以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における制電粘着PEEK樹脂テープ付き構造体は、図1ないし図3に示すように、半導体製造設備1の一部に制電粘着PEEK樹脂テープ10が粘着された構造体であり、制電粘着PEEK樹脂テープ10が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を主成分とするポリエーテルエーテルケトン樹脂層11と、このポリエーテルエーテルケトン樹脂層11に積層されて半導体製造設備1に粘着可能な多機能の導電粘着層12とを備えて形成される。
半導体製造設備1の一部としては、特に限定されるものではないが、例えば非導電性の超純水や純水、イソプロピルアルコール等の薬液を流通させる洗浄装置のパイプ2があげられる。このパイプ2は、特に限定されるものではないが、例えば四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン系樹脂により成形され、必要に応じ、可撓性が付与される。このパイプ2は、イソプロピルアルコールを流通させる場合には、耐薬品性等に優れる四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体により、成形されるのが一般的である。
半導体製造設備1の一部の材質は、絶縁性の樹脂を対象とするのが好ましい。これは、人体は帯電し易いので、半導体製造設備1に接触すると、放電により静電気が生じるからである。また、樹脂製の半導体製造設備1に薬液が流れて接触すると、半導体製造設備1と薬液とが擦れて静電気が生じ、静電気トラブルの生じるおそれがあるからである。
この点について説明すると、例えば、薬液がイソプロピルアルコール(IPA)の場合、イソプロピルアルコールは、引火点が低く(11.7℃)、発火しやすく、きわめて燃えやすいという特徴を有するので、確実な帯電防止を図る必要がある。この点に鑑み、パイプ2に制電粘着PEEK樹脂テープ10を粘着したり、巻き着けて被覆すれば、半導体製造設備1やその一部の帯電防止や発火防止を図ることができる。
制電粘着PEEK樹脂テープ10は、パイプ2の外周面に粘着可能な長さの帯形に形成されるが、特に限定されるものではなく、必要に応じ、多角形(例えば、三角形や四角形等)や円形等に加工される。この制電粘着PEEK樹脂テープ10のポリエーテルエーテルケトン樹脂層11と導電粘着層12とは、導電粘着層12の多機能化を重視する場合には、直接密着する二層構造(図2参照)とされるが、薄型化を図りながら導電性を安価に確保したい場合には、多機能の導電粘着層12が機能毎に分割される。
この場合、導電粘着層12は、図3に示すように、ポリエーテルエーテルケトン樹脂層11に直接積層される薄い導電性の導電剤層13と、この導電剤層13に直接積層されてパイプ2の外周面に粘着する厚い粘着性の粘着剤層14との二層に分割される。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂層11は、優れた耐錆性、耐溶剤性、耐薬品性、成形性等を得る観点から、芳香族ポリエーテルケトンのポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂を主成分とする薄膜の樹脂フィルムとされる。
主成分のポリエーテルエーテルケトン樹脂は、化学式(1)で表される化学構造を有する熱可塑性樹脂である。
化学式(1)のnは、機械的物性の観点からすると、10以上が好ましく、20以上がより好ましい。この一方、ポリエーテルエーテルケトン樹脂を容易に製造する観点からすると、化学式(1)のnは、5000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましい。すなわち、化学式(1)のnは、10以上5000以下、好ましくは20以上1000以下が最適である。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲において、エーテルサルホン等の他の共重合可能な単量体とのブロック共重合体、ランダム共重合体、あるいは変性体でも良い。また、ポリエーテルエーテルケトン樹脂は、化学式(1)で表されるポリエーテルケトン単位の割合が、100モル%に対して50モル%以上100モル%以下、好ましくは70モル%以上100モル%以下、より好ましくは80モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは100モル%が最適である。これは、芳香族ポリエーテルケトン単位の割合が上記下限値以上であれば、耐熱性と機械的物性の向上が期待できるからである。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂層11には、必要に応じ、ポリエーテルエーテルケトン樹脂以外の熱可塑性樹脂が選択的に含まれる。この熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、脂肪族ポリアミド等があげられる。但し、熱可塑性樹脂の含有量は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂層11の導電性、耐錆性、耐溶剤性、耐薬品性、成形性を維持する観点からすると、できるだけ少ないことが望ましい。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂層11におけるポリエーテルエーテルケトン樹脂の含有量は、優れた耐錆性、耐溶剤性、耐薬品性を得るためには、90質量%以上100質量%以下、好ましくは95質量%以上100質量%以下が最適である。また、ポリエーテルエーテルケトン樹脂層11は、単層多層を特に問うものではないが、多層の場合には、耐錆性、耐溶剤性、耐薬品性の低下を防ぐため、全ての層にポリエーテルエーテルケトン樹脂が含まれることが望ましい。ポリエーテルエーテルケトン樹脂層11の表面には、各種の表面処理により、カルボキシ基やヒドロキシ基等の親水基が形成されても良い。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂層11の厚さは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂層11の可撓性や柔軟性を確保する観点から、1μm以上300μm以下、好ましくは5μm以上250μm以下、より好ましくは5μm以上200μm以下が良い。
なお、ポリエーテルエーテルケトン樹脂層11の厚さはポリエーテルエーテルケトン樹脂層11の平均厚さであり、この平均厚さは、マイクロメータを用い、任意の10箇所以上について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
このようなポリエーテルエーテルケトン樹脂層11は、融点が343℃、ガラス転移点が143℃であり、500℃まで安定する耐熱性を得ることができる他、耐錆性、耐薬品性、耐摩耗性、摺動性等に優れる。また、長時間の浸漬により濃硫酸には酸化するものの、溶かせる溶剤がないので、耐溶剤性に優れ、超音波シールが容易であり、レーザにより溶着や印字が可能となる。さらに、難燃性にも優れ、吸水率が低く(0.05%)、純度が高いので、例え燃焼しても、毒性ガスの発生を防止することが可能となる。
