JP7192556B2 - 記録装置及び記録装置のメンテナンス方法 - Google Patents
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Description
本実施形態のインクジェット記録装置は、紫外線硬化型インクを吐出する吐出ヘッドと、前記紫外線硬化型インクを前記ヘッドに供給するインク流路と、前記インク流路に、前記紫外線硬化型インクを流通させる送りポンプと、を備える。ここで、「インク流路」とは、インクジェット記録装置において、インクを流通させるための流路をいう。インク流路としては、例えば、インクを貯留するインク収容容器からインクジェット式記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給路や、インクジェット式記録ヘッド内においてインクをノズル開口部まで流通させるための流路、下記インク循環路等が挙げられる。
本実施形態のインクジェット記録装置は、インク流路51において、インクを貯留するための液体貯留部としてのサブタンク(例えば、図2に示すサブタンク70)を備えることが好ましい。サブタンク70は、インクカートリッジ50からインクが供給されるようにインク流路51と接続されており、記録時には内部空間が大気開放されており、貯留するインクに大気が加える圧力が、吐出ヘッド60のノズルが開口するノズル面における大気圧より低く、かつノズルに形成される気液界面(メニスカス)が壊れない圧力(例えば大気圧より低い-1000Pa~-3500Pa、実施形態では-1900Pa)になるように液面を調整されていてもよい。そして、記録動作によりサブタンク内のインクが消費された場合は供給ポンプ54を駆動してインクカートリッジ50からインクを補給して、貯留するインクに大気が加える圧力を調整してもよい。また、サブタンク70は、内部空間を加圧可能に加圧ポンプ56と接続されており、貯留するインクに加える圧力をノズルの気液界面が壊れる大気圧より高い正圧に調整して、ノズルからインクを強制的に排出させるクリーニングを行ってもよい。なお、サブタンク70には、サブタンク70に貯留されるインクの液量を検出する液量センサー71が配置される。また、本実施形態のインクジェット記録装置は、吐出ヘッド60のノズル面を被覆可能なキャップ61が設けられる。
本実施形態のインクジェット記録装置は、インク流路において、インクを流通させる送りポンプ(例えば、図2に示す送りポンプ82)を備えることが好ましい。また、送りポンプ82は、インク流路51におけるサブタンク70と加温装置90との間となる位置に、交換可能に備えることがより好ましい。送りポンプ82としては、図2に示すような、ポンプ室821と、ポンプ室821のサブタンク70側に位置し、ポンプ室821に向かうインクの流れは許容しサブタンク70に向かうインクの流れは規制する一方向弁823を備える吸引側流路と、ポンプ室821の吐出ヘッド60側に位置し、吐出ヘッド60に向かうインクの流れは許容しポンプ室821に向かうインクの流れは規制する一方向弁824を備える吐出側流路と、を含み、可撓壁としての可撓部材で形成されるダイアフラム822をポンプ室の容積が増大する方向に変形させる吸引動作と、ポンプ室の容積が縮小する方向に変形させる吐出動作の繰り返しにより送液する容積式ポンプに分類されるダイアフラムポンプを採用してもよい。また、ダイアフラムポンプは吸引側流路、ポンプ室821、吐出側流路を2つ備え、吸引動作および吐出動作を含む繰り返し動作の位相を180度ずらすことにより送液の脈動(圧力変動)を低減させる2相タイプを採用してもよく、一方向弁823および一方向弁824としてダックビル弁を採用してもよい。送りポンプ82の姿勢は気泡の排出性を考慮して、図2における重力方向に延びる吸引側流路が、ダイアフラムが側面となる姿勢のポンプ室821の重力方向の中心より下方に接続され、重力方向に延びる吐出側流路が、ポンプ室821の重力方向の中心より上方に接続されていてもよい。尚、ダイアフラム822は、耐インク性の観点からEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)で形成されてもよく、EPDMのポンプ室の内面となる側となる表面にフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)層を設けてもよい。
