JP7192394B2 - 圧電アクチュエータ及びマニピュレータ - Google Patents
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Description
同文献記載の技術は、吸着ノズルと、吸着ノズルが先端に装着されるとともに軸受を介して回転駆動可能に支持された中空軸と、中空軸の側面に設けられて減圧源に接続される負圧吸引用のスイベルジョイント構造と、を有する。同文献記載の技術によれば、中空軸を回転させつつ、その先端の吸着ノズルによって微小で軽量な操作対象を吸着できる。
また、静電気等により目標以外の対象が吸着ノズルや操作対象に貼り付いてしまうという問題もある。したがって、同文献記載の技術では、所期のマテリアルハンドリングを行う上で未だ解決すべき課題が残されている。
なお、本明細書において、「微動」とは、「少し動かす」ことであって、例えば操作対象の位置を微調整するような用途に用いることをいう。よって、「振動」とは用途が異なるので、これらの語を区別している。
そして、本発明によれば、回転軸が回転状態および停止状態のいずれのときでも吸着ツールに負圧で吸引させるように負圧吸引機構が設けられている。そのため、回転軸先端の吸着用のツールは、負圧吸引により操作対象を吸着保持しつつ、圧電素子により軸方向に微動ないし振動できる。同時に、回転軸は、モータの駆動により回転して、操作対象を位置決めしたり、操作対象を連続して回転させたりすることができる。
よって、本発明によれば、吸着用のツールによる操作対象の吸着、及び、吸着用のツールの回転による操作対象の向きや姿勢の変更、並びに、圧電素子による微小な振動により操作対象の開放が可能になる。したがって、微小な操作対象であっても、所期のマテリアルハンドリングを行うことができる。
このような構成によれば、吸着用のツールは、ツール取付部に着脱可能に設けられるので、回転軸から容易に取り外すことができる。したがって、圧電アクチュエータの用途に応じて吸着用のツールを他のツールに交換したり、吸着用のツールの劣化に応じてツールを交換したりすることが容易となる。
このような構成であれば、回転軸が回転状態および停止状態のいずれのときでもツールに負圧で吸引させる構成として好適である。
このような構成であれば、回転軸が回転した際に、ツール先端の振れ回りを補正できるので、微小な操作対象に、所期のマテリアルハンドリングを行う上でより好適である。
このマニピュレータシステム10は、微小な操作対象Pが載置されるテーブル20と、テーブル20の上方中央に対向配置された顕微鏡ユニット12と、テーブル20の右上側方に配置された第一マニピュレータ14と、テーブル20の左上側方に配置された第二マニピュレータ16と、を備える。図2に示すように、本実施形態のマニピュレータシステム10は、コントローラ18によって制御される。
第一マニピュレータ14は、顕微鏡ユニット12の右側(図2における右側)に設けられた第一駆動装置30と、アーム状の圧電アクチュエータ50と、を有する。圧電アクチュエータ50は、第一駆動装置30に基端側が支持されて中央のテーブル20の側に斜めに張り出すように設けられている。第一駆動装置30は、コントローラ18に接続され、コントローラ18からの制御信号を受けて、圧電アクチュエータ50を、図1に示すX、YおよびZの各軸方向に3次元的に移動可能に構成されている。
また、圧電アクチュエータ50は、コントローラ18に接続され、コントローラ18からの制御信号を受けて、後述する回転軸54の微動ないし回転駆動、および、吸着ツール120による吸着およびその解放作動が可能に構成されている。
第二駆動装置34は、コントローラ18に接続され、コントローラ18からの制御信号を受けて、支持ツール32を、図1に示すX、YおよびZの各軸方向に3次元的に移動可能に構成されている。
なお、本実施形態においては、テーブル20も後述する情報入力部140への操作に基づくコントローラ18からの制御信号によってX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に3次元的に移動可能に構成される。但し、これに限らず、テーブル20は固定式のものであってもよく、作業者により手動で動かすものであってもよい。
