以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
(実施の形態1)
<レーザ処理装置の全体構成について>
本実施の形態におけるレーザ処理装置1の全体構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施の形態におけるレーザ処理装置1の模式的な構成を示す断面図である。
図1に示されるように、本実施の形態におけるレーザ処理装置1は、レーザ光発生部21と、光減衰器22と、光学系モジュール23と、密閉筐体24と、処理室25とを備えている。
レーザ光発生部(レーザ発振器)21は、レーザ光(例えばエキシマレーザ光)を出力するレーザ発振器(レーザ光源)から構成されており、レーザ光発生部21の出力先には、レーザ光の出力を調整するための光減衰器(アッテネータ)22が配置されている。光減衰器22は、レーザ光の透過率を調整することにより、レーザ光の出力を調整する機能を有している。
光減衰器22で出力調整されたレーザ光の進行先には、光学系モジュール23が配置されている。光学系モジュール23は、反射ミラー23aとレンズ(図示せず)などから構成されており、光減衰器22から光学系モジュール23に入力されたレーザ光をラインビーム状のレーザ光に成形する機能を有している。光学系モジュール23の出力部には、レーザ光に対して透光性を有するシールウィンドウ23bが設けられている。光学系モジュール23で成形されたレーザ光は、シールウィンドウ23bを介して、光学系モジュール23から出力される。
光学系モジュール23から出力されるレーザ光の進行先(ここでは光学系モジュール23の下側)には、密閉筐体24が設けられている。密閉筐体24の内部は、密閉空間となっており、この密閉空間をレーザ光が進行するようになっている。密閉筐体24の出力部には、レーザ光に対して透光性を有するシールウィンドウ24aが設けられている。
密閉筐体24から出力されるレーザ光の進行先(ここでは密閉筐体24の下側)には、処理室25が配置されている。処理室25には、密閉筐体24の出力部に設けられているシールウィンドウ24aと接続するシールボックス26が取り付けられている。シールボックス26には、例えば、窒素ガスに代表される不活性ガスが供給されるようになっている。また、図1に示されるように、シールボックス26の上側は、密閉筐体24に設けられたシールウィンドウ24aによって封止されている一方、シールボックス26の下側には、開口部27が設けられている。このため、シールボックス26に供給された窒素ガスは、開口部27を介してシールボックス26の下側に排出されることになる。
シールボックス26の下方には、ステージ2が配置されている。ステージ2は、処理室25内において、シールボックス26の下方に配置されている。ステージ2は、上面(表面)およびそれとは反対側の裏面(下面)を有し、その上面(表面)からガス(気体)を噴出させることで基板3を浮上搬送可能なステージである。ステージ2の上面上には、例えばガラスまたは石英から形成されている基板3が配置され得るが、この基板3は、ステージ2の上面(より特定的にはステージ2を構成する複数の上部構造体5の上面)から吹き出すガスによって、ステージ2上を浮上しながら、水平方向(具体的にはX方向)に搬送されるようになっている。
基板3の表面(上面)には、非晶質(アモルファス)の半導体膜が形成されており、より特定的にはアモルファスシリコン膜3aが形成されている。シールボックス26に設けられた開口部27から排出された不活性ガス(例えば窒素ガス)は、基板3の表面に形成されたアモルファスシリコン膜3aに吹き付けられるようになっている。
基板3上に形成されている非晶質の半導体膜(ここではアモルファスシリコン膜3a)は、後述するように、レーザ処理装置1を用いたレーザ処理(レーザアニール処理)によって、多結晶の半導体膜(ここでは多結晶シリコン膜)に変質(変化)する。以下では、基板3の表面に形成されている非晶質の半導体膜がアモルファスシリコン膜3aであるものとして説明する。非晶質の半導体膜(アモルファスシリコン膜3a)が形成された基板3を、被処理体とみなすこともできる。
ステージ2は、定盤(ベース部材)4と、複数の上部構造体(基板浮上用構造体、ステージ部材、基板浮上用ステージ部材、浮上用ユニット)5とを有している。複数の上部構造体5の上面が、ステージ2の上面を構成している。このため、複数の上部構造体5は、互いに積み重ねられているのではなく、水平方向に並んで配置されており、それら複数の上部構造体5が、ステージ2の上部を構成している。複数の上部構造体5は、定盤4上に並んで配置されて支持されている。
なお、図1には、後述する上部構造体5a,5bだけでなく、上部構造体5a,5b以外の上部構造体5cも、共通の定盤4上に配置されている場合が示されているが、他の形態として、上部構造体5cは定盤4上には搭載せずに、上部構造体5a,5bが配置される定盤4とは別部材を用いて、上部構造体5cを支持することもできる。但し、そのような場合でも、上部構造体5a,5bおよび上部構造体5a,5b間の冷却機構8は、共通の定盤4上に配置することが好ましい。上部構造体5a,5bを搭載する定盤4は、例えば石材(グラナイトなど)により形成することができ、一方、上部構造体5cを支持する部材は、例えば金属材料により形成することができる。
各々の上部構造体5は、その上面(表面)から気体を噴出することができるにように構成されている。すなわち、上部構造体5の上面(表面)からガス(気体)を噴出し、噴出するガスによって基板3を浮上させることができる。このため、上部構造体5は、その上面(表面)からガスを噴出して基板3を浮上させるように機能する構造体(部材)、すなわち、基板浮上用の構造体である。
具体的には、上部構造体5の上面(表面)には、複数(多数)の微細な孔が存在し、その微細な孔からガスを噴出することができる。基板3がステージ2上を浮上しながら移動する際には、上部構造体5の上面(表面)が基板3の下面と対向し、上部構造体5の上面(表面)の複数(多数)の微細な孔から噴出するガス(以下、基板浮上用ガスと称する場合もある)が、基板3の下面に当たって、基板3を浮上させるように作用する。
次に、レーザ処理装置1の動作について、図1および図2を参照しながら説明する。図2は、レーザ処理装置1の動作を説明するための平面図であり、レーザ処理装置1のステージ2と、ステージ2上を浮上しながら搬送される基板3とが示されている。
図1において、レーザ光発生部(レーザ発振器)21から出力されたレーザ光(レーザビーム)20は、光減衰器22で光出力が調整された後、光学系モジュール23に入力する。光学系モジュール23に入力したレーザ光20は、光学系モジュール23の内部に設けられたレンズ系によって、ラインビーム形状(長方形状)に成形される。ラインビーム形状に成形されたレーザ光20は、例えば、光学系モジュール23の内部に配置されている反射ミラー23aで反射された後、シールウィンドウ23bから密閉筐体24に入射する。密閉筐体24に入射したレーザ光20は、密閉筐体24の内部空間を進行した後、シールウィンドウ24aから、処理室25に設けられたシールボックス26に入射する。そして、シールボックス26に入射したレーザ光20は、シールボックス26に設けられている開口部27を通過してステージ2に向かって進行する。ここで、シールボックス26の開口部27を通過してステージ2(基板3)に向かって進行するレーザ光20を、符号20aを付してレーザ光20aと称することとする。レーザ光20aは、ステージ2上を浮上しながら移動している基板3(より特定的には基板3上のアモルファスシリコン膜3a)に照射される。アモルファスシリコン膜3aにおけるレーザ光照射領域は、局所的に加熱され、多結晶シリコン膜(ポリシリコン膜)に変化(変質)する。
レーザ光20aは、Y方向を長軸方向(長手方向)とするラインビーム形状に成形されている。図2および後述の図6において、レーザ光20aが照射され得る領域(平面領域)を、符号20bを付してレーザ光照射領域20bとして示してある。レーザ光照射領域20bは、長軸(長辺)と短軸(短辺)とを有する長方形状であり、長軸(長辺)は短軸(短辺)よりも大きく、長軸(長辺)方向はY方向であり、短軸(短辺)方向はX方向である。すなわち、レーザ光20aのステージ2の表面(上面)上での平面形状は、長軸(長辺)と短軸(短辺)とを有する長方形状であり、長軸(長辺)方向はY方向であり、短軸(短辺)方向はX方向である。別の見方をすると、基板3(アモルファスシリコン膜3a)に照射されるレーザ光20aの平面形状は、長軸(長辺)と短軸(短辺)とを有する長方形状であり、長軸(長辺)方向はY方向であり、短軸(短辺)方向はX方向である。つまり、基板3(アモルファスシリコン膜3a)の表面上、あるいは、ステージ2の表面上での、レーザ光20aの平面形状は、長軸(長辺)と短軸(端辺)とを有する長方形状であり、その長軸(長辺)の方向はY方向である。レーザ光照射領域20bの長辺の長さ(Y方向の長さ)は、例えば、基板3のY方向の長さと同程度とすることができる。一方、レーザ光照射領域20bの短辺の長さ(X方向の長さ)は、基板3のX方向の長さよりもかなり小さい。
ここで、X方向およびY方向は、互いに交差する方向であり、好ましくは、互いに直交する方向である。また、X方向およびY方向は、ステージ2の上面に略平行であり、従って、ステージ2上を浮上しながら移動する基板3の上面に略平行である。
基板3に対するレーザ処理を行う際には、ステージ2自体は移動せず、固定されたステージ2上を基板3が浮上しながらX方向に搬送される(移動する)。すなわち、図2の(a)の状態から、図2の(b)の状態、図2の(c)の状態に、順に移行する。図2の(a)は、基板3の移動開始前、図2の(b)は、基板3の移動中、図2の(c)は、基板3の移動終了時に、それぞれ対応している。ステージ2上に配置された基板3は、ステージ2の上面(すなわちステージ2を構成する複数の上部構造体5の上面)から噴出するガスによって、ステージ2から浮上することができる。そして、基板搬送用のロボットアーム(図示せず)などで基板3の端部をつかんでX方向に移動させることで、ステージ2上に浮上する基板3をX方向へ移動させることができる。
基板3に対するレーザ処理を行う際には、ステージ2自体は移動せず、また、レーザ光20の照射位置も移動しない。このため、ステージ2に対するレーザ光20aの照射位置は、固定されている。すなわち、ステージ2から見たときのレーザ光照射領域20bは固定されている。しかしながら、基板3がステージ2上を浮上しながらX方向に移動することで、基板3(アモルファスシリコン膜3a)におけるレーザ光20aの照射位置(照射領域)は、基板3の移動とともに移動することになる。すなわち、位置が固定されたステージ2およびレーザ光20aに対して、基板3が移動することで、基板3(アモルファスシリコン膜3a)におけるレーザ光20aの照射位置(照射領域)が、基板3の移動とともに移動することになる。これにより、アモルファスシリコン膜3aにおけるレーザ光照射領域を走査することができ、アモルファスシリコン膜3a全体にレーザ光20aの照射処理を施すことができる。なお、レーザ光20は、連続的なレーザ光、あるいは、所定の周波数のパルス状のレーザ光とすることができる。
