JP6540862B2 - 吊り天井構造体の制振方法及び制振装置 - Google Patents

吊り天井構造体の制振方法及び制振装置 Download PDF

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Description

本発明は、吊り天井構造体の制振方法及び制振装置に係わり、更に詳しくは非耐震性の吊り天井構造体とフロア構造体間に制振機能を備えたパネル構造体を設置して地震時における吊り天井構造体の振動を抑制する吊り天井構造体の制振方法及び制振装置に関するものである。
通常、オフィスビル等は、複数のスラブで各階が形成され、上スラブの下面側には吊り天井構造体が構築され、下スラブの上面側にはフロア構造体が構築され、構造壁で囲まれた空間を間仕切装置で適宜に区画されている。通常、吊り天井構造体は、上スラブから垂下した吊支部材(吊りボルト)によって、縦横に張り巡らした天井支持レールを吊下げ状に保持し、該天井支持レールに天井パネルの周囲を係止する構造である。このような吊り天井構造体を有する室内に天井パネルからフロア構造体にわたって、間仕切パネルやドアパネルを組み合わせた間仕切装置を設置する。ここで、間仕切パネルは、天井パネルの下面側で天井支持レールを利用して固定した天レールと、フロア構造体の上面に敷設した地レールとの間に、複数の支柱を立設するとともに、隣接する支柱間にパネル板を装着して構成する。
従来、吊り天井構造体に対する耐震基準はなく、東日本大震災によって多くの吊り天井構造体が落下し、破損したことを受けて、天井の耐震性を高める機運が高まっている。従来の吊り天井構造体は、天井支持レール及び天井パネルの端部が建物の構造壁面と殆ど隙間なく接しており、建物が地震で変形した際に、天井支持レール及び天井パネルの端部が壁面に激しく衝突して破損するとともに、吊り天井構造体の水平方向変位も大きく、そのため吊り天井構造体の下に設けた間仕切パネルも端部が損傷する。特に、長周期振動による共振現象によって吊り天井構造体が水平方向に大きく変位し、あるいは建物のスラブや壁面とは異なる挙動をすることにより被害が拡大していた。因みに、体育館や劇場等の大型建築物の吊り天井構造体に対しては、吊りボルトにブレースを設けて耐震性を高めるとともに、壁や柱等の構造体と吊り天井構造体との間にクリアランスを設けて天井パネルの端部の破損を防止する等の耐震基準が提案されている。そして、新耐震基準では、層間変位角が1/40、震度7、天井面加速度が2.2Gに耐えることが要求されている。
新設の建築物では、最初から耐震性の吊り天井構造体を構築し、耐震性の吊り天井構造体とフロア構造体との間に耐震性間仕切装置を設置することが理想的である。既設の耐震性能が不足している吊り天井構造体の場合でも、天井裏に入ってブレース等を追加する耐震補強工事を施すことができればよいが、そのような耐震補強工事が困難である場合も多い。
建築物の耐震性を高める工夫は各種提供されている。例えば、特許文献1には、多数の透孔を略格子状に設けた鋼板を基板とし、前記鋼板の上下各端部が上下の床スラブに固定された制振壁設置部に設置される制震壁であって、前記鋼板の両側縁部に、上下の各端部をピン接合とした平行維持装置を設けた制震壁の構造が開示されている。更に、フロア内に複数の制震壁を直交した異なる2方向に設ける点も開示されている。
また、特許文献2には、二つの金属板間を粘弾性体で連結した構造の粘弾性ダンパーが開示され、それをブレースに用いて構成した制振パネルが開示されている。
更に、特許文献3には、建築物を構成する複数の枠材の交差部に取り付けられる振動吸収要素としての板バネ制振ユニットを備えた制振装置であって、前記板バネ制振ユニットは、一方の前記枠材と他方の前記枠材に夫々両端部を固定された少なくとも一枚の湾曲したベースバネ板と、該ベースバネ板の少なくとも一端部に対して一端部を固定配置されると共に該一端部を除いた内側面の少なくとも一部を該ベースバネ板の一面と摺擦可能に積層された少なくとも一枚の第1の摺擦バネ板と、を備え、前記第1の摺擦バネ板は、前記ベースバネ板よりも短尺であることを特徴とする制振装置が開示されている。
