≪第1実施形態≫
以下、本発明の一実施の形態に係る車両の走行支援装置及び方法を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では、車両に搭載される走行支援装置を例示して本発明を説明する。また本実施形態では、道路幅が広がる区間を自車両が走行する場面を例に挙げて、本発明を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両の走行支援装置100の構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る走行支援装置100は、自車位置検出装置110と、地図データベース120と、車速センサ130と、測距センサ140と、カメラ150と、駆動機構170と、制御装置180とを備える。これら装置は、相互に情報の授受を行うためにCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
自車位置検出装置110は、GPSユニットを備えている。自車位置検出装置110は、複数の衛星通信から送信される電波をロケータ(GPSアンテナ)により検出して、自車両の位置情報を、周期的に取得する。自車位置検出装置110は、取得した自車両の位置情報と、ジャイロセンサ(図示しない)から取得した角度変化情報と、車速センサ130から取得した車速とに基づいて、自車両の現在位置を検出する。また、自車位置検出装置110は、周知のマップマッチング技術を用いて、自車両の位置を検出することもできる。自車位置検出装置110により検出された自車両の位置情報は、制御装置180に出力される。
地図データベース120には、地図情報が格納されている。地図データベース120が記憶する地図情報には、各地図座標における道路の属性情報を含んでいる。道路の属性としては、例えば、カーブ、坂道、交差点、インターチェンジ、狭路、直線路、合流地点などが挙げられる。これらの道路の属性は一例であって、道路の属性を限定するものではない。道路の属性には、道路形状の情報が含まれている。
また地図情報には、走路境界の情報を含んでいる。走路境界とは、自車両の走路とそれ以外との境界である。自車両の走路とは、自車両が走行するための道である。言い換えると、走路境界とは、自車両が走行する道を形成する境界である。走路境界は、自車両の進行方向に対して左右それぞれに位置する。走路境界の形態は特に限定されず、例えば、路面標示、道路構造物が挙げられる。路面標示の走路境界としては、例えば、車線境界線、センターラインが挙げられる。また道路構造物の走路境界としては、例えば、中央分離帯、ガードレール、縁石、トンネル又は高速道路の側壁が挙げられる。なお、走路境界が明確に特定できない地点(例えば、交差点内)に対して、地図情報には予め走路境界が設定されている。予め設定された走路境界は、架空の走路境界であって実際に存在する路面標示または道路構造物ではない。
また地図情報は、車両が走行時に遵守すべき交通規則情報を含んでいる。交通規則情報としては、例えば、経路上における一時停止、駐車/停車禁止、徐行、制限速度(法定速度)、車線変更禁止が挙げられるが、これらに限定されない。交通規則情報は、車線単位で規定される。なお、地図情報に含まれるこれらの情報は、ノードと、ノード間を接続するリンク(道路リンクともいう)により定義される。
車速センサ130は、ドライブシャフトなどの駆動系の回転速度を計測し、これに基づいて自車両の走行速度(以下、車速ともいう)を検出する。車速センサ130により検出された自車両の車速情報は制御装置180に出力される。
測距センサ140は、自車両の周囲に存在する対象物を検出する。また、測距センサ140は、自車両と対象物との相対距離および相対速度を演算する。対象物としては、例えば、車線境界線、センターライン、中央分離帯、ガードレール、縁石、トンネル又は高速道路の側壁などが挙げられる。またその他の対象物としては、例えば、自車両以外の自動車(他車両)、オートバイ、自転車、道路標識、信号機、横断歩道などが挙げられる。測距センサ140により検出された対象物の情報は、制御装置180に出力される。なお、このような測距センサ140としては、レーザーレーダー、ミリ波レーダーなど(LRF等)を用いることができる。また、測距センサ140の数は特に限定されず、測距センサ140は、例えば、自車両の前方、側方、及び後方にそれぞれ設けられる。これにより、測距センサ140は、自車両の周囲全域に存在する対象物を検出する。
カメラ150は、自車両の周囲に存在する、道路及び/又は対象物等を撮像する。本実施形態において、カメラ150は、自車両の前方を撮像する。カメラ150により撮像された画像情報は、制御装置180に出力される。カメラ150は、自車両の前方を撮像するカメラ及び/又は自車両の側方を撮像するカメラである。
入力装置160は、ドライバーが操作可能な操作部材である。本実施形態において、ドライバーは入力装置160を操作することで、自動運転制御のオン/オフを設定することができる。
駆動機構170には、自車両を自動走行させるためのエンジン及び/又はモータ(動力系)、ブレーキ(制動系)およびステアリングアクチュエータ(操舵系)などが含まれる。本実施形態では、後述する自動運転制御が行われる際に、制御装置180により、駆動機構170の動作が制御される。
制御装置180は、プロセッサを有したコンピュータであって、自車両の走行を制御するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とから構成される。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
制御装置180は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することにより、走路境界情報取得機能、走路幅算出機能、走路中心線生成機能、走路境界評価機能、オフセット演算機能、目標走行経路生成機能、自車両の走行を制御する走行制御機能とを実現する。以下において、制御装置180が備える各機能について説明する。なお、制御装置180は、以下に説明する機能の他に、例えば自車位置を検出する推定する機能など、他の機能も有している。
制御装置180は、走路境界情報取得機能により、自車両の走路と当該走路以外との境界を示す走路境界の情報を取得する。走路境界の情報には、少なくとも、走路境界の種別、走路境界の位置、及び走路境界の形状の情報が含まれる。走路境界の種別としては、例えば、車線境界線、センターライン、中央分離帯、ガードレール、縁石、トンネル又は高速道路の側壁などが挙げられる。走路境界の位置は、例えば、自車両に対する相対的な位置、又は地図上における緯度及び経度の情報で示される。走路境界の形状とは、自車両の走路を俯瞰した際に自車両の進行方向に沿う面に表される走路境界の形状である。走路境界の形状は、直進路やカーブといった道路の形状を表す情報ではなく、より詳細な情報を示す。例えば、道路がカーブ形状の場合、走路境界の形状は、カーブの各地点における曲率又は曲率半径で示される。
