JP7195906B2 - 吐出材吐出装置およびインプリント装置 - Google Patents

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Description

本発明は、吐出材吐出装置およびインプリント装置に関する。
吐出装置として、収容容器に収容された液体または液状の吐出材を吐出口から吐出する吐出装置がある。特許文献1には、収容容器の内圧を制御するために、可撓性膜によって2つの収容室に分けられた収容容器を有する液体吐出装置が記載されている。特許文献1に記載されている液体吐出装置の2つの収容室のうち、一方の収容室には内圧を制御するための液体が収容されており、他方の収容室には液体または液状の吐出材が収容されている。特許文献1に記載されている液体吐出装置によれば、一方の収容室の内圧を制御することにより、可撓性膜を介して間接的に他方の吐出材が収容されている収容室の内圧を調整することができる。
特開2016-196128号公報
特許文献1に記載されている可撓性膜を吐出装置の収容容器に取り付ける場合、2つの部材に分けられる収容容器の接合部に可撓性膜を挟むようにして取り付けることがある。この場合、収容容器の2つの部材をネジ等で固定するため、収容容器の部材にはネジ等が嵌め合わさるためのネジ穴のような固定部が設けられる。収容容器に収容されている液体の漏れを防ぐにはネジ留めする間隔を狭くするために固定部の間隔を狭くする必要があるので、吐出口の近傍に壁部を設け、当該壁部に固定部が形成されることがある。この場合、吐出材を吐出する際に生じた圧力波が当該壁部に反射することにより、圧力波が吐出口の近傍に伝播し、吐出口からの吐出材の漏洩などの吐出状態の不安定を誘発し、吐出性能を低下させる虞がある。
上記課題に鑑みて、本発明は、圧力波の反射による吐出性能の低下を抑制することができる吐出材吐出装置およびインプリント装置を提供することを目的とする。
本発明の吐出材吐出装置は、吐出材を吐出する吐出口と、前記吐出材を収容する第一の収容室と、を有している吐出部材と、吐出材を収容し前記第一の収容室と連通している流路を有する第二の収容室と、第三の収容室と、に内部空間が可撓部によって分離された収容容器と、を有しており、前記流路は、壁部によって複数に分かれている吐出材吐出装置において、前記壁部は、吐出材が前記吐出口から吐出される際に生じる圧力波が、前記第二の収容室の方向に反射する壁面を有していることを特徴とする。
本発明によれば、圧力波の反射による吐出性能の低下を抑制することができる。
吐出材吐出装置の構成を示した図である。 吐出材吐出装置の吐出部材を説明する図である。 吐出材吐出装置の断面図である。 吐出材吐出装置の断面図の拡大図である。 吐出材吐出装置の断面図である。
以下に、添付の図面を参照して本発明の実施形態を例示的に詳細に説明する。
<第1の実施形態>
[吐出材吐出装置の構成]
図1は、本実施形態による吐出材吐出装置1(以下、「吐出装置」という)の概略構成図である。吐出装置1は、内部に作動液35を貯留し、内部が外部と大気連通するメインタンク34と、大気連通し、かつメインタンク34と連通可能な内部に作動液35を貯留するサブタンク26と、サブタンク26と連通する吐出材収容ユニット100と、を備える。吐出材収容ユニット100は、吐出材を収容する収容容器13と、収容容器13に装着される吐出部材14と、を含む。収容容器13と吐出部材14とは、別体として構成されていてもよく、一体的に構成されていてもよい。また、収容容器13は交換可能なカートリッジ式であってもよい。吐出部材14は、外面(吐出面)に開口する吐出口15から、吐出材が吐出可能となるように構成されている。吐出口15は、例えば、吐出部材14の吐出面において、1インチ当たり500個から1000個の密度で配設される。
図1に示すように、吐出部材14の吐出面に対向するように、ベースプレート63に搭載された搬送部62が配置されている。搬送部62は、不図示の吸着手段によって、吐出材を付与する対象物である媒体(例えばウエハ)61を吸着して保持しつつ、ベースプレート63上を移動して、吐出部材14に対して媒体61を相対移動させることができる。収容容器13内に収容されている吐出材は、吐出部材14の吐出口15から、吐出口15と対向する位置に搬送された媒体61の吐出材付与領域に対して吐出される。これによって、媒体61に所望のパターンが形成される。
[吐出材]
