JP7200760B2 - 磁気抵抗効果デバイス及び磁気アレイ - Google Patents

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Description

本発明は、磁気抵抗効果デバイス及び磁気アレイに関する。
強磁性層と非磁性層の多層膜からなる巨大磁気抵抗(GMR)素子、及び、非磁性層に絶縁層(トンネルバリア層、バリア層)を用いたトンネル磁気抵抗(TMR)素子が磁気抵抗効果素子として知られている。一般に、TMR素子は、GMR素子と比較して素子抵抗が高く、磁気抵抗(MR)比が大きい。そのため、磁気センサ、高周波部品、磁気ヘッド及び不揮発性ランダムアクセスメモリ(MRAM)用の素子として、TMR素子に注目が集まっている。
磁気抵抗効果デバイスのMR比は、温度によって特性が変化する。動作温度が高くなると磁化の安定性が低下し、磁気抵抗効果デバイスのMR比は一般に低下する。一方で、例えば、非特許文献1には、動作温度が高くなると磁気抵抗効果デバイスのMR比が高くなるという報告がされている。
Hari S et al., Journal of Applied Physics 110, 123914 (2011).
磁気抵抗効果を利用した素子は様々な用途で使用されており、広い温度域での動作保証が求められている。使用温度域が変化しても、温度依存性の少ない磁気抵抗効果デバイスが求められている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、温度依存性の少ない磁気抵抗効果デバイス及び磁気アレイを提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
(1)第1の態様にかかる磁気抵抗効果デバイスは、第1強磁性層と、前記第1強磁性層に対向する第2強磁性層と、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間に位置する第1スペーサ層と、を備える第1磁気抵抗効果部と、第3強磁性層と、前記第3強磁性層に対向する第4強磁性層又は前記第2強磁性層と、前記第3強磁性層と前記第4強磁性層又は前記第2強磁性層との間に位置する第2スペーサ層と、を備える第2磁気抵抗効果部と、を備え、前記第1磁気抵抗効果部と前記第2磁気抵抗効果部とは、電気的に直列または並列に接続されており、前記第1磁気抵抗効果部は、第1温度域においてMR比が正の温度係数を示し、前記第2磁気抵抗効果部は、前記第1温度域においてMR比が負の温度係数を示す。
(2)上記態様にかかる磁気抵抗効果デバイスにおいて、前記第1磁気抵抗効果部の前記第1温度域における温度係数(K1)と、前記第2磁気抵抗効果部の前記第1温度域における温度係数(K2)とが、0.5≦|K1/K2|≦2.0を満たしてもよい。
(3)上記態様にかかる磁気抵抗効果デバイスにおいて、前記第1磁気抵抗効果部と前記第2磁気抵抗効果部とは、電気的に直列に接続されていてもよい。
(4)上記態様にかかる磁気抵抗効果デバイスにおいて、前記第1磁気抵抗効果部と前記第2磁気抵抗効果部とは、電気的に並列に接続されていてもよい。
(5)上記態様にかかる磁気抵抗効果デバイスにおいて、前記第1スペーサ層は、Ag、Cu、Au、Crからなる群から選択されるいずれかを含んでもよい。
(6)上記態様にかかる磁気抵抗効果デバイスにおいて、前記第1スペーサ層は磁性体を含んでもよい。
(7)上記態様にかかる磁気抵抗効果デバイスにおいて、前記磁性体は、Mn、Fe、Co、Ni、Crからなる群から選択されるいずれかを含んでもよい。
(8)上記態様にかかる磁気抵抗効果デバイスにおいて、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とのうち少なくとも一方は、磁性元素としてMn、Fe、Coからなる群から選択されるいずれかを含んでもよい。
(9)上記態様にかかる磁気抵抗効果デバイスにおいて、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とのうち少なくとも一方は、Coαβの化学組成をもつ金属間化合物を含んでもよく、LはMn、Fe、Crからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、MはSi、Al、Ga、Ge、Fe、Crからなる群から選択される1種または2種以上の元素である。
(10)上記態様にかかる磁気抵抗効果デバイスにおいて、前記第1強磁性層又は前記第2強磁性層は、複数の層を有し、前記複数の層は、2つの磁性層と、前記2つの磁性層の間に挟まれた中間層とを有してもよい。
(11)第2の態様にかかる磁気アレイは、上記態様にかかる磁気抵抗効果デバイスを複数備える。
(12)上記態様にかかる磁気アレイは、前記第1磁気抵抗効果部と前記第2磁気抵抗効果部とが電気的に直列に接続された第1デバイスを複数有し、複数の前記第1デバイスが互いに電気的に並列に接続されていてもよい。
(13)上記態様にかかる磁気アレイは、前記第1磁気抵抗効果部と前記第2磁気抵抗効果部とが電気的に並列に接続された第2デバイスを複数有し、複数の前記第2デバイスが互いに電気的に直列に接続されていてもよい。
(14)上記態様にかかる磁気アレイにおいて、前記第1磁気抵抗効果部と前記第2磁気抵抗効果部とが電気的に直列に接続された第1デバイスと、前記第1磁気抵抗効果部と前記第2磁気抵抗効果部とが電気的に並列に接続された第2デバイスと、を有してもよい。
(15)上記態様にかかる磁気アレイは、磁気抵抗効果デバイスが電気的に直列に接続された複数の第1デバイス群を有し、前記第1デバイス群が互いに電気的に並列に接続されていてもよい。