また、シールボックス26には、不活性ガス(例えば窒素ガス)が供給されており、シールボックス26の下部に設けられた開口部27からその不活性ガスが排気される。そして、シールボックス26に設けられた開口部27から排出された不活性ガスは、ステージ2上を浮上しながらX方向に移動している基板3(より特定的には基板3上のアモルファスシリコン膜3a)の上面に吹き付けられる。
シールボックス26の開口部27から基板3上のアモルファスシリコン膜3aに対して不活性ガスを吹き付けるのは、基板3上のアモルファスシリコン膜3aにレーザ光を照射してアモルファスシリコン膜3aを多結晶シリコン膜に変化させる際に、不要な反応が発生しないようにするため(例えば多結晶シリコン膜の表面に酸化シリコン膜が生成されないようにするため)である。すなわち、シールボックス26の開口部27から排出された不活性ガスの雰囲気中でアモルファスシリコン膜3aにレーザ光を照射してアモルファスシリコン膜3aを多結晶シリコン膜に変化させるためである。
つまり、ステージ2上に基板3を浮上させてX方向に移動させながら、基板3の表面に形成されているアモルファスシリコン膜3aに対して、不活性ガス(例えば窒素ガス)を吹き付けつつ、ラインビーム形状に成形されたレーザ光20aが照射される。その結果、基板3上に形成されているアモルファスシリコン膜3aが局所的に加熱されることになり、それによって、アモルファスシリコン膜3aのレーザ光照射領域を多結晶シリコン膜に変化させながら、アモルファスシリコン膜3aにおけるレーザ光照射領域を走査することができる。このようにして、アモルファスシリコン膜3a全体に対してレーザ処理(レーザアニール処理)を施し、アモルファスシリコン膜3a全体を多結晶シリコン膜に変化させることができる。つまり、基板3上に形成されている非晶質の半導体膜(ここではアモルファスシリコン膜3a)を、多結晶の半導体膜(ここでは多結晶シリコン膜)に変質(変化)させることができる。
なお、詳細は後述するが、本実施の形態では、レーザ処理装置1のステージ2は冷却機構8を有している。本実施の形態では、基板3(アモルファスシリコン膜3a)に対するレーザ処理(レーザアニール処理)を行う際には、ステージ2上を浮上させながら基板3を搬送(移動)する。そして、ステージ2を冷却しながら、基板3(アモルファスシリコン膜3a)にレーザ光20aを照射する。ステージ2は、液体によって冷却され、具体的には、後述する流路9の中を液体(冷却液)を流動させることにより、ステージ2を冷却している。
<検討の経緯>
図3は、本発明者が検討した第1検討例のレーザ処理装置101の模式的な構成を示す断面図であり、上記図1に相当するものである。
図3に示される第1検討例のレーザ処理装置101においては、上記基板3に相当する基板103は、ステージ102上にそのステージ102と接するように配置されており、ステージ102を移動させることによってステージ102と一緒に基板103も移動させながら、その基板103にレーザ光20を照射する。すなわち、第1検討例のレーザ処理装置101においては、基板103は、ステージ102上を浮上して移動するのではなく、ステージ102上に配置されて固定されており、ステージ102と基板103とが一緒に移動するようになっている。ステージ102と一緒に基板103が移動することにより、基板103上に形成されているアモルファスシリコン膜103aにおけるレーザ光照射領域を走査することができ、アモルファスシリコン膜103a全体を多結晶シリコン膜に変化させることができる。
しかしながら、第1検討例のレーザ処理装置101においては、ステージ102と基板103とを一緒に移動させる必要があるため、ある基板103に対するレーザ処理を行った後には、レーザ処理の終了位置まで移動しているステージ102を、初期位置まで戻す必要がある。そして、その後に、ステージ102上に次の基板103を配置してから、ステージ102と基板103とを一緒に移動させながらその基板103に対するレーザ処理を行う必要がある。この場合、レーザ処理が済んだ基板103をステージ102から降ろしてから、ステージ102を初期位置まで戻す動作が必要になることから、複数の基板103にレーザ処理を施す際には、1枚の基板103あたりの処理時間が長くなってしまい、スループットが低くなってしまう。
そこで、本発明者は、レーザ処理装置のステージ上に基板を浮上させながらその基板を水平方向に移動させ、移動する基板に対してレーザ光を照射することを検討している。この場合、ステージを移動させる必要がないため、複数の基板にレーザ処理を施す際には、1枚の基板あたりの処理時間を短くすることができ、スループットを向上させることができる。
しかしながら、レーザ処理装置のステージ上に基板を浮上させながらその基板を水平方向に移動させ、移動する基板に対してレーザ光を照射する場合には、次のような課題が発生する虞があることが、本発明者の検討により分かった。これについて、図4および図5を参照して説明する。図4および図5は、本発明者が検討した第2検討例のレーザ処理装置の要部断面図であり、後述の図7に相当するものである。
図4に示される第2検討例のレーザ処理装置においては、固定されたステージ202上を、上記基板3に相当する基板203が浮上しながら移動し、移動する基板203に対して上記レーザ光20に相当するレーザ光220を照射する。これにより、基板203上に形成されているアモルファスシリコン膜203aにおけるレーザ光照射領域を走査することができ、アモルファスシリコン膜203a全体を多結晶シリコン膜に変化させることができる。ステージ202は、上記上部構造体5に相当する上部構造体205を有しており、上部構造体205の上面から噴出するガスにより、基板203が浮上する。上部構造体205は、上記定盤4に相当する定盤204上に配置されている。
しかしながら、図4に示される第2検討例のレーザ処理装置においては、基板203は移動させるがステージ202は固定されていることに伴い、ステージ202から見た基板203におけるレーザ光照射位置が固定されてしまい、ステージ202が局所的に加熱されてしまう。
すなわち、図4において、基板203およびその上のアモルファスシリコン膜203aは、レーザ光220が照射されている領域とその近傍が局所的に加熱され、従って、符号228を付した点線で囲まれた領域(以下、基板加熱領域228と称する)が局所的に加熱され、かなり高い温度になる。基板203を移動させながらレーザ光を照射するため、基板203およびその上のアモルファスシリコン膜203aにおいて、基板加熱領域228は、基板203の移動とともに移動する。しかしながら、ステージ202は固定されているため、ステージ202から見ると基板加熱領域228の位置は移動せずに固定されている。このため、基板203に対するレーザ処理を行っている間、ステージ202における基板加熱領域228の下方に位置する領域は固定されていることになる。
従って、基板203に対するレーザ処理を行っている間、ステージ202において、基板加熱領域228の下方に位置する領域とその近傍では、基板加熱領域228から伝わる熱で継続的に加熱されることになるため、基板加熱領域228から伝わる熱が蓄積されてしまい、局所的に加熱されて局所的な温度上昇が発生してしまう。ステージ202が局所的に加熱されて局所的な温度上昇が発生してしまうと、ステージ202に熱歪(熱に起因した歪)が発生し、ステージ202が変形してしまう虞がある。すなわち、図5に示されるように、ステージ202において、基板加熱領域228の下方に位置する領域とその近傍では、基板加熱領域228からの熱伝導に起因して、ステージ202が局所的に変形してしまう虞がある。
ステージ202が局所的に変形してしまうと、ステージ202上に浮上する基板203の高さ位置が変動してしまうため、基板203に対するレーザ処理の条件の変動を招く虞がある。すなわち、基板203はステージ202上を浮上しながら移動するため、ステージ202が変形してしまうと、ステージ202上に浮上する基板203の高さ位置が変わってしまうが、基板203の高さ位置が変わると、その基板203に照射されるレーザ光の焦点位置と基板203との間の距離も変わってしまうため、基板203に対するレーザ処理の条件が変動してしまう。
例えば、ステージ202が熱歪によって変形する前(図4の状態)は、ステージ202上に浮上する基板203の高さ位置がレーザ光220の焦点位置と一致していたとしても、ステージ202が基板加熱領域228からの熱伝導に起因して変形してしまうと(図5の状態)、ステージ202上に浮上する基板203の高さ位置が、レーザ光220の焦点位置からずれてしまう。これは、ステージ202が熱歪によって局所的に変形する前と後とで、基板203に対するレーザ処理の条件が変動したことにつながる。
ステージ202が熱歪によって変形する前と後とで、基板203に対するレーザ処理の条件が変動してしまうと、レーザ処理によって基板203上に形成されたアモルファスシリコン膜203aを多結晶シリコン膜に変えた場合の、その多結晶シリコン膜の特性の変動につながる虞がある。例えば、多結晶シリコン膜の結晶化状態が変動する虞がある。このため、1つの基板203に形成されている多結晶シリコン膜の特性の変動や、複数の基板203に形成されている多結晶シリコン膜同士の特性の変動を抑制するためには、基板加熱領域228からの熱伝導によってステージ202が変形してしまうのを、抑制または防止することが望まれる。
<レーザ処理装置の詳細構成について>
図6は、本実施の形態のレーザ処理装置1の要部平面図であり、図7および図8は、本実施の形態のレーザ処理装置1の要部断面図であり、図9は、本実施の形態のレーザ処理装置1のステージ2が有する冷却機構8の斜視図である。図6は、本実施の形態のレーザ処理装置1が有するステージ2の一部の平面図が示されているが、図6に示されている平面領域は、上記図2の(b)の領域29にほぼ対応している。なお、図6においては、レーザ光照射領域20bをハッチングを付して示し、冷却機構8内に設けられた流路9を点線で示してある。図7は、図6に示されるA1-A1線の位置での断面図にほぼ対応し、図8は、図6に示されるA2-A2線の位置での断面図にほぼ対応している。また、図7の断面図にはレーザ光20aを示してあるが、図8の断面図では、アモルファスシリコン膜3aの上面全体にレーザ光20aが照射されているため、レーザ光20aの図示は省略している。
上述のように、本実施の形態のレーザ処理装置1のステージ2は、定盤4と、定盤4上に配置された複数の上部構造体5とを有している。ステージ2の上面(表面)は、複数の上部構造体5により構成されており、すなわち、複数の上部構造体5の上面(表面)がステージ2の上面を構成している。ステージ2が有する複数の上部構造体5のそれぞれは、上面(表面)からガスを噴出し、噴出するガスにより基板3を浮上させるように機能することができる。本実施の形態のレーザ処理装置1のステージ2は、更に冷却機構(冷却用部材、冷却ユニット)8も有している。
