以下、本開示の一側面に係る実施形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。各図面において、同じ符号は同様の構成要素を示す。
[適用例]
図1は、第1の実施形態に係る非接触電力伝送システムの構成を示すブロック図である。図1の非接触電力伝送システムは、送電装置10及び受電装置20を含み、送電装置10は受電装置20に電力を非接触で伝送する。
送電装置10は、少なくとも、制御回路11、AC/DCコンバータ12、インバータ13、通信装置14、及び送電コイルL1を備える。
制御回路11は、送電装置10の全体の動作を制御する。
AC/DCコンバータ12は、交流電源1から入力された交流電圧を、制御回路11の制御下で可変な大きさを有する直流の電圧V0に変換する。インバータ13は、制御回路11の制御下で可変なスイッチング周波数fswで動作し、AC/DCコンバータ12から入力された直流の電圧V0を交流の電圧V1に変換する。電圧V1は送電コイルL1に印加される。ここで、電圧V1の振幅は電圧V0の大きさに等しい。
本明細書では、AC/DCコンバータ12及びインバータ13をまとめて「電源回路」ともいう。言い換えると、電源回路は、可変電圧及び可変周波数を有する送電電力を発生して送電コイルL1に供給する。
送電コイルL1は、送電装置10から受電装置20に電力を伝送するとき、受電装置20の受電コイルL2(後述)に電磁的に結合する。
通信装置14は、受電装置20に通信可能に接続され、受電装置20から、受電装置20の出力電圧(後述)の検出値を受信する。
制御回路11は、受電装置20の出力電圧の検出値に基づいてAC/DCコンバータ12及びインバータ13を制御する。特に、制御回路11は、AC/DCコンバータ12から出力される電圧V0の大きさと、インバータ13のスイッチング周波数fswとを制御する。
受電装置20は、少なくとも、受電コイルL2、電圧検出回路24、及び通信装置25を備える。
受電コイルL2は、送電装置10から受電装置20に電力を伝送するとき、送電装置10の送電コイルL1に電磁的に結合する。
受電装置20の内部又は外部に負荷装置23が設けられる。負荷装置23は、例えば、充電池、モータ、電気回路、及び/又は電子回路などを含む。受電コイルL2を介して送電装置10から受信された電力は、負荷装置23に供給される。
本明細書では、負荷装置23の消費電力又は消費電流を「負荷装置の負荷値」ともいう。
一般に、負荷装置23は、経時的に変動する可変な負荷値を有する。例えば負荷装置23が充電池である場合、負荷装置23に流れる電流は充電池の充電率に応じて変動する。従って、負荷装置23の負荷値の変動に応じて、負荷装置23に印加される電圧が変動することがある。また、負荷装置23に印加される電圧は、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12(すなわち、送電コイルL1及び受電コイルL2の距離)に応じて変動する。一方、送電装置10の制御回路11は、前述のように、受電装置20の出力電圧(すなわち、負荷装置23に印加される電圧)の検出値に基づいてAC/DCコンバータ12及びインバータ13を制御する。このとき、送電装置10の制御回路11は、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12に依存するが、負荷装置23の負荷値の変動に依存しない受電装置20の出力電圧の検出値を取得することが望ましい。従って、受電装置20は、予め決められた負荷値を有する負荷素子R0を備え、受電装置20の出力電圧として、負荷装置23に印加される電圧V4に代えて、負荷素子R0に印加される電圧V5を検出してもよい。
本明細書では、負荷装置23に印加される電圧V4又は負荷素子R0に印加される電圧V5を、「受電装置の出力電圧」ともいう。
電圧検出回路24は、受電装置20の出力電圧を検出する。図1の例では、電圧検出回路24は、電圧V4及びV5の両方を検出するが、電圧V4及びV5の一方のみを検出してもよい。
通信装置25は、送電装置10に通信可能に接続され、受電装置20の出力電圧の検出値を送電装置10に送信する。
本明細書では、送電装置10の制御回路11を「第1の制御回路」ともいう。また、本明細書では、送電装置10の通信装置14を「第1の通信装置」ともいい、受電装置20の通信装置25を「第2の通信装置」ともいう。
送電装置10の制御回路11は、予め決められた周波数範囲において変化する周波数を有する送電電力を発生するように、AC/DCコンバータ12及びインバータ13を制御する。制御回路11は、AC/DCコンバータ12及びインバータ13を用いて送電電力を発生しているときに受電装置20において検出された受電装置20の出力電圧の検出値を、通信装置14を用いて受電装置20から受信する。制御回路11は、受電装置20の出力電圧の検出値に基づいて、予め決められた周波数範囲において受電装置20の負荷値に対する受電装置20の出力電圧の依存性が少なくとも局所的に最小化されるときの送電電力の周波数を示す安定伝送周波数を決定する。制御回路11は、受電装置20の出力電圧の検出値に基づいて、安定伝送周波数を有する送電電力を発生するときに受電装置20の出力電圧を予め決められた目標電圧にする送電電力の電圧を示す送電電圧を決定する。制御回路11は、安定伝送周波数及び送電電圧を有する送電電力を発生するようにAC/DCコンバータ12及びインバータ13を制御する。
第1の実施形態では、制御回路11及び通信装置14をまとめて、送電装置10の「制御装置」ともいう。
次に、図2~図4を参照して、図1の非接触電力伝送システムの動作についてさらに説明する。
図2は、比較例に係る非接触電力伝送システムの出力電圧の周波数特性を示すグラフである。図2の例は、送電装置が送電コイル及びキャパシタの直列共振回路を備え、受電装置が受電コイル及びキャパシタの直列共振回路を備え、所定のスイッチング周波数で動作するインバータによって発生された送電電力を送電装置から受電装置に伝送する場合を示す。図2の例では、送電コイル及び受電コイルは互いに等しい自己インダクタンスを有し、送電装置のキャパシタ及び受電装置のキャパシタは互いに等しい容量を有する。図2は、送電コイルに印加される電圧の振幅が一定である条件において、インバータのスイッチング周波数に対する受電装置の出力電圧の関係を示す。従来の非接触電力伝送システムでは、送電コイル及び受電コイルの間の伝送効率及び伝送距離を向上するために、送電コイル、受電コイル、及びキャパシタの共振周波数frに等しいスイッチング周波数においてインバータを動作させる場合が多い。この場合、送電コイルに印加される電圧の振幅が一定であっても、受電装置の出力電圧は、図2に示すように、受電装置の負荷値の変動(軽負荷又は重負荷)に応じて大きく変動することがわかる。
図3は、図1の非接触電力伝送システムの出力電圧の周波数特性を示すグラフである。図1の例では、送電装置10が送電コイルL1及びキャパシタC1の直列共振回路を備え、受電装置20が受電コイルL2及びキャパシタC2の直列共振回路を備える。図3の例では、送電コイルL1及び受電コイルL2は互いに等しい自己インダクタンスを有するが、送電装置10のキャパシタC1及び受電装置20のキャパシタC2は互いに異なる容量を有する。図3もまた、送電コイルL1に印加される電圧V1の振幅が一定である条件において、インバータ13のスイッチング周波数fswに対する受電装置20の出力電圧の関係を示す。図3に示すように、負荷装置23に印加される電圧V4は、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12と、負荷装置23の負荷値とに依存して変化する。ただし、図3に示すように、あるスイッチング周波数fswにおいて電力を伝送しているとき、負荷値に対する電圧V4(及び利得)の依存性が少なくとも局所的に最小化され、電圧V4(及び利得)は、負荷装置23の負荷値にかかわらず実質的に一定になる。本明細書では、このようなスイッチング周波数fswを「安定伝送周波数」ともいう。キャパシタC1,C2の容量を互いに異なる値に適宜に設定することにより、非接触電力伝送システムは安定伝送周波数を有する。図3の例では、結合率k12が小さいとき、非接触電力伝送システムは安定伝送周波数fst1を有し、結合率k12が大きいとき、非接触電力伝送システムは安定伝送周波数fst2を有する。安定伝送周波数は、送電コイルL1、受電コイルL2、及びキャパシタC1,C2の共振周波数frに一致することもあり、一致しないこともある。図3の例は、安定伝送周波数fst1,fst2が共振周波数frとは異なる場合を示す。
送電装置10から受電装置20に電力を非接触で伝送するとき、受電装置20は送電装置10に対して常に決まった位置に配置されるとは限らない。例えば、受電装置20が充電池を備えた電動の車両であり、送電装置10が車両のための充電台である場合を考える。この場合、車両が充電台の正面の位置からずれることにより、また、充電台及び車両の間の距離が変化することにより、車両が充電台に停止するごとに、例えば数mm~数十mmのずれが発生することがある。従って、送電装置10の送電コイルL1と受電装置20の受電コイルL2との間の距離が変化し、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12が変化する可能性がある。結合率k12が変化すると、図3に示すように、安定伝送周波数も変化する。実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、電力伝送を開始するごとに、その時点の送電装置10及び受電装置20の配置に応じた安定伝送周波数を決定し、インバータ13を適切なスイッチング周波数fswで動作させることができる。
図4は、図1の非接触電力伝送システムにおいて送電装置10の電圧V0を制御することによる受電装置20の電圧V4の変化を説明するための図である。図4に示すように、負荷装置23に印加される電圧V4は、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12と、送電装置10の電圧V0とに依存して変化する。送電コイルL1及び受電コイルL2の間の距離が大きく、結合率k12が小さい場合、スイッチング周波数fswがfst1になるときに電圧V4が極大値になる。送電コイルL1及び受電コイルL2の間の距離が小さく、結合率k12が大きい場合、スイッチング周波数fswがfst2になるときに電圧V4が極大値になる。ここで、距離及び結合率k12の大小は、相対的な大きさを意味する。制御回路11は、安定伝送周波数fst1又はfst2に合わせてインバータ13のスイッチング周波数fswを設定する。負荷装置23に印加される電圧V4が目標電圧に満たない場合には、制御回路11は、AC/DCコンバータ12から出力される電圧V0を増大させることにより、電圧V4を目標電圧まで増大させる。負荷装置23に印加される電圧V4が目標電圧を超える場合には、制御回路11は、AC/DCコンバータ12から出力される電圧V0を低下させることにより、電圧V4を目標電圧まで低下させる。
実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、受電装置20に余分な回路を必要とすることなく、負荷装置23にその所望電圧を安定的に供給するように送電装置10を制御することができる。
インバータ13のスイッチング周波数fswを安定伝送周波数に合わせて設定することにより、負荷装置23の負荷値の変動に応じて送電装置10及び/又は受電装置20を制御することが不要になる。負荷装置23の負荷値が変動しても、AC/DCコンバータ12から出力される電圧V0を変化させることなく、また、スイッチング周波数fswを変化させることなく、負荷装置23にその所望電圧を安定的に供給することができる。また、負荷装置23にその所望電圧を供給するために受電装置20にDC/DC変換器などを設けることが不要になるので、高効率で動作する、小型、軽量、かつ低コストの受電装置を提供することができる。
本開示の各実施形態によれば、受電装置20は充電池を備えた電子機器(例えば、ノートブック型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、携帯電話機など)であってもよく、送電装置10はその充電器であってもよい。また、本開示の各実施形態によれば、受電装置20は充電池を備えた電動の車両(例えば、電気自動車又は無人搬送車(automated guided vehicle))であってもよく、送電装置10はその充電台であってもよい。また、本開示の各実施形態によれば、受電装置20は、搬送時に荷物に対して何らかの作業を行うために電源を必要とするパレットであってもよく、送電装置10は、そのようなパレットに電力を供給可能なコンベアなどであってもよい。また、本開示の各実施形態によれば、送電コイルL1及び受電コイルL2の間の距離が変化しない非接触電力伝送システムにも有効に適用可能である。この場合、例えば、送電装置10及び受電装置20は、ロボットアームの先端などにおける駆動機構に電力を供給するために、ロボットアームの関節などにおいてスリップリングに代えて設けられてもよい。
例えば負荷装置が充電池である場合、充電池に流れる電流は、充電池の充電率が増大するにつれて減少する。従って、充電池に流れる電流(すなわち負荷装置の負荷値)の変動に応じて、充電池に印加される電圧が変動する。なお、従来、充電池の充電制御方法の1つとして、CCCV(Constant Current, Constant Voltage)充電が知られている。CCCV充電を行う場合、従来の受電装置では、「受電コイル→整流回路→DC/DC変換器→充電制御回路→充電池」の順に電力が伝送されることが多い。ここで、充電制御回路は、充電池に対してCCCV充電を行う。また、DC/DC変換器は、充電池に流れる電流(すなわち負荷装置の負荷値)に依存することなく、一定の範囲内の電圧を発生して充電制御回路に供給する。しかしながら、受電装置のサイズ、重量、及びコストを削減するためには、例えば、DC/DC変換器を必要とすることなく、一定の範囲内の電圧を発生して充電制御回路に供給することが求められる。実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、安定伝送周波数に合わせてインバータ13のスイッチング周波数fswを設定することにより、受電装置20に余分な回路(DC/DC変換器など)を必要とすることなく、負荷装置23にその所望電圧を供給することができる。また、実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、既存の充電制御回路の再設計などを必要とすることなく、CCCV充電を行うことができる。
[第1の実施形態]
次に、第1の実施形態に係る非接触電力伝送システムの構成の一例について、さらに詳細に説明する。第1の実施形態に係る非接触電力伝送システムは、受電装置が予め決められた負荷値を有する1つの負荷素子を備え、負荷素子に印加される電圧に基づいて、安定伝送周波数及び送電電圧を決定する。
[第1の実施形態の構成例]
図1に示すように、送電装置10は交流電源1から電力供給を受ける。交流電源1は、例えば商用電力である。
図1の例では、送電装置10は、制御回路11、AC/DCコンバータ12、インバータ13、通信装置14、キャパシタC1、磁性体コアF1、及び送電コイルL1を備える。
制御回路11は、送電装置10の全体の動作を制御する。特に、制御回路11は、前述のように、制御回路11は、AC/DCコンバータ12から出力される電圧V0の大きさと、インバータ13のスイッチング周波数fswとを制御する。これにより、制御回路11は、安定伝送周波数を含む予め決められた周波数範囲において変化する周波数を有する送電電力を発生する。制御回路11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、図8及び図9を参照して後述する送電処理を実行する。
AC/DCコンバータ12は、交流電源1から入力された交流電圧を、制御回路11の制御下で可変な大きさを有する直流の電圧V0に変換する。AC/DCコンバータ12は力率改善回路を備えてもよい。インバータ13は、前述のように、AC/DCコンバータ12から入力された直流の電圧V0を交流の電圧V1に変換する。インバータ13は、例えば、スイッチング周波数fswを有する矩形波の交流の電圧V1を発生する。インバータ13は、制御回路11の制御下で可変なスイッチング周波数fswで動作する。
図5は、図1のインバータ13の構成を示す回路図である。インバータ13は、例えば、4つのスイッチング素子Q1~Q4を含むフルブリッジ型のインバータであってもよい。スイッチング素子Q1~Q4は、例えば、制御回路11又は他の回路によってオン・オフされる電界効果トランジスタである。
送電装置10はキャパシタC1を備える。キャパシタC1は、LC共振回路を構成するように送電コイルL1に接続される。キャパシタC1を備えることにより、受電装置20の出力電圧の利得を調整したり、電力伝送の効率を向上したりすることができる。
