以下、図面を参照して各実施形態を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成を示すブロック図である。このX線診断装置1は、データ収集系として、X線発生部3、X線検出器5、寝台7、Cアーム9、X線コントローラ11、高電圧発生装置13、及びCアーム・寝台機構制御部15を備えている。また、X線診断装置1は、データ処理系として、位置データメモリ21、システム制御部22、入力インタフェース23、ディスプレイ24及び画像データ処理部25を備えている。
ここで、X線発生部3は、X線管3a及びX線絞り器3bを備えている。
X線管3aは、X線を発生させる真空管であり、陰極(フィラメント)より放出された熱電子を高電圧によって加速させ、この加速電子をタングステン陽極に衝突させることでX線を発生させる。
X線絞り器3bは、X線管3aとX線検出器5の間に位置し、金属板としての鉛板で構成される。X線絞り3bは、X線コントローラ11により制御され、開口領域外のX線を遮蔽することにより、X線管3aが発生したX線を、被検体Pの関心領域にのみ照射されるように絞り込む。例えば、X線絞り3aは複数枚の絞り羽根を有し、これらの絞り羽根をスライドさせることで、X線の遮蔽される領域を任意のサイズに調節する。X線絞りの絞り羽根は、領域設定回路25cにより設定された関心領域に応じてX線コントローラ11により制御され、図示しない駆動装置により駆動される。
X線検出器5は、被検体Pを透過したX線を検出する。このようなX線検出器5としては、X線を直接電荷に変換するものと、光に変換した後、電荷に変換するものとが使用可能であり、ここでは前者を例に説明するが後者であっても構わない。すなわち、X線検出器5は、例えば、被検体Pを透過したX線を電荷に変換して蓄積する平面状のFPD(Flat Panel Detector)と、このFPDに蓄積された電荷を読み出すための駆動パルスを生成するゲートドライバとを備えている。FPDの大きさは一般的に8~12インチである。FPDは微小な検出素子を列方向及びライン方向に2次元的に配列して構成される。各々の検出素子はX線を感知し、入射X線量に応じて電荷を生成する光電膜と、この光電膜に発生した電荷を蓄積する電荷蓄積コンデンサと、電荷蓄積コンデンサに蓄積された電荷を所定のタイミングで出力するTFT(薄膜トランジスタ)を備えている。蓄積された電荷はゲートドライバが供給する駆動パルスによって順次読み出される。
X線検出器5の後段には、図示しない投影データ生成回路を備える。投影データ生成回路は、電荷・電圧変換器、A/D変換器及びパラレル・シリアル変換器を備えている。電荷・電圧変換器は、FPDから行単位あるいは列単位でパラレルに読み出された電荷を電圧に変換する。A/D変換器は、この電荷・電圧変換器の出力をデジタル信号に変換する。パラレル・シリアル変換器は、デジタル変換されたパラレル信号を時系列的なシリアル信号に変換する。投影データ生成回路は、このシリアル信号を時系列的な投影データとして画像データ処理部25に出力する。
寝台7は、被検体Pを搭載したまま起倒及び位置決め動作可能な機構を有する。寝台7には、その位置などの幾何学的配置に係る情報を検出する状態検出器(図示せず)が設けられている。状態検出器は、寝台7の幾何学的配置に係る情報をCアーム・寝台機構制御部15に出力する。
Cアーム9は、X線発生部3とX線検出器5とを被検体P及び寝台7の天板を挟んで対向するように保持する。詳しくは、Cアーム9は、寝台7の天板に垂直なZ方向と、天板の長軸方向に沿ったY方向との両者に直交するX方向の軸を中心に回転可能に保持部(図示せず)に保持されている。また、Cアーム9は、Y方向の軸を中心とした略円弧形状を有し、略円弧形状に沿ってスライド可能に保持部に保持されている。あるいは、Cアーム9は、保持部を中心としてX方向の軸を中心とした回転をすることができ、スライドとこの回転の組み合わせにより様々な角度方向からX線画像を観察することを可能とする。Cアーム9は、このようなスライド動作と回転動作を実現するための複数の動力源が該当する適当な箇所に備えられている。さらに、Cアーム9には、その角度または姿勢や位置といった幾何学的配置に係る情報を検出する状態検出器(図示せず)がそれぞれ備えられている。状態検出器は、例えば回転角や移動量を検出するポテンショメータや、位置検出センサであるエンコーダ等で構成される。エンコーダとしては、例えば磁気方式、刷子式、あるいは光電式等の、いわゆるアブソリュートエンコーダが使用可能となっている。また、状態検出器としては、回転変位をデジタル信号として出力するロータリエンコーダあるいは直線変位をデジタル信号として出力するリニアエンコーダなど、様々な種類の位置検出機構が適宜、使用可能となっている。この種の状態検出器は、Cアーム9の幾何学的配置に係る情報をCアーム・寝台機構制御部15に出力する。なお、Cアーム9の幾何学的配置に係る情報は、X線管及びX線検出器の幾何学的配置に係る情報に相当する。
X線コントローラ11は、システム制御部22及び切替えタイミング取得回路25dにより制御され、X線絞り器3b、X線制御部13a及び高電圧発生器13bを制御する。
高電圧発生装置13は、X線制御部13a及び高電圧発生器13bを備えている。
