JP7192612B2 - 触媒担体用炭素材料、燃料電池用触媒層、及び燃料電池 - Google Patents

触媒担体用炭素材料、燃料電池用触媒層、及び燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、触媒担体用炭素材料、燃料電池用触媒層、及び燃料電池に関する。
例えば特許文献1~3に開示されるように、燃料電池の一種として、固体高分子形燃料電池が知られている。固体高分子形燃料電池は、固体高分子電解質膜の両面に配置される一対の触媒層と、各触媒層の外側に配置されるガス拡散層と、各ガス拡散層の外側に配置されるセパレータとを備える。一対の触媒層のうち、一方の触媒層は固体高分子形燃料電池のアノードとなり、他方の触媒層は固体高分子形燃料電池のカソードとなる。なお、通常の固体高分子形燃料電池では、所望の出力を得るために、上記構成要素を有する単位セルが複数個スタックされている。
アノード側のセパレータには、水素等の還元性ガスを導入される。アノード側のガス拡散層は、還元性ガスを拡散させた後、アノードに導入する。アノードは、触媒成分と、触媒成分を担持する触媒担体と、プロトン伝導性を有する電解質材料とを含む。触媒成分上では、還元性ガスの酸化反応が起こり、プロトンと電子が生成される。例えば、還元性ガスが水素ガスとなる場合、以下の酸化反応が起こる。
→2H+2e (E=0V)
この酸化反応で生じたプロトンは、アノード内の電解質材料、及び固体高分子電解質膜を通ってカソードに導入される。また、電子は、触媒担体、ガス拡散層、及びセパレータを通って外部回路に導入される。触媒担体は、例えば炭素材料で構成される。この電子は、外部回路で仕事をした後、カソード側のセパレータに導入される。そして、この電子は、カソード側のセパレータ、カソード側のガス拡散層を通ってカソードに導入される。
固体高分子形電解質膜は、プロトン伝導性を有する電解質材料で構成されている。固体高分子電解質膜は、上記酸化反応で生成したプロトンをカソードに導入する。
カソード側のセパレータには、酸素ガスあるいは空気等の酸化性ガスが導入される。カソード側のガス拡散層は、酸化性ガスを拡散させた後、カソードに導入する。カソードは、触媒成分と、触媒成分を担持する触媒担体と、プロトン伝導性を有する電解質材料とを含む。触媒担体は、例えば炭素材料で構成される。触媒成分上では、酸化性ガスの還元反応が起こり、水が生成される。例えば、酸化性ガスが酸素ガスあるいは空気となる場合、以下の還元反応が起こる。
+4H+4e→2HO (E=1.23V)
還元反応で生じた水は、未反応の酸化性ガスとともに燃料電池の外部に排出される。このように、固体高分子形燃料電池では、酸化反応と還元反応とのエネルギー差(電位差)を利用して発電する。言い換えれば、酸化反応で生じた電子が外部回路で仕事を行う。
国際公開第2016/152447号 国際公開第2014/175106号 国際公開第2014/129597号 特許第4955952号
ところで、固体高分子形燃料電池には、高負荷特性(大電流発電時の特性)のさらなる改善が強く求められており、このような要求に応えるべく、触媒担体用炭素材料について種々の検討がなされている。しかしながら、このような要求に十分応えることができる触媒担体用炭素材料は未だ提案されていないのが現状である。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、固体高分子形燃料電池の高負荷特性をさらに改善することが可能な、新規かつ改良された触媒担体用炭素材料、燃料電池用触媒層、及び燃料電池を提供することにある。
固体高分子形燃料電池の高負荷特性を改善するためには、特にカソードのガス拡散性を高めることが非常に重要である。大電流発電時にはカソード側で大量の水蒸気が発生する。カソードのガス拡散性が低いと、生成した水蒸気がカソード内に滞留しやすくなる。この結果、フラッディングが発生しやすくなる。ここで、フラッディングとは、カソード内に滞留した水蒸気が凝縮し、液体の水となり、この液体の水がカソード内の細孔を閉塞する現象である。フラッディングが発生すると、固体高分子形燃料電池の電圧が著しく低下する。すなわち、高負荷特性が低下する。したがって、固体高分子形燃料電池の高負荷特性を高めるためには、カソードのガス拡散性、より具体的にはカソードの触媒担体に使用される触媒担体用炭素材料のガス拡散性を高め、カソード内で発生した水蒸気を速やかにカソード外に排出する必要がある。
本発明者は、触媒担体用炭素材料のガス拡散性を高めるために、触媒担体用炭素材料を構成する担体粒子の構成に着目した。近年の担体粒子は、複数の単位粒子が樹状に連結された3次元樹状構造(以下、単に「樹状構造」とも称する)を有していることが多い。単位粒子は略球体の多孔質体となっている。触媒成分は、例えば担体粒子の表面及び単位粒子内の細孔に担持される。担体粒子が樹状構造を持つ触媒担体用炭素材料としては、CABOT社製バルカンXC-72、ライオン社製EC600JD、及びライオン社製EC300J等が知られている。樹状構造を構成する枝間には空隙が形成される。そして、担体粒子の集合体である触媒担体用炭素材料内では、このような空隙同士が連結することで空隙ネットワークが形成される。
したがって、担体粒子が樹状構造を持つ触媒担体用炭素材料をカソードに使用することで、カソードのガス拡散性を高めることができる。カソードに導入されたガスは、空隙ネットワークを通じてカソードの各所に速やかに流通するからである。したがって、フラッディングの抑制、ひいては高負荷特性の改善が期待できる。
しかし、上記で列挙したバルカンXC-72、EC600JD、及びEC300Jでは、高負荷特性を十分に改善することができなかった。一方、特許文献3には、担体粒子が樹状構造を有する触媒担体用炭素材料が開示されている。特許文献3に開示される触媒担体用炭素材料は、MCND(メソポーラスカーボンナノデンドライト)とも称される。MCNDを構成する担体粒子は、上記で列挙したEC300J等よりもさらに発達した樹状構造を有する。ここで、樹状構造の発達の度合いは、樹状構造を構成する枝の分岐、及び長さ等で評価される。具体的には、枝の分岐の数が多いほど、また枝が長いほど樹状構造が発達していると言える。
担体粒子の樹状構造が発達している場合、樹状構造の空隙によって形成される空隙ネットワークも発達する。すなわち、空隙ネットワークが触媒担体用炭素材料内のより多くの領域に分布するようになる。
さらに、MCNDでは、樹状構造を構成する枝がEC300J等よりも太い。ここで、枝の太さは単位粒子の直径と同義である。樹状構造を構成する枝が太い場合、空隙も太くなる傾向がある。空隙の太さは、空隙の長さ方向に垂直な壁間距離として定義される。空隙の太さは、より詳細には、空隙の長さ方向の中心軸を通り、かつ壁間を連結する線分の長さとなる。一例を挙げると、MCNDでは、枝の太さが概ね60~80nm程度であり、空隙の太さが概ね30~60nm程度である。一方、EC300J等では、枝の太さが概ね30~40nm程度であり、空隙の太さが概ね20~30nm程度である。つまり、MCNDでは、細い(太さ20nm程度の)空隙がほとんど存在しなくなり、そのかわりに太い(太さ30nm以上の)空隙が増える。したがって、MCND内では、より発達した空隙ネットワークが形成され、かつ、空隙ネットワークを構成する空隙が太い。このため、MCNDのガス拡散性はEC300J等よりも優れている。したがって、MCNDをカソードに使用することで、固体高分子形燃料電池の高負荷特性を改善することができる。
しかし、近年では、固体高分子形燃料電池の高負荷特性のさらなる改善が求められている。そこで、本発明者は、樹状構造の枝をさらに太くする技術について鋭意検討した。樹状構造の枝を太くすることができれば、空隙ネットワークを構成する空隙を太くすることができ、ひいては触媒担体用炭素材料のガス拡散性をさらに高めることができることができるからである。
まず、本発明者は、単位粒子の直径が非常に大きい(具体的には100nm以上である)大粒径カーボンブラックを賦活することを試みた。しかし、大粒径カーボンブラックでは、担体粒子の樹状構造はほとんど発達していない。さらに賦活後のカーボンブラックでは、もともと乏しい樹状構造がさらに減退しており、枝も細くなっていた。したがって、目的の触媒担体用炭素材料を作製することができなかった。
つぎに、本発明者は、MgO鋳型を用いて触媒担体用炭素材料を作製する技術について検討した。MgO鋳型を用いて触媒担体用炭素材料を作製する技術は例えば特許文献4に開示されている。
本発明者が特許文献4に開示されている触媒担体用炭素材料を再現し、この触媒担体用炭素材料を固体高分子形燃料電池のカソードに使用したところ、高負荷特性は低いままであった。本発明者が担体粒子の形状を詳細に検討したところ、担体粒子は樹状構造を有していなかった。しかし、担体粒子の形状は、MgO鋳型粒子(MgO鋳型を構成する粒子)の形状に極めて類似していた。
このため、本発明者は、枝の太い樹状構造を有するMgO鋳型粒子を作製することができれば、そのMgO鋳型を用いて作製される担体粒子も枝の太い樹状構造を有することになると考えた。
