以下、半導体装置をインバータに具体化した一実施形態について説明する。なお、本実施形態のインバータは、バッテリ式の産業車両としてのフォークリフトに搭載される。インバータは、バッテリから入力された直流電力を交流電力に変換して、三相モータに出力する。これにより、三相モータが駆動する。
図1に示すように、半導体装置としてのインバータ10は、ヒートシンク11を備える。ヒートシンク11は、アルミニウム系金属や銅等の金属製である。ヒートシンク11は、板状の固定部12と、固定部12の板厚方向の一面から突出するフィン13と、を備える。
インバータ10は、パワー基板20と、制御基板60と、コンデンサ基板50と、を備える。制御基板60は、パワー基板20の板厚方向においてパワー基板20と間隔を空けて配置されている。コンデンサ基板50は、パワー基板20と、制御基板60との間に配置されている。コンデンサ基板50は、パワー基板20の板厚方向においてパワー基板20と間隔を空けて配置されている。パワー基板20の板厚方向と、制御基板60の板厚方向と、コンデンサ基板50の板厚方向は一致している。ヒートシンク11、パワー基板20、コンデンサ基板50、及び、制御基板60は、層状に配置されているといえる。
インバータ10は、複数のパワー素子24と、2つの入力端子25と、3つの出力端子35と、2つの接続部材としてのスペーサ40と、ピンヘッダ46と、を備える。パワー素子24、入力端子25、出力端子35、スペーサ40、及び、ピンヘッダ46は、パワー基板20に実装されている。本実施形態のパワー素子24は、MOSFETである。なお、パワー素子24としては、MOSFET以外の半導体素子、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタを用いることもできる。
図2に示すように、複数のパワー素子24は、第1~第6パワー素子群G1~G6に分かれて配置されている。本実施形態の各パワー素子群G1~G6は、7個のパワー素子24によって形成されている。よって、本実施形態のインバータ10は、計42個のパワー素子24を備える。各パワー素子群G1~G6において、7個のパワー素子24は、等間隔で一直線上に並んでいる。以下、各パワー素子群G1~G6を構成するパワー素子24の並ぶ方向を第1方向とする。第1方向でのパワー基板20の両端のうち、一方を一端20aとし、一端20aとは反対側の他方を他端20bとする。第1方向での各パワー素子群G1~G6の中心C24は、第1方向でのパワー基板20の中心C20よりもパワー基板20の一端20a寄りに位置している。ピンヘッダ46は、パワー基板20において第1~第6パワー素子群G1~G6が実装されていない部分に実装されている。よって、ピンヘッダ46は、第1方向においてパワー基板20の他端20b寄りに位置している。
各パワー素子群G1~G6を構成する7個のパワー素子24を、第1方向におけるパワー基板20の一端20aから他端20bに向かう順に第1~第7パワー素子24a~24gとする。第1パワー素子24aは、第1方向の一端に位置する一端側パワー素子であり、第7パワー素子24gは、第1方向の他端に位置する他端側パワー素子である。第1パワー素子24aは、パワー基板20の一端20aに最も近いパワー素子24であり、第7パワー素子24gは、パワー基板20の他端20bに最も近いパワー素子24である。第1方向における第1パワー素子24aとパワー基板20の一端20aとの距離は、第1~第6パワー素子群G1~G6で同じである。本実施形態の第1方向でのパワー素子群G1~G6の中心C24は、第1方向での第4パワー素子24dの中心と一致している。第1方向において第1~第6パワー素子群G1~G6を構成する第1パワー素子24aと、パワー基板20の一端20aとの最短距離を第1距離L1とする。第1方向において第1~第6パワー素子群G1~G6を構成する第7パワー素子24gと、パワー基板20の他端20bとの最短距離を第2距離L2とする。第1距離L1は、第2距離L2よりも短い。
