<第1実施形態>
以下、第1実施形態について、図1から図5を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一又は均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
第1実施形態では、内燃機関である車載多気筒4サイクルガソリンエンジンに、高圧燃料を供給する高圧燃料供給システムとして具現化される。この高圧燃料供給システムの概略構成図を図1に示す。
エンジン10の各気筒には、クランクシャフト11に連結されたピストンが収容されている。また、クランクシャフト11には、回転角センサ13が取り付けられている。回転角センサ13は、クランクシャフト11の回転に応じてパルス信号を出力し、この回転角センサ13からのクランク角信号に基づいて、エンジン回転速度Neが算出される。また、各クランクシャフト11の回転によって、カム12が駆動される。
エンジン10の各気筒には、燃料を各気筒内に直接噴射する燃料噴射装置42が設けられている。各気筒の燃料噴射装置42には、高圧燃料供給システムによって、高圧の燃料が供給される。
燃料を貯留する燃料タンク21内には、燃料をくみ上げて加圧する低圧ポンプ22が設けられている。低圧ポンプ22によって吐出される燃料の圧力は、レギュレータ等により例えば、300~400kPa程度に調圧される。そして、低圧ポンプ22から吐出された燃料は、燃料配管23を介して低圧室31に供給される。つまり、低圧ポンプ22により吐出された燃料は、低圧室31内に蓄えられる。
高圧ポンプ30は、カム12の回転に基づき往復運動するプランジャ32と、プランジャ32の往復運動により容積が可変になる加圧室33とを備えている。また、高圧ポンプ30は、ソレノイド34の駆動によって開閉する調量弁35を備えている。調量弁35は、低圧室31と加圧室33との間に配置され、両者の間の遮断及び連通を切り替える。調量弁35は、ノーマリークローズ式の開閉弁であって、ソレノイド34への通電によって開弁状態となる。ソレノイド34の通電は、ECU50によって制御される。
加圧室33内で加圧された燃料は、吐出弁36及び高圧配管41を通ってデリバリパイプ40へ供給される。吐出弁36は、加圧室33から高圧配管41の方向へのみ燃料を流通させる逆止弁であり、加圧室33内の燃料の圧力が所定の吐出圧以上になると開く。なお、デリバリパイプ40が、高圧状態で高圧燃料を蓄える蓄圧容器に相当する。
デリバリパイプ40は、高圧ポンプ30により吐出された高圧燃料を高圧状態で蓄える。リリーフ弁37は、高圧配管41に設けられており、デリバリパイプ40及び高圧配管41内の燃料の圧力が異常高圧となる場合に開いて、デリバリパイプ40内の燃料を低圧室31へ戻す。リリーフ弁37の開弁圧は、デリバリパイプ40の耐圧(レール耐圧)よりも低く、高圧燃料供給システムの予め定められた燃圧範囲よりも高い圧力に設定されている。なお、リリーフ弁37の開弁状態では、高圧燃料は低圧室31に戻されてもよいし、加圧室33に戻されてもよい。また、リリーフ弁37は、高圧経路上に設けられればよく、高圧配管41に設けられる構成、高圧ポンプ30に設けられる構成、デリバリパイプ40に設けられる構成のいずれであってもよい。
デリバリパイプ40には、気筒数分(例えば4つ)の燃料噴射装置42が取り付けられている。燃料噴射装置42は、デリバリパイプ40内の高圧燃料をエンジン10の気筒内に直接噴射する。燃料噴射装置42の駆動状態は、ECU50により制御される。
デリバリパイプ40には、デリバリパイプ40に蓄えられた高圧燃料の圧力である燃圧を検出する燃圧センサ43が設けられている。燃圧センサ43は、ECU50に接続されており、検出した燃圧(以下、検出燃圧Pmという)をECU50に出力する。なお、燃圧センサ43は、高圧配管41内の燃圧や、燃料噴射装置42内の燃圧を検出するものであってもよい。
ECU50は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等を有するマイクロコンピュータや駆動回路を備えている。ECU50は、エンジン10の運転状況に基づいて、デリバリパイプ40内の燃圧の目標値である目標燃圧Tfを設定するとともに、その目標燃圧Tfと燃圧センサ43により検出された検出燃圧Pm(実燃圧)との偏差に基づいて、高圧ポンプ30の吐出量をフィードバック制御する。なお、ECU50が「制御装置」に相当する。