導電粘着層12は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体と、粘着剤とを含み、好ましくはグラウンド線16が接続される。導電粘着層12が導電剤層13と粘着剤層14とに分割される場合、導電剤層13にπ共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体が含有される。導電性複合体のポリアニオンはπ共役系導電性高分子に配位し、ポリアニオンのアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープするため、導電性を有する導電性複合体を形成する。ポリアニオンにおいては、全てのアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープせず、余剰のアニオン基を有している。余剰のアニオン基は親水基であるため、導電性複合体は水分散性を有する。
π共役系導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば、本発明の効果を有する限り、特に限定されるものではないが、例えばポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等があげられる。空気中での安定性の観点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類、及びポリアニリン系導電性高分子が好ましいが、透明性を加味すると、ポリチオフェン系導電性高分子が好適である。
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)があげられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)があげられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)があげられる。
これらπ共役系導電性高分子の中では、優れた導電性、透明性、耐熱性を得る観点からすると、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。この導電性複合体に含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でも良いが、特に制約されず、2種類以上でも良い。
ポリアニオンとは、アニオン基を有するモノマー単位を分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能し、π共役系導電性高分子の導電性を向上させるよう機能する。ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、又はカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリ(4-スルホブチルメタクリレート)、ポリメタクリルオキシベンゼンスルホン酸等のスルホン酸基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等のカルボン酸基を有する高分子があげられる。ポリアニオンは、これらの単独重合体であっても良いし、2種以上の共重合体でも良い。
これらポリアニオンの中では、導電性をより向上させることができることから、スルホン酸基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸が最適である。また、ポリアニオンは、1種を単独で使用しても良いが、2種以上を併用しても良い。
ポリアニオンの質量平均分子量は、2万以上100万以下、好ましくは10万以上50万以下が良い。このポリアニオンの質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて溶出時間を測定し、分子量既知のポリスチレン標準物質から、予め得た溶出時間対分子量の校正曲線に基づいて求めた質量基準の分子量のことである。
導電性複合体中のポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下、好ましくは10質量部以上700質量部以下、より好ましくは100質量部以上500質量部以下の範囲が良い。これは、ポリアニオンの含有割合が上記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなる傾向にあり、導電性の向上に資するからである。ポリアニオンの含有量が上記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子を充分に含有させることができ、優れた導電性を確保できる。
ポリアニオンは、アニオン基の一部、特にπ共役系導電性高分子へのドープに関与しない余剰のアニオン基に、1分子中にエポキシ基を1つ以上有するエポキシ基含有化合物を反応させて疎水性置換基を形成しても良い。これは、エポキシ基含有化合物により、ポリアニオンに疎水性置換基を形成すれば、導電性複合体の親油性が向上し、有機溶剤に対する導電性複合体の分散性を向上させることができるからである。したがって、導電性複合体が有機溶媒に分散している分散液を容易に調製することが可能となる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂層11は疎水性が高いため、導電性複合体が有機溶剤分散液であれば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂層11に対する導電粘着層12の密着性を向上させることができる。
また、導電粘着層12に含まれる粘着剤は疎水性であることが多いため、導電粘着層12を形成する場合には、ポリアニオンに疎水性置換基を形成して疎水化することが好ましい。これは、導電性複合体のポリアニオンに疎水性置換基を形成すれば、導電性複合体と粘着剤との親和性を向上させることができるからである。そのため、導電粘着層12の導電性と粘着性の両方を向上させることが可能となる。
なお、導電性複合体の詳細な分析は必ずしも容易ではないが、ポリアニオンのアニオン基とエポキシ基含有化合物との反応により、-CH2-CHOHR1で示される疎水性置換基が形成されると推測される。R1はエポキシ基含有化合物に由来する置換基である。疎水性置換基は、アニオン基の酸素原子に結合する。
エポキシ基含有化合物としては、1分子中にエポキシ基を1つ有する単官能エポキシ化合物、1分子中にエポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ化合物があげられる。エポキシ基含有化合物は、凝集又はゲル化を防止する観点からすると、1分子中にエポキシ基を1つ有する化合物が好ましい。このエポキシ基含有化合物は、1種を単独で使用しても良いが、2種以上を併用しても良い。