本実施形態のインクジェット記録装置は、インク流路に、インクを加温するための加温装置(例えば、図2に示す加温装置90)を備えることが好ましい。加温装置を備える場合、インクの温度が高いことにより増粘物がインク組成物中に発生しやすい傾向がある。増粘物が発生すると例えば送りポンプとしての採用されるギアポンプが固着しやすくなる。そのため、加温装置を備える場合には本実施形態に係るインクジェット記録装置が特に有用である。加温温度は35~70℃が好ましい。
本実施形態のインクジェット記録装置は、インク流路に、脱気装置をさらに有することが好ましい。脱気装置は、インクを脱気するものである。脱気装置100は、インク流路中に設けるものであれば特に制限されないが、インク循環路80に設けられ、より具体的にはインク循環路80を構成するインク流路51の途中、即ち温調モジュール94とフィルターユニット81との間となる位置に設けることができる。脱気装置100により脱気されたインクは吐出ヘッド60に供給される。脱気装置100は、インクが供給される方向であって、吐出ヘッド60より上流側となる加温装置90(より具体的には、インク循環路80の温調モジュール94)とフィルターユニット81との間となる位置に設けられていることが好ましい。これにより脱気装置100が加温装置90の下流に位置することにより、インクの温度が高い状態で脱気されることとなり、脱気効率をより高くすることができる。脱気モジュール102は、インクが流入する脱気室(図示せず)と、インクなどの液体を通さない分離膜を介して当該脱気室に接する減圧室(図示せず)と、を備える。真空度調整機構としての減圧ポンプ101は上記減圧室を減圧するものである。上記減圧室が減圧されると、インク循環路80内のインクの溶存空気量が減少して気泡が除去される。このようにして、脱気装置100はインク循環路80内のインクを脱気することができる。また、脱気モジュール102と減圧ポンプ101との間には、検出器群110としての圧力センサー1101が設けられており、制御部としてのコントローラー120が、圧力センサー1101で検出される圧力値に基づいて、真空度調整機構としての減圧ポンプ101を制御して、脱気モジュール102の真空度を調整する。減圧脱気装置から流出されるインクの溶存酸素量は、脱気装置に流入されるインクの溶存酸素量を100%として、5%以内の範囲で低下する傾向にあるが、インクが循環することにより、印刷中、インク循環路80中のインクの溶存酸素量(濃度)が安定する。脱気装置100は、インクが供給される方向であって、送りポンプより下流側であり、かつ、吐出ヘッド60より上流側に設けられていることが好ましい。脱気装置により脱気される前のインクを送りポンプに流入させることで、送りポンプの耐久性を一層よくすることができる。
本実施形態のインクジェット記録装置は、インク流路にインク中の異物を濾過するフィルターユニット(例えば、図2に示すフィルターユニット81)を備えることが好ましい。具体的には、フィルターユニット81は、インク流路51における脱気モジュール102とダンパーユニット84との間となる位置に、交換可能に設けられている。フィルターユニット81は、フィルター813と、フィルター813で区画されるサブタンク70側となる上流側フィルター室811と、吐出ヘッド60側となる下流側フィルター室812と、により構成され、上流側フィルター室811が下流側フィルター室812より重力方向上方となる姿勢でインク流路51の吐出ヘッド60のノズル面より上方となる位置に着脱可能に設けられている。図2のように吐出ヘッド60にヘッドフィルター83を設ける場合、フィルター813の濾過粒度はヘッドフィルター83の濾過粒度(例えば10μm~20μm)より小さく(例えば5μm)設定されており、フィルター面積も大きく設定されていることが好ましい。
本実施形態のインクジェット記録装置は、インク流路にインクの圧力変動を低減するダンパーユニット(例えば、図2に示すダンパーユニット84)を備えることが好ましい。具体的には、ダンパーユニット84は、インク流路51におけるフィルターユニット81と吐出ヘッド60との間であって、フィルターユニット81より重力方向下方でかつ吐出ヘッド60のノズル面より上方となる位置に、交換可能に設けられている。ダンパーユニット84のダンパー室(不図示)は、環状の内壁(ダンパー室の厚み方向となり約10mm)を間に挟んで対向する一対の可撓膜(EPDMで形成され直径約Φ35mm、厚さ約1mm)で形成され、可撓膜に対面する方向が水平方向となる姿勢で配置されている。可撓膜をEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)で形成することにより、実施形態のように紫外線硬化型インクを使用する場合も適度な膨潤を維持でき、ダンパー特性を損なわないことから可撓膜として好ましい。