高圧ポンプ30の吐出量を制御する方法について説明する。プランジャ32が下死点に向けて下降する下降期間において、調量弁35が開弁状態になっていることにより、低圧室31から加圧室33に燃料が吸入される。そして、プランジャ32が上死点に向けて上昇する上昇期間において、ソレノイド34により調量弁35の開弁状態が維持されると、加圧室33内の燃料が低圧室31側に押し戻される。そして、プランジャ32が上昇する途中で、調量弁35が閉弁状態になると、加圧室33の燃料が加圧され、吐出弁36を介して高圧燃料の吐出が行われる。つまり、プランジャ32の上昇する間に、調量弁35が開弁する時間、より具体的にはソレノイド34の通電時間を制御することで、高圧ポンプ30から吐出弁36を介して吐出される吐出量を制御することができる。
高圧ポンプ30、より具体的にはソレノイド34等の故障によって、ECU50からの駆動指令信号に基づいて調量弁35を開閉することができない故障が生じている場合について説明する。プランジャ32の下降期間では、加圧室33内の圧力が低下することに伴い調量弁35が開弁し、加圧室33内に低圧燃料が吸入される。その後、プランジャ32が上昇に転じると、加圧室33内の圧力上昇に伴い調量弁35が閉弁状態に戻り、その結果、加圧室33内の燃料が加圧され、吐出弁36を介して吐出される。この場合、プランジャ32の下降期間(吸入期間)では、略全期間にて加圧室33内に低圧燃料が吸入されるとともに、その略全ての燃料がプランジャ32の上昇期間(吐出期間)にて吐出されることから、いわゆるフル吐出異常となる。図2は、フル吐出異常状態でのデリバリパイプ40内の燃圧変化を説明するタイミングチャートである。
タイミングt1以前では、高圧ポンプ30が故障しておらず、デリバリパイプ40の燃圧が目標燃圧Tfに近い値となるよう高圧ポンプ30の吐出量が制御されている。タイミングt1の直前において高圧ポンプ30が故障することで、高圧ポンプ30がフル吐出異常状態になったとする。フル吐出異常状態では、高圧ポンプ30からの1回の吐出量が、燃料噴射装置42の1回の噴射量を上回っており、高圧ポンプ30による吐出毎にデリバリパイプ40内の燃圧が上昇している。
タイミングt2において、燃圧がリリーフ弁37の開弁圧に到達し、リリーフ弁37が開弁状態となる。リリーフ弁37が開弁状態となることで、高圧配管41の高圧燃料が低圧室31に戻り、デリバリパイプ40の燃圧が低下する。リリーフ弁37は、燃圧が開弁圧よりも低い閉弁圧となるまで開弁状態を維持するため、リリーフ弁37が開弁した後は、デリバリパイプ40内の燃圧が低下した状態が継続される。なお、リリーフ弁37が開弁した状態での燃圧は、高圧ポンプ30の吐出量と、燃料噴射装置42からの噴射量及びリリーフ弁37による減圧量とが釣り合う圧力に収束する。
ところで、高圧燃料供給システムにおいて、検出燃圧Pmと目標燃圧Tfとの間の乖離が所定時間以上継続した場合には、高圧燃料供給システムに異常が発生したとECU50で判定される。このような異常の原因としては、上述した高圧ポンプ30の故障の他、燃圧センサ43の故障、高圧配管41等からの燃料漏れ等が考えられる。これらの種々の故障原因の特定が図られることが、その後の修理の観点から望ましい。特に、高圧ポンプ30の不要な交換を抑制するために、高圧ポンプ30の故障かどうかを判定することができることが望ましい。
そこで、本実施形態では、高圧燃料供給システムに異常が発生した場合に、高圧ポンプ30に対する異常かどうかを判定するようにしている。まず、高圧燃料供給システムに異常が発生しているかの判定について、図3を用いて説明する。図3は、高圧燃料供給システムに異常が発生しているかを判定する燃圧異常判定処理を示すフローチャートであって、高圧ポンプ30が駆動されている間、ECU50により所定周期で繰り返し実行される。
ステップS10では、目標燃圧Tfに対する検出燃圧Pmの乖離量ΔPmを算出し、この値が所定値Th1よりも大きいか判定する。具体的には、目標燃圧Tfと検出燃圧Pmの差分の絶対値である乖離量ΔPmを算出する。そして、乖離量ΔPmが所定値Th1よりも大きいかを判定する。
そして、ステップS10で、乖離量ΔPmが所定値Th1よりも大きいと判定された場合には、ステップS11で、燃圧の乖離状態をカウントする燃圧乖離カウンタCo1の値をインクリメントする。具体的には、燃圧乖離カウンタCo1の前回値に1を加える。一方、ステップS10で、乖離量ΔPmが所定値Th1よりも小さいと判定された場合には、ステップS14で、燃圧乖離カウンタCo1の値を0にして、処理を終了する。