単官能エポキシ化合物としては、例えばプロピレンオキサイド、2,3-ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシペンタン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシデカン、1,3-ブタジエンモノオキサイド、1,2-エポキシテトラデカン、グリシジルメチルエーテル、1,2-エポキシオクタデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、エチルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、tert-ブチルグリシジルエーテル、1,2-エポキシエイコサン、2-(クロロメチル)-1,2-エポキシプロパン、グリシドール、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、ブチルグリシジルエーテル、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシ-9-デカン、2-(クロロメチル)-1,2-エポキシブタン、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-1H,1H,2H,2H,3H,3H-トリフルオロブタン、アリルグリシジルエーテル、テトラシアノエチレンオキサイド、グリシジルブチレート、1,2-エポキシシクロオクタン、グリシジルメタクリレート、1,2-エポキシシクロドデカン、1-メチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシシクロペンタデカン、1,2-エポキシシクロペンタン、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-1H,1H,2H,2H,3H,3H-ヘプタデカフルオロブタン、3,4-エポキシテトラヒドロフラン、グリシジルステアレート、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシコハク酸、グリシジルフェニルエーテル、イソホロンオキサイド、α-ピネンオキサイド、2,3-エポキシノルボルネン、ベンジルグリシジルエーテル、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3-[2-(パーフルオロヘキシル)エトキシ]-1,2-エポキシプロパン、1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-(3-グリシジルオキシプロピル)トリシロキサン、9,10-エポキシ-1,5-シクロドデカジエン、4-tert-ブチル安息香酸グリシジル、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、2-tert-ブチル-2-[2-(4-クロロフェニル)]エチルオキシラン、スチレンオキサイド、グリシジルトリチルエーテル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-フェニルプリピレンオキサイド、コレステロール-5α,6α-エポキシド、スチルベンオキサイド、p-トルエンスルホン酸グリシジル、3-メチル-3-フェニルグリシド酸エチル、N-プロピル-N-(2,3-エポキシプロピル)ペルフルオロ-n-オクチルスルホンアミド、(2S,3S)-1,2-エポキシ-3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-4-フェニルブタン、3-ニトロベンゼンスルホン酸(R)-グリシジル、3-ニトロベンゼンスルホン酸-グリシジル、パルテノリド、N-グリシジルフタルイミド、エンドリン、デイルドリン、4-グリシジルオキシカルバゾール、7,7-ジメチルオクタン酸[オキシラニルメチル]、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、C12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテル等があげられる。
多官能エポキシ化合物としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,7-オクタジエンジエポキシド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2:3,4-ジエポキシブタン、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、イソシアヌル酸トリグリシジルネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,2:3,4-ジエポキシブタン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアネート等が該当する。
エポキシ基含有化合物は、有機溶剤への溶解性が高くなることから、分子量が50以上2,000以下が好ましく、炭素数が10以上30以下の範囲が好ましい。
ポリアニオンは、アニオン基の一部に、特にπ共役系導電性高分子へのドープに関与しない余剰のアニオン基に、アミン化合物を反応させて疎水性置換基を形成しても良い。これは、アミン化合物により、ポリアニオンに疎水性置換基を形成すれば、導電性複合体の親油性が高くなり、有機溶剤に対する導電性複合体の分散性を向上させることができるからである。したがって、導電性複合体が有機溶媒に分散した分散液を容易に調製することができる。
なお、導電性複合体の詳細な分析は必ずしも容易ではないが、ポリアニオンのアニオン基とアミン化合物との反応により、-HNR2R3R4で示される疎水性置換基が形成されると推測される。R2,R3,R4は、後述するアミン化合物に由来する置換基である。例えば、R2,R3,R4の少なくとも1つは炭化水素基(但し、その炭化水素基の水素原子の少なくとも一つがアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基等で置換されていても良い。)である。R2,R3,R4のうち、炭化水素基でないものは水素原子である。疎水性置換基は、アニオン基の酸素原子に結合する。
アミン化合物は、第一級アミン、第二級アミン、及び第三級アミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。このアミン化合物は、1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。第一級アミンとしては、例えばアニリン、トルイジン、ベンジルアミン、エタノールアミン等が該当する。また、第二級アミンとしては、例えばジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、ジナフチルアミン等が該当する。
第三級アミンとしては、例えばトリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリナフチルアミン等が該当する。これらアミン化合物のうち、導電性複合体を容易に疎水化できることから、第三級アミンが好ましく、トリブチルアミン、及びトリオクチルアミンの少なくとも一方が好適である。
導電粘着層12は、層の強度を向上させたい場合には、バインダ樹脂が必要に応じて添加される。このバインダ樹脂としては、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、酢酸ビニル樹脂等があげられる。これらの中では、低コストである点から、アクリル樹脂とポリエステル樹脂が好適である。
導電粘着層12におけるバインダ樹脂の含有量は、導電性複合体100質量部に対し、100質量部以上100000質量部以下、好ましくは300質量部以上60000質量部以下、より好ましくは600質量部以上30000質量部以下が良い。これは、バインダ樹脂の含有量が上記下限値以上であると、導電粘着層12の強度がより高くなり、上記上限値以下であると、充分な導電性を確保できるからである。
