JP7203405B2 - 多孔質複合体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、リチウム二次電池、リチウムイオンキャパシタ、キャパシタ、コンデンサ等蓄電素子用のセパレータに好適に用いられる多孔質複合体およびその製造方法に関する。
リチウム二次電池等の蓄電素子は、電池の破損等により内部短絡または外部短絡が生じた場合には、大電流が流れて異常発熱することがある。そのため、一定以上の発熱を防止し、高い安全性を確保することが重要である。この安全性確保手段として、何らかの原因で電池が約150℃以上の高温になった時、セパレータが収縮や溶融せず、一定の形状を保つ耐熱性のセパレータとして不織布を用いることが提案されている。不織布は、蓄電素子用のセパレータとして多用されている、延伸法等を用いたポリオレフィン系多孔質フィルムと比べて、力学的特性や寸法安定性に優れるため、蓄電素子用のセパレータへの適用が期待されている材料である。ただ、不織布を用いた場合、繊維同士の絡まりあいによって形成される気孔が、延伸法等を用いたポリオレフィン系多孔質フィルムと比べて大きいため、リチウムデンドライトの発生が起こりやすく、内部短絡の原因となることがあり、この問題に対する対策が必要であった。
例えば、特許文献1には、耐熱性に優れた、ポリアミドイミド(PAI)等のポリイミド(PI)系高分子からなる多孔質フィルムを不織布に積層したものをセパレータとして用いる方法が開示されている。しかしながら、このような積層体では、多孔質フィルムと不織布との界面で剥離しやすいという問題があった。
このような問題を解決するため、特許文献2には、不織布にアルミナ等のフィラを含むPI系高分子溶液を含浸させることにより、多孔質複合体を耐熱性セパレータとして用いる方法が提案されている。この特許文献には、不織布にPI系溶液を含浸後、水、アルコール等の凝固液に浸漬することにより、PI系高分子層の相分離を誘起せしめ、PI系高分子の多孔質構造を形成する方法も提案されている。また、特許文献3には、不織布に、シリカ等の微粒子を分散させたPI系高分子溶液を含浸、乾燥後、これをフッ酸水溶液等に浸漬して、微粒子を除去することにより、PI系高分子を多孔質化して、不織布と多孔質PI系高分子とが一体化された多孔質複合体を、耐熱性セパレータとして用いる方法が提案されている。
しかしながら、特許文献2に開示された方法の中で、アルミナ等のフィラを含むPI系高分子溶液を用いて得られる多孔質複合体は、大量のフィラを用いるため、セパレータとして電池に使用した際に、フィラがセパレータから脱落してしまう粉落ちの問題があった。特許文献2に開示された方法の中で、凝固液を用いて得られる多孔質複合体は、充分な透過性を確保することが難しいという問題があった。さらに、製造方法という観点からは、特許文献2に開示された凝固液を用いる方法では、アミド系溶媒を含む大量の廃液が発生し、環境適合性に問題があった。特許文献3に開示されたフッ酸水溶液を用いる方法では、フッ酸を含む大量の廃液が発生し、環境適合性に問題があった。
特開2015-208881号公報 特開2000-30686号公報 特開2016-81835号公報
そこで本発明は、前記課題を解決するものであって、蓄電素子セパレータとして好適に用いられる、不織布と多孔質PAIとが一体化された耐熱性多孔質複合体およびその簡便な製造方法の提供を目的とする。
本発明者らは、特定の組成としたPAI溶液を、特定の通気度を有する不織布に含浸後、これを乾燥することにより、蓄電素子セパレータとして好適に用いられる耐熱性多孔質複合体が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明は下記を趣旨とするものである。
<1> 通気度が10秒未満である不織布と、多孔質PAIとが一体化された多孔質複合体であって、通気度が10秒以上、500秒以下であることを特徴とする多孔質複合体。
<2> イオン伝導率が、0.2mS/cm以上である請求項1記載の多孔質複合体。
<3> アミド系溶媒(溶媒A)と、テトラグライム、トリグライム、トリプロピレングリコールとから選ばれる少なくとも一種(溶媒B)と、を含む均一なPAI溶液を、不織布に含浸後、乾燥する際、不織布の気孔に残存する溶媒Bの作用を利用して相分離現象を誘起せしめPAIを多孔質化することを特徴とする、前記多孔質複合体の製造方法。
<4> 前記PAI溶液が、炭化水素系溶媒および/またはエーテル系溶媒(ただし、テトラグライム、トリグライム、トリプロピレングリコールを除く)(溶媒C)を、さらに含む前記多孔質複合体の製造方法。
<5> 前記多孔質複合体からなる蓄電素子用のセパレータ。
ここで、通気度とはJIS P8117に基づいて測定された値をいう。イオン伝導率とは、後述する交流インピーダンス法で測定された値である。