そこで、本発明者は、枝の太い樹状構造を有するMgO鋳型粒子を作製する方法について鋭意検討したところ、塩基性炭酸マグネシウム5水和物(Mg(CO(OH)・5HO)を特定の焼成条件で焼成することでこのようなMgO鋳型粒子を作製することに成功した。そして、本発明者は、このMgO鋳型粒子を用いて触媒担体用炭素材料を作製したところ、枝の太い樹状構造を有する触媒担体用炭素材料を作製することができた。さらに本発明者は、他のいくつかの方法によっても同様の構造を有する触媒担体用炭素材料を作製することができた。本発明は、このような知見によってなされたものである。
本発明のある観点によれば、固体高分子形燃料電池の触媒担体に用いられる触媒担体用炭素材料であって、以下の構成要件(A)、(B)を満たし、かつ、窒素吸着等温線をBJH法で解析することで算出される直径10~20nmの細孔容積が0.5~1.5cc/gであることを特徴とする、触媒担体用炭素材料が提供される。
(A)窒素吸着等温線から算出されるBET比表面積が100~2000m/gである。
(B)水銀ポロシメトリ法により得られる水銀吸収量と水銀圧力PHGとの関係において、kPa単位の水銀圧力の常用対数Log(PHG)を3.8から4.3に増加させた時の水銀吸収量の増加分が0.6~1.6cc/gである。
ここで、kPa単位の水銀圧力の常用対数Log(PHG)を3.8から4.3に増加させた時の水銀吸収量の増加分が0.8~1.4cc/gであってもよい。
本発明の他の観点によれば、上記の触媒担体用炭素材料を含むことを特徴とする、燃料電池用触媒層が提供される。
本発明の他の観点によれば、上記の燃料電池用触媒層を含むことを特徴とする、燃料電池が提供される。
ここで、燃料電池用触媒層は、カソード側の触媒層であってもよい。
以上説明したように本発明によれば、固体高分子形燃料電池の高負荷特性をさらに改善することが可能となる。
本発明の実施形態に係る触媒担体用炭素材料(担体粒子)の概略構成を示す模式図である。 触媒担体用炭素材料の製造工程を概略的に示す模式図である。 MgO鋳型粒子のSEM写真である。 MgO鋳型粒子の拡大SEM写真である。 本実施形態に係る燃料電池の概略構成を示す模式図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.触媒担体用炭素材料の概要>
まず、本実施形態に係る触媒担体用炭素材料の概要について説明する。以下の説明において、「触媒担体用炭素材料」は、特に説明がない限り、触媒担体用炭素材料を構成する担体粒子の集合体を意味する。
(1-1.担体粒子の概要)
まず、図1に基づいて、本実施形態に係る触媒担体用炭素材料を構成する担体粒子10の構成について説明する。図1は担体粒子10の概略構成の一例を示す模式図である。担体粒子10は、燃料電池用触媒(例えば白金等)を担持する粒子であり、複数の単位粒子11が樹状に連結された樹状構造を有している。単位粒子11は略球体となっており、その内部には多数の細孔12が形成されている。燃料電池用触媒は、担体粒子10の表面の他、細孔12内にも担持される。多くの細孔12はいわゆるメソ孔に区分される。メソ孔が多いほど、燃料電池用触媒を高分散かつ高密度で担持することができる。細孔12の直径(球相当直径)の分布は、触媒担体用炭素材料の窒素吸着等温線をBJH法により解析することで確認できる。詳細は後述する。
担体粒子10の樹状構造は非常に発達しており、かつ、枝が太くなっている。ここで、枝は複数の担体粒子10が連結することで形成される部分であり、枝の太さは単位粒子11の直径d1と同義である。多少のばらつきが生じる場合はあるが、枝の太さは概ね100~600nm程度である。枝の太さは例えばSEM(走査型電子顕微鏡)観察により測定することができる。
枝間には空隙13が形成される。担体粒子10の集合体である触媒担体用炭素材料内では、空隙13同士が連結することで空隙ネットワークが形成される。担体粒子10の樹状構造は非常に発達しているので、空隙ネットワークも非常に発達している。さらに、担体粒子10の枝の太さは100~600nmと非常に太いので、それに応じて空隙13も太く、空隙13の太さd2は概ね60~300nm程度となる。詳細は後述するが、空隙13の太さd2は、空隙13の長さ方向に垂直な壁間距離である。空隙13の壁面は単位粒子11の表面で形成される。空隙13の太さd2は、より詳細には、空隙13の長さ方向の中心軸を通り、かつ壁間を連結する線分の長さとなる。空隙13の太さd2は、水銀ポロシメトリ法(水銀圧入法)において、定量的に評価できる。MCNDと比較すると、空隙13の太さの下限値はMCNDの上限値と同程度である。つまり、MCNDと比べてさらに太い空隙13が触媒担体用炭素材料内に存在することになる。
このように、本実施態様では、触媒担体用炭素材料内の空隙ネットワークが非常に発達しており、かつ空隙ネットワークを構成する空隙13の太さd2が大きいので、触媒担体用炭素材料は極めて高いガス拡散性を有する。したがって、触媒担体用炭素材料を固体高分子形燃料電池のカソードに使用することで、カソードのガス拡散性を高め、ひいては、固体高分子形燃料電池の高負荷特性を改善することができる。すなわち、カソード内で発生した水蒸気を速やかにカソード外に排出することができ、フラッディングを抑制することができる。これにより、高負荷特性を改善することができる。ここで、空隙ネットワークを構成する空隙13の太さd2は水銀ポロシメトリ法により評価することができる。詳細は後述する。
<2.触媒担体用炭素材料の特性>
つぎに、触媒担体用炭素材料が有する特性について説明する。上述した担体粒子10の集合体である触媒担体用炭素材料は、少なくとも以下の構成要件(A)、(B)を満たす。
(A)窒素吸着等温線から算出されるBET比表面積が100~2000m/gである。
(B)水銀ポロシメトリ法により得られる水銀吸収量と水銀圧力PHGとの関係において、kPa単位の水銀圧力の常用対数Log(PHG)を3.8から4.3に増加させた時の水銀吸収量の増加分が0.6cc/g~1.6cc/gである。
(2-1.構成要件(A))
窒素吸着等温線から算出されるBET比表面積が100~2000m/gである。固体高分子形燃料電池の高負荷特性を高める前提として、触媒担体用炭素材料が高密度で燃料電池用触媒を担持する必要がある。本実施形態では、触媒担体用炭素材料のBET比表面積が100~2000m/gとなっているので、燃料電池用触媒を高密度で担持することができ、ひいては、低負荷特性及び高負荷特性が向上する。窒素吸着等温線は、窒素ガス吸着測定により得られる。BET比表面積の好ましい下限値は300m/g以上であり、好ましい上限値は1500m/g以下である。この場合、燃料電池用触媒をより高分散かつ高密度で担持することができ、触媒利用率を高めることができる。したがって、低負荷特性がさらに向上する。
BET比表面積が100m/g未満となる場合、触媒担体用炭素材料が燃料電池用触媒を高密度で担持できない可能性がある。この場合、固体高分子形燃料電池の低負荷特性及び高負荷特性が低下する可能性がある。BET比表面積が2000m/gを超える場合、触媒担体用炭素材料の炭素骨格が薄肉化してしまい、機械的強度が低下する可能性がある。このため、固体高分子形燃料電池の作製時に触媒担体用炭素材料が破壊され、触媒担体用炭素材料中の細孔(図1中の細孔12)が潰れる可能性がある。具体的には、例えば、塗布インクの作製時に触媒担体用炭素材料が破壊される可能性がある。ここで、塗布インク中には触媒担持担体(燃料電池用触媒を担持した触媒担体用炭素材料)及び電解質材料等が分散しており、塗布インクを固体高分子電解質膜に塗布、乾燥することでカソード等の触媒層が作製される。塗布インクの作製時には、触媒担持担体及び電解質材料等の分散性を高めるために、高いせん断力で分散液を撹拌することがある。この際、触媒担体用炭素材料が破壊される可能性がある。さらに、触媒層と固体高分子電解質膜との結着力を高めるために、触媒層を固体高分子電解質膜に熱圧着する。この際、触媒担体用炭素材料が破壊される可能性がある。
(2-2.構成要件(B))
水銀ポロシメトリ法により得られる水銀吸収量と水銀圧力PHGとの関係において、kPa単位の水銀圧力の常用対数Log(PHG)を3.8から4.3に増加させた時の水銀吸収量の増加分が0.6~1.6cc/gである。
水銀ポロシメトリ法では、触媒担体用炭素材料、つまり担体粒子10の凝集体の外部から圧力をかけて水銀を担体粒子間(より具体的には単位粒子間)に吸収させる。つまり、空隙13に水銀を充填する。そして、圧力と吸収量との関係から、空隙ネットワークを構成する空隙13の太さと、空隙ネットワークの発達の程度(各太さにおける空隙13の容積)を定量評価できる。概略的には、各圧力における水銀の吸収量が多いほど空隙ネットワークが発達しており、水銀を吸収する際の圧力が低いほど空隙13が太いといえる。
Log(PHG)=3.8~4.3を空隙13の太さに換算すると概ね60~300nm程度となる。本実施形態では、常用対数Log(PHG)を3.8から4.3に増加させた時の水銀吸収量の増加分が0.6~1.6cc/gと非常に大きな値となる。したがって、空隙ネットワークは非常に発達しており、かつ空隙13が太い(多くの空隙13が60~300nmという太い径を有する)。このため、触媒担体用炭素材料は非常に高いガス拡散性を有する。水銀吸収量の増加分の下限値は0.8cc/g以上であることが好ましく、上限値は1.4cc/g以下であることが好ましい。この場合、ガス拡散性がより向上する。