ステップS12で、燃圧乖離カウンタCo1の値が、異常判定値Th2よりも大きいか判定する。目標燃圧Tfを変更すると、目標燃圧Tfと検出燃圧Pmとの間に乖離量ΔPmが発生するが、故障でない場合には、この乖離量ΔPmは徐々に0に収束する。異常判定値Th2は、目標燃圧Tfを変更して検出燃圧Pmがその値に収束するまでにかかる時間よりも長い時間に設定されている。
ステップS12で、燃圧乖離カウンタCo1の値が、異常判定値Th2よりも小さいと判定した場合には、つまり乖離状態が所定時間継続していない場合には処理を終了する。一方、ステップS12で、燃圧乖離カウンタCo1の値が、異常判定値Th2よりも大きいと判定した場合には、つまり乖離状態が所定時間継続した場合には、ステップS13で、ポンプ停止フラグを1にして、高圧ポンプ30の駆動指令を停止する。そして、ステップS14で、燃圧乖離カウンタCo1の値を0にして、処理を終了する。なお、ステップS10~ステップS12までの処理が、「燃圧異常判定部」に相当し、ステップS13の処理が、「ポンプ停止部」に相当する。
次に、高圧ポンプ30に対する駆動指令が停止されている状態で、検出燃圧Pmが上昇変化することに基づいて、高圧ポンプ30に異常が生じていると判定する処理について、図4を用いて説明する。図4は、高圧ポンプ30に異常が発生しているかを判定するポンプ異常判定処理を示すフローチャートであって、ECU50により所定周期で繰り返し実行される。なお、図4に示す処理が、「ポンプ異常判定部」に相当する。
ステップS20では、ポンプ停止フラグが1か判定する。ポンプ停止フラグが1以外の場合、つまり図3の処理により高圧ポンプ30に対する駆動指令が停止されていない場合には、ステップS21で、燃圧上昇カウンタCo2の値を0にして、処理を終了する。
ポンプ停止フラグが1の場合、つまり図3のフローチャートにより高圧ポンプ30に対する駆動指令が停止されている場合には、ステップS22で、燃圧が上昇しているか判定する。具体的には、高圧ポンプ30の今回の吐出期間後の燃圧Pm(n)と前回の吐出期間後の燃圧Pm(n-1)との差分である燃圧変化量(Pm(n)-Pm(n-1))が、閾値Th3よりも大きいか判定する。閾値Th3は、燃圧上昇量に判定余裕度を加味した値に設定する。ここで、燃圧上昇量は、体積弾性係数に燃料供給量を乗算し、デリバリパイプ40及び高圧配管41の容積で割った値として算出できる。燃料供給量は、高圧ポンプ30の吐出量から燃料噴射装置42での噴射量及びリーク量を減算した値として算出できる。なお、閾値Th3は、予め定めた所定値としてもよい。
燃圧変化量が閾値Th3よりも小さい場合には、ステップS21で、燃圧上昇カウンタCo2の値を0にして、処理を終了する。一方、燃圧変化量が閾値Th3よりも大きい場合には、ステップS23で、燃圧が上昇した回数をカウントする燃圧上昇カウンタCo2の値をインクリメントする。具体的には、燃圧上昇カウンタCo2の前回値に1を加える。
ステップS24では、燃圧上昇カウンタCo2の値が所定回数Th4より大きいか判定する。所定回数Th4は、2以上の回数で設定するとよい。燃料噴射装置42が噴射不能となった場合には、吐出期間後の燃圧上昇が生じることがある。複数回連続して燃圧が上昇することを確認することで、ノイズ等による燃料噴射装置42の噴射不能等他の要因による燃圧上昇を省くことができる。また、失火情報に基づいて、噴射不能の可能性のある状態を燃圧上昇のカウントから省いてもよい。なお、吐出期間後の燃圧上昇が複数回生じたことを判定するのではなく、燃圧が一定期間所定の速度で上昇しているかを判定することで、燃圧が上昇変化しているかを判定してもよい。
ステップS24で、燃圧上昇カウンタCo2の値が、所定回数Th4よりも小さいと判定した場合には、つまり吐出期間後の燃圧上昇が複数回生じていない場合には処理を終了する。一方、ステップS24で、燃圧上昇カウンタCo2の値が、所定回数Th4よりも大きいと判定した場合、つまり吐出期間後の燃圧上昇が複数回連続して生じた場合には、ステップS25に進む。
ステップS25では、検出燃圧Pmが判定圧Th5より大きいか判定する。判定圧Th5は、検出燃圧Pmが通常では到達しない燃圧であって、高圧燃料供給システムの燃圧フィードバック制御の燃圧範囲、つまり高圧燃料供給システムで用いることができる範囲の燃圧よりも高圧で、かつリリーフ弁37の開弁圧よりも低い値に設定されている。なお、ステップS25については、省略してもよい。