送電装置10は磁性体コアF1を備えてもよい。この場合、送電コイルL1は磁性体コアF1に巻回されてもよい。送電コイルL1を磁性体コアF1に巻回することにより、送電コイルL1の磁束密度を増大させることができ、また、漏洩磁束を低減することができる。
通信装置14は、無線(例えば赤外線)又は有線により、受電装置20の通信装置25(後述)と通信可能に接続される。前述のように、制御回路11は、AC/DCコンバータ12及びインバータ13を用いて送電電力を発生しているときに受電装置20において検出された受電装置20の出力電圧の検出値を、通信装置14を介して受電装置20から受信する。また、制御回路11は、受電装置20が電力伝送を要求していることを示す制御信号を、通信装置14を介して受電装置20から受信してもよい。また、制御回路11は、受電装置20が電力伝送の停止を要求していることを示す制御信号を、通信装置14を介して受電装置20から受信してもよい。また、制御回路11は、負荷装置23に供給すべき電圧及び/又は電流の値などを示す信号を、通信装置14を介して受電装置20から受信してもよい。また、受電装置20が通常モード及びテストモード(後述)を有する場合、制御回路11は、テストモードへの遷移又は通常モードへの遷移を要求する制御信号を、通信装置14を介して受電装置20に送信してもよい。
制御回路11は、前述のように、受電装置20の出力電圧の検出値に基づいてAC/DCコンバータ12及びインバータ13を制御する。制御回路11は、送電装置10から受電装置20に電力伝送を開始するとき、安定伝送周波数及び送電電圧を決定する。また、制御回路11は、受電装置20の出力電圧の検出値が、安定伝送周波数及び送電電圧を決定したときの値から大きく変化したとき、受電装置20の出力電圧の現在の検出値に基づいて安定伝送周波数及び送電電圧を再決定する。これにより、制御回路11は、安定伝送周波数及び送電電圧を有する送電電力を発生するようにAC/DCコンバータ12及びインバータ13を制御する。
図1の例では、受電装置20は、制御回路21、整流回路22、負荷装置23、電圧検出回路24、通信装置25、キャパシタC2,C10、磁性体コアF2、受電コイルL2、負荷素子R0、及びスイッチ回路SWを備える。
制御回路21は、受電装置20の全体の動作を制御する。特に、制御回路21は、後述するように、スイッチ回路SWを制御する。制御回路21は、CPU、RAM、ROM等を含み、図10を参照して後述する受電処理を実行する。
本明細書では、受電装置20の制御回路21を「第2の制御回路」ともいう。
送電装置10から受電装置20に電力を伝送するとき、受電コイルL2が送電コイルL1に電磁的に結合することにより、受電コイルL2に電流I2及び電圧V2が発生する。
受電装置20はキャパシタC2を備える。キャパシタC2は、LC共振回路を構成するように受電コイルL2に接続される。キャパシタC2を備えることにより、受電装置20の出力電圧の利得を調整したり、電力伝送の効率を向上したりすることができる。
受電装置20は磁性体コアF2を備えてもよい。この場合、受電コイルL2は磁性体コアF2に巻回されてもよい。受電コイルL2を磁性体コアF2に巻回することにより、受電コイルL2の磁束密度を増大させることができ、また、漏洩磁束を低減することができる。
整流回路22及びキャパシタC10は、受電コイルL2から入力された交流の電圧V2を直流の電圧に変換する。整流回路22は力率改善回路を備えてもよい。
図6は、図1の整流回路22の構成を示す回路図である。整流回路22は、例えば、4つのダイオードD1~D4を含む全波整流回路であってもよい。
受電装置20は、負荷素子R0及びスイッチ回路SWを備えてもよい。この場合、整流回路22から出力された電圧は、制御回路21の制御下で動作するスイッチ回路SWを介して、負荷装置23又は負荷素子R0に選択的に供給される。例えば負荷装置23が充電池である場合、負荷装置23は、充電池の充電率に応じて変動する可変な負荷値を有する。一方、負荷素子R0は、予め決められた負荷値を有する。負荷素子R0及びスイッチ回路SWは、例えばDC/DCコンバータよりも簡単な構成を有し、負荷装置23への電力伝送の効率に影響しにくいように構成される。負荷素子R0の負荷値は、負荷装置23の定格の負荷値より大きいほうが安定伝送周波数を特定しやすい。負荷素子R0は、負荷装置23の負荷値よりも小さな負荷値を有してもよい。受電装置20は、整流回路22から出力された電圧を負荷装置23に供給する通常モードと、整流回路22から出力された電圧を負荷素子R0に供給するテストモードとを有する。
本明細書では、スイッチ回路SWを「第1のスイッチ回路」ともいう。
電圧検出回路24は、テストモードにおいて、負荷素子R0に印加される電圧V5を受電装置20の出力電圧として検出する。また、電圧検出回路24は、通常モードにおいて、負荷装置23に印加される電圧V4を受電装置20の出力電圧として検出する。
通信装置25は、前述のように、無線(例えば赤外線)又は有線により、送電装置10の通信装置14と通信可能に接続される。制御回路21は、電圧検出回路24によって検出された受電装置20の出力電圧(すなわち、負荷素子R0に印加される電圧V5)の検出値を、通信装置25を介して送電装置10に送信する。制御回路21は、受電装置20が電力伝送を要求していることを示す制御信号を、通信装置25を介して送電装置10に送信してもよい。また、制御回路21は、受電装置20が電力伝送の停止を要求していることを示す制御信号を、通信装置25を介して送電装置10に送信してもよい。また、制御回路21は、負荷装置23に供給すべき電圧及び/又は電流の値などを示す信号を、通信装置25を介して送電装置10に送信してもよい。
送電装置10の制御回路11は、電圧V0及びスイッチング周波数fswを決定するとき、テストモードへの遷移を要求する制御信号を、通信装置14を用いて受電装置20に送信する。一方、制御回路11は、負荷装置23に電力を供給するための通常の送電を行うとき、通常モードへの遷移を要求する制御信号を、通信装置14を用いて受電装置20に送信する。
受電装置20の制御回路21は、テストモードへの遷移又は通常モードへの遷移を要求する制御信号を、通信装置25を介して送電装置10から受信する。制御回路21は、テストモードへの遷移を要求する制御信号を受信したとき、受電装置20の出力電圧を負荷素子R0に供給するようにスイッチ回路SWを切り換える。この場合、負荷素子R0に電圧V5が印加される。また、制御回路21は、通常モードへの遷移を要求する制御信号を受信したとき、受電装置20の出力電圧を負荷装置23に供給するようにスイッチ回路SWを切り換える。この場合、負荷装置23に電圧V4が印加される。
受電装置20の制御回路21は、受電装置20において過電圧を検出したとき、すなわち、負荷装置23に印加される電圧V4が所定のしきい値を超えたとき、受電装置20の出力電圧を負荷素子R0に供給するようにスイッチ回路SWを切り換えてもよい。これにより、負荷装置23を過電圧から保護することができる。
図7は、図1の送電コイルL1及び受電コイルL2の配置を示す斜視図である。前述したように、送電コイルL1は磁性体コアF1に巻回されてもよく、受電コイルL2は磁性体コアF2に巻回されてもよい。送電コイルL1及び受電コイルL2は結合率k12で互いに電磁的に結合する。
受電装置20において発生する電圧(整流回路22から出力された電圧V4、など)は、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12に応じて変化する。結合率k12が増大すると電圧も増大し、結合率k12が低下すると電圧も低下する。送電装置10及び受電装置20の各回路パラメータは、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12が最大になり、かつ、電圧V4が最大値又は極大値になる周波数で動作するときであっても、受電装置20において過電圧が発生しないように決定される。
[第1の実施形態の動作例]
図8は、図1の送電装置10の制御回路11によって実行される送電処理を示すフローチャートである。図9は、図8のステップS2のサブルーチンを示すフローチャートである。図10は、図1の受電装置20の制御回路21によって実行される受電処理を示すフローチャートである。
例えば、受電装置20が送電装置10から電力を受信可能な位置に配置されたとき、送電処理及び受電処理が開始される。図10のステップS21において、受電装置20の制御回路21は、通信装置25を用いて、電力供給を要求する制御信号を送電装置10に送信する。図8のステップS1において、送電装置10の制御回路11は、通信装置14を用いて、電力供給を要求する制御信号を受電装置20から受信する。
図8のステップS2において、送電装置10の制御回路11は、電力制御処理を実行する。
図9のステップS11において、送電装置10の制御回路11は、通信装置14を用いて、受電装置20をテストモードに遷移させる制御信号を受電装置20に送信する。図10のステップS22において、受電装置20の制御回路21は、通信装置25を用いて送電装置10から制御信号を受信し、この制御信号に応じて、受電装置20の出力電圧を負荷素子R0に供給するようにスイッチ回路SWを切り換える(すなわち、テストモードに遷移する)。
図9のステップS12において、送電装置10の制御回路11は、電圧V0及びスイッチング周波数fswをテストモードの規定値に設定し、テストモードの送電を開始する。前述のように、受電装置20において発生する電圧は、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12に応じて変化する。従って、受電装置20において過電圧が発生しないようにするために、制御回路11は、AC/DCコンバータ12から出力される電圧V0を予め決められた非ゼロの最小値に設定し、インバータ13のスイッチング周波数fswを最小値又は最大値に設定する。電圧V0の最小値は、電圧検出回路24によって検出可能な電圧V5が負荷素子R0に生じるように設定される。電圧V0の最小値と、スイッチング周波数fswの最小値又は最大値とを、テストモードの規定値として使用する。図10のステップS23において、受電装置20の制御回路21は、電圧検出回路24を用いて負荷素子R0に印加される電圧V5を検出し、通信装置25を用いて電圧V5を送電装置10に通知する。
図11は、図1の非接触電力伝送システムにおける電圧V1,V4,V5の波形を概略的に示す図である。前述のように、インバータ13は、例えば、矩形波の交流の電圧V1を発生する。負荷装置23には直流の電圧V4が印加され、負荷素子R0にもまた直流の電圧V5が印加される。
図9のステップS13において、送電装置10の制御回路11は、スイッチング周波数fswを変化させながらテストモードの送電を継続し、通信装置14を用いて受電装置20から電圧V5の値を取得する。図9のステップS14において、送電装置10の制御回路11は、予め決められた周波数範囲においてスイッチング周波数fswを変化させるとき、局所的に最大化される電圧V5と、電圧V5を局所的に最大化するスイッチング周波数fstとを決定する。
図12は、図9のステップS13~S14におけるスイッチング周波数fstの探索及び決定を説明するための図である。送電装置10の制御回路11は、探索方法A及びBのいずれかを用いて、電圧V5を局所的に最大化するスイッチング周波数fstを決定する。
図12の探索方法Aによれば、予め決められた周波数範囲f1~f2において、スイッチング周波数fswを下限の周波数f1から上限の周波数f2に向かって一度だけスイープしながら、負荷素子R0に印加される電圧V5を検出する。周波数範囲f1~f2において、電圧V5が最大になるときのスイッチング周波数fstを安定伝送周波数として決定する。
探索方法Aによれば、スイッチング周波数fswを上限の周波数f2から下限の周波数f1に向かって一度だけスイープしながら、負荷素子R0に印加される電圧V5を検出してもよい。
図12の探索方法Bによれば、所定の初期値のスイッチング周波数fsw(例えば周波数f1又はf2)から開始して、スイッチング周波数fswを一方向にスイープしながら(すなわち増加又は減少させながら)、負荷素子R0に印加される電圧V5を検出する。電圧V5が増大している間には、スイッチング周波数fswを同じ方向にスイープし続け、電圧V5が減少したとき、スイッチング周波数fswをスイープする向きを反転する(すなわち減少又は増加させる)。これらのステップを反復的に実行することにより、電圧V5が最大になるときのスイッチング周波数fstを安定伝送周波数として決定する。各反復におけるスイッチング周波数fswの変動がゼロになったとき、又は、予め決められたしきい値(百分率又は電圧値)以内になったとき、処理を終了する。探索方法Bを「山登り法」ともいう。
探索方法Aは、探索方法Bよりも簡単な処理で実施可能である。一方、探索方法Bは、周波数範囲f1~f2の全体にわたってスイッチング周波数fswをスイープしなくてもよいので、条件によっては、探索方法Aよりも短時間で実施可能である。また、探索方法Bは、例えば、最大電力点追従制御(Maximum Power Point Tracking: MPPT)に適用可能である。
局所的に最大化される電圧V5を求めることにより、スイッチング周波数fstで電力を伝送するときの非接触電力伝送システムの利得G=V5/V0がわかる。
ステップS14において電圧V5を局所的に最大化するスイッチング周波数fstが決定されたとき、次いで、図9のステップS15において、送電装置10の制御回路11は、テストモードの送電を停止する。
図9のステップS16において、送電装置10の制御回路11は、非接触電力伝送システムの利得G=V5/V0に基づいて、負荷装置23の所望の電圧V4に対応する、AC/DCコンバータ12から出力される電圧V0を送電電圧として決定する。ここで、通常モードにおける非接触電力伝送システムの利得V4/V0は、テストモードにおける非接触電力伝送システムの利得V5/V0と等価であるとみなされる。
図9のステップS17において、送電装置10の制御回路11は、ステップS16において決定された電圧V0をAC/DCコンバータ12に設定し、ステップS14において決定されたスイッチング周波数fstをインバータ13に設定する。
図9のステップS18において、送電装置10の制御回路11は、通信装置14を用いて、受電装置20を通常モードに遷移させる制御信号を受電装置20に送信する。図10のステップS24において、受電装置20の制御回路21は、通信装置25を用いて送電装置10から制御信号を受信し、この制御信号に応じて、受電装置20の出力電圧を負荷装置23に供給するようにスイッチ回路SWを切り換える(すなわち、通常モードに遷移する)。
図9のステップS19において、送電装置10の制御回路11は、ステップS18において設定された電圧V0及びスイッチング周波数fstで、通常モードの送電を開始する。
送電装置10から受電装置20に電力を伝送しているとき、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12が変化すると、非接触電力伝送システムの安定伝送周波数及び利得も変化する。この場合、送電装置10の制御回路11は、以下に説明するように、受電装置20の出力電圧の現在の検出値に基づいて安定伝送周波数及び送電電圧を再決定する。
図10のステップS25において、受電装置20の制御回路21は、電圧検出回路24を用いて負荷装置23に印加される電圧V4を検出し、通信装置25を用いて電圧V4を送電装置10に通知する。図8のステップS3において、送電装置10の制御回路11は、通信装置14を用いて受電装置20から電圧V4の値を取得する。
図8のステップS4において、送電装置10の制御回路11は、受電装置20の出力電圧の検出値が、安定伝送周波数及び送電電圧を決定したときの値から所定のしきい値よりも大きく変化したか否かを判断し、YESのときはステップS2に戻り、NOのときはステップS5に進む。
図8のステップS4からステップS2に戻ったとき、送電装置10の制御回路11は、図9を参照して説明した電力制御処理を再び実行する。前述のように、図9のステップS11において、送電装置10の制御回路11は、通信装置14を用いて、受電装置20をテストモードに遷移させる制御信号を受電装置20に送信する。図10のステップS26において、受電装置20の制御回路21は、送電装置10から制御信号を受信したか否かを判断し、YESのときはステップS22に戻り、NOのときはステップS27に進む。
図1の受電装置20は、受電装置20において過電圧を検出したとき、以下に説明するように、負荷素子R0及びスイッチ回路SWを用いて、負荷装置23を過電圧から保護してもよい。
図10のステップS27において、受電装置20の制御回路21は、負荷装置23に印加される電圧V4が所定のしきい値を超えたか否かを判断し、YESのときはステップS28に進み、NOのときはステップS29に進む。図10のステップS28において、受電装置20の制御回路21は、受電装置20の出力電圧を負荷素子R0に供給するようにスイッチ回路SWを切り換える。
