付部140と、を具備し、前記構造躯体側取付部110又は前記天井側取付部140の少なくとも一方の取付部(構造躯体側取付部110)は、長孔状に形成されて長手方向(左右方向)のいずれかの箇所に所定の締結部材(ビスB)を挿通させる挿通孔114を具備するものである。
このように構成することにより、天井Dが挿通孔114の長手方向(左右方向)に揺れた場合に、制振部材100にかかる負荷を低減することができる。
なお、変形例に係る制振部材100Aは、構造躯体側取付部110又は天井側取付部140の少なくとも一方の挿通孔114・142aが長孔状に形成されていればよい。
また、挿通孔114の長手方向は、左右方向に限定されるものではなく、任意の方向を選択することができる。ただし、挿通孔114の長手方向は、第一制振部120、第二制振部130及び非対向部112で天井Dの揺れを抑制できない方向(例えば、左右方向)であることが望ましい。これにより、制振部材100が破損するのを効果的に抑制できる。
次に、図9を参照して、第二実施形態に係る制振部材200について説明する。
なお、第一実施形態に係る制振部材100と同様に構成される部分については、第一実施形態と同一の符号を付し、その説明を省略する。
第二実施形態に係る制振部材200は、直交する3方向の天井Dの揺れを抑制できる(揺れを抑制できる方向が第一実施形態に係る制振部材100よりも1つ多い)点で、第一実施形態に係る制振部材100と大きく相違する。
第二実施形態に係る制振部材200は、ベース210、第一制振部120、第二制振部130、天井側取付部240、第三制振部250及び構造躯体側取付部260を具備する。
ベース210は、挿通孔113が形成されていない点を除いて、第一実施形態に係る構造躯体側取付部110と略同一形状に形成される。
天井側取付部240は、制振部材200を天井Dの天井面材50に取り付けるための部分である。天井側取付部240は、接続部241、側壁242及び取付部243を具備する。
接続部241は、第二制振部130と接続される部分である。接続部241は、第一実施形態に係る載置部141と略同一形状に形成される。
側壁242は、その上下方向幅が第一実施形態に係る側壁142の上下方向幅よりも大きくなるように形成される。また、側壁242は、その上下方向幅が野縁40の上下方向幅よりも大きくなるように形成される。側壁242は、対向部242a及び非対向部242bを具備する。
対向部242aは、側壁242の下部である。非対向部242bは、側壁の上部(対向部242aを除く部分)である。
取付部243は、その板面を上下方向に向けた板状に形成される。取付部243は、左右の側壁242の下端部から左右方向外側へ折れ曲がるように形成される。取付部243は、その板面を上下方向に貫通する挿通孔243aを具備する。
第三制振部250は、天井Dの左右方向の揺れを抑制するための部分である。第三制振部250は、その板面を左右方向に向けた板状に形成される。第三制振部250は、ベース210の上部における左端部及び右端部からそれぞれ前方へ折れ曲がるように形成される。
構造躯体側取付部260は、その板面を前後方向に向けた板状に形成される。構造躯体側取付部260は、左右の第三制振部250の前端部からそれぞれ左右方向外側へ折れ曲がるように形成される。構造躯体側取付部260は、第一実施形態に係る挿通孔113と略同一形状に形成される挿通孔261を具備する。
第二実施形態に係る制振部材200は、挿通孔261にビスBが挿通されることで、構造躯体A10(横桟A12)に固定される。また、制振部材200は、取付部243が天井面材50に載置され、挿通孔243aにビスBが挿通されることで天井D(天井面材50)に固定される。当該制振部材200は、側壁242の対向部242a(下部)が野縁40と対向すると共に、接続部241及び側壁242の非対向部242b(上部)が野縁40よりも上方に配置される。
このように構成される制振部材200は、地震等が発生して天井Dに左方への力が作用した場合、野縁40によって左方へ押圧される。これにより、第三制振部250は、その前端部を中心に左方へ揺動するように弾性変形される。また、側壁242の非対向部242bは、その上端部を中心に左方へ揺動するように弾性変形される。以上によって、制振部材200は、左方への力を吸収し、天井Dの左方への揺れを抑制することができる。
また、制振部材200は、地震等が発生して天井Dに右方への力が作用した場合、野縁40によって右方へ押圧される。これにより、第三制振部250は、その前端部を中心に右方へ揺動するように弾性変形される。また、側壁242の非対向部242bは、その上端部を中心に右方へ揺動するように弾性変形される。以上によって、制振部材200は、右方への力を吸収し、天井Dの右方への揺れを抑制することができる。