導電粘着層12は、導電性をより向上させたい場合には、高導電化剤が選択的に添加される。この高導電化剤には、π共役系導電性高分子、ポリアニオン、及びバインダ樹脂は該当しない。高導電化剤は、糖類、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物、1個以上のヒドロキシ基、及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
導電性高分子分散液に含有される高導電化剤は、1種であっても良いが、2種以上でも良い。
導電粘着層12における高導電化剤の含有量は、導電性複合体100質量部に対し、1質量部以上10000質量部以下、好ましくは10質量部以上5000質量部以下、より好ましくは100質量部以上2500質量部以下が良い。これは、導電粘着層12における高導電化剤の含有量が上記下限値以上であれば、高導電化剤添加による導電性向上の効果が充分に発揮され、上記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下を防止することができるからである。
導電粘着層12には、必要に応じ、π共役系導電性高分子、ポリアニオン、バインダ樹脂、及び高導電化剤以外の様々な添加剤が選択的に添加される。この添加剤としては、本発明の効果が得られる限り、特に制限されず、例えば界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等があげられる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤があげられるが、保存安定性の面からノニオン系が最適である。また、ポリビニルピロリドン等のポリマー系界面活性剤を添加しても良い。また、無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等があげられる。金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより、生成することができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が該当する。また、カップリング剤としては、エポキシ基、ビニル基、又はアミノ基を有するシランカップリング剤等が該当する。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が該当する。また、紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等があげられる。
導電粘着層12が添加剤を含有する場合、添加物の含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体100質量部に対し、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
導電粘着層12は、導電性複合体の他、粘着剤を含有する。導電粘着層12が導電剤層13と粘着剤層14とに分割される場合、粘着剤層14に粘着剤が含有される。この粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、ブタジエンゴム系粘着剤、イソプレン系粘着剤、クロロプレン系粘着剤等があげられる。これらの粘着剤の中でも、粘着性が高く、低コストなアクリル系粘着剤が好適である。粘着剤は、1種を単独で使用しても良いが、2種以上を併用することも可能である。
アクリル系粘着剤は、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を有するアクリル重合体を主成分として含有する。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルがあげられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
なお、上記「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の総称である。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の中では、アクリル系粘着剤の粘着性をより向上させるため、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシルが好ましい。
アクリル系粘着剤を構成するアクリル重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位に加えて、架橋性アクリル単量体単位を有しても良い。アクリル系粘着剤を構成するアクリル重合体が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位に加えて、架橋性アクリル単量体単位を有すると、架橋剤による架橋が容易になる。アクリル系粘着剤を構成するアクリル重合体を架橋させると、導電粘着層12の耐熱性を向上させることができる。また、アクリル重合体を架橋させると、導電粘着層12の凝集力が高くなり、剥離時の凝集破壊を防ぐことができる。そのため、導電粘着層12に再剥離性を生じさせることが可能となる。
架橋性アクリル単量体としては、ヒドロキシ基含有アクリル単量体、カルボキシ基含有アクリル単量体、アミノ基含有アクリル単量体、グリシジル基含有アクリル単量体等があげられ、これらの中ではヒドロキシ基含有アクリル単量体が最適である。この架橋性アクリル単量体は、1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。ヒドロキシ基含有アクリル単量体を有するアクリル重合体は、後述する多官能イソシアネート化合物により、アクリル重合体を容易に架橋することができる。
ヒドロキシ基含有アクリル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルがあげられる。このヒドロキシ基含有アクリル単量体は、1種を単独で使用しても良いが、2種以上を併用することもできる。
カルボキシ基アクリル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グラタコン酸等のα,β-不飽和カルボン酸やその無水物等があげられる。また、アミノ基含有アクリル単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド等があげられる。グリシジル基含有アクリル単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル等があげられる。
アクリル重合体が架橋性アクリル重合体単位を有する場合、アクリル重合体おける架橋性アクリル単量体単位の含有量は、全単量体単位100質量%に対し、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。これは、架橋性アクリル単量体単位の含有量が上記下限値以上であれば、充分な架橋が期待でき、導電粘着層12の耐熱性を向上させることができ、上記上限値以下であれば、充分な粘着力を確保できるからである。
アクリル重合体が架橋性アクリル単量体単位を有する場合、アクリル系粘着剤は、アクリル重合体が架橋剤により架橋されても良い。この架橋剤としては、例えば、1分子中にイソシアネート基を2つ以上有する多官能イソシアネート化合物、1分子中にエポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ化合物等が該当する。架橋剤は、1種を単独で使用しても良いが、2種以上を併用することも可能である。また、架橋剤は、ヒドロキシ基含有アクリル単量体単位を有するアクリル重合体を架橋する場合、アクリル重合体を架橋させやすいことから、多官能イソシアネート化合物が好ましい。