各パワー素子群G1~G6は、間隔を空けて配列されている。詳細にいえば、各パワー素子群G1~G6は、パワー基板20の板厚方向の面に沿う方向のうち、第1方向に交差する方向に配列されている。以下、第1~第6パワー素子群G1~G6の配列方向を第2方向とする。第1パワー素子群G1は、インバータ10におけるU相の上アームを構成し、第2パワー素子群G2は、インバータ10におけるU相の下アームを構成している。第3パワー素子群G3は、インバータ10におけるV相の下アームを構成し、第4パワー素子群G4は、インバータ10におけるV相の上アームを構成している。第5パワー素子群G5は、インバータ10におけるW相の上アームを構成し、第6パワー素子群G6は、インバータ10におけるW相の下アームを構成している。
パワー基板20は、固定部12の板厚方向の両面のうちフィン13が設けられた面の反対面に固定されている。本実施形態のパワー基板20は、絶縁金属基板であり、金属製のベースに絶縁層を設けたものである。
図4に示すように、パワー基板20は、パワー素子24が電気的に接続される第1導体パターン21、第2導体パターン22、及び、第3導体パターン23を備える。なお、図示を省略するが、パワー基板20は、2つの第1導体パターン21、3つの第2導体パターン22、及び、2つの第3導体パターン23を備える。第1~第3導体パターン21~23は、互いに間隔を空けて第2方向に並んで配置されている。第1導体パターン21は入力端子25に接続され、第2導体パターン22は出力端子35に接続され、第3導体パターン23はスペーサ40に接続されている。また、第1~第3導体パターン21~23には、パワー素子24が接続されている。
第1導体パターン21は、第1~第6パワー素子群G1~G6を第2方向に挟んで配置されている。第2導体パターン22は、第1パワー素子群G1と第2パワー素子群G2との間、第3パワー素子群G3と第4パワー素子群G4との間、及び、第5パワー素子群G5と第6パワー素子群G6との間に配置されている。第3導体パターン23は、第2パワー素子群G2と第3パワー素子群G3との間、及び、第4パワー素子群G4と第5パワー素子群G5との間に配置されている。第3導体パターン23は、第2パワー素子群G2と第3パワー素子群G3との間、又は第4パワー素子群G4と第5パワー素子群G5との間で第1方向に延びる第1部位23Aと、第1パワー素子24aよりもパワー基板20の一端20a側に突出した第2部位23Bと、を備える。
パワー基板20は、板厚方向に貫通した複数の第1挿通孔H1と、複数の第2挿通孔H2とを備える。第1挿通孔H1は、パワー基板20において、第1~第3導体パターン21~23の配置された部分に設けられている。第1挿通孔H1は、第1導体パターン21の配置された部分、及び、第2導体パターン22の配置された部分のそれぞれに2つずつ設けられている。第1挿通孔H1は、第1部位23Aの配置された部分に2つ、第2部位23Bの配置された部分に1つ設けられている。
図2に示すように、2つの入力端子25と、3つの出力端子35は、第2方向に間隔を空けて並んでいる。入力端子25は、第1~第6パワー素子群G1~G6を第2方向に挟んで配置されている。3つの出力端子35は、2つの入力端子25同士の間に配置されている。出力端子35は、第1パワー素子群G1と第2パワー素子群G2との間、第3パワー素子群G3と第4パワー素子群G4との間、及び、第5パワー素子群G5と第6パワー素子群G6との間に配置されている。