しかし、これらの特許文献に記載されたものは、何れも制振パネルを柱や梁あるいはスラブに固定して建築物自体の耐震性を高めるというものであり、吊り天井構造体の横揺れを抑制するという発想ではない。
特開2003−172040号公報 特開2007−126868号公報 特開2009−174198号公報
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、耐震性能が不足している吊り天井構造体とフロア構造体との間に設置し、地震時における吊り天井構造体の振動を抑制して該吊り天井構造体の損壊を防止する機能を備えたパネル構造体による吊り天井構造体の制振方法及び制振装置を提供する点にある。
本発明は、前述の課題解決のために、以下に示す吊り天井構造体の制振方法及び制振装置を構成した。
(1)
上スラブの下面側に構築した吊り天井構造体と、下スラブの上面側に構築したフロア構造体との間に、前記吊り天井構造体の制振機能を備えたパネル構造体と制振機能を備えていない通常の間仕切パネルを設置してフロアを区画し、前記吊り天井構造体の横揺れを抑制する吊り天井構造体の制振方法であって、
前記パネル構造体は、内部に制振方向をパネルの面内方向とした制振機能が一体的に組み込まれた構造であり、複数の前記パネル構造体を、平面視で制振方向が少なくとも直交する2方向を含む異なる方向を向くように配置したことを特徴とする吊り天井構造体の制振方法。
(2)
制振機能を備えた前記パネル構造体は、前記間仕切パネルと同じ外観を有している(1)記載の吊り天井構造体の制振方法。
(3)
制振機能を備えた前記パネル構造体は、前記吊り天井構造体の下面に取付けた天レールと前記フロア構造体の上面に取付けた地レールとの間に所定間隔を隔てて立設した一対の支柱間の表裏両面にそれぞれパネル板を装着し、前記支柱の下端を前記地レールに固定するとともに、前記支柱の上端を前記天レールに対して面内変位可能に保持した基本構造を備え、更に前記天レールを介して吊り天井構造体に固定した天ブラケットと前記支柱のうち少なくとも1つの前記支柱の上部間を、2枚の板片の間に粘弾性体を挟んで連携させた構造の粘弾性ダンパーで連結したものである(2)記載の吊り天井構造体の制振方法。
(4)
上スラブの下面側に構築した吊り天井構造体と、下スラブの上面側に構築したフロア構造体との間に、前記吊り天井構造体の制振機能を備えたパネル構造体と制振機能を備えていない通常の間仕切パネルを設置してフロアを区画し、前記吊り天井構造体の横揺れを抑制する吊り天井構造体の制振装置であって、
前記パネル構造体は、内部に制振方向をパネルの面内方向とした制振機能が一体的に組み込まれた構造であり、複数の前記パネル構造体を、平面視で制振方向が少なくとも直交する2方向を含む異なる方向を向くように配置したことを特徴とする吊り天井構造体の制振装置。
(5)
制振機能を備えた前記パネル構造体は、前記間仕切パネルと同じ外観を有している(4)記載の吊り天井構造体の制振装置。
(6)
制振機能を備えた前記パネル構造体は、前記吊り天井構造体の下面に取付けた天レールと前記フロア構造体の上面に取付けた地レールとの間に所定間隔を隔てて立設した一対の支柱間の表裏両面にそれぞれパネル板を装着し、前記支柱の下端を前記地レールに固定するとともに、前記支柱の上端を前記天レールに対して面内変位可能に保持した基本構造を備え、更に前記天レールを介して吊り天井構造体に固定した天ブラケットと前記支柱のうち少なくとも1つの前記支柱の上部間を、2枚の板片の間に粘弾性体を挟んで連携させた構造の粘弾性ダンパーで連結したものである(5)記載の吊り天井構造体の制振装置。