インク流路は、インク循環路をさらに有し、インクジェット記録装置は、該インク循環路に脱気装置と、送りポンプとを備えることが好ましい。インク流路は、少なくとも一部にインク循環路を有することが好ましい。図2において、インク流路51はインク循環路80の一部を構成し、インク循環路80は、サブタンク70及び吐出ヘッド60に通じており、サブタンク70からインクが供給されて、当該インクを吐出ヘッド60に供給するものとすることができる。このように、インク循環路80によりインクを循環させることで、加温装置90で加温したインクの温度を一定にしたり、脱気効率をより高くしたり、インクを常に流動させて、インクに含まれる成分の沈降を防止したりすることができる。
本実施形態で用いるインクとしての紫外線硬化型インクジェット記録用インクは、重合禁止剤を含有し、必要に応じて以下に列記する各成分も含むことができる。紫外線硬化型インクジェット記録用インクは、上記インクジェット記録装置において、インク流路を流通して、ヘッドに供給され、該ヘッドより吐出されるものである。
本実施形態で用いるインクは、重合禁止剤としてヒンダードアミン化合物を含む。一般的に、紫外線硬化型インク中の溶存酸素量が低いほど、酸素によるインクの重合(暗反応)抑制の効果が得られにくい。また、p-メトキシフェノール(MEHQ)等の重合禁止剤は、溶存酸素が少ないと重合禁止剤として働かない。そのため、特に送りポンプとしてギアポンプを採用する場合、ギアポンプ内でインク組成物が固着する傾向にある。ところが、ヒンダードアミン化合物は酸素が少なくても重合禁止剤として働くため、溶存酸素量が少ない場合でもギアポンプ内でインク組成物が固着することを抑制することができる。
本実施形態のインク組成物は、重合禁止剤としてヒンダードアミン化合物以外のものをさらに含んでもよい。その他の重合禁止剤として、以下に限定されないが、例えば、p-メトキシフェノール(ヒドロキノンモノメチルエーテル:MEHQ)、ヒドロキノン、クレゾール、t-ブチルカテコール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-ブチルフェノール)、及び4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)が挙げられる。
本実施形態において送りポンプを含むインク流路中に流入するインクは、溶存酸素量が2~20ppmであることが好ましく、5~20ppmであることがより好ましく、10~20ppmであることがさらに好ましい。溶存酸素量が上記範囲であることにより、インク流路中にインク組成物が異物として析出したり、送りポンプ内でインク組成物が固着することをより抑制することができ、インクジェット記録装置は耐久性により優れる。なお、本明細書における溶存酸素量は、従来公知の方法により測定することができるが、後述の実施例において実施した実験における測定方法により得られた値を採用するものとする。溶存酸素量を所定の値とする脱気処理としては、特に限定されないが、例えば、減圧脱気などの脱気装置を用いる方法や、不活性ガスのバブリングが挙げられる。なお、送りポンプに流入されるインク組成物の溶存酸素量は、実施例に記載の方法により求めることができる。
本実施形態のインクは、光重合開始剤を含むことができる。光重合開始剤は、紫外線の照射による光重合によって、被記録媒体の表面に存在するインクを硬化させて印字を形成するために用いられる。本実施形態に係るインクジェット記録装置は、放射線のなかでも紫外線(UV)を用いることにより、安全性に優れ、且つ光源のコストを抑えることができるものとなる。光重合開始剤としては、光(紫外線)のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物の重合を開始させるものであれば制限はなく、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができる。このなかでも、光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。光ラジカル重合開始剤を用いると、酸素が少ない場合に重合が進行しやすい傾向にある。そのため、送りポンプのうち酸素が欠乏状態になりやすいギアポンプ内においてインクが増粘する傾向にあり、本実施形態の紫外線硬化型インクジェット記録装置が特に有用となる。