ステップS25で、検出燃圧Pmが判定圧Th5より小さいと判定した場合には、処理を終了する。一方、ステップS25で、検出燃圧Pmが判定圧Th5より大きいと判定した場合には、ステップS26で、ポンプ異常フラグを1にして、つまり高圧ポンプ30に異常が生じていると判定して、処理を終了する。
図5は、本実施形態の燃圧異常判定処理及びポンプ異常判定処理のタイムチャートである。なお、図5では、エンジン回転速度Neが一定に保たれる状態での、燃圧の変化を示している。
タイミングt11よりも前に高圧ポンプ30が故障しており、高圧ポンプ30がフル吐出異常状態になったとする。これにより、タイミングt11からデリバリパイプ40内の燃圧が上昇し始め、目標燃圧Tfに対する検出燃圧Pmの乖離量ΔPmが所定値Th1よりも大きくなり、燃圧乖離カウンタCo1のインクリメントが開始される。
タイミングt12において、燃圧乖離カウンタCo1の値が異常判定値Th2よりも大きくなると、燃圧異常が発生したと判定され、ポンプ停止フラグが1となり、高圧ポンプ30の駆動指令が停止される。また、高圧ポンプ30が停止された状態で、燃圧変化量(Pm(n)-Pm(n-1))が閾値Th3よりも大きい、つまり燃圧が上昇しているため、燃圧上昇カウンタCo2がインクリメントされる。
タイミングt13で、燃圧上昇カウンタCo2の値が所定回数Th4よりも大きくなり、かつタイミングt14で、検出燃圧Pmが判定圧Th5を超えて高燃圧状態になると、高圧ポンプ30に異常が生じていると判定され、ポンプ異常フラグが1となる。このように検出燃圧Pmがフィードバック範囲より高い判定圧Th5になった場合に、高圧ポンプ30に異常が有ると判定する。
タイミングt15において、デリバリパイプ40の燃圧が開弁圧を超えると、リリーフ弁37が開弁状態となる。これにより、リリーフ弁37を介して高圧配管41及びデリバリパイプ40内の燃料が低圧室31に戻される。そして、デリバリパイプ40内の燃圧は、高圧ポンプ30の吐出量と、燃料噴射装置42からの噴射量及びリリーフ弁37による減圧量とが釣り合う圧力に収束する。
以上説明した本実施形態では以下の効果を奏する。
高圧燃料供給システムでは、目標燃圧Tfと燃圧センサ43での検出燃圧Pmとに乖離が生じている場合には、燃圧異常が発生していると判定する。燃圧異常が発生している場合には、高圧ポンプ30への駆動指令を停止する。しかしながら、フル吐出異常等、高圧ポンプ30の故障の場合には、駆動指令を停止しても、高圧ポンプ30から高圧の燃料が吐出されることが考えられる。そのため、高圧ポンプ30に対する駆動指令を停止しているにも関わらず、検出燃圧Pmが上昇変化することに基づいて、高圧ポンプ30に異常が有ることを判定する。これにより、故障個所を特定することができ、修理等を実行しやすくなる。
高圧ポンプ30に対する駆動指令が停止されている状態で、検出燃圧Pmが上昇変化しており、かつ高圧燃料供給システムで予め定められた燃圧範囲よりも高圧な判定圧Th5に達した場合には、高圧ポンプ30に異常が有ることを判定する。このように、燃圧が判定圧Th5まで上昇したことを判定要件に加えることにより、燃圧上昇の傾きだけで判定するよりも判定精度を向上できる。
<第2実施形態>
第2実施形態においては、高圧ポンプ30が停止される前と停止された後とで、異なる判定方法により高圧ポンプ30に異常が生じているかを判定するようにしている。以下、図6~図8を参照して、詳しく説明する。
高圧ポンプ30がフル吐出異常状態になった場合、リリーフ弁37の開弁状態となった場合の目標燃圧Tfへの収束性に基づいて、高圧ポンプ30に異常が生じていると判定されることが望ましい。より具体的には、燃圧がリリーフ弁37の開弁圧まで上昇し、かつ検出燃圧Pmが目標燃圧Tfに収束しないことに基づいて、高圧ポンプ30に異常が生じていると判定される。しかしながら、エンジン回転速度Neが低い場合等、燃圧の上昇が遅い場合には、リリーフ弁37が開弁する前に、高圧ポンプ30が停止してしまう。この点、本実施形態では、高圧ポンプ30が停止される前と停止された後とで、異なる判定方法により高圧ポンプ30に異常が生じているかを判定している。具体的な方法について、図6を用いて説明する。図6は、本実施形態におけるポンプ異常判定処理を示すフローチャートであって、図4の処理に置き換えて実行される。なお、図6に示すフローチャートの処理が、「ポンプ異常判定部」に相当する。