本実施形態の圧電アクチュエータ50は、略角柱状のハウジング52を有する。ハウジング52には、回転軸54が回転自在に支持されている。ハウジング52の内部には、図5に示すように圧電素子68が内蔵され、回転軸54を軸方向に微動ないし振動可能になっている。
本実施形態のハウジング52は、ハウジング本体80と、ハウジング本体80の前端側に設けられたシールブロック82とを有して構成される。
シールブロック82は、ハウジング本体80の前端部に装着されて負圧吸引機構100を構成する。負圧吸引機構100は、微小な操作対象Pを吸着ツール120に負圧で吸引させるように設けられる。
ハウジング本体80は、内周面が円筒面状に形成され、先端側と後端側とが開口しているブロック状部材である。図5に示すように、ハウジング本体80には、2つの転がり軸受60,62が内蔵されている。回転軸54は、2つの転がり軸受60,62を介してハウジング52に回転自在に支持される。
ハウジング本体80は、先端側の開口部がシールブロック82によって塞がれ、後端側の開口部が間座70によって塞がれる。モータ72は、ハウジング52の後端側に間座70を介して設けられる。
この際、転がり軸受60の外輪端面とハウジング本体80の端面との間に適切な差幅が生じるように、各要素の軸方向寸法を設定する。これにより、転がり軸受60と転がり軸受62に適切な予圧が付与される。
各転がり軸受60,62は、それぞれの内輪60a,62aが、回転軸54の基端側に設けられた軸保持部56の外周面に嵌合される。また、各転がり軸受60,62は、それぞれの外輪60b,62bが、ハウジング本体80の内周面に嵌合され、回転軸54をハウジング52に対して回転自在に支持している。
回転軸54は、軸保持部56および二面幅部59がハウジング52に挿通され、シールブロック82が装着後に、ハウジング52の先端側から中空棒状部58が延出するように設けられる。
中空棒状部58の先端の拡径部分には、吸着ツール120が着脱可能に装着されるツール取付部54aが形成されている。ツール取付部54aの内面には、軸穴53と同軸に雌ねじ54bが形成されている。
内輪60a,62aと内輪間座64との、回転軸54への軸方向位置の固定は、回転軸54の軸保持部56の外周面先端側と後端側とにネジ加工を施し、この軸保持部56のネジ加工にロックナット90,96を螺合させて内輪60a,62aと内輪間座64とが固定される。
内輪60aと内輪間座64と内輪62aとは、隣接する部材同士が互いに当接した状態となっている。そして、2つのロックナット90,96によって、回転軸54の軸保持部56に対して、内輪60aと内輪間座64と内輪62aとが、回転軸54の軸方向に動かないように固定される。
また、軸ホルダのような別箇の部品を介在させずに、内輪60a,62a及び内輪間座64を回転軸54に直接嵌合させてもよい。また、例えばロックナット90,96のみを固定部材として使用してもよく、その他の方法により内輪60a,62aと内輪間座64とを、回転軸54の軸方向に動かないように固定してもよい。
スペーサカラー66の軸方向後端側には、転がり軸受60,62及びスペーサカラー66と同軸に、略円筒状の圧電素子68が配置されている。外輪62bとスペーサカラー66と圧電素子68とは、隣接する部材同士が互いに当接した状態となっている。換言すると、圧電素子68は、スペーサカラー66を介して間接的に外輪62bと当接している。圧電素子68の後端側には、間座70が配置されている。
詳しくは、間座70は、その中央部に、モータ72の出力軸72aが挿通される軸挿通孔70aを有する。間座70は、ハウジング52の後端面側を覆う蓋としても機能し、ハウジング本体80の後端に、ハウジング本体80の後側の開口を塞ぐように取り付けられる。
間座70に対して、締結具としてのネジ102,102によって、モータ72が取り付けられる。これにより、モータ72がハウジング52に固定される。モータ72の出力軸72aは、間座70の軸挿通孔70aに挿通される。
