JP7191183B1 - 作業機械 - Google Patents
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Abstract
【課題】車体安定性を維持し、車体不安定による生産性の低下を抑制できる作業機械を提供する。【解決手段】作業機械1では、履帯21の走行平面S上において履帯21から一定距離離れた走行予測点P1を通るとともに走行平面Sに対して最大登坂角度θと同じ角度を有する直線を第1直線L1、測距センサ6の取付位置と走行予測点P1とを結ぶ直線を第2直線L2としたときに、測距センサ6は、第1直線L1よりも上方に位置し、その取付位置から第2直線L2上の地面までの距離を計測する。制御装置5は、測距センサ6の計測結果と旋回角度センサ8の検出結果とに基づいて走行予測領域Tの高さH1を算出し、算出した走行予測領域Tの高さH1と走行平面Sの高さH2との高低差H3が閾値以上であるか否かを判定し、高低差が閾値以上であると判定した場合に通知装置7を作動させる。【選択図】図1
Description
本発明は、油圧ショベルなどの作業機械に関する。
例えば鉱山で稼働する油圧ショベルなどの作業機械は、高低差の多い場所で昼夜問わず掘削作業および積込作業を行っている。このような環境では、粉塵が舞うことが多く、夜間の作業現場が暗いので、油圧ショベルの運転席からの視界が悪い問題が生じている。これに加え、鉱山で稼働する油圧ショベルは車体サイズが大きいので、運転席から足元の走行履帯周辺が見えづらい。このため、足元の大きな段差に気づかずに走行すると、履帯が段差に落ちたり油圧ショベルが段差から転落したりし、車体安定性を維持できない場合がある。車体が不安定になると、作業の中断を招き、生産性が低下してしまう。
そこで、作業機械の車体安定性を維持する技術として、例えば下記特許文献1に開示された油圧ショベルが検討されている。すなわち、油圧ショベルのフロント装置に鉛直下方の地面までの距離を計測する測距センサを設け、下部走行体の接地面の高さから測距センサの鉛直下方に位置する地点の高さを差し引いて高低差を求め、求めた高低差が閾値より大きい場合に油圧ショベルの走行を制限する。このようにすることで、車体安定性の維持を図ろうとしている。
しかし、上記特許文献1に開示された油圧ショベルでは、測距センサは、フロント装置の姿勢に関わらず鉛直下方を向くようにフロント装置に回転可能に取り付けられているため、フロント装置の動作中に測距センサの回転方向に振動する。このような回転揺れによってノイズが発生し、距離を正確に計測し難い問題がある。距離を正確に計測するために、例えばフロント装置の動作を減速または停止する際に行うことが考えられるが、フロント装置を減速又は停止すると、作業機械の生産性に影響してしまう。従って、特許文献1に記載の油圧ショベルには、改善の余地があった。
本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、車体安定性を維持し、車体不安定による生産性の低下を抑制できる作業機械を提供することを目的とする。
本発明に係る作業機械は、履帯を有する下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に設けられた上部旋回体とを備えた作業機械であって、前記上部旋回体に取り付けられた少なくとも1つの測距センサと、前記上部旋回体と前記下部走行体との相対旋回角度を検出する旋回角度センサと、前記作業機械のオペレータに情報を通知する通知装置と、前記下部走行体と前記通知装置とを制御する制御装置と、を備え、前記履帯の走行平面上において前記履帯から一定距離離れた走行予測点を通るとともに前記履帯の走行平面に対して前記作業機械の最大登坂角度に対応する角度を有する直線を第1直線、前記測距センサの取付位置と前記走行予測点とを結ぶ直線を第2直線としたときに、前記測距センサは、前記第1直線よりも上方に位置し、その取付位置から前記第2直線上の地面までの距離を計測し、前記測距センサが計測した地面の領域を走行予測領域としたときに、前記制御装置は、前記測距センサの計測結果と前記旋回角度センサの検出結果とに基づいて前記走行予測領域の高さを算出し、算出した前記走行予測領域の高さと前記履帯の走行平面の高さとの高低差が予め設定された閾値以上であるか否かを判定し、前記高低差が前記閾値以上であると判定した場合に前記通知装置を作動させることを特徴としている。