(1)及び(4)の構成によれば、上スラブの下面側に構築した吊り天井構造体と、下スラブの上面側に構築したフロア構造体との間に、前記吊り天井構造体の制振機能を備えたパネル構造体と制振機能を備えていない通常の間仕切パネルを設置してフロアを区画し、前記吊り天井構造体の横揺れを抑制する吊り天井構造体の制振方法(制振装置)であって、前記パネル構造体は、内部に制振方向をパネルの面内方向とした制振機能が一体的に組み込まれた構造であり、複数の前記パネル構造体を、平面視で制振方向が少なくとも直交する2方向を含む異なる方向を向くように配置したので、地震によって建築物に大きな層間変位や横揺れが発生しても、吊り天井構造体の横揺れを抑制して吊り天井構造体の損壊を防止することができ、特に長周期振動の方向がどの方向であっても、吊り天井構造体の横揺れを抑制することができ、しかも吊り天井構造体より下方での処理であるのでどのような天井構造でも施工が可能である。
本発明の吊り天井構造体の制振装置の設置例を示す簡略平面図である。 パネル構造体の実施形態を示し、(a)はパネル構造体の代表的構造例を示す簡略正面図、(b)は(a)の変形例を示す簡略正面図である。 パネル構造体の実施形態を示し、(a)は図2の変形例を示す簡略正面図、(b)はパネル構造体の他の構造例を示す簡略正面図である。 パネル構造体の他の実施形態を示し、(a)は支柱の上部と天レールとを粘弾性ダンパーで連結した構造例を示す簡略正面図、(b)は支柱の上部と天レール及び支柱の下部と地レールとを粘弾性ダンパーで連結した構造例を示す簡略正面図である。 粘弾性ダンパーを示し、(a)は」平面図、(b)は正面図である。 制振機構を内蔵した制振パネルを用いてL字形に構成したパネル構造体の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。 制振機構を内蔵した制振パネルを用いてH字形に構成したパネル構造体の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。 制振機構を内蔵した制振パネルを用いてロ字形に構成したパネル構造体の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。 制振機構を内蔵した制振パネルを用いてロ字形に構成したパネル構造体の他の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。 制振機構を内蔵した制振パネルを用いて十字形に構成したパネル構造体の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。 複数のパネル構成材で立体的に組み立てて構成した収納什器の実施形態を示し、(a)はH字形を基本構造とした収納什器の斜視図、(b)は(a)の変形例の収納什器の斜視図、(c)はロ字形を基本構造とした収納什器の斜視図、(d)は(c)の変形例の収納什器の斜視図である。 支柱フレーム構造体の代表的構造例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。 支柱フレーム構造体の他の構造例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。 支柱フレーム構造体の更に他の構造例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。 制振機構を内蔵したパネル構造体の他の実施形態を示し、(a)は簡略正面図、(b)は部分断面図である。 吊り天井構造体に天レールを固定する構造を示し、(a)は分解縦断面図、(b)は分解斜視図である。
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。図1〜図10は中間構造物としてパネル構造体Aの実施形態を示し、図11は中間構造物として収納什器Bの実施形態を示し、図12〜図14は中間構造物として支柱フレーム構造体Cを示している。