図10のステップS29において、受電装置20の制御回路21は、負荷装置23の動作が停止するか否かを判断し、YESのときはステップS30に進み、NOのときはステップS25に戻る。例えば負荷装置23が充電池である場合、負荷装置23は充電が完了したことを制御回路21に通知してもよく、制御回路21は、負荷装置23からの信号に基づいて、負荷装置23の動作が停止するか否かを判断してもよい。また、負荷装置23は、ユーザ入力に基づいて、その動作を開始及び停止してもよく、制御回路21は、このユーザ入力に基づいて、負荷装置23の動作が停止するか否かを判断してもよい。
図10のステップS30において、受電装置20の制御回路21は、通信装置25を用いて、電力伝送の停止を要求する制御信号を送電装置10に送信する。図8のステップS5において、送電装置10の制御回路11は、受電装置20から電力供給の停止が要求されたか否かを判断し、YESのときはステップS6に進み、NOのときはステップS3に戻る。図8のステップS6において、送電装置10の制御回路11は、通常モードの送電を停止する。
[第1の実施形態の動作原理]
次に、図13及び図14を参照して、図1の非接触電力伝送システムの動作原理について説明する。
図13は、図1の非接触電力伝送システムの概略構成を示す等価回路図である。図13の等価回路図を参照して、非接触電力伝送システムの安定伝送周波数及び利得が送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12に依存することについて説明する。送電コイルL1は、自己インダクタンス(同符号「L1」により示す)及び抵抗Rw1を有し、受電コイルL2は、自己インダクタンス(同符号「L2」により示す)及び抵抗Rw2を有する。さらに、送電コイルL1及び受電コイルL2は、結合率k12で互いに結合され、相互インダクタンスM12を有する。また、符号Rldは、受電装置20の負荷値(すなわち、負荷装置23又は負荷素子R0の負荷値)を示す。図13のシステムは、次式の行列F(「Fパラメータ」又は「ABCDパラメータ」ともいう)によって表される。
ここで、Fa、Fb、Fc、Fd、Fe、Ff、及びFgはそれぞれ、次式のように、図13のキャパシタC1、抵抗Rw1、送電コイルL1、相互インダクタンスM12、受電コイルL2、抵抗Rw2、キャパシタC2の伝送パラメータを示す。
数2~数8では、スイッチング周波数fswを「ω」により示す。また、送電コイルL1及び受電コイルL2の相互インダクタンスM12は、次式によって表される。
図13のシステムの利得G1は、次式によって表される。
ここで、a11及びa12は、数1の行列Fの成分である。
数1~数10によれば、利得G1はスイッチング周波数ωに依存して変化し、利得G1の周波数特性は結合率k12に依存して変化することがわかる。従って、安定伝送周波数(すなわち、受電装置20の負荷値Rldに対する利得G1の依存性を最小化する周波数)は、結合率k12に依存して変化する。特に、数10によれば、a12の絶対値を最小化する、好ましくはゼロにすることにより、受電装置20の負荷値Rldに対する利得G1の依存性を最小化又は除去することができる。従って、スイッチング周波数ωは、a12=0を満たすように、又は少なくとも、a12の絶対値を最小化するように決定される。
利得G1は、G1=V5/V0とも表される。ここで、電圧V0は既知であり、電圧V5は検出値である。前述したように、通常モードにおける非接触電力伝送システムの利得は、テストモードにおける非接触電力伝送システムの利得と等価であるとみなされるので、通常モードにおいてAC/DCコンバータ12から出力される電圧V0は、テストモードにおける利得G1=V5/V0に基づいて、所望の電圧V4を負荷装置23に印加するように決定される。
図14は、図1のキャパシタC1,C2の容量を決定する方法を説明するための図である。非接触電力伝送システムのインバータ13のスイッチング周波数fswは、関連規制により、予め決められた周波数範囲f1~f2に制限されている。例えば、85kHz帯を使用する非接触電力伝送システムの場合は、スイッチング周波数fswは79~90kHzに制限されている。また、非接触電力伝送システムの安定伝送周波数は、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12に応じて変化し、かつ、キャパシタC1,C2の容量に応じて変化する。
非接触電力伝送システムを安定伝送周波数で動作させるために、キャパシタC1,C2の容量は以下のように決定される。まず、送電装置10から受電装置20に電力を伝送可能であるように送電コイルL1及び受電コイルL2の間の距離を変化させ、送電コイルL1及び受電コイルL2の間の距離が最大及び最小になるときの結合率k12及び自己インダクタンスを計算又は測定する。ここで、送電コイルL1及び受電コイルL2の巻線を磁性体コアの周りに巻回している場合、送電コイルL1及び受電コイルL2の自己インダクタンスは、結合率k12に依存して(すなわち、送電コイルL1及び受電コイルL2の間の距離に依存して)変化する。また、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12に代えて、相互インダクタンスM12を計算又は測定してもよい。次いで、計算又は測定された送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12及び自己インダクタンスに基づいて、例えば数1~数10を用いて、非接触電力伝送システムの利得の周波数特性を計算する。
図14の例では、送電コイルL1及び受電コイルL2の間の距離が最大になるとき(すなわち、結合率k12が最小になるとき)、非接触電力伝送システムは安定伝送周波数fst1を有する。また、送電コイルL1及び受電コイルL2の間の距離が最小になるとき(すなわち、結合率k12が最大になるとき)、非接触電力伝送システムは安定伝送周波数fst2を有する。
キャパシタC1,C2の容量は、安定伝送周波数fst1及びfst2の両方が周波数範囲f1~f2に含まれるように決定される。キャパシタC1,C2の容量は、例えば、互いに異なる値に設定される。
図14を参照して説明したようにキャパシタC1,C2の容量を決定することにより、あるスイッチング周波数fstにおいて、受電装置20の負荷値に対する受電装置20の出力電圧の依存性を少なくとも局所的に最小化することができる。
[第1の実施形態の変形例]
図15は、図1の送電コイルL1及び受電コイルL2の他の配置を示す斜視図である。送電コイルL1及び受電コイルL2は、図7に示すような磁性体コアF1,F2の周りに巻回されることに限定されず、例えば、図15に示すような磁性体F1A,F2Aの近傍に配置されてもよく、他の形態で配置されてもよい。
図16は、図1の送電装置10のキャパシタC1を除去した場合の構成を示す図である。図17は、図1の受電装置20のキャパシタC2を除去した場合の構成を示す図である。非接触電力伝送システムの安定伝送周波数が予め決められた周波数範囲f1~f2(すなわち、インバータ13のスイッチング周波数fswの範囲であり、かつ、関連規制により制限された範囲)に含まれるのであれば、送電装置10及び受電装置20の一方のキャパシタを除去してもよい。これにより、送電装置10又は受電装置20の部品点数を削減することができる。
図18は、図1のインバータ13の変形例を示す回路図である。図1の送電装置10は、図5のフルブリッジ型のインバータ13に代えて、図18のハーフブリッジ型のインバータ13Aを備えてもよい。インバータ13Aは2つのスイッチング素子Q1,Q2を含む。ハーフブリッジ型のインバータ13Aを備えることにより、送電装置10の部品点数を削減することができる。
一方、図5のフルブリッジ型のインバータ13を備えることにより、送電コイルL1に印加される電圧V1の振幅は、ハーフブリッジ型のインバータ13Aを用いる場合の2倍になる。したがって、AC/DCコンバータ12から出力される電圧V0の振幅を、ハーフブリッジ型のインバータ13Aを用いる場合の半分にすることができる。
図19は、図1の整流回路22の第1の変形例を示す回路図である。図1の受電装置20は、図6のダイオードD1~D4を含む整流回路22に代えて、図19のスイッチング素子Q11~Q14を含む整流回路22A1を備えてもよい。スイッチング素子Q11~Q14は、例えば、制御回路21又は他の回路によってオン・オフされる電界効果トランジスタである。整流回路22A1は、同期整流回路として動作する。同期整流回路として動作する整流回路22A1を用いることにより、非接触電力伝送システムの全体の電力変換効率を向上することが期待される。
図20は、図1の整流回路22の第2の変形例を示す回路図である。図1の受電装置20は、ダイオードD1~D4を含む全波整流回路である図6の整流回路22に代えて、ダイオードD1~D2を含む倍電圧整流回路である図20の整流回路22A2を備えてもよい。倍電圧整流回路である整流回路22A2を備えることにより、負荷装置23に印加される電圧は、全波整流回路である整流回路22を用いる場合の2倍になる。したがって、AC/DCコンバータ12から出力される電圧V0の振幅を、全波整流回路である整流回路22を用いる場合の半分にすることができる。
図21は、図1の整流回路22の第3の変形例を示す回路図である。図1の受電装置20は、ダイオードD1~D4を含む全波整流回路である図6の整流回路22に代えて、スイッチング素子Q11,Q12を含む倍電圧整流回路である図21の整流回路22A3を備えてもよい。整流回路22A3は、同期整流回路として動作する。倍電圧整流回路である整流回路22A3を備えることにより、負荷装置23に印加される電圧は、全波整流回路である整流回路22A1を用いる場合の2倍になる。したがって、AC/DCコンバータ12から出力される電圧V0の振幅を、全波整流回路である整流回路22A1を用いる場合の半分にすることができる。
[第1の実施形態の効果]
第1の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、負荷素子R0に印加される電圧V5に基づいて、安定伝送周波数及び送電電圧を決定する。インバータ13のスイッチング周波数fswを安定伝送周波数に合わせて設定することにより、負荷装置23の負荷値の変動に応じて送電装置10及び/又は受電装置20を制御することが不要になる。負荷装置23の負荷値が変動しても、AC/DCコンバータ12から出力される電圧V0を変化させることなく、また、スイッチング周波数fswを変化させることなく、負荷装置23にその所望電圧を安定的に供給することができる。また、負荷装置23にその所望電圧を供給するために受電装置20にDC/DC変換器などを設けることが不要になるので、高効率で動作する、小型、軽量、かつ低コストの受電装置を提供することができる。
また、第1の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12が変化しない限り、AC/DCコンバータ12から出力される電圧V0及びインバータ13のスイッチング周波数fswを変化させることは不要である。これにより、電圧V0及びスイッチング周波数fswを変化させる頻度が小さくなるので、負荷装置23の負荷値をモニタリングして受電装置20から送電装置10にリアルタイムでフィードバックすることによる遅延の影響を受けにくくなり、負荷装置23にその所望電圧を安定的に供給することができる。
また、第1の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、予め決められた負荷値を有する負荷素子R0を用いることにより、安定伝送周波数を正確に決定することができる。
また、第1の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、負荷素子R0に印加される電圧V0を局所的に最大化するスイッチング周波数fstを決定することにより、安定伝送周波数を簡単に決定することができる。
また、第1の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、受電装置20の出力電圧の検出値が大きく変化したとき、受電装置20の出力電圧の現在の検出値に基づいて安定伝送周波数及び送電電圧を再決定することにより、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12の変化に追従することができる。
また、第1の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、負荷素子R0及びスイッチ回路SWを用いることにより、負荷装置23を過電圧から保護することができる。
また、第1の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、受電コイルL2及びキャパシタC2の共振を利用することで、伝送効率及び伝送距離を向上することができる。
このように、第1の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、受電装置20に余分な回路を必要とすることなく、負荷装置23にその所望電圧を安定的に供給するように送電装置10を制御することができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る非接触電力伝送システムは、受電装置が予め決められた互いに異なる負荷値を有する2つの負荷素子を備え、各負荷素子に印加される電圧に基づいて、安定伝送周波数及び送電電圧を決定する。
[第2の実施形態の構成例]
図22は、第2の実施形態に係る非接触電力伝送システムの構成を示すブロック図である。図22の非接触電力伝送システムは、送電装置10及び受電装置20Bを含む。
図22の送電装置10は、図23~図25を参照して後述する電力制御処理を実行することの他は、図1の送電装置10と同様に構成され、同様に動作する。
受電装置20Bは、図1の制御回路21、電圧検出回路24、負荷素子R0、及びスイッチ回路SWに代えて、制御回路21B、電圧検出回路24B、負荷素子R0a,R0b、及びスイッチ回路SWBを備える。
制御回路21Bは、受電装置20Bの全体の動作を制御する。特に、制御回路21Bは、後述するように、スイッチ回路SWBを制御する。制御回路21Bは、CPU、RAM、ROM等を含み、図26を参照して後述する受電処理を実行する。
整流回路22から出力された電圧は、制御回路21Bの制御下で動作するスイッチ回路SWBを介して、負荷装置23、負荷素子R0a、及び負荷素子R0bのうちの1つに選択的に供給される。負荷素子R0aは、所定の負荷値(「第1の負荷値」又は「軽負荷」ともいう)を有し、負荷素子R0bは、負荷素子R0aの負荷値よりも大きい負荷値(「第2の負荷値」又は「重負荷」ともいう)を有する。受電装置20Bは、整流回路22から出力された電圧を負荷装置23に供給する通常モードと、整流回路22から出力された電圧を負荷素子R0aに供給するテストモードAと、整流回路22から出力された電圧を負荷素子R0bに供給するテストモードBとを有する。
本明細書では、負荷素子R0aを「第1の負荷素子」ともいい、負荷素子R0bを「第2の負荷素子」ともいう。
電圧検出回路24Bは、負荷素子R0aに印加される電圧V5aと、負荷素子R0bに印加される電圧V5bとを、受電装置20Bの出力電圧として検出する。
制御回路21Bは、電圧検出回路24Bによって検出された電圧V5a,V5vを、通信装置25を用いて送電装置10に送信する。
送電装置10の制御回路11は、電圧V0及びスイッチング周波数fswを決定するとき、テストモードAへの遷移を要求する制御信号と、テストモードBへの遷移を要求する制御信号とを、通信装置14を用いて受電装置20Bに送信する。一方、制御回路11は、負荷装置23に電力を供給するための通常の送電を行うとき、通常モードへの遷移を要求する制御信号を、通信装置14を用いて受電装置20Bに送信する。
受電装置20Bの制御回路21Bは、テストモードAへの遷移、テストモードBへの遷移、又は通常モードへの遷移を要求する制御信号を、通信装置25を介して送電装置10から受信する。制御回路21Bは、テストモードAへの遷移を要求する制御信号を受信したとき、受電装置20Bの出力電圧を負荷素子R0aに供給するようにスイッチ回路SWBを切り換える。この場合、負荷素子R0aに電圧V5aが印加される。また、制御回路21Bは、テストモードBへの遷移を要求する制御信号を受信したとき、受電装置20Bの出力電圧を負荷素子R0bに供給するようにスイッチ回路SWBを切り換える。この場合、負荷素子R0bに電圧V5bが印加される。また、制御回路21Bは、通常モードへの遷移を要求する制御信号を受信したとき、受電装置20Bの出力電圧を負荷装置23に供給するようにスイッチ回路SWBを切り換える。この場合、負荷装置23に電圧V4が印加される。
他の点では、受電装置20Bは、図1の受電装置20と同様に構成され、同様に動作する。
[第2の実施形態の動作例]