ステージ2を構成する複数の上部構造体5は、平面視においてレーザ光照射領域20bを間に挟んでX方向に隣り合う上部構造体5a,5bを含んでいる(図2および図6参照)。上部構造体5aと上部構造体5bとは、X方向において互いに離間し、かつ対向するように配置されている。従って、上部構造体5aと上部構造体5bとは、X方向に所定の間隔を空けて配置されており、X方向における上部構造体5aと上部構造体5bとの間には、冷却機構8が配置されている。すなわち、上部構造体5aと上部構造体5bとは、冷却機構8を介してX方向に隣り合っており、上部構造体5aと上部構造体5bとの互いに対向する側面間に、冷却機構8が配置されている。上部構造体5a,5bは、上部構造体5a,5b間の冷却機構8に接していることが好ましい。上部構造体5a,5bと、上部構造体5a,5b間に配置された冷却機構8とは、定盤4の上面上に配置(搭載)されている。冷却機構8は、ステージ2を冷却するための部材(冷却用部材)であり、より特定的には、上部構造体5a,5bを冷却するための部材である。冷却機構8を間に挟んでX方向に隣り合う上部構造体5aと上部構造体5bとの間には、他の上部構造体5は配置されていないため、上部構造体5aの構造と上部構造体5bとの間の領域では、基板3を浮上させるためのガスは噴出されない。
上部構造体5aの構造と上部構造体5bの構造とは、基本的には同様であるので、ここでは、上部構造体5aの構造について説明するが、上部構造体5aの構造についての説明は、上部構造体5bの構造にも適用することができる。
上部構造体5aは、表面側部材6とベース部(台座部)7とを有しており、ベース部7上に表面側部材6が配置されて支持されている。表面側部材6の上面(表面)が、上部構造体5aの上面(表面)を構成し、従って、ステージ2の上面(表面)の一部を構成している。
表面側部材6は、好ましくは多孔質体(多孔質材料)からなる。多孔質体は、多数の微細な気孔(すなわち細孔)を有している。使用する多孔質体としては、多孔質カーボン、多孔質セラミックスまたは多孔質金属などを例示できる。また、表面側部材6は、板状の部材とすることができる。このため、多孔質板(多孔質体からなる板状の部材)を表面側部材6として好適に用いることができ、その場合、基板3を浮上させるためのガスが、多孔質板が有する多数の細孔を通って、多孔質板の上面から噴出することができるようになっている。この場合、多孔質板の細孔が、上部構造体5aの上面の上述した「微細な孔」に対応する。
ベース部7は、金属材料により形成することができ、好ましくは、アルミニウムまたはアルミニウム合金により形成することができる。ベース部7は、例えば、板状の部材(金属板)を加工したものを用いることができる。また、定盤4は、平坦な上面を有しており、定盤4の上面上に、上部構造体5a,5bおよび冷却機構8が配置されている。上部構造体5a,5bのそれぞれの外形形状は、例えば、略直方体とすることができる。
上部構造体5aは、上部構造体5aの上面(表面側部材6)から基板浮上用ガスを噴出するための構造を含んでおり、具体的には以下のような構造を含んでいる。
図7に示されるように、上部構造体5aは、ベース部7および表面側部材6に加えて、更に、ベース部7と表面側部材6との間に配置された中間板10を有している。中間板10は、ベース部7よりも薄い板状の部材とすることができ、例えば、金属材料(アルミニウムなど)により形成することができる。上部構造体5aにおいて、ベース部7上に接着層(接着材)11bを介して中間板10が接着されて固定され、また、ベース部7上に接着層(接着材)11aを介して表面側部材6が接着されて固定されている。上部構造体5aにおいて、中間板10は、ベース部7と表面側部材6との間に配置されており、表面側部材6と中間板10との間には、空間(加圧空間)12aが設けられ、ベース部7と中間板10との間には、空間(減圧空間)12bが設けられている。空間12aは、中間板10と表面側部材6と接着層11aとによって囲まれおり、また、空間12bは、ベース部7と中間板10と接着層11bとによって囲まれている。
中間板10には、複数(多数)の貫通孔13bが設けられており、また、表面側部材6にも、中間板10の貫通孔13bと整合する位置に、複数(多数)の貫通孔13aが設けられている。表面側部材6の下面における各貫通孔13a周囲と、中間板10の上面における各貫通孔13bの周囲とは、環状の接着層11cを介して接着されている。このため、表面側部材6の各貫通孔13aと中間板10の各貫通孔13bとは、環状の接着層11c内の空間を介してつながっている。このため、多孔質体(多孔質板)からなる表面側部材6は、多孔質体自身が有する細孔に加えて、機械的に形成した複数(多数)の貫通孔13aも更に有している。加工性を考慮すると、好ましくは、貫通孔13a(直径)は、多孔質体の細孔(直径)よりも大きい。
空間12aには、ベース部7に設けられた貫通孔(図示せず)などを介して加圧ガスが導入され、空間12aに導入された加圧ガスが、表面側部材6の複数の微細な孔(多孔質体を構成する細孔)を通って表面側部材6の上面から噴出し、噴出するガスによって基板3を浮上させるようになっている。この表面側部材6の上面から噴出するガスを、図7では上向きの矢印として模式的に示してある。表面側部材6の上面から噴出するガスは、例えば、窒素ガスに代表される不活性ガスを用いることができる。そして、空間12bは、ベース部7に設けられた貫通孔(図示せず)などを介して減圧され、それによって、表面側部材6上のガスを、表面側部材6の貫通孔13aと、環状の接着層11c内の空間と、中間板10の貫通孔13bとを介して、空間12bに吸引するようになっている。図7では、表面側部材6の上面(貫通孔13a)から吸引するガスを、下向きの矢印で模式的に示してある。
このため、表面側部材6の微細な孔(ここでは多孔質体を構成する細孔)からガスを噴出して基板3を浮上させつつ、表面側部材6の貫通孔13aから表面側部材6上のガスを吸引して基板3を吸引している。このため、表面側部材6からのガスの噴出とガスの吸引とを調整することにより、浮上する基板3の高さ位置を高精度で制御することができる。
冷却機構8は、冷却用の液体(冷却液)を流すための流路(通路、配管)9を有している。流路9は、冷却機構8内に設けられている。このため、冷却機構8の流路9は、上部構造体5aと上部構造体5bとの間に配置されており、すなわち、上部構造体5a,5bの互いに対向する側面間に配置されている。別の見方をすると、流路9は、上部構造体5aの側面(上部構造体5bに対向する側の側面)上に配置されており、また、上部構造体5bの側面(上部構造体5aに対向する側の側面)上に配置されている。なお、上部構造体5a,5bの互いに対向する側面は、ステージ2の上面および裏面に交差する側面である。冷却機構8は、上部構造体5aまたは上部構造体5bにネジなどを用いて取り付けられている。
冷却機構8内の流路9は、Y方向に延在しており、従って、X方向に隣り合う上部構造体5aと上部構造体5bとの間において、Y方向に延在している。冷却機構8は、熱伝導率が高い材料かなることが好ましく、具体的には金属材料からなることが好ましい。流路9を流れる冷却液による腐食や変質ができるだけ生じないようにする観点で、冷却機構8の材料として、ステンレス鋼(SUS)を好適に用いることができる。
冷却機構8は、例えば板状の外形を有している。このため、冷却機構8は、板状の金属部材(金属板)を加工することにより形成することができる。例えば、金属板に対して穴あけと穴埋めとを施すことにより、流路9を有する冷却機構8を作製することができる。流路9の断面形状(流路9の延在方向に略垂直な断面形状)は、例えば円形状とすることができる。流路9は、冷却液を流すことができる空間(冷却液用の通路)であり、冷却機構8は、そのような流路9が設けられた金属部材(例えば金属板)により構成することができる。
冷却機構8が有する流路9の構成を更に具体的に説明すると、流路9は、複数の流路部(通路部)9a,9b,9cにより構成されており、各流路部9a,9b,9cは、冷却機構8が有する流路9の一部である。
流路部9aは、冷却機構8の上部に設けられており、上部構造体5aと上部構造体5bとの間において、Y方向に延在している。流路部9bは、Y方向に延在する流路部9aの一方の端部に連結し、かつ、その端部から下方に(Z方向に)延在している。また、流路部9cは、Y方向に延在する流路部9aの他方の端部に連結し、かつ、その端部から下方(Z方向)に延在している。ここで、Z方向は、上下方向であり、従って、Z方向は、X方向およびY方向の両者に直交する方向である。
流路部9a,9b,9cは、冷却機構8内(従って上部構造体5aと上部構造体5bとの間)に配置されており、流路部9b,9cは、流路部9aよりも低い位置にある。流路部9bは、連結部(継手)14aを介して、冷却機構8外に設けられている冷却液供給用の配管15aに接続され、また、流路部9cは、連結部(継手)14bを介して、冷却機構8外に設けられている冷却液排出用の配管15bに接続されている。配管15aは、定盤4に設けられた開口部4aを通るように配置することができ、配管15bは、定盤4に設けられた開口部4bを通るように配置することができる。冷却液供給用の配管15aから冷却機構8に供給された冷却液は、流路部9b、流路部9aおよび流路部9cを順に流れ、冷却機構8から冷却液排出用の配管15bに排出される。
レーザ光20aは、基板3(より特定的には基板3上に形成されているアモルファスシリコン膜3a)に照射されるが、もしも基板3およびアモルファスシリコン膜3aが無ければ、レーザ光20aは、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の領域(すなわち冷却機構8)に照射される。すなわち、レーザ光20aは、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の領域に向かって進行している。このため、基板3(アモルファスシリコン膜3a)におけるレーザ光照射領域20b(レーザ光20aが照射される領域)は、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の領域の上方(すなわち冷却機構8の上方)に位置しており、平面視において、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の領域(すなわち冷却機構8)と重なっている。
基板3(アモルファスシリコン膜3a)に対するレーザ処理を行う際には、冷却機構8の流路9には、液体(冷却液)が流されている。すなわち、流路9の中を液体(冷却液)を流動させることにより、ステージ2を冷却している。つまり、冷却機構8の流路9に冷却液を流しつつ、ステージ2上を浮上しながら水平方向(X方向)に移動する基板3(より特定的には基板3上に形成されているアモルファスシリコン膜3a)に対してレーザ光20aを照射する。冷却機構8の流路9を流れる(流動する)液体は、ステージ2を冷却する機能を有しており、特に、冷却機構8と冷却機構8に隣接する上部構造体5a,5bを冷却する機能を有している。冷却機構8の流路9を流れる液体(冷却液)としては、例えば水を好適に用いることができる。
<主要な特徴と効果について>
次に、本実施の形態のレーザ処理装置の主要な特徴と効果について説明する。