本発明の吊り天井構造体の制振装置は、建築物の上スラブの下面側に構築した耐震性能が不足している吊り天井構造体1と、下スラブの上面側に構築したフロア構造体2との間に、制振機能を備えた中間構造物3を設置して、前記吊り天井構造体1の横揺れを抑制することを特徴としている。ここで、前記制振機能を備えた中間構造物3を、パネル構造体A、収納什器B、支柱フレーム構造体Cのうちの少なくとも1種で構成する。この場合、地震による横揺れの方向が定まっていないため、前記中間構造物3によって、少なくとも直交する2方向を含む異なる方向に対して制振機能を付与することが必要である。
図1は、複数の間仕切パネルD,…を用いてフロアを区画し、一部に制振機能を備えたパネル構造体Aを配置した典型的な実施形態を示している。図1中符号Wは壁面である。この実施形態のパネル構造体Aは、通常の間仕切パネルDと同じ外観を有し、内部に制振機能が組み込まれた構造であり、制振方向はパネルの面内方向である。図1には、パネル構造体Aによる制振方向をPとQで示してあり、それらの方向は直交している。少なくともフロアの一定面積において、P方向とQ方向に制振機能を備えたパネル構造体A,Aを配置することにより、地震による横揺れがどの方向に生じても、前記吊り天井構造体1の横揺れを両パネル構造体A,Aが協同して抑制できるのである。
ここで、「制振機能を備えた」又は「制振機構を内蔵した」とは、中間構造物3自体に一体的に制振機構を設ける場合と、中間構造物3自体には制振機構を設けていないが、該中間構造物3が作る空間内で制振機構を介して吊り天井構造体1に連結する場合とを含む概念である。本発明の基本構成は、制振機構が組み込まれた中間構造物3の上下端を吊り天井構造体1とフロア構造体2に固定するものと、剛性の高い中間構造物3の下端をフロア構造体2に固定するとともに、該中間構造物3の上端を吊り天井構造体1に制振機構を介して連結するものがある。
前記吊り天井構造体1は、新基準の耐震性を備えていないことを前提とするが、高耐震性を備えているものであっても良い。新基準の耐震性を備えている高耐震性の吊り天井構造体は、図示しないが、上スラブから垂下した複数の吊支部材によって、縦横に張り巡らした天井支持レールを吊下げ状に保持し、隣接する吊支部材間にクロス状にブレースを設けて強度を高め、前記天井支持レールで天井パネルを支持した構造である。本発明において、耐震性能が不足している吊り天井構造体とは、クロス状のブレース等の耐震補強がされてない従来構造のものである。
前記吊り天井構造体1とフロア構造体2との間にパネル構造体Aを設ける場合、図2及び図3に示すように、前記吊り天井構造体1の下面に取付けた天レール4と前記フロア構造体2の上面に取付けた地レール5との間に、間隔を隔てて一対の支柱6,…を立設するとともに、支柱6,6間の表裏両面又は表面側の片面のみにパネル板7を装着して構成する。そして、両支柱6,6間には補強用の横桟やブレースが連結されて剛性を高めたフレーム構造とする。通常の間仕切パネルDも同様な構造であり、前記パネル構造体Aと間仕切パネルDは支柱6を介して一連化する。
次に、前記パネル構造体Aの具体例を説明する。図2(a)及び(b)に示したパネル構造体Aは、前記吊り天井構造体1の下面に取付けた天レール4と前記フロア構造体2の上面に取付けた地レール5との間に所定間隔を隔てて立設した一対の支柱6,6間の表裏両面にそれぞれパネル板7,7を装着し、前記支柱6の下端を前記地レール5に固定するとともに、両支柱6,6間をクロスブレース8によって直接的に連結して剛性を付与し、前記支柱6の上端を前記天レール4に対して面内変位可能に保持するとともに、前記天レール4を介して吊り天井構造体1に固定した天ブラケット9と各支柱6の上部間を傾斜状態に配置した粘弾性ダンパー10で連結した構造である。ここで、前記支柱6の上下部には支柱ブラケット11,11を側設し、前記クロスブレース8を構成する杆体12の両端をそれぞれ対応する支柱ブラケット11に連結するとともに、前記天ブラケット9と上部の支柱ブラケット11との間を前記粘弾性ダンパー10で連結している。