インクは重合性化合物を含んでもよい。重合性化合物は、単独で、又は光重合開始剤の作用により、光照射時に重合されて、印刷されたインクを硬化させることができる。重合性化合物としては、特に限定されないが、具体的には、従来公知の、単官能、2官能、及び3官能以上の多官能のモノマー及びオリゴマーが使用可能である。重合性化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。以下これら重合性化合物について例示する。
インクは、色材をさらに含んでもよい。色材は、顔料及び染料のうち少なくとも一方を用いることができる。
色材として顔料を用いることにより、インクの耐光性を向上させることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
色材として染料を用いることができる。染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能である。前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
インクが顔料を含む場合、顔料分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤として、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。その具体例として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、及びエポキシ樹脂のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。高分子分散剤の市販品として、味の素ファインテクノ社製のアジスパーシリーズ、アベシア(Avecia)社やノベオン(Noveon)社から入手可能なソルスパーズシリーズ(Solsperse 36000等)、BYKChemie社製のディスパービックシリーズ、楠本化成社製のディスパロンシリーズが挙げられる。
インクは、上記に挙げた添加剤以外の添加剤(成分)を含んでもよい。このような成分としては、特に制限されないが、例えば従来公知の、スリップ剤(界面活性剤)、重合促進剤、浸透促進剤、及び湿潤剤(保湿剤)、並びにその他の添加剤があり得る。上記のその他の添加剤として、例えば従来公知の、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤が挙げられる。
インクは、染料、及び必要に応じてその他の添加成分を均一に混合し、フィルターで不溶解物を除去することにより調製することができる。調整方法としては、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
次に、記録装置としてのプリンター1をメンテナンスするメンテナンス方法の一例である脱気モジュールの真空度調整について説明する。この脱気モジュールの真空度調整は、後述する脱気モジュールの真空度(絶対圧)とインク中の溶存酸素量との関係およびインク中の溶存酸素量と吐出安定性との関係に関する〔評価試験〕の実験結果に基づき、待機状態を含む上述の動作が実行される場合に、インク循環路80中のインクの溶存酸素量が、実行される動作状況に要求される濃度範囲となるように、制御部としてのコントローラー120が、圧力センサー1101で検出される圧力値に基づいて、真空度調整機構としての減圧ポンプ101を制御して、脱気モジュール102の真空度を調整するものである。
図4は脱気モジュール102の真空度(絶対圧)とインク中の溶存酸素量との関係を表した図であり、実験結果に基づくものである。なお、以下の説明では、便宜上、真空度(絶対圧)の数値が小さい場合を真空度が高い、真空度(絶対圧)の数値が大きい場合を真空度が低いという。
脱気モジュール102内の真空度が高ければ高いほど、当然のことながら、インクからより多くの空気が除去されることとなる。そして、空気中には一定の割合で酸素が含まれていることから、より多くの空気が除去されるほど、インク内の溶存酸素量が減少する。すなわち、真空度が高ければ高いほど、溶存酸素量は減少することとなる。よって、インク中の溶存酸素量を所定の範囲に調整する場合、予め実験等により求められた脱気モジュール102の真空度(絶対圧)とインク中の溶存酸素量との関係に基づいて、脱気モジュール102内の真空度が、溶存酸素量の所定の範囲の上限値に対応する脱気モジュール102内の真空度の低い側となる上限値と、溶存酸素量の所定の範囲の下限値に対応する脱気モジュール102内の真空度の高い側となる下限値との間となるように、減圧ポンプ101の駆動を制御すればよい。