本発明に係る作業機械では、履帯の走行平面上において履帯から一定距離離れた走行予測点を通るとともに履帯の走行平面に対して作業機械の最大登坂角度に対応する角度を有する直線を第1直線、測距センサの取付位置と走行予測点とを結ぶ直線を第2直線としたときに、測距センサは、第1直線よりも上方に位置するように上部旋回体に取り付けられ、その取付位置から第2直線上の地面までの距離を計測する。このようにすれば、測距センサは最大登坂角度より大きい角度で距離を計測できるため、高低差が最大登坂角度を超える段差を確実に検出することができる。また、高低差が閾値以上であると判定した場合、制御装置は通知装置を作動させることで、通知装置を介して作業機械のオペレータにその情報を知らせることができる。その結果、運転席からの視界が悪い場合であっても、走行予測領域に段差があることをオペレータに気づかせることができる。これによって、履帯が段差に落ちたり作業機械が段差から転落したりすることを防ぐことができるので、作業機械の車体安定性を維持することができ、車体不安定による生産性の低下を抑制することができる。
本発明によれば、車体安定性を維持し、車体不安定による生産性の低下を抑制することができる。
以下、図面を参照して本発明に係る作業機械の実施形態について説明する。図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、重複説明は省略する。また、以下では、作業機械として油圧ショベルの例を挙げて説明するが、本発明は油圧ショベルに限定されず、クローラクレーンなどの作業機械にも適用される。更に、以下の説明では、上下、左右、前後の方向及び位置は、油圧ショベルの通常の使用状態、すなわち下部走行体が地面に接地した状態を基準とする。
[第1実施形態]
図1は第1実施形態に係る作業機械を示す側面図である。本実施形態の作業機械1は、例えば油圧ショベルであって、動力系により走行する下部走行体2と、下部走行体2に対して左右方向に旋回自在に取り付けられた上部旋回体3と、上部旋回体3に取り付けられるとともに掘削などの作業を行うフロント装置4とを備えている。本実施形態では、下部走行体2及び上部旋回体3は作業機械1の車体を構成する。
図1は第1実施形態に係る作業機械を示す側面図である。本実施形態の作業機械1は、例えば油圧ショベルであって、動力系により走行する下部走行体2と、下部走行体2に対して左右方向に旋回自在に取り付けられた上部旋回体3と、上部旋回体3に取り付けられるとともに掘削などの作業を行うフロント装置4とを備えている。本実施形態では、下部走行体2及び上部旋回体3は作業機械1の車体を構成する。
下部走行体2は、左右一対の履帯21と、一対の履帯21をそれぞれ駆動する走行モータ(図示せず)と、走行モータなどを制御する走行制御器22とを有する。走行モータは、走行制御器22の指令に従って左右の履帯21をそれぞれ駆動する。これによって、下部走行体2は前進又は後進、左折又は右折、或いは超信地旋回(定置旋回ともいう)することができる。そして、走行制御器22は、後述する制御装置5と電気的に接続され、制御装置5からの走行制御指令に従って走行モータの駆動などを制御する。ここで、超信地旋回とは、左右の履帯21をそれぞれ逆方向に回転することでその場で下部走行体2を旋回させることを意味する。
上部旋回体3は、運転室31、及び機械室32を有する。運転室31は、例えば上部旋回体3の左側部に配置されており、その中にはオペレータが着席した状態で作業機械1の各操作を行うための運転席が設けられている。機械室32は、例えば運転室31の後方に配置されている。上部旋回体3には、旋回モータ(図示せず)が配置されている。旋回モータを駆動すると、上部旋回体3は下部走行体2に対して旋回動作することができる。
フロント装置4は、上部旋回体3に対して上下方向に回動可能に形成されている。フロント装置4は、上部旋回体3に連結されたブーム41と、ブーム41に連結されたアーム42と、アーム42に連結されたバケット43と、ブーム41を駆動するブームシリンダ44と、アーム42を駆動するアームシリンダ45と、バケットリンクなどを介してバケット43を駆動するバケットシリンダ46とを有する。
また、作業機械1は、上部旋回体3と下部走行体2との相対旋回角度を検出する旋回角度センサ8と、作業機械1のオペレータに情報を通知する通知装置7と、上部旋回体の前方に取り付けられた測距センサ6と、作業機械1の各制御を行う制御装置5とを備えている。
旋回角度センサ8は、例えばロータリーエンコーダなどにより形成され、下部走行体2に対する上部旋回体3の旋回角度を計測し、計測した結果を制御装置5に出力する。
通知装置7は、例えばモニタとスピーカーなどにより形成され、運転室31内に配置されている。通知装置7は、制御装置5と電気的に接続され、制御装置5からの通知制御指令に従って文字又は音声を介してオペレータに情報を通知する。本実施形態では、通知装置7は、モニタからなる表示部9(後述する)を有する。