上記図4および図5に示される第2検討例のレーザ処理装置の場合は、ステージ202に冷却機構を設けていないため、上記「検討の経緯」で説明したように、基板加熱領域228からの熱伝導に起因してステージ202が局所的に変形する懸念がある。ステージ202が変形してしまうと、ステージ202上に浮上する基板203の高さ位置が変わることで、基板203(アモルファスシリコン膜203a)に対するレーザ処理の条件が変動してしまう虞がある。
それに対して、本実施の形態では、レーザ処理装置1のステージ2は、冷却機構8を有しているため、ステージ2上に浮上しながら移動する基板3(アモルファスシリコン膜3a)にレーザ光を照射した際に、ステージ2を冷却することができる。このため、基板加熱領域28からの熱伝導に起因してステージ2が局所的に加熱されて変形してしまうのを抑制または防止することができる。
すなわち、本実施の形態のレーザ処理装置1の場合も、ステージ2上に浮上する基板3(アモルファスシリコン膜3a)にレーザ光20aが照射されることにより、基板3およびその上のアモルファスシリコン膜3aは、レーザ光20aが照射される領域およびその近傍(以下、基板加熱領域28と称する)が局所的に加熱される。ステージ2上に浮上した基板3を水平方向に移動させながらレーザ光20aを照射するため、基板3およびその上のアモルファスシリコン膜3aにおいて、基板加熱領域28は、基板3の移動とともに移動する。しかしながら、ステージ2は固定されているため、ステージ2から見ると基板加熱領域28の位置は移動しない。このため、基板3に対するレーザ処理を行っている間、ステージ2における基板加熱領域28の下方に位置する領域は固定されていることになる。従って、基板3に対するレーザ処理を行っている間、ステージ2において、基板加熱領域28の下方に位置する領域とその近傍では、基板加熱領域28からから伝わる熱で継続的に加熱されることになるため、基板加熱領域28から伝わる熱が蓄積されてしまい、局所的に加熱されて局所的な温度上昇が発生することが懸念される。
しかしながら、本実施の形態のレーザ処理装置1の場合は、ステージ2に冷却機構8を設けていることで、基板加熱領域28からステージ2に熱が伝わっても、基板加熱領域28からの熱伝導に起因してステージ2に局所的な温度上昇が生じてしまうのを抑制することができ、ステージ2が熱歪によって変形してしまうのを抑制または防止することができる。ステージ2が熱歪によって変形してしまうのを抑制または防止できることで、ステージ2上を浮上しながら移動する基板3の高さ位置が変動するのを抑制または防止することができるため、基板3(アモルファスシリコン膜3a)に対するレーザ処理の条件が変動してしまうのを抑制または防止することができる。これにより、レーザ処理によって基板3上に形成されたアモルファスシリコン膜3aを多結晶シリコン膜に変えた場合の、その多結晶シリコン膜の特性の変動を抑制または防止することができる。例えば、1つの基板3に形成されている多結晶シリコン膜の特性の変動や、複数の基板3に形成されている多結晶シリコン膜同士の特性の変動を抑制または防止することができる。
また、本実施の形態では、レーザ処理装置1のステージ2は、冷却機構8を有しているが、水冷方式(液冷方式)の冷却機構を採用している。なお、冷却液(冷却用の液体)を用いて冷却する冷却機構を水冷方式の冷却機構と称し、冷却液として水を用いる場合だけでなく、水以外の冷却液を用いる場合も、水冷方式の冷却機構に含むものとする。但し、冷却機構8の流路9を流れる冷却液として水を用いた場合は、レーザ処理装置の構造を簡略化することができ、また、レーザ処理に伴うコストの低減などの点で有利である。
水冷方式は、冷却効率が高い。レーザ処理装置1のステージ2が有する冷却機構8として水冷方式を用いたことで、ステージ2を効率的に冷却することができるため、基板加熱領域28からの熱伝導に起因してステージ2に局所的な温度上昇が生じてしまうのを、効率的に抑制することができ、ステージ2が熱歪によって局所的に変形してしまうのを効率的に抑制または防止することができる。
また、本実施の形態とは異なり、上部構造体5aと上部構造体5bとが互いに接して一体化している構成も可能である。しかしながら、この場合、基板3(アモルファスシリコン膜3a)におけるレーザ光照射領域の直下にも、従って基板加熱領域28の直下にも、ステージの上部構造体が存在することになるため、基板加熱領域28から上部構造体に熱が伝わりやすくなってしまう。このため、基板加熱領域28の直下に存在する上部構造体を構成する表面側部材6が、基板加熱領域28からの熱伝導に起因して変形しやすくなることが懸念される。
それに対して、本実施の形態では、上部構造体5aと上部構造体5bとを所定の間隔で離間させ、レーザ光20a(20)の焦点位置が、平面視において、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間(領域)に重なるようにしている。別の見方をすると、基板3(アモルファスシリコン膜3a)におけるレーザ光照射領域が、平面視において、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の隙間(領域)に重なるようにしている。これにより、基板3(アモルファスシリコン膜3a)に対するレーザ処理を行っている間に、基板加熱領域28から上部構造体5a,5b(特に上部構造体5a,5bの表面側部材6)に熱が伝わりにくくすることができる。すなわち、基板3(アモルファスシリコン膜3a)におけるレーザ光照射領域の直下には、上部構造体(5a,5b)が存在しなくなるため、基板加熱領域28から上部構造体(5a,5b)に熱が伝わりにくくなり、上部構造体(5a,5b)を構成する表面側部材6が、基板加熱領域28からの熱伝導に起因して変形するリスクを低減することができる。これにより、ステージ2上を浮上しながら移動する基板3の高さ位置が変動するリスクを低減することができる。
更に、本実施の形態では、上部構造体5aと上部構造体5bとの間に冷却機構8を配置しており、従って、上部構造体5aと上部構造体5bとの間に、液体(冷却液)を流すための流路9が配置されている。上部構造体5aと上部構造体5bとの間の領域は、基板3(アモルファスシリコン膜3a)におけるレーザ光照射領域の下方に位置しているため、基板加熱領域28から熱が伝わりやすい領域である。上部構造体5aと上部構造体5bとの間に冷却機構8(流路9)を配置したことで、基板加熱領域28から熱が伝わりやすい位置に冷却機構8(流路9)が配置されることになる。これにより、基板加熱領域28からステージ2へ伝わる熱を、冷却機構8によって、すなわち冷却機構8の流路9を流れる冷却液によって、効率的に冷却することができる。このため、基板加熱領域28からの熱伝導に起因してステージ2に局所的な温度上昇が生じてしまうのを、より的確に抑制することができ、ステージ2が熱歪によって変形してしまうのをより的確に抑制または防止することができる。
このように、本実施の形態では、上部構造体5aと上部構造体5bとをX方向に離間させて、上部構造体5aと上部構造体5bとの間に冷却機構8(流路9)を配置し、レーザ光20aの焦点位置(基板3におけるレーザ光照射領域)が、平面視において、上部構造体5aと上部構造体5bとの間の領域(冷却機構8)に重なるようにしている。これにより、基板加熱領域28から熱が伝わりやすい領域である、基板3のレーザ光照射領域の直下の領域には、上部構造体5a,5bではなく冷却機構8(流路9)が存在することになるため、ステージ2(特に表面側部材6)が熱歪によって変形してしまうのを、より的確に抑制または防止することができる。従って、ステージ2上を浮上しながら移動する基板3の高さ位置が変動するのをより的確に抑制または防止することができる。
また、冷却機構8の流路9は、上部構造体5aと上部構造体5bとの間において、Y方向に延在しており、すなわち、Y方向に沿って配置されている。このY方向は、基板3(アモルファスシリコン膜3a)に照射されるレーザ光20aの長軸方向である。すなわち、流路9は、上部構造体5aと上部構造体5bとの間において、レーザ光20a(レーザ光照射領域20b)の長軸方向に沿って配置されている。これにより、基板加熱領域28からステージ2へ伝わる熱を、流路9を流れる冷却液によってより効率的に冷却することができるため、ステージ2が熱歪によって変形してしまうのをより的確に抑制または防止することができる。これは、レーザ光20aは、Y方向を長軸方向とするラインビーム形状に成形されているため、基板加熱領域28もY方向に延在しているからである。Y方向に延在する基板加熱領域28の下方に、Y方向に沿うように流路9が配置されていることで、基板加熱領域28からステージ2に伝わる熱を、流路9を流れる冷却液によって効率的に冷却することができる。
また、上述のように、冷却機構8の流路9は、流路部9a,9b,9cにより構成されているが、流路部9a,9b,9cのうち、主として流路部9aが、基板加熱領域28からの熱伝導に起因してステージ2が変形するのを効率的に抑制するように機能する。なぜなら、流路部9aは、上部構造体5aと上部構造体5bとの間において、レーザ光20aの長軸方向(ここではY方向)に沿うように、冷却機構8の上部に配置されているため、基板加熱領域28からステージ2へ伝わる熱を、流路部9aを流れる冷却液によって効率的に冷却することができるからである。冷却機構8の流路9が流路部9aを有していることにより、ステージ2が熱歪によって変形してしまうのを効率的に抑制または防止することができる。流路部9a,9b,9cのうち、流路部9bは、流路部9aへの冷却液の供給経路として用いられ、流路部9cは、流路部9aからの冷却液の排出経路として用いられる。
また、上部構造体5aと上部構造体5bとの間に配置された冷却機構8の上面は、上部構造体5a,5bの各上面(すなわち上部構造体5a,5bをそれぞれ構成する表面側部材6の上面)よりも、低いことが好ましい。もしも、冷却機構8の上面が、上部構造体5a,5bの各上面よりも高い位置にあると、上部構造体5a,5bの各上面から冷却機構8の一部が突出した状態になるため、ステージ2上を浮上しながら水平方向に移動する基板3の動きを、冷却機構8が阻害してしまう虞がある。このため、冷却機構8の上面の高さ位置を、上部構造体5a,5bの各上面と同じかそれよりも低くすることで、ステージ2上を浮上しながら水平方向に移動する基板3の動きを、冷却機構8が阻害しないようすることができる。そして、冷却機構8の上面の高さ位置を、上部構造体5a,5bの各上面よりも低くすれば、上部構造体5a,5b(表面側部材6)の上面と基板3の下面との間の間隔を変えずに、基板加熱領域28から冷却機構8の上面までの距離を大きくすることができる。これにより、基板加熱領域28の下方に位置する冷却機構8の上面の高さ位置を低くした分、基板加熱領域28からステージ2に熱が伝わりにくくなるため、ステージ2が、基板加熱領域28からの熱伝導に起因して変形するリスクを低減することができる。
また、ステージ2が有する複数の上部構造体5は、上部構造体5a,5bと、それ以外の上部構造体5cとを含んでいる。図2の場合は、X方向に隣り合う上部構造体5a,5bをX方向に挟むように、上部構造体5cが配置されており、上部構造体5cと上部構造体5aとがX方向に隣り合い、上部構造体5aと上部構造体5bとがX方向に隣り合い、上部構造体5bと上部構造体5cとがX方向に隣り合っている。