収容容器13内における吐出材、および吐出口15から吐出される際の吐出材は、液体または液状の物質である。吐出材は、固体とは異なり、定まった形をもたずに流動性を示し、かつ体積変化が気体のようには大きくない。半導体デバイス等の製造プロセスにおいて、基板上のインプリント材に対してパターンが形成されたモールド(型)を接触させ、インプリント材にモールドの形状を転写してパターンを形成する、いわゆるインプリント技術がある。吐出材がインプリント技術におけるインプリント材である場合、吐出材として光硬化型樹脂または熱硬化型樹脂等のレジストが用いられる。
他にも、吐出材は、ペースト状物質、または高分子材料等の物質であってもよく、吐出材として、インクを用いることができる。インクの例としては、画像記録用のインク、電子回路製造用の導電性インク、UV硬化性インク等の多様なインクが挙げられる。導電性インクの例としては、金属粒子を含むインク、特には、数ナノメートル~数十ナノメートルの金属ナノ粒子が液中分散した金属ナノインク、具体的には例えば銀ナノインクが挙げられる。このような吐出材は、収容容器13内の吐出材収容室5に収容されている。
[作動液]
作動液は、気体に比べて、外的な温度および圧力による密度(体積)の変化が無視できるほど小さく非圧縮性を有する物質である。そのため、吐出装置1の周辺の気温または気圧が変化しても、作動液の体積はほとんど変化しない。作動液として、例えば、水のような液体、およびゲル状物質から選択される物質を用いることができる。通常、吐出材の密度と作動液の密度との差は、吐出材の密度と気体の密度との差に比べて小さくなる。作動液は、吐出材収容室5の内圧を制御するために使用される。吐出材収容室5の内圧の制御方法については後述する。
本実施形態に係る吐出装置1をプリント装置のインク吐出装置として使用する場合、吐出材にはインクが用いられるが、作動液としては高価なインクを使用する必要はなく、インクと比重の近い水を使用することができる。より具体的には、水の腐敗および雑菌の繁殖を抑制するために、防腐作用のある添加剤を添加した水を作動液として使用することが好ましい。
[収容容器の構成]
図1に示すように、収容容器13は、開口部を有する2つの筐体である吐出材収容部材11(第一の部材)と作動液収容部材12(第二の部材)とによって収容容器13の外郭および内容積(内部空間)が画定されている。吐出材収容部材11の後述する第1開口部と作動液収容部材12の開口部との間には、吐出材収容室5と作動液収容室6とを水平方向に分離する部材として、可撓性を有する分離膜2(可撓部)が配置されている。
吐出材収容部材11は、作動液収容部材12に対向する側に開口する第1開口部と、吐出部材14に対向する側に開口する第2開口部と、を有する。作動液収容部材12側に開口する第1開口部は、分離膜2によって全面が覆われて密封されており、吐出材収容部材11の内面と分離膜2との間には吐出材収容室5(第二の収容室)が形成される。第2開口部は吐出部材14の共通液室56(第一の収容室)と連通する流路83であり、流路83により、吐出材収容室5は吐出部材14を介して外部空間と連通する。吐出材収容室5は、吐出材によって満たされている。
作動液収容部材12は、吐出材収容部材11に対向する側に開口する開口部を有する。この開口部は、分離膜2によって全面が覆われて密封されており、作動液収容部材12の内面と分離膜2との間には作動液収容室6(第三の収容室)が形成される。作動液収容室6は、作動液35で満たされている。また、作動液収容室6は、管24を介してサブタンク26の内部と連通すると共に、制御弁21およびポンプ22を備える管23を介して、サブタンク26の内部と連通可能に構成されている。サブタンク26は、作動液35を貯留する液体収容室である。作動液35は、作動液収容室6内において、液状充填剤として機能する。尚、作動液収容室6は吐出部材14とは内部で連通していない。
分離膜2は吐出材収容室5と作動液収容室6との間の隔壁として機能する。吐出材収容室5および作動液収容室6のシール性を保つ必要があるため、分離膜2は吐出材収容部材11および作動液収容部材12に密着するように固定する必要がある。このため分離膜2は、吐出材収容部材11と作動液収容部材12との接合部74において挟まれるようにして、吐出材収容部材11と作動液収容部材12とに結合されている。また、シール性を保つためにボルトまたはネジ等の固定部材84によって、吐出材収容部材11と作動液収容部材12とが密着され、分離膜2も吐出材収容部材11と作動液収容部材12との間に密着される。このようにして、吐出材収容室5と作動液収容室6は、分離膜2によって仕切られ密閉される。このため、後述するように吐出材収容部材11と作動液収容部材12にはネジまたはボルト等の固定部材84が嵌め合わさるためのネジ穴のような固定部が必要となる。
[分離膜の材質]