ステップS20で、図3の処理によりポンプ停止フラグが1になっているか判定する。ポンプ停止フラグが1以外の場合、つまり高圧ポンプ30が駆動中で、フィードバック制御されている場合、ステップS30で、フィードバック制御時の高圧ポンプ30の異常判定を行う。
図7は、ステップS30の処理を詳細に説明するフローチャートである。なお、図7に示すフローチャートの処理が「第1判定」に相当する。
まず、ステップS31で、判定実施フラグが0であるか判定する。判定実施フラグは、フィードバック制御状態下において高圧ポンプ30の異常判定を実施していることを示すフラグである。判定実施フラグは、当初は0であり、検出燃圧Pmが判定圧Th5を超えたと判定されることで1にセットする。判定実施フラグが0である場合には、ステップS32に進み、判定実施フラグが0ではない場合(判定実施フラグが1の場合)には、ステップS41に進む。
ステップS32で、検出燃圧Pmが判定圧Th5より大きいか判定する。検出燃圧Pmがフィードバック制御の燃圧範囲よりも高圧になることで、高圧ポンプ30に異常が生じていると推定される。ステップS33で、検出燃圧Pmが判定圧Th5より大きいと判定した場合、ステップS33に進み、ステップS32で、検出燃圧Pmが判定圧Th5よりも小さいと判定した場合には、処理を終了する。
ステップS32で、検出燃圧Pmが判定圧Th5より大きいと判定した場合、つまり、所定の高圧状態になった場合、ステップS33で、判定実施フラグを1にセットして、処理を終了する。判定実施フラグを1にセットすることで、高圧ポンプ30の異常判定を実施していることを示している。また、ステップS32で、判定実施フラグを1にセットすると同時に、目標燃圧TfをTf1に設定する。本実施形態では、検出燃圧Pmが上昇して所定の高圧状態になった場合に、目標燃圧Tfをフィードバック制御の燃圧範囲の最大値であるTf1に切り替える。なお、Tf1は、リリーフ弁37の開弁後の収束圧力よりも高く判定圧Th5より低ければ、他の値でもよい。
ステップS31で、判定実施フラグが1である、つまり高圧ポンプ30の異常判定を実施していると判定されると、ステップS41で、検出燃圧Pmが判定圧Th5より小さくなっているか判定する。検出燃圧Pmが判定圧Th5を超えた後、燃圧がリリーフ弁37の開弁圧まで上昇しリリーフ弁37が開弁すると、検出燃圧Pmが判定圧Th5まで下がってくる。また、検出燃圧Pmが判定圧Th5まで上昇したのが一時的な不良だった場合には、目標燃圧Tf1に収束するために、検出燃圧Pmが判定圧Th5よりも低くなる。そのため、ステップS41で、検出燃圧Pmが判定圧Th5より小さいかを判定し、以下のステップS42~ステップS48でその後の検出燃圧Pmを確認することで、一時的な検出不良等だったのかリリーフ弁37が開弁したのかを判定する。なお、ステップS41で、検出燃圧Pmが判定圧Th5よりも大きいと判定された場合には、処理を終了する。
ステップS42で、目標燃圧Tfに対する検出燃圧Pmの乖離量ΔPmが所定値よりも大きいか判定する。具体的には、検出燃圧Pmと目標燃圧Tf(Tf1)との差分の絶対値が所定値よりも大きいか判定する。
ステップS42で、目標燃圧Tfに対する検出燃圧Pmの乖離量ΔPmが所定値よりも大きいと判定した場合には、目標燃圧Tf1に燃圧が収束しない異常状態であると判定し、ステップS43で、異常カウンタCo3の値をインクリメントする。具体的には、異常カウンタCo3の前回値に1を加える。
そして、ステップS44で、異常カウンタCo3の値が所定値Th6より大きいか判定する。所定値Th6は、目標燃圧Tf1に収束するのかしないのかが判断できる程度の時間に設定するとよい。ステップS44で、異常カウンタCo3が所定値Th6より小さいと判定した場合、処理を終了する。ステップS44で、異常カウンタCo3が所定値Th6より大きいと判定した場合、ステップS45に進む。
ステップS44で、異常カウンタCo3が所定値Th6より大きいと判定した場合、つまりリリーフ弁37が開弁されたと判定した場合には、ステップS45で、ポンプ異常フラグを1にして、つまり高圧ポンプ30に異常が生じていると判定し、処理を終了する。また、ステップS45で、ポンプ異常フラグを1にすると同時に、判定実施フラグを0にし、異常カウンタCo3及び後述する正常カウンタを0にリセットして、ポンプ異常の検出処理の終了処理を行う。また、ステップS45で、目標燃圧TfをTf2に設定することが望ましい。Tf2は、フィートバック制御の燃圧範囲の下限値、または、低圧ポンプ22から供給される燃料の圧力(レギュレータの設定圧)である。なお、目標燃圧Tfを変更せずに、処理を終了してもよい。