X方向に隣り合う上部構造体5a,5b間には、上述した冷却機構8(または後述の冷却機構8a,8b)が配置されている。しかしながら、隣り合う上部構造体5c,5a間と、隣り合う上部構造体5b,5c間とには、上記冷却機構8(または後述の冷却機構8a,8b)に相当するものを設ける場合と設けない場合とがあり得る。なぜなら、上部構造体5c,5aの間の領域と、上部構造体5b,5c間の領域とは、平面視において、レーザ光照射領域20bからある程度離れているからである。このため、上部構造体5a,5c間と上部構造体5b,5c間とに冷却機構8(または冷却機構8a,8b)を設けない場合であっても、上部構造体5a,5b間に冷却機構8(または冷却機構8a,8b)を設ければ、基板加熱領域28からステージ2へ伝わる熱を、上部構造体5a,5b間に配置された冷却機構8(8a,8b)の流路9を流れる冷却液によって効率的に冷却することができる。これにより、ステージ2が熱歪によって変形してしまうのを抑制または防止することができる。上部構造体5a,5c間と上部構造体5b,5c間とに冷却機構8(または冷却機構8a,8b)を設けない場合は、ステージ2の構造をより単純にできるので、ステージ2を組み立てやすくなる。また、隣り合う上部構造体5c間の領域は、平面視において、レーザ光照射領域20bから更に離れているため、隣り合う上部構造体5c間には、冷却機構8(または冷却機構8a,8b)を設けなくともよい。
上部構造体5a,5b,5cのそれぞれは、上面(表面)からガス(気体)を噴出し、噴出するガスによって基板3を浮上させるように作用する。但し、上部構造体5cのガスを噴出する機構は、上部構造体5a,5bと相違する場合もあり得る。例えば、上述したように、上部構造体5a,5bについては、上部構造体5a,5bを構成する表面側部材6の微細な孔(多孔質体を構成する細孔)からガスを噴出して基板3を浮上させつつ、表面側部材6の貫通孔13aから表面側部材6上のガスを吸引して基板3を吸引している。すなわち、上部構造体5a,5bでは、上面からのガスの噴出とガスの吸引との両方を行い、そのバランスを調整している。それに対して、上部構造体5cについては、上部構造体5cを構成する表面側部材(表面側部材6に相当するもの)に設けられた複数の貫通孔からガスを噴出するが、表面側部材上のガスを吸引する機構は上部構造体5cには設けていない。このため、上部構造体5cを構成する表面側部材は、多孔質体でなくともよく、例えば複数(多数)の貫通孔を形成した金属板を用いることができる。
ステージ2上に浮上する基板3の高さ位置を制御しやすいのは、上面からガスの噴出を行うがガスの吸引は行わない上部構造体5cではなく、上面からガスの噴出とガスの吸引との両方を行うことができる上部構造体5a,5bである。一方、ステージ2上に浮上する基板3の高さ位置を正確に制御することが望まれるのは、レーザ光照射領域20bに近い領域である。このため、レーザ光照射領域20bに近い上部構造体5a,5bについては、上面からガスの噴出とガスの吸引との両方を行うことができるようにすることで、レーザ光20aが照射される位置での基板3の高さ位置をより的確に制御して、レーザ処理条件を制御しやすくする。一方、レーザ光20aが照射される位置から遠い上部構造体5cについては、上面からガスの噴出を行うがガスの吸引は行わないようにすることで、上部構造体5cの構造を単純にすることができる。これにより、上部構造体5cを準備しやすくなるため、レーザ処理装置の製造コストを低減できる。
<表示装置の一例>
本実施の形態のレーザ処理装置1は、例えば、表示装置の製造工程に好適に用いることができる。図10および図11を参照して、表示装置の一例について説明する。
図10は、液晶表示装置としての大画面テレビジョンを示す外観図である。図10に示される大画面テレビジョン31は、本実施の形態における表示装置の一例である。一方、図11は、液晶表示装置としてのモバイル通信機器を示す外観図である。図11に示されるモバイル通信機器としてのスマートフォン32は、本実施の形態における表示装置の他の一例である。
このように本実施の形態における表示装置としては、大きなサイズの大画面テレビジョン31から小さなサイズのスマートフォン32といった幅広いサイズの表示装置が対象となっている。また、本実施の形態における表示装置は、液晶表示装置に限定されるものではなく、例えば、有機EL表示装置も対象となっている。
<表示装置の製造工程>
次に、本実施の形態における表示装置の製造工程の概要について、液晶表示装置の製造工程を例に挙げて、図12を参照しながら簡単に説明する。図12は、本実施の形態における表示装置を製造する製造工程の流れを示すフローチャートである。
まず、TFTガラス基板とカラーフィルタガラス基板のそれぞれを形成する。
具体的には、ガラス基板を用意し、このガラス基板に対して、洗浄技術、成膜技術、フォトリソグラフィ技術、エッチング技術およびアッシング技術を繰り返し使用することにより、このガラス基板に薄膜トランジスタを形成する。この薄膜トランジスタは、表示装置の制御を行うための薄膜トランジスタであり、後述の薄膜トランジスタ46はこれに対応している。薄膜トランジスタ形成工程は、上記レーザ処理装置1を用いたレーザ処理(レーザアニール処理)も含んでおり、このガラス基板が上記基板3および後述の基板50に対応する。このようにして、ガラス基板の表面に薄膜トランジスタを形成したTFTガラス基板を得ることができる(図12のステップS1)。
続いて、TFTガラス基板の表面に、例えば、ポリイミド膜からなる配向膜を塗布する(図12のステップS2)。その後、配向膜を形成したTFTガラス基板の表面をラビングする(図12のステップS3)。その後、TFTガラス基板の表面にシール剤を塗布する(図12のステップS4)。
一方、他のガラス基板を用意し、このガラス基板に対して、ブラックマトリックスを形成した後、顔料分散法、染色法、電着法あるいは印刷法などを使用することにより、ガラス基板にカラーフィルタを形成する。これにより、ガラス基板の表面にカラーフィルタを形成したカラーフィルタガラス基板を得ることができる(図12のステップS5)。
続いて、カラーフィルタガラス基板の表面に、例えば、ポリイミド膜からなる配向膜を塗布する(図12のステップS6)。その後、配向膜を形成したカラーフィルタガラス基板の表面をラビングする(図12のステップS7)。その後、カラーフィルタガラス基板の表面にスペーサを塗布する(図12のステップS8)。
次に、シール剤を塗布したTFTガラス基板と、スペーサを塗布したカラーフィルタガラス基板とを貼り合せた後(図12のステップS9)、貼り合せたTFTガラス基板とカラーフィルタガラス基板に対してスクライブ(分断)する(図12のステップS10)。これにより、貼り合せたTFTガラス基板とカラーフィルタガラス基板は、個々の液晶表示装置のサイズに切断されることになる。
その後、シール剤とスペーサによって確保されているTFTガラス基板とカラーフィルタガラス基板との間の隙間に液晶を注入する(図12のステップS11)。そして、液晶を注入した隙間(空間)を封止する(図12のステップS12)。
続いて、貼り合せたTFTガラス基板とカラーフィルタガラス基板を挟むように一対の偏光板を貼り付ける(図12のステップS13)。このようにして液晶ディスプレイパネルを製造することができる。そして、製造された液晶ディスプレイパネルに対して、液晶ディスプレイパネルを駆動するための駆動回路を圧着した後(図12のステップS14)、さらに、液晶ディスプレイパネルにバックライトを着装する(図12のステップS15)。このようにして、液晶表示装置が完成する(図12のステップS16)。以上のようにして、本実施の形態における表示装置を製造できる。
<表示装置の詳細な構成>
続いて、本実施の形態における表示装置の詳細な構成について説明する。図13は、本実施の形態における表示装置の構成例を示す図である。
図13に示される構成例では、表示装置は、複数の画素40がマトリクス状(行列状)に配置された画素部(画素領域)41を有している。表示装置は、更に、画素部41を構成する複数の画素40を駆動する回路として、走査線駆動回路42と信号線駆動回路43とを有している。画素40は、走査線駆動回路42と電気的に接続された配線44(走査線)によって供給される走査信号によって、行ごとに選択状態か非選択状態かが決定される。また、走査信号によって選択されている画素40は、信号線駆動回路43と電気的に接続された配線45(信号線)によって、画像信号(映像信号)が供給される。
ここで、図13においては、複数の画素がマトリクス状に配置されているストライプ配置の例を示しているが、これに限定されるものではない。
次に、図14は、図13に示す画素の構成例を示す図である。図14に示されるように、画素40には、スイッチング素子として機能する薄膜トランジスタ46と、表示部として機能する液晶素子47とが設けられている。例えば、液晶素子47は、一対の電極(画素電極と対向電極)の間に液晶材料を挟んだ構造を有している。
薄膜トランジスタ46においては、ゲート電極が配線44(走査線)と電気的に接続されている。一方、薄膜トランジスタ46のソース電極およびドレイン電極のいずれか一方が、配線45A(信号線)と電気的に接続され、他方が液晶素子47の画素電極と電気的に接続されている。
このように表示装置を構成するパネルは、複数の画素領域(複数の画素40)を有し、複数の画素領域のそれぞれには、薄膜トランジスタ(46)が形成されている。薄膜トランジスタ(46)は、画素40を制御するためのスイッチング用トランジスタであり、従って、表示装置の制御を行うための薄膜トランジスタとみなすことができる。
<薄膜トランジスタのデバイス構造>
続いて、薄膜トランジスタ46のデバイス構造について、図15を参照しながら説明する。図15は、薄膜トランジスタのデバイス構造を示す断面図である。
図15に示される薄膜トランジスタ46は、トップゲート型構造を有している。図15に示されるように、薄膜トランジスタ46は、絶縁表面を有する基板50(例えばガラス基板)上に形成されたチャネル膜51を有している。チャネル膜51は、多結晶の半導体膜である多結晶シリコン膜からなる。そして、基板50上に、チャネル膜51を覆うように、例えば酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜52が形成されており、ゲート絶縁膜52上に、例えば金属材料からなるゲート電極53が形成されている。ゲート絶縁膜52上に、ゲート電極53を覆うように、層間絶縁膜54が形成されており、層間絶縁膜54上に、例えば金属材料からなるソース電極55aおよびドレイン電極55bが形成されている。ソース電極55aおよびドレイン電極55bのそれぞれは、層間絶縁膜54およびゲート絶縁膜52に設けられたスルーホールを通じて、チャネル膜51と接している。層間絶縁膜54、ソース電極55aおよびドレイン電極55bを覆うように、例えば酸化シリコン膜からなる保護膜56が形成されている。以上のようにして、薄膜トランジスタ46が形成されている。チャネル膜51は、薄膜トランジスタ46の構成要素である。
また、ここでは、薄膜トランジスタ46がトップゲート型構造を有する場合について説明したが、他の形態として、薄膜トランジスタ46は、ボトムゲート型構造を有していてもよい。