以上の如く、本実施形態に係る制振部材200は、前記第一方向及び前記第二方向に対して垂直な第三方向(左右方向)に弾性変形可能な第三制振部250及び非対向部242bを具備するものである。
このように構成することにより、建物の構造躯体A10に対する天井Dの揺れをより効果的に抑制することができる。具体的には、少なくとも互いに直交する三方向(左右方向、前後方向及び上下方向)の天井Dの揺れを吸収して効果的に抑制することができる。
なお、本実施形態に係る第三制振部250及び非対向部242bは、本発明に係る第三制振部の実施の一形態である。
また、本実施形態における左右方向は、本発明に係る第三方向に対応する。
次に、図10を参照して、第三実施形態に係る制振部材300について説明する。
第三実施形態に係る制振部材300は、その形状が第一実施形態に係る制振部材100よりも単純な形状である点で、第一実施形態に係る制振部材100と大きく相違する。
第三実施形態に係る制振部材300は、側面視略S字状に形成される。制振部材300は、第一板部310、第二板部320及び第三板部330を具備する。
第一板部310は、その板面を前後方向に向けた板状に形成される。第一板部310は、第一実施形態に係る挿通孔113と略同一形状に形成される挿通孔311を具備する。挿通孔311は、左右方向に間隔をあけて2つ形成される。
第二板部320は、その板面を上下方向に向けた板状に形成される。第二板部320は、第一板部310の下端部から後方へ折れ曲がるように形成される。
第三板部330は、その板面を前後方向に向けた板状に形成される。第三板部330は、第二板部320の後端部から下方へ折れ曲がるように形成される。第三板部330は、第一板部310の挿通孔311と略同一形状に形成される挿通孔331を具備する。挿通孔331は、左右方向に間隔をあけて2つ形成される。
図11に示すように、第三実施形態に係る制振部材300は、例えば、構造躯体A10の柱A13の周囲に取り付けられる。以下では、天井Dにおける柱A13の周囲の構成について簡単に説明する。柱A13の周囲には、上述の如き野縁受け30や野縁40の他、天井Dを補強するための補強野縁受け60及び補強野縁70が設けられる。
補強野縁受け60は、その長手方向を左右方向に向けた長尺状に形成される。補強野縁受け60は、柱A13の前方及び後方(柱A13と野縁受け30との間)に設けられる。また、補強野縁受け60は、柱A13の左方及び右方にも設けられる。
補強野縁70は、その長手方向を前後方向に向けた長尺状に形成される。補強野縁70は、柱A13の左方及び右方(柱A13と野縁40との間)に設けられる。
第三実施形態に係る制振部材300は、以上の如く構成された柱A13の周囲、具体的には、柱A13の前部、後部、左部及び右部にそれぞれ取り付けられる。なお、以下においては、柱A13の前部に取り付けられる制振部材300を「前側の制振部材300F」と称する。また、柱A13の後部に取り付けられる制振部材300を「後側の制振部材300B」と称する。また、柱A13の左部に取り付けられる制振部材300を「左側の制振部材300L」と称する。また、柱A13の右部に取り付けられる制振部材300を「右側の制振部材300R」と称する。また、制振部材300F・300B・300L・300Rを総称して制振部材300と称する。
前側の制振部材300Fは、ビスBによって、第一板部310が補強野縁受け60に固定されると共に、第三板部330が柱A13の前部に固定される。後側の制振部材300Bは、前側の制振部材300Fと前後対称となるように設けられる。
このように構成される制振部材300F・300Bは、天井Dに前後方向の力が作用した場合に、第一板部310が前後方向に押圧されて弾性変形され、天井Dの前後方向の揺れを抑制することができる。また、天井Dに上下方向の力が作用した場合に、第二板部320が上下方向に押圧されて弾性変形され、天井Dの上下方向の揺れを抑制することができる。
左側の制振部材300Lは、第一板部310及び第三板部330の板面が前後方向を向くと共に、第二板部320の板面が左右方向を向いた状態で配置される。第一板部310は、LアングルA30を介して柱A13に固定される。また、第三板部330は、補強野縁受け60に固定される。右側の制振部材300Rは、左側の制振部材300Lと同じように取り付けられる。
このように構成される制振部材300L・300Rは、天井Dに前後方向の力が作用した場合に、第一板部310が前後方向に押圧されて弾性変形され、天井Dの前後方向の揺れを抑制することができる。また、天井Dに左右方向の力が作用した場合に、第二板部320が左右方向に押圧されて弾性変形され、天井Dの左右方向の揺れを抑制することができる。
第三実施形態に係る制振部材300は、3つの板部310・320・330によって構成された単純な形状であるため、曲げ加工等によって簡単に形成することができる。
