以下、本発明の一態様による実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
以下の各実施形態で共通する構成については、同一の符号を付して明細書での重複説明を省略する。各実施形態で共通する使用方法及び作用効果についても重複説明を省略する。ここで、本明細書及び特許請求の範囲において、「第1」、「第2」、「第3」及び「第4」と記載する場合、それらは、異なる構成要素を区別するために用いるものであり、特定の順序や優劣等を示すために用いるものではない。本明細書及び特許請求の範囲では、便宜上、図2に示す消音換気部材1の正面の左右方向をX方向、正面を前とし背面を後ろとする前後方向をY方向、上下(高さ)方向をZ方向として記載する。
第1実施形態〔図1-図3〕
第1実施形態の消音換気部材1を参照しつつ説明する。ここでは、図3で示すように、消音換気部材1が建物の外壁Woと内壁Wiとの間に収納される例について記載し、Y方向については前側(消音換気部材1の正面側)を建物の内壁Wiの側とし、後側(消音換気部材1の背面側)を建物の外壁Woの側として説明する。しかしながら、これらの記載は、消音換気部材1の使用方法や取付け場所等を限定するものではない。消音換気部材1を設置する「建物」は、戸建住宅、集合住宅、ビルなど建物の種類を問わず適用可能であり、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造など建築構造を問わず適用可能である。消音換気部材1の「消音」とは、完全に音を消すことだけを意味する用語ではなく、音の伝達を低減することを意味する用語である。
消音換気部材1
消音換気部材1は、建物の外壁Woと内壁Wiとの間の換気路に設置され、建物の屋外と屋内との間で通気をさせながら互いの間で音が伝搬することを防ぐ設備である。消音換気部材1は、図1~図3で示すように、箱体10と、外壁側筒11と、内壁側筒12とを備える。
箱体10は、建物の屋外と屋内とを連通しつつ内部に入射する音を吸収する吸音体である。箱体10は、6枚の長方形状の壁材(後述する)によって6面を囲まれており、建物の壁(Wo、Wi)の貫通方向(前後方向Y)で偏平な直方体状に形成されている。
箱体10の各壁材(四角筒状の外周壁と天井壁と底面壁)は、その内部に吸音材を有する。吸音材の外表面(箱体10の外壁面)にはアルミニウムシートが積層されており、吸音材の内側面(箱体10の内壁面13)には、撥水性の布地でなる内張りが積層されている。箱体10の内側には、内壁面13(内張り)によって囲まれた吸音室14が形成されている。
吸音材には、細い繊維によって成形された材料、多孔質な材料等が用いられる。具体的には、例えばポリエステル樹脂によるポリエステル繊維の不織布が用いられる。さらに、箱体10の外表面を覆うアルミニウムシートは、不織布等が組み合わされて形成されている箱体10の形状を維持することができ、それとともに箱体10の材料である繊維の飛散を防止することができる。さらに、アルミニウムシートは、箱体10の材料である繊維が湿気を吸収することによる吸音性の低下を防ぐことができる。ただし、箱体10は、アルミニウムシートが省略された構成とすることもできる。同様に、箱体10は、撥水性の布地が省略された構成とすることもできる。
箱体10は、図2及び図3で示すように、第1の側壁部15aと、第2の側壁部15bとを有する。第1の側壁部15aと第2の側壁部15bは、偏平な直方体形状の箱体10における広面部を構成する。第1の側壁部15aと第2の側壁部15bとの間は、それらの対向する隣接縁どうしを繋ぐように、右側壁を構成する第3の側壁部15c、左側壁を構成する第4の側壁部15d、上壁部16a、下壁部16bによって閉塞され、これらはいずれも偏平な箱体10における狭面部を構成する。
第1の側壁部15aは、消音換気部材1を換気路に設置したときに、建物の外壁Woの側に位置する部位である。第1の側壁部15aは、XZ平面に沿った長方形状の板面を有する平板形状とされている。第1の側壁部15aは、第1の開口部17を有する。第2の側壁部15bは、消音換気部材1を換気路に設置したときに、建物の内壁Wiの側に位置する部位である。第2の側壁部15bは、第1の側壁部15aと同様にXZ平面に沿った長方形状の板面を有する平板形状とされている。第2の側壁部15bは、第2の開口部18を有する。第1の側壁部15aと第2の側壁部15bとは、互いの板面が対向するように配置されている。