<薄膜トランジスタの製造工程>
次に、薄膜トランジスタ(46)の製造工程について説明する。図16は、薄膜トランジスタの製造工程の流れを示すフローチャートである。
まず、例えば、ガラスからなる基板であるガラス基板(上記基板3,50に対応)上にチャネル膜(51)を形成する(図16のステップS21)。次に、ガラス基板(3,50)上に、チャネル膜(51)を覆うように、ゲート絶縁膜(52)を形成する(図16のステップS22)。次に、ゲート絶縁膜(52)上にゲート電極(53)を形成する(図16のステップS23)。ゲート電極(53)の形成後、ゲート電極(53)で覆われない部分のチャネル膜(51)に、ソース・ドレイン用の不純物を注入することもできる。次に、ゲート絶縁膜(52)上に、ゲート電極(53)を覆うように、層間絶縁膜(54)を形成する(図16のステップS24)。次に、層間絶縁膜(54)およびゲート絶縁膜(52)にスルーホールを形成してから、ソース電極(55a)およびドレイン電極(55b)を形成する(図16のステップS24)。次に、層間絶縁膜(54)上に、ソース電極(55a)およびドレイン電極(55b)を覆うように、保護膜(56)を形成する(図16のステップS25)。
以上のようにして、薄膜トランジスタを製造することができる。
<チャネル膜の形成工程>
ここで、チャネル膜(51)の形成工程の詳細について説明する。図17は、チャネル膜の形成工程の流れを説明するフローチャートである。
図17に示されるように、チャネル膜の形成工程においては、まず、ガラス基板(3,50)上にアモルファスシリコン膜を形成する(図17のステップS31)。このアモルファスシリコン膜は、上記アモルファスシリコン膜3aに相当するものである。その後、アモルファスシリコン膜に対してレーザ光(20a)を照射して、レーザアニール処理を施す(図17のステップS32)。この際、上記レーザ処理装置1を用いる。これにより、アモルファスシリコン膜は加熱され、その結果、アモルファスシリコン膜から多結晶シリコン膜が形成される(図17のステップS33)。すなわち、アモルファスシリコン膜に対してレーザアニール処理が施されることにより、アモルファスシリコン膜が多結晶シリコン膜に変化(変質)する。以上のようにして、多結晶シリコン膜からなるチャネル膜(51)を形成することができる。また、レーザアニール処理の後、多結晶シリコン膜からなるチャネル膜(51)は、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術などを用いて所定の形状にパターニングすることもできる。
チャネル膜は、電子の通り道となる機能を有することから、チャネル膜の特性が薄膜トランジスタの性能を左右することになる。アモルファスシリコンに比べて多結晶シリコンは、移動度が高いため、チャネル膜を多結晶シリコン膜で構成することより、薄膜トランジスタの性能を高めることができる。このため、本実施の形態では、チャネル膜を多結晶シリコン膜から構成している。具体的には、上述したように、アモルファスシリコン膜を形成した後、アモルファスシリコン膜に対してレーザアニール処理を施すことにより、アモルファスシリコン膜を多結晶シリコン膜に変化させている。従って、チャネル膜を多結晶シリコン膜から構成するためには、レーザアニール処理(加熱処理)が必要であり、このレーザアニール処理を実施するためには、レーザ処理装置が必要となる。本実施の形態では、このレーザアニール処理を実施するために、上述したレーザ処理装置1を用いている。
本実施の形態のレーザ処理装置1を用いた場合、ステージ2上に基板3を浮上させながらその基板3を水平方向に移動(搬送)させ、移動する基板3(より特定的には基板3上のアモルファスシリコン膜3a)に対してレーザ光20aを照射することで、基板3上に形成されているアモルファスシリコン膜3aを多結晶シリコン膜に変化させる。この多結晶シリコン膜が、上述したチャネル膜(51)に対応している。ステージ2を移動させる必要がないため、複数の基板にレーザ処理を施す際に、1枚の基板あたりの処理時間を短くすることができ、スループットを向上させることができる。
また、本実施の形態のレーザ処理装置1では、上述したような工夫を施したことにより、レーザ処理の際に、レーザ処理装置1のステージ2が熱歪によって変形してしまうのを抑制または防止することができるため、ステージ2上を浮上しながら移動する基板3の高さ位置が変動するのを抑制または防止することができる。このため、基板3(アモルファスシリコン膜3a)に対するレーザ処理の条件が変動してしまうのを抑制または防止することができる。これにより、レーザ処理によって基板3上に形成されたアモルファスシリコン膜3aを多結晶シリコン膜に変えた場合の、その多結晶シリコン膜の特性の変動を抑制または防止することができる。このため、多結晶シリコン膜からなるチャネル膜(51)の特性が変動するのを抑制または防止することができ、それゆえ、薄膜トランジスタ(46)の特性が変動するのを抑制または防止することができる。従って、薄膜トランジスタ(46)を有する表示装置の性能や信頼性を向上させることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態2のレーザ処理装置1について説明する。図18は、本実施の形態2のレーザ処理装置1の要部平面図であり、本実施の形態2のレーザ処理装置1が有するステージ2の一部の平面図が示されており、上記図6に対応している。図19~図22は、本実施の形態のレーザ処理装置1の要部断面図であり、図23は、本実施の形態のレーザ処理装置1のステージ2が有する冷却機構8aの斜視図である。図19は、図18に示されるB1-B1線の位置での断面図とB5-B5線の位置での断面図とにほぼ対応し、図20は、図18に示されるB2-B2線の位置での断面図とB4-B4線の位置での断面図とにほぼ対応し、図21は、図18に示されるB3-B3線の位置での断面図にほぼ対応している。図22は、図18に示されるB6-B6線の位置での断面図にほぼ対応している。図18に示されるB7-B7線の位置での断面図は、図22(B6-B6断面図)において、符号「8a1(8a)」を符号「8b1(8b)」に置換したものにほぼ対応している。また、図18においては、レーザ光照射領域20bは図示していないが、図18の場合も上記図6の場合と同じ位置にレーザ光照射領域20bが存在している。また、図18においては、冷却機構8a,8b内にそれぞれ設けられた流路9を点線で示してある。
本実施の形態2のレーザ処理装置1が上記実施の形態1のレーザ処理装置1と相違しているのは、ステージ2において、上記冷却機構8の代わりに冷却機構8a,8bを用いたことと、センサ61を追加したことである。
上記本実施の形態1のレーザ処理装置1のステージ2においては、冷却機構8は、X方向に隣り合う上部構造体5a(の側面)と上部構造体5b(の側面)との間に配置されており、冷却液が流れる流路9は、X方向に隣り合う上部構造体5a(の側面)と上部構造体5b(の側面)との間に配置されており、上部構造体5aと上部構造体5bとの間をY方向に延在していた。このため、上記実施の形態1のレーザ処理装置1の場合は、上部構造体5a,5bの下には冷却機構8は配置されておらず、すなわち、定盤4と上部構造体5a,5bとの間には冷却機構8は配置されておらず、従って、上部構造体5a,5bの下には、冷却液が流れる流路9は配置されていなかった。
それに対して、本実施の形態2のレーザ処理装置1のステージ2においては、図18~図23に示されるように、X方向に隣り合う上部構造体5a(の側面)と上部構造体5b(の側面)との間と、上部構造体5a(の下面)と定盤4(の上面)との間とに、冷却機構8aが配置されている。そして、X方向に隣り合う上部構造体5a(の側面)と上部構造体5b(の側面)との間と、上部構造体5b(の下面)と定盤4(の上面)との間とに、冷却機構8bが配置されている。
このため、冷却機構8aの流路9は、X方向に隣り合う上部構造体5a(の側面)と上部構造体5b(の側面)との間と、上部構造体5a(の下面)と定盤4(の上面)との間とに、配置されている。また、冷却機構8bの流路9は、X方向に隣り合う上部構造体5a(の側面)と上部構造体5b(の側面)との間と、上部構造体5b(の下面)と定盤4(の上面)との間とに、配置されている。別の見方をすると、冷却機構8aの流路9は、上部構造体5aの側面(上部構造体5bに対向する側の側面)上と、上部構造体5aの下面(裏面)上とに配置されており、また、冷却機構8bの流路9は、上部構造体5bの側面(上部構造体5aに対向する側の側面)上と、上部構造体5bの下面(裏面)上とに配置されている。
冷却機構8aのうち、上部構造体5aと上部構造体5bとの間に位置する部分を、第1部位8a1と称し、上部構造体5aと定盤4との間(すなわち上部構造体5aの下)に位置する部分を、第2部位8a2と称する。冷却機構8aの第1部位8a1と第2部位8a2とは、一体的(連続的)に形成されている。また、冷却機構8bのうち、上部構造体5aと上部構造体5bとの間に位置する部分を、第1部位8b1と称し、上部構造体5bと定盤4との間(すなわち上部構造体5bの下)に位置する部分を、第2部位8b2と称する。冷却機構8bの第1部位8b1と第2部位8b2とは、一体的(連続的)に形成されている。冷却機構8a,8bは、上記冷却機構8に相当するものであり、上記冷却機構8と同様の材料からなる。冷却機構8aと冷却機構8bとは、別々の部材として形成されている。冷却機構8aは、上部構造体5aにネジなどを用いて取り付けられており、また、冷却機構8bは、上部構造体5bにネジなどを用いて取り付けられている。図23においては、冷却機構8aの斜視図が示されているが、冷却機構8aが取り付けられた上部構造体5aを点線で示してある。
以下、図18~図23を参照しながら、本実施の形態2のレーザ処理装置のステージ2の具体的な構成について説明するが、上記実施の形態1と同様な部分については、繰り返しの説明を省略する。
本実施の形態2のレーザ処理装置のステージ2においては、X方向に隣り合う上部構造体5aと上部構造体5bとの間に、冷却機構8aの第1部位8a1と冷却機構8bの第1部位8b1とが配置されているが、冷却機構8aの第1部位8a1と冷却機構8bの第1部位8b1とは、X方向に互いに隣接している。そして、冷却機構8aの第1部位8a1と上部構造体5aとがX方向に互いに隣接し、また、冷却機構8bの第1部位8b1と上部構造体5bとがX方向に互いに隣接している。
冷却機構8a,8bのそれぞれは、冷却用の液体(冷却液)が流れる流路9を有している。冷却機構8aにおいて、流路9は、第1部位8a1と第2部位8a2とにわたって連続的に形成されている。また、冷却機構8bにおいて、流路9は、第1部位8b1と第2部位8b2とにわたって連続的に形成されている。
また、本実施の形態2においては、X方向に隣り合う上部構造体5aと上部構造体5bとの間には、冷却機構8a,8bだけでなく、センサ61も配置されている。例えば、冷却機構8aの第1部位8a1と冷却機構8bの第1部位8b1との間に、センサ61を配置可能な隙間(空間)が設けられ、その隙間にセンサ61を配置することができる。他の形態として、冷却機構8aまたは冷却機構8bにセンサ61を内蔵させることもできる。