図23は、図22の送電装置10の制御回路11によって実行される電力制御処理のサブルーチンを示すフローチャートである。図24は、図23のステップS41のサブルーチンを示すフローチャートである。図25は、図23のステップS42のサブルーチンを示すフローチャートである。図26は、図22の受電装置20Bの制御回路21Bによって実行される受電処理を示すフローチャートである。
図22の送電装置10の制御回路11は、図8と同様の送電処理を実行する。ただし、送電装置10の制御回路11は、図8のステップS2において、図9の電力制御処理に代えて、図23の電力制御処理を実行する。
例えば、受電装置20Bが送電装置10から電力を受信可能な位置に配置されたとき、送電処理及び受電処理が開始される。図26のステップS71において、受電装置20Bの制御回路21Bは、通信装置25を用いて、電力供給を要求する制御信号を送電装置10に送信する。図8のステップS1において、送電装置10の制御回路11は、通信装置14を用いて、電力供給を要求する制御信号を受電装置20Bから受信する。
図8のステップS2において、送電装置10の制御回路11は、前述のように、図23の電力制御処理を実行する。
図23のステップS41において、送電装置10の制御回路11は、第1の電圧検出処理を実行する。
図24のステップS51において、送電装置10の制御回路11は、通信装置14を用いて、受電装置20BをテストモードAに遷移させる制御信号を受電装置20Bに送信する。図26のステップS72において、受電装置20Bの制御回路21Bは、通信装置25を用いて送電装置10から制御信号を受信し、この制御信号に応じて、受電装置20Bの出力電圧を負荷素子R0aに供給するようにスイッチ回路SWBを切り換える(すなわち、テストモードAに遷移する)。
図24のステップS52において、送電装置10の制御回路11は、電圧V0及びスイッチング周波数fswをテストモードの規定値に設定し、テストモードの送電を開始する。電圧V0及びスイッチング周波数fswの規定値は、テストモードA及びBにおいて共通であり、例えば図9のステップS2において説明したものと同様に設定される。図26のステップS73において、受電装置20Bの制御回路21Bは、電圧検出回路24Bを用いて負荷素子R0aに印加される電圧V5aを検出し、通信装置25を用いて電圧V5aを送電装置10に通知する。
図24のステップS53において、送電装置10の制御回路11は、スイッチング周波数fswを変化させながらテストモードの送電を継続し、通信装置14を用いて受電装置20Bから電圧V5aの値を取得する。これにより、送電装置10の制御回路11は、受電装置20Bの出力電圧が負荷素子R0aに供給されているとき、受電装置20Bの出力電圧の検出値に基づいて、受電装置20Bの出力電圧の周波数特性を示す電圧V5aを取得する。
図24のステップS54において、送電装置10の制御回路11は、テストモードの送電を停止する。
図23のステップS42において、送電装置10の制御回路11は、第2の電圧検出処理を実行する。
図25のステップS61において、送電装置10の制御回路11は、通信装置14を用いて、受電装置20BをテストモードBに遷移させる制御信号を受電装置20Bに送信する。図26のステップS74において、受電装置20Bの制御回路21Bは、受電装置20Bの制御回路21Bは、通信装置25を用いて送電装置10から制御信号を受信し、この制御信号に応じて、受電装置20Bの出力電圧を負荷素子R0bに供給するようにスイッチ回路SWBを切り換える(すなわち、テストモードBに遷移する)。
図25のステップS62において、送電装置10の制御回路11は、電圧V0及びスイッチング周波数fswをテストモードの規定値に設定し、テストモードの送電を開始する。図26のステップS75において、受電装置20Bの制御回路21Bは、電圧検出回路24Bを用いて負荷素子R0bに印加される電圧V5bを検出し、通信装置25を用いて電圧V5bを送電装置10に通知する。
図25のステップS63において、送電装置10の制御回路11は、スイッチング周波数fswを変化させながらテストモードの送電を継続し、通信装置14を用いて受電装置20Bから電圧V5aの値を取得する。これにより、送電装置10の制御回路11は、受電装置20Bの出力電圧が負荷素子R0bに供給されているとき、受電装置20Bの出力電圧の検出値に基づいて、受電装置20Bの出力電圧の周波数特性を示す電圧V5bを取得する。
図25のステップS64において、送電装置10の制御回路11は、テストモードの送電を停止する。
図23のステップS43において、送電装置10の制御回路11は、電圧の差V5a-V5bが最小化されるときの平均電圧V5と、対応するスイッチング周波数fstとを決定する。
図27は、図23のステップS43における電圧V5及びスイッチング周波数fswの決定を説明するための図である。図3及び図12などに示すように、第1の実施形態では、安定伝送周波数が、受電装置20Bの出力電圧が局所的に最大化されるときのスイッチング周波数fswに一致する場合について説明した。しかしながら、安定伝送周波数は、必ずしも、受電装置20Bの出力電圧が局所的に最大化されるときのスイッチング周波数fswに一致しない。図27の例では、スイッチング周波数fstが安定伝送周波数である。ただし、受電装置20Bの出力電圧が負荷素子R0bに印加されているとき、受電装置20Bの出力電圧はスイッチング周波数fstにおいて局所的に最大化されるが、受電装置20Bの出力電圧が負荷素子R0aに印加されているとき、受電装置20Bの出力電圧はスイッチング周波数fstにおいて極大値ではない。
第2の実施形態では、このような条件下でも安定伝送周波数を決定するために、互いに異なる負荷値を有する2つの負荷素子R0a及びR0bを備え、2つのテストモードA及びBを用いて受電装置20Bの出力電圧の周波数特性をそれぞれ取得する。図23のステップS43では、送電装置10の制御回路11は、電圧の差V5a-V5bが最小化されるときのスイッチング周波数fstを安定伝送周波数として決定する。
また、図23のステップS43では、送電装置10の制御回路11は、電圧の差V5a-V5bが最小化されるときの平均電圧V5に代えて、電圧V5a及びV5bの間の任意の電圧を決定してもよい。
図23のステップS44において、送電装置10の制御回路11は、非接触電力伝送システムの利得G=V5/V0に基づいて、負荷装置23の所望の電圧V4に対応する、AC/DCコンバータ12から出力される電圧V0を送電電圧として決定する。
図23のステップS45において、送電装置10の制御回路11は、ステップS44において決定された電圧V0をAC/DCコンバータ12に設定し、ステップS43において決定されたスイッチング周波数fstをインバータ13に設定する。
図23のステップS46において、送電装置10の制御回路11は、通信装置14を用いて、受電装置20Bを通常モードに遷移させる制御信号を受電装置20Bに送信する。図26のステップS76において、受電装置20Bの制御回路21Bは、通信装置25を用いて送電装置10から制御信号を受信し、この制御信号に応じて、受電装置20Bの出力電圧を負荷装置23に供給するようにスイッチ回路SWBを切り換える(すなわち、通常モードに遷移する)。
図23のステップS47において、送電装置10の制御回路11は、ステップS45において設定された電圧V0及びスイッチング周波数fstで、通常モードの送電を開始する。
以後、送電装置10の制御回路11は、第1の実施形態と同様に、図8のステップS3~S6を実行する。また、受電装置20Bの制御回路21Bは、図26のステップS77~S82を実行する。図26のステップS77~S82は、図8のステップS25~S30と実質的に同様である。ただし、図26のステップS80では、受電装置20Bの制御回路21Bは、受電装置20Bの出力電圧を、負荷素子R0a及びR0bの一方に供給するようにスイッチ回路SWBを切り換える。ここで、負荷装置23を過電圧からより確実に保護するために、受電装置20Bの制御回路21Bは、受電装置20Bの出力電圧を、負荷素子R0aの負荷値よりも大きな負荷値を有する負荷素子R0bに供給するようにスイッチ回路SWBを切り換えてもよい。
[第2の実施形態の効果]
第2の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、互いに異なる負荷値を有する2つの負荷素子R0a及びR0bを備え、各負荷素子R0a及びR0bに印加される電圧に基づいて、安定伝送周波数及び送電電圧を決定する。これにより、安定伝送周波数が、受電装置20Bの出力電圧が局所的に最大化されるときのスイッチング周波数fswに一致しない場合であっても、適切な安定伝送周波数及び送電電圧を決定することができる。
第2の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、2つのテストモードA及びBを用いることにより、安定伝送周波数及び送電電圧を第1の実施形態の場合よりも高精度に決定することができる。
第2の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、互いに異なる負荷値を有する3つ以上の負荷素子を受電装置に備え、各負荷素子に印加される電圧に基づいて、安定伝送周波数及び送電電圧を決定してもよい。より多くのテストモードを用いることにより、安定伝送周波数及び送電電圧をより高精度に決定することができる。
[第3の実施形態]
第3の実施形態に係る非接触電力伝送システムは、可変な負荷値を有する負荷装置に印加される電圧に基づいて、安定伝送周波数及び送電電圧を決定する。
[第3の実施形態の構成例]
図28は、第3の実施形態に係る非接触電力伝送システムの構成を示すブロック図である。図28の非接触電力伝送システムは、送電装置10及び受電装置20Cを含む。
図28の送電装置10は、図29を参照して後述する電力制御処理を実行することの他は、図1の送電装置10と同様に構成され、同様に動作する。
受電装置20Cは、図1の制御回路21及び電圧検出回路24に代えて制御回路21C及び電圧検出回路24Cを備え、図1の負荷素子R0及びスイッチ回路SWを除去している。
制御回路21Cは、受電装置20Cの全体の動作を制御する。制御回路21Cは、CPU、RAM、ROM等を含み、図30を参照して後述する受電処理を実行する。
電圧検出回路24Cは、負荷装置23に印加される電圧V4のみを受電装置20Cの出力電圧として検出する。
他の点では、受電装置20Cは、図1の受電装置20と同様に構成され、同様に動作する。負荷装置23は、前述のように、可変な負荷値を有してもよい。
送電装置10の制御回路11は、受電装置20Cの出力電圧が負荷装置23に供給され、予め決められた周波数範囲において受電装置20Cの出力電圧の検出値が少なくとも局所的に最大化されるときの送電電力の周波数を安定伝送周波数として決定する。
[第3の実施形態の動作例]
図29は、図28の送電装置10の制御回路11によって実行される電力制御処理のサブルーチンを示すフローチャートである。図30は、図28の受電装置20Cの制御回路21Cによって実行される受電処理を示すフローチャートである。
図28の送電装置10の制御回路11は、図8と同様の送電処理を実行する。ただし、送電装置10の制御回路11は、図8のステップS2において、図9の電力制御処理に代えて、図29の電力制御処理を実行する。
例えば、受電装置20Cが送電装置10から電力を受信可能な位置に配置されたとき、送電処理及び受電処理が開始される。図30のステップS101において、受電装置20Cの制御回路21Cは、通信装置25を用いて、電力供給を要求する制御信号を送電装置10に送信する。図8のステップS1において、送電装置10の制御回路11は、通信装置14を用いて、電力供給を要求する制御信号を受電装置20Cから受信する。
図8のステップS2において、送電装置10の制御回路11は、前述のように、図29の電力制御処理を実行する。
図29のステップS91において、送電装置10の制御回路11は、電圧V0及びスイッチング周波数fswをテストモードの規定値に設定し、テストモードの送電を開始する。例えば、負荷装置23が充電池である場合には、負荷装置23が充電されない程度の微弱な電圧V0をテストモードの規定値として使用する。図30のステップS102において、受電装置20Cの制御回路21Cは、電圧検出回路24を用いて負荷装置23に印加される電圧V4を検出し、通信装置25を用いて電圧V4を送電装置10に通知する。
図29のステップS92において、送電装置10の制御回路11は、スイッチング周波数fswを変化させながらテストモードの送電を継続し、通信装置14を用いて受電装置20Cから電圧V4の値を取得する。図29のステップS93において、送電装置10の制御回路11は、予め決められた周波数範囲においてスイッチング周波数fswを変化させるとき、局所的に最大化される電圧V4と、電圧V4を局所的に最大化するスイッチング周波数fstとを決定する。
図29のステップS94において、送電装置10の制御回路11は、テストモードの送電を停止する。
図29のステップS95において、送電装置10の制御回路11は、非接触電力伝送システムの利得G=V4/V0に基づいて、負荷装置23の所望の電圧V4に対応する、AC/DCコンバータ12から出力される電圧V0を決定する。
図29のステップS96において、送電装置10の制御回路11は、ステップS95において決定された電圧V0をAC/DCコンバータ12に設定し、ステップS94において決定されたスイッチング周波数fstをインバータ13に設定する。
図29のステップS97において、送電装置10の制御回路11は、ステップS96において設定された電圧V0及びスイッチング周波数fstで、通常モードの送電を開始する。
以後、送電装置10の制御回路11は、第1の実施形態と同様に、図8のステップS3~S6を実行する。また、受電装置20Cの制御回路21Cは、図30のステップS103~S105を実行する。図26のステップS103~S105は、図8のステップS27、S29、及びS30と実質的に同様である。図28の受電装置20Cは、負荷装置23を過電圧から保護するための回路をもたないので、受電装置20Cの制御回路21Cは、図30のステップS103において過電圧を検出しても、ステップS105に進み、送電装置10に電力伝送の停止を要求するだけである。
[第3の実施形態の変形例]
図31は、第3の実施形態の変形例に係る非接触電力伝送システムの構成を示すブロック図である。図28の非接触電力伝送システムは、送電装置10及び受電装置20Dを含む。
図31の送電装置10は、図29の電力制御処理を実行することの他は、図1の送電装置10と同様に構成され、同様に動作する。
受電装置20Dは、図1の制御回路21、整流回路22、及び電圧検出回路24に代えて、制御回路21D、整流回路22D、電圧検出回路24D、及び電圧検出抵抗R2を備える。また、受電装置20Dは、図1の負荷素子R0及びスイッチ回路SWを除去している。
制御回路21Cは、受電装置20Dの全体の動作を制御する。制御回路21Cは、CPU、RAM、ROM等を含み、図30の受電処理を実行する。
整流回路22Dは、例えば、図19又は図21に示すように、同期整流回路として構成される。
電圧検出抵抗R2は、整流回路22Dの入力端子にわたって接続される。電圧検出回路24Dは、図1の負荷素子R0に印加される電圧V5に代えて、受電コイルL2に発生する電圧V2を受電装置20Dの出力電圧として検出する。
他の点では、受電装置20Dは、図1の受電装置20と同様に構成され、同様に動作する。
図32は、図31の非接触電力伝送システムにおける電圧V1,V2の波形を概略的に示す図である。前述のように、インバータ13は、例えば、矩形波の交流の電圧V1を発生する。受電コイルL2には、矩形波又は正弦波の電圧V2が発生する。
送電装置10の制御回路11は、AC/DCコンバータ12及びインバータ13を用いて送電電力を発生しているときに受電コイルL2に発生する電圧V2を、受電装置20Dの出力電圧の検出値として、通信装置14を用いて受電装置20Dから受信する。受電コイルL2に発生する電圧V2を受電装置20Dの出力電圧の検出値として用いても、図1の負荷素子R0に印加される電圧V5、図22の負荷素子R0a,R0bに印加される電圧V5a,V5b、又は図28の負荷装置23に印加される電圧V4を用いる場合と同様に、安定伝送周波数及び送電電圧を決定することができる。
[第3の実施形態の効果]
第3の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、負荷装置23に印加される電圧V4に基づいて、安定伝送周波数及び送電電圧を決定する。インバータ13のスイッチング周波数fswを安定伝送周波数に合わせて設定することにより、負荷装置23の負荷値の変動に応じて送電装置10及び/又は受電装置20C,20Dを制御することが不要になる。