例えば、オペレーターが、コンピューター130またはプリンター1の入力パネル(不図示)からプリンター1の設置場所における大気圧を入力可能にしておき、調整されるべき真空度(例えば絶対圧で25kPa)から入力された大気圧(例えば101kPa)を差し引いた値を調整されるべき真空度(この場合相対圧で-76kPa)とし、圧力センサー1101で検出される相対圧が調整されるべき真空度(相対圧)となるように、減圧ポンプ101の駆動制御を行う。
また、例えば、予め減圧ポンプ101の最大能力で脱気モジュール102の減圧を行った場合の到達絶対圧(例えば5kPa)を把握しておき、プリンター1の設置場所(例えば大気圧が95kPa)において、減圧ポンプ101の最大能力で脱気モジュール102の減圧を行ったときに圧力センサー1101で検出される相対圧を最大到達相対圧(この場合-90kPa)とした場合、調整されるべき真空度(例えば絶対圧で25kPa)と到達絶対圧(5kPa)との差分(20kPa)を、最大到達相対圧(-90kPa)に加算した値を調整されるべき真空度(この場合相対圧で-70kPa)とし、圧力センサー1101で検出される相対圧が調整されるべき真空度(相対圧)となるように、減圧ポンプ101の駆動制御を行う。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・吐出ヘッド60からインクを吐出しない待機状態であっても、電源OFF状態から電源ON状態になった直後の初期化動作が実行されているような場合は、脱気モジュール102の真空度の上限値と下限値の設定を、実行される動作がインク充填動作である場合と同じにして真空度調整を行ってもよい。
・ダンパーユニット84としてアキュムレーターを使用してもよい。
・加温装置90を備えなくてもよい。
以下、本発明の実施形態を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
〔色材〕
・C.I.ピグメントブラック7(Microlith Black C-K〔商品名〕、BASF社製、下記表では「ブラック顔料」と略記した。)
〔分散剤〕
・Solsperse 36000(Noveon社製商品名)
〔重合性化合物〕
・VEEA(アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、日本触媒社製商品名)
・PEA(フェノキシエチルアクリレート、大阪有機化学社(OSAKA ORGANIC CHEMICAL INDUSTRY LTD.)製商品名ビスコート#192)
・DPGDA(ジプロピレングリコールジアクリレート、サートマー社製商品名SR508)
〔ヒンダードアミン化合物(重合禁止剤)〕
・アデカスタブ LA-82(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、ADEKA社製商品名、下記表では「LA-82」と略記した。)
・アデカスタブ LA-7RD(2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル、ADEKA社製商品名、下記表では「LA-7RD」と略記した。)
・TINUVIN144(ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、BASF社製商品名)
〔重合禁止剤〕
・MEHQ(p-メトキシフェノール、東京化成工業社製)
〔光重合開始剤〕
(アシルフォスフィンオキサイド系化合物)
・IRGACURE 819(BASF社製商品名、固形分100%)
・DAROCUR TPO(BASF社製商品名、固形分100%)
(アセトフェノン系化合物)
・IRGACURE 369(BASF社製商品名、固形分100%)
インクジェットプリンター Surepress L‐4033A(セイコーエプソン社(Seiko Epson Corporation)製)を改造したもの(以下、改造機という。)を用いた。改造部分は、図2のように、供給ポンプ、インク循環路、インク循環路中に送りポンプ、加温装置、脱気装置、フィルターユニットを備えた点、ラインヘッドの被記録媒体搬送方向の下流側に光源を配置し、紫外線硬化型インクを使用した1パス印刷を可能とした点、ダンパーユニットを実験仕様に応じて追加した点、及び送りポンプの仕様を実験仕様に応じて変更した点である。以下説明する。
ギアポンプは、AK55F-S12C(アシスト社製商品名)を用い、図3に示す駆動ギア46を表1及び表2中の材料(PPS(ポリフェニレンサルファイド)またはセラミック(炭化珪素及び窒化珪素混合物)により構成されたものに取り換え、図2に示す送りポンプ82の位置に設置した。