(16)第2の態様にかかる磁気抵抗効果デバイスは、第1強磁性層と、前記第1強磁性層に対向する第2強磁性層と、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間に位置する第1スペーサ層と、を備える第1磁気抵抗効果部と、第3強磁性層と、前記第3強磁性層に対向する第4強磁性層又は前記第2強磁性層と、前記第3強磁性層と前記第4強磁性層又は前記第2強磁性層との間に位置する第2スペーサ層と、を備える第2磁気抵抗効果部と、を備え、前記第1スペーサ層は、Ag、Cu、Au、Crからなる群から選択されるいずれかと磁性体とを含み、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とのうち少なくとも一方は、Coαβの化学組成をもつ金属間化合物を含み、LはMn、Fe、Crからなる群から選択されるいずれかであり、MはSi、Al、Ga、Ge、Fe、Crからなる群から選択されるいずれかであり、前記第2スペーサ層は、非磁性体である。
上記態様にかかる磁気抵抗効果デバイスによれば、温度依存性を少なくできる。
第1実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの模式図である。 第1磁気抵抗効果部のMR比の温度依存性を示す図である。 第2磁気抵抗効果部のMR比の温度依存性を示す図である。 第1実施形態に係る第1磁気抵抗効果部の磁化の挙動を模式的に示した図である。 第1実施形態に係る磁気抵抗効果デバイス全体のMR比の温度依存性を示す図である。 第2実施形態に係る磁気抵抗効果デバイスの模式図である。 第2実施形態に係る第1磁気抵抗効果部の磁化の挙動を模式的に示した図である。 第1変形例にかかる磁気抵抗効果デバイスの模式図である。 第2変形例にかかる磁気抵抗効果デバイスの模式図である。 第3変形例にかかる磁気抵抗効果デバイスの模式図である。 第3実施形態にかかる磁気アレイの模式図である。 第4変形例にかかる磁気アレイの模式図である。 第5変形例にかかる磁気アレイの模式図である。 第6変形例にかかる磁気アレイの模式図である。 第6変形例にかかる磁気アレイの別の例の模式図である。
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
「第1実施形態」
(磁気抵抗効果デバイス)
図1は、第1実施形態にかかる磁気抵抗効果デバイス100の模式図である。磁気抵抗効果デバイス100は、第1磁気抵抗効果部10と第2磁気抵抗効果部20とを備える。
第1磁気抵抗効果部10と第2磁気抵抗効果部20とは、配線wで電気的に直列に接続されている。第1磁気抵抗効果部10と第2磁気抵抗効果部20とは、同一の読み出し経路に位置する。同一の読み出し経路に位置するとは、配線wの第1端w1と第2端w2との間の抵抗値を測定した際に、磁気抵抗効果デバイス100が一つの抵抗体として機能することを意味する。例えば、第1磁気抵抗効果部10と第2磁気抵抗効果部20との間の配線がグラウンドに分岐している場合は、第1磁気抵抗効果部10と第2磁気抵抗効果部20とが一つの抵抗体として機能しない。
第1磁気抵抗効果部10は、第1強磁性層11と第2強磁性層12と第1スペーサ層13とを有する。第1強磁性層11と第2強磁性層12とは、互いに対向する。第1スペーサ層13は、第1強磁性層11と第2強磁性層12との間に位置する。
第1強磁性層11及び第2強磁性層12は、磁化M11、M12を有する。第1強磁性層11の磁化M11は、第2強磁性層12の磁化M12より動きにくく、所定の磁場環境下では一方向に固定される。第1強磁性層11は磁化固定層と呼ばれ、第2強磁性層12は磁化自由層と呼ばれる。
第1強磁性層11及び第2強磁性層12は、強磁性体である。第1強磁性層11及び第2強磁性層12は、例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等である。第1強磁性層11及び第2強磁性層12は、例えば、Co-Fe、Co-Fe-B、Ni-Feである。
第1強磁性層11と第2強磁性層12とのうち少なくとも一方は、磁性元素としてMn、Co、Feからなる群から選択されるいずれかを含むことが好ましく、磁性元素としてMnを含むことが特に好ましい。第1強磁性層11と第2強磁性層12とのうち少なくとも一方に含まれる磁性元素は、第1スペーサ層13に拡散する場合があり、第1磁気抵抗効果部10のMR比が、特定の温度域で、正の温度係数を示しやすくなる。「正の温度係数」については、後述する。MR比は、磁場に依存して変化する磁気抵抗効果素子の最大の抵抗値と最小の抵抗値の比であり、MR比=(「最大の抵抗値」-「最小の抵抗値」)/「最小の抵抗値」である。
第1強磁性層11と第2強磁性層12とのうち少なくとも一方は、Coαβの化学組成をもつ金属間化合物を含むことが好ましい。Lは、Mn、Fe、Crからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、MはSi、Al、Ga、Geからなる群から選択される1種または2種以上の元素である。α及びβはCоに対する組成比率である。αは、0.7<α<1.6を満たすことが好ましい。βは、0.65<β<1.35を満たすことが好ましい。α+βは、1.4<α+β<2.6を満たすことが好ましく、さらに、2.0<α+β<2.6を満たすことが特に好ましい。Coαβの化学組成をもつ金属間化合物は、例えば、ホイスラー合金である。第1強磁性層11と第2強磁性層12とのうち少なくとも一方は、例えば、CoMnSi合金、CoMn1-aFeAlSi1-b合金(a、bは組成比率) 、CoMnGe1-cGa合金(cは組成比率)、CoFeGe1-cGa合金(cは組成比率)である。L元素が第1スペーサ層13に作用することで、第1磁気抵抗効果部10のMR比が、特定の温度域で、正の温度係数を示しやすくなる。