第1の開口部17は、箱体10と屋外との間を連通させる部位である。第1の開口部17は、外壁Woの側と吸音室14とに向けて開口する。すなわち、第1の開口部17は、箱体10の外壁Woの側に位置する第1の側壁部15aをその板厚方向であるY方向に貫通して形成されている。第2の開口部18は、箱体10と室内との間を連通させる部位である。第2の開口部18は、内壁Wiの側と吸音室14とに向けて開口する。すなわち、第2の開口部18は、箱体10の内壁Wiの側に位置する第2の側壁部15bをその板厚方向であるY方向に貫通して形成されている。
外壁側筒11は、そのY方向における後端側から外壁Woに形成されている換気口に差し込まれて箱体10と屋外との間における換気経路となる部位である。外壁側筒11は、第1の開口部17に取り付けられている。外壁側筒11は、消音換気部材1の正面視において円環形状で第1の側壁部15aのY方向における前端から後方に向かって伸長する中空の円筒形状とされている。すなわち、外壁側筒11の軸方向、言い換えると筒軸方向は、Y方向と一致している。外壁側筒11の外径及び内径は、外壁側筒11のY方向での位置によらず一定とされている。外壁側筒11の外径は、第1の開口部17の内径に対応して形成されている。
内壁側筒12は、そのY方向における前端側から内壁Wiに形成されている換気口に差し込まれて箱体10と室内との間における換気経路となる部位である。内壁側筒12は、第2の開口部18に取り付けられている。内壁側筒12は、消音換気部材1の正面視において円環形状で第2の側壁部15bのY方向における後端から前方に向かって伸長する中空の円筒形状とされている。すなわち、内壁側筒12の軸方向、言い換えると筒軸方向は、Y方向と一致している。内壁側筒12の外径及び内径は、内壁側筒12のY方向での位置によらず一定とされている。内壁側筒12の外径は、第2の開口部18の内径に対応して形成されている。
こうして消音換気部材1には、屋外側から室内側に向かって、外壁側筒11(第1の開口部17)、箱体10の内側の吸音室14及び内壁側筒12(第2の開口部18)の順に気流が通過する流路(換気路)が形成される。
外壁側筒11及び内壁側筒12は、大気中での耐食性、耐酸性に優れた耐候性の高い材料によって形成されることが好ましい。そのため、外壁側筒11及び内壁側筒12には、ポリ塩化ビニル、ステンレス鋼材、例えばSUS304が用いられる。しかしながら、外壁側筒11及び内壁側筒12は、必要な耐性に合わせて、金属材料、樹脂成形体等によって構成することができる。
消音換気部材1では、図2で示すように、第1の開口部17と第2の開口部18とが、第1の側壁部15a及び第2の側壁部15bの上下方向(Z方向)及び左右方向(X方向)で重ならず、かつ、互いに吸音室14を隔てた(図3参照)斜向かいに位置する。このため、第1の開口部17と第2の開口部18とが例えば左右方向で重なる配置の場合と比べて、換気路に進入した音波が吸音室14を通過する距離をより長く確保することができ、それとともに音波が吸音材と接触する面積をより広く確保することができる。よって、消音換気部材1の防音性能を向上させることができる。
消音換気部材1では、図2で示すように、第1の開口部17と第2の開口部18とがそれぞれ第1の側壁部15a及び第2の側壁部15bにおける対角に位置している。これによって、第1の側壁部15a及び第2の側壁部15bによるXZ平面において長い距離を有する対角の間で音波を通過させることができる。したがって、音波が吸音室14を通過する距離をより長く確保することができ、それとともに音波が吸音材と接触する面積をより広く確保することができる。よって、消音換気部材1の防音性能をより向上させることができる。
ここで、上述のように、消音換気部材1では、第1の開口部17と第2の開口部18とが、X方向及びZ方向で重ならない配置とされている。これに対し、箱体10は、第1の側壁部15a及び第2の側壁部15bのZ方向における高さとX方向における幅との比が1:0.5~1:2であることが好ましい。すなわち、箱体10は、第1の側壁部15a及び第2の側壁部15bにおける高さと幅との比が1:0.5~1:2のX方向に比較的長さを有する形状である。図1等で示す消音換気部材1では、箱体10は、第1の側壁部15a及び第2の側壁部15bにおける高さと幅との比が1:0.7とされている。
このため、第1の開口部17が設けられている第1の側壁部15a及び第2の開口部18が設けられている第2の側壁部15bが、それらのZ方向及びX方向の両方に充分な長さを有する形状とすることができる。これによって、第1の側壁部15a及び第2の側壁部15bのZ方向及びX方向で重ならないように第1の開口部17と第2の開口部18とを容易に配置することができる。したがって、音波が通過する距離を容易に長く確保することができ、それとともに音波が吸音材と接触する面積をより容易に広く確保することができる。これは、第1の側壁部15a及び第2の側壁部15bにおけるZ方向及びX方向のいずれか、例えばZ方向における高さを抑えた消音換気部材1であっても、容易に実現可能である。よって、消音換気部材1の防音性能をより容易かつ効果的に向上させることができる。