水銀吸収量の増加分が0.6cc/g未満となる場合、空隙ネットワークが十分に発達していないことになる。したがって、触媒担体用炭素材料のガス拡散性が低く、高負荷特性が低下する。水銀吸収量の増加分が1.6cc/gを超える場合、機械的触媒担体用炭素材料の炭素骨格が薄肉化してしまい、機械的強度が低下する可能性がある。この場合、上記で述べた問題(例えば、塗布インク作製時または触媒層の熱圧着時における触媒担体用炭素材料の破壊)が発生する可能性がある。
このように、本実施形態に係る触媒担体用炭素材料は、燃料電池用触媒を高い密度で担持することができ、かつ、高いガス拡散性を有する。したがって、触媒担体用炭素材料を固体高分子形燃料電池の触媒層、特にカソードに使用することで、固体高分子形燃料電池の高負荷特性を改善することができる。
触媒担体用炭素材料は、さらに以下の構成要件(C)を満たすことが好ましい。
(C)窒素吸着等温線をBJH法で解析することで算出される直径10~20nmの細孔容積V10-20が0.5~1.5cc/gである。
(2-3.構成要件(C))
窒素吸着等温線をBJH(Barrett,Joyner,Hallender)法で解析することで算出される直径10~20nmの細孔容積V10-20が0.5~1.5cc/gであることが好ましい。固体高分子形燃料電池には、高負荷特性のみならず低負荷特性が高いことも求められる。構成要件(C)は低負荷特性を高めるための要件である。
固体高分子形燃料電池の低負荷特性を高めるためには、触媒担体用炭素材料が燃料電池用触媒を高分散かつ高密度で担持する必要がある。触媒利用率(触媒層中の全触媒のうち、燃料電池の反応(上述した酸化反応または還元反応)に寄与する触媒の割合)を高めるためである。構成要件(C)は、直径10~20nmの細孔容積を規定する。ここでの細孔は単位粒子11内の細孔12を意味する。直径10~20nmの細孔12はいわゆるメソ孔に区分される。つまり、構成要件(C)は、直径10~20nmのメソ孔の全容積が0.5~1.5cc/gであることを規定する。直径10~20nmのメソ孔は、燃料電池用触媒を直径2~5nm程度の微粒子として細孔内に高分散状態で担持することができる。構成要件(C)が満たされる場合、このようなメソ孔が触媒担体用炭素材料内に多数存在することになるので、燃料電池用触媒を高分散かつ高密度で担持することができる。さらに、メソ孔内に電解質材料を担持することができるので、この点でも触媒利用率を高めることができる。したがって、低負荷特性が向上する。
触媒担体用炭素材料は、さらに以下の構成要件(D)を満たすことが好ましい。
(D)ラマン分光スペクトルから得られるGバンドの半価幅△Gが35cm-1超85cm-1未満である。
(2-4.構成要件(D))
ラマン分光スペクトルから得られるGバンドの半価幅△Gが35cm-1超85cm-1未満であることが好ましい。構成要件(D)は、触媒担体用炭素材料の結晶性(言い換えれば、黒鉛性)を規定する。触媒担体用炭素材料は、耐酸化消耗性の観点から、結晶性が高いことが好ましい。構成要件(D)が満たされる場合、触媒担体用炭素材料の結晶性が高まり、耐酸化消耗性が向上する。ここで、Gバンドは、1500~1700cm-1の範囲のピークを意味する。
<3.触媒担体用炭素材料の製造方法>
触媒担体用炭素材料の製造方法は特に制限されるものではなく、上述した構成要件(A)及び(B)(好ましくはさらに構成要件(C)及び(D)の少なくとも一方)を満たす触媒担体用炭素材料を製造することができればどのような製造方法であってもよい。以下、代表的な製造方法を列挙する。これらの製造方法のうち、最初に説明するMgO鋳型炭素合成法がもっとも好ましい。MgO鋳型炭素合成法によれば、構成要件(A)~(D)を満たす触媒担体用炭素材料を容易に作製することができるからである。
(3-1.MgO鋳型炭素合成法)
MgO鋳型炭素合成法では、まず、MgO鋳型粒子の集合体であるMgO鋳型を作製する。MgO鋳型を構成するMgO鋳型粒子は、発達した樹状構造を有し、かつ太い枝を有する。さらに、樹状構造を形成する単位粒子は、微細な結晶子の集合体となっており、結晶子の多くはメソ孔に相当する大きさを有する。このようなMgO鋳型を用いて作製される触媒担体用炭素材料は、MgO鋳型の形状を反映したものとなる。すなわち触媒担体用炭素材料を構成する担体粒子10は、発達した樹状構造を有し、かつ太い枝を有する。さらに、単位粒子11内には多数の細孔12が形成される。細孔12の多くはメソ孔となり、触媒担体用炭素材料の比表面積が大きくなる。したがって、構成要件(A)~(C)を満たす触媒担体用炭素材料を容易に作製することができる。さらに、高温での焼成を行うことで、触媒担体用炭素材料の結晶性を高めることができる。MgO鋳型炭素合成法は、塩基性炭酸マグネシウム5水和物作製工程、MgO鋳型作製工程、MgO-炭素源混合工程、MgO-炭素複合体作製工程、MgO除去工程、及び高結晶化処理工程を含む。以下、詳細を説明する。なお、本実施形態及び後述する実施例では、加熱対象の物質の温度は、実質的には雰囲気温度(例えば加熱対象の物質が設置される炉内の温度)を意味するものとする
(3-1-1.塩基性炭酸マグネシウム5水和物作製工程)
本工程では、図2に示す塩基性炭酸マグネシウム5水和物(Mg(CO(OH)・5HO)20を作製する。具体的には、尿素、酢酸マグネシウム4水和物、及び水を1:5:16の割合(質量比)で混合する。ついで、混合液を高圧容器に投入し、180℃で5時間加熱する。すなわち、いわゆる水熱合成を行う。これにより、塩基性炭酸マグネシウム5水和物20を作製する。塩基性炭酸マグネシウム5水和物20は長尺な形状を有していることが多い。なお、塩基性炭酸マグネシウム5水和物の製造方法はこの例に限定されない。すなわち、塩基性炭酸マグネシウム5水和物を製造方法は限定されない。
(3-1-2.MgO鋳型作製工程)
MgO鋳型作製工程では、MgO鋳型を作製する。具体的には、塩基性炭酸マグネシウム5水和物20を600~1500℃の加熱温度まで10~100℃/minの昇温速度で加熱する。ついで、塩基性炭酸マグネシウム5水和物20を当該加熱温度で加熱する。加熱時間は特に制限されないが、30分~3時間程度であればよい。以上の工程によりMgO鋳型を作製する。
MgO鋳型は、図2に示すMgO鋳型粒子30の集合体となっている。図2はMgO鋳型粒子30の概略構成の一例を示す。MgO鋳型粒子30は、触媒担体用炭素材料の担体粒子10に類似する形状を有する。言い換えれば、MgO鋳型を用いて触媒担体用炭素材料を作製することで、MgO鋳型の形状を反映した触媒担体用炭素材料を作製することができる。
MgO鋳型粒子30は複数の単位MgO粒子31が樹状に連結された樹状構造を有している。単位MgO粒子31は略球体となっており、多数の結晶子32の集合体となっている。
MgO鋳型粒子30の樹状構造は非常に発達しており、かつ、枝が太くなっている。ここで、枝は複数の単位MgO粒子31が連結することで形成される部分であり、枝の太さは単位MgO粒子31の直径d1’と同義である。多少のばらつきが生じる場合はあるが、枝の太さは概ね100~600nm程度である。枝の太さは例えばSEM観察により測定することができる。図3、図4に実際に作製されたMgO鋳型粒子30のSEM写真を示す。
枝間には空隙33が形成される。MgO鋳型粒子30の集合体であるMgO鋳型内では、空隙33同士が連結することで空隙ネットワークが形成される。MgO鋳型粒子30の樹状構造は非常に発達しているので、空隙ネットワークも非常に発達している。さらに、MgO鋳型粒子30の枝の太さは100~600nmと非常に太いので、それに応じて空隙33も太くなる。多少のばらつきが生じる場合はあるが、空隙33の太さd2’は概ね60~300nm程度となる。ここで、空隙33の太さd2’は、空隙33の長さ方向に垂直な壁間距離である。空隙33の壁面は単位MgO粒子31の表面で形成される。空隙33の太さd2’は例えば水銀ポロシメトリ法により測定することができる。
結晶子32の多くはメソ孔に相当する大きさを有する。具体的には、結晶子32の直径(球相当直径)は概ね50nm以下となっている。結晶子32の直径の下限値は特に制限されるものではないが、結晶子32の直径は概ね5nm以上となっている。結晶子32の大きさは、例えばX線回折法により測定することができる。
したがって、上述した製造方法で作製されたMgO鋳型を用いることで、構成要件(A)~(C)を満たす触媒担体用炭素材料を作製することができる。
本MgO鋳型作製工程によって上述した特徴構成を有するMgO鋳型が作製される理由は定かでないが、本発明者はその理由を以下のように考えている。すなわち、塩基性炭酸マグネシウム5水和物を10℃/min以上の比較的速い昇温速度で加熱することで、塩基性炭酸マグネシウム5水和物の各部分が一斉に分解する。これにより、反応系内の各所で球体の炭酸マグネシウム単位粒子が生じる。炭酸マグネシウム単位粒子の直径は大きい。次いで、球体の炭酸マグネシウム単位粒子同士が融着するが、この際に炭酸マグネシウム単位粒子から分解物である水蒸気が一気に脱離する。これにより、炭酸マグネシウム単位粒子同士の融着の進行が局所的にとどまり、結果として太い枝を有する発達した樹状構造の炭酸マグネシウム粒子が得られる。枝間には太い空隙が形成される。なお、炭酸マグネシウム粒子の枝の太さは昇温速度が速いほど細くなるが、上述した昇温速度の範囲内であれば十分な太さの炭酸マグネシウム粒子が得られる。