多官能イソシアネート化合物としては、脂肪族多官能イソシアネート、脂環族多官能イソシアネート及び芳香族多官能イソシアネートが該当する。この多官能イソシアネートの具体例としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、4,4’-ジシクロメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタトリイソシアネート、トリメチルへキサメチレンジイソシアネートなどがあげられる。
多官能イソシアネートは、ジイソシアネートを、NCO/OHモル比が2/1以上となるように変性した変性多官能イソシアネートより形成した変性ジイソシアネートであっても良い。変性ポリイソシアネートとしては、例えば、上記多官能イソシアネートを多価アルコールと反応させて得られるポリウレタンポリイソシアネート、多官能イソシアネートを重合させることによって得られる、イソシアヌレート環を含んだポリイソシアネート、多官能イソシアネートと水と反応させて得られる、ビュレット結合を含んだポリイソシアネート等があげられる。多官能イソシアネート化合物は、1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
アクリル重合体の組成は、ガラス転移点が好ましくは150℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは0℃以下になる組成が好ましい。このガラス転移点は、示差走査熱量測定(DSC)により求めた値である。ガラス転移点が150℃以下であれば、粘着性の向上が期待できる。
アクリル重合体の組成は、ガラス転移点が-150℃以上になる組成が好ましい。ガラス転移点-150℃以上のアクリル重合体であれば、容易に製造することができる。アクリル重合体のガラス転移点を低くすることのできるアクリル単量体としては、例えばアクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシルがあげられる。アクリル重合体において、これらモノマー由来の単量体単位の割合が多くなる程、ガラス転移点が低くなる。
アクリル重合体の質量平均分子量は、1万以上200万以下、好ましくは3万以上100万以下が良い。これは、アクリル重合体の質量平均分子量が上記下限値以上であれば、導電粘着層12の耐熱性をより高くすることができるからである。また、アクリル重合体の質量平均分子量が上記上限値以下であれば、導電粘着層12の粘着力をより向上させることが可能となる。
アクリル系粘着剤におけるアクリル重合体の含有量は、アクリル系粘着剤100質量%に対し、70質量%以上100質量%以下、好ましくは80質量%100質量%以下、より好ましくは90質量%以上100質量%以下が良い。これは、アクリル系粘着剤におけるアクリル重合体の含有量が上記下限値以上であれば、充分に高い粘着力を確保することができるからである。
導電粘着層12の粘着剤がアクリル系粘着剤の場合、このアクリル系粘着剤に、粘着付与剤、無機粒子、有機粒子等の粘着力調整剤を選択的に含有することができる。粘着付与剤としては、例えば石油樹脂、ロジン、テルペン系樹脂等があげられる。また、無機粒子としては、例えばタルク、ガラスビーズ、シリカ粒子、炭酸カルシウム等があげられる。有機粒子としては、例えばアクリル系粘着剤とは異なるアクリル樹脂粒子、ポリスチレン粒子、ポリウレタン粒子等があげられる。
アクリル系粘着剤における粘着力調整剤の含有量は、アクリル系粘着剤100質量%に対し、0.01質量%以上20質量%以下、好ましくは0.2質量%10質量%以下が良い。これは、アクリル系粘着剤における粘着力調整剤の含有量が上記下限値以上であれば、粘着力調整剤により、粘着力を容易に調整することができるからである。また、アクリル系粘着剤における粘着力調整剤の含有量が上記上限値以下であれば、優れた粘着力を確保することが可能となる。
導電粘着層12の厚さは、導電性と粘着性の両立を図る観点から、1.05μm以上51μm以下、好ましくは5.1μm以上30μm以下が良い。この導電粘着層12が導電剤層13と粘着剤層14とに分割される場合、導電剤層13の厚さは、薄型化と導電性の両立を図る観点から、0.05μm以上1μm以下、好ましくは0.1μm以上1μm以下が良い。また、粘着剤層14の厚さは、取扱性と粘着性の両立を図る観点から、1μm以上50μm以下、好ましくは5μm以上40μm以下、より好ましくは5μm以上30μm以下が良い。
このような制電粘着PEEK樹脂テープ10は、導電粘着層12の粘着力低下を確実に防ぐ観点から、10℃以上150℃以下、好ましくは20℃以上100℃以下、より好ましくは60℃以上80℃以下、さらに好ましくは65℃以上75℃以下の温度環境で使用されると良い。
上記構成において、制電粘着PEEK樹脂テープ10を製造する場合には、ポリエーテルエーテルケトン樹脂層11としてポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの表面に所定の表面処理を施し、その後、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの表面に導電粘着層12用の導電性粘着剤塗工液をグラビア印刷等して乾燥させれば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂層11と導電粘着層12とが積層した制電粘着PEEK樹脂テープ10を製造することができる。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムは、少なくともポリエーテルエーテルケトン樹脂含有の成形材料を溶融押出成形機で溶融混練し、この溶融押出成形機の先端のTダイスから薄膜の樹脂フィルムに押出成形し、この押し出した樹脂フィルムを冷却ロールと圧着ロールとに挟持させて冷却した後、巻取機の巻取管に巻き取ることで製造することができる。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの所定の表面処理としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等があげられる。所定の表面処理を施せば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの表面に親水基(ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボニル基等)を形成させることができ、この親水基により、導電粘着層12の密着性を向上させることができる。所定の表面処理の中では、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの表面に簡便に親水基を導入できることから、コロナ放電処理の採用が最適である。
導電性粘着剤塗工液は、導電性複合体、粘着剤、及び分散媒を含有し、高導電化剤や添加剤等が選択的に添加される。導電性粘着剤塗工液には、導電性複合体の製造過程で水を使用するため、水が少量含まれても良い。分散媒の有機溶剤と水の合計に対する水の含有量は、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