分離膜2の材質としては、接液性等の観点から、吐出材および作動液に対して耐性があり、液体及び気体の透過性が低い材料で形成することが好ましい。例えば、PFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキル ビニルエーテル共重合体)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のようなテフロン(登録商標)系のフッ素樹脂を用いることができる。また、例えば、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVAL(ポリビニルアルコール)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、ナイロン等のポリアミド合成樹脂が挙げられる。分離膜2の厚みは、薄くなると透過性が増し、厚くなると可撓性が落ちることから、10μm以上200μm以下であることが好ましい。
[吐出材収容室と作動液収容室の圧力関係]
分離膜2は、可撓性を有していることから、吐出材収容室5と作動液収容室6との間において内圧の差が生じると、吐出材収容室5と作動液収容室6との内圧の低い方へと移動し、内圧の差が無くなった時点で移動を停止する。この動きが吐出材収容室5と作動液収容室6との内圧の差が生じるたびに繰り返される。このため、吐出材収容室5と作動液収容室6の内圧を相互に等しい状態に保つことができる。
より具体的に説明する。吐出部材14から吐出材が吐出されると、その吐出された吐出材の分だけ、吐出材収容室5内の吐出材の容積が減って、その吐出材収容室5の内圧が下がる。このとき、作動液収容室6の内圧は、相対的に、吐出材収容室5の内圧よりも高くなる。分離膜2は可撓性を有するため、吐出材収容室5側へ移動する。それと同時に、サブタンク26から、管24を介して作動液35が作動液収容室6内に吸い上げられる。これにより、吐出材収容室5および作動液収容室6の内圧は、再び等しくなって平衡状態となる。
図1に示すように、サブタンク26は、管25によって外部空間と連通しているため、サブタンク26の内圧は大気圧と等しい。サブタンク26内と作動液収容室6とを連通する管24には作動液35が満たされている。また、鉛直方向(z方向)におけるサブタンク26内の作動液35の液面位置(以下、「液面高さ」ともいう)は、吐出部材14の吐出口15よりも低い位置に設定されている。サブタンク26内の作動液35の液面位置と、吐出口15が開口する吐出面の位置と、の高さの差(鉛直方向における距離)をΔHとする。
吐出口を有する吐出部材14と、吐出材収容室5との間には制御弁を持たない。そのため、吐出材収容室5の内圧は、吐出部材14の吐出口15の外部の大気圧(外気圧)よりも若干負圧であるように制御される。吐出材収容室5の内圧が負圧に制御されることにより、吐出材収容室5と連通している吐出口15内の吐出材は外気との界面でメニスカスが形成され、意図しないタイミングでの吐出口15からの吐出材の漏出(滴下)が抑制させることができる。
吐出材収容室5の内圧が負圧になるように、高さの差ΔHの基準となる高さが設定される。つまり、吐出装置1は、高さの差ΔHを基準となる高さとなるように制御することにより、吐出材収容室5の内圧を所定の負圧に制御する。吐出材収容室5の内圧が負圧に制御されることにより、吐出材が吐出口15から外部に漏出または滴下したり、メニスカスが過度に奥部(例えば、共通液室56近傍)に引込んだりすることを抑制することができる。具体的には、吐出材収容室5の内圧が外気圧に対して0.40±0.04kPaだけ低い値になるように、高さの差ΔHの基準となる高さが設定される。
本実施形態は、上述したように、1pL(ピコリットル)程度またはそれ以下の液量の吐出が可能な吐出装置である。例えば、樹脂等を吐出材として用いる3Dプリンタにおける吐出口の直径は数百μmである。他にも、吐出材が画像記録用のインクである場合、吐出口15の直径は直径10μm(ミクロン)程度であり、解像度の低いプリント装置における吐出口15の直径は数十μmである。このように、吐出装置の適用機種によって、吐出口15の直径が異なり、また吐出材の物性(例えば、密度、粘性等)も異なるため、重力、毛管力、表面張力等の影響も異なる。よって、吐出装置1の用途および吐出材に応じて、高さの差ΔHの基準となる高さは設定される。
例えば、吐出材および作動液はそれぞれ水とほぼ等しい密度を有するものとすると、吐出口15内に吐出材のメニスカスを形成するために、高さの差ΔHの基準となる高さは41mm±4mmの範囲として設定される。
[補正動作]