センサ61は、ステージ2上を浮上しながら移動する基板3の高さ位置を検知(測定)するためのセンサである。例えば、センサ61から出射した光(レーザ光など)を基板3の下面で反射させ、その反射光をセンサ61で検知することで、センサ61から基板3の下面までの高さを検知することができ、それによって、基板3の高さ位置を検知することができる。この場合、センサ61は、反射型のセンサである。
上部構造体5aと上部構造体5bとの間に配置されたセンサ61の先端部(頂部、上面)は、上部構造体5a,5bの各上面(すなわち上部構造体5a,5bをそれぞれ構成する表面側部材6の上面)よりも、低いことが好ましい。これにより、ステージ2上を浮上しながら移動する基板3の動きを、センサ61が阻害せずにすみ、基板3の高さ位置をセンサ61によって的確に検知することができる。
上部構造体5aと上部構造体5bとの間において、センサ61が配置されていない領域では、冷却液が流れる流路9は、Y方向に延在させることができる。上部構造体5aと上部構造体5bとの間において、レーザ光20aの長軸方向(ここではY方向)に沿うように、冷却液が流れる流路9を配置することで、基板加熱領域28からステージ2へ伝わる熱を、冷却機構8a,8bの流路9を流れる冷却液によって効率的に冷却することができる。これにより、ステージ2が熱歪によって変形してしまうのをより的確に抑制または防止することができる。
しかしながら、上部構造体5aと上部構造体5bとの間には、センサ61も配置されているため、センサ61が配置されている領域では、流路9をY方向に延在させようとすると、センサ61が邪魔になってしまう。このため、上部構造体5aと上部構造体5bとの間において、センサ61が配置されていない領域では、流路9をY方向に延在させる一方で、センサ61が配置されている領域では、センサ61を迂回するように、流路9を配置させる必要がある。
そこで、冷却機構8aの流路9は、センサ61を避け(迂回し)、平面視においてセンサ61と重ならないように配置する。このため、冷却機構8aの流路9は、蛇行するように配置されている。具体的には、冷却機構8aの流路9を、複数の流路部9d,9e,9f,9g,9h,9i,9j,9k,9l,9m,9nにより構成している。各流路部9d,9e,9f,9g,9h,9i,9j,9k,9l,9m,9nは、冷却機構8aが有する流路9の一部である。
流路部9fおよび流路部9lは、冷却機構8aの第1部位8a1の上部に設けられており、上部構造体5aと上部構造体5bとの間において、それぞれY方向に延在している。但し、Y方向に延在する流路部9fとY方向に延在する流路部9lとは、センサ61を間に挟んでY方向に互いに離間している(図18、図22、図23参照)。このため、上部構造体5aと上部構造体5bとの間において、センサ61が配置されていない領域では、冷却液が流れる流路部9f,9lが、Y方向に延在した状態になっている。そして、センサ61を間に挟んでY方向に延在する流路部9f,9l同士を、センサ61を迂回するように、流路部9g,9h,9i,9j,9kによって連結している。
図23に示されるように、流路部9gは、Y方向に延在する流路部9fの一方の端部(流路部9lに近い側の端部)に連結し、かつ、冷却機構8aの第1部位8a1内をZ方向に延在している。流路部9hは、流路部9gの一方の端部(流路部9fに連結する側とは反対側の端部)に連結し、かつ、冷却機構8aの第2部位8a2内をX方向に延在している。流路部9iは、流路部9hの一方の端部(流路部9gに連結する側とは反対側の端部)に連結し、かつ、冷却機構8aの第2部位8a2内をY方向に延在している。流路部9jは、流路部9iの一方の端部(流路部9hに連結する側とは反対側の端部)に連結し、かつ、冷却機構8aの第2部位8a2内をX方向に延在している。流路部9kは、流路部9jの一方の端部(流路部9iに連結する側とは反対側の端部)に連結し、かつ、冷却機構8aの第1部位8a1内をZ方向に延在している。流路部9kは、Y方向に延在する流路部9lの一方の端部(流路部9fに近い側の端部)に連結している。
流路部9eは、流路部9fの他方の端部(流路部9lから遠い側の端部)に連結し、かつ、冷却機構8aの第1部位8a1内をZ方向に延在している。流路部9dは、流路部9eの一方の端部(流路部9fに連結する側とは反対側の端部)に連結し、かつ、冷却機構8aの第2部位8a2内をX方向に延在している。流路部9dは、冷却機構8a外に設けられた冷却液供給用の配管(図示せず)に接続されている。この冷却液供給用の配管は、定盤4に設けられた開口部(図示せず)を通るように配置することができる。
流路部9mは、流路部9lの他方の端部(流路部9fから遠い側の端部)に連結し、かつ、冷却機構8aの第1部位8a1内をZ方向に延在している。流路部9nは、流路部9mの一方の端部(流路部9lに連結する側とは反対側の端部)に連結し、かつ、冷却機構8aの第2部位8a2内をX方向に延在している。流路部9nは、冷却機構8a外に設けられた冷却液排出用の配管(図示せず)に接続されている。この冷却液排出用の配管は、定盤4に設けられた開口部(図示せず)を通るように配置することができる。
このため、流路部9e,9f,9g,9k,9l,9mは、冷却機構8aの第1部位8a1内(従って上部構造体5aと上部構造体5bとの間)に配置され、また、流路部9d,9h,9i,9j,9nは、冷却機構8aの第2部位8a2内(従って上部構造体5aの下)に配置されている。流路部9d,9e,9g,9h,9i,9j,9k,9m,9nは、流路部9f,9lよりも低い位置にある。
流路部9d,9e,9f,9g,9h,9i,9j,9k,9l,9m,9nのうち、主として流路部9f,9lが、基板加熱領域28からの熱伝導に起因してステージ2が変形するのを効率的に抑制するように機能する。なぜなら、流路部9f,9lは、上部構造体5aと上部構造体5bとの間において、レーザ光20aの長軸方向(ここではY方向)に沿うように、冷却機構8aの第1部位8a1の上部に配置されているため、基板加熱領域28からステージ2へ伝わる熱を、流路部9f,9lを流れる冷却液によって効率的に冷却することができるからである。冷却機構8aが有する流路9が流路部9f,9lを含んでいることにより、ステージ2が熱歪によって変形してしまうのを効率的に抑制または防止することができる。レーザ光20aの長軸方向(ここではY方向)において、流路部9fと流路部9lとの間にセンサ61が配置されているため、センサ61が邪魔になることなく、流路部9f,9lを配置することができる。
流路部9d,9e,9f,9g,9h,9i,9j,9k,9l,9m,9nのうち、流路部9g,9h,9i,9j,9kは、流路部9fと流路部9lとを連結するために用いられており、流路部9fと流路部9lとをつなぐ流路部とみなすことができる。Y方向に延在する流路部9fとY方向に延在する流路部9lとの間にセンサ61が配置されていても、流路部9fと流路部9lとを、流路部9g,9h,9i,9j,9kによって連結することができる。このため、流路部9g,9h,9i,9j,9kを間に介して、流路部9fと流路部9lとの両方に冷却液を流すことができるので、基板加熱領域28からステージ2へ伝わる熱を、流路部9f,9lを流れる冷却液によって効率的に冷却することが可能になる。
本実施の形態2とは異なり、冷却機構8aの第2部位8a2内を延在する流路部9h,9i,9jを設けずに、Z方向に延在する流路部9gとZ方向に延在する流路部9kとをY方向に延在する流路部で連結しようとした場合には、センサ61やそのセンサ61に接続される配線が邪魔になってしまう。すなわち、センサ61は、上部構造体5aと上部構造体5bとの間に配置されているため、上部構造体5aと上部構造体5bとの間に配置されている流路部だけで、流路部9fと流路部9lとを連結しようとすると、センサ61やそのセンサ61に接続される配線が邪魔になってしまう。また、センサ61を避けるために、センサ61の直下を通過するように流路部を設けることは、ステージ2全体の厚さが厚くなることにつながるため、望ましくない。
それに対して、本実施の形態2の場合は、流路部9fと流路部9lとをつなぐ流路部(9g,9h,9i,9j,9k)の一部は、冷却機構8aの第2部位8a2内(従って上部構造体5aの下)に配置されている。具体的には、冷却機構8aの第1部位8a1内(従って上部構造体5aと上部構造体5bとの間)に配置されている流路部9g,9kだけでなく、冷却機構8aの第2部位8a2内(従って上部構造体5aの下)に配置されている流路部9h,9i,9jも介して、流路部9fと流路部9lとを連結している。これにより、平面視において、センサ61と重なる位置には、冷却機構8a,8bの流路9は配置されないようにすることができる。このため、センサ61やそのセンサ61に接続される配線が邪魔になることなく、流路部9fと流路部9lとを容易かつ的確に連結することができる。これは、センサ61は上部構造体5aと上部構造体5bとの間に配置されているため、冷却機構8aの第2部位8a2内(従って上部構造体5aの下)においては、センサ61が邪魔になることなく流路9(流路部9h,9i,9j)を配置することができるからである。
また、流路部9d,9e,9f,9g,9h,9i,9j,9k,9l,9m,9nのうち、流路部9d,9eは、流路部9fへの冷却液の供給経路として用いられ、流路部9m,9nは、流路部9lからの冷却液の排出経路として用いられる。すなわち、冷却機構11外に設けられた冷却液供給用の配管(図示せず)から冷却機構8aに供給された冷却液は、流路部9d、流路部9e、流路部9f、流路部9g、流路部9h、流路部9i、流路部9j、流路部9k、流路部9l、流路部9mおよび流路部9nを順に流れ、冷却機構11外に設けられた冷却液排出用の配管(図示せず)に排出される。
冷却機構8bの構造は、冷却機構8aの構造と基本的には同じであるが、冷却機構8aと鏡面対称の構造を有している。すなわち、互いにX方向に隣接する冷却機構8aと冷却機構8bとは、互いに対向する側面を基準として(言い換えると冷却機構8a,8b間に位置しかつY方向およびZ方向に平行な平面を基準として)、鏡面対称な構造を有している。このため、冷却機構8bの流路9は、上述した流路部9d,9e,9f,9g,9h,9i,9j,9k,9l,9m,9nに相当するものにより構成されているが、ここではその繰り返しの説明は省略する。
また、本実施の形態2では、X方向に隣り合う上部構造体5aと上部構造体5bとの間に、冷却機構8a,8bが配置されている場合について説明したが、他の形態として、冷却機構8a,8bのうちの一方を省略することもできる。更に他の形態として、冷却機構8aと冷却機構8bとを一体化することもできる。
但し、本実施の形態2のように、X方向に隣り合う上部構造体5aと上部構造体5bとの間に冷却機構8a,8bを配置し、かつ、冷却機構8aと冷却機構8bとを一体化せずに別部材とした場合には、以下のような利点を得られる。すなわち、冷却機構8aと冷却機構8bとを別部材とした場合には、上部構造体5aに冷却機構8aを取り付け、また、上部構造体5bに冷却機構8bを取り付けた後に、それらを定盤4上に取り付けることができるため、ステージ2を組み立てやすくすることができる。また、冷却機構8a,8bのうちの一方を省略した場合には、上部構造体5aの上面の高さ位置と上部構造体5bの上面との高さ位置とがずれやすくなるが、それに比べると、冷却機構8a,8bの両方を用いた場合には、上部構造体5aの上面の高さ位置と上部構造体5bの上面の高さ位置とを合わせやすくなる。