図2(b)に示したパネル構造体Aは、図2(a)の構造に加えて、両支柱6,6間の中間位置で、前記地レール5を介してフロア構造体2に固定した地ブラケット13と、前記支柱6の下方の支柱ブラケット11との間を前記粘弾性ダンパー10でそれぞれ連結した構造である。
図3(a)に示したパネル構造体Aは、図2に示したものの変形例であり、両支柱6,6間をV字ブレース14によって間接的に連結して剛性を付与したものである。具体的には、V字ブレース14を構成する杆体12の両端を前記地ブラケット13と前記支柱6の上部の支柱ブラケット11とに連結した構造である。その他の構成は、図2(a)に示した構成と同じであるので、同一構成には同一符号を付してその説明は省略する。
図3(b)に示したパネル構造体Aは、前記吊り天井構造体1の下面に取付けた天レール4と前記フロア構造体2の上面に取付けた地レール5との間に所定間隔を隔てて立設した一対の支柱6,6間の表裏両面にそれぞれパネル板7を装着し、前記支柱6の下端を前記地レール5に固定するとともに、両支柱6,6間に剛性の高い補強フレーム15を固定し、前記支柱6の上端を前記天レール4に対して面内変位可能に保持するとともに、前記天レール4を介して吊り天井構造体1に固定した天ブラケット9と前記補強フレーム15の両側上端間を傾斜状態に配置した粘弾性ダンパー10,10で連結した構造である。具体的には、前記補強フレーム15は、四角形の枠体16の内部にクロスブレース8を設けた構造であり、両支柱6,6間に配置して前記枠体16を支柱6に連結している。更に、前記補強フレーム15の両側上端にブラケット16A,16Aを固定し、該ブラケット16Aと前記天ブラケット9とを前記粘弾性ダンパー10でそれぞれ連結している。
図4(a)は、パネル構造体Aの他の実施形態を示し、通常構造の間仕切パネルAの支柱6に制振機構を組み込んだような構造である。本実施形態のパネル構造体Aは、前記吊り天井構造体1の下面に取付けた天レール4と前記フロア構造体2の上面に取付けた地レール5との間に、複数の支柱6,…を所定間隔を隔てて立設するとともに、該支柱6を用いて表裏両面にパネル板7,…を装着し、各支柱6の下端を前記地レール5に固定するとともに、上端を前記天レール4に対して面内変位可能に保持し、前記支柱6,…のうち少なくとも1つの前記支柱6の上部両側と前記天レール4を介して吊り天井構造体1に固定した天ブラケット9,9間を傾斜状態に配置した粘弾性ダンパー10,10で連結した構造である。具体的には、前記支柱6の両側に天ブラケット9,9を取付け、該支柱6の上部両側に支柱ブラケット11,11を側設し、それぞれの側で天ブラケット9と支柱ブラケット11とを傾斜状態に配置した前記粘弾性ダンパー10で連結している。
図4(b)に示したパネル構造体Aは、図4(a)の構造に加えて、前記支柱6の両側に地ブラケット13,13を取付け、前記支柱6の下部両側に支柱ブラケット11,11を側設し、それぞれの側で地ブラケット13と支柱ブラケット11とを傾斜状態に配置した前記粘弾性ダンパー10で連結した構造である。その他の構成は、図4(a)に示した構成と同じであるので、同一構成には同一符号を付してその説明は省略する。
ここで、前記粘弾性ダンパー10は、図5に示すように、2枚の長尺板片17,17の一端部を重ね、粘弾性体18を挟んで連携させた構造であり、該粘弾性体18の変形によって振動エネルギーを吸収するのである。つまり、地震による横揺れによって上下スラブに層間変位が生じるが、その際に吊り天井構造体1に対して支柱6が傾斜し、一方の粘弾性ダンパー10を引張り、他方の粘弾性ダンパー10を圧縮し、それによって各粘弾性ダンパー10の粘弾性体18が変形し、横揺れのエネルギーを吸収する。その結果、吊り天井構造体1の横揺れを抑制し、損傷や崩落を防止することができるのである。