走路境界の情報を取得する方法としては、地図データベース120からの取得する方法が挙げられる。例えば、制御装置180は、ナビゲーションシステム(図示しない)から自車両が走行する予定の経路情報を取得する。制御装置180は、地図データベース120に記憶された地図情報から、走行予定経路上において自車両が走行する車線を特定する。制御装置180は、特定された車線を含む道路の情報に基づき、走路境界の種別、走路境界の位置、及び走路境界の形状の情報を取得する。
また制御装置180は、測距センサ140及び/又はカメラ150から走路境界の情報を取得することもできる。例えば、制御装置180は、測距センサ140による検出結果から、自車両の進行方向に対して左右に位置する走路境界までの距離の情報を取得し、自車両の現在位置と自車両に対する走路境界の相対的な距離との関係に基づいて、走路境界の位置及び走路境界の形状の情報を取得する。また例えば、制御装置180は、カメラ150による撮像画像から、走路境界の種別及び走路境界の位置情報を取得することもできる。なお、走路境界の情報を取得するにあたり、地図データベース120に記憶された地図情報、測距センサ140による検出結果、及びカメラ150による撮像画像の全てを必ずしも用いる必要はなく、制御装置180は、少なくともいずれか一つを用いて走路境界の情報を取得する。
図2は、走路境界を説明するための図である。図2(A)は、バス停留所1が設けられた車線L1を自車両Vが通過する場面を示す。図2(A)は、車線L1を真上から見た俯瞰図である。バス停留所1は歩道Sに対して切込みが入れられた場所に設けられているため、車線L1の車線幅はバス停留所1の付近において部分的に広がっている。なお、図2(A)に示す矢印D1は、自車両Vの進行方向を示す。
図2(A)の例において、制御装置180は、自車両Vの走路を形成する走路境界の情報を取得する。制御装置180は、自車両Vの走路に対して左側に位置する走路境界の情報を取得する。制御装置180は、例えば、カメラ150の撮像画像から、自車両Vの進行方向に対して左側に位置する縁石2(実線)を第1走路境界A(一転鎖線)として認識する。また制御装置180は、例えば、測距センサ140の検出結果から、第1走路境界Aの情報として、縁石2の位置及び形状の情報を取得する。
また図2(A)の例において、制御装置180は、自車両Vの走路に対して右側に位置する走路境界の情報を取得する。制御装置180は、例えば、カメラ150の撮像画像から、自車両Vの進行方向に対して右側に位置するセンターライン3(点線)を第2走路境界B(一転鎖線)として認識する。また制御装置180は、例えば、測距センサ140の検出結果から、第2走路境界Bの情報として、センターライン3の位置及び形状の情報を取得する。
なお、以降の説明においては、説明の便宜上、自車両の走路を形成する走路境界のうち、自車両の進行方向に対して左側の走路境界を第1走路境界と称し、自車両の進行方向に対して右側の走路境界を第2走路境界と称して説明する。
図2(A)の例では、第1走路境界Aは縁石2で構成され、第2走路境界Bがセンターライン3は構成されている。左右の走路境界の種別が異なる場合であっても、制御装置180は、走路境界情報取得機能により、第1走路境界及び第2走路境界それぞれについて、走路境界の位置及び形状の情報を取得することができる。
図2(B)は、自車両Vが車線L2に沿って交差点4を通過する場面を示す。図2(B)は、車線L2を真上から見た俯瞰図である。交差点4内には、自車両Vの進行方向に対して左側の走路境界を特定できる路面標示(車線境界線)はないものとする。なお、図2(B)に示す矢印D2は、自車両Vの進行方向を示す。
図2(B)の例において、制御装置180は、図2(A)の例と同様に、自車両Vの走路を形成する走路境界の情報を取得する。制御装置180は、自車両Vの走路に対して左側に位置する走路境界の情報を取得する。制御装置180は、例えば、カメラ150の撮像画像から、自車両Vの進行方向に対して左側に位置するガードレール5(実線)及びガードレール6(実線)を第1走路境界A(一転鎖線)として認識する。また制御装置180は、例えば、測距センサ140の検出結果から、第1走路境界Aの情報として、ガードレール5及びガードレール6の位置及び形状の情報を取得する。さらに制御装置180は、例えば、地図データベース120に記憶された地図情報から、交差点4内の走路境界として予め設定された架空の境界線7(点線)を第1走路境界A(一転鎖線)として認識する。また制御装置180は、例えば、地図データベース120に記憶された地図情報から、第1走路境界Aの情報として、架空の境界線7の位置及び形状の情報を取得する。なお、架空の境界線7は、地図情報に含まれる情報であって、予め設定された境界線である。
また図2(B)の例において、制御装置180は、自車両Vの走路に対して右側に位置する走路境界の情報を取得する。制御装置180は、例えば、カメラ150の撮像画像から、自車両Vの進行方向に対して右側に位置するセンターライン8(破線)を第2走路境界B(一転鎖線)として認識する。また制御装置180は、例えば、測距センサ140の検出結果から、第2走路境界Bの情報として、センターライン8の位置及び形状情報を取得する。
図2(B)の例では、第1走路境界Aは、ガードレール5、ガードレール6、及び地図情報に含まれる架空の境界線7で構成され、第2走路境界Bはセンターライン8で構成されている。第1走路境界及び/又は第2走路境界が複数の種別で構成されている場合であっても、制御装置180は、走路境界情報取得機能により、第1走路境界及び第2走路境界それぞれについて、走路境界の位置及び形状の情報を取得することができる。
図1に戻り、制御装置180が実現する機能について説明する。制御装置180は、走路幅算出機能により、自車両の走路の幅である走路幅を算出する。走路幅とは、第1走路境界と第2走路境界の間の距離を示す。制御装置180は、自車両の車幅方向における第1走路境界と第2走路境界の間の距離を走路幅として算出する。また制御装置180は、自車両が走行する予定の車線のうち所定区間において走路幅を算出する。なお、制御装置180が走路幅を算出する対象区間については後述する。また制御装置180は、自車両の進行方向に対して所定間隔ごとに走路幅を算出する。
図3は、走路幅を説明するための図である。図3(A)及び図3(B)に示す場面は図2(A)に示す場面と同じため、図2(A)についての説明を適宜援用する。図3(A)の例において、制御装置180は、自車両Vの車幅方向における第1走路境界Aと第2走路境界Bの間の距離である走路幅Δd1~走路幅Δd6を算出する。なお、図3(A)の例では、自車両Vの走路幅として6つの走路幅を算出しているが、走路幅の数は特に限定されない。制御装置180は、6つよりも多く又は6つよりも少ない数の走路幅を算出してもよい。