本発明の多孔質複合体は、通気性が良好でイオン伝導性に優れるので、蓄電素子セパレータとして好適に用いることができる。また、本発明の多孔質複合体製造方法においては、不織布と多孔質PAIとが一体化された多孔質複合体を、廃液を発生させることなく、簡単なプロセスで製造できる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の多孔質複合体は、不織布と多孔質PAIとが一体化されたものである。PAIは、原料であるトリカルボン酸成分とジアミン成分との重縮合物である。
PAIのトリカルボン酸成分は、1分子あたり3個のカルボキシル基(その誘導体を含む)を有する有機化合物であって、当該3個のカルボキシル基のうち、少なくとも2個のカルボキシル基が酸無水物形態を形成し得る位置に配置されたものである。
トリカルボン酸成分の具体例としては、例えば、トリメリット酸、ヘミメリット酸、1,2,3-ナフタレントリカルボン酸、1,6,7-ナフタレントリカルボン酸、1,4,5-ナフタレントリカルボン酸、ならびにこれらの無水物およびそのモノクロライドが挙げられる。これらの中では、トリメリット酸無水物(TMA)および無水トリメリット酸クロライド(TAC)が好ましい。トリカルボン酸成分は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
トリカルボン酸成分は、その一部がテレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3′,4,4′-ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の成分で置換されたものを用いてもよい。
PAIのジアミン成分は、1分子あたり2個の1級アミノ基(その誘導体を含む)を有する有機化合物である。
ジアミン成分の具体例としては、例えば、4,4′-ジアミノジフェニルエーテル(DADE)、m-フェニレンジアミン(MDA)、p-フェニレンジアミン、4,4′-ジフェニルメタンジアミン(DMA)、4,4′-ジフェニルエーテルジアミン、ジフェニルスルホン-4,4′-ジアミン、ジフェニルー4,4′-ジアミン、o-トリジン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ナフタレンジアミン、およびこれらのジイソシアネート誘導体が挙げられる。これらの中では、DADE、MDA、DMAおよびこれらのジイソシアネート誘導体が好ましい。ジアミン成分は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
PAIは、通常、200℃以上のガラス転移温度を有する。ガラス転移温度は、DSC(示差熱分析)により測定された値を用いている。
PAIは、熱可塑性であっても非熱可塑性であってもよいが、前記したガラス転移温度を有する芳香族PAIを好ましく用いることができる。
本発明の多孔質複合体は、例えば、アミド系溶媒(溶媒A)と、テトラグライム、トリグライム、トリプロピレングリコールから選ばれる少なくとも一種(溶媒B)と、を含む均一なPAI溶液を、不織布に含浸後、乾燥する際、不織布に残存する溶媒Bの作用を利用して相分離現象を誘起せしめポリアミドイミドを多孔質化することにより得ることができる。この均一なPAI溶液には、さらに、溶媒Cが含まれていることが、不織布への含浸性を向上させ、得られる多孔質複合体の通気性を向上させる観点から好ましい。
ここで、溶媒Aの具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドを挙げることができる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、溶媒Cの具体例としては、以下の溶媒を挙げることができる。すなわち、炭化水素系溶媒の具体例としては、n―ヘキサン、シクロヘキサン、n―ヘプタン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン(o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン)等を挙げることができる。エーテル系溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、グライム、ジオキサン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられるPAI溶液は、均一な溶液であり、溶媒Aと溶媒Bとの好ましい混合比率は、5:95~99:1(質量比)である。なお、溶媒Bがテトラグライムまたはトリグライムの場合は10:90~40:60の質量比範囲が、溶媒Bがトリプロピレングリコールの場合は95:5~70:30の質量比範囲が、それぞれ好ましい。
また、このPAI溶液がさらに溶媒Cを含んでいる場合には、下記の溶媒組成を有することが好ましい。
(1)溶媒Bと、溶媒Cとの混合比率が、90:10~70:30(質量比)である。
(2)溶媒Aと、溶媒Bと溶媒Cの合計量と、の混合比率が、5:95~95:5(質量比)である。