第3の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、受電装置20C,20Dから負荷素子及びスイッチ回路を除去したことにより、第1及び第2の実施形態の場合よりも、受電装置20C,20Dの部品点数を削減することができる。これにより、高効率で動作する、小型、軽量、かつ低コストの受電装置20C,20Dを提供することができる。
第3の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、テストモードを実行しないことにより、第1及び第2の実施形態の場合よりも、処理を簡単化することができる。
[第4の実施形態]
第4の実施形態に係る非接触電力伝送システムは、送電装置が送電コイルに電磁的に結合した補助コイルを備え、補助コイルに発生する電流又は電圧の値と、送電コイルに流れる電流とに基づいて、安定伝送周波数及び送電電圧を決定する。
[第4の実施形態の構成例]
図33は、第4の実施形態に係る非接触電力伝送システムの構成を示すブロック図である。図33の非接触電力伝送システムは、送電装置10E及び受電装置20Eを含む。
送電装置10Eは、図1の制御回路11に代えて制御回路11Eを備え、補助コイルL3、電流検出抵抗R1、検出器15及び16、及び結合率推定器17をさらに備える。
制御回路11Eは、送電装置10Eの全体の動作を制御する。制御回路11Eは、CPU、RAM、ROM等を含み、図39及び図40を参照して後述する送電処理を実行する。
補助コイルL3は送電コイルL1に電磁的に結合する。補助コイルL3は、磁性体コアF1に巻回されてもよい。
本明細書では、補助コイルL3を「第1の補助コイル」ともいう。
検出器15は、補助コイルL3に発生する電流I3又は電圧V3の値を検出する。検出器16は、電流検出抵抗R1を用いて、送電コイルL1に流れる電流I1の値を検出する。検出器15,16によって検出された値は、結合率推定器17に通知される。
本明細書では、検出器15を「第1の検出器」ともいい、検出器16を「第2の検出器」ともいう。
結合率推定器17は、補助コイルL3に発生する電流I3又は電圧V3の値に基づいて、送電コイルL1及び受電コイルL2の間の第1の結合率k12aを推定する。結合率推定器17は、送電コイルL1に流れる電流I1の値に基づいて、送電コイルL1及び受電コイルL2の間の第2の結合率k12bを推定する。
送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12は、送電コイルL1及び受電コイルL2の間の距離に応じて変化する。距離が近くなると結合率k12が増大し、距離が遠くなると結合率k12が低下する。また、送電コイルL1に流れる電流I1は、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12に応じて、所定の特性で変化する。補助コイルL3に発生する電流I3(及び/又は電圧V3)は、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12に応じて、電流I1とは異なる特性で変化する。結合率推定器17は、電流I1及び結合率k12bの関係と、電流I3(又は電圧V3)及び結合率k12aの関係とを示すテーブル又は計算式を予め格納している。結合率推定器17は、このテーブル又は計算式を参照することにより、電流I1,I3(又は、電流I1及び電圧V3)の値に基づいて結合率k12a,k12bをそれぞれ推定することができる。送電コイルL1及び受電コイルL2の間に異物が存在しなければ、推定される結合率k12a,k12bは互いに一致すると期待される。結合率k12a,k12bが互いに一致する場合、この結合率を符号「k12」により示す。一方、送電コイルL1及び受電コイルL2の間に異物が存在すると、電流I1,I3は異物から互いに異なる影響を受け、その結果、推定される結合率k12a,k12bは互いに不一致する。
結合率推定器17は、CPU、RAM、ROM等を含み、ソフトウェア処理により、結合率k12a,k12bを推定してもよい。結合率推定器17は、制御回路11Eとは別個の回路として設けられてもよく、制御回路11Eに一体化されてもよい。
制御回路11Eは、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12に基づいてAC/DCコンバータ12及びインバータ13を制御する。特に、制御回路11Eは、AC/DCコンバータ12から出力される電圧V0の大きさと、インバータ13のスイッチング周波数fswとを制御する。
制御回路11Eは、予め決められた周波数を有する送電電力を発生するようにAC/DCコンバータ12及びインバータ13を制御する。AC/DCコンバータ12及びインバータ13を用いて送電電力を発生しているとき、結合率推定器17は、前述のように、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12a,k12bを推定する。制御回路11Eは、推定された送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12に基づいて、非接触電力伝送システムの利得の周波数特性を決定する。制御回路11Eは、利得の周波数特性に基づいて、予め決められた周波数範囲において受電装置20Eの負荷値に対する受電装置20Eの出力電圧の依存性が少なくとも局所的に最小化されるときの送電電力の周波数を示す安定伝送周波数を決定する。制御回路11Eは、利得の周波数特性に基づいて、安定伝送周波数を有する送電電力を発生するときに受電装置20Eの出力電圧を予め決められた目標電圧にする送電電力の電圧を示す送電電圧を決定する。
前述したように、非接触電力伝送システムの利得の周波数特性は、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12に依存して変化する。従って、制御回路11Eは、結合率k12と、利得の周波数特性との関係を示すテーブル又は計算式を予め格納している。制御回路11Eは、このテーブル又は計算式を参照することにより、結合率k12に基づいて安定伝送周波数及び送電電圧をそれぞれ決定することができる。
制御回路11Eは、第1の結合率k12a及び第2の結合率k12bの差が予め決められたしきい値以下であるとき、安定伝送周波数及び送電電圧を有する送電電力を発生するようにAC/DCコンバータ12及びインバータ13を制御する。制御回路11Eは、第1の結合率k12a及び第2の結合率k12bの差が予め決められたしきい値を超えるとき、受電装置20Eへの電力の伝送を停止するようにAC/DCコンバータ12及びインバータ13を制御する。ここで、しきい値の大きさは、第1の結合率k12a及び第2の結合率k12bが実質的に一致しているとみなすことができるように設定される。
制御回路11Eは、送電装置10Eから受電装置20Eに電力伝送を開始するとき、安定伝送周波数及び送電電圧を決定する。また、制御回路11Eは、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12が、安定伝送周波数及び送電電圧を決定したときの値から大きく変化したとき、現在の結合率k12に基づいて安定伝送周波数及び送電電圧を再決定する。これにより、制御回路11Eは、安定伝送周波数及び送電電圧を有する送電電力を発生するようにAC/DCコンバータ12及びインバータ13を制御する。
第4の実施形態では、制御回路11E、検出器15及び16、及び結合率推定器17をまとめて、送電装置10Eの「制御装置」ともいう。
他の点では、送電装置10Eは、図1の送電装置10と同様に構成され、同様に動作する。
受電装置20Eは、図1の制御回路21及び電圧検出回路24に代えて、制御回路21E及び電圧検出回路24Eを備える。
制御回路21Eは、受電装置20Eの全体の動作を制御する。制御回路21Eは、CPU、RAM、ROM等を含み、図41を参照して後述する受電処理を実行する。
電圧検出回路24Eは、負荷装置23に印加される電圧V4のみを受電装置20Eの出力電圧として検出する。
前述のように、送電装置10Eの制御回路11Eは、安定伝送周波数及び送電電圧を決定するために、受電装置20Eの出力電圧の検出値ではなく、結合率k12を使用する。従って、第4の実施形態では、電圧V4は、送電装置10Eに通知されず、負荷装置23を過電圧から保護するか否かを決定するためにのみ使用される。
他の点では、受電装置20Eは、図1の受電装置20と同様に構成され、同様に動作する。
図34は、図33の送電コイルL1、受電コイルL2、及び補助コイルL3の配置を示す斜視図である。前述したように、送電コイルL1及び補助コイルL3は磁性体コアF1に巻回されてもよく、受電コイルL2は磁性体コアF2に巻回されてもよい。送電コイルL1から発生する磁束の一部が補助コイルL3に鎖交することにより、補助コイルL3に電流I3及び電圧V3が発生する。また、図34に示すように、補助コイルL3は、送電コイルL1を包囲するように配置されてもよい。補助コイルL3をこのように配置することにより、送電コイルL1の漏洩磁束を低減することができる。
送電コイルL1及び受電コイルL2は結合率k12で互いに電磁的に結合し、送電コイルL1及び補助コイルL3は結合率k13で互いに電磁的に結合し、受電コイルL2及び補助コイルL3は結合率k23で互いに電磁的に結合する。送電コイルL1、受電コイルL2、及び補助コイルL3は、結合率k13,k23が結合率k12よりもずっと小さくなるように構成される。送電コイルL1、受電コイルL2、及び補助コイルL3は、結合率k23が結合率k13よりも小さくなるように構成されてもよい。
図35は、図33の非接触電力伝送システムの適用例を示す図である。図35は、受電装置20Eが、充電池を備えた電動の車両32に組み込まれ、送電装置10Eが、車両32の受電装置20Eに対して送電可能であるように路面31に組み込まれる場合を示す。この場合、車両32の充電池が受電装置20Eの負荷装置23である。送電装置10E及び受電装置20Eは、距離d1を有して互いに対向する。図35に示すように、送電コイルL1及び受電コイルL2の間に異物33が挟まれることがある。
[第4の実施形態の動作例]
図36は、図33の検出器15によって検出される補助コイルL3に発生する電流I3の大きさの変化の一例を示すグラフである。図37は、図33の検出器16によって検出される送電コイルL1に流れる電流I1の大きさの変化の一例を示すグラフである。前述のように、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12は、送電コイルL1及び受電コイルL2の間の距離d1に応じて変化する。従って、図36及び図37に示す距離d1と電流I1,I3の関係から、等価的に、結合率k12と電流I1,I3の関係がわかる。また、前述のように、送電コイルL1及び受電コイルL2の間に異物33が存在すると、電流I1,I3は異物33から互いに異なる影響を受ける。図36及び図37の例では、異物33が存在すると、異物33が存在しない場合よりも、電流I3は減少し、電流I1は増大する。
図38は、図33の送電コイルL1に流れる電流I1及び補助コイルL3に発生する電流I3に対して計算される送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12の一例を示すテーブルである。図38は、受電装置20がテストモードにあり、送電コイルL1及び受電コイルL2の間に異物33が存在しない場合における電流I1,I3及び結合率k12を示す。結合率推定器17は、図38に示すような電流I1,I3及び結合率k12の関係を示すテーブルを予め格納している。結合率推定器17は、電流I3の値に基づいてテーブルを参照することにより、送電コイルL1及び受電コイルL2の間の第1の結合率k12aを推定する。結合率推定器17は、電流I1の値に基づいてテーブルを参照することにより、送電コイルL1及び受電コイルL2の間の第2の結合率k12bを推定する。
送電コイルL1及び受電コイルL2の間に異物33が存在しなければ、電流I3の値に基づいて推定された結合率k12aと、電流I1の値に基づいて推定された結合率k12bとは互いに一致すると期待される。一方、送電コイルL1及び受電コイルL2の間に異物33が存在すると、電流I1,I3は異物33から互いに異なる影響を受け、その結果、電流I3の値に基づいて推定された結合率k12aと、電流I1の値に基づいて推定された結合率k12bとは互いに不一致する。従って、結合率k12a,k12bが互いに一致するか否かに基づいて、送電コイルL1及び受電コイルL2の間に異物33が存在するか否かを判断することができる。
制御回路11Eは、推定された結合率k12a,k12bが互いに実質的に一致するとき、すなわち、結合率k12a,k12bの差が予め決められたしきい値以下であるとき、結合率k12a,k12bが互いに一致すると判断してもよい。
結合率推定器17は、図38に示すようなテーブルに代えて、電流I1,I3及び結合率k12の関係を示す計算式を予め格納してもよい。例えば、送電コイルL1に流れる電流I1に基づいて結合率k12aを次式のように推定してもよい。
k12a=eI1+a
ここで、右辺の「a」は定数である。
また、電流I1と結合率k12aとは、次式の関係を有してもよい。
I1=1+k12a+(k12a)2+…+(k12a)n
この式を結合率k12aについて解くことにより、電流I1に基づいて結合率k12aを推定してもよい。
電流I1に基づいて結合率k12aを推定するための計算式は、以上に例示したものに限定されない。
補助コイルL3に流れる電流I3に基づいて結合率k12bを推定する場合もまた、電流I1に基づいて結合率k12aを推定する場合と同様に、何らかの計算式を用いて推定可能である。
受電コイルL2及び補助コイルL3の結合率k23もまた、結合率k12と同様に計算可能である。一方、送電コイルL1及び補助コイルL3の間の距離は変化しないので、送電コイルL1及び補助コイルL3の結合率k13は、予め計算され、結合率推定器17に格納される。
図36及び図38では、補助コイルL3に発生する電流I3の値を検出する場合について説明したが、補助コイルL3に発生する電圧V3の値を検出する場合もまた実質的に同様に、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12bを推定可能である。
図39は、図33の送電装置10Eの制御回路11Eによって実行される送電処理を示すフローチャートである。図40は、図39のステップS112のサブルーチンを示すフローチャートである。図41は、図33の受電装置20Eの制御回路21Eによって実行される受電処理を示すフローチャートである。
例えば、受電装置20Eが送電装置10Eから電力を受信可能な位置に配置されたとき、送電処理及び受電処理が開始される。図41のステップS141において、受電装置20Eの制御回路21Eは、通信装置25を用いて、電力供給を要求する制御信号を送電装置10Eに送信する。図39のステップS111において、送電装置10Eの制御回路11Eは、通信装置14を用いて、電力供給を要求する制御信号を受電装置20Eから受信する。
図39のステップS112において、送電装置10Eの制御回路11Eは、電力制御処理を実行する。
図40のステップS121において、送電装置10Eの制御回路11Eは、通信装置14を用いて、受電装置20Eをテストモードに遷移させる制御信号を受電装置20Eに送信する。図41のステップS142において、受電装置20Eの制御回路21Eは、通信装置25を用いて送電装置10Eから制御信号を受信し、この制御信号に応じて、受電装置20Eの出力電圧を負荷素子R0に供給するようにスイッチ回路SWを切り換える(すなわち、テストモードに遷移する)。
図40のステップS122において、送電装置10Eの制御回路11Eは、電圧V0及びスイッチング周波数fswをテストモードの規定値に設定し、テストモードの送電を開始する。
図40のステップS123において、送電装置10Eは、検出器15を用いて、補助コイルL3に発生する電流I3又は電圧V3の値を検出する。ステップS124において、送電装置10Eは、結合率推定器17を用いて、検出された電流I3又は電圧V3の値に基づいて、テーブル又は計算式を参照することにより、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12aを推定する。
図40のステップS125において、送電装置10Eは、検出器16を用いて、送電コイルL1に流れる電流I1の値を検出する。ステップS126において、送電装置10Eは、結合率推定器17を用いて、検出された電流I1の値に基づいて、テーブル又は計算式を参照することにより、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12bを推定する。
図42は、図33の非接触電力伝送システムにおける電圧V1,V3及び電流I1,I3の波形を概略的に示す図である。前述のように、インバータ13は、例えば、矩形波の交流の電圧V1を発生する。送電コイルL1には、矩形波の交流の電圧V1が印加され、かつ、矩形波、三角波、又は正弦波の交流の電流I1が流れる。また、補助コイルL3には、矩形波の交流の電圧V3が発生し、かつ、矩形波、三角波、又は正弦波の交流の電流I3が流れる。