その後、上述した加熱温度での加熱によって、樹状構造を有する炭酸マグネシウム粒子はさらに分解し、二酸化炭素を発生させる。これにより、微細な結晶子32の集合体であるMgO鋳型粒子30が得られる。MgO鋳型粒子30の形状は炭酸マグネシウム粒子の樹状構造を反映し、太い枝を有する。枝間の空隙も太くなる。結晶子32の大きさは加熱温度が高いほど大きくなるが、上述した加熱温度の範囲内であれば結晶子32の大きさは十分微細となる。
したがって、塩基性炭酸マグネシウム5水和物の昇温速度が10℃/min未満となる場合、MgO鋳型粒子30の枝は太くなるが、枝間の融着が促進される。このため、枝間の空隙33が細くなり、上述した構成要件(B)を満たす触媒担体用炭素材料を作製することができない。昇温速度が100℃/minを超える場合、MgO鋳型粒子30の枝が細くなり、それに伴って枝間の空隙33も細くなる。したがって、上述した構成要件(B)を満たす触媒担体用炭素材料を作製することができない。
塩基性炭酸マグネシウム5水和物の加熱温度が600℃未満となる場合、生成物の一部に未分解の炭酸マグネシウムが残留してしまう。この生成物を鋳型として用いて触媒担体用炭素材料を作製しようとすると、炭素源と鋳型との混合物を加熱した際に(この処理については後述する)炭酸マグネシウムと炭素源とが反応する。この結果、加熱後の生成物が樹状構造を維持できず、上述した構成要件(B)を満たす触媒担体用炭素材料を作製することができない。加熱温度が1500℃を超える場合、結晶子32が大きくなる。この結果、触媒担体用炭素材料の細孔12が大きくなり、比表面積も大きくなる。すなわち、構成要件(A)、(C)を満たす触媒担体用炭素材料を作製することができない。
(3-1-3.MgO-炭素源混合工程)
この工程では、炭素源とMgO鋳型とを混合する。炭素源は、特に制限されず、例えば従来の鋳型法に使用される炭素源であってもよい。例えば、炭素源は、各種の有機物であってもよい。炭素源の例としては、具体的には、ポリビニルアルコール、脂肪族系もしくは芳香族系のポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリブタジエンやポリイソプレン等を主体とするエラストマー、天然ゴム、石油樹脂、フェノール系樹脂、フラン系樹脂、エポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、ポリイミド等が挙げられる。炭素源は、これらの例のうち、実質的に炭素、水素、酸素のみで構成されるもの、すなわち、ポリビニルアルコール、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、石油樹脂などであることが好ましい。これらの炭素前駆体は、粉末状、ペレット状、塊状など任意の形状であってもよく、有機溶剤に溶解あるいは分散されていても良い。また、上記で挙げた例は室温で固体の有機物であるが、炭素源は、室温で液体の有機物であってもよい。このような例としては、フルフリルアルコール、アクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられる。炭素源は、上記で列挙された樹脂のうち、熱可塑性樹脂であることがより好ましい。熱可塑性樹脂の例としては、上述したポリビニルアルコール等が挙げられる。炭素源に熱可塑性樹脂を用いると、後述するMgO-炭素複合体作製工程の際に、炭素源が溶融するので、結晶子の表面に炭素源が均一に被覆しやすくなる。この結果、結晶子の表面に炭素層が均一に形成されるので、より均質な炭素材料を得ることができる。
触媒担体用炭素材料を均質にするという観点から、炭素源とMgO鋳型とは、均一に(つまり、成分の偏りがなるべく少なくなるように)混合されることが好ましい。混合方法は、炭素源とMgO鋳型とを均一に混合できる方法であることが好ましいが、特に制限されない。混合方法の例としては、乾式または湿式のボールミルによる混合が挙げられる。この混合方法によれば、炭素源とMgO鋳型とを均一に混合することができる。
ここで、炭素源とMgO鋳型とを湿式で混合する場合、溶媒はMgO鋳型を溶解しないものであることが好ましい。このような溶媒としては、例えば、エタノールなどのアルコールが挙げられる。また、炭素源とMgO鋳型とを湿式で混合した後は、混合物を十分に乾燥させた後、次の工程を行う。
炭素源とMgO鋳型との混合比は炭素源中の炭素分CとMgO成分との質量比C/MgOが、0.1超5未満であることが好ましい。質量比C/MgOがこの範囲内の値である場合、MgO鋳型粒子30に炭素源が十分に被覆することができるため、MgO鋳型粒子30の形状(樹状構造、枝の太さ、空隙32の太さ、結晶子32の大きさ)を反映した触媒担体用炭素材料を容易に作製することが可能になる。
(3-1-4.MgO-炭素複合体作製工程)
MgO-炭素複合体作製工程では、炭素源とMgO鋳型との混合物を加熱することで、図2に示すMgO-炭素複合体(MgO-C)40を作製する。この工程において、炭素源がMgO鋳型粒子30の結晶子32間の隙間に入り込み、かつMgO鋳型粒子30の表面を覆う。さらに、炭素源が炭素化される。
具体的には、本工程では、炭素源とMgO鋳型との混合物を不活性雰囲気下で加熱(焼成)する。これにより、炭素源は分解しながらMgO鋳型粒子30を覆う。具体的には、分解物の一部(具体的には、揮発性の高い成分)がMgO鋳型粒子30の結晶子32間の隙間に入り込み、結晶子32間に吸着し、揮発性の低い成分がMgO鋳型粒子30の表面を覆う。そして、揮発性の高い成分は、結晶子間で重合が進み、揮発性を失い、結晶子を覆う。そして、MgO鋳型粒子30の表面および結晶子間に付着した炭素源(具体的には、揮発性の低い成分および揮発性を失った成分)が炭素化する。これにより、MgO-炭素複合体40を作製する。
混合物の加熱は、600~1500℃で30分以上行うことが好ましい。これにより、上述した炭素源の被覆及び炭素源の炭素化を十分に進行させることができる。昇温速度には制限がないが、10~30℃/min程度とすればよい。加熱時間の上限値は特に制限されないが、3時間程度であればよい。本工程によって作製されるMgO-炭素複合体40は、発達した樹状構造、太い枝、及び太い空隙を有する。枝は単位複合粒子41が連結することで形成され、単位複合粒子41内にはMgO鋳型粒子30由来の結晶子32が分散している。これらの結晶子32が次工程のMgO除去工程により除去されることとで、結晶子32の存在箇所に細孔12が形成される。
(3-1-4.MgO除去工程)
MgO除去工程では、MgO-炭素複合体40を酸洗することで、MgO鋳型粒子30を酸洗液中に溶解する。これにより、MgO-炭素複合体40からMgO鋳型粒子30を除去する。本工程後の炭素材料に残留するMgO成分は、炭素材料の総質量に対して0.1質量%以下であることが好ましい。これにより、固体高分子形燃料電池の特性をさらに向上させることができる。炭素材料中のMgO成分の残存量は、炭素材料を酸化雰囲気で燃焼させた後、残存した灰分を、王水などの酸で溶解させ、その溶液をICP発光分光分析法などの成分分析法を行うことで、定量できる。酸洗に用いる酸は、MgOが可溶であればよく、好ましい例としては、希硫酸が挙げられる。酸洗後、炭素材料を水洗し、乾燥させる。以上の工程により、少なくとも構成要件(A)~(C)を満たす触媒担体用炭素材料が作製される。
(3-1-5.高結晶化処理工程)
MgO除去工程を行った段階での触媒担体用炭素材料も十分な発電性能を発揮するが、触媒担体用炭素材料の耐久性をさらに高めるために、高結晶化処理工程を行うことが好ましい。本工程では、触媒担体用炭素材料の結晶性を向上させることで、触媒担体用炭素材料の耐久性を高めることができる。
具体的には、MgO除去工程後の触媒担体用炭素材料を不活性雰囲気下の加熱炉に投入し、1200~2600℃で30分以上焼成(加熱)する。加熱時間の上限値は特に制限されないが、例えば3時間程度であればよい。
このように、MgO鋳型炭素合成法によれば、MgO鋳型作製時の昇温速度及び加熱温度を調整することで構成要件(A)~(C)を満たす触媒担体用炭素材料を容易に作製することができる。
(3-2.空隙導入材混合法)
本方法は、概略的には、従来から行われているMgO鋳型炭素合成法において、非炭化性の空隙導入材をMgO鋳型と炭素源との混合物に添加するという方法である。
まず、MgO鋳型、炭素源、及び空隙導入材を準備する。MgO鋳型は従来のもので構わない。すなわち、MgO鋳型は樹状構造を有していないものであってもよい。炭素源は上述したMgO鋳型炭素合成法で列挙したものと同種のものであればよい。