図1に示すように、入力端子25は、基部26と、基部26から突出する柱状部27と、柱状部27の周面から突出する台座部28と、を備える。出力端子35は、基部36と、基部36から突出する柱状部37と、を備える。入力端子25、及び、出力端子35は、アルミニウム系金属や銅などの金属製である。図4に示すように、入力端子25の柱状部27と、出力端子35の柱状部37とは、第2方向において一直線上に並んでいる。第1方向での第1~第6パワー素子群G1~G6の中心C24は、第1方向での出力端子35の中心C35である柱状部37の中心と、パワー基板20の一端20aとの間に位置している。第1方向において、第1~第6パワー素子群G1~G6を構成する第1パワー素子24aと、第1方向での出力端子35の中心C35との最短距離を第3距離L3とする。第1方向において、第1~第6パワー素子群G1~G6を構成する第7パワー素子24gと、第1方向での出力端子35の中心C35との最短距離を第4距離L4とする。第3距離L3は、第4距離L4よりも長い。
入力端子25の基部26は、第1導体パターン21に重なりあっている。これにより、入力端子25は、パワー基板20の第1導体パターン21に電気的に接続されている。出力端子35の基部36は、第2導体パターン22に重なりあっている。これにより、出力端子35は、パワー基板20の第2導体パターン22に電気的に接続されている。また、入力端子25の柱状部27には、バッテリが接続される。出力端子35の柱状部37には、三相モータが接続される。
図2に示すように、2つのスペーサ40は、第2方向に間隔を空けて並んでいる。各スペーサ40は、出力端子35同士の間に配置されている。スペーサ40は、アルミニウム系金属や銅などの金属製である。
図3に示すように、スペーサ40は、矩形板状の本体41と、本体41の長手方向の一端に設けられた円筒状の伝熱部42と、を備える。本体41は、基部45と、基部45から突出する2つの接触部43と、を備える。2つの接触部43は、本体41の板厚方向に突出している。2つの接触部43と、伝熱部42とは、本体41の長手方向に並んで配置されている。スペーサ40は、本体41の板厚方向にスペーサ40を貫通したスペーサ孔44を備える。スペーサ孔44は、本体41において各接触部43を備える部分、及び、伝熱部42に設けられている。
スペーサ40は、パワー基板20に接触する第1接触面47A,47Bと、コンデンサ基板50に接触する第2接触面48A,48Bと、を備える。本体41の板厚方向の両面のうち接触部43が設けられた面の反対面は第1接触面47Aであり、伝熱部42の軸線方向の両端面のうち一方の面は第1接触面47Bである。各接触部43の先端面は第2接触面48Aであり、伝熱部42の軸線方向の両端面のうち第1接触面47Bの反対面は第2接触面48Bである。各接触面47A,47B,48A,48Bは、切削加工によって平滑化されている。
図2に示すように、2つのスペーサ40のうち、一方のスペーサ40の本体41は、第2パワー素子群G2と第3パワー素子群G3との間に配置され、他方のスペーサ40の本体41は、第4パワー素子群G4と第5パワー素子群G5との間に配置されている。各スペーサ40の伝熱部42は、第1方向において、第1~第6パワー素子群G1~G6の第1パワー素子24aよりもパワー基板20の一端20a寄りに配置されている。図4に示すように、スペーサ40の本体41は、第3導体パターン23の第1部位23Aに重なりあっている。スペーサ40の伝熱部42は、第3導体パターン23の第2部位23Bに重なりあっている。これにより、第1接触面47A,47Bは、パワー基板20の第3導体パターン23に電気的に接続されている。
図5、及び、図6に示すように、インバータ10は、コンデンサ基板50に実装された複数のコンデンサ54を備える。各コンデンサ54は、バッテリに接続され、バイパスコンデンサとして機能する。各コンデンサ54は、円柱状であり、軸線方向とコンデンサ基板50の板厚方向とが一致するように配置されている。各コンデンサ54は、コンデンサ基板50に立設しているといえる。複数のコンデンサ54は、第1コンデンサ群54Aと、第2コンデンサ群54Bとに分かれて配置されている。本実施形態の第1コンデンサ群54Aは9個のコンデンサ54によって形成され、第2コンデンサ群54Bは12個のコンデンサ54によって形成されている。よって、本実施形態のインバータ10は、21個のコンデンサ54を備える。第1コンデンサ群54Aを構成するコンデンサ54を第1コンデンサ54aとし、第2コンデンサ群54Bを構成するコンデンサ54を第2コンデンサ54bとする。