また、図3(B)は、走路幅算出機能により算出された走路幅のその他の例である。制御装置180は、走路幅の方向を、自車両の車幅方向から、第1走路境界と第2走路境界の中心線に対する垂直方向に変更することができる。制御装置180は、走路幅の方向を変更し、走路幅を算出する。制御装置180は、後述する走路中心線生成機能により、第1走路境界と第2走路境界の中心線である走路中心線が生成されると、生成された走路中心線に対する垂直方向を走路幅の方向とみなして走路幅を算出する。なお、以降の説明において、第1走路境界と第2走路境界の中心線を、走路中心線と称して説明する。
図3(B)の例において、制御装置180は、自車両Vの走路中心線Cを生成する。制御装置180は、走路中心線Cの垂直方向を走路幅の方向として規定し、第1走路境界Aと第2走路境界Bの間の距離である走路幅Δd1
’~Δd6
’を算出する。
図1に戻り、制御装置180が実現する機能について説明する。制御装置180は、走路中心線生成機能により、自車両の走路における中心線を走路中心線として生成する。制御装置180は、第1走路境界及び第2走路境界の位置又は形状の情報に基づいて、走路中心線を生成する。走路中心線は、第1走路境界と第2走路境界の形状又は位置情報が反映される。図3(B)の例で示すように、走路中心線Cはバス停留所1付近において自車両Vの進行方向に対して左側に膨らむ。
制御装置180は、走路境界評価機能により、第1走路境界及び第2走路境界の粗さに関する評価を行う。走路境界の粗さとは、自車両が走路境界に沿って走行した場合の自車両の向きの変化量である。自車両が走路境界に沿って走行した場合とは、実際に自車両が走路境界に沿って走行したことを示すものではなく、走路境界に沿って走行したと仮定した場合を示す。言い換えると、走路境界の粗さとは、仮に自車両が走路境界に沿って走行した場合に、自車両の向きにどの程度影響を与えるかを示す走路境界のパラメータである。走路境界の粗さが大きいほど、走路中心線の形状に反映される度合いが大きくなり、自車両の向きに与える影響は大きくなる。例えば、走路中心線に沿って自車両を走行させる場合、走路境界の粗さが大きいほど、自車両は向き(姿勢角ともいう)を大きく変化させながら走行する。図3(B)の例において、自車両Vが走路中心線Cに沿って走行した場合、バス停留所1の通過前後において、自車両Vは向きを僅かに変化させるため、自車両Vはバス停留所1を通過する際に車幅方向にふらつく。そこで、本実施形態では、以下に説明する方法を用いて、道路幅が広がる区間を自車両が走行する際に、道路幅の変化に伴う自車両のふらつきを抑制する。
図4を用いて、走路境界の粗さを演算する方法について説明する。図4は、走路境界の粗さの演算方法を説明するための図である。図4は、図2(A)と同じ場面のため、図2(A)についての説明を適宜援用する。
図4の例に示すように、制御装置180は、第1走路境界A及び第2走路境界Bを、それぞれ複数の区間に分割する。図4の例では、制御装置180により、第1走路境界A及び第2走路境界Bは、それぞれ9つの区間に分割されている。図4に示す線分a1~線分a9は、第1走路境界Aを構成する線分であり、各線分aは各区間における第1走路境界Aを示す。線分a1~線分a9の順で、各区間の線分aは隣接している。また線分b1~線分b9は、第2走路境界Bを構成する線分であり、各線分bは各区間における第2走路境界Bを示す。線分b1~線分b9の順で、各区間の線分bは隣接している。なお、図4の例では、走路境界が9つの区間に分割されているが、走路境界を分割する区間の数は特に限定されない。制御装置180は、9つよりも多く又は9つよりも少ない数の区間で走路境界を分割してもよい。
制御装置180は、走路境界を複数の区間に分割すると、走路境界の位置又は形状に基づいて、隣り合う区間の走路境界で形成される角度(走路境界の角度差ともいう)を演算する。なお、隣り合う区間のそれぞれを、第1区間と第2区間(第1区間と隣り合う区間)ともいう。例えば、図4の例では、線分a1は第1区間における第1走路境界A、線分a2は第2区間における第1走路境界Aと称される。
図4の例において、制御装置180は、第1走路境界Aについて、線分a1と線分a2の角度差、線分a2と線分a3の角度差、・・・、線分a7と線分a8の角度差、及び線分a8と線分a9の角度差を演算する。なお、図4において、Δθ1は線分a2と線分a3の角度差を示し、Δθ2は線分a4と線分a5の角度差を示し、Δθ3は線分a6と線分a7を示し、Δθ4は線分a8と線分a9の角度差を示す。
また、制御装置180は、第2走路境界Bについても同様に、線分b1と線分b2の角度差、線分b2と線分b3の角度差、・・・、線分b7と線分b8の角度差、及び線分b8と線分b9の角度差を演算する。図4の例では、第2走路境界Bの形状は、直線形状のセンターライン3を反映しているため、第2走路境界Bについては、第1走路境界Aと異なり、隣り合う区間の走路境界で形成される角度はゼロとなり、走路境界において角度差が発生していない。
制御装置180は、隣り合う区間の走路境界で形成される角度それぞれを演算すると、下記式(1)及び式(2)で示すように、対象区間にわたって積算された角度の積算値を演算する。
ただし、上記式(1)及び式(2)において、iは隣り合う区間の走路境界で形成される角度の数を示す。また上記式(1)において、S
θLは第1走路境界における角度の積算値を示し、Δθ
Liは隣り合う区間の第1走路境界で形成される角度を示す。また上記式(2)において、S
θRは隣り合う区間の第2走路境界で形成される角度の数を示し、Δθ
Riは隣り合う区間の第2走路境界で形成される角度を示す。
制御装置180は、上記式(1)を用いて演算された、第1走路境界における角度の積算値SθLを第1走路境界の粗さとし、上記式(2)を用いて演算された、第2走路境界における角度の積算値SθRを第2走路境界の粗さとする。そして、制御装置180は、第1走路境界の粗さと第2走路境界の粗さを比較することで、粗さが小さい走路境界を特定する。図4の例において、第1走路境界Aはバス停留所1が設けられているスペースが反映された形状であり(部分的に道路幅が広がる形状)、第2走路境界Bは、直線形状のセンターライン3が反映された形状である。制御装置180が上記式(1)及び式(2)を用いて演算した結果、第2走路境界Bにおける角度の積算値SθRは、第1走路境界Aにおける角度の積算値SθLよりも小さくなる。制御装置180は、第1走路境界Aにおける角度の積算値SθLと第2走路境界Bにおける角度の積算値SθRを比較し、第2走路境界Bを粗さが小さい走路境界として特定する。
なお、制御装置180は、上記式(1)及び式(2)に代えて、下記式(3)及び式(4)で示されるように、隣り合う区間の走路境界で形成される角度の二乗和を用いて、第1走路境界の粗さ及び第2走路境界の粗さを演算してもよい。
ただし、上記式(3)及び式(4)において、i、S
θL、Δθ
Li、S
θR、及びΔθ
Riは上記式(1)及び上記式(2)と同じため、説明については適宜援用する。