さらに、図3で示すように、第1の側壁部15aの外側における第2の開口部18と対応する位置には、緩衝材19が設けられる。緩衝材19が第1の側壁部15aの外側に設けられることによって、消音換気部材1を取り付ける外壁Woの壁面に吹き付ける厚みが均一でない発泡断熱材Fの凹凸を吸収することができる。さらに、緩衝材19が第2の開口部18と対応する位置に設けられることによって、消音換気部材1を壁面に取り付けた状態で屋内側の換気口に例えばベントキャップBを挿入した際の衝撃を抑えることができる。よって、消音換気部材1の設置をより容易にすることができる。
緩衝材19は、柔軟性及び弾力性を有することによって衝撃の吸収性能が高く、かつ、耐熱性、耐寒性及び耐候性の高い材料によって形成されることが好ましい。そのため、緩衝材19には、弾性限界の高いエラストマ、多孔質な材料等が用いられる。緩衝材19には、例えばエチレンプロピレンジエンゴムが用いられる。緩衝材19を箱体10に取り付ける方法には特に限定はなく、粘着、接着、溶着等の種々の方法を用いることができる。緩衝材19は、例えば粘着テープによって箱体10に取り付けられる。
なお、図2に例示の消音換気部材1では、第1の開口部17が右上に配置されていた。しかしながら、第1の開口部17の配置は、左上、右下及び左下のいずれであっても良い。第2の開口部18は、第1の開口部17の位置に対応して配置されれば良い。
第2実施形態〔図4〕
図4で示すように、第2実施形態の消音換気部材2は、箱体20が吸音隔壁部21を有する点で、第1実施形態とは異なる。第2実施形態の消音換気部材2は、それ以外の構成については第1実施形態の消音換気部材1と同様である。ここでは、第1実施形態とは異なる点について説明する。
消音換気部材2
消音換気部材2の箱体20は、箱体10が有する構成に加えて吸音隔壁部21を有する。吸音隔壁部21は、第1の開口部17と第2の開口部18との間で吸音室14を部分的に仕切る部位である。吸音隔壁部21は、箱体20の内部において、Z方向における中央かつX方向における右側に位置する。吸音隔壁部21は、そのX方向における右端(吸音隔壁部21の基端)において内壁面13につながるとともに、そのY方向における前後端においてそれぞれ第2の側壁部15b及び第1の側壁部15aにつながっている。このように吸音隔壁部21は、その基端が室内側の内壁面13につながり、内壁面13の上下方向Zの中間から吸音室14に向けて水平に伸長するという点で、中間吸音隔壁部ということができる。吸音隔壁部21は、Y方向及びZ方向に比べてX方向に長い直方体(正四角柱)形状とされている。そして、吸音隔壁部21は、箱体20の右側の内壁面13からX方向における左方に向かって第1の開口部17と第2の開口部18との間を結ぶ流路に対して重なる領域まで伸長している。吸音隔壁部21には、内壁面13と同様の材料が用いられる。
このように消音換気部材2は、第1の開口部17と第2の開口部18との間で吸音室14を部分的に仕切る吸音隔壁部21を有する。このため、第1の開口部17と第2の開口部18との間において吸音室14を通過する音波の一部を吸音隔壁部21に当てることができる。したがって、音波が吸音材と接触する面積をより広く確保することができる。さらに、吸音隔壁部21が吸音室14を分割できて、特に室内方向への音の反射を減少させることができる。よって、消音換気部材2の防音性能をより向上させることができる。
ここで、第1の開口部17と第2の開口部18との間を最短距離で通過する音波は、吸音室14の中心付近を通過する。これに対し、吸音隔壁部21は、図4で示すように、内壁面13から吸音室14の中心に向かって伸長している。このため、第1の開口部17と第2の開口部18との間において吸音室14を通過する音波の一部を吸音隔壁部21に、より確実かつより効果的に当てることができる。したがって、音波が吸音材と接触する面積をより広く確保することがより確実かつより効果的にできる。よって、消音換気部材2の防音性能をより確実かつより効果的に向上させることができる。
なお、吸音隔壁部21は、X方向及びZ方向のいずれかに伸長する内壁面13における中央を起点として伸長することが好ましい。これによって、吸音隔壁部21が第1の開口部17及び第2の開口部18に近づきすぎて気流の妨げとなってしまうことを防ぐことができる。他方で、吸音隔壁部21が第1の開口部17及び第2の開口部18から遠ざかりすぎて音波が吸音隔壁部21に効率良く当たらなくなることを防ぐことができる。よって、消音換気部材2の換気性能を低減させることなく消音換気部材2の防音性能を向上させることができる。