測距センサ6は、例えば1D~3DタイプのLiDAR、ミリ波レーダ、又はステレオカメラなどにより形成されている。測距センサ6は、上部旋回体3(ここでは、運転室31のフロントガラスの外側)に取り付けられている。
本実施形態では、測距センサ6の取付位置及び計測位置は次のように定められている。すなわち、図1に示すように、作業機械1の履帯21の走行平面S上において履帯21から一定距離D1離れた走行予測点P1を通るとともに履帯21の走行平面Sに対して作業機械1の最大登坂角度θと同じ角度を有する直線を第1直線L1、測距センサ6の取付位置と走行予測点P1とを結ぶ直線を第2直線L2としたときに、測距センサ6は、第1直線L1よりも上方に位置するように上部旋回体3に取り付けられ、その取付位置から第2直線L2上の地面までの距離を計測する。
ここで、走行平面Sは、履帯21が直進する場合の仮想平面である。走行予測点P1は、走行平面S上に存在する点状の領域であって、履帯21の先端(ここでは、前端)から一定距離D1離れた領域である。走行予測点P1の位置(言い換えれば、距離D1)は、例えば制御装置5が走行制御器22へ停止指令を送信してから作業機械1が停止するまでの応答時間に車体の最大走行速度をかけて得られた値、すなわち制動距離に基づいて定められている。なお、該走行予測点P1の位置(言い換えれば、距離D1)は、制動距離よりも大きくなってもよい。
最大登坂角度θは、作業機械1が登坂可能な斜面Fの最大角度であり、作業機械1の仕様値(登坂能力)に基づいて設定されているが、仕様値に対し安全マージンを設けるように設定されてもよい。すなわち、最大登坂角度θを仕様値と同じになるように設定してもよく、安全性を重視して仕様値より小さく設定してもよい。第1直線L1は、走行予測点P1を通る直線であって、走行平面Sに対して最大登坂角度θと同じ角度を有する直線である。そして、測距センサ6は、第1直線L1よりも上方に位置しており、上部旋回体3に取り付けられている。測距センサ6は、その取付位置から第2直線L2に沿って地面までの距離、すなわち第2直線L2と斜面Fとの交わる場所までの距離を計測し、計測した結果を制御装置5に出力する。
本実施形態では、測距センサ6が計測した地面の領域を走行予測領域Tとする。走行予測領域Tは、様々な形状を有する領域であり、例えば作業機械1の周囲に点在する複数の点状の領域でもよく、連続した点からなる線状(例えば直線状や曲線状)の領域でもよく、又は作業機械1を取り囲むように連続した点からなる環状(例えば円環状や多角環状)の領域であってもよい。走行予測領域Tの形状については後述する。
制御装置5は、例えば算出を実行するCPU(Central Processing Unit)と、算出のためのプログラムを記録した二次記憶装置としてのROM(Read Only Memory)と、算出経過の保存や一時的な制御変数を保存する一時記憶装置としてのRAM(Random Access Memory)とを組み合わせてなるマイクロコンピュータにより構成されており、記憶されたプログラムの実行によって作業機械1の各制御を行う。
図2は制御装置を示す機能ブロック図である。図2に示すように、制御装置5は、地形形状取得部51、高低差算出部52、判定部53、発報部54及び走行制御部55を有する。地形形状取得部51は、測距センサ6により計測された距離と旋回角度センサ8により計測された角度とに基づいて、走行予測領域Tの地形形状を取得する。
高低差算出部52は、地形形状取得部51で取得した走行予測領域Tの地形形状に基づいて、走行予測領域Tの高さH1(図1参照)を算出する。また、高低差算出部52は、走行平面Sの高さH2(図1参照)と上記算出した走行予測領域Tの高さH1との差(高低差H3(図1参照))を算出する。なお、高さH1及びH2は、測距センサ6の取付位置を基準としており、測距センサ6により計測された距離と走行平面Sに対する第2直線L2の傾斜角度とに基づいてそれぞれ算出される。
判定部53は、高低差算出部52で算出した高低差が予め設定された閾値以上であるか否かを判定する。閾値は、例えば作業機械1が踏破可能な高低差の仕様値などに基づいて設定されている。また、この判定部53は、上記高低差が閾値以上であるか否かの判定結果に基づいて、段差検出フラグを設定する。具体的には、上記高低差が閾値以上であると判定した場合、判定部53は、走行予測領域Tに段差が検出されたものとして「段差検出フラグ」を「真」に設定する。一方、上記高低差が閾値よりも小さい場合、判定部53は、「段差検出フラグ」を「偽」に設定する。なお、本実施形態でいう「段差」は、上述の通り、走行平面Sの高さH2と走行予測領域Tの高さH1との差(高低差H3)が閾値以上のものを指す。