一方、ステップS42で、目標燃圧Tfに対する検出燃圧Pmの乖離量ΔPmが所定値よりも小さいと判定した場合には、目標燃圧Tf(Tf1)に燃圧が収束していると判定し、ステップS46で、正常カウンタの値をインクリメントする。具体的には、正常カウンタの前回値に1を加える。
そして、ステップS47で、正常カウンタの値が所定値より大きいか判定する。正常カウンタの所定値は、目標燃圧Tf1に収束するのかしないのかが判断できる程度の時間であって、所定値Th6と同じであってもよいし、異なっていてもよい。ステップS47で、正常カウンタが所定値より小さいと判定した場合、処理を終了する。ステップS47で、正常カウンタが所定値より大きいと判定した場合、ステップS48に進む。
ステップS47で、正常カウンタが所定値より大きいと判定した場合、つまり一時的な検出不良等であったと判定した場合には、ステップS48で、目標燃圧Tfをエンジン回転数などに基づいて設定する通常のフィードバック制御に復帰して、処理を終了する。また、ステップS48で、フィードバック制御に復帰すると同時に、判定実施フラグを0にし、異常カウンタCo3及び正常カウンタを0にリセットして、ポンプ異常の検出処理の終了処理を行う。
図6のフローチャートに戻り、ステップS20で、ポンプ停止フラグが1になっていると判定した場合には、ステップS21~ステップS26を実行して、処理を終了する。なお、これら各ステップの詳細は、図4と同じであるため、説明を省略する。また、このステップS21~ステップS26が、「第2判定」に相当する。なお、第1判定の途中でポンプ停止フラグが1になった場合には、第2判定、つまりステップS21~ステップS26を実施して、高圧ポンプ30に異常が生じているか判定する。
図8は、本実施形態の燃圧異常判定処理及びポンプ異常判定処理のタイムチャートである。図8(a)は、エンジン回転速度Neが高い場合のタイムチャートを示しており、図8(b)は、エンジン回転速度Neが低い場合のタイムチャートを示している。図8(a)では、第1判定が行われ、図8(b)では、第2判定が行われる。
まず、エンジン回転速度Neが高い場合について、図8(a)を用いて説明する。タイミングt21よりも前に高圧ポンプ30が故障しており、高圧ポンプ30がフル吐出異常状態になったとする。これにより、デリバリパイプ40内の燃圧が上昇し始め、目標燃圧Tfに対する検出燃圧Pmの乖離量ΔPmが所定値Th1よりも大きくなり、燃圧乖離カウンタCo1がインクリメントされる。
エンジン回転速度Neが高いと、高圧ポンプ30からの吐出間隔が短くなり、また、吐出間隔が短いためにリーク量も少なくなり、燃圧が急速に上昇する。これにより、タイミングt22では、燃圧異常であると判定される前、すなわち、ポンプ異常フラグが1になる前に、検出燃圧Pmが判定圧Th5を超えて高圧状態になる。検出燃圧Pmが判定圧Th5を超えて高圧状態になったと判定されると、判定実施フラグが1にセットされ、目標燃圧TfがTf1に変更される。
高圧状態になってからも燃圧が上昇し、デリバリパイプ40の燃圧が開弁圧を超えると、リリーフ弁37が開弁状態となり、燃圧が下がる。タイミングt23で目標燃圧Tf(Tf1)まで検出燃圧Pmが下がると、目標燃圧Tf(Tf1)に対する検出燃圧Pmの乖離量ΔPmを算出し、乖離量ΔPmが所定値より大きいと異常カウンタCo3がインクリメントされる。なお、リリーフ弁37の開弁時の収束燃圧に下がる途中で、一時的に検出燃圧Pmが目標燃圧Tf(Tf1)に一致して、乖離量ΔPmが所定値よりも小さくなる。このような場合には、異常カウンタCo3はインクリメントされず、リセットもされないで値を保持する。
タイミングt24で、異常カウンタCo3が所定値Th6まで上昇すると、リリーフ弁37が開弁され、高圧ポンプ30に異常が生じていると判定され、ポンプ異常フラグが1となる。また、判定実施フラグ、異常カウンタCo3及び図示しない正常カウンタが0にリセットされる。
そして、タイミングt25において、燃圧乖離カウンタCo1の値が異常判定値Th2よりも大きくなると、燃圧異常が発生したと判定され、ポンプ停止フラグが1となり、高圧ポンプ30の駆動指令が停止される。高圧ポンプ30の駆動指令の停止前に、燃圧が判定圧Th5まで上昇した場合には、リリーフ弁37の開弁前後の燃圧の追従性に基づいて、高圧ポンプ30に異常が生じているかを判定する。このように追従性に基づいて判定を行うことで、正確な判定を行うことができる。