各コンデンサ群54A,54Bにおいて、コンデンサ54は一直線上に並んでいる。各第1コンデンサ54aの中心を第1方向での第1コンデンサ群54Aの中心C54Aとし、各第2コンデンサ54bの中心を第1方向での第2コンデンサ群54Bの中心C54Bとする。
各第1コンデンサ54aは、コンデンサ基板50において、第1方向の両縁55,56のうち一方の縁55に沿って配置されている。各第2コンデンサ54bは、コンデンサ基板50において、第1コンデンサ群54Aに沿って配置されている。全てのコンデンサ54は、第1方向でのコンデンサ基板50の中心C50よりも、一端58側に集約して配置されている。なお、一端58は、コンデンサ基板50において、縁55側の端部である。第1方向でのコンデンサ基板50の中心C50でコンデンサ基板50を二分すると、一方の領域にはコンデンサ54が配置されており、他方の領域にはコンデンサ54が配置されていないことになる。なお、コンデンサ基板50は、縁55に沿う部分の一部に、コンデンサ54が設けられていない非配置領域57を備える。
コンデンサ基板50は、導体パターン52を備える。コンデンサ基板50は、出力孔53を備える。出力端子35の柱状部37は、出力孔53を挿通している。図1及び図6に示すように、コンデンサ基板50は、板厚方向に貫通した第3挿通孔H3を備える。第3挿通孔H3は、非配置領域57を含む複数箇所に設けられている。第3挿通孔H3は、第1挿通孔H1と同数設けられている。第3挿通孔H3同士の間隔は、第1挿通孔H1同士の間隔と同一である。第3挿通孔H3と、第1挿通孔H1とは、コンデンサ基板50の板厚方向に向かい合って配置されている。
図5~図7に示すように、コンデンサ基板50は、入力端子25の基部26、出力端子35の基部36、及び、スペーサ40に重ねて配置されている。スペーサ40は、パワー基板20及びコンデンサ基板50の板厚方向においてパワー基板20とコンデンサ基板50との間に配置されている。コンデンサ基板50は、第1方向での中心C50が第1方向でのパワー基板20の中心C20よりもパワー基板20の一端20a側に位置するように配置されている。第1方向において、コンデンサ基板50の一方の縁55はパワー基板20の一端20a側に位置し、コンデンサ基板50の他方の縁56はパワー基板20の他端20b側に位置している。図2及び図4に示すように、複数のコンデンサ54は、第1方向での第1~第6パワー素子群G1~G6の中心C24よりも一端側に集約して配置されている。言い換えると、複数のコンデンサ54は、パワー基板20の一端20a側に集約して配置されている。よって、各第1コンデンサ54aは、複数のコンデンサ54のうち、第1方向の一端に位置する一端側コンデンサであり、各第2コンデンサ54bは、複数のコンデンサ54のうち、第1方向の他端に位置する他端側コンデンサである。
コンデンサ基板50が入力端子25、出力端子35、及び、スペーサ40に重ねて配置された状態において、第1~第6パワー素子群G1~G6を構成する第1パワー素子24aは、第1方向での第1コンデンサ群54Aの中心C54Aと第1方向での第2コンデンサ群54Bの中心C54Bとの間に位置している。パワー基板20の板厚方向から見たとき、第1~第6パワー素子群G1~G6を構成する第1パワー素子24aと、第1コンデンサ54aとは重なり合っている。また、第1~第6パワー素子群G1~G6を構成する第1パワー素子24aは、第1方向においてパワー基板20の一端20aと、第1方向での第2コンデンサ群54Bの中心C54Bとの間に位置している。つまり、第1~第6パワー素子群G1~G6を構成する第1パワー素子24aは、第1方向において、パワー基板20の一端20aと第2コンデンサ54bとの間に位置している。