第1スペーサ層13は、Ag、Cu、Au、Cr、Alからなる群から選択されるいずれかを含む。第1スペーサ層13は、主の構成元素としてAg、Cu、Au、Cr、Alからなる群から選択されるいずれかを含むことが好ましい。主の構成元素とは、化学量論組成式において、Ag、Cu、Au、Cr、Alが占める割合が50%以上となることを意味する。第1スペーサ層13は、Agを含むことが好ましく、主の構成元素としてAgを含むことが好ましい。
また第1スペーサ層は、磁性体を含んでもよい。磁性体は、例えば、Mn、Fe、Co、Ni、Crからなる群から選択されるいずれかである。なお、第1スペーサ層13の主構成がCrの場合、磁性体はCr以外の材料が選択される。
磁性体は、例えば、第1スペーサ層13内に点在する。第1スペーサ層13は、例えば、Ag、Cu、Au、Cr、Alからなる群から選択されるいずれかを主構成とする層に、Mn、Fe、Co、Ni、Crからなる群から選択されるいずれかの磁性体が点在したものである。第1スペーサ層13は、例えば、Ag層にMnが点在するもの、AgMg層にMnとFeとのうち少なくとも一方が点在したもの、Ag層にFeが点在したものである。
磁性体は、例えば、第1スペーサ層13内に層を形成する。第1スペーサ層は、例えば、Ag、Cu、Au、Cr、Alからなる群から選択されるいずれかを主構成とする層の内部に、Mn、Fe、Co、Ni、Crからなる群から選択されるいずれかの磁性体の層を有する。第1スペーサ層13は、例えば、Ag層にFe層が挟まれたもの、Al層にFe層が挟まれたものである。
第2磁気抵抗効果部20は、第3強磁性層21と第4強磁性層22と第2スペーサ層23とを有する。第3強磁性層21と第4強磁性層22とは、互いに対向する。第2スペーサ層23は、第3強磁性層21と第4強磁性層22との間に位置する。
第3強磁性層21及び第4強磁性層22は、磁化M21、M22を有する。第3強磁性層21の磁化M21は、第4強磁性層22の磁化M22より動きにくく、所定の磁場環境下では一方向に固定される。第3強磁性層21は磁化固定層と呼ばれ、第4強磁性層22は磁化自由層と呼ばれる。
第3強磁性層21及び第4強磁性層22は、強磁性体である。第3強磁性層21及び第4強磁性層22は、例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等である。第3強磁性層21及び第4強磁性層22は、例えば、Co-Fe、Co-Fe-B、Ni-Feである。第3強磁性層21及び第4強磁性層22は、ホイスラー合金でもよい。
第2スペーサ層23は、非磁性層である。第2スペーサ層23は、非磁性の絶縁体、半導体又は金属からなる。非磁性の絶縁体は、例えば、Al、SiO、MgO、MgAl、およびこれらのAl、Si、Mgの一部がZn、Be等に置換された材料である。第2スペーサ層23が非磁性の絶縁体からなる場合、第2スペーサ層23はトンネルバリア層である。非磁性の金属は、例えば、Cu、Au等である。さらに、非磁性の半導体は、例えば、Si、Ge、CuInSe、CuGaSe、Cu(In,Ga)Se等である。
第1磁気抵抗効果部10は、第1温度域においてMR比が正の温度係数を示す。第2磁気抵抗効果部20は、第1温度域においてMR比が負の温度係数を示す。図2は、第1磁気抵抗効果部10のMR比の温度依存性を示す図である。図3は、第2磁気抵抗効果部20のMR比の温度依存性を示す図である。
第1磁気抵抗効果部10は、温度T1から温度T2の第1温度域において、温度が高くなるとMR比が大きくなっている。温度係数は、絶対温度が1度上がるたびに物質の性質が変化する割合である。第1磁気抵抗効果部10は、温度上昇に従いMR比が増加しており、温度係数は正の値を示す。これに対し、第2磁気抵抗効果部20は、温度T1から温度T2の第1温度域において、温度が高くなるとMR比が小さくなっている。第2磁気抵抗効果部20は、温度上昇に従いMR比が増加しており、温度係数は負の値を示す。
温度係数の正負は、例えば、温度とMR比との関係をプロットしたグラフの漸近線によって判断する。例えば300度の温度幅において、温度を10度変化させる毎にMR比を測定し、温度とMR比の関係をプロットする。プロットしたグラフの漸近線の傾きによって、温度係数の正負が確認される。すなわち、測定誤差等によりわずかな温度幅で温度係数の正負が逆転していたとしても、考慮されない。
第1温度域は、任意の温度幅を有する温度域である。第1温度域の温度幅は、例えば、-40℃以上85℃以下である。第1温度域の温度幅は、少なくとも0℃以上35℃以下の温度域を含むことが好ましい。
第1磁気抵抗効果部10と第2磁気抵抗効果部20との温度に対するMR比の挙動の違いは、温度変化に対する磁化M11、M12、M21、M22の挙動の変化による。
まず第2磁気抵抗効果部20のMR比が負の温度係数を示す理由を説明する。第2磁気抵抗効果部20は、第3強磁性層21の磁化M21と第4強磁性層22の磁化M22とが反平行の場合に最大の抵抗値を示し、第3強磁性層21の磁化M21と第4強磁性層22の磁化M22とが平行の場合に最小の抵抗値を示す。磁化M21と磁化M22は、温度が高くなると不安定になり、所定の方向に配向しにくくなる。磁化M21と磁化M22とが所定の方向に配向しにくくなると、磁化M21と磁化M22とが完全平行状態及び完全反平行状態を実現しにくくなる。その結果、第2磁気抵抗効果部20は、温度が高くなると、最大の抵抗値が低くなり、最小の抵抗値が高くなる。MR比は、磁気抵抗効果素子の最大の抵抗値と最小の抵抗値とを用いて求められる比である。つまり、第2磁気抵抗効果部20のMR比は温度が高くなると小さくなっていき、第2磁気抵抗効果部20のMR比が負の温度係数を示す(図3参照)。