図40のステップS127において、送電装置10Eの制御回路11Eは、テストモードの送電を停止する。
図40のステップS128において、送電装置10Eの制御回路11Eは、推定された結合率k12a,k12bが互いに一致するか否かを判断し、YESのときはステップS129に進み、NOのときはステップS134に進む。
図40のステップS129において、送電装置10Eの制御回路11Eは、結合率k12に基づいて、テーブル又は計算式を参照することにより、非接触電力伝送システムの利得の周波数特性を決定する。ステップS130において、送電装置10Eの制御回路11Eは、利得の周波数特性に基づいて、受電装置20Eの負荷値に対する受電装置20Eの出力電圧の依存性が少なくとも局所的に最小化されるときのスイッチング周波数fstを安定伝送周波数として決定する。また、ステップS130において、送電装置10Eの制御回路11Eは、利得の周波数特性に基づいて、負荷装置23の所望の電圧V4に対応する、AC/DCコンバータ12から出力される電圧V0を送電電圧として決定する。ステップS131において、送電装置10Eの制御回路11Eは、ステップS130において決定された電圧V0をAC/DCコンバータ12に設定し、ステップS130において決定されたスイッチング周波数fstをインバータ13に設定する。
図40のステップS132において、送電装置10Eの制御回路11Eは、通信装置14を用いて、受電装置20Eを通常モードに遷移させる制御信号を受電装置20Eに送信する。図41のステップS143において、受電装置20Eの制御回路21Eは、通信装置25を用いて送電装置10Eから制御信号を受信し、この制御信号に応じて、受電装置20Eの出力電圧を負荷装置23に供給するようにスイッチ回路SWを切り換える(すなわち、通常モードに遷移する)。
図40のステップS133において、送電装置10Eの制御回路11Eは、ステップS131において設定された電圧V0及びスイッチング周波数fstで、通常モードの送電を開始する。
図40のステップS134において、送電装置10Eの制御回路11Eは、異物が存在すると判断する。送電装置10Eの制御回路11Eは、受電装置20Eへの電力の伝送を停止し続けるようにAC/DCコンバータ12及びインバータ13を制御する。
送電装置10Eから受電装置20Eに電力を伝送しているとき、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12が変化すると、非接触電力伝送システムの安定伝送周波数及び利得も変化する。この場合、送電装置10Eの制御回路11Eは、以下に説明するように、現在の結合率k12に基づいて安定伝送周波数及び送電電圧を再決定する。
図39のステップS113において、送電装置10Eの制御回路11Eは、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12が安定伝送周波数及び送電電圧を決定したときの値から所定のしきい値よりも大きく変化したか否かを判断し、YESのときはステップS112に戻り、NOのときはステップS114に進む。
図8のステップS113からステップS112に戻ったとき、送電装置10Eの制御回路11Eは、図40を参照して説明した電力制御処理を再び実行する。前述のように、図40のステップS121において、送電装置10Eの制御回路11Eは、通信装置14を用いて、受電装置20Eをテストモードに遷移させる制御信号を受電装置20Eに送信する。図41のステップS144において、受電装置20Eの制御回路21Eは、送電装置10Eから制御信号を受信したか否かを判断し、YESのときはステップS142に戻り、NOのときはステップS145に進む。
図33の受電装置20Eは、受電装置20Eにおいて過電圧を検出したとき、以下に説明するように、負荷素子R0及びスイッチ回路SWを用いて、負荷装置23を過電圧から保護してもよい。
図41のステップS145において、受電装置20Eの制御回路21Eは、負荷装置23に印加される電圧V4が所定のしきい値を超えたか否かを判断し、YESのときはステップS146に進み、NOのときはステップS147に進む。図41のステップS146において、受電装置20Eの制御回路21Eは、受電装置20Eの出力電圧を負荷素子R0に供給するようにスイッチ回路SWを切り換える。
図41のステップS147において、受電装置20Eの制御回路21Eは、負荷装置23の動作が停止するか否かを判断し、YESのときはステップS148に進み、NOのときはステップS144に戻る。
図41のステップS148において、受電装置20Eの制御回路21Eは、通信装置25を用いて、電力伝送の停止を要求する制御信号を送電装置10Eに送信する。図39のステップS114において、送電装置10Eの制御回路11Eは、受電装置20Eから電力供給の停止が要求されたか否かを判断し、YESのときはステップS115に進み、NOのときはステップS113に戻る。図39のステップS115において、送電装置10Eの制御回路11Eは、通常モードの送電を停止する。
[第4の実施形態の動作原理]
次に、図43を参照して、図33の非接触電力伝送システムの動作原理について説明する。
図43は、図33の非接触電力伝送システムの概略構成を示す等価回路図である。図43の等価回路図を参照して、非接触電力伝送システムの安定伝送周波数及び利得が送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12に依存することについて説明する。送電コイルL1は、自己インダクタンス(同符号「L1」により示す)及び抵抗Rw1を有し、受電コイルL2は、自己インダクタンス(同符号「L2」により示す)及び抵抗Rw2を有し、補助コイルL3は、自己インダクタンス(同符号「L3」により示す)及び抵抗Rw3を有する。さらに、送電コイルL1及び受電コイルL2は、結合率k12で互いに結合され、相互インダクタンスM12を有する。また、送電コイルL1及び補助コイルL3は、結合率k13で互いに結合され、相互インダクタンスM13を有する。また、受電コイルL2及び補助コイルL3は、結合率k23で互いに結合され、相互インダクタンスM23を有する。また、符号Rldは、受電装置20Eの負荷値(すなわち、負荷装置23又は負荷素子R0の負荷値)を示す。
図33のシステムは、次式の行列Z(「Zパラメータ」ともいう)によって表される。
数14では、スイッチング周波数fswを「ω」により示す。jは虚数単位を示す。
ここで、行列Zの逆行列を導入する。
図43のシステムの利得G2は、次式によって表される。
数11~数16によれば、利得G2はスイッチング周波数ωに依存して変化し、利得G2の周波数特性は結合率k12に依存して変化することがわかる。従って、安定伝送周波数(すなわち、受電装置20Eの負荷値Rldに対する利得G2の依存性を最小化する周波数)は、結合率k12に依存して変化する。特に、数16によれば、「1-Rw3・c33」の絶対値を最小化する、好ましくはゼロにすることにより、受電装置20Eの負荷値Rldに対する利得G2の依存性を最小化又は除去することができる。従って、スイッチング周波数ωは、1-Rw3・c33=0を満たすように、又は少なくとも、「1-Rw3・c33」の絶対値を最小化するように決定される。
前述したように、制御回路11Eは、結合率k12と、利得の周波数特性との関係を示すテーブル又は計算式を予め格納している。このテーブル又は計算式は、数11~数16に基づいて生成されても、他のモデルに基づいて生成されてもよい。
[第4の実施形態の効果]
第4の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、送電装置10Eにおいて検出された送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12a,k12bに基づいて、安定伝送周波数及び送電電圧を決定する。インバータ13のスイッチング周波数fswを安定伝送周波数に合わせて設定することにより、負荷装置23の負荷値の変動に応じて送電装置10E及び/又は受電装置20Eを制御することが不要になる。負荷装置23の負荷値が変動しても、AC/DCコンバータ12から出力される電圧V0を変化させることなく、また、スイッチング周波数fswを変化させることなく、負荷装置23にその所望電圧を安定的に供給することができる。また、負荷装置23にその所望電圧を供給するために受電装置20EにDC/DC変換器などを設けることが不要になるので、高効率で動作する、小型、軽量、かつ低コストの受電装置を提供することができる。
また、第4の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、受電装置20Eから送電装置10Eにフィードバックされる信号を参照することなく、送電装置10Eにおいて検出された送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12a,k12bに基づいて、安定伝送周波数及び送電電圧を決定することができる。従って、負荷装置23の負荷値をモニタリングして受電装置20Eから送電装置10Eにフィードバックすることによる遅延の影響を受けることはない。
また、第4の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12a,k12bが変化しない限り、AC/DCコンバータ12から出力される電圧V0及びインバータ13のスイッチング周波数fswを変化させることは不要である。これにより、電圧V0及びスイッチング周波数fswを変化させる頻度が小さくなるので、負荷装置23にその所望電圧を安定的に供給することができる。
また、第4の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、電流I3又は電圧V3の値に基づいて推定された結合率k12aと、電流I1の値に基づいて推定された結合率k12bとが互いに一致する場合、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12を正しく推定することができる。
また、第4の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、結合率k12a,k12bが互いに一致するか否かを判断することにより、異物を検出して送電を停止することができ、非接触電力伝送システムの安全性を向上することもできる。1つの回路パラメータに基づいて送電コイル及び受電コイルの結合率を推定し、推定された結合率を何らかのしきい値と比較する場合には、結合率が異物の影響により変化したのか、他の要因(送電コイル及び受電コイルの間の距離の変化、など)により変化したのかを区別することが困難である。また、この場合、推定された結合率がしきい値よりも高いか低いかを判断することしかできず、結合率の強弱を考慮することができない。これに対して、第4の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、結合率が高い場合にも低い場合にも、異物を確実に検出することができる。
また、第4の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、カメラ、温度センサなどを含まない簡単な構成で、異物を確実に検出することもできる。
また、第4の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、補助コイルL3を追加することにより、送電コイルL1及び受電コイルL2のみを備える場合よりも、漏えい磁束を低減することができる。
また、第4の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、予め決められた負荷値を有する負荷素子R0を用いることにより、安定伝送周波数を正確に決定することができる。
また、第4の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12が大きく変化したとき、現在の結合率k12に基づいて安定伝送周波数及び送電電圧を再決定することにより、結合率k12の変化に追従することができる。
また、第4の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、負荷素子R0及びスイッチ回路SWを用いることにより、負荷装置23を過電圧から保護することができる。
また、第4の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、受電コイルL2及びキャパシタC2の共振を利用することで、伝送効率及び伝送距離を向上することができる。
このように、第4の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、受電装置20Eに余分な回路を必要とすることなく、負荷装置23にその所望電圧を安定的に供給するように送電装置10Eを制御することができる。
[第5の実施形態]
第5の実施形態に係る非接触電力伝送システムは、送電装置が送電コイルに電磁的に結合した補助コイルを備え、補助コイルに発生する電流又は電圧の値に基づいて、安定伝送周波数及び送電電圧を決定する。
[第5の実施形態の構成例]
図44は、第5の実施形態に係る非接触電力伝送システムの構成を示すブロック図である。図44の非接触電力伝送システムは、送電装置10F及び受電装置20Eを含む。
送電装置10Fは、図33の制御回路11E及び結合率推定器17に代えて、制御回路11F及び結合率推定器17Fを備え、図33の検出器16及び電流検出抵抗R1を除去している。
制御回路11Fは、送電装置10Fの全体の動作を制御する。制御回路11Fは、CPU、RAM、ROM等を含み、図45を参照して後述する電力制御処理を実行する。
結合率推定器17Fは、補助コイルL3に発生する電流I3又は電圧V3の値のみに基づいて、送電コイルL1及び受電コイルL2の間の結合率k12を推定する。
他の点では、送電装置10Fは、図33の送電装置10Eと同様に構成され、同様に動作する。
第5の実施形態では、制御回路11F、検出器15、及び結合率推定器17をまとめて、送電装置10Fの「制御装置」ともいう。
図44の受電装置20Eは、図33の受電装置20Eと同様に構成され、同様に動作する。
[第5の実施形態の動作例]
図44の送電装置10Fの制御回路11Fは、図39と同様の送電処理を実行する。ただし、送電装置10Fの制御回路11Fは、図39のステップS112において、図40の電力制御処理に代えて、図45の電力制御処理を実行する。
図45は、図44の送電装置10Fの制御回路11Fによって実行される電力制御処理のサブルーチンを示すフローチャートである。送電コイルL1及び受電コイルL2の間に異物が存在しないと考えられる場合、図40のステップS125、S126、S128、及びS134を省略してもよい。これにより、送電装置10Fの構成及び動作を、図33の送電装置10Eの場合よりも簡単化することができる。
[第5の実施形態の効果]
第5の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、第4の実施形態と同様に、受電装置20Eから送電装置10Fにフィードバックされる信号を参照することなく、送電装置10Fにおいて検出された送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12aに基づいて、安定伝送周波数及び送電電圧を決定することができる。従って、負荷装置23の負荷値をモニタリングして受電装置20Eから送電装置10Fにフィードバックすることによる遅延の影響を受けることはない。
第5の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、電流検出抵抗R1及び検出器16を除去したことにより、送電装置10Fの構成及び動作を、図33の送電装置10Eの場合よりも簡単化することができる。
[第6の実施形態]
第6の実施形態に係る非接触電力伝送システムは、送電コイルに流れる電流に基づいて、安定伝送周波数及び送電電圧を決定する。
[第6の実施形態の構成例]
図46は、第6の実施形態に係る非接触電力伝送システムの構成を示すブロック図である。図46の非接触電力伝送システムは、送電装置10G及び受電装置20Eを含む。
送電装置10Gは、図33の制御回路11E及び結合率推定器17に代えて、制御回路11G及び結合率推定器17Gを備え、図33の補助コイルL3及び検出器15を除去している。
制御回路11Gは、送電装置10Gの全体の動作を制御する。制御回路11Gは、CPU、RAM、ROM等を含み、図47を参照して後述する電力制御処理を実行する。
結合率推定器17Gは、送電コイルL1に発生する電流I1の値のみに基づいて、送電コイルL1及び受電コイルL2の間の結合率k12を推定する。
他の点では、送電装置10Gは、図33の送電装置10Eと同様に構成され、同様に動作する。
第6の実施形態では、制御回路11G、検出器15、及び結合率推定器17をまとめて、送電装置10Gの「制御装置」ともいう。