第3実施形態〔図5〕
図5で示すように、第3実施形態の消音換気部材3は、箱体30が吸音隔壁部21の代わりに吸音隔壁部31を構成する上部吸音隔壁部31a及び下部吸音隔壁部31bを有する点で、第2実施形態とは異なる。第3実施形態の消音換気部材3は、それ以外の構成については第2実施形態の消音換気部材2と同様である。ここでは、第2実施形態とは異なる点について説明する。
消音換気部材3
消音換気部材3の箱体30は、箱体10が有する構成に加えて吸音隔壁部31を有する。吸音隔壁部31は、上部吸音隔壁部31aと、下部吸音隔壁部31bとを有して構成される。上部吸音隔壁部31a及び下部吸音隔壁部31bの形状及び機能は、吸音隔壁部21と同様である。
上部吸音隔壁部31aは、箱体30の内部において、X方向における中央かつZ方向における上側に位置する。上部吸音隔壁部31aは、そのZ方向における上端において内壁面13につながるとともに、そのY方向における前後端においてそれぞれ第2の側壁部15b及び第1の側壁部15aにつながっている。上部吸音隔壁部31aは、X方向及びY方向に比べてZ方向に長い直方体(正四角柱)形状とされている。そして、上部吸音隔壁部31aは、箱体30の上側の内壁面13からZ方向における下方に向かって第1の開口部17と第2の開口部18との間を結ぶ流路に対して重なる領域まで伸長している。
なお、下部吸音隔壁部31bは、箱体30の内部において上部吸音隔壁部31aと上下で対称となるように形成されている。
このように消音換気部材3は、第1の開口部17と第2の開口部18との間で吸音室14を部分的に仕切る上部吸音隔壁部31a及び下部吸音隔壁部31bを有する。このため、第1の開口部17と第2の開口部18との間において吸音室14を通過する音波の一部を上部吸音隔壁部31a及び下部吸音隔壁部31bに当てることができる。したがって、音波が吸音材と接触する面積をより広く確保することができる。さらに、上部吸音隔壁部31a及び下部吸音隔壁部31bが吸音室14を分割できて、特に室内方向への音の反射を減少させることができる。よって、消音換気部材3の防音性能をより向上させることができる。
この消音換気部材3のように、吸音室14をZ方向における上下ではなく、X方向における左右に仕切るように構成することもできる。さらに、消音換気部材3のように、吸音室14を部分的に仕切る2つの上部吸音隔壁部31a及び下部吸音隔壁部31bを有するように構成することもできる。これは、吸音室14をZ方向における上下を左端及び右端の2か所で仕切るように構成することもできる。
以下に、実施例を示して、本実施形態の消音換気部材1等をより詳細かつ具体的に説明する。しかしながら、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例では、消音換気部材1等(図6参照)の防音性能及び換気性能の検証が行われた。防音性能の評価には、日本工業規格 JIS A 1441-1:2007 音響-音響インテンシティ法による建築物及び建築部材の空気音遮断性能の測定方法に準拠した方法で測定された残響室-半無響室間の規準化音響透過損失が用いられた。規準化音響透過損失は、125Hz~4000Hzの16帯域1/3オクターブバンドの中心周波数について測定された。そして、測定された各規準化音響透過損失が、JIS A 4706:2000 サッシにおいて、サッシの遮音性として定められているT-4等級線で表される等級に適合するか否かが検証された。換気性能の評価には、風量に対する静圧の変化を測定した結果に基づいた圧力損失係数が用いられた。
構成例1
構成例1では、図1~図3に示す形状の消音換気部材1の箱体10が作製された。箱体10の各壁材には、25mmの厚さを有するポリエステル繊維の不織布が用いられた。第1の側壁部15a及び第2の側壁部15bには、Z方向に500mmの長さ及びX方向に350mmの長さを有する壁材が用いられた。第1の側壁部15aと第2の側壁部15bとは、Y方向に50mmの距離を隔てて対向配置された。後述する比較例1も含む全ての構成例で作製した箱体10、20及び30の材料及び寸法は、本構成例1の箱体10における材料及び寸法と同様であった。