次いで、第1磁気抵抗効果部10のMR比が正の温度係数を示す理由を説明する。第1磁気抵抗効果部10は、第1強磁性層11の磁化M11と第2強磁性層12の磁化M12とが、温度変化に応じて大きく分けて3つの状態になる。図4は、第1磁気抵抗効果部10の磁化の挙動を模式的に示した図である。図4(a)は、第1の状態であり、磁化M11と磁化M12とが反平行である。第1磁気抵抗効果部10は第1の状態で最大の抵抗値を示す。図4(b)は、第2の状態であり、磁化M11と磁化M12とが平行である。第1磁気抵抗効果部10は第2の状態で最小の抵抗値を示す。図4(c)は、第3の状態であり、磁化M11と磁化M12とが90°傾いてカップリング(90°カップリング)している。第1磁気抵抗効果部10は第3の状態で最大の抵抗値と最小の抵抗値の間の抵抗値を示す。第1磁気抵抗効果部10は、第3の状態を形成することで、温度とMR比との関係をプロットしたグラフの中に正の温度係数を示す領域を有する。
第3の状態は低温下で生じやすく、高温下では生じにくい。つまり低温下において、第1磁気抵抗効果部10は第1の状態(反平行状態)、第2の状態(平行状態)を実現しにくくなり、第3の状態(90°カップリングの状態)になりやすくなるので、第1磁気抵抗効果部10の最大の抵抗値と最小の抵抗値との差が小さくなる。温度が高くなると、第1磁気抵抗効果部10は第3の状態(90°カップリングの状態)から第1の状態(反平行状態)や第2の状態(平行状態)になりやすくなるので、第1磁気抵抗効果部10の最大の抵抗値と最小の抵抗値との差が大きくなる。したがって、MR比は温度が高くなると大きくなり、第1磁気抵抗効果部10のMR比は正の温度係数を示す(図2参照)。
第3の状態は、第1スペーサ層13を構成するAg、Cu、Au、Crのいずれかが磁性元素と作用することで生じる。AgとMnとは特に作用しやすく、第1スペーサ層13がAgを含み、第1強磁性層11又は第2強磁性層12がMnを含む場合には、第3の状態が発現する。また第1スペーサ層13が磁性体を有する場合、第3の状態は発現しやすくなる。
第3の状態は、例えば、第1強磁性層11又は第2強磁性層12がCoMnSi、CoMn(Ge0.5Ga0.5)又はCoFe(Ge0.5Ga0.5)であり、第1スペーサ層13がAgの場合には発現する。第3の状態は、例えば、第1強磁性層11又は第2強磁性層12がCoFe0.4Mn0.6Siであり、第1スペーサ層13がAgMgの場合にも発現する。第3の状態は、例えば、第1スペーサ層13がAgとFeとAgとが積層された積層体又はAlとFeとAlとが積層された積層体の場合にも発現する。
第1実施形態にかかる磁気抵抗効果デバイス100全体が示すMR比は、第1磁気抵抗効果部10と第2磁気抵抗効果部20との足し合わせである。図5は、第1実施形態に係る磁気抵抗効果デバイス100全体のMR比の温度依存性を示す図である。第1磁気抵抗効果部10のMR比の温度に対する正の相関と、第2磁気抵抗効果部20のMR比の温度に対する負の相関とが、互いに中和することで、磁気抵抗効果デバイス100全体の第1温度域におけるMR比の変化幅は減少する。したがって、磁気抵抗効果デバイス100全体のMR比の温度依存性は小さくなる。
また第1磁気抵抗効果部10の第1温度域における温度係数(K1)と、第2磁気抵抗効果部20の第1温度域における温度係数(K2)とが、0.5≦|K1/K2|≦2.0を満たすことが好ましい。ここで第1温度域における温度係数とは、第1温度域における各温度係数の平均値であり、各温度係数は第1温度域を10分割した各温度域における温度係数の平均値である。
第1磁気抵抗効果部10の温度係数(K1)と第2磁気抵抗効果部20の温度係数(K2)とが上記関係にあると、磁気抵抗効果デバイス100のMR比の温度依存性はより小さくなる。
以上、第1実施形態の一例について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
「第2実施形態」
(磁気抵抗効果デバイス)
図6は、第2実施形態にかかる磁気抵抗効果デバイス900の模式図である。磁気抵抗効果デバイス900は、第1磁気抵抗部90の構成が、図1に示す磁気抵抗効果デバイス100と異なる。図6において、図1と同一の構成については、同一の符号を付す。
磁気抵抗効果デバイス100は、第1磁気抵抗効果部90と第2磁気抵抗効果部20とを備える。第1磁気抵抗効果部90と第2磁気抵抗効果部20とは、配線wで電気的に直列に接続されている。第1磁気抵抗効果部90と第2磁気抵抗効果部20とは、同一の読み出し経路に位置する。
第1磁気抵抗効果部90は、第1強磁性層11とマルチレイヤ92と第3スペーサ層93とを有する。マルチレイヤ92は、第2強磁性層の一例である。第1強磁性層11とマルチレイヤ92とは、互いに対向する。第3スペーサ層93は、第1強磁性層11とマルチレイヤ92との間に位置する。マルチレイヤ92は、第5強磁性層94、中間層96、第6強磁性層95を有する。
第1強磁性層11、第5強磁性層94、第6強磁性層95は、磁化M11、M94、M95をそれぞれ有する。第1強磁性層11の磁化M11は、第5強磁性層94の磁化M94より動きにくく、所定の磁場環境下では一方向に固定される。第1強磁性層11は磁化固定層と呼ばれ、第5強磁性層94は磁化自由層と呼ばれる。
第5強磁性層94及び第6強磁性層95は、強磁性体である。第5強磁性層94及び第6強磁性層95は、例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等である。第5強磁性層94及び第6強磁性層95は、例えば、Fe、Co、Co-Fe、Co-Fe-B、Ni-Fe、Fe-Siである。第5強磁性層94及び第6強磁性層95は同じ材料、組成で構成されていてもよいし、異なる材料、組成で構成されていてもよい。
中間層96は第5強磁性層94と第6強磁性層95との間に位置する。中間層96はCu、Mn、Cr、Fe、Siからなる群から選択されるいずれかを含む。中間層96は例えば、Cu-Mn、Cr、Fe-Si、Siである。第5強磁性層94又は第6強磁性層95に含まれる磁性元素が中間層96に拡散することで、中間層96にその磁性元素が含まれていてもよい。
マルチレイヤ92は、例えば、Co層とCuMn層とCo層、Fe層とCr層とFe層、Fe層とFeSi層とFe層、Fe層とSi層とFe層である。また、マルチレイヤ92は上記の3層のみでもよいし、上記3層が周期的に繰り返される構成であってもよい。