図46の受電装置20Eは、図33の受電装置20Eと同様に構成され、同様に動作する。
[第6の実施形態の動作例]
図46の送電装置10Gの制御回路11Gは、図39と同様の送電処理を実行する。ただし、送電装置10Gの制御回路11Gは、図39のステップS112において、図40の電力制御処理に代えて、図47の電力制御処理を実行する。
図47は、図46の送電装置10Gの制御回路11Gによって実行される電力制御処理のサブルーチンを示すフローチャートである。送電コイルL1及び受電コイルL2の間に異物が存在しないと考えられる場合、図40のステップS123、S124、S128、及びS134を省略してもよい。これにより、送電装置10Fの構成及び動作を、図33の送電装置10Eの場合よりも簡単化することができる。
[第6の実施形態の効果]
第6の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、第4の実施形態と同様に、受電装置20Eから送電装置10Gにフィードバックされる信号を参照することなく、送電装置10Gにおいて検出された送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12bに基づいて、安定伝送周波数及び送電電圧を決定することができる。従って、負荷装置23の負荷値をモニタリングして受電装置20Eから送電装置10Gにフィードバックすることによる遅延の影響を受けることはない。
[第7の実施形態]
第4の実施形態に係る送電装置と、第1の実施形態に係る受電装置とを組み合わせてもよい。第7の実施形態に係る非接触電力伝送システムは、受電装置が予め決められた負荷値を有する1つの負荷素子を備え、負荷素子に印加される電圧に基づいて、安定伝送周波数及び送電電圧を決定する。さらに、第7の実施形態に係る非接触電力伝送システムは、送電装置が送電コイルに電磁的に結合した補助コイルを備え、補助コイルに発生する電流又は電圧の値と、送電コイルに流れる電流とに基づいて、送電コイル及び受電コイルの結合率を推定する。
[第7の実施形態の構成例]
図48は、第7の実施形態に係る非接触電力伝送システムの構成を示すブロック図である。図48の非接触電力伝送システムは、送電装置10E及び受電装置20を含む。
図48の送電装置10Eは、図49を参照して後述する電力制御処理を実行することの他は、図33の送電装置10Eと同様に構成され、同様に動作する。
制御回路11Eは、予め決められた周波数範囲において変化する周波数を有する送電電力を発生するようにAC/DCコンバータ12及びインバータ13を制御する。制御回路11Eは、AC/DCコンバータ12及びインバータ13を用いて送電電力を発生しているときに受電装置20において検出された受電装置20の出力電圧の検出値を、通信装置14を用いて受電装置20から受信する。また、AC/DCコンバータ12及びインバータ13を用いて送電電力を発生しているとき、結合率推定器17は、前述のように、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12a,k12bを推定する。制御回路11Eは、受電装置20の出力電圧の検出値に基づいて、予め決められた周波数範囲において受電装置20の負荷値に対する受電装置20の出力電圧の依存性が少なくとも局所的に最小化されるときの送電電力の周波数を示す安定伝送周波数を決定する。制御回路11Eは、受電装置20の出力電圧の検出値に基づいて、安定伝送周波数を有する送電電力を発生するときに受電装置20の出力電圧を予め決められた目標電圧にする送電電力の電圧を示す送電電圧を決定する。制御回路11Eは、安定伝送周波数及び送電電圧を有する送電電力を発生するようにAC/DCコンバータ12及びインバータ13を制御する。
制御回路11Eは、第1の結合率k12a及び第2の結合率k12bの差が予め決められたしきい値以下であるとき、安定伝送周波数及び送電電圧を有する送電電力を発生するようにAC/DCコンバータ12及びインバータ13を制御する。制御回路11Eは、第1の結合率k12a及び第2の結合率k12bの差が予め決められたしきい値を超えるとき、受電装置20への電力の伝送を停止するようにAC/DCコンバータ12及びインバータ13を制御する。ここで、しきい値の大きさは、第1の結合率k12a及び第2の結合率k12bが実質的に一致しているとみなすことができるように設定される。
制御回路11Eは、送電装置10Eから受電装置20に電力伝送を開始するとき、安定伝送周波数及び送電電圧を決定する。また、制御回路11Eは、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12が、安定伝送周波数及び送電電圧を決定したときの値から大きく変化したとき、受電装置20の出力電圧の現在の検出値に基づいて安定伝送周波数及び送電電圧を再決定する。これにより、制御回路11Eは、安定伝送周波数及び送電電圧を有する送電電力を発生するようにAC/DCコンバータ12及びインバータ13を制御する。
第7の実施形態では、制御回路11E、通信装置14、検出器15及び16、及び結合率推定器17をまとめて、送電装置10Eの「制御装置」ともいう。
図48の受電装置20は、図50を参照して後述する受電処理を実行することの他は、図1の受電装置20と同様に構成され、同様に動作する。
[第7の実施形態の動作例]
図49は、図48の送電装置10Eの制御回路11Eによって実行される電力制御処理のサブルーチンを示すフローチャートである。図50は、図48の受電装置20の制御回路21によって実行される受電処理を示すフローチャートである。
図49の送電装置10Eの制御回路11Eは、図39と同様の送電処理を実行する。ただし、送電装置10Eの制御回路11Eは、図39のステップS112において、図40の電力制御処理に代えて、図49の電力制御処理を実行する。
例えば、受電装置20が送電装置10Eから電力を受信可能な位置に配置されたとき、送電処理及び受電処理が開始される。図50のステップS161において、受電装置20の制御回路21は、通信装置25を用いて、電力供給を要求する制御信号を送電装置10Eに送信する。図39のステップS111において、送電装置10Eの制御回路11Eは、通信装置14を用いて、電力供給を要求する制御信号を受電装置20から受信する。
図39のステップS112において、送電装置10Eの制御回路11Eは、電力制御処理を実行する。
図49のステップS151において、送電装置10Eの制御回路11Eは、通信装置14を用いて、受電装置20をテストモードに遷移させる制御信号を受電装置20に送信する。図50のステップS172において、受電装置20の制御回路21は、通信装置25を用いて送電装置10Eから制御信号を受信し、この制御信号に応じて、受電装置20の出力電圧を負荷素子R0に供給するようにスイッチ回路SWを切り換える(すなわち、テストモードに遷移する)。
図49のステップS152において、送電装置10Eの制御回路11Eは、電圧V0及びスイッチング周波数fswをテストモードの規定値に設定し、テストモードの送電を開始する。図50のステップS173において、受電装置20の制御回路21は、電圧検出回路24を用いて負荷素子R0に印加される電圧V5を検出し、通信装置25を用いて電圧V5を送電装置10Eに通知する。
図49のステップS153において、送電装置10Eの制御回路11Eは、スイッチング周波数fswを変化させながらテストモードの送電を継続し、通信装置14を用いて受電装置20から電圧V5の値を取得する。図49のステップS154において、送電装置10Eの制御回路11Eは、予め決められた周波数範囲においてスイッチング周波数fswを変化させるとき、局所的に最大化される電圧V5と、電圧V5を局所的に最大化するスイッチング周波数fstとを決定する。
図49のステップS155において、送電装置10Eは、検出器15を用いて、補助コイルL3に発生する電流I3又は電圧V3の値を検出する。図49のステップS156において、送電装置10Eは、結合率推定器17を用いて、検出された電流I3又は電圧V3の値に基づいて、テーブル又は計算式を参照することにより、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12aを推定する。
図49のステップS157において、送電装置10Eは、検出器16を用いて、送電コイルL1に流れる電流I1の値を検出する。図49のステップS158において、送電装置10E、結合率推定器17を用いて、検出された電流I1の値に基づいて、テーブル又は計算式を参照することにより、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12bを推定する。
図49のステップS159において、送電装置10Eの制御回路11Eは、テストモードの送電を停止する。
図49のステップS160において、送電装置10Eの制御回路11Eは、推定された結合率k12a,k12bが互いに実質的に一致するか否かを判断し、YESのときはステップS161に進み、NOのときはステップS165に進む。
図49のステップS161において、送電装置10Eの制御回路11Eは、非接触電力伝送システムの利得G=V5/V0に基づいて、負荷装置23の所望の電圧V4に対応する、AC/DCコンバータ12から出力される電圧V0を決定する。
図49のステップS162において、送電装置10Eの制御回路11Eは、ステップS161において決定された電圧V0をAC/DCコンバータ12に設定し、ステップS154において決定されたスイッチング周波数fstをインバータ13に設定する。
図49のステップS163において、送電装置10Eの制御回路11Eは、通信装置14を用いて、受電装置20を通常モードに遷移させる制御信号を受電装置20に送信する。図50のステップS174において、受電装置20の制御回路21は、通信装置25を用いて送電装置10Eから制御信号を受信し、この制御信号に応じて、受電装置20の出力電圧を負荷装置23に供給するようにスイッチ回路SWを切り換える(すなわち、通常モードに遷移する)。
図49のステップS164において、送電装置10Eの制御回路11Eは、ステップS162において設定された電圧V0及びスイッチング周波数fstで、通常モードの送電を開始する。
図49のステップS165において、送電装置10Eの制御回路11Eは、異物が存在すると判断する。送電装置10Eの制御回路11Eは、受電装置20への電力の伝送を停止し続けるようにAC/DCコンバータ12及びインバータ13を制御する。
以後、送電装置10Eの制御回路11Eは、第4の実施形態と同様に、図39のステップS113~S115を実行する。また、受電装置20の制御回路21は、図50のステップS175~S179を実行する。図50のステップS175~S179は、図41のステップS144~S148と実質的に同様である。
[第7の実施形態の効果]
第7の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、負荷素子R0に印加される電圧V5に基づいて、安定伝送周波数及び送電電圧を決定する。インバータ13のスイッチング周波数fswを安定伝送周波数に合わせて設定することにより、負荷装置23の負荷値の変動に応じて送電装置10及び/又は受電装置20を制御することが不要になる。
また、第7の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12a,k12bが大きく変化したとき、受電装置20の出力電圧の現在の検出値に基づいて安定伝送周波数及び送電電圧を再決定することにより、結合率k12a,k12bの変化に追従することができる。
このように、第7の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、受電装置20に余分な回路を必要とすることなく、負荷装置23にその所望電圧を安定的に供給するように送電装置10Eを制御することができる。
第7の実施形態では、第4の実施形態に係る送電装置と、第1の実施形態に係る受電装置とを組み合わせる場合について説明したが、第4の実施形態に係る送電装置と、第2又は第3の実施形態に係る受電装置とを組み合わせてもよい。
また、第7の実施形態に係る送電装置は、図39のステップS113に代えて、又は、図39のステップS113に加えて、図8のステップS3~S4を実行してもよい。この場合、受電装置は、図50のステップS174の後で、図10のステップS25をさらに実行する。これにより、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12a,k12bが大きく変化したとき、又は、結合率k12a,k12bの変化に起因して受電装置20の出力電圧が大きく変化したとき、結合率k12a,k12bの変化に確実に追従することができる。
[第8の実施形態]
第5の実施形態に係る送電装置と、第1の実施形態に係る受電装置とを組み合わせてもよい。第8の実施形態に係る非接触電力伝送システムは、受電装置が予め決められた負荷値を有する1つの負荷素子を備え、負荷素子に印加される電圧に基づいて、安定伝送周波数及び送電電圧を決定する。さらに、第8の実施形態に係る非接触電力伝送システムは、送電装置が送電コイルに電磁的に結合した補助コイルを備え、補助コイルに発生する電流又は電圧の値に基づいて、送電コイル及び受電コイルの結合率を推定する。
[第8の実施形態の構成例]
図51は、第8の実施形態に係る非接触電力伝送システムの構成を示すブロック図である。図51の非接触電力伝送システムは、送電装置10F及び受電装置20を含む。
図51の送電装置10Fは、図52を参照して後述する電力制御処理を実行することの他は、図44の送電装置10Fと同様に構成され、同様に動作する。
第8の実施形態では、制御回路11F、通信装置14、検出器15、及び結合率推定器17をまとめて、送電装置10Fの「制御装置」ともいう。
図51の受電装置20は、図50の受電処理を実行することの他は、図1の受電装置20と同様に構成され、同様に動作する。
[第8の実施形態の動作例]
図51の送電装置10Fの制御回路11Fは、図39と同様の送電処理を実行する。ただし、送電装置10Fの制御回路11Fは、図39のステップS112において、図40の電力制御処理に代えて、図52の電力制御処理を実行する。
図52は、図51の送電装置10Fの制御回路11Fによって実行される電力制御処理のサブルーチンを示すフローチャートである。送電コイルL1及び受電コイルL2の間に異物が存在しないと考えられる場合、図49のステップS157、S158、S160、及びS165を省略してもよい。これにより、送電装置10Fの構成及び動作を、図48の送電装置10Eの場合よりも簡単化することができる。
[第8の実施形態の効果]
第8の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12aが大きく変化したとき、受電装置20の出力電圧の現在の検出値に基づいて安定伝送周波数及び送電電圧を再決定することにより、結合率k12aの変化に追従することができる。
第8の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、電流検出抵抗R1及び検出器16を除去したことにより、送電装置10Fの構成及び動作を、図48の送電装置10Eの場合よりも簡単化することができる。
第8の実施形態では、第5の実施形態に係る送電装置と、第1の実施形態に係る受電装置とを組み合わせる場合について説明したが、第5の実施形態に係る送電装置と、第2又は第3の実施形態に係る受電装置とを組み合わせてもよい。
[第9の実施形態]
第6の実施形態に係る送電装置と、第1の実施形態に係る受電装置とを組み合わせてもよい。第9の実施形態に係る非接触電力伝送システムは、受電装置が予め決められた負荷値を有する1つの負荷素子を備え、負荷素子に印加される電圧に基づいて、安定伝送周波数及び送電電圧を決定する。さらに、第9の実施形態に係る非接触電力伝送システムは、送電コイルに流れる電流に基づいて、送電コイル及び受電コイルの結合率を推定する。
[第9の実施形態の構成例]
図53は、第9の実施形態に係る非接触電力伝送システムの構成を示すブロック図である。図53の非接触電力伝送システムは、送電装置10G及び受電装置20を含む。
図53の送電装置10Gは、図54を参照して後述する電力制御処理を実行することの他は、図46の送電装置10Gと同様に構成され、同様に動作する。
第9の実施形態では、制御回路11G、通信装置14、検出器16、及び結合率推定器17をまとめて、送電装置10Gの「制御装置」ともいう。
図53の受電装置20は、図50の受電処理を実行することの他は、図1の受電装置20と同様に構成され、同様に動作する。
[第9の実施形態の動作例]
図53の送電装置10Gの制御回路11Gは、図39と同様の送電処理を実行する。ただし、送電装置10Gの制御回路11Gは、図39のステップS112において、図40の電力制御処理に代えて、図54の電力制御処理を実行する。