非炭化性の空隙導入材は、触媒担体用炭素材料に太くかつ発達した空隙ネットワークを形成させるために使用される。つまり、触媒担体用炭素材料を構成する担体粒子10を樹状構造とし、枝間空隙を太くするために使用される。非炭化性の空隙導入材は、後述する加熱処理(炭素源を炭素化させるための処理)での炭素化歩留り率が3質量%以下である材料が好ましい。なお、ここでの炭素化歩留り率は、以下の方法で測定される。すなわち、試料1gを石英サンプル管に載せ、この石英サンプル管を石英管状炉中で、アルゴンガスフロー100ml/min下、600℃で1時間加熱する。その後、加熱前の1gの試料に対してサンプル管上に残った試料の質量の割合(百分率)を炭素化歩留り率とする。このような条件を満たす空隙導入材としては、例えば非炭化性の高分子材料が挙げられる。具体的な高分子材料としては例えばポリスチレン等が挙げられる。
空隙導入材はナノ粒子であることが好ましい。空隙導入材の平均粒子径は具体的には60~300nmが好ましい。これにより、触媒担体用炭素材料の機械的強度を維持しつつ、十分な太さの空隙ネットワークを触媒担体用炭素材料に形成することができる。空隙導入材の平均粒子径が60nm未満となる場合、空隙ネットワークの太さが不足する可能性がある。空隙導入材の平均粒子径が300nmを超える場合、触媒担体用炭素材料の機械的強度が不足する可能性がある。ここで、空隙導入材の平均粒子径は、例えばレーザ回折法により測定される粒子径分布を算術平均することで得られる。
ついで、MgO鋳型、炭素源、及び非炭化性の空隙導入材を十分に混合する。混合は上述したMgO-炭素源混合工程と同様の方法で行われればよい。空隙導入材の混合量は、空隙導入材の粒子径にも依存するが、MgO鋳型及び炭素源の総質量に対して概ね10~60質量%であることが好ましい。これにより、空隙導入材としての機能を十分に発揮させることができる。空隙導入材の混合量が10質量%未満となる場合、空隙導入材の添加効果が十分発揮されない可能性がある。空隙導入材の混合量が60質量%を超えても問題はないが、空隙導入材同士が凝集するので空隙導入材としての機能はほとんど変わらない。
ついで、混合物を加熱(焼成)する。例えば、混合物を加熱炉に投入し、不活性ガスフロー(例えばアルゴンガスフロー)中、600~2600℃で30分以上焼成(加熱)することが好ましい。加熱時間の上限は特に制限されないが3時間程度であってもよい。ガスフローの流量は特に制限されないが、例えば100~300ml/min程度であればよい。昇温速度には制限がないが、10~30℃/min程度とすればよい。この工程により、炭素源は上述したMgO-炭素複合体作製工程と同様の挙動を示しつつ炭素化する。さらに、空隙導入材は揮発して除去される。これにより、MgO-炭素複合体を作製する。なお、MgO-炭素複合体には、空隙導入材の存在箇所に空隙が形成される。加熱温度が600℃未満となる場合、炭素化が十分に進行しない可能性がある。加熱温度が2600℃超となる場合、最終生成物である触媒担体用炭素材料のBET比表面積が低下し、燃料電池用触媒の分散が悪くなる可能性がある。
(3-3.炭素粒子連結法)
本方法は、概略的には、多孔質化した大粒径の炭素粒子同士を粘結材で連結しつつ、上述した空隙導入材を用いて太い空隙ネットワークを形成するという方法である。
まず、炭素源を準備する。炭素源は、大粒径(例えば1次粒子径が60~500nm程度)の炭素粒子で構成されるカーボンブラックであることが好ましい。これにより、枝が十分に太い触媒担体用炭素材料を作製することができる。炭素粒子の1次粒子径が60nm未満となる場合、触媒担体用炭素材料の枝が細すぎて枝間の空隙が細くなる可能性がある。炭素粒子の1次粒子径は例えばSEM(走査型電子顕微鏡)観察により測定される。
ついで、炭素源を多孔質化、高比表面積化するために、炭素源を賦活処理する。賦活処理は、炭素源を多孔質化、高比表面積化する処理であれば特に制限されないが、例えばガス賦活処理が挙げられる。ガス賦活処理では、例えば炭素源をサンプル管(例えば石英サンプル管またはアルミナサンプル管)に数g~数10g充填する。ついで、炭素源を不活性ガス(例えばアルゴンガス)フロー中で600~1400℃まで昇温し、この加熱温度保持した状態で、水蒸気またはCOなどの酸化性ガスを流通させる。この状態を30分~24時間保持する。この工程により、炭素源が十分に多孔質化、高比表面積化される。すなわち、炭素源を構成する炭素粒子内に多数のメソ孔を形成する。加熱温度が600℃未満となる場合、あるいは加熱時間が30分未満となる場合、炭素源が十分に多孔質化されない可能性がある。すなわち、十分な数のメソ孔が形成されない可能性がある。一方、加熱温度が1400℃を超える場合、賦活が進行しすぎて炭素源が消失、あるいは炭素源の機械的強度の低下等が生じる可能性がある。加熱時間は炭素源の種類にもよるが、24時間を超えても基本的に問題ない。ただし、加熱時間が24時間を超えると触媒担体用炭素材料の生産性が低下する可能性がある。
ついで、賦活処理後の炭素源に粘結材及び空隙導入材を混合する。混合は上述したMgO-炭素源混合工程と同様の方法で行われればよい。粘結材は、炭素源を構成する炭素粒子同士を連結するためのものである。粘結材の例としては、例えばピッチ及びタール等が挙げられる。他の例として、ポリアミック酸等が挙げられる。粘結材は、炭素化歩留りが高い高分子材料であることが好ましい。粘結材の混合量は、賦活処理後の炭素源の総質量に対して数~10数質量%程度であることが好ましい。
空隙導入材は上述した空隙導入材混合法と同様のものである。ただし、後述する加熱処理(炭素源を炭素化させるための処理)での炭素化歩留り率は3質量%以下であることが好ましい。
空隙導入材の混合量は、空隙導入材の粒子径にも依存するが、賦活処理後の炭素源の総質量に対して概ね10~60質量%であることが好ましい。これにより、空隙導入材としての機能を十分に発揮させることができる。空隙導入材の混合量が10質量%未満となる場合、空隙導入材の添加効果が十分発揮されない可能性がある。空隙導入材の混合量が60質量%を超えても問題はないが、空隙導入材同士が凝集するので空隙導入材としての機能はほとんど変わらない。
ついで、混合物を加熱(焼成)する。例えば、混合物を加熱炉に投入し、不活性ガスフロー(例えばアルゴンガスフロー)中、600~2600℃で30分以上焼成(加熱)することが好ましい。加熱時間の上限は特に制限されないが3時間程度であってもよい。ガスフローの流量は特に制限されないが、例えば100~300ml/min程度であればよい。昇温速度には制限がないが、10~30℃/min程度とすればよい。この工程により、粘結材が炭素粒子同士を連結させる。さらに、空隙導入材は揮発して除去される。これにより、触媒担体用炭素材料を作製する。なお、加熱温度が600℃未満となる場合、炭素粒子同士の連結が十分に進行せず、枝間の空隙が十分に太くならない可能性がある。加熱温度が2600℃超となる場合、最終生成物である触媒担体用炭素材料のBET比表面積が低下し、燃料電池用触媒の分散が悪くなる可能性がある。
<4.固体高分子形燃料電池の構成>
本実施形態に係る触媒担体用炭素材料は、例えば図5に示す固体高分子形燃料電池100に適用可能である。固体高分子形燃料電池100は、セパレータ110、120、ガス拡散層130、140、触媒層150、160、及び電解質膜170を備える。
セパレータ110は、アノード側のセパレータであり、水素等の還元性ガスをガス拡散層130に導入する。セパレータ120は、カソード側のセパレータであり、酸素ガス、空気等の酸化性ガスをガス拡散層140に導入する。セパレータ110、120の種類は特に問われず、従来の燃料電池、例えば固体高分子形燃料電池で使用されるセパレータであればよい。
ガス拡散層130は、アノード側のガス拡散層であり、セパレータ110から供給された還元性ガスを拡散させた後、触媒層150に供給する。ガス拡散層140は、カソード側のガス拡散層であり、セパレータ120から供給された酸化性ガスを拡散させた後、触媒層160に供給する。ガス拡散層130、140の種類は特に問われず、従来の燃料電池、例えば固体高分子形燃料電池に使用されるガス拡散層であればよい。ガス拡散層130、140の例としては、カーボンクロスやカーボンペーパー等の多孔質炭素材料、金属メッシュや金属ウール等の多孔質金属材料等が挙げられる。なお、ガス拡散層130、140の好ましい例としては、ガス拡散層のセパレータ側の層が繊維状炭素材料を主成分とするガス拡散繊維層となり、触媒層側の層がカーボンブラックを主成分とするマイクロポア層となる2層構造のガス拡散層が挙げられる。
触媒層150は、いわゆるアノードである。触媒層150内では、還元性ガスの酸化反応が起こり、プロトンと電子が生成される。例えば、還元性ガスが水素ガスとなる場合、以下の酸化反応が起こる。
→2H+2e (E=0V)
酸化反応によって生じたプロトンは、触媒層150、及び電解質膜170を通って触媒層160に到達する。酸化反応によって生じた電子は、触媒層150、ガス拡散層130、及びセパレータ110を通って外部回路に到達する。電子は、外部回路内で仕事をした後、セパレータ120に導入される。その後、電子は、セパレータ120、ガス拡散層140を通って触媒層160に到達する。
アノードとなる触媒層150の構成は特に制限されない。すなわち、触媒層150の構成は、従来のアノードと同様の構成であってもよいし、触媒層160と同様の構成であってもよいし、触媒層160よりもさらに親水性が高い構成であってもよい。