カップリング74の先端側の内面に、回転軸54の二面幅部59が軸方向にスライド移動可能に嵌合している。カップリング74の後端側の内周面には、モータ72の出力軸72aが嵌合している。回転軸54の後端面と、モータ72の出力軸72aの先端面との間には、所定の隙間Gが形成される。
つまり、回転軸54は、後述するように軸方向に変位するところ、カップリング74は、この変位量を吸収可能に、モータ72の出力軸72aと回転軸54とを接続している。
具体的には、カップリング74として、例えば、軸方向への弾性を有するカップリングを用いることで実現される。このような構成によれば、回転軸54がモータ72側およびモータ72とは逆側に向けて変位した際に、カップリング74が軸方向に弾性変形することにより、回転軸54の変位量を吸収できる。
ハウジング本体80の両端は、シールブロック82と間座70とによって塞がれている。間座70には、圧電素子68の後端面が当接している。シールブロック82には、転がり軸受60の外輪60bの前端面が当接している。また、シールブロック82は、転がり軸受60の内輪60aおよび回転軸54の軸保持部56には接しないようになっている。
これにより、シールブロック82を固定したときに、転がり軸受60と転がり軸受62とに、軸方向に沿った押圧力として予圧が付与されるとともに、圧電素子68にも予圧が付与される。そのため、転がり軸受60,62及び圧電素子68に所定の予圧が付与され、外輪60bと外輪62bとの間に軸方向間の距離としての隙間Tが形成される。
このように、本実施形態では、高剛性のばね要素である転がり軸受60、62で予圧を付与できるので、圧電素子68の予圧調整が容易であり、高い応答性を達成できる。
また、本実施形態では、圧電素子68は、スペーサカラー66を介して転がり軸受62の外輪62bと接しているので、外輪62bと同じ径の圧電素子や、所定の予圧を付与可能な寸法の圧電素子といった、特別な形状の圧電素子を用いる必要がない。
スペーサカラー66の形状を高精度とすれば、ハウジング52の内周面は、転がり軸受60、62と嵌合する程度の精度で形成されているので、圧電素子68の個体差がある場合にも、転がり軸受62を均等に押圧可能となる。なお、圧電素子68と、外輪62bとは、スペーサカラー66を介さずに直接当接していてもよい。
圧電素子は、ピエゾ素子ともいわれ、一般に、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する一方、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する。すなわち、圧電素子は、電圧を加えることで伸縮する一方、圧力を加えることで電圧を発生する。
圧電素子68に印加する電圧の電圧波形としては、例えば、正弦波、矩形波、三角波などを用いることができる。また圧電素子68に電圧を印加する方法としては、作業者が後述する操作ボタン144を押している間、信号波形を連続して出力する等してもよいし、バースト波形を使用してもよい。
例えば、圧電素子68に2xの伸びが生じたときには、この伸びによる押圧力は微動ないし振動制御を行う前の予圧荷重に加えて転がり軸受62の外輪62bを押圧し、転がり軸受62の外輪62bを軸方向に2xだけ移動させる。
逆に、圧電素子68が2x縮む(-2x変位する)と、転がり軸受62の外輪62bへの押圧力が減少し、転がり軸受62の外輪62bが-2xだけ変位する。この際、外輪60b,62b間の隙間Tが2x分広くなる。そうすると、転がり軸受60、62の弾性変形がそれぞれxずつ減少するように、内輪60aと内輪62aとが、外輪60bと外輪62bとのそれぞれに対して変位する。
なお、回転軸54のわずかな変位量は、例えば、数μm~数十μmとすることが考えられるが、圧電アクチュエータ50の用途に応じて圧電素子68及び印加電圧を選択し、サブミクロンオーダー等で動かすようにしてもよい。
例えば、転がり軸受60の剛性を転がり軸受62の剛性よりも小さくすることで、圧電素子68の伸縮量に対する回転軸54のわずかな変位量を大きくできる。また、逆に、転がり軸受60の剛性を転がり軸受62の剛性よりも大きくすることで、圧電素子68の伸縮量に対する回転軸54のわずかな変位量を小さくできる。