導電性粘着剤塗工液は、π共役系導電性高分子、及びポリアニオンを含む導電性複合体水分散体にエポキシ基含有化合物を添加し、導電性複合体を析出させて析出物を形成させ、この析出物を回収して粘着剤と有機溶剤とを添加することにより、調製することができる。また、導電性粘着剤塗工液に含まれる分散媒は、粘着剤が疎水性であることが多いため、有機溶剤を含有することが好ましい。この有機溶剤としては、導電性複合体と粘着剤の両方に容易に分散するアルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が好ましく、ケトン系溶剤がより好ましい。ケトン系溶剤の中では、メチルエチルケトンが最適である。
また、制電粘着PEEK樹脂テープ10を製造してその導電粘着層12を導電剤層13と粘着剤層14とにする場合には、ポリエーテルエーテルケトン樹脂層11としてポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの表面に上記した所定の表面処理を施し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの表面に導電性高分子分散液をグラビア印刷等して乾燥させることにより、導電剤層13を形成し、その後、この導電剤層13の表面に粘着剤塗工液をグラビア印刷等して乾燥させることにより、粘着剤層14を形成すれば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂層11、導電剤層13、及び粘着剤層14が三層に積層した制電粘着PEEK樹脂テープ10を製造することができる。
導電性高分子分散液は、導電性複合体と分散媒とを含有し、高導電化剤、バインダ樹脂、添加剤等が選択的に添加される。この導電性高分子分散液を調製する方法としては、例えばポリアニオンの水溶液中で、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを化学酸化重合し、導電性複合体水分散体からなる導電性高分子分散液を得る方法があげられる。
導電性高分子分散液に含まれる導電性複合体の含有量としては、導電性高分子分散液の総質量に対し、0.1質量%以上10質量%以下、好ましくは0.3質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上4質量%以下が好適である。導電性複合体は水分散体として得られるので、導電性高分子分散液においても、分散媒は水を含有しても良い。導電性高分子分散液に分散媒として有機溶剤が含まれる場合、導電性高分子分散液を構成する全分散媒における水の含有割合は、例えば1質量%以上99質量%以下の範囲で適宜選択される。
分散媒としては、水、有機溶剤、水と有機溶剤との混合液があげられる。この分散媒は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムに対し、導電性高分子分散液の濡れ性を向上させる観点からすると、有機溶剤を含むことが好ましい。この有機溶剤としては、例えばアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等が該当する。
次に、制電粘着PEEK樹脂テープ10を使用して半導体製造設備1の一部であるパイプ2の静電気トラブルを回避する場合について説明すると、この場合には図1に示すように、パイプ2の外周面周方向に広幅の制電粘着PEEK樹脂テープ10の導電粘着層12を粘着することにより、パイプ2の外周面を制電粘着PEEK樹脂テープ10により被覆し、制電粘着PEEK樹脂テープ10の巻き終わり部を外側に折り返して接続領域15に形成し、この露出した接続領域15の導電粘着層12をグラウンド線16でグラウンドして電荷を除去するようにすれば、パイプ2に制電粘着PEEK樹脂テープ10を巻着し、帯電やスパークを防止する機能を付与することができる。
この際、広幅の制電粘着PEEK樹脂テープ10の巻き終わり部を外側に折り返して接続領域15に形成しても良いが、必要に応じ、制電粘着PEEK樹脂テープ10の巻き終わり部を外側に折り返すことなく、制電粘着PEEK樹脂テープ10の導電粘着層12にグラウンド線16を接続してグラウンドしても良い。
導電粘着層12が導電剤層13と粘着剤層14とに分割されている場合には、広幅の制電粘着PEEK樹脂テープ10の粘着剤層14を粘着し、粘着剤層14にグラウンド線16を接続してグラウンドすることができる。好ましくは、確実な導通を得る観点から、広幅の制電粘着PEEK樹脂テープ10の巻き終わり部を外側に折り返して露出した粘着剤層14の少なくとも一部を除去し、導電剤層13を部分的に露出させてグラウンド接続すると良い。勿論、必要に応じ、制電粘着PEEK樹脂テープ10の巻き終わり部を外側に折り返すことなく、制電粘着PEEK樹脂テープ10の導電剤層13にグラウンド線16を接続してグラウンドすることもできる。
広幅の制電粘着PEEK樹脂テープ10が巻着されたパイプ2は超純水、純水、薬液を流入させたり、流出させるが、この際、例え薬液等の摩擦で電荷が生じても、電荷は、パイプ2から制電粘着PEEK樹脂テープ10の導電粘着層12とグラウンド線16とを経由して大地に瞬間的に流れ、失われる。
上記構成によれば、制電粘着PEEK樹脂テープ10をポリエーテルエーテルケトン樹脂層11と導電粘着層12との積層構造とするので、優れた導電性によりパイプ2の静電気トラブルを回避することができる他、パイプ2の耐錆性、耐溶剤性、耐薬品性等の大幅な向上に資することができる。具体的には、絶縁性のパイプ2に制電粘着PEEK樹脂テープ10で帯電防止機能を付与するので、例えパイプ2に人体や物体が接触しても、これらの間に電流が一時的に流れ、スパークするおそれを排除することができる。
係るスパークするおそれの排除により、例え引火点の低い薬液を使用したり、有機溶剤の蒸気が存在しても、引火することがないので、安全性の大幅な向上が大いに期待できる。また、パイプ2の耐有機溶剤性や耐酸性の著しい向上も期待でき、しかも、制電粘着PEEK樹脂テープ10をガラス繊維等で補強する必要もない。また、制電粘着PEEK樹脂テープ10の導電粘着層12の粘着力を調整して弱粘着性とすれば、制電粘着PEEK樹脂テープ10を着脱自在の再剥離可能として粘着作業の便宜を大いに図ることができる。
また、制電粘着PEEK樹脂テープ10を10℃以上150℃以下の温度環境で使用すれば、例えアクリル系粘着剤を使用しても、アクリル系粘着剤の粘着力が低下して制電粘着PEEK樹脂テープ10が脱落するのを有効に防止することが可能となる。さらに、パイプ2の材料を金属に変更する必要がないので、コンタミネーションにより薬液の清浄度が低下することがない。
次に、図4は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、半導体製造設備1の一部を、非導電性の超純水や純水、イソプロピルアルコール等を流通させる洗浄装置のパイプ2と継手3とし、これらパイプ2と継手3の外周面周方向に細長い制電粘着PEEK樹脂テープ10の導電粘着層12を間隔をあけながら連続してスパイラル巻きに粘着し、このスパイラル巻きした制電粘着PEEK樹脂テープ10をグラウンド線16でグラウンドして電荷を除去するようにしている。