本発明に用いられるPAI溶液は、均一な溶液である。ここで、均一な溶液とは、可視光線に対して透明な溶液をいう。このような均一溶液を用いることにより、塗膜乾燥時に均一な相分離現象が誘起される。従い、例えば、特開2007-269575号公報に開示されたような、ミクロ相分離した、不均一なPAI溶液は好ましくない。
本発明に用いられるPAI溶液は、例えば、原料であるトリカルボン酸無水物とジイソシアネートとを略等モルで配合し、これを、溶媒Aまたは溶媒Aと溶媒Bとからなる混合溶媒を用い、150℃~200℃で、重合反応させて得ることができる。この溶液には、さらに溶媒A、溶媒B、溶媒Cを添加することができる。
本発明で用いられる均一なPAI溶液は、以下のような製造方法で製造することもできる。すなわち、固体状のPAIを前記混合溶媒に溶解せしめてPAI溶液とする。固体状のPAIとしては、例えば、ソルベイアドバンストポリマーズから市販されているものを用いることができる。
本発明に用いられるPAI溶液には、本発明の効果を損なわない範囲で、フィラを配合することができる。フィラを配合することにより、多孔質複合体の通気度をさらに向上させることができる。このフィラの種類に制限は無く、有機フィラ、無機フィラおよびその混合物等を用いることができる。有機フィラの具体例としては、例えば、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル等の単独または2種類以上の共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン-エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド等のフッ素系樹脂等の重合体からなる粉体を挙げることができる。有機フィラは、単独または2種以上を混合して用いることができる。無機フィラとしては、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、炭酸塩、硫酸塩等の無機物からなる粉体を挙げることができる。具体例としては、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、硫酸バリウムまたは炭酸カルシウム等からなる粉体を挙げることができる。無機フィラは、単独または2種以上を混合して用いることができる。
フィラの形状に制限はなく、略球状、板状、柱状、針状、ウィスカー状、繊維状等の粒子を用いることができ、略球状粒子が好ましい。
フィラの平均粒子径に制限はないが、0.01μm以上、2μm以下であることが好ましい。平均粒子径はレーザ回折散乱法に基づく測定装置により測定することができる。
フィラは、その表面が、界面活性剤やシランカップラのような表面処理剤で処理されていてもよい。
フィラ配合量は、PAI固形分に対し、50~600質量%とすることが好ましい。
PAI溶液中におけるPAIの固形分濃度は、1~50質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。また、PAI溶液の30℃における粘度は、1~100Pa・sが好ましく、2~50Pa・sがより好ましい。
PAI溶液には、必要に応じて、各種界面活性剤や有機シランカップリング剤のような公知の添加物を、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。また、必要に応じて、PAI以外の他のポリマーを、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
前記のようにして得られたPAI溶液を、基材である不織布に含浸後、乾燥することにより相分離現象を誘起せしめ、不織布と多孔質PAIとが一体化された多孔質複合体からなるセパレータを得ることができる。
不織布は、抄紙法、メルトブロー法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、エレクトロスピニング法等の公知の方法で製造されたものを用いることができる。
不織布を構成する材料の種類に制限はなく、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリイミド系、セルロース系、ガラス繊維系等の不織布を用いることができる。これらの中でも、耐熱性および低吸湿性の観点からポリエステル系不織布が好ましい。
不織布の厚みに制限はなく、通常、5~100μm程度であり、5~30μmが好ましい。
不織布の通気度は10秒未満であることが必要であり、2秒以下であることが好ましく、1秒以下であることがさらにより好ましい。このような不織布を用いることにより、良好な含浸性を確保することができる。
前記不織布は、例えば、日本バイリーン、廣瀬製紙等から市販されているものを用いることができる。