発報部54は、上記高低差が閾値以上であると判定された場合に、通知装置7を作動させる指令を発する。すなわち発報部54は、上記高低差が閾値以上であると判定された場合のみ、通知装置7に指令を出力する。走行制御部55は、上記高低差が閾値以上であると判定された場合、下部走行体2の走行を直ちに減速して停止するように走行制御器22に指令を出力する。
以下、図3を基に制御装置5の制御処理を説明する。
ステップS1では、地形形状取得部51は、測距センサ6の計測結果と旋回角度センサ8の検出結果とに基づいて、走行予測領域Tの地形形状を取得する。
ステップS1に続くステップS2では、高低差算出部52は、ステップS1で取得した走行予測領域Tの地形形状に基づいて走行予測領域Tの高さH1を算出する。走行予測領域Tの高さH1は、例えば走行予測領域Tの地形形状の高さの平均値である。
ステップS2に続くステップS3では、高低差算出部52は、予め計測された走行平面Sの高さH2とステップS2で算出した走行予測領域Tの高さH1との差(高低差H3)を算出し、算出した高低差を判定部53に出力する。そして、判定部53は、高低差算出部52で算出した高低差と予め設定された閾値とを比較し、算出した高低差が閾値以上であるか否かを判定する。
算出した高低差が閾値より小さいと判定された場合、制御処理はステップS4に進む。ステップS4では、判定部53は、走行予測領域Tに段差がないと判定するとともに、「段差検出フラグ」を「偽」に設定する。これによって、制御処理が終了する。
一方、ステップS3において、算出した高低差が閾値以上であると判定された場合、制御処理はステップS5に進む。ステップS5では、判定部53は、走行予測領域Tに段差がある(言い換えれば、段差が検出された)と判定するとともに「段差検出フラグ」を「真」に設定する。
ステップS5に続くステップS6では、発報部54は、「真」の段差検出フラグを受け取り、通知装置7を作動させる指令を通知装置7に出力する。この場合、通知装置7は、発報部54からの指令に従って、文字表示又は音声などを介してオペレータに走行予測領域Tに段差が検出されたことを知らせる。
ステップS6に続くステップS7では、走行制御部55は、下部走行体2の走行を直ちに減速して停止させる指令を走行制御器22に出力する。ステップS7が終わると、一連の制御処理が終了する。
なお、上述の制御処理において、ステップS6及びステップS7は同時に行われてもよい。すなわち、「真」の段差検出フラグを受け取ると、発報部54は通知装置7に出力すると同時に、走行制御部55は減速して停止させる指令を走行制御器22に出力する。このように「真」の段差検出フラグを受け取ると、走行制御器22への停止指令を直ちに出力することで、タイムラグが生じずに作業機械1の停止を直ちに実施できるので、作業機械1の安全性を高めることができる。なお、この場合、図2に示す判定部53は、走行制御部55にも出力できるように走行制御部55と直接接続すればよい。
また、上述の制御処理において、高低差が閾値以上であると判定した場合に、制御装置5は、走行停止(ステップS7)に代えて、高低差が閾値よりも小さい方向に走行するように下部走行体2を制御してもよい。例えば作業機械1の前方に段差が検出され、かつ作業機械1の後方に段差が検出されていない場合、制御装置5は、下部走行体2の後方への走行を許可し、下部走行体2を後方に走行させるように制御する。このようにすれば、車体安定性を維持できるとともに、作業機械1の走行停止を回避することができる。
本実施形態の作業機械1では、作業機械1の履帯21の走行平面S上において履帯21から一定距離D1離れた走行予測点P1を通るとともに履帯21の走行平面Sに対して作業機械1の最大登坂角度θと同じ角度を有する直線を第1直線L1、測距センサ6の取付位置と走行予測点P1とを結ぶ直線を第2直線L2としたときに、測距センサ6は、第1直線L1よりも上方に位置するように上部旋回体3に取り付けられ、その取付位置から第2直線L2上の地面までの距離を計測する。このようにすれば、測距センサ6は最大登坂角度θより大きい角度で距離を計測できるため、高低差が最大登坂角度θを超える段差を確実に検出することができる。
また、高低差が閾値以上であると判定した場合、制御装置5は通知装置7を作動させることで、通知装置7を介して作業機械1のオペレータにその情報を知らせることができる。その結果、運転席からの視界が悪い場合であっても、走行予測領域Tに段差があることをオペレータに気づかせることができる。従って、オペレータは作業機械1を停止することにより、履帯21が段差に落ちたり作業機械1が段差から転落したりすることを防ぐことができるので、作業機械1の車体安定性を維持することができ、車体不安定による生産性の低下を抑制することができる。