第1の側壁部15aには、97mmの直径を有する円形の第1の開口部17が形成された。第1の開口部17の中心点は、X方向における右端から80mmの距離及びZ方向における上端から80mmの距離を有する位置とされた。第2の側壁部15bには、100mmの直径を有する円形の第2の開口部18が形成された。第2の開口部18の中心点は、X方向における左端から80mmの距離及びZ方向における下端から80mmの距離を有する位置とされた。後述する全ての構成例で形成された第1の開口部17及び第2の開口部18の位置及び寸法は、本構成例1の第1の開口部17及び第2の開口部18における位置及び寸法と同様であった。
比較例1
比較例1では、構成例1の第1の開口部17及び第2の開口部18とは異なる位置にそれぞれ開口が形成される構成とされた。すなわち、比較例1においては、上下両方の開口の位置がともにX方向における中心であり、両開口がX方向で重なる配置とされた。
構成例2
構成例2では、図4に示す形状の消音換気部材2の箱体20が作製された。箱体20の内部には、吸音隔壁部21が設けられた。吸音隔壁部21には、Z方向に25mmの仕切幅Wを有し、X方向に125mmの仕切長さLを有するポリエステル繊維の不織布が、50mmの仕切幅WとなるようにZ方向に2本並べて用いられた。吸音隔壁部21は、箱体20の右側に位置する内壁面13のZ方向における中央部から吸音室14の中心に向かってX方向に沿って伸長する構成とされた。箱体20の内寸b1に対する吸音隔壁部21の仕切長さLの割合Rは41%であった。このように構成例2の箱体20は、吸音隔壁部21を有する以外は構成例1の箱体10と同様の構成であった。
構成例3
構成例3では、吸音隔壁部21は、箱体20の左側に位置する内壁面13のZ方向における中央部から吸音室14の中心に向かってX方向に沿って伸長する構成とされた。このように構成例3の箱体20は、吸音隔壁部21が構成例2に対してX方向における左右で反転した配置である点以外は構成例2と同様の構成であった。
構成例4
構成例4では、吸音隔壁部21は、X方向に150mmの仕切長さLを有する構成とされた。箱体20の内寸b1に対する吸音隔壁部21の仕切長さLの割合Rは50%であった。このように構成例4の箱体20は、吸音隔壁部21の仕切長さLが構成例2に対してX方向に25mm長い点以外は構成例2と同様の構成であった。
構成例5
構成例5では、吸音隔壁部21は、Z方向に25mmの仕切幅Wを有する構成とされた。このように構成例5の箱体20は、吸音隔壁部21の仕切幅Wが構成例2に対してZ方向に25mm短い点以外は構成例2と同様の構成であった。
構成例6
構成例6では、吸音隔壁部21は、Z方向に75mmの仕切幅Wを有する構成とされた。このように構成例6の箱体20は、吸音隔壁部21の仕切幅Wが構成例2に対してZ方向に25mm長い点以外は構成例2と同様の構成であった。
構成例7
構成例7では、吸音隔壁部21は、X方向に150mmの仕切長さLを有し、かつ、Z方向に25mmの仕切幅Wを有する構成とされた。このように構成例7の箱体20は、吸音隔壁部21の仕切幅Wが構成例4に対してZ方向に25mm短い点以外は構成例4と同様の構成であった。
構成例8
構成例8では、吸音隔壁部21は、X方向に150mmの仕切長さLを有し、かつ、Z方向に75mmの仕切幅Wを有する構成とされた。このように構成例8の箱体20は、吸音隔壁部21の仕切幅Wが構成例4に対してZ方向に25mm長い点以外は構成例4と同様の構成であった。
構成例9
構成例9では、図5に示す形状の消音換気部材3の箱体30が作製された。箱体30の内部には、吸音隔壁部31が設けられた。吸音隔壁部31には、X方向に25mmの仕切幅Wを有し、Z方向に125mmの仕切長さLを有するポリエステル繊維の不織布が用いられた。吸音隔壁部31は、箱体30の上側に位置する内壁面13のX方向における中央部及び箱体30の下側に位置する内壁面13のX方向における中央部の双方から吸音室14の中心に向かってZ方向に沿って伸長する構成とされた。箱体30の内寸b2に対し、上部吸音隔壁部31a(仕切長さL1)と下部吸音隔壁部31b(仕切長さL2)とを有して構成される吸音隔壁部31の仕切長さL(L1+L2)の割合Rは56%であった。このように構成例9の箱体30は、吸音隔壁部31を有する以外は構成例1の箱体10と同様の構成であった。
構成例10
構成例10では、吸音隔壁部31は、箱体30の上側に位置する内壁面13のX方向における中央部から吸音室14の中心に向かってZ方向に沿って伸長する構成とされた。箱体30の内寸b2に対し、上部吸音隔壁部31(仕切長さL1)のみを有して構成される吸音隔壁部31の仕切長さL(=L1)の割合Rは28%であった。そして、構成例10では、吸音隔壁部31は、X方向に50mmの仕切幅Wを有する構成とされた。このように構成例10の箱体30は、吸音隔壁部31の仕切幅Wが構成例9に対してX方向に25mm長く、かつ、吸音隔壁部31が箱体30の上部のみに有する点以外は構成例9と同様の構成であった。