次に、エンジン回転速度Neが低い場合について、図8(b)を用いて説明する。タイミングt31よりも前に高圧ポンプ30が故障しており、高圧ポンプ30がフル吐出異常状態になったとする。これにより、デリバリパイプ40内の燃圧が上昇し始め、目標燃圧Tfに対する検出燃圧Pmの乖離量ΔPmが所定値Th1よりも大きくなり、燃圧乖離カウンタCo1がインクリメントされる。
エンジン回転速度Neが低いと、高圧ポンプ30からの吐出間隔が長くなり、また、吐出間隔が長いためにリーク量も多くなり、燃圧がゆるやかに上昇する。これにより、タイミングt32において、燃圧乖離カウンタCo1の値が異常判定値Th2よりも大きくなると、燃圧異常が発生したと判定され、ポンプ停止フラグが1となり、高圧ポンプ30の駆動指令が停止される。
そして、高圧ポンプ30の駆動指令が停止されると、第2判定が実行される。具体的には、高圧ポンプ30が停止された状態で、燃圧が上昇しているため、燃圧上昇カウンタCo2がインクリメントされる。そして、燃圧上昇カウンタCo2がインクリメントされている途中で、タイミングt33で、検出燃圧Pmが判定圧Th5を超える。検出燃圧Pmが判定圧Th5を超えた状態で、タイミングt34で、燃圧上昇カウンタCo2の値が所定回数Th4よりも大きくなると、高圧ポンプ30に異常が生じていると判定され、ポンプ異常フラグが1となる。このように高圧ポンプ30の駆動指令の停止中であっても、高圧ポンプ30の異常を判定することができる。
第2実施形態の高圧燃料供給システムにおいて、燃圧フィードバック制御が実施されている状態で、燃圧がリリーフ弁37の開弁圧まで上昇し、かつ検出燃圧Pmが目標燃圧Tfに収束しないことに基づいて、ポンプ異常が判定される(第1判定)。しかしながら、高圧ポンプ30の異常時において、例えば、低回転等により燃圧の上昇が遅いと、第1判定を行う前に、高圧ポンプ30が停止してしまう。この点、第1判定に加えて、高圧ポンプ30が停止状態であっても高圧ポンプ30の異常を判定できる第2判定を有している。これにより、高圧ポンプ30が停止前であっても、停止後であっても高圧ポンプ30の異常を判定することができる。
<第3実施形態>
第3実施形態においては、高圧ポンプ30が駆動中に、高圧ポンプ30に異常が生じているかを判定している。以下、図9及び図10を参照して、詳しく説明する。
高圧燃料供給システムでは、燃圧センサ43で検出した検出燃圧Pmを目標燃圧Tfに一致するように制御するために、高圧ポンプ30の吐出量が算出され、この吐出量に基づいて調量弁35が制御される。燃圧センサ43で検出した検出燃圧Pmが、目標燃圧Tfと一致している場合には、高圧ポンプ30からの吐出量と、燃料噴射装置42からの噴射量とは略一致する。
高圧ポンプ30がフル吐出異常状態になった場合には、燃料噴射装置42の噴射量よりも高圧ポンプ30からの吐出量の方が大きくなり、燃圧が上昇する。これにより、フィードバック制御により定められた吐出量が、燃料噴射装置42からの噴射量と同じか少なくなるように制御されているにも関わらず、燃圧の上昇があった場合には、高圧ポンプ30に異常があると判定される。具体的な判定方法について、図9を用いて説明する。図9は、高圧ポンプ30に異常が発生しているかを判定するポンプ異常判定処理を示すフローチャートであって、ECU50により所定周期で繰り返し実行される。なお、図9に示すフローチャートの処理が、「ポンプ異常判定部」に相当する。なお、本実施形態においては、図3に示す燃圧異常判定処理は、行ってもよいし行わなくてもよい。
ステップS51で、検出燃圧Pmが燃圧閾値Th7よりも大きいか判定する。そして、検出燃圧Pmが燃圧閾値Th7より小さい場合には、ステップS52で、燃圧上昇カウンタCo2の値を0にして、処理を終了する。
検出燃圧Pmが燃圧閾値Th7より大きい場合には、ステップS53で、燃圧が上昇しているか判定する。具体的には、高圧ポンプ30の今回の吐出期間後の燃圧Pm(n)と前回の吐出期間後の燃圧Pm(n-1)との差分である燃圧変化量(Pm(n)-Pm(n-1))が、閾値Th3よりも大きいか判定する。