サブタンク26内の作動液の液面高さが変動したことにより、高さの差ΔHが基準となる高さから外れたときに、補正動作が行われる。補正動作は、メインタンク34とサブタンク26との間で作動液を移動によって、高さの差ΔHが基準となる高さになるようにサブタンク26内の作動液の液面高さを調整する「液面調整」の動作である。
サブタンク26には、液面センサ41が設置されている。本実施形態における液面センサ41は、サブタンク26内の作動液の液面高さおよびその変化(変位)を検知可能なセンサである。メインタンク34とサブタンク26とは、制御弁31およびポンプ32を備える管33を介して連通可能となっている。吐出装置1は、制御弁31およびポンプ32を駆動して、サブタンク26の作動液の液面高さを所定の範囲内に制御(液面調整)する。液面の高さの所定の範囲とは、高さの差ΔHが、基準の高さの範囲となる液面の高さの範囲である。
具体的には、液面センサ41によって、サブタンク26の作動液35の液面高さが所定の範囲よりも下がったことが検知されたときに、制御弁31を開放し、ポンプ32を駆動させて、メインタンク34からサブタンク26に作動液を供給する。また、液面センサ41によって、サブタンク26内の作動液35の液面高さが所定の範囲内にあることが検知されたときに、ポンプ32の駆動を停止し、制御弁31を閉鎖させて、メインタンク34からサブタンク26への作動液の供給を止める。また、制御弁31とポンプ32を制御することにより、サブタンク26からメインタンク34に作動液を戻すこともできる。これにより、サブタンク26内の液面高さは所定の範囲内に維持され、高さの差ΔHは基準となる高さの範囲内になるように維持される。
[サブタンク]
サブタンク26は、その内部の天井面(鉛直方向における最上部)が吐出部材14の吐出口15よりも鉛直方向において低くなるように配置することが好ましい。このように配置することにより、仮に、上述の液面調整によってサブタンク26が満水状態になったとしても、サブタンク26内の作動液35の液面位置が吐出口15の吐出面の位置よりも高くなることはない。つまり、サブタンク26内の作動液35の液面高さは、サブタンク26の天井面より高さより高くなることがないため、作動液35の液面と吐出口15との鉛直方向における相対的な位置関係(高低関係)が維持され、高さの差ΔHは0(零)に至ることはない。従って、外気圧に対して、吐出材収容室5および作動液収容室6の内圧を常に負圧に保つことが可能となり、吐出口15からの吐出材の漏出および滴下を抑制することができる。
[循環系]
作動液収容室6とサブタンク26は、管24を介して連通していると共に、制御弁21およびポンプ22を備える管23を介しても連通可能となっている。吐出装置1に対して、収容容器13を一度取り外して再度取り付けた場合、管24に泡が入る可能性がある。その場合には、制御弁21を開いてポンプ22を作動させ、管24、作動液収容室6および管23を通して作動液35を循環させて、その作動液をサブタンク26に送ることによって、管24内の泡を取り除くことができる。制御弁21は、ポンプ22を使用しないときに閉じ、ポンプ22を使用するときに開く。
[ポンプ]
ポンプ22およびポンプ32の例として、シリンジポンプ、チューブポンプ、ダイアフラムポンプ、ギアポンプ等が挙げられる。ただし、ポンプ22およびポンプ32は送液手段の機能を有していればよいため、ポンプに限定されるわけではなく、吐出材の吐出装置に適した送液手段を選定することが可能である。
[吐出部材の構成]
図2は、吐出部材14における吐出口15近傍の拡大図である。吐出部材14は、共通液室56、吐出口15、個別圧力室80、モジュール基板57、供給口27、および各個別圧力室80に配置されるエネルギ発生素子18を有する。
共通液室56(第一の収容室)は、吐出材収容室5と流路83(図1参照)を介して連通している。個別圧力室80は、共通液室56と供給口27を介して連通しており、複数の吐出口15に対応して設けられている。吐出口15から吐出される吐出材は、吐出材収容室5から流路83を通り、共通液室56を経て供給口27から各個別圧力室80に供給される。
モジュール基板57には、エネルギ発生素子18が、個々の吐出口15に対応する位置に配置されている。エネルギ発生素子18は吐出材を微細液滴(例えば1pLの液滴)として吐出可能なエネルギを発生することができるものであればよい。エネルギ発生素子18としては、圧電素子(ピエゾ素子)や発熱抵抗体(ヒーター素子)が挙げられる。