また、コンデンサ基板50が入力端子25、出力端子35、及び、スペーサ40に重ねて配置された状態において、コンデンサ基板50の非配置領域57とスペーサ40の伝熱部42とが向かい合っている。言い換えると、コンデンサ基板50の板厚方向から見て、伝熱部42は、コンデンサ54と重ならない位置に配置されている。図7に示すように、スペーサ40の第2接触面48A,48Bは、コンデンサ基板50に接触している。入力端子25の基部26、及び、スペーサ40を介して、コンデンサ基板50とパワー基板20とは、電気的に接続されている。
図1に示すように、制御基板60は、板厚方向に貫通した出力孔61を3つ備える。出力端子35の柱状部37は、出力孔61を挿通している。制御基板60は、ピンヘッダ46が挿入されるスルーホール62を備える。制御基板60は、板厚方向に貫通した複数の第4挿通孔H4を備える。
インバータ10は、制御基板60に実装された複数の電子部品63、電流センサ65、及び、接続部67を備える。電子部品63は、第1~第6パワー素子群G1~G6を制御する制御回路を構成している。制御回路により第1~第6パワー素子群G1~G6が制御されることで、電力変換が行われる。
スルーホール62にピンヘッダ46が挿入されることで、制御基板60とパワー基板20との接続が行われる。電流センサ65は、3つの出力端子35のうちの2つに設けられている。電流センサ65は、コア66と、図示しないホール素子と、を備える。接続部67は、インバータ10を制御する制御装置(上位制御装置)とインバータ10とを接続するコネクタが挿入される雌コネクタである。
インバータ10は、制御基板60をヒートシンク11に固定するために設けられたブラケット70を備える。ブラケット70は、板状の本体71と、本体71の板厚方向に突出する複数の締結ボス72と、を備える。締結ボス72により、パワー基板20と、制御基板60との間隔が維持されている。ブラケット70は、アルミニウム系金属や銅などの金属製である。
インバータ10は、ブラケット70と制御基板60との間に配置された熱伝導部材91と、ブラケット70とコンデンサ基板50との間に配置された介在熱伝導部材92と、を備える。熱伝導部材91及び介在熱伝導部材92の配置箇所は、電流の集中する箇所や、発熱素子となる電子部品63の近くになるように定められている。熱伝導部材91は、制御基板60からブラケット70に熱を伝導させる。介在熱伝導部材92は、コンデンサ基板50からブラケット70に熱を伝導させる。
図1、及び、図6に示すように、インバータ10は、パワー基板20、制御基板60、及び、コンデンサ基板50をヒートシンク11に固定するための複数のネジS1,S2,S3と、絶縁性のカラーCと、を備える。複数のネジS1,S2,S3は、第1ネジS1と、第2ネジS2と、第3ネジS3と、を含む。
図7に示すように、複数の第1ネジS1は、カラーCとともにコンデンサ基板50の第3挿通孔H3と、パワー基板20の第1挿通孔H1とを挿通して、ヒートシンク11の固定部12に締結されている。これにより、第1ネジS1は、パワー基板20とコンデンサ基板50とを共締めしている。また、複数の第1ネジS1のうち一部の第1ネジS1は、第3挿通孔H3、第1挿通孔H1とともにスペーサ40のスペーサ孔44を挿通している。
複数の第2ネジS2は、制御基板60の第4挿通孔H4のうち一部の第4挿通孔H4とパワー基板20の第2挿通孔H2とを挿通してヒートシンク11の固定部12に締結されている。これにより、第2ネジS2は、制御基板60とパワー基板20とを共締めしている。
複数の第3ネジS3は、制御基板60の第4挿通孔H4のうち一部の第4挿通孔H4を挿通して、入力端子25の台座部28及びブラケット70に締結されている。