脱気装置は、図2に示す脱気モジュール102を備えるものとした。また、加温装置は、温水タンクの温水を温水循環ポンプにより温調モジュールと温水タンクとの間で循環させつつ、温調モジュールによりインク循環路のインクを加温するものとした。
〔紫外線硬化型インクジェット記録用インクの作製〕
表1及び表2に記載の成分を、表1及び表2に記載の組成(単位は質量%)となるように添加し、これを撹拌機により撹拌することにより、紫外線硬化型インクジェット記録用インクを調製した。
送りポンプ82に流入する直前のインク循環路80から採取したインクの溶存酸素量を、ガスクロマトグラフィー Agilent 6890(アジレント・テクノロジー社製)を用いて測定し、溶存酸素量が表1及び表2の値になっていることを確認した。キャリアガスとしてはヘリウム(He)ガスを使用した。インクの溶存酸素量は所定の体積のインク(液体)中に溶存する酸素(気体)の体積をppmで示したものである。
インク流量210g/分で、改造機を用いて、各実施例及び各比較例のインクの送液を行なった。ギアポンプでは、ギアがロックし、流通させることができなくなるまでの時間、ダイアフラムポンプでは、ダイアフラムが破損し、流通させることができなくなるまでの時間を測定し、以下の評価基準により耐久性を評価した。なお、ロックしたギアポンプを分解して観察したところ、インクに由来すると思われる増粘物がギアの周囲に付着していた。また、流通中、ギアの係合部が発熱していることが観察された。
(評価基準)
A:2000時間より長い
B:500時間より長く2000時間以下
C:24時間より長く500時間以下
D:24時間以下
改造機を用いて、各実施例及び各比較例のインク組成物を、ヘッド1個(ノズル数600個)から吐出周波数10kHzで連続的に吐出させた。1分間の吐出ごとに不吐出ノズルの有無の検査を行い、不吐出ノズルが発見された時点の吐出時間の累積時間を連続吐出可能な時間として測定した。その時間に基づいて、以下の評価基準により吐出安定性を評価した。
(評価基準)
A:60分間超過
B:20分間超過60分間以下
C:10分間超過20分間以下
D:0分間超過10分間以下
改造機を用いて、各実施例及び各比較例のインクを、被記録媒体を搬送させながら、1つのノズルから被記録媒体(PET T50A PLシン リンテック)へ10分間連続的に吐出させ、ヘッドより搬送方向下流側に配置した光源(LED)から紫外線を照射し、被記録媒体に付着したインクを硬化させてドットを形成した。形成されたドットの列のドット径を測定し、平均ドット径に対する最大ドット径と最小ドット径との差の比を算出した。その比に基づいて、下記評価基準により吐出量安定性を評価した。
(評価基準)
A:5%以下
B:5%超過
バーコーターを用いて、各実施例及び各比較例のインクをPETフィルム(PET50A PLシン〔商品名〕、リンテック社製)上に塗布し、硬化後の厚さが10μmとなるインク塗膜を作製した。その後、照射強度が1,100mW/cm2であり且つ波長が395nmである紫外線を照射して、上記塗膜を硬化させた。硬化した塗膜(硬化膜)を、綿棒を用いて100g加重で10回擦り、傷が付かなくなる時点の硬化エネルギー(照射エネルギー)を求めた。
(評価基準)
A:200mJ/cm2以下
B:200mJ/cm2超過
また、比較例1と比較例3の比較により、インクが顔料を含むと、顔料が気泡核となって気泡の発生を誘発し、溶存酸素量が多い場合の吐出安定性が低下する場合があると推測した。着色に用いるためにインクに顔料を含む場合、吐出安定性をよくするために溶存酸素量を低くすることが必要であり、その場合、本発明が特に有用であることがわかった。
記録装置は、記録媒体にインクを吐出して記録可能に設けられる吐出ヘッドと、液体貯留部に貯留される前記インクを前記吐出ヘッドに供給可能に該液体貯留部と該吐出ヘッドとを接続するインク流路と、前記インク流路に交換可能に設けられ、前記インクを前記吐出ヘッドに向かって送出するように構成される送りポンプと、前記インク流路に設けられる脱気モジュールと、前記脱気モジュールの真空度を調整可能な真空度調整機構と、前記真空度調整機構を制御して、実行される動作状況に対応させて前記脱気モジュールの真空度を調整する制御部と、を備える。
Claims (8)
- 記録媒体にインクを吐出して記録可能に設けられる吐出ヘッドと、
液体貯留部に貯留される前記インクを前記吐出ヘッドに供給可能に該液体貯留部と該吐
出ヘッドとを接続するインク流路と、
前記インクを前記吐出ヘッドに向かって送出するように構成される送りポンプと、