マルチレイヤ92に含まれる第5強磁性層94は、第3スペーサ層93と接することが好ましい。この場合、第3磁気抵抗効果部90の磁気抵抗変化率が大きくなる。
第3スペーサ層93は、非磁性層である。第3スペーサ層93は、非磁性の絶縁体、半導体又は金属からなる。非磁性の絶縁体は、例えば、Al、SiO、MgO、MgAl、およびこれらのAl、Si、Mgの一部がZn、Be等に置換された材料である。第3スペーサ層93が非磁性の絶縁体からなる場合、第3スペーサ層93はトンネルバリア層である。非磁性の金属は、例えば、Cu、Au等である。さらに、非磁性の半導体は、例えば、Si、Ge、CuInSe、CuGaSe、Cu(In,Ga)Se等である。
第1磁気抵抗効果部90は、第1温度域においてMR比が正の温度係数を示す。第1磁気抵抗効果部90のMR比は、図2と同様の温度依存性を示す。第1磁気抵抗効果部90は、温度T1から温度T2の第1温度域において、温度が高くなるとMR比が大きくなる。
第1磁気抵抗効果部90と第2磁気抵抗効果部20との温度に対するMR比の挙動の違いは、温度変化に対する磁化M11、M94、M95、M21、M22の挙動の変化による。
図7は、第1磁気抵抗効果部90の磁化の挙動を模式的に示した図である。図7を基に、第3磁気抵抗効果部90のMR比が正の温度係数を示す理由を説明する。第3磁気抵抗効果部90のMR比は、第3スペーサ層93を挟む2つの強磁性層(第1強磁性層11及び第5強磁性層94)の磁化M11,M94の相対角の違いによって生じる。第1磁気抵抗効果部90は、第1強磁性層11の磁化M11と第5強磁性層94の磁化M94とが、温度変化に応じて大きく分けて3つの状態になる。図7(a)は、第1の状態である。第1の状態では、マルチレイヤ92を構成する第5強磁性層94と第6強磁性層95の磁化M94,M95は同一方向に配向し、磁化M11と磁化M94とが反平行となる。第1磁気抵抗効果部90は第1の状態で最大の抵抗値を示す。図7(b)は、第2の状態である。第2の状態では、マルチレイヤ92を構成する第5強磁性層94と第6強磁性層95の磁化M94,M95は同一方向に配向し、磁化M11と磁化M94とが平行である。第1磁気抵抗効果部90は第2の状態で最小の抵抗値を示す。図7(c)は、第3の状態である。第3の状態では、第5強磁性層94の磁化M94と第6強磁性層95の磁化M95とが、互いに影響し90°傾いてカップリング(90°カップリング)する。第5強磁性層94の磁化M94と第6強磁性層95の磁化M95とが90°カップリングすることで、第1強磁性層11の磁化M11と第5強磁性層94の磁化M94とが90°傾いて配向する。第1磁気抵抗効果部90は第3の状態で最大の抵抗値と最小の抵抗値の間の抵抗値を示す。第1磁気抵抗効果部90は、第3の状態を形成することで、温度とMR比との関係をプロットしたグラフの中に正の温度係数を示す領域を有する。
第3の状態は低温下で生じやすく、高温下では生じにくい。つまり低温下において、第1磁気抵抗効果部90は第1の状態(磁化M11と磁化M94が反平行状態)、第2の状態(磁化M11と磁化M94が平行状態)を実現しにくくなり、第3の状態(磁化M11と磁化M94が90°で配向する状態)になりやすくなるので、第1磁気抵抗効果部90の最大の抵抗値と最小の抵抗値との差が小さくなる。温度が高くなると、第1磁気抵抗効果部90は第3の状態(磁化M11と磁化M94が90°で配向する状態)から第1の状態(磁化M11と磁化M94が反平行状態)や第2の状態(磁化M11と磁化M94が平行状態)になりやすくなるので、第1磁気抵抗効果部90の最大の抵抗値と最小の抵抗値との差が大きくなる。したがって、MR比は温度が高くなると大きくなり、第1磁気抵抗効果部90のMR比は正の温度係数を示す(図2参照)。
第3の状態は、第5強磁性層94の磁化M94が中間層96を構成するCu、Mn、Cr、Fe、Siのいずれかの磁性元素と作用すると生じやすい。また中間層96が磁性体を有する場合、第3の状態は発現しやすくなる。
第2実施形態にかかる磁気抵抗効果デバイス900全体が示すMR比は、第1磁気抵抗効果部90と第2磁気抵抗効果部20との足し合わせである。磁気抵抗効果デバイス900全体のMR比の温度依存性は、図5と同様である。第1磁気抵抗効果部90のMR比の温度に対する正の相関と、第2磁気抵抗効果部20のMR比の温度に対する負の相関とが、互いに中和することで、磁気抵抗効果デバイス900全体の第1温度域におけるMR比の変化幅は減少する。したがって、磁気抵抗効果デバイス900全体のMR比の温度依存性は小さくなる。
また第1磁気抵抗効果部90の第1温度域における温度係数(K1)と、第2磁気抵抗効果部20の第1温度域における温度係数(K2)とが、0.5≦|K1/K2|≦2.0を満たすことが好ましい。第1磁気抵抗効果部90の温度係数(K1)と第2磁気抵抗効果部20の温度係数(K2)とが上記関係にあると、磁気抵抗効果デバイス900のMR比の温度依存性はより小さくなる。
上記の説明では第1実施形態における磁気抵抗効果デバイス100の第2強磁性層12をマルチレイヤに置き換えたが、磁気抵抗効果デバイス100の第1強磁性層11をマルチレイヤ92に置き換えた形態でもよい。この場合も第1磁気抵抗効果部90は正の温度係数を示し、磁気抵抗効果デバイス900のMR比の温度依存性は小さくなる。
以上、いくつかの実施形態の一例について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
(第1変形例)
図8は、第1実施形態の第1変形例にかかる磁気抵抗効果デバイス101の模式図である。第1変形例にかかる磁気抵抗効果デバイス101は、第1磁気抵抗効果部10と第2磁気抵抗効果部20とが電気的に並列に接続されている点が、磁気抵抗効果デバイス100と異なる。その他の構成は同一であり、同一の構成については同一の符号を付し、説明を省く。