本実施形態では、回転軸54には、回転軸54の軸線に沿って軸穴53が先端から途中部分まで形成されている。軸穴53の先端は、吸着ツール120のノズル先端121sまで連通している。軸穴53の基端部には、横穴55が軸直方向に形成されている。
そして、シールブロック82には、回転軸54が回転状態および停止状態のいずれのときでも、吸着ツール120に負圧で吸引させるように、軸内の負圧用管路を吸引できるスイベルジョイント構造が設けられている。
さらに、シールブロック82には、継手78を有する減圧用ホルダ75が、シールブロック82の厚肉部分に付設されている。シールブロック82の厚肉部分と減圧用ホルダ75には、円環状空間83に連通する減圧路86が形成されている。
また、シールブロック82の内周面には、回転軸54の前後に離隔して円環状空間83をシールする2つの環状シール77が、回転軸54の外周面に摺接するように設けられている。本実施形態では、環状シール77として、Oリングが介装されている。
これにより、後述する、図6に示すコントローラ18の制御に応じて減圧装置76が稼動されると、減圧用配管に連通する減圧路86により円環状空間83が減圧される。これにより、円環状空間83に連通する横穴55および軸穴53を順に介し、吸着ツール120の先端に設けられた吸着ノズル121により、操作対象Pが負圧で吸引されるようになっている。
また、本実施形態の負圧吸引機構100であれば、回転軸54の途中部分を囲繞する円環状空間83と、円環状空間83の両側をシールする2つの環状シール77によりスイベルジョイント構造が構成されるので、極めて簡素に且つ安価にスイベルジョイント構造を設けることができる。
さらに、本実施形態では、シールブロック82を通った回転軸54の軸保持部56と中空棒状部58とが繋がる部分を覆う位置に、円筒状の芯出しリング92が取り付けられる。芯出しリング92は、回転軸54が回転した際に、吸着ツール120の先端が振れ回るのを補正する「振れ回り補正手段」として機能する。
これにより、回転軸54を弾性変形させて振れ幅を小さくする効果がある。次いで、固定ねじ95により芯出しリング92の基端側を軸保持部56の先端外周面に固定する。なお、固定ねじ95は、周方向に90°の位相に離隔した位置に2本設けられている。
この状態で、回転軸54を再び回転させて振れの状態を確認する。振れ幅が許容以内であれば、振れ幅補正が完了したと判断して、止めねじ94、固定ねじ95を本締めすることで固定する。
回転軸54の先端部にはツール取付部54aが形成されている。本実施形態では、ツール取付部54aには、操作対象に対して負圧により直接吸着作用するツールとして、操作対象Pを負圧で吸着するための吸着ツール120が着脱可能に装着される。
吸着ツール120は、ツール本体部120hの基端側に、鍔部120bが設けられるとともに、鍔部120bから後方に延びる装着部120aの外周面に雄ねじが形成されている。ツール本体部120hの先端側は円錐台状に徐々に縮径しており、その先端に中空円筒状の吸着ノズル121が同軸に設けられている。
本実施形態の吸着ツール120は、拡径部となっているツール取付部54aの雌ねじ54bに装着部120aが締め込まれ、鍔部120bが中空棒状部58の先端面に当接する位置で、回転軸54の先端部に着脱可能に装着される。
また、吸着ツール120は、図5(b)に示すように、吸着ツール120に替えて、加工ツール120Bに交換することにより、切削,切断等の用途にも使用できる。つまり、吸着ツール120は、吸着用としてのノズルの他、加工ツール120Bとして、例えば、刃や、針や、ドリル、砥石、フライス(エンドミル)等を換装できる。つまり、吸着ツール120や加工ツール120Bは、圧電アクチュエータ50の用途に応じて適宜選択できる。
また、このような構成においても、回転軸54は、軸保持部56から取り外し可能な構成を採用すれば、用途の変化や回転軸54の劣化等に応じて回転軸54を容易に交換できる。その際、回転軸54についても種々の態様のものを用いることができる。例えば、図5(b)に示す例では、回転軸54についてもねじ径が大型なものを装着して、その大型のねじに対応する加工ツール120Bに換装した例を示している。