本発明においては、PAI溶液を、不織布に含浸後、塗膜を100~200℃で乾燥することにより、不織布と多孔質PAIとが一体化された多孔質複合体からなるセパレータを得ることができる。乾燥の際、不織布の気孔中に残存する溶媒Bの作用で、不織布内で相分離現象が誘起され、PAIが多孔質化される。ここで、「一体化された」とは繊維同士の絡まりあいによって形成される気孔の一部または全部において、多孔質PAIが充填されている状態をいう。なお、溶媒Bは、PAIに対する貧溶媒であるので、乾燥の際、これが残存していると相分離現象が誘起される。
多孔質PAIの含有量は、多孔質複合体質量に対し、20~70質量%とすることが好ましく、30~60質量%とすることがより好ましい。
不織布と多孔質PAIとが一体化された多孔質複合体の通気度は、10秒以上、500秒以下とすることが必要であり、10秒以上、300秒以下とすることが好ましく、10秒以上、200秒以下とすることがより好ましく、10秒以上、100秒以下とすることがさらにより好ましい。通気度を500秒以下とすることにより、蓄電素子用のセパレータとして用いた際の良好なイオン透過性を確保することができる。イオン透過性の指標であるイオン伝導率は、0.2mS/cm以上であることが好ましく、0.5mS/cm以上であることがより好ましく、1.0mS/cm以上であることがさらに好ましい。なお、イオン伝導率は、後述する交流インピーダンス法を用いて測定される値である。本発明の多孔質複合体は、前記のようにイオン伝導率を高くすることができるので、これをセパレータとして用いた蓄電素子は、電気抵抗の低い蓄電素子とすることができる。なお、通気度を10秒未満とするとイオン透過性は確保されても、蓄電素子のセパレータとして使用した際、リチウムデンドライトの発生に起因して短絡が起こることがあるので、好ましくない。なお、前記、溶媒Aと溶媒Bとを含む多孔質PAIフィルム形成用溶液は、特開2016-222912号公報、特許第6218931号公報、特許第6175517号公報等に記載されており、公知の材料であるが、これらの溶液を、通気度が10秒未満という特定の不織布に含浸し、多孔質複合体としたものは知られていない。さらに、この複合体の通気度およびイオン伝導率を前記とすることにより、蓄電素子のセパレータとして好適に使用できることは、これらの特許文献に、記載されていないし、示唆もされていない。
PAI溶液を不織布上に含浸するに際しては、ロールツーロールにより連続的に含浸する方法、枚様で含浸する方法等が採用でき、いずれの方法でもよい。含浸装置としては、公知の含浸装置を用いることができる。
含浸に際しては、マングル、ローラ等を用いて絞液することにより、含浸量を調整することができる。また、含浸量を調節するために繰り返し含浸を行ってもよい。なお、この含浸処理に際しては、多孔質PAIのみからなる多孔質層が不織布表面に形成されるように、含浸処理を行ってもよい。
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお本発明は実施例により限定されるものではない。
<実施例1>
等モルのTMAとMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)とを、NMP中、160℃で5時間、重合反応を行った後、100℃まで降温した際に、テトラグライムを添加して冷却することにより、溶媒がNMP37質量部とテトラグライム46質量部とからなり、固形分濃度が17質量%であるPAI溶液(S-1)を得た。この溶液に、トルエン5質量部を添加し、固形分濃度が16.2質量%である均一なPAI溶液を得た。ここで、固形分濃度とは、PAI溶液質量に対する濃度を表す。このPAIのGPCによる重量平均分子量(Mw)は、58500であった。この溶液を市販のポリエチレンテレフタレート(PET)製不織布(厚み:20μm、坪量4g/cm、通気度:1秒以下)に含浸して、ローラで余分な液を除去後、150℃で20分乾燥することにより、PET製不織布と多孔質PAIとが一体化された多孔質複合体(A-1)を得た。A-1中のPAI含有率は、A-1質量に対し、38質量%であった。A-1の通気度を測定したところ32秒であり、極めて良好な通気性が確認された。
<実施例2>
S-1に添加する溶媒を、「グライム5質量部」としたこと以外は、実施例1と同様にして、PAI含有率が42質量%の多孔質複合体(A-2)を得た。A-2の通気度を測定したところ51秒であり、極めて良好な通気性が確認された。
<実施例3>
S-1に添加する溶媒を、「テトラグライム5質量部」としたこと以外は、実施例1と同様にして、PAI含有率が39質量%の多孔質複合体(A-3)を得た。A-3の通気度を測定したところ189秒であり、良好な通気性が確認された。
<実施例4>
TACと、DADEおよびMDAと、を共重合(共重合モル比:DADE/MDA=7/3)して得られるPAI粉体(ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製トーロン4000T-MV、ガラス転移温度280℃)を、NMP15質量部とテトラグライム85質量部とからなる混合溶媒に、80℃で溶解して、PAIの固形分濃度が対PAI溶液比で12質量%とした均一なPAI溶液(S-2)を得た。