圧電素子は、発熱抵抗体を用いる場合と比べて温度変化(昇温)による吐出特性への影響が小さいため、粘性の高い樹脂など幅広い種類の吐出材を用いることができる。このため、吐出材がインプリント材の場合は、樹脂を多く含むものがよく用いられることから、エネルギ発生素子として圧電素子を用いることが好ましい。エネルギ発生素子として圧電素子を用いる場合、圧電素子をコントローラー(不図示)で駆動制御することにより、個別圧力室80内の容積を変化させて、個別圧力室80内の吐出材を吐出口15から吐出させる。圧電素子は、MEMS(Micro Electro Mechanical System:微小電気機械システム)技術を用いて実装されてもよい。尚、吐出部材14は、他にも、制御弁等を用いて液体の供給と停止を制御する部材を用いてもよい。
[圧力波の影響について]
図2に基づき、吐出材を吐出する際の圧力波について説明する。吐出材を液滴として吐出する際には、各個別圧力室80に配置されるエネルギ発生素子18に電圧を加えることで、個別圧力室80に圧力変動を発生させ、吐出口15から液滴を吐出させる。個別圧力室80で発生した圧力変動の一部は液滴を吐出するために使用されるが、残りのエネルギは吐出口15とは反対向きに進み、供給口27を通って、共通液室56内に進む。共通液室56内において圧力波は壁面で反射しながら伝搬し、そのうちの一部の圧力波は吐出した個別圧力室80とは別の個別圧力室内に侵入する。圧力波が侵入した時にその個別圧力室から液体を吐出しようとすると、個別圧力室内に所望の圧力変動が得られず吐出性能が低下する。そのため、圧力波の個別圧力室への侵入を抑制することが求められる。
先にも説明したように吐出材収容室5と作動液収容室6は分離膜2によって仕切られるため、吐出材収容室5の一部を構成する吐出材収容部材11と、作動液収容室6の一部を構成する作動液収容部材12とは、分離膜2を挟んで接合部74で結合されている。吐出材収容部材11と作動液収容部材12との結合は固定部材84によって行われる。固定部材84は、図1ではネジ84である。
図3(a)は、圧力波の影響が大きい形態である比較例を示す図であり、図1の断面線A-Aに対応する断面模式図である。吐出材収容部材11の第1開口部の外枠および作動液収容部材12の開口部の外枠には固定部材(ネジ)84が嵌め合わさるためのネジ穴のような固定部69が設けられる。吐出材収容室5のシール性を保つために、ネジ留めの間隔は30mm以下であることが好ましい。よって固定部69と隣の固定部69との間隔についてもネジ留めする間隔にあわせて設けられるため30mm以下に設けられる。なお、ネジ留めの間隔30mmは一例であり、使用する部材に応じてネジ留めの間隔は適宜変わり得る。
図3(a)に示すとおり、固定部69と隣の固定部69の間隔を30mm以下の間隔で設けるために、流路83においても固定部69を設ける必要がある。このため固定部69が形成されている壁部78を流路83に設ける必要がある。図3(a)のように流路83内の壁部78の壁面は、吐出口15に近接しており、供給口27と向かい合う壁部78の壁面は、供給口27と平行な形状をしている。このとき、図3(a)の矢印のように、吐出材を吐出する際に個別圧力室80で発生した圧力波85が、供給口27と向かい合う壁部78の壁面で反射し、反射した圧力波が供給口27に向かい、各個別圧力室に侵入する虞がある。
一方、ネジ留めする間隔を大きくして、固定部69を含む壁部78を流路83に設けないことが考えられる。この場合、流路83の幅が30mmより大きいと、流路を跨ぐ固定部69の間隔は30mmより大きくなる。このため、流路83近傍ではネジ留めする間隔が30mmより大きくなる。ネジ留めする間隔が30mmより大きくなると、吐出材収容部材11と作動液収容部材12との結合が十分でなくなり、また、分離膜2の収容容器13への固定も十分でなくなる。よって、吐出材収容室5内の吐出材が作動液収容室6に混ざる、または、作動液収容室6内の作動液が吐出材収容室5に混ざる虞がある。或いは、吐出材収容室5内の吐出材または作動液収容室6内の作動液が接合部74から漏洩する虞がある。
図3(b)は、本実施形態における図1の断面線A-Aにおける断面模式図である。固定部69が形成されている壁部77の下部(供給口27の方向)には、共通液室56に伝播した圧力波を吐出材収容室5へ逃がすために、供給口27とは非平行となるような壁面(反射壁)73が設けられている。
供給口27とは非平行に形成された壁部77の壁面である反射壁73に、圧力波が反射する。このため、反射した圧力波は、図3(b)の矢印のように、個別圧力室80との連通する供給口27へは向かわず吐出材収容室5へ向かって流路83内で反射を繰り返し、吐出材収容室5に到達する。吐出材収容室5は、共通液室56に比べて容積が大な空間である。このため、流路83の断面積に比べて、吐出材収容室5の内部の表面積は大きい。よって、吐出材収容室5に侵入した圧力波が、吐出材収容室5内で反射を繰り返して再び流路83を通り個別圧力室80に向かう可能性は、共通液室56で反射を繰り返して個別圧力室80に向かう可能性よりも少ない。このため個別圧力室80で発生した圧力波が別の個別圧力室へ向かって反射することを抑制することができる。吐出材収容室5は、吐出材を収容するための空間であることから、圧力波を逃がすための空間を新たに設ける必要がない。また、吐出材収容室5は、大きな空間であることから、圧力波の共振によって、圧力波が逆に増幅することもない。