継手3は、特に限定されるものではないが、例えば四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン系樹脂により、複数本のパイプ2接続用のエルボ4、ソケット、ニップル、エルボ、レジューサ、ブシュ、クロス、ユニオン、プラグ、フランジ等に成形され、必要に応じ、可撓性が付与される。この継手3も、イソプロピルアルコールを流通させる場合には、耐薬品性等に優れる四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体により、成形されるのが一般的である。
また、制電粘着PEEK樹脂テープ10を間隔をあけながら連続してスパイラル巻きしても良いが、制電粘着PEEK樹脂テープ10を間隔をあけることなくスパイラル巻きし、パイプ2と継手3の全面を被覆しても良い。
パイプ2と継手3のエルボ4に制電粘着PEEK樹脂テープ10をスパイラル巻きして粘着する際、制電粘着PEEK樹脂テープ10の巻き終わり部を外側に折り返して接続領域15に形成し、露出した接続領域15の導電粘着層12をグラウンド線16でグラウンドすることができる。また、導電粘着層12が導電剤層13と粘着剤層14とに分割されている場合には、制電粘着PEEK樹脂テープ10の粘着剤層14を間隔をあけながらスパイラル巻きに粘着し、制電粘着PEEK樹脂テープ10の導電剤層13にグラウンド線16を接続してグラウンドすると良い。
但し、制電粘着PEEK樹脂テープ10の巻き終わり部を外側に折り返して露出した粘着剤層14の少なくとも一部を除去し、導電剤層13を部分的に露出させてグラウンド接続することもできる。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、パイプ2と継手3という形状の異なる構造物に1本の制電粘着PEEK樹脂テープ10を巻き付けるだけで良いので、容易な施工が期待できるのは明らかである。また、制電粘着PEEK樹脂テープ10を平巻きに粘着するのではなく、斜めのスパイラル巻きに粘着するので、制電粘着PEEK樹脂テープ10全体の強度向上が期待できるのは明らかである。
次に、図5は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、半導体製造設備1の一部を、超純水、純水、イソプロピルアルコール等を流通させる洗浄装置の継手3とし、この継手3の外周面周方向に複数の広幅の制電粘着PEEK樹脂テープ10の導電粘着層12を粘着するとともに、各制電粘着PEEK樹脂テープ10の巻き終わり部を外側に折り返して接続領域15に形成し、この露出した接続領域15の導電粘着層12をグラウンド線16でグラウンドして電荷を除去するようにしている。
継手3は、特に限定されるものではないが、例えば四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン系樹脂により、T字に分岐する複数本のパイプ2接続用のT字管チーズ5等に成形される。この継手3のT字管チーズ5も、イソプロピルアルコールを流通させる場合には、耐薬品性等に優れる四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体により、成形されるのが一般的である。
継手3のT字管チーズ5に広幅の各制電粘着PEEK樹脂テープ10を粘着する際、制電粘着PEEK樹脂テープ10の巻き終わり部を外側に折り返して接続領域15に形成しても良いが、必要に応じ、制電粘着PEEK樹脂テープ10の巻き終わり部を外側に折り返すことなく、制電粘着PEEK樹脂テープ10の導電粘着層12にグラウンド線16を接続してグラウンドすることも可能である。
導電粘着層12が導電剤層13と粘着剤層14とに分割されている場合には、制電粘着PEEK樹脂テープ10の粘着剤層14を粘着し、粘着剤層14にグラウンド線16を接続してグラウンドすることができる。好ましくは、制電粘着PEEK樹脂テープ10の巻き終わり部を外側に折り返して露出した粘着剤層14の少なくとも一部を除去し、導電剤層13を一部露出させてグラウンド接続すると良い。
勿論、必要に応じ、各制電粘着PEEK樹脂テープ10の巻き終わり部を外側に折り返すことなく、制電粘着PEEK樹脂テープ10の導電剤層13にグラウンド線16を接続してグラウンドしても良い。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、樹脂製の継手3に複数枚の制電粘着PEEK樹脂テープ10を巻着して大部分を被覆するので、超純水、純水、イソプロピルアルコールとの接触に伴う継手3の帯電トラブルを有効に防止することができる。また、ポリエーテルエーテルケトン樹脂層11により、継手3の耐錆性、耐溶剤性、耐薬品性、耐有機溶剤性、耐酸性の向上が大いに期待できる。
なお、上記実施形態では洗浄装置の一部であるパイプ2や継手3を示したが、クリーンルームの屋内用のパイプ2や継手3でも良いし、屋外用のパイプ2や継手3でも良い。また、上記実施形態の制電粘着PEEK樹脂テープ10の導電粘着層12が導電剤層13と粘着剤層14とに分割されている場合には、導電剤層13と粘着剤層14の大きさを異ならせ、導電剤層13の一部を露出させても良い。また、粘着剤層14にグラウンド線16を接続してグラウンドしても良い。
また、クリーンルームの壁の樹脂パネル表面に制電粘着PEEK樹脂テープ10を粘着し、この制電粘着PEEK樹脂テープ10の周縁部の導電粘着層12をグラウンドして電荷を除去したり、ポリエーテルエーテルケトン樹脂層11により、錆び等の発生を防止することができる。また、イソプロピルアルコール用の塵除去用フィルターに制電粘着PEEK樹脂テープ10を粘着し、この制電粘着PEEK樹脂テープ10の周縁部の導電粘着層12をグラウンドして帯電防止を図ることもできる。
また、洗浄プロセスやCMPプロセスで使用する薬液槽においては、処理された酸やアルカリ等からなる薬液が排水ラインに排水される際、薬液が飛散したり、薬液が蒸発して空気中に拡散するので、薬液槽の薬液の接触する壁面や蒸気が触れる面に、制電粘着PEEK樹脂テープ10を隙間なく粘着すれば、この制電粘着PEEK樹脂テープ10により、薬液槽の材料劣化や錆びの発生を防止することが可能となる。
また、半導体製造設備1に制電粘着PEEK樹脂テープ10を貼り着ける場合、半導体製造設備1の形状や使用環境に応じ、制電粘着PEEK樹脂テープ10で全面被覆したり、隙間を確保しながらスパイラル巻きすることができる。また、制電粘着PEEK樹脂テープ10を貼り着ける場合、制電粘着PEEK樹脂テープ10を多角形に加工したり、面状、線状、螺旋状等に貼り着けることが可能である。例えば、T字管チーズ5に必要数の制電粘着PEEK樹脂テープ10をスパイラル巻きして粘着することも可能である。
また、複数の制電粘着PEEK樹脂テープ10を使用して接続する場合には、複数の制電粘着PEEK樹脂テープ10の導電粘着層12や粘着剤層13を接触させることが可能である。さらに、上記実施形態では半導体製造設備1に制電粘着PEEK樹脂テープ10を使用したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、構造体が日用品の場合、日用品(コードの結束帯等)に使用しても良い。
以下、本発明に係る制電粘着PEEK樹脂テープ付き構造体の実施例を説明する。
〔実施例1〕