第1磁気抵抗効果部10と第2磁気抵抗効果部20とは、配線wで電気的に並列に接続されている。第1磁気抵抗効果部10と第2磁気抵抗効果部20とは、配線wの第1端w1と第2端w2との間の抵抗値を測定した際に、磁気抵抗効果デバイス101が一つの抵抗体として機能するため、同一の読み出し経路に位置する。
第1磁気抵抗効果部10と第2磁気抵抗効果部20とが並列な関係にある場合、磁気抵抗効果デバイス101の合成抵抗は、第1磁気抵抗効果部10の抵抗値の逆数と第2磁気抵抗効果部20の抵抗値の逆数との足し算となる。抵抗値の逆数が足し合わされる場合でも、磁気抵抗効果デバイス101において、第1磁気抵抗効果部10の温度依存性と第2磁気抵抗効果部20の温度依存性とが互いに中和される関係は変わらない。したがって、第1変形例にかかる磁気抵抗効果デバイス101においても、磁気抵抗効果デバイス101全体のMR比の温度依存性は小さくなる。
(第2変形例)
図9は、第1実施形態の第2変形例にかかる磁気抵抗効果デバイス102の模式図である。第2変形例にかかる磁気抵抗効果デバイス102は、第1磁気抵抗効果部10と第2磁気抵抗効果部20とが、配線wではなく中間層30を介して一体化している点が、磁気抵抗効果デバイス100と異なる。その他の構成は同一であり、同一の構成については同一の符号を付し、説明を省く。
磁気抵抗効果デバイス102は、第1磁気抵抗効果部10と第2磁気抵抗効果部20と中間層30とを有する。中間層30は、例えば、導体である。第2変形例にかかる磁気抵抗効果デバイス102においても、磁気抵抗効果デバイス102全体のMR比の温度依存性は小さくなる。
(第3変形例)
図10は、第1実施形態の第3変形例にかかる磁気抵抗効果デバイス103の模式図である。第3変形例にかかる磁気抵抗効果デバイス102は、第1磁気抵抗効果部10と第2磁気抵抗効果部20とで第2強磁性層12を共有している点が、磁気抵抗効果デバイス100と異なる。その他の構成は同一であり、同一の構成については同一の符号を付し、説明を省く。
磁気抵抗効果デバイス103は、第1磁気抵抗効果部10と第2磁気抵抗効果部20とを有する。第1磁気抵抗効果部10は、第1強磁性層11と第2強磁性層12と第1スペーサ層13とからなる。第2磁気抵抗効果部20は、第3強磁性層21と第2強磁性層12と第2スペーサ層23とからなる。第2強磁性層12は、第1磁気抵抗効果部10と第2磁気抵抗効果部20とで共有している。第3変形例にかかる磁気抵抗効果デバイス103においても、磁気抵抗効果デバイス102全体のMR比の温度依存性は小さくなる。
また磁気抵抗効果デバイス100、101、102において、第1強磁性層11と第2強磁性層12との位置関係及び第3強磁性層21と第4強磁性層22との位置関係は自由に変更できる。例えば、磁気抵抗効果デバイス100において、第2磁気抵抗効果部20に近い位置に第1強磁性層11を配置させてもよく、第1磁気抵抗効果部10に近い位置に第4強磁性層22を配置させてもよい。
また各変形例にかかる磁気抵抗効果デバイス100、101、102において、第1磁気抵抗効果部10を第2実施形態にかかる第1磁気抵抗効果部90に置き換えてもよい。
「第3実施形態」
(磁気アレイ)
図11は、第3実施形態にかかる磁気アレイ200の模式図である。磁気アレイ200は、複数の磁気抵抗効果デバイス100(図1参照)を備える。複数の磁気抵抗効果デバイス100は、それぞれ第1磁気抵抗部10と第2磁気抵抗効果部20とが電気的に直列に接続されている。以下、第1磁気抵抗効果部10と第2磁気抵抗効果部20とが電気的に直列に接続された磁気抵抗効果デバイスを第1デバイス100Aという。
磁気アレイ200は、複数の第1デバイス100Aを備える。図11では、第1デバイス100Aが2つの場合を例示したが、3つ以上でもよい。複数の第1デバイス100Aは、互いに配線wで電気的に並列に接続されている。配線wの第1端w1と第2端w2との間の抵抗値を測定した際に、複数の第1デバイス100A(磁気アレイ200)は一つの抵抗体として機能する。複数の第1デバイス100Aは、同一の読み出し経路に位置する。
第1デバイス100Aのそれぞれは、第1磁気抵抗効果部10の温度依存性と第2磁気抵抗効果部20の温度依存性とが互いに中和される関係にあり、MR比の温度依存性が小さい。また磁気アレイ200は、これらの第1デバイス100Aが電気的に接続されているため、磁気アレイ200のシグナル、ノイズはそれぞれの第1デバイス100Aのシグナル、ノイズの足しあわされたものとなる。それぞれの第1デバイス100Aのシグナルは足しあわされる際に強め合うが、ノイズは一部相殺する。したがって、磁気アレイ200のS/N比は、磁気抵抗効果デバイス100が単体の場合に対して増加する。
(第4変形例)
図12は、第4変形例にかかる磁気アレイ201の模式図である。第4変形例にかかる磁気アレイ201は、第3実施形態に係る磁気アレイ200の変形例である。磁気アレイ201は、複数の磁気抵抗効果デバイス101(図8参照)を備える。複数の磁気抵抗効果デバイス101は、それぞれ第1磁気抵抗部10と第2磁気抵抗効果部20とが電気的に並列に接続されている。以下、第1磁気抵抗効果部10と第2磁気抵抗効果部20とが電気的に並列に接続された磁気抵抗効果デバイスを第2デバイス100Bという。
磁気アレイ201は、複数の第2デバイス100Bを備える。図12では、第2デバイス100Bが2つの場合を例示したが、3つ以上でもよい。複数の第2デバイス100Bは、互いに配線wで電気的に直列に接続されている。配線wの第1端w1と第2端w2との間の抵抗値を測定した際に、複数の第1デバイス100B(磁気アレイ201)は一つの抵抗体として機能する。複数の第2デバイス100Bは、同一の読み出し経路に位置する。