触媒層160は、いわゆるカソードである。触媒層160内では、酸化性ガスの還元反応が起こり、水が生成される。例えば、酸化性ガスが酸素ガスあるいは空気となる場合、以下の還元反応が起こる。酸化反応で発生した水は、未反応の酸化性ガスとともに固体高分子形燃料電池100の外部に排出される。
+4H+4e→2HO (E=1.23V)
このように、固体高分子形燃料電池100では、酸化反応と還元反応とのエネルギー差(電位差)を利用して発電する。言い換えれば、酸化反応で生じた電子が外部回路で仕事を行う。
触媒層160には、本実施形態に係る触媒担体用炭素材料が含まれていることが好ましい。すなわち、触媒層160は、本実施形態に係る触媒担体用炭素材料と、電解質材料と、触媒成分とを含む。これにより、触媒層160のガス拡散性を高めることができ、上述した還元反応により生じた水(水蒸気)を速やかに外部に排出することができる。これにより、フラッディングを抑制することができ、ひいては、固体高分子形燃料電池100の高負荷特性を向上させることができる。
なお、触媒層160における触媒担持率は特に制限されないが、30質量%以上80質量%未満であることが好ましい。ここで、触媒担持率は、触媒担持粒子(触媒担体用炭素材料に触媒成分を担持させた粒子)の総質量に対する触媒成分の質量%であることが好ましい。この場合、触媒利用率がさらに高くなる。
触媒層160における電解質材料の質量I(g)と触媒担体用炭素材料の質量C(g)との質量比I/Cは特に制限されないが、0.5超5.0未満であることが好ましい。この場合、気孔ネットワークと電解質材料ネットワークとが両立でき、触媒利用率が高くなる。
また、触媒層160の厚さは特に制限されないが、5μm超20μm未満であることが好ましい。この場合、触媒層160内に酸化性ガスが拡散しやすく、かつ、フラッディングが生じにくくなる。
電解質膜170は、プロトン伝導性を有する電解質材料で構成されている。電解質膜170は、上記酸化反応で生成したプロトンをカソードである触媒層160に導入する。ここで、電解質材料の種類は特に問われず、従来の燃料電池、例えば固体高分子形燃料電池で使用される電解質材料であればよい。好適な例は固体高分子形燃料電池で使用される電解質材料、すなわち、電解質樹脂である。電解質樹脂としては、例えば、リン酸基、スルホン酸基等を導入した高分子、例えば、パーフルオロスルホン酸ポリマーやベンゼンスルホン酸が導入されたポリマー等が挙げられる。もちろん、本実施形態に係る電解質材料は他の種類の電解質材料であってもよい。このような電解質材料としては、例えば、無機系、無機-有機ハイブリッド系等の電解質材料等が挙げられる。なお、固体高分子形燃料電池100は、常温~150℃の範囲内で作動する燃料電池であってもよい。
<5.固体高分子形燃料電池の製造方法>
固体高分子形燃料電池100の製造方法は特に制限されず、従来と同様の製造方法であればよい。ただし、カソード側の触媒担体には本実施形態に係る触媒担体用炭素材料を用いることが好ましい。
<1.触媒担体用炭素材料の評価方法>
つぎに、本実施形態の実施例について説明する。まず、各パラメータの測定方法について説明する。
(1-1.窒素吸着等温線の測定方法)
マイクロトラック・ベル社製のBELSORPminiを用いて窒素ガス吸着測定を行い、窒素吸着等温線を得た。測定温度は77Kとした。窒素吸着等温線は、相対圧0~0.995の範囲で測定した。
(1-2.BET比表面積の測定方法)
BELSORPminiに付属の解析ソフトにより、窒素吸着等温線をBET法により解析し、BET比表面積を算出した。
(1-3.直径10~20nmの細孔容積V10-20の測定方法)
BELSORPminiに付属の解析ソフトにより、窒素吸着等温線をBJH法により解析し、直径10~20nmの細孔容積V10-20を算出した。
(1-4.水銀ポロシメトリ法における水銀吸収量の増加分△VHg:3.8-4.3(cc/g)の測定)
50~100mgの触媒担体用炭素材料を計り取り、これを測定装置(島津製作所株式会社製オートポアIV9520)のサンプル容器内に装填した。ついで、導入初期圧力5kPa及び最高圧入圧力400MPaの条件でサンプル容器に水銀を圧入し、その時の水銀圧力(PHg:kPa)の常用対数(LogPHg)と水銀吸収量(VHg:cc/g)との関係を特定した。ついで、この関係を用いて、kPa単位の水銀圧力の常用対数Log(PHG)を3.8から4.3に増加させた時の水銀吸収量VHgの増加分(△VHg:3.8-4.3)を求めた。
<2.触媒担体用炭素材料の作製>
(2-1.塩基性炭酸マグネシウム原料を用いた触媒担体用炭素材料の作製(実施例1~14、比較例1~6))
実施例1~14、比較例1~6では、以下の手順でMgO鋳型を調製し、得られたMgO鋳型を原料に用いてMgO鋳型炭素合成法を行い、実施例1~14、比較例1~6に係る触媒担体用炭素材料を作製した。なお、実施例1~14、比較例1~6に対応するMgO鋳型をそれぞれMgO鋳型1-1~1-14、2-1~2-6とも称する。MgO鋳型のナンバリングは表1にも記載する。
(2-1-1.塩基性炭酸マグネシウム5水和物作製工程(実施例1~14、比較例1~4))
尿素(和光純薬工業社製、特級)、酢酸マグネシウム4水和物(関東化学社製、鹿特級)及び水を1:5:16の割合(質量比)で混合し、混合液を高圧容器に投入した。ついで、電気炉に高圧容器をセットし、180℃で5時間加熱した。
電気炉の内温が40℃以下に冷えてから、高圧容器を取り出し、高圧容器の内容物をろ過し、回収物を50℃にて5時間、真空乾燥することで、塩基性炭酸マグネシウム5水和物を得た。
(2-1-2a.MgO鋳型作製工程(実施例1~3、5~14、比較例1~4))
塩基性炭酸マグネシウム5水和物を3g秤量し、石英製のサンプル管に投入した。ついで、サンプル管を電気炉にセットし、100ml/minの純空気の流通下で、電気炉内の温度を表1に記載の熱処理1の加熱温度まで表1に記載の昇温速度で昇温した。ついで、電気炉内の温度を当該加熱温度に1時間保持した。その後、炉内が室温まで冷えてから、サンプル管に入ったMgO鋳型(MgO鋳型1-1~1-3、1-5~1-14、2-1~2-4)を回収した。
(2-1-2b.MgO鋳型作製工程(実施例4)
電気炉内を流通させるガスをアルゴンガスとした他は上記2-1-2aと同様の工程を行うことで、MgO鋳型1-4を得た。
(2-1-2c.MgO鋳型作製工程(比較例5))
原料を塩基性炭酸マグネシウム5水和物から塩基性炭酸マグネシウム軽質(和光純薬工業社製)に変更した他は上記2-1-2aと同様の工程を行うことで、MgO鋳型2-5を得た。
(2-1-2d.MgO鋳型作製工程(比較例6))
原料を塩基性炭酸マグネシウム5水和物から炭酸マグネシウム重質(和光純薬工業社製)に変更した他は上記2-1-2aと同様の工程を行うことで、MgO鋳型2-6を得た。
(2-1-3.MgO-炭素源混合工程及びMgO-炭素複合体作製工程(実施例1~14、比較例1~6共通))
炭素源としてポリビニルアルコール粉末(電気化学工業社製、デンカポバール)(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びポリ塩化ビニル(和光純薬)(PVC)を準備した。そして、表1記載の炭素源と、MgO鋳型(MgO鋳型1-1~1-14、2-1~2-6)とを表1記載の混合比(質量比)で混合し、混合物を石英製の坩堝に入れた。ついで、坩堝を電気炉に挿入し、電気炉内にアルゴンガスを100mL/minで流通させた。ついで、電気炉内の温度を表1に記載した熱処理2の加熱温度まで10℃/minで昇温し、その後、炉内の温度を当該加熱温度に1時間保持した。自然放冷後、MgO-炭素複合体を取り出した。
(2-1-4.MgO除去工程(実施例1~14、比較例1~6共通))
上記で作製されたMgO-炭素複合体をナスフラスコに投入し、さらにMgO-炭素複合体に対し質量比で100倍量の1M希硫酸をナスフラスコに投入した。ついで、ナスフラスコ中の混合液を、60℃に温度保持したオイルバス中で3時間撹拌した。これにより、MgO鋳型を混合液中に溶出させた。その後、混合液を室温まで冷却させた。ついで、混合液をろ過することで、触媒担体用炭素材料を単離した。ついで、触媒担体用炭素材料を純水で洗浄し、濾過後、乾燥した。以上の工程により、実施例1~14、比較例1~6に係る触媒担体用炭素材料を得た。
(2-1-5.高結晶化処理工程(実施例2~14、比較例2~6))
実施例2~14、比較例2~6に係る触媒担体用炭素材料に対しては、さらに高結晶化処理工程を行った。具体的には、触媒担体用炭素材料を黒鉛製の坩堝に入れ、坩堝をタンマン炉にセットした。ついで、タンマン炉内にアルゴンガスを100mL/minで流通させた。ついで、タンマン炉内温度を表1記載の熱処理3の加熱温度まで10℃/minで昇温し、タンマン炉内温度を当該加熱温度に1時間保持した。その後、タンマン炉内温度を室温まで冷却させた。
(2-2.空隙導入材混合法を用いた触媒担体用炭素材料の作製(実施例15、16、比較例7))
炭素源としてポリビニルアルコール粉末(電気化学工業社製デンカポバール)(PVA)を準備した。MgO鋳型としてMgOナノパウダー(神島化学工業社製PSF-150)を準備した。空隙導入剤として平均粒子径が100nmのポリスチレンナノ粒子(ナノ・ミール社製PS10V)を準備した。