(実施の形態3)
次に、上記実施の形態1,2の各種変形例について説明する。
図24~図26を参照して、レーザ処理装置1の第1変形例について説明する。図24は、第1変形例のレーザ処理装置のステージ2を示す平面図であり、図25は、第1変形例のレーザ処理装置の要部平面図であり、図26は、第1変形例のレーザ処理装置の要部断面図である。図24には、上記図3の(a)に相当する平面図が示されている。図25は、図24の一部を拡大して示した部分拡大平面図であり、上記図6に相当している。図25においては、レーザ光照射領域20bをハッチングを付して示し、冷却機構8内に設けられた流路9を点線で示してある。図26は、図25に示されるC1-C1線の位置での断面図にほぼ対応している。また、図25に示されるC2-C2線の位置での断面図、C3-C3線の位置での断面図、C4-C4線の位置での断面図、およびC5-C5線の位置での断面図は、いずれも上記図7とほぼ同様であるので、ここでは繰り返しの図示は省略する。
上記図2の場合は、上部構造体5a,5b,5cのそれぞれのY方向の寸法は、基板3のY方向の寸法と同程度かそれよりも大きく、X方向に隣り合う一対の上部構造体5a,5b上を、基板3が浮上しながらX方向に移動し、その移動する基板3(より特定的には基板3上のアモルファスシリコン膜3a)にレーザ光20aを照射していた。そして、X方向に隣り合う上部構造体5a,5b間には、上記実施の形態1で説明した冷却機構8または上記実施の形態2で説明した冷却機構8a,8bが配置されていた。
それに対して、図24~図26(第1変形例)の場合は、上部構造体5a,5b,5cのそれぞれのY方向の寸法は、基板3のY方向の寸法よりも小さい。そして、冷却機構8を挟んでX方向に隣り合う一対の上部構造体5a,5bが、Y方向に複数並んで配置されている。X方向に隣り合う上部構造体5a,5b間には、上記冷却機構8が配置されているため、一対の上部構造体5a,5bがY方向に複数並んでいることに対応して、上部構造体5a,5b間の冷却機構8も、Y方向に複数並んでいる。つまり、図24~図26の場合は、上部構造体5aと上部構造体5bとそれらの間の冷却機構8とを1組とし、それがY方向に複数組並んでいる。なお、図24~26の場合は、Y方向に4組並んでいる場合が示されているが、Y方向に並ぶ組数は、4組には限定されない。また、図24の場合は、上部構造体5a,5bだけでなく、上部構造体5a,5b以外の上部構造体5cのY方向の寸法も、基板3のY方向の寸法よりも小さいため、上部構造体5cもY方向に複数並んでいる。
上部構造体5a,5bおよび冷却機構8のそれぞれの構造は、図24~図26の場合も、上記実施の形態1で説明したものと基本的には同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
図24~図26(第1変形例)の場合は、個々の上部構造体5a,5b,5cの寸法(平面積)を小さくすることができるため、上部構造体5a,5b,5cを準備しやすくなり、ステージ2を組立やすくなる。このため、レーザ処理装置を製造しやすくなる。
なお、図24~図26の場合、Y方向に並ぶ複数の冷却機構8の流路9同士は、直列に接続することができる。この場合、例えば、Y方向に隣り合う冷却機構8同士の一方の流路部9bと他方の流路部9cとを、配管(定盤4の開口部を通る配管)を介して接続することができる。これにより、ステージ2複数の冷却機構8の流路9に冷却液を流しやすくなる。
図27は、第2変形例のレーザ処理装置の要部平面図であり、上記図25に相当するものであるが、図25では、レーザ光照射領域20bと冷却機構8a,8b内の流路9については、図示していない。
図27(第2変形例)は、図24~図26(第1変形例)において、冷却機構8を冷却機構8a,8bに置換したものに対応している。このため、図27(第2変形例)の場合も、上部構造体5a,5b,5cのそれぞれのY方向の寸法は、基板3のY方向の寸法よりも小さく、冷却機構8a,8bを挟んでX方向に隣り合う一対の上部構造体5a,5bが、Y方向に複数並んで配置されている。つまり、図27の場合は、上部構造体5aと上部構造体5bとそれらの間の冷却機構8a,8bとを1組とし、それがY方向に複数組並んでいる。なお、図27の場合は、Y方向に4組並んでいる場合が示されているが、Y方向に並ぶ組数は、4組には限定されない。また、X方向に隣り合う上部構造体5aと上部構造体5bとの間には、冷却機構8a,8bだけでなく、センサ61も配置されている。
上部構造体5a,5b、冷却機構8a,8bおよびセンサ61のそれぞれの構造は、図27の場合も、上記実施の形態2で説明したものと基本的には同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
図27(第2変形例)の場合も、個々の上部構造体5a,5b,5cの寸法(平面積)を小さくすることができるため、上部構造体5a,5b,5cを準備しやすくなり、ステージ2を組立やすくなる。このため、レーザ処理装置を製造しやすくなる。
なお、図27の場合、Y方向に並ぶ複数の冷却機構8aの流路9同士は、直列に接続することができる。また、Y方向に並ぶ複数の冷却機構8bの流路9同士は、直列に接続することができる。この場合、例えば、Y方向に隣り合う冷却機構8a同士の一方の上記流路部9n(図23参照)と他方の上記流路部9d(図23参照)とを、配管(上記定盤4の開口部を通る配管)を介して接続することができ、冷却機構8bについても同様である。これにより、ステージ2複数の冷却機構8a,8bの流路9に冷却液を流しやすくなる。
(実施の形態4)
本実施の形態4のレーザ処理装置について説明する。図28は、本実施の形態4のレーザ処理装置の要部断面図であり、上記図7に対応するものである。
上記実施の形態1,2,3のレーザ処理装置においては、ステージ2が有する冷却機構は、水冷方式であった。本実施の形態4のレーザ処理装置においては、ステージ2が有する冷却機構は、空冷方式である。以下、図28を参照して、本実施の形態4のレーザ処理装置について具体的に説明する。
図28に示されるように、本実施の形態4のレーザ処理装置のステージ2は、上部構造体5a,5bの下に配置された、冷却機構としての放熱フィン(放熱用フィン)71を有している。放熱フィン71は、上部構造体5a,5bのそれぞれにおいて、ベース部7の下面に取り付けられている。また、放熱フィン71がそれぞれ取り付けられた上部構造体5a,5bは、定盤4上配置されているため、放熱フィン71は、定盤4と各上部構造体5a,5bとの間に配置されているが、放熱フィン71と定盤4との間には、空気が循環可能な空間(隙間)が設けられている。これにより、基板加熱領域28から上部構造体5a,5bに伝導した熱を、放熱フィン71に伝導させ、更に、放熱フィン71から、放熱フィン71と定盤4との間の空間に放熱することができる。なお、放熱フィン71は、定盤4上に接続部材などを介して取り付けられて固定されており、その放熱フィン71上に、上部構造体5a,5bが固定されている。図28の場合は、上部構造体5aの下に配置された放熱フィン71と、上部構造体5bの下に配置された放熱フィン71とは、別々の部材であるが、両者を共通の(一体化された)部材とすることもできる。
図28の場合は、ステージ2に放熱フィン71を設けた代わりに、上記冷却機構8,8a,8bに相当するものは設けていない。
本実施の形態4のレーザ処理装置の他の構成は、上記実施の形態1,2,3のいずれかのレーザ処理装置とほぼ同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
本実施の形態4では、レーザ処理装置のステージ2は、空冷方式の冷却機構(ここでは放熱フィン71)を有しているため、冷却機構を有していない場合に比べて、ステージ2上に浮上する基板3(アモルファスシリコン膜3a)にレーザ光20aを照射した際に、基板加熱領域28から伝わる熱に起因してステージ2が局所的に加熱されて変形してしまうのを抑制することができる。ステージ2が熱歪によって変形してしまうのを抑制できることで、ステージ2上を浮上しながら移動する基板3の高さ位置が変動するのを抑制または防止することができるため、基板3(アモルファスシリコン膜3a)に対するレーザ処理の条件が変動してしまうのを抑制または防止することができる。
但し、空冷方式よりも水冷方式の方が、冷却効率が高い。このため、空冷方式を採用した本実施の形態4のレーザ処理装置よりも、水冷方式を採用した上記実施の形態1,2,3のレーザ処理装置の方が、ステージ2をより効率的に冷却することができるため、ステージ2が熱歪によって局所的に変形してしまうのをより効率的に抑制または防止することができる。従って、空冷方式を採用した本実施の形態4のレーザ処理装置よりも、水冷方式を採用した上記実施の形態1,2,3のレーザ処理装置の方が、ステージ2上を浮上しながら移動する基板3の高さ位置が変動するのをより的確に抑制または防止することができ、基板3(アモルファスシリコン膜3a)に対するレーザ処理の条件が変動してしまうのをより的確に抑制または防止することができる。一方、空冷方式を採用した本実施の形態4のレーザ処理装置の場合は、冷却液を流す必要がないため、冷却液を流すための機構が不要となり、レーザ処理装置の製造コストや維持コストを抑制することができる。
また、レーザ処理装置のステージ2の冷却機構として、水冷方式の冷却機構と空冷方式の冷却機構とを組み合わせることもできる。例えば、水冷方式を採用した上記実施の形態1,2,3のレーザ処理装置のステージ2に、空冷方式の冷却機構を追加することもできる。例えば、図29は、上記実施の形態1のレーザ処理装置のステージ2において、空冷方式の冷却機構を追加した場合を示す要部断面図であり、上記図7および図28に対応するものである。
図29の場合は、上記実施の形態1と同様に、X方向における上部構造体5aと上部構造体5bとの間に冷却機構8が配置されており、冷却機構8内の流路9を冷却液が流れるようになっている。そして、上記図28の場合と同様に、図29の場合も、レーザ処理装置のステージ2は、上部構造体5a,5bの下に配置された、冷却機構としての放熱フィン71を有している。
図29の場合は、基板加熱領域28からステージ2に伝わる熱を、冷却機構8(より特定的には冷却機構8の流路9を流れる冷却液)によって冷却することができるとともに、上部構造体5a,5bに伝わった熱を、更に放熱フィン71から放熱することができる。これにより、ステージ2の冷却効率を更に高めることができるため、ステージ2が熱歪によって局所的に変形してしまうのを、更に効率的に抑制または防止することができる。
また、空冷式の冷却機構(ここでは放熱フィン71)を採用した場合も、上記実施の形態3のように、上部構造体5a,5bおよび放熱フィン71を、Y方向に複数組、並べることもできる。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。