この溶液を用い、実施例1と同様にして、PAI含有率が35質量%の多孔質複合体(A-4)を得た。A-4の通気度を測定したところ115秒であり、良好な通気性が確認された。
<実施例5>
混合溶媒を、NMP15質量部とテトラグライム80質量部とグライム5質量部とからなる混合溶媒としたこと以外は、実施例4と同様に行い、PAIの固形分濃度が対PAI溶液比で12質量%とした均一なPAI溶液(S-3)を得た。この溶液を用い、実施例1と同様にして、PAI含有率が37質量%の多孔質複合体(A-5)を得た。A-5の通気度を測定したところ89秒であり、良好な通気性が確認された。
<実施例6>
等モルのTMAとMDIとを、NMP中で5時間、重合反応を行った後、冷却して、固形分濃度が30質量%であるPAI溶液(S-4)を得た。このPAIのGPCによる重量平均分子量(Mw)は、63500であった。
この溶液に、NMPとトリプロピレングリコールとを添加し、固形分濃度が16.7質量%であり、NMPとトリプロピレングリコールとの質量比が80:20である均一なPAI溶液を得た。
このPAI溶液を用い、実施例1と同様にして、PAI含有率が41質量%の多孔質複合体(A-6)を得た。A-6の通気度を測定したところ79秒であり、極めて良好な通気性が確認された。
<比較例1>
重合溶媒を「NMPのみ」としたこと以外は、実施例1と同様にして固形分濃度が16.7質量%の均一なPAI溶液を得た。このPAI溶液を用い、実施例1と同様にして、PAI含有率が40質量%の多孔質複合体(B-1)を得た。B-1の通気度を測定したところ1000秒以上であり、通気性としては不良であった。
<比較例2>
比較例1で用いたPAI溶液を、実施例1と同様にして、不織布に含浸して、ローラで余分な液を除去後、50℃:で5分乾燥した。その後、水中に浸漬して凝固、洗浄、乾燥することにより、PAI含有率が35質量%の多孔質複合体(B-2)を得た。B-2の通気度を測定したところ560秒であり、通気性としては不良であった。
<比較例3>
比較例1で用いたPAI溶液を、実施例1と同様にして、不織布に含浸して、ローラで余分な液を除去後、50℃で5分乾燥した。その後、メチルアルコール中に浸漬して凝固、洗浄、乾燥することにより、PAI含有率が37質量%の多孔質複合体(B-3)を得た。B-3の通気度を測定したところ683秒であり、通気性としては不良であった。
<比較例4>
重合溶媒を「テトラグライムのみ」としたこと以外は、実施例1と同様にしてPAI溶液を得ようとしたが、均一なPAI溶液を得ることはできなかった。
<実施例7>
実施例1~6、比較例1~3で得られた多孔質複合体を、それぞれ、直径25mmの円形状に打ち抜き、これに溶媒としてプロピレンカーボネートを用いた1MLiPF溶液からなる電解液を含浸させた後、これを直径20mmの2枚の白金製電極を挟んでセルを構成した。このセルに10mVの交流電圧を印加して、10KHzでのインピーダンスを測定することにより、多孔質複合体のイオン伝導率を求めた。 結果を表1に示す。
Figure 0007203405000001
表1に示すように、本発明の多孔質複合体は、通気性に優れるので、良好なイオン伝導性を示すことが判る。従い、蓄電素子用のセパレータとして好適に用いることができる。
本発明の多孔質複合体は、通気性が良好でイオン伝導性に優れるので、蓄電素子セパレータとして好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. アミド系溶媒(溶媒A)と、テトラグライム、トリグライム、トリプロピレングリコールとから選ばれる少なくとも一種(溶媒B)と、を含む均一なPAI溶液を、不織布に含浸後、乾燥する際、不織布の気孔に残存する溶媒Bの作用を利用して相分離現象を誘起せしめ、凝固液を用いずに多孔質化し、多孔質PAIを前記不織布の繊維同士の絡まりあいによって形成される気孔の一部または全部において充填することを特徴とする、PAIと不織布とからなる多孔質複合体の製造方法。
  2. 通気度が、10秒以上、500秒以下であることを特徴とする請求項1に記載の多孔質複合体の製造方法。
  3. イオン伝導率が、0.2mS/cm以上である請求項1または2に記載の多孔質複合体の製造方法。
  4. 多孔質複合体が蓄電素子用のセパレータである、請求項1~3いずれかに記載の多孔質複合体の製造方法。
  5. 不織布の通気度は10秒未満である、請求項1~4いずれかに記載の多孔質複合体の製造方法。
  6. 多孔質PAIの含有量は、多孔質複合体質量に対し、20~70質量%である、請求項1~5いずれかに記載の多孔質複合体の製造方法。
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