再び図1に戻り、制御装置180が実現する機能について説明する。制御装置180は、オフセット要否判定機能により、走路中心線に対してオフセット処理する必要があるか否かを判定する。本実施形態では、制御装置180は、道路幅が広がる区間を走行する際に、走路中心線に対してのオフセット処理の要否を判定する。
制御装置180は、走路幅と閾値(以降、第1閾値ともいう)とを比較し、走路幅が第1閾値よりも大きい場合、走路中心線に対してオフセット処理が必要と判定する。反対に、制御装置180は、走路幅が第1閾値以下の場合、オフセット処理が不要と判定する。制御装置180は、走路中心線上の各地点においてオフセット処理の要否の判定を行う。第1閾値は、走路幅が広がる方向に変化したか否かを判定するための閾値であって、予め定められた閾値である。第1閾値は、所定区間における走路幅の平均値であってもよいし、道路の種別に応じて予め設定された走路幅の上限値であってもよい。所定区間における走路幅の平均値は、例えば、地図情報に基づき予め設定される。また、走路幅の上限値は、例えば、道路幅に比例した関係を有するように予め設定される。
図3(A)を用いて、オフセット処理の要否について説明すると、例えば、制御装置180は、走路幅Δd1~走路幅Δd6それぞれについて、第1閾値との比較処理を実行する。例えば、第1閾値が所定区間における走路幅の平均値の場合、制御装置180は、走路幅Δd1、走路幅Δd2、及び走路幅Δd6の地点における走路中心線Cについては、走路幅が第1閾値以下のため、オフセット処理が不要と判定する。また制御装置180は、走路幅Δd3~走路幅Δd5の地点における走路中心線Cついては、走路幅が第1閾値より大きいため、オフセット処理が必要と判定する。
制御装置180は、目標走行経路生成機能により、第1走路境界の粗さと第2走路境界の粗さの比較結果に基づいて、自車両が走行する目標走行経路を生成する。目標走行経路とは、自車両が走行するための目標になる経路である。本実施形態では、制御装置180は、第1走路境界及び第2走路境界のうち粗さが小さい走路境界を基準にして、目標走行経路を生成する。制御装置180は、走路中心線に対して、第1走路境界及び第2走路境界のうち粗さが小さい走路境界を基準とするオフセット処理を実行する。制御装置180は、オフセット処理された走路中心線を目標走行経路とする。
図5は、目標走行経路を説明するための図である。図5に示す場面は図2(A)に示す場面と同じため、図2(A)についての説明を適宜援用する。また、走路中心線Cは、図3(B)に示す走路中心線Cと同じものとする。
図5の例において、まず制御装置180は、上述したオフセット要否判定機能により、走路中心線Cに対してオフセット処理が必要な走路中心線上の地点を特定する。次に、制御装置180は、オフセット処理が必要と判定された走路中心線上の地点について、オフセット量及びオフセットの方向を演算する。例えば、制御装置180は、下記式(5)及び式(6)を用いて、オフセットの方向を含むオフセット量を演算する。
ただし、上記式(5)において、jはオフセット処理が必要な走路中心線上の地点を示し、O
jはオフセット量を示し、R
aは第1走路境界の粗さと第2走路境界の粗さの比率(以降、単に走路境界の粗さの比率とも称す)を示し、Δd
jはオフセット処理が必要な地点における走路幅を示し、d
th_maxは第1閾値を示す。また上記式(6)において、S
θLは第1走路境界における角度の積算値を示し、S
θRは第2走路境界における角度の積算値を示す。なお、上記式(6)で用いられるS
θLは、上記式(1)または式(3)で用いられるS
θLに対応し、上記式(6)で用いられるS
θRは、上記式(2)または式(4)で用いられるS
θRに対応する。
制御装置180は、走路境界の粗さの比率Raについて、値の正負を判定することで、走路中心線をオフセットする方向(オフセット方向)を特定する。制御装置180は、走路境界の粗さの比率Raが正の値である場合(Ra>0)、自車両の進行方向に対して左方向をオフセット方向として特定する。一方、制御装置180は、走路境界の粗さの比率Raが負の値である場合(Ra<0)、自車両の進行方向に対して右方向をオフセット方向として特定する。
また制御装置180は、走路境界の粗さの比率Raがゼロの場合(Ra=0)、オフセット処理が不要と判定する。オフセット要否判定機能により、オフセット処理が必要と判定された地点においても、制御装置180は、走路境界の粗さの比率Raがゼロの場合、オフセット処理が不要と改めて判定する。走路幅が広がるためには、第1走路境界又は第2走路境界の片側の走路境界が広がる場合と、第1走路境界及び第2走路境界の両側の走路境界が広がる場合とがある。片側の走路境界が広がる場合、走路幅が第1閾値よりも大きく、かつ、走路境界の粗さの比率Raが正又は負の値となる。一方、両側の走路境界が広がる場合、走路幅が第1閾値よりも大きくても、第1走路境界の粗さと第2走路境界の粗さが同じため、走路境界の粗さの比率Raがゼロを示す場合がある。このような場合、走路中心線をオフセット処理する必要はない、という観点に基づくものである。
制御装置180は、オフセット処理が必要と判定された地点に対して、上記式(5)に基づいてオフセット量を演算する。オフセット量は、第1走路境界及び第2走路境界のうち粗さが小さい走路境界を基準として、走路中心線をシフトさせるための方向及び距離を示すパラメータである。
図5の例では、制御装置180は、走路中心線C上の5つの地点についてオフセット処理を実行することで、オフセット処理された走路中心線C’を生成する。制御装置180は、オフセット処理された走路中心線C’を自車両の目標走行経路とする。図5の例において、オフセット処理が必要と判定された走路中心線C上の地点でオフセット処理することで、走路中心線C’はバス停留所1付近において自車両の進行方向に沿う形状となる。なお、図5の例に示すオフセット処理が実行された5つの地点は、図4に示す線分b4~b7の地点に対応する。また、図5の例では、5つの地点についてオフセット処理が実行されたが、オフセット処理を実行する地点の数は特に限定されない。例えば、制御装置180は、走路中心線C上で所定間隔ごとにオフセット処理を実行し、予め定めた関数に基づいてオフセット処理された地点同士を接続して、オフセット処理された走路中心線を生成してもよい。
制御装置180は、走行制御機能により、駆動機構170を制御することで、自車両が目標走行経路(オフセット処理された走路中心線)を走行するように、自車両の走行の全部または一部を自動で行う自動運転制御を実行する。例えば、制御装置180は、エンジン及びブレーキなどの駆動機構170の動作を制御することで、ドライバーが設定した所定の設定速度で自車両を走行させる速度走行制御を実行する。なお、走行制御機能による自動運転制御は、各国の交通法規を遵守した上で実行される。