吐出材収容室5に到達後、吐出材収容室5内の壁面で反射し、ふたたび圧力波が個別圧力室80に戻るのを抑制するために、吐出材収容室5の容積は共通液室56の容積よりも少なくとも3倍以上、好ましくは5倍以上とすることが好ましい。
尚、圧力波が流路83内で反射を繰り返して再び個別圧力室80に向かうことがあっても、反射を繰り返すことにより圧力波は減衰しているため、反射した圧力波によって吐出性能に影響を及ぼすことはない。
本実施形態では、固定部69の長手方向(X方向)と垂直に交わる面(YZ平面)における壁部77の断面の形状は、図3(b)のように三角形としているが、三角形より角が多い多角形でもよい。図4(a)は壁部77の断面を四角形とした場合の例である。図4(a)のように、壁部77の断面が三角形を含む多角形の場合、供給口27の方向の壁部77の壁面を、供給口と平行にならないようにすることにより、壁部77の壁面である反射壁73に圧力波を反射させて吐出材収容室5に向かわせることができる。このため、壁部77の断面が三角形である場合であっても、供給口27の方向の壁部77の壁面が供給口と平行にならないようであればよく、図4(b)のような形状としてもよい。
また、壁部77の反射壁73は、供給口の方向に凸状な円弧形状および楕円形状をしている曲面にしてもよい。または図4(c)のように壁部77の断面を円にしてもよい。または、上記の以外の形状であっても、壁部77の壁面を傾斜させて圧力波を吐出材収容室5の方向に反射させてもよい。
また、他の方法により流路83が、共通液室56に近づくにつれて広くなるように形成されていてもよい。例えば、図4(d)のように流路83を形成している吐出材収容部材11の縁86を形成して共通液室56に近づくにつれて広くなるように形成されている形態であってもよい。
また、図3(b)の反射壁73の表面には弾性体76が設けられている。弾性体76が設けられていることにより、反射壁73に反射した圧力波を減衰させることができる。このため、吐出材収容室5に向かった圧力波が反射を繰り返して更に減衰するため、圧力波が再び共通液室56に戻ってくることを抑制することができる。弾性体76の弾性体は、ゴムなどのような弾性限界の大きいものがよい。また、弾性体76は、図4(e)のように流路83を形成している吐出材収容部材11の縁86に設けられていてもよい。
反射壁73には弾性体76が設けられている方が好ましいが、弾性体76が設けられていない反射壁73であってもよい。
以上説明したように本実施形態によれば、吐出材収容室5を含む収容容器13のシール性を保ちつつ、個別圧力室80において生じた圧力波が、他の個別圧力室に伝播することを抑制することができる。このため、本実施形態によれば、意図しない吐出口からの液滴の漏洩や吐出、吐出状態の不安定を抑制し、液滴の吐出性能の低下を抑制することができる。
[吐出装置を備えるインプリント装置について]
本実施形態の吐出装置を備えるインプリント装置を説明する。基板上の未硬化樹脂をモールドで成形し、樹脂のパターンを基板上に形成する微細加工技術がある。この技術は、インプリント技術とも呼ばれ、基板上に数ナノメートルオーダーの微細な構造体を形成することができる。インプリント技術の1つとして光硬化法がある。この光硬化法を採用したインプリント装置の吐出装置によって、基板上のインプリント領域であるショットに紫外線により硬化する樹脂を液滴として吐出して塗布する。基板は所定の位置を自由に移動できる基板ステージに保持されて移動可能であり、吐出装置における付与手段が走査して樹脂を塗布していく。次に、この塗布された樹脂にパターンが刻まれたモールドを押し付ける事により成形する。そして、紫外線を照射させ樹脂を硬化させたうえでモールドを引き離すことにより、樹脂のパターンが基板上に形成される。
インプリント装置で半導体デバイスを作成する場合、モールドのパターンが微細であるため、吐出装置による樹脂の付与位置がずれるとショット内に塗布された樹脂に厚みムラが出来てしまう。樹脂に厚みムラが出来ると、モールドに対する樹脂の充填性が低下して所望の樹脂のパターンが形成できない可能性がある。このため、吐出装置が基板に対して樹脂を塗布する付与位置には、高い精度が求められる。