また、高低差が閾値以上であると判定した場合に、制御装置5は下部走行体2の走行を停止するように制御する。このようにすることで、仮にオペレータが通知装置7を介して段差が検出されたことに気づいたが、迅速に作業機械1を停止しない場合或いは何らかの原因でそのまま走行を操作した場合であっても、下部走行体2をすみやかに減速して停止することで、作業機械1が不安定な状態に陥ることを防止できる。従って、車体安定性を維持し、車体不安定による生産性の低下を確実に抑制することができる。
更に、測距センサ6が上部旋回体3に取り付けられているので、従来のようにフロント装置4に取り付けられた場合と比べて、回転揺れによる計測精度への影響を確実に抑えることができる。
上述したように、走行予測領域Tは様々な形状を有する。以下、図4に示す4つの代表例(T1~T4)を説明する。
まず、図4に示す走行予測領域T1は、最も基本的な走行予測領域であり、下部走行体2の前後方向上の複数の点状の領域として設定されている。具体的には、走行予測領域T1は、左右の履帯21の前後一箇所ずつ、計4つの点状の領域からなる。従って、制御装置5の地形形状取得部51は、4つの点状の領域のそれぞれの地形形状を取得する。このようにすれば、下部走行体2の前後方向において、作業機械1の目前にある段差を検出することが可能である。なお、履帯21の後方の走行予測領域T1を計測する際に、上部旋回体3を後方に旋回させて測距センサ6を用いて計測すればよい。
また、図4に示す走行予測領域T2は、下部走行体2の左右方向に沿う複数の線状の領域として設定されている。具体的には、走行予測領域T2は、左右の履帯21の前後一本ずつ、計4本の直線状の領域からなる。そして、各領域の長さは例えば履帯21の幅に合わせるようにしてもよい。このようにすれば、制御装置5の地形形状取得部51は左右の履帯21の前後に履帯21の幅に合わせた地形形状を取得する。このようにすれば、地形形状の高さとして走行予測領域T2の地形形状の高さの平均値を用いることができるので、地形の凹凸などによる影響及び測距センサ6の計測ノイズの影響などを抑制でき、高低差を高精度に算出することができる。なお、履帯21の後方の走行予測領域T2を計測する際に、上部旋回体3を後方に旋回させて測距センサ6を用いて計測すればよい。
図4に示す走行予測領域T3は、下部走行体2を取り囲むような環状の領域として設定されている。具体的には、走行予測領域T3は、下部走行体2を取り囲むように円環状又は楕円環状の領域となっている。この場合、制御装置5の地形形状取得部51は、下部走行体2の周囲全周の地形形状を取得する。このようにすれば、下部走行体2の側方にある段差も検出することができる。従って、例えば下部走行体2を超信地旋回する際に、下部走行体2の側方にある段差に履帯21が落ちて車体が不安定になるような状況を防ぐことができる。なお、履帯21の側方及び後方の走行予測領域T3を計測する際に、上部旋回体3を旋回しながら測距センサ6を用いて計測すればよい。
また、図4に示す走行予測領域T4は、下部走行体2の前後方向に沿う複数の線状の領域によって形成されている。具体的には、走行予測領域T4は、左右の履帯21の走行方向に延びる2本の直線状の領域からなる。この場合、制御装置5の地形形状取得部51は、下部走行体2の前後方向に対して直線的に地形形状を取得する。このようにすれば、走行予測点P1より遠方の段差を検出することが可能である。なお、履帯21の後方の走行予測領域T4を計測する際に、上部旋回体3を後方に旋回させて測距センサ6を用いて計測すればよい。
また、走行予測領域が下部走行体2を中心に前方に延びる複数の放射線の領域の集合である扇状の領域であってもよい。例えば、上部旋回体3を扇状に旋回しながら測距センサ6で走行予測点P1より遠方の領域を計測することで、作業機械1の前方にある一定範囲の段差を検出することが可能である。このようにすれば、例えば図5に示すように、検出した段差の位置を示す稜線10及び作業機械1の位置をともに通知装置7の表示部9に表示させることで、オペレータが遠方の段差の状況を早く気づくことができ、段差の状況も把握し易い。
なお、測距センサ6の計測範囲が点状、線状、面状であるかによって、走行予測領域T1~T4の地形形状を取得する条件が変わる。例えば走行予測領域T1の場合、測距センサ6の計測範囲が点状、線状、面状のいずれであっても走行予測領域T1の地形形状を取得することが可能であるが、走行予測領域T4の場合は測距センサ6の計測範囲が線状又は面状である必要がある。