三相モータを駆動させるため、インバータ10を駆動させると、コンデンサ54とパワー素子24とは、スペーサ40及び第3導体パターン23を介して電気的に接続される。即ち、スペーサ40は、コンデンサ54とパワー素子24とを電気的に接続する通電経路として機能している。図7に矢印Y1で示すように、実施形態のインバータ10は、本体41に加えて伝熱部42も通電経路となる。また、パワー素子24と出力端子35とは、第2導体パターン22を介して電気的に接続される。
本実施形態の作用について、比較例1とともに説明する。なお、以下では、一例として、U相下アームを構成する第2パワー素子群G2について詳述するが、第1パワー素子群G1、及び、第3~第6パワー素子群G3~G6についても同様である。
図8に示すように、比較例1のインバータでは、パワー基板20に対する第1~第6パワー素子群G1~G6、入力端子25、出力端子35、スペーサ40、及び、第1~第3導体パターン21~23の配置が実施形態のインバータ10と異なる。なお、図8では、第1~第3導体パターン21~23の図示を省略している。比較例1のインバータでは、第1~第6パワー素子群G1~G6、入力端子25、出力端子35、スペーサ40、及び、第1~第3導体パターン21~23は、実施形態よりもパワー基板20の他端20b寄りに配置されている。各パワー素子群G1~G6を構成する第1~第7パワー素子24a~24gの間隔は、実施形態と同じ間隔である。比較例1では、第1方向において、第1パワー素子24aとパワー基板20の一端20aとの最短距離である第1距離L10と、第7パワー素子24gとパワー基板20の他端20bとの最短距離である第2距離L20とは同じ距離である。比較例1のインバータでは、パワー基板20に対するコンデンサ基板50の配置、及び、コンデンサ基板50に対する複数のコンデンサ54の配置は、実施形態の配置と同じ配置になっている。
本実施形態及び比較例1では、複数のコンデンサ54は、第1方向での第1~第6パワー素子群G1~G6の中心C24よりも第1パワー素子24a側、即ちパワー基板20の一端20a側に集約して配置されている。このため、第1方向におけるパワー素子24とコンデンサ54との最短距離は、第1パワー素子24aから第7パワー素子24gに向かうにつれて長くなる。これにより、第2パワー素子群G2を構成する第1~第7パワー素子24a~24gについてインダクタンスのアンバランスが生じる。
図9のグラフに示すように、比較例1では、第1パワー素子24aでインダクタンスが最小となり、第7パワー素子24gでインダクタンスが最大となる。同様に、本実施形態でも、第1パワー素子24aでインダクタンスが最小となり、第7パワー素子24gでインダクタンスが最大となる。本実施形態におけるインダクタンスの最大値と最小値との差Aは、比較例1におけるインダクタンスの最大値と最小値との差B1よりも小さい。即ち、本実施形態では、比較例1よりも第2パワー素子群G2を構成する第1~第7パワー素子24a~24gについてのインダクタンスのアンバランスが抑制されているといえる。
上述したように、本実施形態のインバータ10では、第1~第6パワー素子群G1~G6は、第1方向においてパワー基板20の一端20a側に配置されている。詳しくは、第1~第6パワー素子群G1~G6は、第1距離L1が第2距離L2よりも短くなるようにパワー基板20に対して配置されている。また、第1パワー素子24aは、パワー基板20の一端20aと、第1方向での第2コンデンサ群54Bの中心C54Bとの間に位置している。
図4及び図8に示すように、第1方向において第1パワー素子24aと第1方向での第2コンデンサ群54Bの中心C54Bとの最短距離を第1離間距離Pとし、第7パワー素子24gと第1方向での第2コンデンサ群54Bの中心C54Bとの最短距離を第2離間距離Qとする。実施形態における第1離間距離Pと第2離間距離Qとの差|P-Q|は、比較例1における第1離間距離Pと第2離間距離Qとの差|P-Q|よりも短い。即ち、実施形態における第1パワー素子24aと第2コンデンサ54bとの通電経路の長さと、第7パワー素子24gと第2コンデンサ54bとの通電経路の長さとの差は、比較例1よりも小さくなる。