図54は、図53の送電装置10Gの制御回路11Gによって実行される電力制御処理のサブルーチンを示すフローチャートである。送電コイルL1及び受電コイルL2の間に異物が存在しないと考えられる場合、図49のステップS155、S156、S160、及びS165を省略してもよい。これにより、送電装置10Fの構成及び動作を、図48の送電装置10Eの場合よりも簡単化することができる。
[第9の実施形態の効果]
第8の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率k12bが大きく変化したとき、受電装置20の出力電圧の現在の検出値に基づいて安定伝送周波数及び送電電圧を再決定することにより、結合率k12bの変化に追従することができる。
第9の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、補助コイルL3及び検出器15を除去したことにより、送電装置10Fの構成及び動作を、図48の送電装置10Eの場合よりも簡単化することができる。
[第10の実施形態]
第1~第9の実施形態では、受電装置の出力電圧が印加される負荷素子を用いて負荷装置を過電圧から保護したが、他の手段を用いて負荷装置を過電圧から保護してもよい。第10の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、受電装置は、送電コイルに電磁的に結合した補助コイルと、補助コイルに接続された負荷素子とを備え、これらの構成要素を用いて負荷装置を過電圧から保護する。
[第10の実施形態の構成例]
図55は、第10の実施形態に係る非接触電力伝送システムの構成を示すブロック図である。図55の非接触電力伝送システムは、送電装置10及び受電装置20Hを含む。
図55の送電装置10は、図29の電力制御処理を実行することの他は、図1の送電装置10と同様に構成され、同様に動作する。
図55の受電装置20Hは、図28の制御回路21C及び電圧検出回路24Cに代えて、制御回路21H及び電圧検出回路24Hを備え、補助コイルL4、スイッチ回路SWH、及び負荷素子R3をさらに備える。
制御回路21Hは、受電装置20Hの全体の動作を制御する。制御回路21Hは、HPU、RAM、ROM等を含み、図57を参照して後述する受電処理を実行する。
電圧検出回路24Hは、負荷装置23に印加される電圧V4のみを受電装置20Hの出力電圧として検出する。
補助コイルL4は送電コイルL1に電磁的に結合する。補助コイルL3は、磁性体コアF2に巻回されてもよい。
スイッチ回路SWHは、制御回路21Hの制御下でオン/オフされる。初期状態において、スイッチ回路SWHはオフされている。
負荷素子R3は、スイッチ回路SWHを介して第2の補助コイルL4に接続される。
本明細書では、補助コイルL4を「第2の補助コイル」ともいい、スイッチ回路SWHを「第2のスイッチ回路」ともいい、負荷素子R3を「第3の負荷素子」ともいう。
他の点では、受電装置20Hは、図28の受電装置20Cと同様に構成され、同様に動作する。
図56は、図33の送電コイルL1、受電コイルL2、及び補助コイルL4の配置を示す斜視図である。前述したように、補助コイルL4は磁性体コアF2に巻回されてもよい。送電コイルL1から発生する磁束の一部が補助コイルL4に鎖交することにより、補助コイルL4に電流及び電圧が発生する。また、図56に示すように、補助コイルL4は、受電コイルL2を包囲するように配置されてもよい。補助コイルL4をこのように配置することにより、受電コイルL2の漏洩磁束を低減することができる。
[第10の実施形態の動作例]
図55の送電装置10の制御回路11は、図8と同様の送電処理を実行する。ただし、送電装置10の制御回路11は、図8のステップS2において、図9の電力制御処理に代えて、図29の電力制御処理を実行する。
図57は、図55の受電装置20Hの制御回路21Hによって実行される受電処理を示すフローチャートである。
図57のステップS181~S182は、図30のステップS101~S102と同様である。
図57のステップS183において、受電装置20Hの制御回路21Hは、負荷装置23に印加される電圧V4が所定のしきい値を超えたか否かを判断し、YESのときはステップS184に進み、NOのときはステップS185に進む。図57のステップS184において、受電装置20Hの制御回路21Hは、スイッチ回路SWHをオンする。
スイッチ回路SWHをオンすることにより、送電装置10から受電装置20Hに伝送される電力の一部は、負荷素子R3によって消費される。従って、受電装置20Hにおいて過電圧を検出したとき、スイッチ回路SWHをオンすることにより、負荷装置23に印加される電圧を低減し、負荷装置23を過電圧から保護することができる。
図57のステップS185~S186は、図30のステップS104~S105と同様である。
[第10の実施形態の効果]
第10の実施形態に係る非接触電力伝送システムによれば、補助コイルL4、スイッチ回路SWH、及び負荷素子R3を用いることにより、負荷装置23を過電圧から保護することができる。
第10の実施形態に係る過電圧の保護と、第1の実施形態などで説明した負荷素子R0及びスイッチ回路SWを用いた過電圧の保護とを組み合わせてもよい。これにより、負荷装置23を過電圧から確実に保護することができる。
[他の変形例]
以上、本開示の実施形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本開示の例示に過ぎない。本開示の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。
上述した各実施形態及び各変形例は、任意に組み合わされてもよい。
送電装置は、交流電源に代えて直流電源を用いてもよい。この場合、送電装置は、AC/DCコンバータに代えて、DC/DCコンバータを備えてもよい。
送電装置は、通信装置以外の何らかのセンサ又はスイッチにより受電装置を検出してもよい。
図1では、送電コイルL1及びキャパシタC1が互いに直列に接続され、受電コイルL2及びキャパシタC2が互いに直列に接続される場合を示したが、これらの少なくとも一方が互いに並列に接続されてもよい。
送電コイル、受電コイル、及び補助コイルは、図2に示すリング形状以外の他の形状を有してもよい。
送電コイルL1に流れる電流I1を検出するために、電流検出抵抗R1に代えて、例えば、シャント抵抗、電流トランス、などを用いてもよい。
負荷装置は、図1に示すように受電装置の内部に一体化されてもよく、受電装置の外部に接続されてもよい。
負荷装置23は、可変な負荷値に代えて、予め決められた負荷値を有してもよい。
[まとめ]
本開示の各側面に係る送電装置の制御装置、送電装置、及び非接触電力伝送システムは、以下のように表現されてもよい。
本開示の第1の側面に係る送電装置10の制御装置は、受電コイルL2を備えた受電装置20に電力を非接触で伝送する。送電装置10は、送電コイルL1と、可変電圧及び可変周波数を有する送電電力を発生して送電コイルL1に供給する電源回路とを備える。制御装置は、受電装置20に通信可能に接続され、受電装置20から、受電装置20の出力電圧の検出値を受信する第1の通信装置14と、受電装置20の出力電圧の検出値に基づいて電源回路を制御する第1の制御回路11とを備える。第1の制御回路11は、予め決められた周波数範囲において変化する周波数を有する送電電力を発生するように電源回路を制御する。第1の制御回路11は、電源回路を用いて送電電力を発生しているときに受電装置20において検出された受電装置20の出力電圧の検出値を、第1の通信装置14を用いて受電装置20から受信する。第1の制御回路11は、受電装置20の出力電圧の検出値に基づいて、予め決められた周波数範囲において受電装置20の負荷値に対する受電装置20の出力電圧の依存性が少なくとも局所的に最小化されるときの送電電力の周波数を示す安定伝送周波数を決定する。第1の制御回路11は、受電装置20の出力電圧の検出値に基づいて、安定伝送周波数を有する送電電力を発生するときに受電装置20の出力電圧を予め決められた目標電圧にする送電電力の電圧を示す送電電圧を決定する。第1の制御回路11は、安定伝送周波数及び送電電圧を有する送電電力を発生するように電源回路を制御する。
本開示の第2の側面に係る送電装置10の制御装置によれば、第1の側面に係る送電装置10の制御装置において、受電装置20は、可変負荷値を有する負荷装置23と、予め決められた負荷値を有する少なくとも1つの負荷素子R0と、受電装置20の出力電圧を負荷装置23及び負荷素子R0のいずれか1つに選択的に供給する第1のスイッチ回路SWとを備える。第1の制御回路11は、通常の送電を行うとき、受電装置20の出力電圧を負荷装置23に供給するように第1のスイッチ回路SWを切り換える制御信号を、第1の通信装置14を用いて受電装置20に送信する。第1の制御回路11は、送電電力の周波数を決定するとき、受電装置20の出力電圧を負荷素子R0に供給するように第1のスイッチ回路SWを切り換える制御信号を、第1の通信装置14を用いて受電装置20に送信する。
本開示の第3の側面に係る送電装置10の制御装置によれば、第2の側面に係る送電装置10の制御装置において、受電装置20Bは、第1の負荷値を有する第1の負荷素子R0aと、第1の負荷値よりも大きい第2の負荷値を有する第2の負荷素子R0bとを備える。第1の制御回路11は、受電装置20Bの出力電圧が第1の負荷素子R0aに供給されているとき、受電装置20Bの出力電圧の検出値に基づいて、受電装置20Bの出力電圧の周波数特性を示す第1の電圧を取得する。第1の制御回路11は、受電装置20Bの出力電圧が第2の負荷素子R0bに供給されているとき、受電装置20Bの出力電圧の検出値に基づいて、受電装置20Bの出力電圧の周波数特性を示す第2の電圧を取得する。第1の制御回路11は、第1及び第2の電圧の差が最小化されるときの送電電力の周波数を、安定伝送周波数として決定する。
本開示の第4の側面に係る送電装置10の制御装置によれば、第1の側面に係る送電装置10の制御装置において、受電装置20Cは、可変負荷値を有する負荷装置23を備える。第1の制御回路11は、受電装置20Cの出力電圧が負荷装置23に供給され、予め決められた周波数範囲において受電装置20Cの負荷値に対する受電装置20Cの出力電圧の依存性が少なくとも局所的に最小化されるときの送電電力の周波数を決定する。
本開示の第5の側面に係る送電装置10の制御装置によれば、第1の側面に係る送電装置10の制御装置において、第1の制御回路11は、電源回路を用いて送電電力を発生しているときに受電コイルL2に発生する電圧を、受電装置20Dの出力電圧の検出値として、第1の通信装置14を用いて受電装置20Dから受信する。
本開示の第6の側面に係る送電装置10の制御装置によれば、第1、第2、第4、又は第5の側面に係る送電装置10の制御装置において、第1の制御回路11は、予め決められた周波数範囲において受電装置20の出力電圧の検出値が少なくとも局所的に最大化されるときの送電電力の周波数を、安定伝送周波数として決定する。
本開示の第7の側面に係る送電装置10の制御装置によれば、第1~第6のうちの1つの側面に係る送電装置10の制御装置において、第1の制御回路11は、受電装置20の出力電圧の検出値が、安定伝送周波数及び送電電圧を決定したときの値から第1のしきい値よりも変化したとき、受電装置20の出力電圧の検出値に基づいて安定伝送周波数及び送電電圧を再決定する。
本開示の第8の側面に係る送電装置10Eの制御装置によれば、第1~第7のうちの1つの側面に係る送電装置10Eの制御装置において、制御装置は、送電コイルL1及び受電コイルL2の結合率を推定する結合率推定器17をさらに備える。第1の制御回路11Eは、結合率が、安定伝送周波数及び送電電圧を決定したときの値から第2のしきい値よりも変化したとき、受電装置20の出力電圧の検出値に基づいて安定伝送周波数及び送電電圧を再決定する。
本開示の第9の側面に係る送電装置10Eの制御装置によれば、第8の側面に係る送電装置10Eの制御装置において、制御装置は、送電コイルL1に電磁的に結合した第1の補助コイルL3と、第1の補助コイルL3に発生する電流又は電圧の値を検出する第1の検出器15と、送電コイルL1に流れる電流を検出する第2の検出器16とをさらに備える。結合率推定器17は、第1の検出器15及び第2の検出器16によって検出された値に基づいて結合率を推定する。
本開示の第10の側面に係る送電装置10Eの制御装置によれば、第9の側面に係る送電装置10Eの制御装置において、結合率推定器17は、第1の補助コイルL3に発生する電流又は電圧の値に基づいて送電コイルL1及び受電コイルL2の間の第1の結合率を推定し、送電コイルL1に流れる電流の値に基づいて送電コイルL1及び受電コイルL2の間の第2の結合率を推定する。第1の制御回路11Eは、第1及び第2の結合率の差が第3のしきい値以下であるとき、安定伝送周波数及び送電電圧を有する送電電力を発生するように電源回路を制御する。第1の制御回路11Eは、第1及び第2の結合率の差が第3のしきい値を超えるとき、受電装置20への電力の伝送を停止するように電源回路を制御する。
本開示の第11の側面に係る送電装置10Fの制御装置によれば、第8の側面に係る送電装置10Fの制御装置において、制御装置は、送電コイルL1に電磁的に結合した第1の補助コイルL3と、第1の補助コイルL3に発生する電流又は電圧の値を検出する検出器15とを備える。結合率推定器17は、第1の補助コイルL3に発生する電流又は電圧の値に基づいて結合率を推定する。
本開示の第12の側面に係る送電装置10Gの制御装置によれば、第8の側面に係る送電装置10Gの制御装置において、制御装置は、送電コイルL1に流れる電流の値を検出する検出器16をさらに備える。結合率推定器17は、送電コイルL1に流れる電流の値に基づいて結合率を推定する。
本開示の第13の側面に係る送電装置10によれば、送電装置10は、送電コイルL1と、可変電圧及び可変周波数を有する送電電力を発生して送電コイルL1に供給する電源回路と、第1~第12のうちの1つの側面に係る送電装置10の制御装置とを備える。
本開示の第14の側面に係る送電装置10によれば、第13の側面に係る送電装置10において、電源回路は、フルブリッジ型又はハーフブリッジ型のインバータ13を含む。
本開示の第15の側面に係る非接触電力伝送システムによれば、非接触電力伝送システムは、第13又は第14の側面に係る送電装置10と、受電装置20とを含む。受電装置20は、受電コイルL2と、受電装置20の出力電圧を検出する電圧検出回路24と、送電装置10に通信可能に接続され、受電装置20の出力電圧の検出値を送電装置10に送信する第2の通信装置25とを備える。
本開示の第16の側面に係る非接触電力伝送システムによれば、第15の側面に係る非接触電力伝送システムにおいて、送電装置10及び受電装置20の少なくとも一方は、送電コイルL1又は受電コイルL2と共振するように接続されたキャパシタC1,C2をさらに備える。キャパシタC1,C2の容量は、予め決められた周波数範囲において、受電装置20の負荷値に対する受電装置20の出力電圧の依存性が少なくとも局所的に最小化される周波数を含むように設定される。
本開示の第17の側面に係る非接触電力伝送システムによれば、第16の側面に係る非接触電力伝送システムにおいて、送電装置10は、送電コイルL1と共振するように接続され、第1の容量を有する第1のキャパシタCを備える。受電装置20は、受電コイルL2と共振するように接続され、第1の容量とは異なる第2の容量を有する第2のキャパシタC2を備える。
本開示の第18の側面に係る非接触電力伝送システムによれば、第15~第17のうちの1つの側面に係る非接触電力伝送システムにおいて、受電装置20は、受電コイルL2に発生する電圧を整流する整流回路22をさらに備える。整流回路22は、ダイオードの全波整流回路、ダイオードの倍電圧整流回路、スイッチング素子の全波整流回路、又はスイッチング素子の倍電圧整流回路である、
本開示の第19の側面に係る非接触電力伝送システムによれば、第15~第18のうちの1つの側面に係る非接触電力伝送システムにおいて、受電装置20は、可変負荷値を有する負荷装置23と、予め決められた負荷値を有する少なくとも1つの負荷素子R0と、受電装置20の出力電圧を負荷装置23及び負荷素子R0のいずれか1つに選択的に供給する第1のスイッチ回路SWと、電圧検出回路24によって検出された受電装置20の出力電圧が第4のしきい値を超えたとき、受電装置20の出力電圧を負荷素子R0に供給するように第1のスイッチ回路SWを切り換える第2の制御回路21とをさらに備える。
本開示の第20の側面に係る非接触電力伝送システムによれば、第15~第18のうちの1つの側面に係る非接触電力伝送システムにおいて、受電装置20は、送電コイルL1に電磁的に結合した第2の補助コイルL4と、第2のスイッチ回路SWHと、第2のスイッチ回路SWHを介して第2の補助コイルL4に接続された第3の負荷素子R3と、電圧検出回路24によって検出された受電装置20の出力電圧が第4のしきい値を超えたとき、第2のスイッチ回路SWHをオンする第2の制御回路21とをさらに備える。