次に、自車両の走行を支援するための制御処理を説明する。図6は、本実施形態の制御処理のフローを示すブロック図である。なお、以下に説明する走行制御処理は、制御装置180により実行される。また、以下に説明する走行制御処理は、イグニッションスイッチ又はパワースイッチがオンになった場合に開始し、イグニッションスイッチ又はパワースイッチがオフとなるまで所定の周期で(たとえば10ミリ秒ごとに)繰り返し実行される。
また以下においては、ドライバーにより自動運転制御が入力(オン)されている場面を例示して説明する。すなわち、自車両は走行経路に沿った走行を行う。
ステップS1にて、制御装置180は、走路境界の情報を取得する。制御装置180は、地図データベース120に記憶された地図情報、測距センサ140による検出結果及びカメラ150による撮像画像のうち少なくとも一つから、自車両の走路を構成する走路境界の種別、走路境界の位置、及び走路境界の形状の情報を取得する。なお、ステップS1にて、制御装置180は、第1走路境界及び第2走路境界それぞれについて、走路境界の情報を取得する。
ステップS2にて、制御装置180は、第1走路境界と第2走路境界の間の距離を走路幅として算出する。例えば、制御装置180は、自車両の車幅方向における第1走路境界と第2走路境界の間の距離を走路幅として算出する。なお、ステップS2にて、制御装置180は、走路境界のうち所定の算出対象区間において走路幅を算出する。また、制御装置180は、自車両の進行方向に対して所定間隔ごとに走路幅を算出する。
ステップS3にて、制御装置180は、ステップS2にて算出された走路幅が第1閾値よりも大きいか否かを判定する。第1閾値は、例えば、所定区間における走路幅の平均値であって、予め定められた値である。制御装置180は、ステップS2にて算出された、走路上の各地点における走路幅に対して、第1閾値との比較処理を実行する。走路幅が第1閾値よりも大きい場合、ステップS4に進む。一方、走路幅が第1閾値以下の場合、制御装置180は、図6に示す制御処理を終了する。ステップS3にて制御処理が終了するためには、ステップS2にて算出された全ての走路幅が第1閾値以下の場合でなければならず、走路上の何れかの地点において、走路幅が第1閾値よりも大きいと判定されると、ステップS4に進む。
ステップS4にて、制御装置180は、第1走路境界及び第2走路境界の粗さを演算する。例えば、制御装置180は、図4の例に示すように、走路境界を複数の区間に分割する。制御装置180は、隣り合う区間の走路境界で形成される角度を演算する。制御装置180は、例えば、上記式(1)及び式(2)を用いて、隣り合う区間の走路境界で形成される角度を積算する。第1走路境界における角度の積算値を第1走路境界の粗さとする。また制御装置180は、第2走路境界における角度の積算値を第2走路境界の粗さとする。
ステップS5にて、制御装置180は、第1走路境界及び第2走路境界のうち粗さが小さい走路境界を特定する。例えば、制御装置180は、第1走路境界における角度の積算値と第2走路境界における角度の積算値を比較する。そして、制御装置180は、積算値の小さい走路境界を粗さが小さい走路境界として特定する。
ステップS6にて、制御装置180は、ステップS5にて特定された粗さが小さい走路境界を基準とするオフセット量を演算する。例えば、制御装置180は、上記式(5)及び式(6)を用いて、オフセット量を演算する。
ステップS7にて、制御装置180は、走路中心線に対してオフセット処理を実行することで、オフセット処理された走路中心線を生成する。制御装置180は、オフセット処理された走路中心線を自車両の目標走行経路とする。例えば、図5の例に示すように、制御装置180は、走路中心線C上の各地点におけるオフセット方向及びオフセット量に基づいて、走路中心線Cをオフセットさせることで、オフセット処理された走路中心線C’を生成する。図5の例では、制御装置180は、粗さが小さい第2走路境界Bを基準としたオフセット処理を実行する。これにより、粗さが小さい第2走路境界Bを基準とした目標走行経路を生成することができるため、道路幅が一時的に広がる区間においても、道路幅の変化に連動して目標走行経路の形状が変化することを抑制できる。
ステップS8にて、制御装置180は、車両制御として、ステップS7にて生成された目標走行経路に沿って自車両を走行させる。図5の例では、自車両Vはオフセット処理された走路中心線C’に沿って走行するため、走路中心線Cに沿って走行する場合に比べて、自車両Vが車幅方向にふらつくことを抑制できる。ステップS8の処理が終了すると、制御装置180は、図6に示す制御処理を終了する。
以上のように、本実施形態では、制御装置180は、自車両の走路と当該走路以外との境界を示す走路境界の情報を取得し、走路境界の情報に基づき、第1走路境界について、走路境界の粗さを演算し、走路境界の情報に基づき、第2走路境界について、走路境界の粗さを演算する。そして、制御装置180は、第1走路境界について演算した走路境界の粗さと、第2走路境界について演算した走路境界の粗さ、とを比較した結果に基づき、自車両の目標走行経路を生成し、目標走行経路に基づき自車両を制御する。これにより、道路幅が広がる区間を自車両が通過する際に、道路幅の変化に連動して目標走行経路の形状が変化することを抑制できる。その結果、当該区間を自車両が走行する際に、道路幅の変化に伴う自車両のふらつきを抑制できる。また、自車両の走行が滑らかになるため、自車両の乗員に与える違和感を抑制できる。
また、本実施形態では、制御装置180は、第1走路境界の粗さと、第2走路境界の粗さとの比率によりオフセット量を演算し、第1走路境界と第2走路境界の中心線を演算したオフセット量だけオフセットすることで、目標走行経路を生成する。これにより、粗さの少ない走路境界、すなわち自車両の向きの変化が小さい走路境界を基準とした目標走行経路が生成される。その結果、道路幅が広がる区間の前後において、道路幅の変化に連動した目標走行経路の形状が変化することを抑制できる。
また、本実施形態では、制御装置180は、第1走路境界と第2走路境界の間の距離である走路幅が、走路幅が広がる方向に変化したか否かを判定するための第1閾値よりも大きい場合、目標走行経路に基づき自車両を制御する。これにより、道路幅が広がる区間を通過する前に自車両を目標走行経路に沿って走行させることができ、道路幅が広がることに伴う自車両のふらつきを抑制できる。
また、本実施形態では、第1閾値は、所定区間における走路幅の平均値である。これにより、道路幅が異なる道路の種別が存在しても、自車両のふらつきを抑制できる。例えば、高速道路における車線幅と市街地における車線幅が異なっていても、いずれの道路においても道路幅が広がる区間を自車両が通過する際に、道路幅の変化に伴う自車両のふらつきを抑制できる。
また、本実施形態では、第1閾値は、道路の種別に応じて予め設定された走路幅の上限値であってもよい。例えば、道路幅が広がる区間が断続的に存在し、かつ、その広がる距離が区間ごとに異なる道路を自車両が走行する場合であっても、道路幅の上限値により、各区間において適切にオフセット処理を実行することができる。その結果、道路幅が複雑に変化する道路を走行する場合であっても、道路幅の変化に伴う自車両のふらつきを抑制できる。