コントローラ18は、演算手段としてのCPU(Central Processing Unit)及び記憶手段としてのハードディスク、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などのハードウエア資源を備え、所定のプログラムに基づいて各種の演算を行い、演算結果に従って各種の制御を行うように駆動指令を出力する。
コントローラ18は、第一マニピュレータ14及び第二マニピュレータ16を所定のシーケンスで自動的に駆動することも可能になっている。かかるシーケンス駆動は、コントローラ18が、所定のプログラムによるCPUの演算結果に基づいて、それぞれに駆動指令を順次に出力することで行われる。
また、ジョイスティック142に対応して、複数の操作ボタン144が設定される。例えば、圧電素子68の駆動に割り当てられた操作ボタン144を押すことで圧電素子68を伸縮させ、モータ72の駆動に割り当てられた操作ボタン144を押すことでモータ72を回転可能に構成される。
例えば、圧電素子68は、コントローラ18により制御される信号発生器130から発せられてアンプ132で増幅された電圧信号により駆動される。圧電素子68には、圧電素子68の駆動時にアンプ132から信号電圧が印加される一方、圧電素子68で発生する電圧に関する情報がコントローラ18に入力されるようになっている。
そして、コントローラ18は、圧電素子68に発生した電圧が例えば所定のレベルや電圧差以上となったときに、警告ランプ(不図示)を光らせたりスピーカー(不図示)から警告音を発したりして作業者に報知したり、吸着ツール120の駆動を停止するように制御したりする。
作業者は、テーブル20上に置かれた操作対象を表示部146で観察しながら、所望するハンドリング作業を行うことができるようになっている。なお、表示部146を介さず、顕微鏡22で拡大された操作対象を直接観察する構成としてもよい。また、表示部146をタッチパネルとし、情報入力部140としても機能する構成としてもよい。
具体的には、例えば、作業者が操作ボタン144を押下している間、モータ72が回転し、作業者が操作ボタン144の押下をやめるとモータ72の回転が停止するようになっている。しかし、例えば、吸着ツール120を所定角度回転させるためのプログラムや、吸着ツール120を所定長さ微動させるためのプログラムをコントローラ18等に記憶しておき当該プログラムに基づいて吸着ツール120を動かすように構成してもよい。
本実施形態では、マニピュレータシステム10においては、回転軸54のツール取付部54aには、吸着用のツールとして吸着ツール120が取り付けられる。
準備として、まず、テーブル20上に操作対象Pを載置し、操作対象Pが表示部146に表示されるように、操作対象Pの配置や顕微鏡ユニット12の設定を調整する。また、圧電アクチュエータ50及び支持ツール32をその基端部を中心に揺動させ、操作対象Pに対する角度を調整する。準備が完了したら、操作対象Pへのハンドリングを開始する。作業者は、基本的に表示部146を見ながらハンドリング操作を行う。
次いで、操作対象Pを吸着後に、図8(c)に示すように、マニピュレータシステム10のZ軸を上昇させて、操作対象Pを吸着状態で上方に持ち上げることができる。所望の位置に移動後、減圧装置76を停止し、操作対象を吸着ノズルから外すためにエア吸引を停止する。
これに対し、本実施形態の圧電アクチュエータ50では、圧電素子68を伸縮させ、回転軸54に微小な軸方向変位を与えることができる。これにより、吸着ツール120は、負圧吸引により操作対象Pを吸着保持およびその解放が可能であり、さらに、圧電素子68による軸方向変位により軸方向に微動ないし振動できる。
なお大抵は、負圧吸引を止めれば、操作対象Pは吸着ノズル121の吸着面121mから外れるので、毎回振動させて振り落とす必要はない。換言すれば、負圧吸引を止めても操作対象Pが吸着ノズル121の吸着面121mから外れない場合に限り、圧電素子68を駆動させればよい。