第2デバイス100Bのそれぞれは、第1磁気抵抗効果部10の温度依存性と第2磁気抵抗効果部20の温度依存性とが互いに中和される関係にあり、MR比の温度依存性が小さい。また磁気アレイ201は、これらの第2デバイス100Bが電気的に接続されているため、磁気アレイ201のシグナル、ノイズはそれぞれの第2デバイス100Bのシグナル、ノイズの足しあわされたものとなる。それぞれの第2デバイス100Bのシグナルは足しあわされる際に強め合うが、ノイズは一部相殺し合う。したがって、磁気アレイ201のS/N比は、磁気抵抗効果デバイス101が単体の場合に対して増加する。
(第5変形例)
図13は、第5変形例にかかる磁気アレイ202の模式図である。第5変形例にかかる磁気アレイ202は、第3実施形態に係る磁気アレイ200の変形例である。磁気アレイ202は、複数の磁気抵抗効果デバイスを備える。複数の磁気抵抗効果デバイスは第1デバイス100Aと第2デバイス100Bとであり、磁気アレイ202は第1デバイス100Aと第2デバイス100Bを有する。磁気アレイ202は、第1デバイス100Aに第1磁気抵抗効果部10又は第2磁気抵抗効果部20が電気的に直列に接続された群が、互いに電気的に並列に接続されているとも言える。
磁気アレイ202は、複数の第1デバイス100Aと一つの第2デバイス100Bとを備える。図13では、第1デバイス100Aが2つ、第2デバイス100Bが一つの場合を例示したが、第1デバイス100A及び第2デバイス100Bの数は問わない。第1デバイス100A及び第2デバイス100Bは、互いに配線wで電気的に直列に接続されている。配線wの第1端w1と第2端w2との間の抵抗値を測定した際に、磁気アレイ202は一つの抵抗体として機能する。複数の第1デバイス100Aと一つの第2デバイス100Bは、同一の読み出し経路に位置する。
第1デバイス100A及び第2デバイス100Bのそれぞれは、第1磁気抵抗効果部10の温度依存性と第2磁気抵抗効果部20の温度依存性とが互いに中和される関係にあり、MR比の温度依存性が小さい。また磁気アレイ202は、これらの第1デバイス100A及び第2デバイス100Bが電気的に接続されているため、磁気アレイ202のシグナル、ノイズはそれぞれの第1デバイス100A及び第2デバイス100Bのシグナル、ノイズの足しあわされたものとなる。それぞれの第1デバイス100A及び第2デバイス100Bのシグナルは足しあわされる際に強め合うが、ノイズは一部相殺し合う。したがって、磁気アレイ202のS/N比は、磁気抵抗効果デバイス100もしくは磁気抵抗効果デバイス101が単体の場合に対して増加する。
(第6変形例)
図14は、第6変形例にかかる磁気アレイ203の模式図である。第6変形例にかかる磁気アレイ203は、第3実施形態に係る磁気アレイ200の変形例である。磁気アレイ203は、第1デバイス群G1を複数有する。第1デバイス群G1は、複数の磁気抵抗効果デバイス100が電気的に直列に接続されたものである。磁気アレイ203は、複数の第1デバイス群G1が互いに電気的に並列に接続されている。
図14では、第1デバイス群G1を構成する磁気抵抗効果デバイス100が2つであり、2つの第1デバイス群G1が電気的に並列に接続された例を図示したが、第1デバイス群G1を構成する磁気抵抗効果デバイス100の数、及び、第1デバイス群G1の数は問わない。図15は、第6変形例にかかる磁気アレイの別の例の模式図である。図15に示す磁気アレイ203Aは、第1デバイス群G1を構成する磁気抵抗効果デバイス100が3つであり、3つの第1デバイス群G1が電気的に並列に接続されている。
複数の磁気抵抗効果デバイス100は、互いに配線wで電気的に直列に接続されている。配線wの第1端w1と第2端w2との間の抵抗値を測定した際に、複数の磁気抵抗効果デバイス100(磁気アレイ203)は一つの抵抗体として機能する。複数の磁気抵抗効果デバイス100は、同一の読み出し経路に位置する。
磁気抵抗効果デバイス100のそれぞれは、第1磁気抵抗効果部10の温度依存性と第2磁気抵抗効果部20の温度依存性とが互いに中和される関係にあり、MR比の温度依存性が小さい。また磁気アレイ203、203Aは、これらの磁気抵抗効果デバイス100が電気的に接続されているため、磁気アレイ203、203Aのシグナル、ノイズは第1デバイス100それぞれのシグナル、ノイズの足しあわされたものとなる。第1デバイス100それぞれのシグナルは足しあわされる際に強め合うが、ノイズは一部相殺し合う。したがって、磁気アレイ203、203AのS/N比は、磁気抵抗効果デバイス100が単体の場合に対して増加する。
第3実施形態(各変形例を含む)における磁気アレイにおいて、磁気抵抗効果デバイス100又は101に代えて、磁気抵抗効果デバイス100、101、102、900を用いてもよい。
10、90 第1磁気抵抗効果部
11 第1強磁性層
12 第2強磁性層
13 第1スペーサ層
20 第2磁気抵抗効果部
21 第3強磁性層
22 第4強磁性層
23 第2スペーサ層
30、96 中間層
92 マルチレイヤ
93 第3スペーサ層
94 第5強磁性層
95 第6強磁性層
100、101、102、103、900 磁気抵抗効果デバイス
100A 第1デバイス
100B 第2デバイス
200、201、202、203、203A 磁気アレイ
G1 第1デバイス群
M11、M12、M21、M22、M94、M95 磁化
w 配線
w1 第1端
w2 第2端

Claims (13)

  1. 第1強磁性層と、
    前記第1強磁性層に対向する第2強磁性層と、
    前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間に位置する第1スペーサ層と、を備える第1磁気抵抗効果部と、
    第3強磁性層と、
    前記第3強磁性層に対向する第4強磁性層又は前記第2強磁性層と、
    前記第3強磁性層と前記第4強磁性層又は前記第2強磁性層との間に位置する第2スペーサ層と、を備える第2磁気抵抗効果部と、