図6〜図10に示した実施形態は、制振機構を内蔵した制振パネル19を用いて構成したパネル構造体Aである。ここで、前記制振パネル19は、図2及び図3に示したパネル構造体Aと同じ構造であり、通常の間仕切パネルDと同様な複数のパネル構成材20と組み合わせて立体的なパネル構造体Aとしたものである。図6は、2枚の制振パネル19,19をL字形に連結して構成したパネル構造体Aを示している。図7は、一枚の制振パネル19と2枚のパネル構成材20をH字形に連結して構成したパネル構造体Aを示している。
図8及び図9は、4枚の制振パネル19,…をロ字形に連結して構成したパネル構造体Aを示している。何れも制振パネル19は、外側にのみパネル板7を設けた片面パネルで構成している。尚、図8は、4条の前記天レール4と地レール5をロ字形に交差させ、交差部に天レール4と地レール5に沿った方向に制振パネル19を通常通り構成したものである。図9は、2条の前記天レール4と地レール5を十字状に交差させ、交差部の天レール4と地レール5間に支柱6を4本立設するとともに、4本のコーナー支柱21,…を配置し、1本の支柱6の両側に位置する一対のコーナー支柱21,21を利用して天レール4と地レール5に直交するようにパネル板7を装着し、全体としてロ字状のパネル構造体Aとしたものである。
図10は、中央の4方向支柱22を介して4枚の制振パネル19,…を十字状に連結して構成したパネル構造体Aを示している。対向する支柱6,6間をクロスブレース8で連結して剛性を高めている。
図11は、前記中間構造物3として、少なくとも1枚の制振パネル19と、複数のパネル構成材20で立体的に組み立てて構成した収納什器Bの実施形態を示している。つまり、収納什器Bは、内部に制振機構を内蔵した制振パネル19を少なくとも1枚含む複数のパネル構成材20,…で立体的に組み立てて構成し、該収納什器Bの上下端を前記吊り天井構造体1とフロア構造体2に固定した構造である。あるいは、前記収納什器Bは、剛性の高い複数のパネル構成材20,…で立体的に組み立てて構成し、該収納什器Bの下端を前記フロア構造体2に固定するとともに、上端を前記吊り天井構造体1に制振機構を介して連結した構造である。
具体的には、図11(a)の収納什器Bは、一枚の制振パネル19と2枚のパネル構成材20,20をH字形に連結し、制振パネル19と両パネル構成材20,20で囲まれる下部空間にキャビネット23を設けるとともに、上位に間接照明24と絵画25や写真あるいはフラットモニターを設け、一方のパネル構成材20の外側上部に掲示板26を設けた構造である。図11(b)の収納什器Bは、一枚の制振パネル19と2枚のパネル構成材20,20をH字形に連結し、制振パネル19と両パネル構成材20,20で囲まれる空間に多段に棚板27,…を設けた構造である。
図11(c)の収納什器Bは、4枚のパネル構成材20,…を四角柱状のボックス体を構成し、側面にフラットモニター28やブックシェルフ29や掲示板26を設けた構造であり、更に内部に空調設備関連30を内部空間に設けても良い。ここで、前記パネル構成材20,…のうち、少なくとも一枚を制振パネル19で構成する。図11(d)の収納什器Bは、4枚のパネル構成材20,…を四角柱状のボックス体を構成し、一枚のパネル構成材20には繰り抜き収納庫31を設け、一側にはプロジェクター用のロールスクリーン32を設置した構造である。この場合も前記パネル構成材20,…のうち、少なくとも一枚を制振パネル19で構成する。
次に、図12〜図14は、前記中間構造物3として、複数の支柱を組み合わせて構成した支柱フレーム構造体Cを示している。図12の支柱フレーム構造体Cは、前記吊り天井構造体1とフロア構造体2との間に、3本以上のn本の支柱33,…をn角形の頂点位置に配置して立設し、具体的には4本の支柱33,…を正四角形の頂点位置に配置して立設し、各支柱33の下端を前記フロア構造体2に固定するとともに、各支柱33,33の上端間を連結した連結杆34を前記吊り天井構造体1に固定し、隣接する両連結杆34の中間部間及び支柱33の上部と該支柱33に隣接する両連結杆34の中間部間を傾斜状態に配置した粘弾性ダンパー10で連結した構造である。本実施形態の支柱フレーム構造体Cは、比較的寸法が大きなやぐらフレーム構造であり、各支柱33で囲まれる空間をユーティリティースペースとして利用できるようにしている。