さらに、通常、操作対象Pを90°起き上がらせる必要がある場合、吸着ツール120ごと90°傾けなければならないが、例えば特許文献1に記載の技術では、図7に示す初期姿勢からではそのような操作は困難である。
これに対し、本実施形態のマニピュレータシステム10では、圧電アクチュエータ50の特徴である回転機能を使い、操作対象Pを吸着後に、マニピュレータシステム10のZ軸を上昇させ、その後に、吸着ツール120を180°回転することで、所期の姿勢に操作対象Pの姿勢を変更することが実現可能となる。また、これを繰り返すことで操作対象Pの姿勢(位相)を90°毎に変えることが容易に行える。
次いで、第一駆動装置30を駆動させ、吸着ノズル121の先端をテーブル20側に移動して、操作対象Pの下面の極近傍にテーブル20の載置面が位置するように、圧電アクチュエータ50を下方に移動させる。
次いで、第一駆動装置30を駆動させ、図9(e)に示すように、テーブル20から吸着ツール120を遠ざける。これにより、操作対象Pが吸着ツール120から解放されて、操作対象Pを所期の姿勢にてテーブル20の載置面上に載置させることができる(図9(d)から(e)参照)。
また、本実施形態の圧電アクチュエータ50によれば、圧電素子68が伸縮すると、転がり軸受62の外輪62bに加わる圧電素子68からの押圧力の変化により転がり軸受60,62が変形し、回転軸54が軸方向にわずかに変位する。また、モータ72が回転すると、この回転力が回転軸54を介して吸着ツール120に伝わり、吸着ツール120を回転させることができる。
また、カップリング74は、回転軸54の軸方向への変位量を吸収可能に、モータ72の出力軸72aと回転軸54とを接続しているので、回転軸54が圧電素子68の伸縮により軸方向に動いた場合に、モータ72に軸方向の負荷がかからない。さらに、モータ72と回転軸54とをカップリング74により接続しているので、モータ72や回転軸54の選択の幅が広がる。
そして、本実施形態の圧電アクチュエータ50によれば、回転軸54が回転状態および停止状態のいずれのときでも吸着ツール120に負圧で吸引させるように負圧吸引構造が設けられているので、回転軸54先端の吸着ツール120は、負圧吸引により操作対象を吸着保持しつつ、圧電素子68による転がり軸受の軸方向変位により軸方向に微動ないし振動できる。同時に、回転軸54は、モータ72により回転して、操作対象Pを位置決めしたり、操作対象Pを連続して回転させたりすることができる。
また、吸着ツール120は、ツール取付部54aに着脱可能に設けられるので、回転軸54から容易に取り外すことができる。したがって、圧電アクチュエータ50の用途に応じて吸着ツール120を他のツールとして加工ツール120Bに交換したり、吸着ツール120の劣化に応じて吸着ツール120を交換したりすることが容易となる。
つまり、回転軸54は、吸着ツール120での負圧吸引により操作対象Pを吸着保持しつつ、圧電素子68による転がり軸受60,62の軸方向変位により軸方向に微動ないし振動する。これと同時に、回転軸54は、モータ72により回転して、位置決めおよび連続回転が可能である。
なお、本発明に係る圧電アクチュエータおよびこれを備えるマニピュレータは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
例えば、マニピュレータ及びマニピュレータシステムは、上記実施形態の構成に限らず、主には吸着ツール120を適宜選択することで他の用途に用いることが可能である。
また、これらの場合に、圧電素子68は、微細な位置調整に用いてもよく、超音波振動を与えながら超音波加工をするのに用いてもよい。また、加工ツール120Bをホーンとし、操作対象のホーンが接する部分に圧電素子68の振動による超音波振動を与え、超音波溶着をするのに用いてもよい。
また、テーブル20の形態や、顕微鏡22の配置等は、マニピュレータ及びマニピュレータシステムの用途に応じて適宜選択できる。例えば穴あけ加工に用いる加工ツール120Bを装着する場合には、圧電アクチュエータ50の先端が下方を向くように配置し、顕微鏡が斜め下を向くように配置できる。また、圧電アクチュエータ50のX-Y-Z軸方向における可動範囲は、マニピュレータ及びマニピュレータシステムの用途に応じて適宜選択できる。