ついで、炭素源であるPVAと、MgO鋳型であるMgOナノパウダーと、空隙導入剤であるポリスチレンナノ粒子とをそれぞれ10g、5g、2g秤量し、水150mL中で1晩撹拌した。その後、得られた混合液をロータリーエバポレーターに入れ、減圧乾燥した。これにより、乾燥した混合物を得た。その後、乾燥した混合物5gを石英サンプル管に投入した。その後、電気炉に石英サンプル管をセットし、電気炉内にアルゴンガスを100mL/minで流通させた。ついで、電気炉内の温度を800℃まで10℃/minで昇温させ、電気炉内の温度を800℃に1時間保持した。
炉内が室温まで冷えた後、MgO-炭素複合体を取り出し、ナスフラスコに投入した。さらに、MgO-炭素複合体に対し質量比で100倍量の1M希硫酸をナスフラスコに投入した。ついで、ナスフラスコ中の混合液を、60℃に温度保持したオイルバス中で3時間撹拌した。これにより、MgO鋳型を混合液中に溶出させた。その後、混合液を室温まで冷却させた。ついで、混合液をろ過することで、触媒担体用炭素材料を単離した。ついで、触媒担体用炭素材料を純水で洗浄し、濾過後、乾燥した。以上の工程により、実施例15に係る触媒担体用炭素材料を得た。
実施例15の空隙導入材を平均粒子径が150nmのポリスチレンナノ粒子(ナノ・ミール社製PS15V)に変えて同様の処理を行うことで、実施例16に係る触媒担体用炭素材料を得た。実施例15の空隙導入材を平均粒子径が50nmのポリスチレンナノ粒子(ナノ・ミール社製PS05V)に変えて同様の処理を行うことで、比較例7に係る触媒担体用炭素材料を得た。
(2-3.炭素粒子連結法を用いた触媒担体用炭素材料の作製(実施例17、18、比較例8))
炭素源であるカーボンブラック(新日鉄化学社製HTC#20、1次粒子の平均粒子径85nm)10gをサンプル管に投入し、サンプル管を電気炉にセットした。ついで、電気炉内にアルゴンガスを100mL/minで流通させた。ついで、電気炉内を1100℃まで昇温し、この温度を保持した状態で、アルゴンガスを止めた。ついで、電気炉内にCOガスを50mL/minで流通させ、上記温度を7時間保持した。その後、室温まで炉内を冷ましてから、賦活処理後のカーボンブラックを回収した。
ついで、賦活処理後のカーボンブラックと、粘結材であるコールタールと、空隙導入材であるポリスチレンナノ粒子(ナノ・ミール社製PS15V)とを20:2:5の質量比で混合した。ついで、混合物を3g秤量して石英サンプル管に投入し、石英サンプル管を電気炉にセットした。ついで、電気炉内にアルゴンガスを100mL/minで流通させ、電気炉内を800℃まで10℃/minで昇温した。ついで、この温度を1時間保持した。その後、室温まで炉内を冷ましてから、実施例17に係る触媒担体用炭素材料を回収した。
実施例18では、以下の処理を行うことで触媒担体用炭素材料を得た。すなわち、炭素源であるカーボンブラック(新日鉄化学社製HTC#20)10gをサンプル管に投入し、サンプル管を電気炉にセットした。ついで、電気炉内にアルゴンガスを100mL/minで流通させた。ついで、電気炉内を1050℃まで昇温し、この温度を保持した状態で、アルゴンガスを止めた。ついで、電気炉内にCOガスを50mL/min流通させ、上記温度を3時間保持した。その後、室温まで炉内を冷ましてから、賦活処理後のカーボンブラックを回収した。その後は実施例17と同様の処理を行うことで、実施例18に係る触媒担体用炭素材料を得た。
比較例8では、以下の処理を行うことで触媒担体用炭素材料を得た。すなわち、炭素源であるカーボンブラック(新日鉄化学社製HTC#20)10gをサンプル管に投入し、サンプル管を電気炉にセットした。ついで、電気炉内にアルゴンガスを100mL/minで流通させた。ついで、電気炉内を1050℃まで昇温し、この温度を保持した状態で、アルゴンガスを止めた。ついで、電気炉内にCOガスを50mL/minで流通させ、上記温度を2時間保持した。その後、室温まで炉内を冷ましてから、賦活処理後のカーボンブラックを回収した。
ついで、賦活処理後のカーボンブラックと、粘結材であるコールタールと、空隙導入材であるポリスチレンナノ粒子(ナノ・ミール社製PS15V)とを20:2:1の質量比で混合した。ついで、混合物を3g秤量して石英サンプル管に投入し、石英サンプル管を電気炉にセットした。ついで、電気炉内にアルゴンガスを100mL/minで流通させ、電気炉内を800℃まで10℃/minで昇温した。ついで、この温度を1時間保持した。その後、室温まで炉内を冷ましてから、比較例8に係る触媒担体用炭素材料を回収した。
(2-4.従来のMgO鋳型炭素合成法を用いた触媒担体用炭素材料の作製(比較例9))
炭素源であるポリビニルアルコール粉末(電気化学工業社製デンカポバール)(PVA)、及びMgO鋳型であるMgOナノパウダー(神島化学工業社製PSF-150)を3:1の質量比で混合した。ついで、混合物を3g秤量し、石英サンプル管に投入した。ついで、石英サンプル管を電気炉にセットし、電気炉内にアルゴンガスを100mL/minで流通させた。ついで、電気炉内の温度を800℃まで昇温速度10℃/minで昇温させ、電気炉内の温度を800℃に1時間保持した。
炉内が室温まで冷えた後、MgO-炭素複合体を取り出し、ナスフラスコに投入した。さらに、MgO-炭素複合体に対し質量比で100倍量の1M希硫酸をナスフラスコに投入した。ついで、ナスフラスコ中の混合液を、60℃に温度保持したオイルバス中で3時間撹拌した。これにより、MgO鋳型を混合液中に溶出させた。その後、混合液を室温まで冷却させた。ついで、混合液をろ過することで、触媒担体用炭素材料を単離した。ついで、触媒担体用炭素材料を純水で洗浄し、濾過後、乾燥した。以上の工程により、比較例9に係る触媒担体用炭素材料を得た。
(2-5.市販の触媒担体用炭素材料(比較例10~15))
比較例8~13に係る触媒担体用炭素材料として、MCND(新日鉄住金化学社製エスカーボン)、カーボンブラック(ライオン社製EC300J、東洋炭素社製クノーベルMH、クノーベルMJ4010、クノーベルMJ4030)、活性炭(クラレケミカル社製YP80F)を準備した。
実施例1~14及び比較例1~6(すなわち塩基性炭酸マグネシウム原料を用いた例)の合成条件を表1に示し、得られた触媒担体用炭素材料の物性値を表2に示す。また、他の合成法で得られた(または市販の)触媒担体用炭素材料の合成条件及び物性値を表3に示す。
Figure 0007192612000001
Figure 0007192612000002
Figure 0007192612000003
<3.燃料電池の調整とその電池性能の評価>
(3-1.Pt触媒の作製)
実施例1~18、比較例1~15に係る触媒担体用炭素材料のいずれかを蒸留水中に分散させた。ついで、この分散液にホルムアルデヒドを加え、40℃に設定したウォーターバスにセットした。分散液の温度がバスと同じ40℃になった後、撹拌下の分散液中にジニトロジアミンPt錯体硝酸水溶液をゆっくりと注ぎ入れた。その後、約2時間撹拌を続けた。ついで、分散液を濾過し、得られた固形物を洗浄した。このようにして得られた固形物を90℃で真空乾燥した後、乳鉢で粉砕した。ついで、水素を5体積%含むアルゴン雰囲気内に粉砕物を設置し、200℃で1時間熱処理した。これにより、白金担持炭素材料(Pt触媒)を作製した。
なお、この白金担持炭素材料の白金担持率は、触媒担体用炭素材料と白金粒子の合計質量に対して40質量%とした。ここで、白金担持率は、ジニトロジアミンPt錯体硝酸水溶液の滴下量によって調整した。また、白金担持率は、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES:Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)により測定して確認した。
(3-2.触媒層の作製)
以上のようにして作製された白金担持炭素材料(Pt触媒)と、電解質材料であるDupont社製ナフィオン(登録商標:Nafion;パースルホン酸系イオン交換樹脂)とをAr雰囲気下で混合した。ここで、ナフィオン固形分の質量はPt触媒の質量の1.0倍(すなわち同量)とした。混合物を軽く撹拌した後、超音波でPt触媒を解砕し、更に混合物にエタノールを加えてPt触媒と電解質材料とを合わせた合計の固形分濃度が1.0質量%となるように調整した。これにより、Pt触媒と電解質材料とが混合した触媒層インクを作製した。
作製された固形分濃度1.0質量%の触媒層インクに更にエタノールを加え、白金濃度が0.5質量%のスプレー塗布用触媒層インク(塗布インク)を作製した。ついで、白金の触媒層単位面積当たりの質量(以下、「白金目付量」という。)が0.2mg/cmとなるようにスプレー条件を調節し、上記スプレー塗布用触媒層インクをテフロン(登録商標)シート上にスプレーした後、アルゴン中120℃で60分間の乾燥処理を行った。以上の工程により、触媒層を作製した。
(3-3.MEAの作製)
作製した上記の触媒層を用いて、以下の方法でMEA(膜電極複合体)を作製した。ナフィオン膜(Dupont社製NR211)から一辺6cmの正方形状の電解質膜を切り出した。また、テフロン(登録商標)シート上に塗布されたアノード及びカソードの各触媒層については、それぞれカッターナイフで一辺2.5cmの正方形状に切り出した。