また、走行予測領域T2及びT3の場合、測距センサ6の計測範囲が点状、線状、面状のいずれであっても走行予測領域T2及びT3の地形形状を取得することが可能である。例えば測距センサ6の計測範囲が点であるとき、上部旋回体3を旋回しながら測距センサ6が連続的に距離を測定し(言い換えれば、連続した点になるように距離を測定し)、旋回角度センサ8により計測した旋回角度と組み合わせることで、走行予測領域T2及びT3の地形形状を取得することができる。
[第2実施形態]
以下、図6を基に作業機械1の第2実施形態を説明する。第2実施形態の作業機械1は、遠隔操作に適用される点において上記第1実施形態と相違している。ここでは、その相違点によって上記第1実施形態との異なる内容のみを説明する。
以下、図6を基に作業機械1の第2実施形態を説明する。第2実施形態の作業機械1は、遠隔操作に適用される点において上記第1実施形態と相違している。ここでは、その相違点によって上記第1実施形態との異なる内容のみを説明する。
図6に示すように、第2実施形態の作業機械1は、作業機械1から離れた場所に配置されて制御装置5に操作指令を送信可能に構成された遠隔操作装置11と、遠隔操作装置11からの操作指令を送信する無線送信機12と、上部旋回体3に配置されて無線送信機12から送信された指令を受信する無線受信機13とを更に備えている。無線受信機13は、受信した指令を制御装置5に出力する。
第2実施形態では、測距センサ6は、上部旋回体3(ここでは、運転室31のフロントガラスの外側)に取り付けられているが、その取付位置及び計測位置は次のように定められている。すなわち、履帯21の走行平面S上において走行予測点P1より作業機械1に対して遠方にある遠隔操作走行予測点P2を通るとともに履帯21の走行平面Sに対して最大登坂角度θと同じ角度又はこれに対応する角度を有する直線を第3直線L3、測距センサ6の取付位置と遠隔操作走行予測点P2とを結ぶ直線を第4直線L4としたときに、測距センサ6は、更に第3直線L3よりも上方に位置するように上部旋回体3に取り付けられ、その取付位置から第4直線L4上の地面までの距離を計測する。
ここで、遠隔操作走行予測点P2は、走行平面S上に存在する点であって、履帯21の先端(ここでは、前端)から一定距離D2(D2>D1)離れた点である。遠隔操作走行予測点P2の位置(言い換えれば、距離D2)は、例えば、制御装置5が走行制御器22へ停止指令を出力してから作業機械1が停止するまでの応答時間に、更に遠隔操作装置11からの操作指令が無線送信機12及び無線受信機13を介して制御装置5に到達するまでの時間を加えた値に対し、車体の最大走行速度をかけて得られた値、すなわち遠隔操作による制動距離に基づいて定められている。なお、該遠隔操作走行予測点P2の位置(言い換えれば、距離D2)は、遠隔操作による制動距離よりも大きくなってもよい。
本実施形態では、測距センサ6が計測した地面の領域を遠隔操作走行予測領域Wとする。遠隔操作走行予測領域Wは、上記第1実施形態の走行予測領域Tと同様に様々な形状を有し、例えば図4に示す形状を有する。
また、本実施形態の制御装置5では、地形形状取得部51は、測距センサ6の計測結果と旋回角度センサ8の検出結果とに基づいて遠隔操作走行予測領域Wの地形形状を取得する。高低差算出部52は、地形形状取得部51で取得した遠隔操作走行予測領域Wの地形形状に基づいて、遠隔操作走行予測領域Wの高さH4(図6参照)を算出する。更に、高低差算出部52は、走行平面Sの高さH5(図6参照)と遠隔操作走行予測領域Wの高さH4との差(高低差H6(図6参照))を算出する。なお、高さH4及びH5は、測距センサ6の取付位置を基準としており、測距センサ6により計測された距離と走行平面Sに対する第4直線L4の傾斜角度とに基づいてそれぞれ算出される。
一方、判定部53、発報部54及び走行制御部55は、上記第1実施形態と同じである。また、制御装置5に関する制御処理は、遠隔操作走行予測領域Wを対象とする点で第1実施形態と異なるが、その他は第1実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。
作業機械1を遠隔操作する場合、オペレータは、作業機械1から離れた場所で、例えば作業機械1に搭載したカメラ(図示せず)の映像などに基づいて各操作を行う。カメラの映像と遠隔操作装置11からの操作指令とを無線で通信する場合、通信遅延が発生する。このため、例えばオペレータが遠隔操作装置11を用いて作業機械1に走行を指示した際に、オペレータの視界が悪い原因により、段差などに気づくのが遅れた場合がある。また、オペレータが遠隔操作装置11を介して速やかに走行停止を指示しても、無線通信遅延の原因で作業機械1の制動距離は、実際にオペレータが作業機械1に搭乗して操作する場合と比べて、大きくなる。その結果、作業機械1の走行停止が間に合わず、履帯21が段差に落ちたり作業機械1が段差から転落したりする可能性が生じる。