また、本実施形態では、制御装置180は、走路境界の粗さを演算する対象区間において、第1区間における走路境界と第2区間における走路境界とで形成される角度を演算し、上記式(1)又は式(2)に示すように、対象区間にわたって積算された角度の積算値を走路境界の粗さとして演算する。これにより、任意の自由度を含んだ関数でフィッティングさせる関数フィッティング処理など、制御装置180にとって演算負荷が高い処理を行うことなく、走路境界の粗さを演算することができる。
また、本実施形態では、制御装置180は、走路境界の粗さを演算する対象区間において、第1区間における走路境界と第2区間における走路境界とで形成される角度を演算し、上記式(3)又は式(4)に示すように、対象区間にわたって演算された角度の二乗和を走路境界の粗さとして演算してもよい。走路境界の粗さには、角度の二乗値が反映されるため、隣り合う区間の走路境界で形成される角度が大きいほど、より走路境界の粗さに反映させることができる。
また、本実施形態では、制御装置180は、走路幅と第1閾値との差分と、第1走路境界の粗さと第2走路境界の粗さとの比率とに基づいて、粗さの少ない走路境界を基準とするオフセット量を演算し、走路中心線をオフセット量だけオフセットすることで、目標走行経路を生成する。これにより、粗さの少ない走路境界、すなわち自車両の向きの変化が小さい走路境界を基準とした目標走行経路が生成される。その結果、道路幅が広がる区間の前後において、道路幅の変化に連動して目標走行経路の形状が変化することを抑制できる。
《第2実施形態》
次に、本発明の他の実施形態に係る走行支援装置を説明する。第1実施形態では、道路幅が広がる区間を自車両が走行する場面を例に挙げて、本発明を説明したが、本実施形態では、道路幅が狭まる区間を自車両が走行する場面を例に挙げて、本発明を説明する。本実施形態では、第1実施形態に対して、制御装置180が実現するオフセット要否判定機能と目標走行経路生成機能が異なる以外は、第1実施形態と同じであり、その記載を援用する。また、以下の説明では、制御装置180の機能及び制御処理のうち、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。説明が省略された機能については、第1実施形態に記載された内容を援用する。
本実施形態では、制御装置180は、オフセット要否判定機能により、車線幅が狭まる区間を自車両が走行する際に、走路中心線に対してのオフセット処理の要否を判定する。
制御装置180は、走路幅と閾値(以降、第2閾値ともいう)とを比較し、走路幅が第2閾値よりも小さい場合、オフセット処理が必要と判定する。一方、制御装置180は、走路幅が第2閾値以上の場合、オフセット処理が不要と判定する。第2閾値は、走路幅が狭まる方向に変化したか否かを判定するための閾値であって、予め定められた閾値である。第2閾値は、所定区間における走路幅の平均値であってもよいし、道路の種別に応じて予め設定された走路幅の下限値であってもよい。走路幅の下限値は、例えば、道路幅に比例した関係を有するように予め設定される。
また本実施形態では、制御装置180は、走路幅が第2閾値よりも小さい場合、オフセット処理が必要と判定せず、さらに自車両Vの周辺に障害物が存在するか否かを判定することで、オフセット処理の要否を判定する。例えば、制御装置180は、測距センサ140による検出結果及び/又はカメラ150による撮像画像から、自車両Vの周辺に障害物が存在するか否かを判定する。制御装置180は、自車両Vの周辺に障害物が存在しないと判定された場合、走路中心線に対するオフセット処理が必要と判定する。
図7は、道路幅が狭まる区間を自車両が走行する際に、第2実施形態に係る制御装置180が実現する機能を説明するための図である。図7は、自車両Vが車線L3において一時的に道路幅が狭まる区間を通過する場面を示す。図7は、車線L3を真上から見た俯瞰図である。
図7の例において、制御装置180は、走路境界情報取得機能により、自車両Vの走路を形成する走路境界の情報を取得する。制御装置180は、自車両Vの走路に対して左側に位置する縁石2(実線)を第1走路境界A(一転鎖線)として認識するとともに、第1走路境界Aの情報として、縁石2の位置及び形状の情報を取得する。また制御装置180は、自車両Vの走路に対して右側に位置するセンターライン3(点線)を第2走路境界B(一転鎖線)として認識するとともに、第2走路境界Bの情報として、センターライン3の位置及び形状の情報を取得する。
また図7の例において、制御装置180は、走路幅算出機能により、走路幅を算出する。制御装置180は、自車両Vの車幅方向における第1走路境界Aと第2走路境界Bの間の距離である走路幅Δd1~走路幅Δd6を算出する。
また図7の例において、制御装置180は、オフセット要否判定機能により、走路幅Δd1~走路幅Δd6それぞれについて、第2閾値との比較処理を実行する。例えば、第2閾値が所定区間における走路幅の平均値の場合、制御装置180は、走路幅Δd1~走路幅Δd3、走路幅Δd5、及び走路幅Δd6の地点における走路中心線については、走路幅が第2閾値以上のためオフセット処理が不要と判定する。また制御装置180は、走路幅Δd4の地点における走路中心線については、走路幅が第2閾値より小さいためオフセット処理が必要と、一次判定を行う。さらに制御装置180は、自車両Vの周辺に障害物が存在するか否かを判定し、障害物が存在すると判定された場合、走路幅Δd4の地点における走路中心線ついては、オフセット処理が必要と判定する。
次に、第2実施形態に係る制御装置180が実現する目標走行経路生成機能について説明する。本実施形態においても、第1実施形態と同様に、制御装置180は、目標走行経路生成機能により、第1走路境界の粗さと第2走路境界の粗さを比較し、第1走路境界及び第2走路境界のうち粗さが小さい走路境界を基準にして、自車両の目標走行経路を生成する。
本実施形態では、第1実施形態と比べて、オフセット量及びオフセットの方向の演算方法が異なる。本実施形態では、制御装置180は、下記式(7)及び式(8)を用いて、オフセットの方向を含むオフセット量を演算する。
ただし、上記式(7)において、jはオフセット処理が必要な地点を示し、O
jはオフセット量を示し、R
bは第1走路境界の粗さと第2走路境界の粗さの比率を示し、Δd
jはオフセット処理が必要な地点における走路幅を示し、d
th_minは第2閾値を示す。また上記式(8)において、S
θLは第1走路境界における角度の積算値を示し、S
θRは第2走路境界における角度の積算値を示す。