構成例11
構成例11では、吸音隔壁部21は、箱体20の左側に位置する内壁面13のZ方向における中央部及び箱体20の右側に位置する内壁面13のZ方向における中央部の双方から吸音室14の中心に向かってX方向に沿って伸長する構成とされた。箱体20の内寸b1に対し、左右の吸音隔壁部21で合計した仕切長さLの割合Rは83%であった。そして、構成例11では、吸音隔壁部21は、Z方向に25mmの仕切幅Wを有する構成とされた。このように構成例11の箱体20は、吸音隔壁部21の仕切幅Wが構成例3に対してZ方向に25mm短く、かつ、吸音隔壁部21が箱体20の左右両側に有する点以外は構成例2と同様の構成であった。
1.開口位置による影響の検討(構成例1及び比較例1)
比較例1では、160Hz、315Hz、400Hz、500Hz及び630Hzの5点の周波数帯域における規準化音響透過損失がT-4等級に規定する遮音等級線に満たなかった。
これに対し、構成例1では、315Hzの周波数帯域における規準化音響透過損失がT-4等級に規定する遮音等級線以上となった。そして、構成例1では、残りの4点の周波数帯域における規準化音響透過損失がT-4等級に規定する遮音等級線にこそ満たないものの、その値は全て改善された。一般に、建物に遮音用として複層ガラス、二重壁等の中空層を有する構造を取り付けた場合には、中低音域から中音域である160Hz~500Hzの周波数帯域において中空層がばねとして機能することによる共鳴透過現象が生じて遮音性能が低下する。しかしながら、構成例1においては、第1の開口部17と第2の開口部18とがX方向及びZ方向で重ならない位置とすることによって、特に遮音性能が向上しにくい160Hz~500Hzの周波数帯域における規準化音響透過損失の値を改善することができた。
なお、この傾向は、後述する全ての構成例において同様であった。すなわち、後述する全ての構成例において、特に遮音性能が向上しにくい160Hz~500Hzの周波数帯域における規準化音響透過損失の値を比較例1よりも改善することができた。
構成例1では、比較例1と比べると、気流が吸音室14を通過する距離が長いので、通風抵抗が大きくなる。このため、比較例1は、構成例1と比べて換気性能が優れていた。しかしながら、圧力損失係数は、比較例1の2.06に対して構成例1では2.51と大きな差とはならなかった。
以上の結果によって、構成例1では、比較例1と比べて、音波が吸音室14を通過する距離をより長く確保することができ、それとともに音波が吸音材と接触する面積をより広く確保することができることが実証された。よって、消音換気部材1の防音性能の向上が可能であることがわかった。
2.吸音隔壁部21の有無による影響の検討(構成例1、構成例2及び構成例3)
上述のように、構成例1では、160Hz、400Hz、500Hz及び630Hzの4点の周波数帯域における規準化音響透過損失がT-4等級に規定する遮音等級線に満たなかった。
これに対し、構成例2では、630Hzの周波数帯域における規準化音響透過損失がT-4等級に規定する遮音等級線以上となった。さらに、構成例2では、残りの3点の周波数帯域における規準化音響透過損失がT-4等級に規定する遮音等級線にこそ満たないものの、その値は全て改善された。そして、その3点の各周波数帯域で該当する遮音等級線を下回る値の合計が3dB以下となっており、構成例2はT-4の遮音等級に適合する遮音性能を有することが実証された。
他方で、構成例3では、630Hzに加えて400Hzの周波数帯域における規準化音響透過損失がT-4等級に規定する遮音等級線以上となった。さらに、構成例3では、残りの2点の周波数帯域における規準化音響透過損失がT-4等級に規定する遮音等級線にこそ満たないものの、その値は全て改善された。そして、その2点の各周波数帯域で該当する遮音等級線を下回る値の合計が3dB以下となっており、構成例3はT-4の遮音等級に適合する遮音性能を有することが実証された。
一般に、換気路の管内では、中音域である400Hz~700Hzの周波数帯域の共鳴現象と、それに伴う遮音欠損とが生じる。しかしながら、構成例2及び構成例3においては、箱体20が吸音隔壁部21を有することによって、315Hz~1250Hzの周波数帯域における規準化音響透過損失の値を改善することができた。
構成例2及び構成例3では、構成例1と比べると、気流が吸音隔壁部21に当たるので、通風抵抗が大きくなる。このため、構成例1では、構成例2及び構成例3と比べて換気性能が優れていた。しかしながら、圧力損失係数は、構成例1の2.51に対して構成例2では3.83、構成例3では3.96と、問題となるほどの大きな値とはならなかった。