12 顕微鏡ユニット
14 第一マニピュレータ
16 第二マニピュレータ
18 コントローラ
20 テーブル
22 顕微鏡
24 カメラ
30 第一駆動装置
32 支持ツール
34 第二駆動装置
50 圧電アクチュエータ
52 ハウジング
53 軸穴
54 回転軸
54a ツール取付部
55 横穴
56 軸保持部
58 中空棒状部
59 二面幅部
60,62 転がり軸受
60a,62a 内輪
60b,62b 外輪
60c,62c 転動体
64 内輪間座
66 スペーサカラー
68 圧電素子
70 間座
70a 軸挿通孔
72 モータ
72a 出力軸
74 カップリング
76 減圧装置
77 環状シール
78 継手
80 ハウジング本体
82 シールブロック
82a 軸挿通孔
83 円環状空間
84、85 ネジ
86 減圧路
92 芯出しリング
90,96 ロックナット
94 止めねじ
100 負圧吸引機構
120 吸着ツール
120B 加工ツール
120a 装着部
120b 鍔部
120h ツール本体部
121 吸着ノズル
121s (吸着ノズルの)先端
121m (吸着ノズルの)吸着面
130 信号発生器
132 アンプ
140 情報入力部
142 ジョイスティック
144 操作ボタン
146 表示部
G 隙間
T 隙間
P 操作対象
Claims (4)
- ハウジングと、該ハウジングに回転自在に支持されるとともに操作対象を負圧で吸着する吸着用のツールが先端部に装着される回転軸と、前記ハウジングの後部に装着されて前記回転軸を回転させるモータと、前記ハウジングに内蔵されて前記回転軸を軸方向に微動ないし振動させる圧電素子と、前記回転軸が回転状態および停止状態のいずれのときでも前記ツールに負圧で吸引させるように前記圧電素子よりも前記ツール側であって前記回転軸の途中部分に設けられた負圧吸引機構と、を有し、
前記ハウジングは、前記回転軸を回転可能に支持する少なくとも2つの転がり軸受が内蔵されたハウジング本体と、該ハウジング本体の前端部に装着されて前記負圧吸引機構を構成するシールブロックと、を有し、
前記負圧吸引機構は、前記回転軸に軸線に沿って形成されて前記ツールの吸着部に連通する軸穴および該軸穴に連通する横穴と、前記シールブロックの内周面に前記回転軸の周囲を囲繞するように形成されるとともに前記横穴に連通する位置に形成された円環状空間と、前記シールブロックの内周面に前記回転軸の前後に離隔して前記円環状空間をシールするように設けられた2つの環状シールと、前記シールブロックに形成されて前記円環状空間に連通するとともに減圧用配管に接続される減圧路と、を有することを特徴とする圧電アクチュエータ。 - 前記シールブロックを通った前記回転軸の軸保持部と前記軸穴が内部を貫通する中空棒状部とが繋がる部分を覆う位置に、前記回転軸が回転した際に前記ツール先端の振れ回りを補正する円筒状の芯出しリングが取り付けられている請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
- 隣り合う前記転がり軸受の内輪の間に配置される内輪間座と、
前記内輪と前記内輪間座とを前記回転軸の軸方向に動かないように固定する固定部と、
前記隣り合う転がり軸受のうちの一方の外輪にスペーサカラーを介して間接的に当接されて前記転がり軸受の外輪に軸方向変位を付与するように前記軸方向に伸縮可能な前記圧電素子と、
前記モータの軸と前記回転軸とを接続するカップリングと、
を備え、
前記カップリングは、前記回転軸が前記圧電素子の伸縮により軸方向に動いたときの前記回転軸の前記軸方向への変位量を吸収可能に前記モータの軸と前記回転軸とを接続している請求項1または2に記載の圧電アクチュエータ。 - 請求項1~3のいずれか一項に記載の圧電アクチュエータを備えるマニピュレータ。
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