また、制振部材300によれば、柱A13の周囲において天井Dの揺れを抑制できるため、天井Dが柱A13と衝突するのを抑制することができる。これにより、天井Dにおいて、柱A13の周囲が破損するのを抑制することができる。
次に、図12から図15までを参照して、第四実施形態に係る天井構造4について説明する。
第四実施形態に係る天井構造4は、柱A13の周囲において天井Dの水平方向の揺れを集中的に抑制する点で、第一実施形態に係る天井構造1と大きく相違する。
図12に示すように、第四実施形態に係る天井構造4は、補強材80及び制振部材400を具備する。補強材80及び制振部材400は、柱A13の周囲、具体的には、柱A13の前部、後部、左部及び右部にそれぞれ設けられる。
なお、以下においては、柱A13の前部に設けられる補強材80及び制振部材400を「前側の補強材80F」及び「前側の制振部材400F」と称する。また、柱A13の後部に設けられる補強材80及び制振部材400を「後側の補強材80B」及び「後側の制振部材400B」と称する。また、柱A13の左部に設けられる補強材80及び制振部材400を「左側の補強材80L」及び「左側の制振部材400L」と称する。また、柱A13の右部に設けられる補強材80及び制振部材400を「右側の補強材80R」及び「右側の制振部材400R」と称する。また、以下では、左側の補強材80L及び左側の制振部材400Lを例に挙げて、補強材80及び制振部材400の構成を説明する。
図13及び図14に示すように、左側の補強材80Lは、左側の制振部材400Lを取り付けるためのものである。左側の補強材80Lは、その長手方向を前後方向に向けた長尺状に形成される。補強材80は、芯材81及び取付部材82を具備する。
芯材81は、矩形断面を有する略筒状に形成される。取付部材82は、U字状の断面を有する略筒状に形成され、芯材81の左側面及び右側面にビスBによってそれぞれ固定される。
左側の制振部材400Lは、平面視略L字状に形成される。図15に示すように、左側の制振部材400Lは、第一板部410、第二板部420及び第三板部430を具備する。
第一板部410は、その板面を前後方向に向けた板状に形成される。第一板部410は、第一実施形態に係る挿通孔113と略同一形状に形成される挿通孔411を具備する。挿通孔411は、上下方向に間隔をあけて2つ形成される。
第二板部420は、その板面を左右方向に向けた板状に形成される。第二板部420は、第一板部410の左端部から後方へ折れ曲がるように形成される。
第三板部430は、その板面を前後方向に向けた板状に形成される。第三板部430は、第二板部420の後端部から左方へ折れ曲がるように形成される。第三板部430は、その左右方向幅が第一板部410の左右方向幅よりも小さくなるように形成される。第三板部430は、第一板部410の挿通孔411と略同一形状に形成される挿通孔431を具備する。挿通孔431は、上下方向に間隔をあけて2つ形成される。
図12及び図13に示すように、左側の制振部材400Lは、第一板部410がLアングルA30を介して柱A13に取り付けられると共に、第三板部430がLアングルA30を介して補強材80Lの取付部材82に取り付けられる。左側の制振部材400Lは、天井Dに前後方向の力が作用した場合に、第一板部410が前後方向に押圧されて弾性変形され、天井Dの前後方向の揺れを抑制することができる。また、天井Dに左右方向の力が作用した場合に、第二板部420が左右方向に押圧されて弾性変形され、天井Dの左右方向の揺れを抑制することができる。
また、図12に示すように、右側の補強材80R及び右側の制振部材400Rは、左側の補強材80L及び左側の制振部材400Lと左右対称となるように設けられる。当該右側の制振部材400Rによっても、天井Dの前後方向及び左右方向の揺れを抑制することができる。
また、前側及び後側の補強材80F・80Bは、その長手方向を左右方向に向けて配置される。前側及び後側の制振部材400F・400Bは、その向きを左側の制振部材400Lに対して平面視で90度変えて配置される。当該制振部材400F・400Bは、第一板部410及び第三板部430の板面が左右方向を向くと共に、第二板部420の板面が前後方向を向いた状態で配置される。
前側及び後側の制振部材400F・400Bによれば、天井Dに左右方向の力が作用した場合に、第一板部410によって天井Dの左右方向の揺れを抑制することができる。また、天井Dに前後方向の力が作用した場合に、第二板部420によって天井Dの前後方向の揺れを抑制することができる。
以上の如く、第四実施形態に係る天井構造4は、4つの制振部材400F・400B・400L・400Rが、全て天井Dの前後方向及び左右方向の揺れを抑制するようになっている。これにより、天井構造4は、天井Dの水平方向の揺れを効果的に抑制することができるため、天井Dが柱A13と衝突するのを効果的に抑制することができる。