そこで、本実施形態では、増加した制動距離分を考慮して走行予測点P1よりも遠方に遠隔操作走行予測点P2を設け、該遠隔操作走行予測点P2を通るとともに走行平面Sに対して最大登坂角度θと同じ角度を有する第3直線L3の上方に測距センサ6を配置することで、遠隔操作走行予測領域Wが作業機械1に対してより遠方になる。その結果、遠隔操作による制動距離の増加分に対し、測距センサ6を介して段差の検出を早めることが可能となる。これによって、履帯21が段差に落ちたり作業機械1が段差から転落したりすることを防止できるので、車体の安定性を維持し、車体不安定による生産性の低下を抑制できる。
上記の実施形態において、作業機械1の上部旋回体3に測距センサ6一つのみを取り付けた例(より具体的には、上部旋回体3の前方に測距センサ6を取り付けた例)を説明したが、本発明の測距センサは複数であってもよい。例えば図7及び図8に示すように、上部旋回体3の後方、及び上部旋回体3の側方にも測距センサを取り付けてもよい。
図7及び図8に示すように、作業機械1は、上述の測距センサ6に加えて、後方測距センサ6a、左側測距センサ6b及び右側測距センサ6cを更に備えている。後方測距センサ6aは、上部旋回体3の後方に取り付けられている。左側測距センサ6bは上部旋回体3の左側、右側測距センサ6cは上部旋回体3の右側にそれぞれ取り付けられている。
そして、後方測距センサ6a、左側測距センサ6b及び右側測距センサ6cの取付位置及び計測位置は、測距センサ6と同様に走行予測点と最大登坂角度に基づいて定められている。
例えば図7に示すように、走行平面S上において履帯21から一定距離離れた後方走行予測点P1aを通るとともに走行平面Sに対して最大登坂角度θと同じ角度を有する直線を第1直線L1a、後方測距センサ6aの取付位置と後方走行予測点P1aとを結ぶ直線を第2直線L2aとしたときに、後方測距センサ6aは、第1直線L1aよりも上方に位置するように上部旋回体3に取り付けられ、その取付位置から第2直線L2a上の地面までの距離を計測する。後方走行予測点P1aの位置は、第1実施形態の走行予測点P1と同様に制動距離に基づいて定められてもよく、制動距離よりも大きくなるように定められてもよい。
また、図8に示すように、走行平面S上において履帯21から一定距離離れた左側走行予測点P1bを通るとともに走行平面Sに対して最大登坂角度θと同じ角度を有する直線を第1直線L1b、左側測距センサ6bの取付位置と左側走行予測点P1bとを結ぶ直線を第2直線L2bとしたときに、左側測距センサ6bは、第1直線L1bよりも上方に位置するように上部旋回体3に取り付けられ、その取付位置から第2直線L2b上の地面までの距離を計測する。左側走行予測点P1bの位置は、第1実施形態の走行予測点P1と同様に制動距離に基づいて定められてもよく、制動距離よりも大きくなるように定められてもよい。
また、走行平面S上において履帯21から一定距離離れた右側走行予測点P1cを通るとともに走行平面Sに対して最大登坂角度θと同じ角度を有する直線を第1直線L1c、右側測距センサ6cの取付位置と右側走行予測点P1cとを結ぶ直線を第2直線L2cとしたときに、右側測距センサ6cは、第1直線L1cよりも上方に位置するように上部旋回体3に取り付けられ、その取付位置から第2直線L2c上の地面までの距離を計測する。右側走行予測点P1cの位置は、第1実施形態の走行予測点P1と同様に制動距離に基づいて定められてもよく、制動距離よりも大きくなるように定められてもよい。
そして、測距センサ6、後方測距センサ6a、左側測距センサ6b及び右側測距センサ6cは、例えばそれぞれ2DタイプのLiDARからなり、その計測領域は図7又は図8に示すように横方向にある一定の角度を持つ2次元平面である。なお、図7及び図8に示す三角形は、左側測距センサ6bと後方測距センサ6aの計測範囲を模式的に示すものである。
このように後方測距センサ6a、左側測距センサ6b及び右側測距センサ6cを更に備えることで、上部旋回体3が旋回することなく、履帯21の後方、左側及び右側にある段差を検出することが可能となるので、車体安定性を確実に維持することができる。
なお、図7及び図8に示す例は上記第2実施形態にも適用されるが、その重複説明を省略する。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
1 作業機械
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 フロント装置
5 制御装置
6 測距センサ
6a 後方測距センサ
6b 左側測距センサ
6c 右側測距センサ
7 通知装置
8 旋回角度センサ
9 表示部
11 遠隔操作装置
12 無線送信機