なお、走路境界の粗さの比率Rbについて、値の正負を判定することで、走路中心線をオフセットする方向を特定する点については、第1実施形態と同様である。すなわち、制御装置180は、走路境界の粗さの比率Rbが正の値である場合(Rb>0)、自車両の進行方向に対して左方向をオフセット方向として特定する。一方、制御装置180は、走路境界の粗さの比率Rbが負の値である場合(Rb<0)、自車両の進行方向に対して右方向をオフセット方向として特定する。また制御装置180は、走路境界の粗さの比率Rbがゼロの場合(Rb=0)、オフセット処理が不要と判定する。
図8は、第2実施形態に係る目標走行経路を説明するための図である。図8に示す場面は図7に示す場面と同じため、図7についての説明を適宜援用する。図8において、走路中心線Cは、制御装置180により生成された第1走路境界A及び第2走路境界Bの中心線である。走路中心線Cは道路幅が狭まる区間において自車両Vの進行方向に対して右側に膨らむ。また、図8において、制御装置180は、第1走路境界Aの粗さ及び第2走路境界Bの粗さを比較し、粗さが少ない走路境界を第2走路境界Bとして特定する。
図8の例において、制御装置180は、オフセット処理が必要と判定された地点について、上記式(7)及び式(8)を用いて、オフセット量及びオフセットの方向を演算する。制御装置180は、走路中心線C上の3つの地点についてオフセット処理を実行することで、オフセット処理された走路中心線C’を生成する。制御装置180は、オフセット処理された走路中心線C’を自車両の目標走行経路とする。オフセット処理が必要と判定された走路中心線C上の地点でオフセット処理することで、走路中心線C’は道路幅が狭まる区間において自車両の進行方向に沿う形状となる。なお、図8の例に示すオフセット処理が実行された3つの地点は一例であって、オフセット処理を実行する地点の数は特に限定されない。
図9は、本実施形態の制御処理のフローを示すブロック図である。ステップS11及びステップS12は、第1実施形態におけるステップS1及びステップS2に対応するため(図6参照)、これらのステップについての説明は第1実施形態の記載を援用する。
ステップS13にて、制御装置180は、ステップS12にて算出された走路幅が第2閾値よりも小さいか否かを判定する。第2閾値は、例えば、所定区間における走路幅の平均値であって、予め定められた値である。制御装置180は、ステップS12にて算出された、走路上の各地点における走路幅に対して、第2閾値との比較処理を実行する。走路幅が第2閾値よりも大きい場合、ステップS14に進む。一方、走路幅が第2閾値以上の場合、制御装置180は、図9に示す制御処理を終了する。ステップS13にて制御処理が終了するためには、ステップS12にて算出された全ての走路幅が第2閾値以上の場合でなければならず、走路上の何れかの地点において、走路幅が第2閾値よりも小さいと判定されると、ステップS14に進む。
ステップS14にて、制御装置180は、自車両の周辺に障害物が存在するか否かを判定する。例えば、制御装置180は、測距センサ140による検出結果及び/又はカメラ150による撮像画像に基づいて、障害物の存否を判定する。障害物が存在すると判定された場合、ステップS15に進む。一方、障害物が存在すると判定された場合、制御装置180は、図9に示す制御処理を終了する。
ステップS15及びステップS16は、第1実施形態におけるステップS4及びステップS5に対応するため、これらのステップについての説明は第1実施形態の記載を援用する。
ステップS17にて、制御装置180は、ステップS15にて特定された粗さが小さい走路境界を基準とするオフセット量を演算する。例えば、制御装置180は、上記式(7)及び式(8)を用いて、オフセット量を演算する。
ステップS18にて、制御装置180は、走路中心線に対してオフセット処理を実行することで、オフセット処理された走路中心線を生成する。制御装置180は、オフセット処理された走路中心線を自車両の目標走行経路とする。例えば、図8の例に示すように、制御装置180は、走路中心線C上の各地点において演算されたオフセット方向及びオフセット量に基づいて、走路中心線Cをオフセットさせることで、オフセット処理された走路中心線C’を生成する。図8の例では、制御装置180は、粗さが小さい第2走路境界Bを基準としたオフセット処理を実行する。これにより、粗さが小さい第2走路境界Bを基準とした目標走行経路を生成することができるため、道路幅が一時的に狭まる区間においても、道路幅の変化に連動して走行経路の形状が変化することを抑制できる。
ステップS19は、第1実施形態におけるステップS8に対応するため、このステップについての説明は第1実施形態の記載を援用する。ステップS8の処理が終了すると、制御装置180は、図10に示す制御処理を終了する。
以上のように、本実施形態では、制御装置180は、第1走路境界と第2走路境界の間の距離である走路幅が、走路幅が狭まる方向に変化したか否かを判定するための第2閾値未満であり、かつ、自車両の周辺に障害物が存在しない場合、生成された目標走行経路に基づき自車両を制御する。これにより、道路幅が狭まる区間を通過する前に自車両を目標走行経路に沿って走行させることができ、道路幅が狭まることに伴う自車両のふらつきを抑制できる。また、自車両の周辺に障害物が存在しない場合、オフセット処理された走路中心線を走行するため、例えば、路上駐車する車両の存在により道路幅が狭まっている場合、オフセット処理された走路中心線に沿った走行が行われることを防ぐことができる。この場合、路上駐車車両である障害物を回避するように自車両を走行させることができる。
また、本実施形態では、第2閾値は、所定区間における走路幅の平均値である。これにより、道路幅が異なる道路の種別が存在しても、自車両のふらつきを抑止できる。例えば、高速道路における車線幅と市街地における車線幅が異なっていても、いずれの道路においても道路幅が狭まる区間を自車両が通過する際に、道路幅の変化に伴う自車両のふらつきを抑制できる。
加えて、本実施形態では、第2閾値は、道路の種別に応じて予め設定された走路幅の下限値であってもよい。例えば、走路幅が狭まる区間が断続的に存在し、かつ、その狭まる距離が区間ごとに異なる道路を自車両が走行する場合であっても、走路幅の下限値により、各区間において適切にオフセット処理を実行することができる。その結果、道路幅が複雑に変化する道路を走行する場合であっても、道路幅の変化に伴う自車両のふらつきを抑制できる。
さらに、本実施形態では、制御装置180は、走路幅と第2閾値との差分と、第1走路境界の粗さと第2走路境界の粗さとの比率とに基づいて、粗さの少ない走路境界を基準とするオフセット量を演算し、走路中心線をオフセット量だけオフセットすることで、目標走行経路を生成する。これにより、粗さの少ない走路境界、すなわち自車両の向きの変化が小さい走路境界を基準とした目標走行経路が生成される。その結果、道路幅が狭まる区間の前後において、道路幅の変化に連動して目標走行経路の形状が変化することを抑制できる。