以上の結果によって、構成例2及び構成例3では、音波が吸音材と接触する面積をより広く確保することができることが実証された。さらに、吸音隔壁部21が吸音室14を分割できて、特に室内方向への音の反射を減少可能であることが実証された。よって、消音換気部材2の防音性能の更なる向上が可能であることがわかった。
3.吸音隔壁部21の仕切長さLによる影響の検討(構成例2及び構成例4)
上述のように、構成例2では、160Hz、400Hz及び500Hzの3点の周波数帯域における規準化音響透過損失がT-4等級に規定する遮音等級線に満たなかった。
これに対し、構成例4でも、構成例2と同じ周波数帯域における規準化音響透過損失がT-4等級に規定する遮音等級線に満たなかった。さらに、構成例4では、160Hz及び400Hzの2点の周波数帯域における規準化音響透過損失の値が構成例2には及ばなかったものの、500Hzの周波数帯域における規準化音響透過損失の値が改善された。そして、その3点の各周波数帯域で該当する遮音等級線を下回る値の合計が3dB以下となっており、構成例4はT-4の遮音等級に適合する遮音性能を有することが実証された。
構成例4では、構成例2と比べると、気流が吸音隔壁部21により当たりやすいので、通風抵抗が大きくなる。このため、構成例2は、構成例4と比べて換気性能が優れていた。しかしながら、圧力損失係数は、構成例2の3.83に対して構成例4では5.01と、問題となるほどの大きな値とはならなかった。
構成例2及び構成例4では、吸音隔壁部21が、吸音室14の左右方向における内寸b1に対して40%以上50%以下の仕切長さLを有する。そして、以上の結果によって、構成例2及び構成例4では、箱体20の内部において、吸音室14の内寸b1に対して少なくとも半分の長さの流路幅を確保することができるので、通風抵抗が大きくなるのを防ぐことができることが実証された。よって、消音換気部材2の換気性能を低減させることなく消音換気部材2の防音性能の向上が可能であることがわかった。
4.吸音隔壁部21の仕切幅Wによる影響の検討(1)(構成例2、構成例5及び構成例6)
上述のように、構成例2では、160Hz、400Hz及び500Hzの3点の周波数帯域における規準化音響透過損失がT-4等級に規定する遮音等級線に満たなかった。
これに対し、構成例5及び構成例6の双方においても、構成例2と同じ周波数帯域における規準化音響透過損失がT-4等級に規定する遮音等級線に満たなかった。さらに、構成例5及び構成例6では、T-4等級に規定する遮音等級線に満たなかった3点の周波数帯域における規準化音響透過損失の値が全て構成例2には及ばなかった。しかしながら、その3点の各周波数帯域で該当する遮音等級線を下回る値の合計が3dB以下となっており、構成例5及び構成例6はT-4の遮音等級に適合する遮音性能を有することが実証された。
構成例5では、構成例2と比べると、気流が吸音隔壁部21の先端を大きな曲率で回り込みやすいので、通風抵抗が大きくなる。このため、構成例2では、構成例5と比べて換気性能が優れていた。しかしながら、圧力損失係数は、構成例2の3.83に対して構成例5では4.16と、問題となるほどの大きな値とはならなかった。他方で、吸音隔壁部21の仕切幅Wが25mmの長さを超えると、気流が吸音隔壁部21の先端を回り込む曲率が小さくなるので、通風抵抗が小さくなる。このため、圧力損失係数は、構成例2の3.83に対して構成例6では3.84と、双方が同等の換気性能となった。
5.吸音隔壁部21の仕切幅Wによる影響の検討(2)(構成例4、構成例7及び構成例8)
上述のように、構成例4では、160Hz、400Hz及び500Hzの3点の周波数帯域における規準化音響透過損失がT-4等級に規定する遮音等級線に満たなかった。
これに対し、構成例7及び構成例8の双方においても、構成例4と同じ周波数帯域における規準化音響透過損失がT-4等級に規定する遮音等級線に満たなかった。さらに、構成例7及び構成例8では、160Hzの周波数帯域における規準化音響透過損失の値が構成例4には及ばなかったものの、400Hz及び500Hzの周波数帯域における規準化音響透過損失の値が改善された。そして、その3点の各周波数帯域で該当する遮音等級線を下回る値の合計が3dB以下となっており、構成例7及び構成例8はT-4の遮音等級に適合する遮音性能を有することが実証された。
構成例4、構成例7及び構成例8のように仕切長さLが150mmの場合では、仕切幅Wの影響が出にくくなった。このため、圧力損失係数は、構成例4の5.01に対して構成例7では5.20、構成例8では5.09と、いずれも同等の換気性能となった。