また、比較例1では、パワー基板20の板厚方向から見たとき、第1パワー素子24aと第1コンデンサ54aとは重なり合っていないのに対し、実施形態では、パワー基板20の板厚方向から見たとき、第1パワー素子24aと第1コンデンサ54aとは重なり合っている。
よって、実施形態における第1パワー素子24aのインダクタンスと第7パワー素子24gのインダクタンスとの差は、比較例1における第1パワー素子24aのインダクタンスと第7パワー素子24gのインダクタンスとの差よりも小さくなる。即ち、第2パワー素子群G2を構成する第1~第7パワー素子24a~24gについてのインダクタンスのアンバランスが抑制される。
図9のグラフには、第1距離を実施形態の第1距離L1よりも短くした比較例2での第1~第7パワー素子24a~24gのインダクタンスが示されている。なお、比較例2では、実施形態よりも第1距離を短くした分だけ、第2距離は実施形態よりも長くなっている。この場合、第1パワー素子24aでインダクタンスが最小となり、第5パワー素子24eでインダクタンスが最大となる。また、インダクタンスの最大値と最小値との差B2は、実施形態におけるインダクタンスの最大値と最小値との差Aよりも小さくなる。即ち、比較例2では、実施形態よりも第2パワー素子群G2を構成する第1~第7パワー素子24a~24gについてのインダクタンスのアンバランスが抑制されている。このことから、第2パワー素子群G2をパワー基板20の一端20a側に移動させるほど、インダクタンスのアンバランスが抑制されることが分かる。
本実施形態の効果について説明する。
(1)第2パワー素子群G2は、第1方向においてパワー基板20の一端20a側に配置されているため、第1パワー素子24aとパワー基板20の一端20aとの距離である第1距離L1は、第7パワー素子24gとパワー基板20の他端20bとの距離である第2距離L2よりも短い。
第2パワー素子群G2を構成する第1パワー素子24aは、第1方向において、第2コンデンサ群54Bを構成する第2コンデンサ54bとパワー基板20の一端20aとの間に位置している。このため、第1離間距離Pと第2離間距離Qとの差が小さくなり、第1パワー素子24aと第2コンデンサ54bとの通電経路の長さと、第7パワー素子24gと第2コンデンサ群54Bを構成する第2コンデンサ54bとの通電経路の長さとの差が小さくなる。また、パワー基板20の板厚方向から見たとき、第2パワー素子群G2を構成する第1パワー素子24aと、第1コンデンサ群54Aを構成する第1コンデンサ54aとは重なり合っている。よって、第2パワー素子群G2を構成する第1~第7パワー素子24a~24gについてインダクタンスのアンバランスを抑制できる。
同様に、第1パワー素子群G1、及び第3~第6パワー素子群G3~G6を構成する第1~第7パワー素子24a~24gについてインダクタンスのアンバランスを抑制できる。
(2)U相上アームを構成する第1パワー素子群G1及びU相下アームを構成する第2パワー素子群G2の両方について、第1~第7パワー素子24a~24gのインダクタンスのアンバランスを抑制できる。また、V相上アームを構成する第3パワー素子群G3及びV相下アームを構成する第4パワー素子群G4の両方について、第1~第7パワー素子24a~24gのインダクタンスのアンバランスを抑制できる。更に、W相上アームを構成する第5パワー素子群G5及びW相下アームを構成する第6パワー素子群G6の両方について、第1~第7パワー素子24a~24gのインダクタンスのアンバランスを抑制できる。