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、上述の実施形態の変形例として、制御装置180は、走路境界の粗さを演算する対象区間を設定する。制御装置180は、自車両の車速に基づいて、演算対象区間を設定する。例えば、制御装置180は、車速センサ130から入力される自車両の車速情報に基づいて、走路境界の粗さを演算する対象区間を設定する。例えば、制御装置180は、自車両の車速に比例して演算対象区間が広がるように、演算対象区間を設定する。自車両の車速に応じて演算対象区間を設定するため、自車両の車速が変化しても、適切な範囲で走路境界の粗さを演算することができる。
また、制御装置180は、走路幅が第1閾値よりも大きい区間を含むように、走路境界の粗さを演算する対象区間を設定してもよい。例えば、制御装置180は、走路幅が第1閾値よりも大きい地点のうち自車両に対して最も近い地点を、対象区間の始点に設定する。そして、制御装置180は、設定された始点から自車両の進行方向に対して所定間隔ごとに、走路幅と第1閾値と比較処理を実行し、走路幅が第1閾値以下となる地点を探索する。制御装置180は、走路幅が第1閾値以下となる地点が存在した場合、当該地点を演算対象区間の終点に設定する。制御装置180は、始点から終点までの区間を、走路境界の粗さを演算する対象区間として設定する。少なくとも道路幅が広がる区間に対して、走路境界の粗さが演算されるため、演算対象区間内において、オフセット処理された走路中心線に基づく車両制御で自車両を走行させることができる。その結果、例えば、高速道路における分岐点のように、道路幅が広がる区間が比較的長い場合であっても、道路幅の変化に伴う自車両のふらつきを抑制できる。
図10は、走路境界の粗さを演算する対象区間を説明するための図である。図10(A)に示す場面は、図2(A)に示す場面と同じため、図2(A)についての説明を適宜援用する。
図10(A)の例において、制御装置180は、自車両Vの走路幅が第1閾値よりも大きい区間を含むように、第1走路境界A及び第2走路境界Bの粗さを演算する対象区間R1を設定する。自車両Vは、対象区間R1において、オフセット処理された走路中心線に沿って走行するため、少なくとも道路幅が広がる区間で自車両がふらつくことを抑制できる。また、道路幅の変化に伴い自車両がふらつく可能性がある領域に限り、制御処理を実行するため、演算負荷を軽減できる。
図10(B)は、道路幅が広がる区間を自車両Vが走行する他の場面を示す。図10(B)の例において、制御装置180は、自車両Vの走路幅が第1閾値よりも大きい区間を含むように、第1走路境界A及び第2走路境界Bの粗さを演算する対象区間R2を設定する。
図10(A)及び図10(B)は、道路幅が広がる区間という点で共通するが、図10(A)では、バス停留所1が存在することで道路幅が広がり、図10(B)では、車線L4の車線幅が広がることで道路幅が広がり、すなわち、図10(A)及び図10(B)では、道路幅が広がる要因が異なる。道路幅が広がる要因の種別にかかわらず、道路幅の変化に伴う自車両のふらつきを抑制できる。
また、制御装置180は、走路幅が第2閾値よりも小さい区間を含むように、走路境界の粗さを演算する対象区間を設定してもよい。例えば、制御装置180は、走路幅が第2閾値よりも小さい地点のうち自車両に対して最も近い地点を、対象区間の始点に設定する。そして、制御装置180は、設定された始点から自車両の進行方向に対して所定間隔ごとに、走路幅と第2閾値と比較処理を実行し、走路幅が第2閾値以上となる地点を探索する。制御装置180は、走路幅が第2閾値以上となる地点が存在した場合、当該地点を対象区間の終点に設定する。制御装置180は、始点から終点までの区間を、走路境界の粗さを演算する対象区間として設定する。少なくとも道路幅が狭まる区間に対して、走路境界の粗さが演算されるため、演算対象区間内において、オフセット処理された走路中心線に基づく車両制御で自車両を走行させることができる。その結果、例えば、車線の幅員減少区間のように、道路幅が狭まる区間が比較的長い場合であっても、道路幅の変化に伴う自車両のふらつきを抑制できる。
図10(C)は、道路幅が狭まる区間を自車両Vが走行する場面を示す。図10(C)に示す場面は、図7に示す場面と同じため、図7についての説明を適宜援用する。
図10(C)の例において、制御装置180は、自車両Vの走路幅が第2閾値よりも小さい区間を含むように、第1走路境界A及び第2走路境界Bの粗さを演算する対象区間R3を設定する。図10(A)の例を用いて説明したのと同様に、道路幅の変化に伴い自車両がふらつく可能性がある領域に限り、制御処理を実行するため、演算負荷を軽減できる。
また、上述した第1実施形態及び第2実施形態では、隣り合う区間における走路境界で形成される角度を演算し、演算対象区間にわたって積算された角度の積算値、又は演算対象区間にわたって演算された角度の二乗和を走路境界の粗さとして演算したが、走路境界の粗さを規定する方法はこれに限られない。例えば、制御装置180は、走路境界の粗さを演算する対象区間において、所定区間ごとに走路境界の曲率を演算し、下記式(9)及び式(10)で示すように、対象区間にわたって積算された曲率の積算値を、走路境界の粗さとして演算してもよい。
ただし、上記式(9)及び式(10)において、iは分割された走路境界の区間の数を示す。また上記式(9)において、S
ρLは第1走路境界における曲率の積算値を示し、ρ
Liは各区間における第1走路境界の曲率を示す。また上記式(10)において、S
ρRは第2走路境界における曲率の積算値を示し、ρ
Riは各区間における第2走路境界の曲率を示す。曲率を用いて走路境界の粗さを規定することで、角度を用いて走路境界の粗さを規定するよりも、走路境界の粗さをより精度よく評価できる。
また、制御装置180は、下記式(11)及び式(12)で示すように、所定区間にわたって演算された曲率の二乗和を、走路境界の粗さとして演算してもよい。
ただし、上記式(11)及び式(12)において、i、S
ρL、ρ
Li、S
ρR、及びρ
Riは上記式(9)及び上記式(10)と同じため、説明については適宜援用する。走路境界の粗さには、曲率の二乗値が反映されるため、各区間における走路境界の曲率が大きいほど、より走路境界の粗さに反映させることができる。
また、上述した第1実施形態では、道路幅が広がる区間を自車両が走行する場面を例に挙げ、上述した第2実施形態では、道路幅が狭まる区間を自車両が走行する場面を例に挙げたが、制御装置180は、第1実施形態における走行支援方法と、第2実施形態における走行支援方法を同時に実行してもよい。すなわち、制御装置180は、走路幅に対して、第1閾値及び第2閾値との比較処理を実行し、走路幅の大きさに応じて、道路幅が広がる区間を走行する際の走行支援方法、又は道路幅が狭まる区間を走行する際の走行支援方法のいずれかを実行してもよい。これにより、道路幅の変化の方向に限定されることなく、道路幅が変化する区間を自車両が走行する際に、道路幅の変化に伴う自車両のふらつきを抑制できる。例えば、道路幅の増減が繰り返すような区間を自車両が走行する場合であっても、道路幅の変化に伴う自車両のふらつきを抑制できる。