燃圧変化量が閾値Th3よりも小さい場合には、ステップS52で、燃圧上昇カウンタCo2の値を0にして、処理を終了する。一方、燃圧変化量が閾値Th3よりも大きい場合には、ステップS54で、燃圧上昇カウンタCo2の値をインクリメントする。具体的には、燃圧上昇カウンタCo2の前回値に1を加える。
ステップS55では、燃圧上昇カウンタCo2の値が所定回数Th4より大きいか判定する。所定回数Th4は、2以上の回数で設定するとよい。また、吐出期間後の燃圧上昇が複数回生じたことを判定するのではなく、燃圧が一定期間所定の速度で上昇しているかを判定することで、燃圧が上昇変化しているかを判定してもよい。
ステップS55で、燃圧上昇カウンタCo2の値が、所定回数Th4よりも小さいと判定した場合には、つまり吐出期間後の燃圧上昇が複数回生じていない場合には処理を終了する。一方、ステップS55で、燃圧上昇カウンタCo2の値が、所定回数Th4よりも大きいと判定した場合、つまり吐出期間後の燃圧上昇が複数回生じた場合には、ステップS56に進む。
ステップS56で、検出燃圧Pmと目標燃圧Tfとの乖離量ΔPmが所定値Th8より大きいか判定する。ステップS56で、検出燃圧Pmと目標燃圧Tfとの乖離量ΔPmが所定値Th8より小さいと判定した場合には、処理を終了する。一方、ステップS56で、検出燃圧Pmと目標燃圧Tfとの乖離が所定値Th8より大きいと判定した場合には、ステップS57で、ポンプ異常フラグを1にして、つまり高圧ポンプ30に異常が生じていると判定して、処理を終了する。
図10は、本実施形態のポンプ異常判定処理のタイムチャートである。なお、図10では、高圧ポンプ30からの吐出量が、燃料噴射装置42からの噴射量と略一致し、デリバリパイプ40内が一定の燃圧で維持されるように制御されている。
タイミングt41よりも前に高圧ポンプ30が故障しており、高圧ポンプ30がフル吐出異常状態になったとする。これにより、デリバリパイプ40内の燃圧が上昇し始める。タイミングt42において、検出燃圧Pmが燃圧閾値Th7より大きくなり、燃圧変化量(Pm(n)-Pm(n-1))が閾値Th3よりも大きい、つまり燃圧が上昇しているため、燃圧上昇カウンタCo2がインクリメントされる。
タイミングt43で、燃圧上昇カウンタCo2の値が所定回数Th4よりも大きくなり、検出燃圧Pmと目標燃圧Tfとの乖離量ΔPmが所定値Th8より大きくなると、高圧ポンプ30に異常が生じていると判定され、ポンプ異常フラグが1となる。このように高圧ポンプ30からの吐出量が、燃料噴射装置42からの噴射量と同じか少なくなるように制御されている際に、燃圧上昇することに基づいて、判定を行うことで、リリーフ弁37の開弁前に高圧ポンプ30の異常を判定できる。
そして、タイミングt44において、デリバリパイプ40の燃圧が開弁圧を超えると、リリーフ弁37が開弁状態となる。これにより、リリーフ弁37を介して高圧配管41及びデリバリパイプ40内の燃料が低圧室31に戻される。そして、デリバリパイプ40内の燃圧は、高圧ポンプ30の吐出量と、燃料噴射装置42からの噴射量及びリリーフ弁37による減圧量とが釣り合う圧力に収束する。
第3実施形態の高圧燃料供給システムでは、燃圧センサ43で検出した検出燃圧Pmを目標燃圧Tfにするために、高圧ポンプ30の吐出量が算出され、この吐出量を高圧ポンプ30が吐出することで、目標燃圧Tfに近づけられる。燃圧センサ43で検出した燃圧が、目標燃圧Tfと一致している場合又は目標燃圧Tfよりも高い場合には、高圧ポンプ30からの吐出量が、燃料噴射装置42からの噴射量と同じか少なくなる。高圧ポンプ30からの吐出量が、燃料噴射装置42からの噴射量と同じか少ない状態で、検出燃圧Pmが上昇変化することに基づいて、高圧ポンプ30に異常が生じていることを判定する。そのため、故障個所を特定することができ、修理等を実行しやすくなる。
<他の実施形態>
本発明は、上記実施形態に限定されず、例えば以下のように実施してもよい。ちなみに、以下の別例の構成を、上記実施形態の構成に対して、個別に適用してもよく、また、任意に組み合わせて適用してもよい。
・第1実施形態及び第2実施形態のポンプ異常判定において、検出燃圧Pmが判定圧Th5より大きいかの判定を検出燃圧Pmが上昇変化しているかの判定よりも先に行ってもよい。具体的には、図4及び図6において、ステップS25をステップS22よりも先に行ってもよい。
・エンジン10として、ガソリンを燃料に用いる直噴エンジンに限らず、エタノール等を燃料に用いる直噴エンジンや、コモンレールを備えるディーゼルエンジンを採用することもできる。