以上のように吸音隔壁部21の仕切長さLが125mmである構成例2、構成例5及び構成例6並びに吸音隔壁部21の仕切長さLが150mmである構成例4、構成例7及び構成例8について、吸音隔壁部21の仕切幅Wによる影響を検討した。その結果として、Z方向に沿う仕切幅Wが25mm以上75mm以下の長さを有する全ての構成例においてT-4の遮音等級に適合する遮音性能を有することが実証された。しかしながら、構成例5では、構成例2及び構成例6と比べると、換気性能が僅かに低下した。したがって、仕切幅Wが少なくとも25mmを超えて75mm以下の長さを有する各構成例では、気流が吸音隔壁部21の先端を大きな曲率で回り込むことによって、通風抵抗が大きくなるのを防ぐことができることが実証された。よって、消音換気部材2の換気性能を低減させることなく消音換気部材2の防音性能の向上が可能であることがわかった。
6.Z方向に伸長する吸音隔壁部31の検討(構成例1、構成例9及び構成例10)
上述のように、構成例1では、160Hz、400Hz、500Hz及び630Hzの4点の周波数帯域における規準化音響透過損失がT-4等級に規定する遮音等級線に満たなかった。
これに対し、構成例9では、630Hzの周波数帯域における規準化音響透過損失がT-4等級に規定する遮音等級線以上となった。さらに、構成例9では、残りの3点の周波数帯域における規準化音響透過損失がT-4等級に規定する遮音等級線にこそ満たないものの、その値は全て改善された。そして、その3点の各周波数帯域で該当する遮音等級線を下回る値の合計が3dB以下となっており、構成例9はT-4の遮音等級に適合する遮音性能を有することが実証された。したがって、吸音隔壁部31がZ方向に伸長する構成例9においてもT-4の遮音等級に適合する遮音性能を有することが実証された。
他方で、構成例10では、構成例1と同じ周波数帯域における規準化音響透過損失がT-4等級に規定する遮音等級線にこそ満たないものの、その値は全て改善された。よって、Z方向に伸長する吸音隔壁部31を有することによって、吸音隔壁部31が設けられていない場合と比べて、消音換気部材3の防音性能の向上が可能であることがわかった。
なお、圧力損失係数は、構成例2の3.83、構成例3の3.96に対して構成例10では3.72とより小さな値となった。すなわち、構成例10は、構成例2及び構成例3と比べても換気性能が優れていた。ここで、構成例10における吸音隔壁部31は、気流の入り口側の開口部に隣接する内壁面13から上下方向に伸長している。このため、吸音隔壁部31の先端を回り込む気流の量を減らすことによって、通風抵抗が大きくなるのを防止可能であることがわかった。よって、消音換気部材3の換気性能を低減させることなく消音換気部材3の防音性能を向上可能であることが実証された。
7.対向する内壁面13の間における内寸b1、b2に対して吸音隔壁部21、31が占める仕切長さLの割合Rの影響(構成例2、構成例4、構成例9、構成例10及び構成例11)
割合Rが28%である構成例10及び割合Rが83%である構成例11では、サッシの遮音性におけるT-4等級に適合していなかった。これに対し、割合Rが41%である構成例2、割合Rが50%である構成例4及び割合Rが56%である構成例9では、サッシの遮音性におけるT-4等級に適合していた。これらの構成例では、吸音隔壁部21、31が、対向する内壁面13における内寸b1、b2に対して30%以上80%以下の仕切長さLを占めるように配置されている。このため、第1の開口部17と第2の開口部18との間において吸音室14を通過する音波の一部を吸音隔壁部21に、より確実かつより効果的に当てることができることが示された。したがって、音波が吸音隔壁部21、31と接触する面積をより広く確保することがより確実かつより効果的にできる。よって、消音換気部材2、3の防音性能をより確実かつより効果的に向上可能であることが実証された。
本出願にて開示する「消音換気部材」では、各実施形態で示した構成を矛盾の生じない範囲で自由に組み合わせることができる。例えば第2実施形態における吸音隔壁部21は、第3実施形態における上部吸音隔壁部31a及び下部吸音隔壁部31bのようにX方向における左側の内壁面13からも伸長していても良い。例えば第3実施形態における吸音隔壁部31は、第2実施形態における吸音隔壁部21のように上部及び下部のいずれか一方だけで構成することもできる。
なお、上記のように本発明の各実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。