先ず、導電性粘着剤塗工液を得るため、14.2gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、36.7gのポリスチレンスルホン酸とを、2000mlのイオン交換水に溶かした溶液と20℃で混合させて混合溶液を調製し、この混合溶液を20℃に保ち、攪拌しながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させ、反応液を調製した。こうして反応液を調製したら、この反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外濾過法により約2000ml溶液を除去し、この操作を3回繰り返した。
次いで、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外濾過法により約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外濾過法で約2000ml溶液を除去し、この操作を3回繰り返した。
次いで、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外濾過法で約2000mlの溶液を除去し、この操作を5回繰り返し、1.2%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)溶液、換言すれば、PEDOT-PSS水分散液を得た。PEDOT-PSS固形分に対するPSSの含有量は75質量%である。
PEDOT-PSS水分散液を得たら、このPEDOT-PSS水分散液100gに、メタノール300gとエポキシ基含有化合物〔共栄社化学株式会社製、エポライトM-1230、C12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテル〕25gを添加し、60℃で4時間加熱攪拌し、π共役系導電性高分子とポリアニオンとエポキシ基含有化合物とから形成された導電性複合体の析出物1.57gを得た。こうして導電性複合体の析出物を得たら、この析出物を315gのメチルエチルケトンに添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散処理することにより、固形分濃度0.5質量%の導電性高分子分散液を調製した。
次いで、導電性高分子分散液50gに、アクリル重合体溶液〔綜研化学株式会社製、SKダイン1720、トルエン酢酸エチル混合溶剤、固形分濃度47質量%〕50gを添加し、その後、多官能イソシアネート化合物溶液〔東ソー株式会社製、コロネートL-45E、酢酸エチル溶剤、固形分濃度45質量%〕0.465gを添加することにより、導電性粘着剤塗工液を得た。
次いで、ポリエーテルエーテルケトン樹脂層として、平均厚さが50μmのポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルム〔信越ポリマー株式会社製〕を用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの表面にコロナ放電処理を施した。こうしてポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの表面にコロナ放電処理を施したら、このポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの表面に導電性粘着剤塗工液をNo.12のバーコータにより塗工し、導電性粘着剤塗工液を100℃、2分間の条件で乾燥させて導電粘着層を形成した。
次いで、導電粘着層の表面に、保護用のポリオレフィン製の離型フィルムを粘着し、23℃の環境下で7日間放置し、粘着剤を充分に架橋させることにより、制電粘着PEEK樹脂テープを製造した。制電粘着PEEK樹脂テープを製造したら、この制電粘着PEEK樹脂テープを幅2cmに裁断してテープ形とし、制電粘着PEEK樹脂テープから離型フィルムを剥離して導電粘着層を露出させ、この導電粘着層をポリエーテルエーテルケトン樹脂製の半導体製造用パイプに徐々に密着させ、制電粘着PEEK樹脂テープを半導体製造用パイプに巻着するとともに、制電粘着PEEK樹脂テープをグラウンド接続した。
そして、半導体製造用パイプの内部にイオン交換水を流しながら、半導体製造用パイプに巻着した制電粘着PEEK樹脂テープの表面の帯電圧をデジタル低電位測定器〔春日電機株式会社製:製品名 KSD-3000〕を用いて測定し、測定結果を表1に記載した。
〔実施例2〕
実施例1のPEDOT-PSS水分散液15gに、メタノール15gを添加するとともに、トリオクチルアミン0.16g、及びメチルエチルケトン59.84gの混合液を添加し、その後、メチルメタクリレート重合体溶液(質量平均分子量50000、固形分濃度30%)を添加することにより、導電性高分子分散液を調製した。
次いで、ポリエーテルエーテルケトン樹脂層として、平均厚さが50μmのポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルム〔信越ポリマー株式会社製〕を用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの表面にコロナ放電処理を施した。こうしてポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの表面にコロナ放電処理を施したら、このポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの表面に導電性高分子分散液をNo.12のバーコータにより塗工し、導電性粘着剤塗工液を150℃、1分間の条件で乾燥させて導電剤層を形成した。
次いで、アクリル重合体溶液〔綜研化学株式会社製、SKダイン1720、トルエン酢酸エチル混合溶剤、固形分濃度47質量%〕50gにメチルエチルケトン50gを添加し、さらに多官能イソシアネート化合物溶液〔東ソー株式会社製、コロネートL-45E、酢酸エチル溶剤、固形分濃度45質量%〕0.465gを添加し、粘着剤塗工液を得た。こうして粘着剤塗工液を得たら、この粘着剤塗工液をNo.12のバーコータを用いて導電剤層の表面に塗工し、100℃、2分間乾燥させて粘着剤層を形成した。
次いで、粘着剤層の表面に、保護用のポリオレフィン製の離型フィルムを粘着し、23℃の環境下で7日間放置し、粘着剤層を充分に架橋させることにより、制電粘着PEEK樹脂テープを製造した。制電粘着PEEK樹脂テープの製造後、制電粘着PEEK樹脂テープを幅2cmに裁断してテープ形とし、制電粘着PEEK樹脂テープから離型フィルムを剥離して粘着剤層を露出させ、この粘着剤層をポリエーテルエーテルケトン樹脂製の半導体製造用パイプに徐々に密着させ、制電粘着PEEK樹脂テープを半導体製造用パイプに巻着するとともに、制電粘着PEEK樹脂テープをグラウンド接続した。
そして、半導体製造用パイプの内部にイオン交換水を流しながら、半導体製造用パイプに巻着した制電粘着PEEK樹脂テープの表面の帯電圧をデジタル低電位測定器〔春日電機株式会社製:製品名 KSD-3000〕を用いて測定し、測定結果を表1に記載した。
〔評 価〕
各実施例における制電粘着PEEK樹脂テープの巻かれたパイプの帯電圧は、実用上問題のない優れた結果を得ることができた。また、制電粘着PEEK樹脂テープのポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムは、濃硫酸には酸化するものの、耐錆性、耐溶剤性、耐薬品性に優れた特徴を有するのは既に公知であるので、制電粘着PEEK樹脂テープの巻かれたパイプの耐錆性、耐溶剤性、耐薬品性の向上が大いに期待できると推測される。