図13の支柱フレーム構造体Cは、前記吊り天井構造体1とフロア構造体2との間に、3本以上のn本の支柱33,…をn角形の頂点位置に配置して立設し、具体的には4本の支柱33,…を正四角形の頂点位置に配置して立設し、各支柱33の上下端を前記吊り天井構造体1とフロア構造体2に固定するとともに、隣接する支柱33,33間をクロス状に配置した粘弾性ダンパー10,10で連結した構造である。
図14の支柱フレーム構造体Cは、前記吊り天井構造体1とフロア構造体2との間に、3本以上の支柱33,…を立設し、具体的には4本の支柱33,…を立設し、各支柱33,…は下部を束ねて一体化し、上部が外側へ放射状に湾曲した形状であり、束ねた各支柱33,…の下端を前記フロア構造体2に固定するとともに、各支柱33の上端を前記吊り天井構造体1に制振材35を介して連結した構造である。ここで、前記制振材35は、前記粘弾性ダンパー10を構成した粘弾性体18と同様な素材で構成すれば良い。
制振機構を内蔵したパネル構造体Aの他の実施形態として図15に示したものは、両側の支柱6,6の上部間にガイドレール36を渡設し、両支柱6,6間に対応する吊り天井構造体1に天レール4を介して固定した天ブラケット9に、制振ウエイト37を制振ダンパー38を介して吊り下げるとともに、該制振ウエイト37に設けた吊車39,39を前記ガイドレール36に懸架した構造である。本実施形態の制振機構は、横揺れに対して吊り天井構造体1と制振ダンパー38を介して吊り下げた制振ウエイト37の固有振動数が異なることを利用し、該吊り天井構造体1の横揺れを抑制するのである。前記制振ウエイト37を始め、天ブラケット9、制振ダンパー38、ガイドレール36等が全て両支柱6,6とパネル板7,7形成される空間内に収まっており、本発明の範疇となる。
最後に、前記吊り天井構造体1に天レール4を強固に取付ける構造を図16に基づいて説明する。前記吊り天井構造体1は、縦横に配置された天井支持レール40に下方から天井パネル41をネジ止めした構造である。ここで、前記天井パネル41は、上側に石膏ボード42、下側に岩綿吸音板43を積層した構造が一般的である。そして、前記天レール4は、前記岩綿吸音板43の下面に沿わせた状態で前記天井支持レール40にネジ44で固定するが、当該岩綿吸音板43は柔らかく、地震による横揺れが生じると天レール4が横方向にずれるという問題がある。
そこで、図16に示すように、断面コ字形の前記天レール4の上面板45に正方形の4辺に対応する位置に4つのスリット46,…を形成するとともに、その内方に単又は複数の貫通孔47を形成した。そして、新たに剣山金物48を作製した。前記剣山金物48は、正方形の基板49の4辺に直角に爪片50,…を立起させるとともに、基板49に対角線上に4つの取付孔51,…を形成した構造である。前記岩綿吸音板43の下面に天レール4の上面板45を沿わせた状態で、下方から前記剣山金物48の爪片50,…を、前記スリット46,…を通して前記岩綿吸音板43に突き刺し、前記ネジ44を剣山金物48の取付孔51と天レール4の貫通孔47を通して前記天井支持レール40に螺合するのである。ここで、本発明の中間構造物3を設ける位置の前後を含めて対応する領域では、前記天レール4を前記ネジ44と剣山金物48とのセットで、密に等間隔で吊り天井構造体1に固定し、横揺れによる荷重を分散させる。例えば、一枚の前記パネル構造体Aに対して10箇所で天レール4を吊り天井構造体1に固定する。
A パネル構造体、 B 収納什器、
C 支柱フレーム構造体、 D 間仕切パネル、
W 壁面、 P,Q 制振方向
1 吊り天井構造体、 2 フロア構造体、
3 中間構造物、 4 天レール、
5 地レール、 6 支柱、
7 パネル板、 8 クロスブレース、