(3)第1方向での第2パワー素子群G2の中心C24は、第1方向での出力端子35の中心C35とパワー基板20の一端20aとの間に位置している。このため、第1パワー素子24aと、第1方向での出力端子35の中心C35との最短距離である第3距離L3は、第7パワー素子24gと、第1方向での出力端子35の中心C35との最短距離である第4距離L4よりも長い。一方で、第1離間距離Pは第2離間距離Qよりも短い。よって、第1方向において、第1パワー素子24aを介したコンデンサ54と出力端子35との通電経路の長さと、第7パワー素子24gを介したコンデンサ54と出力端子35との通電経路との差が小さくなる。その結果、第2パワー素子群G2を構成する第1~第7パワー素子24a~24gについてインダクタンスのアンバランスを抑制できる。
(4)複数のコンデンサ54は、第1方向での第1~第6パワー素子群G1~G6の中心C24よりも一端側に集約して配置されるように、コンデンサ基板50において縁55側に集約して配置されている。このため、コンデンサ基板50においてコンデンサ54が配置されない縁56側の部分には、複数のコンデンサ54と並ぶようにブラケット70の一部を配置することができる。よって、コンデンサ基板50全体にコンデンサ54が配置されている場合と比較して、インバータ10の体格を小型化できる。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○ 第1~第6パワー素子群G1~G6を構成するパワー素子24の数は、7個に限定されず、2個以上であれば適宜変更してよい。
○ パワー基板20が備えるパワー素子群の数は、6つに限定されず、モータの相数に応じて変更してよい。例えば、単相モータに交流電力を出力するインバータ10の場合、パワー基板20は、上アームを構成する第1パワー素子群G1と、下アームを構成する第2パワー素子群G2の2つのパワー素子群を備えていてもよい。
○ 第1~第6パワー素子群G1~G6の少なくとも1つについて、第1距離L1が第2距離L2よりも短く、かつ第1パワー素子24aが、パワー基板20の板厚方向から見たときに第1コンデンサ54aと重なり合っているとともに第1方向においてパワー基板20の一端20aと第2コンデンサ54bとの間に位置していればよい。
○ パワー素子群を構成する複数のパワー素子のうち、2つ以上のパワー素子が、第1方向においてパワー基板20の一端20aと第2コンデンサ54bとの間に位置していてもよい。
○ 第1コンデンサ群54Aを構成する第1コンデンサ54aの数は、9個に限定されず、適宜変更してよい。同様に、第2コンデンサ群54Bを構成する第2コンデンサ54bの数は、12個に限定されず、適宜変更してよい。
○ コンデンサ基板50が備えるコンデンサ群の数は、3つ以上でもよい。ただし、複数のコンデンサ群は、コンデンサ基板50に対し、第1方向に並べて配列されるものとする。
○ 第1方向においてパワー基板20に対する各パワー素子群G1~G6の位置は、適宜変更してよい。ただし、第1距離L1が第2距離L2よりも短く、かつ各パワー素子群G1~G6を構成する複数のパワー素子24のうちの少なくとも1つが、第1方向においてコンデンサ54とパワー基板20の一端20aとの間に位置するものとする。
○ 第1方向での第1~第6パワー素子群G1~G6の中心C24は、第1方向での出力端子35の中心C35と一致していてもよい。また、第1方向での第1~第6パワー素子群G1~G6の中心C24は、第1方向での出力端子35の中心C35とパワー基板20の他端20bとの間に位置していてもよい。
○ スペーサ40において、伝熱部42を省略してもよい。
○ スペーサ40は、第1ネジS1以外で固定されていてもよい。例えば、スペーサ40は、半田などの接合剤により、パワー基板20及びコンデンサ基板50に固定されていてもよい。
○ パワー基板20、コンデンサ基板50、及び制御基板60はそれぞれ、絶縁金属基板や、プリント基板などどのような基板であってもよい。
○ インバータ10は、産業車両に搭載されるものでなくてもよい。
○ 半導体装置は、インバータに限定されず、例えばコンバータであってもよい。