    を備え、
    前記第1磁気抵抗効果部と前記第2磁気抵抗効果部とは、電気的に直列または並列に接続されており、
    前記第1磁気抵抗効果部は、第1温度域においてMR比が正の温度係数を示し、
    前記第2磁気抵抗効果部は、前記第1温度域においてMR比が負の温度係数を示し、
    前記第1スペーサ層は、
    Ag、Cu、Au、Cr、Alからなる群から選択されるいずれかを主構成とする金属層に、Mn、Fe、Co、Ni、Crからなる群から選択されるいずれかの金属磁性体が点在した層、
    又は、
    Ag、Cu、Au、Cr、Alからなる群から選択されるいずれかを主構成とする金属層の内部に、Mn、Fe、Co、Ni、Crからなる群から選択されるいずれかの金属磁性体の層を含む層、である、磁気抵抗効果デバイス。
  2. 前記第1磁気抵抗効果部の前記第1温度域における温度係数(K1)と、前記第2磁気抵抗効果部の前記第1温度域における温度係数(K2)とが、
    0.5≦|K1/K2|≦2.0
    を満たす、請求項1に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  3. 前記第1磁気抵抗効果部と前記第2磁気抵抗効果部とは、電気的に直列に接続されている、請求項1又は2に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  4. 前記第1磁気抵抗効果部と前記第2磁気抵抗効果部とは、電気的に並列に接続されている、請求項1又は2に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  5. 前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とのうち少なくとも一方は、磁性元素としてMn、Fe、Coからなる群から選択されるいずれかを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  6. 前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とのうち少なくとも一方は、Coαβの化学組成をもつ金属間化合物を含み、
    LはMn、Fe、Crからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、MはSi、Al、Ga、Ge、Fe、Crからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、α及びβはCoに対する組成比率であり、0.7<α<1.6を満たし、0.65<β<1.35を満たす、請求項に記載の磁気抵抗効果デバイス。
  7. 前記第1強磁性層又は前記第2強磁性層は、複数の層を有し、
    前記複数の層は、2つの磁性層と、前記2つの磁性層の間に挟まれた中間層とを有する、請求項1~のいずれかに記載の磁気抵抗効果デバイス。
  8. 請求項1からのいずれか一項に記載の磁気抵抗効果デバイスを複数備える、磁気アレイ。
  9. 前記第1磁気抵抗効果部と前記第2磁気抵抗効果部とが電気的に直列に接続された第1デバイスを複数有し、
    複数の前記第1デバイスが互いに電気的に並列に接続されている、請求項に記載の磁気アレイ。
  10. 前記第1磁気抵抗効果部と前記第2磁気抵抗効果部とが電気的に並列に接続された第2デバイスを複数有し、
    複数の前記第2デバイスが互いに電気的に直列に接続されている、請求項又はに記載の磁気アレイ。
  11. 前記第1磁気抵抗効果部と前記第2磁気抵抗効果部とが電気的に直列に接続された第1デバイスと、前記第1磁気抵抗効果部と前記第2磁気抵抗効果部とが電気的に並列に接続された第2デバイスと、を有する、請求項10のいずれか一項に記載の磁気アレイ。
  12. 前記磁気抵抗効果デバイスが電気的に直列に接続された複数の第1デバイス群を有し、
    前記第1デバイス群が互いに電気的に並列に接続されている、請求項11のいずれか一項に記載の磁気アレイ。
  13. 第1強磁性層と、
    前記第1強磁性層に対向する第2強磁性層と、
    前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間に位置する第1スペーサ層と、を備える第1磁気抵抗効果部と、
    第3強磁性層と、
    前記第3強磁性層に対向する第4強磁性層又は前記第2強磁性層と、
    前記第3強磁性層と前記第4強磁性層又は前記第2強磁性層との間に位置する第2スペーサ層と、を備える第2磁気抵抗効果部と、
    を備え、
    前記第1スペーサ層は、
    Ag、Cu、Au、Cr、Alからなる群から選択されるいずれかを主構成とする金属層に、Mn、Fe、Co、Ni、Crからなる群から選択されるいずれかの金属磁性体が点在した層、
    又は、
    Ag、Cu、Au、Cr、Alからなる群から選択されるいずれかを主構成とする金属層の内部に、Mn、Fe、Co、Ni、Crからなる群から選択されるいずれかの金属磁性体の層を含む層、であり
    前記第1強磁性層と前記第2強磁性層とのうち少なくとも一方は、Coαβの化学組成をもつ金属間化合物を含み、
    LはMn、Fe、Crからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、MはSi、Al、Ga、Ge、Fe、Crからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、α及びβはCoに対する組成比率であり、0.7<α<1.6を満たし、0.65<β<1.35を満たし、
    前記第2スペーサ層は、非磁性体である、磁気抵抗効果デバイス。
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