本実施形態の吐出材吐出装置を備えるインプリント装置によれば、圧力波が壁面で反射することによる吐出材の吐出性能の低下を抑制することができる。よって、基板に対して樹脂を塗布する付与位置の精度の低下を抑制することができる。
<第2の実施形態>
吐出装置1の流路83の幅を広く設定することが求められることがあり、このような場合、流路83内に複数の固定部69を設けることが必要になる。本実施形態は、このような場合において、圧力波を吐出材収容室5に逃がすようにする形態である。本実施形態については、第1の実施形態からの差分を中心に説明する。特に明記しない部分については第1の実施形態と同じ構成である。
吐出材収容室5内の吐出材の経時変化によって発生するパーティクルなどを取り除くために、吐出装置1に不図示のフィルタと循環系を設けることがある。または、共通液室56内の吐出材についても、拡散等をさせて吐出材を循環させる場合がある。この場合には流路83の幅を広げることが必要となる場合がある。また、吐出口15の数に対して、流路83の幅を最適化する場合に流路83幅はより広い幅のとなる場合がある。このような場合であっても、固定部69と隣の固定部69との間隔は所定の範囲内とする必要があることから、流路83に固定部69を2個以上設けることが必要となる場合がある。
図5は、本実施形態における図1の断面線A-Aにおける断面模式図である。図5は流路83中に固定部69を複数設ける場合の構成を示している。流路83に固定部69を複数設ける場合は、固定部69ごとに当該固定部が形成されている壁部79を設け、それぞれの壁部79に、圧力波を吐出材収容室5へ逃がす反射壁73を設ける。このため、供給口27から共通液室56に伝播した圧力波が、再び供給口27に向かって反射することを抑制することができる。
図5では、壁部79のYZ平面の断面の形状が三角形である例を示しているが、第1の実施形態と同様に、壁部79のYZ平面の断面の形状は三角形以外の多角形であってもよい。壁部79の断面が三角形を含む多角形である場合、壁部79の壁面のうち、供給口27の方向の壁面が供給口と平行にならないようにして反射壁73は形成される。壁部79の断面が三角形である場合であっても、図5のような形状に限られない。実施形態1と同様に、図4(b)のような断面の形状でもよい。または壁部79の反射壁73は、供給口の方向に凸状な円弧形状および楕円形状をしている曲面にしてもよい。または壁部79の断面は円でもよい。それぞれの壁部79の断面の形状は壁部ごとに異なっていてもよい。また、他の方法により、壁部79によって分かれている各流路は共通液室56に近づくにつれて広くなるように形成されていてもよい。
また、反射壁73には弾性体が設けられていてもよい。実施形態1と同様に、弾性体は、流路83を形成している吐出材収容部材11の縁86に設けられていてもよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、流路83を広く設定する場合であっても、吐出材収容室5を含む収容容器13のシール性を保ちつつ、個別圧力室80において生じた圧力波が、他の個別圧力室に伝播することを抑制することができる。このため、本実施形態によれば、意図しない吐出口からの液滴の漏洩や吐出、吐出状態の不安定を抑制し、液滴の吐出性能の低下を抑制することができる。
<その他の実施形態>
上述した実施形態は、分離膜を挟んだ収容容器を例に挙げて説明したが、分離膜を有していない収容容器であっても適用可能である。例えば、分離膜を有していない収容容器であっても2つの部材を合わせて収容容器が構成されている場合において、部材を固定するために固定部を流路に設けるときがある。このような場合においても上述した実施形態の方法を適用することができる。
本発明の吐出材吐出装置は、プリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサなどの装置、さらには各種処理装置と複合的に組み合わせた産業記録装置に適用可能である。例えば、バイオチップ作製や電子回路印刷などの用途としても用いることができる。また、吐出材を吐出した後に、吐出された吐出材を平坦な形状を有する型(モールド)によって平坦化させる装置に適用することもできる。
1 :吐出材吐出装置
15 :吐出口
56 :共通液室
83 :流路
5 :吐出材収容室
13 :収容容器
77 :壁部
73 :反射壁

Claims (19)

  1. 吐出材を吐出する吐出口と、前記吐出材を収容する第一の収容室と、を有している吐出部材と、
    吐出材を収容し前記第一の収容室と連通している流路を有する第二の収容室と、第三の収容室と、に内部空間が可撓部によって分離された収容容器と、を有しており、