13 無線受信機
21 履帯
F 斜面
L1,L1a,L1b,L1c 第1直線
L2,L2a,L2b,L2c 第2直線
L3 第3直線
L4 第4直線
P1 走行予測点
P1a 後方走行予測点
P1b 左側走行予測点
P1c 右側走行予測点
P2 遠隔操作走行予測点
S 走行平面
T,T1,T2,T3,T4 走行予測領域
W 遠隔操作走行予測領域
θ 最大登坂角度
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 フロント装置
5 制御装置
6 測距センサ
6a 後方測距センサ
6b 左側測距センサ
6c 右側測距センサ
7 通知装置
8 旋回角度センサ
9 表示部
11 遠隔操作装置
12 無線送信機
13 無線受信機
21 履帯
F 斜面
L1,L1a,L1b,L1c 第1直線
L2,L2a,L2b,L2c 第2直線
L3 第3直線
L4 第4直線
P1 走行予測点
P1a 後方走行予測点
P1b 左側走行予測点
P1c 右側走行予測点
P2 遠隔操作走行予測点
S 走行平面
T,T1,T2,T3,T4 走行予測領域
W 遠隔操作走行予測領域
θ 最大登坂角度
Claims (9)
- 履帯を有する下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に設けられた上部旋回体とを備えた作業機械であって、
前記上部旋回体に取り付けられた少なくとも1つの測距センサと、
前記上部旋回体と前記下部走行体との相対旋回角度を検出する旋回角度センサと、
前記作業機械のオペレータに情報を通知する通知装置と、
前記下部走行体と前記通知装置とを制御する制御装置と、
を備え、
前記履帯の走行平面上において前記履帯から一定距離離れた走行予測点を通るとともに前記履帯の走行平面に対して前記作業機械の最大登坂角度に対応する角度を有する直線を第1直線、前記測距センサの取付位置と前記走行予測点とを結ぶ直線を第2直線としたときに、前記測距センサは、前記第1直線よりも上方に位置し、その取付位置から前記第2直線上の地面までの距離を計測し、
前記測距センサが計測した地面の領域を走行予測領域としたときに、前記制御装置は、前記測距センサの計測結果と前記旋回角度センサの検出結果とに基づいて前記走行予測領域の高さを算出し、算出した前記走行予測領域の高さと前記履帯の走行平面の高さとの高低差が予め設定された閾値以上であるか否かを判定し、前記高低差が前記閾値以上であると判定した場合に前記通知装置を作動させることを特徴とする作業機械。 - 前記制御装置は、前記高低差が前記閾値以上であると判定した場合に、前記下部走行体の走行を停止するように前記下部走行体を制御する請求項1に記載の作業機械。
- 前記制御装置は、前記高低差が前記閾値以上であると判定した場合に、前記高低差が前記閾値よりも小さい方向に走行するように前記下部走行体を制御する請求項1に記載の作業機械。
- 前記走行予測領域は、前記下部走行体の前後方向上の点状の領域である請求項1~3のいずれか一項に記載の作業機械。
- 前記走行予測領域は、前記下部走行体の左右方向に沿う線状の領域である請求項1~3のいずれか一項に記載の作業機械。
- 前記走行予測領域は、前記下部走行体を取り囲むような環状の領域である請求項1~3のいずれか一項に記載の作業機械。
- 前記走行予測領域は、前記下部走行体の前後方向に沿う線状の領域である請求項1~3のいずれか一項に記載の作業機械。
- 前記通知装置は、前記作業機械の位置及び前記高低差の位置を表示する表示部を有する請求項1~7のいずれか一項に記載の作業機械。
- 前記制御装置に操作指令を無線で送信する遠隔操作装置を更に備え、
前記履帯の走行平面上において前記走行予測点より前記作業機械に対して遠方にある遠隔操作走行予測点を通るとともに前記履帯の走行平面に対して前記作業機械の最大登坂角度に対応する角度を有する直線を第3直線、前記測距センサの取付位置と前記遠隔操作走行予測点とを結ぶ直線を第4直線としたときに、前記測距センサは、更に前記第3直線よりも上方に位置し、その取付位置から前記第4直線上の地面までの距離を計測し、
前記測距センサが計測した地面の領域を遠隔操作走行予測領域としたときに、前記制御装置は、前記測距センサの計測結果と前記旋回角度センサの検出結果とに基づいて前記遠隔操作走行予測領域の高さを算出し、算出した前記遠隔操作走行予測領域の高さと前記履帯の走行平面の高さとの高低差が前記閾値以上であるか否かを判定し、前記高低差が前記閾値以上であると判定した場合に前記通知装置を作動させる請求項1~8のいずれか一項に記載の作業機械。
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