前記インク流路に設けられる脱気モジュールと、
前記脱気モジュールの真空度を調整可能な真空度調整機構と、
前記真空度調整機構を制御して、実行される動作状況に対応させて前記脱気モジュール
の真空度を調整する制御部と、を備え、
前記インクは重合禁止剤を含有する紫外線硬化型インクであり、
前記制御部は、前記吐出ヘッドに前記インクを充填する場合の前記紫外線硬化型インク
中の溶存酸素量が10ppm以下になるように前記脱気モジュールの真空度を調整し、前
記記録媒体に記録する場合の前記紫外線硬化型インク中の溶存酸素量が10ppmより高
く20ppm以下になるように該脱気モジュールの真空度を調整することを特徴とする記
録装置。 - 前記制御部は、前記吐出ヘッドに前記インクを充填する場合の前記真空度が、該吐出ヘ
ッドが前記インクを吐出しないで待機している場合の前記真空度より高くなるように前記
脱気モジュールの真空度を調整することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。 - 記録媒体にインクを吐出して記録可能に設けられる吐出ヘッドと、
液体貯留部に貯留される前記インクを前記吐出ヘッドに供給可能に該液体貯留部と該吐
出ヘッドとを接続するインク流路と、
前記インクを前記吐出ヘッドに向かって送出するように構成される送りポンプと、
前記インク流路に設けられる脱気モジュールと、
前記脱気モジュールの真空度を調整可能な真空度調整機構と、
前記真空度調整機構を制御して、実行される動作状況に対応させて前記脱気モジュール
の真空度を調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記吐出ヘッドに前記インクを充填する場合の前記真空度が、該吐出ヘ
ッドが前記インクを吐出しないで待機している場合の前記真空度より高くなるように前記
脱気モジュールの真空度を調整することを特徴とする記録装置。 - 前記インクは重合禁止剤を含有する紫外線硬化型インクであり、
前記制御部は、前記吐出ヘッドに前記インクを充填する場合の前記紫外線硬化型インク
中の溶存酸素量が10ppm以下になるように前記脱気モジュールの真空度を調整し、前
記記録媒体に記録する場合の前記紫外線硬化型インク中の溶存酸素量が10ppmより高
く20ppm以下になるように該脱気モジュールの真空度を調整することを特徴とする請
求項3に記載の記録装置。 - 前記制御部は、前記吐出ヘッドが前記インクを吐出しないで待機している場合の前記真
空度の上限値が、前記吐出ヘッドが前記記録媒体に記録する場合の前記真空度の上限値よ
り低くなるように前記脱気モジュールの真空度を調整することを特徴とする請求項1から
請求項4のいずれか一項に記載の記録装置。 - 前記吐出ヘッドに供給される前記インクを前記液体貯留部に還流可能に該吐出ヘッドと
該液体貯留部とを接続するインク循環路と、
前記インク流路に交換可能に設けられるフィルターユニットと、
を備え、
前記インク流路において、前記脱気モジュールは前記送りポンプと前記吐出ヘッドとの
間となる位置に設けられており、前記フィルターユニットは該脱気モジュールと該吐出ヘ
ッドとの間となる位置に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれ
か一項に記載の記録装置。 - 前記送りポンプは前記インク流路の一部を構成し、少なくとも一部が可撓部材で形成さ
れるポンプ室の容積を変化させて前記インクを送出する容積式ポンプであり、
前記インク流路における前記送りポンプと前記吐出ヘッドとの間となる位置に、該イン
ク流路の一部を構成し、その壁の一部が可撓膜で形成されるダンパーユニットを備えるこ
とを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の記録装置。 - 記録媒体にインクを吐出して記録可能に設けられる吐出ヘッドと、
前記インクを前記吐出ヘッドに供給可能に該吐出ヘッドと接続されるインク流路と、
前記インク流路に交換可能に設けられ、前記インクを前記吐出ヘッドに向かって流動す
るように構成される送りポンプと、
前記インク流路に設けられる脱気モジュールと、
を備える記録装置のメンテナンス方法であって、
前記吐出ヘッドに前記インクを充填する場合の該脱気モジュールの真空度が、該吐出ヘ
ッドが前記インクを吐出しないで待機している場合の前記脱気モジュールの真空度より高
くなるように調整することを特徴とする記録装置のメンテナンス方法。
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