    前記流路は、壁部によって複数に分かれている吐出材吐出装置において、
    前記壁部は、
    吐出材が前記吐出口から吐出される際に生じる圧力波が、前記第二の収容室の方向に反射する壁面を有している
    ことを特徴とする吐出材吐出装置。
  2. 前記第三の収容室は、作動液を収容し、
    前記第三の収容室に収容されている作動液を介して前記第二の収容室の内部の圧力を制御する制御手段をさらに有している
    請求項1に記載の吐出材吐出装置。
  3. 前記収容容器は、前記流路および開口部が形成されている第一の部材と、開口部が形成されている第二の部材との前記開口部により内部空間が構成され、
    前記第一の部材および前記第二の部材は、複数の固定部が形成されており、前記可撓部を前記第一の部材と前記第二の部材の間に挟み、前記固定部を貫く固定部材によって結合されており、
    前記壁部には前記固定部が形成されている
    請求項1または2に記載の吐出材吐出装置。
  4. 吐出材を吐出する吐出口と、前記吐出材を収容する第一の収容室と、を有している吐出部材と、
    前記第一の収容室と連通している流路および開口部が形成されている第一の部材と、開口部が形成されている第二の部材と、の前記開口部により内部空間が構成されている収容容器であって、少なくとも吐出材を収容する第二の収容室を有する収容容器と、
    前記第一の部材および前記第二の部材は、複数の固定部が形成されており、前記固定部を貫く固定部材によって結合されており、
    前記流路は、前記固定部が形成されている壁部によって複数に分かれている吐出材吐出装置において
    前記壁部は、
    吐出材が前記吐出口から吐出される際に生じる圧力波が前記第二の収容室の方向に反射する面を有している
    ことを特徴とする吐出材吐出装置。
  5. 前記固定部の長手方向と交わる面における前記壁部の断面は、多角形である
    請求項3または4に記載の吐出材吐出装置。
  6. 前記固定部の長手方向と交わる面における前記壁部の断面は、三角形である
    請求項3から5のいずれか1項に記載の吐出材吐出装置。
  7. 前記固定部はネジ穴である
    請求項3から6のいずれか1項に記載の吐出材吐出装置。
  8. 夫々の前記固定部は、前記開口部の外枠において前記第一の部材と前記第二の部材とが結合する面と交わるように形成されており、
    前記流路は、複数の前記固定部のうち一部の前記固定部と交わるように形成されている
    請求項3から7のいずれか1項に記載の吐出材吐出装置。
  9. 前記吐出部材は
    前記吐出口と吐出材を吐出するためのエネルギ発生素子とを有する圧力室と、前記圧力室と前記第一の収容室とをつなぐ供給口と、をさらに有し、
    前記壁部の壁面には、前記供給口と平行に向かいあう壁面がない
    請求項1から8のいずれか1項に記載の吐出材吐出装置。
  10. 前記エネルギ発生素子は圧電素子である
    請求項9に記載の吐出材吐出装置。
  11. 前記流路は、前記壁部によって、前記第一の収容室に近づくにつれて広くなるように形成されている
    請求項1から10のいずれか1項に記載の吐出材吐出装置。
  12. 前記壁部の壁面のうち、前記第一の収容室の方向の壁面は凸状の曲面である
    請求項1から11のいずれか1項に記載の吐出材吐出装置。
  13. 前記壁部は、前記第一の収容室から前記第二の収容室に傾斜している壁面を有する
    請求項1から12のいずれか1項に記載の吐出材吐出装置。
  14. 前記壁部の壁面の一部は、弾性体を有している
    請求項1から13のいずれか1項に記載の吐出材吐出装置。
  15. 前記流路には前記壁部が複数ある、
    請求項1から14のいずれか1項に記載の吐出材吐出装置。
  16. 前記第二の収容室の容積は前記第一の収容室の容積より大きい
    請求項1から15のいずれか1項に記載の吐出材吐出装置。
  17. 前記第二の収容室の容積は前記第一の収容室の容積の3倍以上である
    請求項1から16のいずれか1項に記載の吐出材吐出装置。
  18. 前記吐出材はレジストである。
    請求項1から17のいずれか1項に記載の吐出材吐出装置。
  19. 基板に付与されたインプリント材に型のパターンを転写して、前記基板を加工するインプリント装置であって、前記インプリント材を前記基板に付与するために、前記インプリント材を吐出材として吐出する請求項1から18のいずれか1項に記載の吐出材吐出装置を備えることを特徴とするインプリント装置。
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