このようにして切り出されたアノード及びカソードの各触媒層の間に、各触媒層が電解質膜の中心部を挟んでそれぞれ接すると共に互いにずれが無いように、この電解質膜を挟み込んだ。ついで、作製された積層体を120℃、100kg/cmで10分間プレスした。プレス後の積層体を室温まで冷却した後、アノード及びカソード共にテフロンシートのみを注意深く剥ぎ取った。これにより、アノード及びカソードの各触媒層が電解質膜に定着した触媒層-電解質膜接合体を調製した。
次に、ガス拡散層として、カーボンペーパー(SGLカーボン社製35BC)から一辺2.5cmの大きさで一対の正方形状カーボンペーパーを切り出した。ついで、これらのカーボンペーパーの間に、アノード及びカソードの各触媒層が一致してずれが無いように、上記触媒層-電解質膜接合体を挟みこんだ。ついで、積層体を120℃、50kg/cmで10分間プレスすることでMEAを作製した。触媒担体用炭素材料を変更して同様の工程を繰り返して行うことで、実施例1~18、比較例1~15に係るMEAを作製した。
なお、作製された各MEAにおける触媒金属成分(すなわち白金成分)、触媒担体用炭素材料、電解質材料の各成分の目付量を以下のように算出した。すなわち、プレス前の触媒層付テフロンシートの質量とプレス後に剥がしたテフロンシートの質量との差からナフィオン膜(電解質膜)に定着させた触媒層の質量を求め、触媒層の組成の質量比より各成分の目付量を算出した。
(3-4.燃料電池の発電性能評価試験)
各MEAを燃料電池セルに組み込み、燃料電池測定装置を用いて燃料電池セルの発電性能を評価した。ここで、カソードに空気、アノードに純水素を、それぞれ利用率が40%と70%となるように供給した。また、それぞれのガス圧は、セル下流に設けられた背圧弁で0.1MPaに設定した。また、セル温度は80℃に設定し、燃料電池セルに供給する反応ガス(すなわち空気及び純水素)には予め水蒸気を含ませた。すなわち、これらの反応ガスを加湿器中で80℃に保温された蒸留水に通す(すなわち、バブリングを行う)ことで、これらのガスに水蒸気を含ませた。その後、水蒸気が飽和した状態のこれらのガスを燃料電池セルに供給した。
このような設定の下で負荷を徐々に増やし、電流密度100mA/cmまたは1000mA/cmでそれぞれ燃料電池セルを2時間保持した。その後、セル端子間電圧を各電流時の出力電圧として測定し、記録した。そして、出力電圧に基づいて燃料電池セルの発電性能を評価した。具体的には、以下の判定基準に基づいて燃料電池セルの発電性能を評価した。評価結果を表2、3に示す。
[合格ランク]
S+:100mA/cmにおける出力電圧が0.87V以上であって、1000mA/cmにおける出力電圧が0.65V以上であるもの。
S:100mA/cmにおける出力電圧が0.86V以上であって、1000mA/cmにおける出力電圧が0.65V以上であるもの。
A:100mA/cmにおける出力電圧が0.85V以上であって、1000mA/cmにおける出力電圧が0.60V以上であるもの。
B:100mA/cmにおける出力電圧が0.84V以上であって、1000mA/cmにおける出力電圧が0.55V以上であるもの。
[不合格ランク]
C:合格ランクBに満たないもの。
表1~3から明らかな通り、本実施形態の要件を満たす実施例1~18では、いずれも電流密度100mA/cmまたは1000mA/cmでそれぞれ燃料電池セル電圧が高く、ガス拡散性が高く、高負荷特性(大電流発電時の特性)に優れた。具体的には、いずれもBランク以上の結果が得られた。特に、実施例1~10、15~17では、1000mA/cmにおける燃料電池セル電圧が高く、特にガス拡散性が高く、高負荷特性(大電流発電時の特性)に優れた。これに対し、本実施形態の要件を満たさない比較例1~15では、発電性能がいずれも不合格ランクとなった。特に、市販のMgO鋳型を用いて触媒担体用炭素材料を作製しても、本実施形態に係る触媒担体用炭素材料を作製することができないことが明らかとなった。市販のMgO鋳型は、本実施形態のように樹状構造が発達しておらず、枝も細い(すなわち枝間の空隙が細い)と考えられる。実施例1~18をさらに検討すると、本実施形態の構成要件(A)~(B)を満たす実施例では、B以上の合成ランクが得られる。構成要件(A)を満たし、さらに水銀吸収量の増加分が0.8~1.4cc/gとなる(以下、この構成要件を構成要件(B’)とする)実施例では、Aランク以上の合成ランクが得られる。構成要件(A)、(B’)を満たし、さらに構成要件(C)を満たす実施例では、Sランク以上の合成ランクが得られる。構成要件(A)、(B’)、(C)を満たし、さらにBET比表面積が300~1500となる場合、S+ランクが得られる。
例えば、実施例1~7は構成要件(A)、(B’)、(C)を満たし、さらにBET比表面積が300~1500となるのでS+ランクとなり、実施例8~10は構成要件(A)、(B’)、(C)を満たすがBET比表面積が小さくなり、Sランクとなった。実施例8では、炭素源がPVCとなっている。PVCはPVAよりも炭素化歩留り率が良い。さらに、炭素源とMgO鋳型との混合比が炭素源リッチとなっている。このため、触媒担体用炭素材料を構成する炭素壁が厚くなりBET比表面積が低下したと考えられる。実施例9では、触媒担体用炭素材料を高温で処理したため、細孔の収縮、消滅が生じ、BET比表面積が低下したと考えられる。実施例10では炭素源とMgO鋳型との混合比が炭素源リッチとなっている。このため、触媒担体用炭素材料の炭素壁が厚くなり、BET比表面積が低下したと考えられる。
実施例11は構成要件(A)、(B’)を満たすが構成要件(C)を満たさないのでAランクとなった。実施例11では熱処理1の加熱温度が大きいため、MgO鋳型粒子の結晶子が大きくなり、結果として直径10~20nmの細孔容積V10-20が少なくなったと考えられる。実施例12~14は構成要件(A)、(B)だけを満たすのでBランクとなった。実施例12では熱処理1の加熱温度が大きいため、MgO鋳型粒子の結晶子が大きくなり、結果として直径10~20nmの細孔容積V10-20が少なくなったと考えられる。さらに、熱処理1の昇温速度が大きいため、触媒担体用炭素材料の枝が細くなり、水銀吸収量の増加分が低下したと考えられる。実施例13、14では、熱処理1の加熱温度が小さいため、MgO鋳型粒子の結晶子が非常に小さくなり、結果として直径10~20nmの細孔容積V10-20が少なくなったと考えられる。さらに、熱処理1の昇温速度が大きいため、触媒担体用炭素材料の枝が細くなり、水銀吸収量の増加分が低下したと考えられる。なお、実施例5でも昇温速度が大きいので、水銀吸収量の低下が懸念されるところであるが、水銀吸収量の増加分は十分大きくなっている。実施例5では実施例12~14に比べて炭素源の混合比が小さく、炭素壁が薄くなったためであると考えられる。実施例12~14では、熱処理1の昇温速度が大きいことに加え、炭素源リッチであるため、水銀吸収量の増加分が大きく低下したと考えられる。実施例15~17は構成要件(A)、(B’)、(C)を満たし、さらにBET比表面積が300~1500となるのでS+ランクとなった。実施例18では、構成要件(A)、(B)だけ満たすのでBランクとなった。実施例18では炭素源の賦活処理する時間が短いため、BET比表面積、水銀吸収量の増加分、及び直径10~20nmの細孔容積V10-20が少なくなったと考えられる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
10 担体粒子
11 単位粒子
12 細孔
13 空隙
20 塩基性炭酸マグネシウム5水和物
30 MgO鋳型粒子
31 単位MgO粒子
32 結晶子
33 空隙
40 MgO-炭素複合体
41 単位複合粒子

Claims (5)

  1. 固体高分子形燃料電池の触媒担体に用いられる触媒担体用炭素材料であって、以下の構成要件(A)、(B)を満たし、かつ、窒素吸着等温線をBJH法で解析することで算出される直径10~20nmの細孔容積が0.5~1.5cc/gであることを特徴とする、触媒担体用炭素材料。
    (A)窒素吸着等温線から算出されるBET比表面積が100~2000m/gである。
    (B)水銀ポロシメトリ法により得られる水銀吸収量と水銀圧力PHGとの関係において、kPa単位の水銀圧力の常用対数Log(PHG)を3.8から4.3に増加させた時の水銀吸収量の増加分が0.6~1.6cc/gである。
  2. 前記kPa単位の水銀圧力の常用対数Log(PHG)を3.8から4.3に増加させた時の水銀吸収量の増加分が0.8~1.4cc/gであることを特徴とする、請求項1に記載の触媒担体用炭素材料。
  3. 請求項1または2に記載の触媒担体用炭素材料を含むことを特徴とする、燃料電池用触媒層。
  4. 請求項3に記載の燃料電池用触媒層を含むことを特徴とする、燃料電池。
  5. 前記燃料電池用触媒層は、カソード側の触媒層であることを特徴とする、請求項4に記載の燃料電池。
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