9 天ブラケット、 10 粘弾性ダンパー、
11 支柱ブラケット、 12 杆体、
13 地ブラケット、 14 V字ブレース、
15 補強フレーム、 16 枠体、
16A ブラケット、 17 板片、
18 粘弾性体、 19 制振パネル、
20 パネル構成材、 21 コーナー支柱、
22 4方向支柱、 23 キャビネット、
24 間接照明、 25 絵画、
26 掲示板、 27 棚板、
28 フラットモニター、 29 ブックシェルフ、
30 空調関連設備、 31 繰り抜き収納庫、
32 ロールスクリーン、 33 支柱、
34 連結杆、 35 制振材、
36 ガイドレール、 37 制振ウエイト、
38 制振ダンパー、 39 吊車、
40 天井支持レール、 41 天井パネル、
42 石膏ボード、 43 岩綿吸音板、
44 ネジ、 45 上面板、
46 スリット、 47 貫通孔、
48 剣山金物、 49 基板、
50 爪片、 51 取付孔。

Claims (6)

  1. 上スラブの下面側に構築した吊り天井構造体と、下スラブの上面側に構築したフロア構造体との間に、前記吊り天井構造体の制振機能を備えたパネル構造体と制振機能を備えていない通常の間仕切パネルを設置してフロアを区画し、前記吊り天井構造体の横揺れを抑制する吊り天井構造体の制振方法であって、
    前記パネル構造体は、内部に制振方向をパネルの面内方向とした制振機能が一体的に組み込まれた構造であり、複数の前記パネル構造体を、平面視で制振方向が少なくとも直交する2方向を含む異なる方向を向くように配置したことを特徴とする吊り天井構造体の制振方法。
  2. 制振機能を備えた前記パネル構造体は、前記間仕切パネルと同じ外観を有している請求項1記載の吊り天井構造体の制振方法。
  3. 制振機能を備えた前記パネル構造体は、前記吊り天井構造体の下面に取付けた天レールと前記フロア構造体の上面に取付けた地レールとの間に所定間隔を隔てて立設した一対の支柱間の表裏両面にそれぞれパネル板を装着し、前記支柱の下端を前記地レールに固定するとともに、前記支柱の上端を前記天レールに対して面内変位可能に保持した基本構造を備え、更に前記天レールを介して吊り天井構造体に固定した天ブラケットと前記支柱のうち少なくとも1つの前記支柱の上部間を、2枚の板片の間に粘弾性体を挟んで連携させた構造の粘弾性ダンパーで連結したものである請求項2記載の吊り天井構造体の制振方法。
  4. 上スラブの下面側に構築した吊り天井構造体と、下スラブの上面側に構築したフロア構造体との間に、前記吊り天井構造体の制振機能を備えたパネル構造体と制振機能を備えていない通常の間仕切パネルを設置してフロアを区画し、前記吊り天井構造体の横揺れを抑制する吊り天井構造体の制振装置であって、
    前記パネル構造体は、内部に制振方向をパネルの面内方向とした制振機能が一体的に組み込まれた構造であり、複数の前記パネル構造体を、平面視で制振方向が少なくとも直交する2方向を含む異なる方向を向くように配置したことを特徴とする吊り天井構造体の制振装置。
  5. 制振機能を備えた前記パネル構造体は、前記間仕切パネルと同じ外観を有している請求項4記載の吊り天井構造体の制振装置。
  6. 制振機能を備えた前記パネル構造体は、前記吊り天井構造体の下面に取付けた天レールと前記フロア構造体の上面に取付けた地レールとの間に所定間隔を隔てて立設した一対の支柱間の表裏両面にそれぞれパネル板を装着し、前記支柱の下端を前記地レールに固定するとともに、前記支柱の上端を前記天レールに対して面内変位可能に保持した基本構造を備え、更に前記天レールを介して吊り天井構造体に固定した天ブラケットと前記支柱のうち少なくとも1つの前記支柱の上部間を、2枚の板片の間に粘弾性体を挟んで連携させた構造の粘弾性ダンパーで連結したものである請求項5記載の吊り天井構造体の制振装置。
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