X線制御部13aは、X線コントローラ11から供給される、X線管3aによるX線の照射条件に基づいて、高電圧発生器13bにおける管電流、管電圧、印加時間、印加タイミング、繰り返し周波数等を制御する。
高電圧発生器13bは、X線コントローラ11により制御され、X線管3aの陰極から発生する熱電子を加速するために、陽極と陰極の間に印加する高電圧を発生させてX線管3aへ出力する。
Cアーム・寝台機構制御部15は、システム制御部22に制御される。Cアーム・寝台機構制御部15は、Cアーム9及び寝台7を個別に駆動制御すると共に、図示しない状態検出器から受けたCアーム9の幾何学的配置に係る情報と、寝台7の幾何学的配置に係る情報とを位置データメモリ21に書き込む。
位置データメモリ21は、Cアーム9の幾何学的配置に係る情報と、寝台7の幾何学的配置に係る情報とを保存する。
システム制御部22は、画像データの収集に関する制御、及び収集した画像データの画像処理、画像再生処理等に関する制御を行う中央処理装置である。システム制御部22は、例えば、入力インタフェース23から入力されたコマンド信号、及び各種初期設定条件等の情報を一旦記憶した後、これらの情報をX線コントローラ11、Cアーム・寝台機構制御部15及び/又は画像データ処理部25に送信する。
入力インタフェース23は、被検体情報の入力、X線照射条件を含むX線撮影条件の設定、各種コマンド信号の入力等を行う。入力インタフェース23は、例えば、Cアーム9の移動指示、関心領域(ROI)の設定などを行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、及び表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等によって実現される。入力インタフェース23は、システム制御部22に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し、システム制御部22へと出力する。なお、本明細書において入力インタフェース23はマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号をシステム制御部22へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース23の例に含まれる。
ディスプレイ24は、医用画像などを表示するディスプレイ本体と、ディスプレイ本体に表示用の信号を供給する内部回路、ディスプレイ本体と内部回路とをつなぐコネクタやケーブルなどの周辺回路から構成されている。内部回路は、画像データ処理部25から供給される画像データに被検体情報や投影データ生成条件等の付帯情報を重畳して表示データを生成し、得られた表示データに対しD/A変換とTVフォーマット変換を行なってディスプレイ本体に表示する。
画像データ処理部25は、画像演算回路25a、画像データメモリ25b、領域設定回路25c、切替えタイミング取得回路25d及び表示用データ生成回路25eを備えている。表示用データ生成回路25eは、画素値補正回路25f及びカラー画像作成回路25gを含んでいる。このような画像データメモリ25b、領域設定回路25c、切替えタイミング取得回路25d、表示用データ生成回路25e、画素値補正回路25f及びカラー画像作成回路25gは、医用画像処理装置200を構成している。
画像演算回路25aは、X線検出器5による検出結果に基づくX線画像を生成する。詳しくは、画像演算回路25aは、X線検出器5の投影データ生成回路から出力される時系列的な投影データを投影データ記憶回路(図示せず)に順次保存して2次元投影データからなるX線画像を生成する。このX線画像は、画像データメモリ25bに保存される。
なお、画像演算回路25aが生成可能なX線画像としては、マスク画像(非造影像)、コントラスト画像(造影像)及びDSA画像(差分画像)がある。マスク画像は、造影剤注入前のX線画像であり、骨像を有する投影像である。コントラスト画像は、造影剤注入後のX線画像であり、骨及び血管像を有する投影像である。DSA画像は、コントラスト画像とマスク画像との差分を表すX線画像であり、血管像を有する投影像である。例えば、DSA画像は、画像データメモリ25bに記憶したマスク画像と、X線検出器5の出力から生成したコントラスト画像との差分を演算することにより生成可能となっている。なお、マスク画像は、X線の照射条件毎に生成される。例えば、第1の管電圧を含む第1の照射条件と、第2の管電圧を含む第2の照射条件とがある場合には、第1の照射条件に基づく第1のマスク画像と、第2の照射条件に基づく第2のマスク画像とが生成される。
これに加え、画像演算回路25aは、X線管3a及びX線検出器5を被検体Pの周囲で連続的に回動することによって収集され、画像データメモリ25bに保存された投影データに対し所定の再構成処理を行なって3D画像データを生成してもよい。得られた3D画像データは画像データメモリ25bに保存される。この場合、画像演算回路25aは、2次元のX線画像に当該3D画像データをリアルタイムに重畳させることにより3Dロードマップ画像を生成してもよい。なお、「リアルタイム」とは、X線画像の撮像と並行して処理を行うことを指すものとする。例えば、ここでは、2次元のX線画像を順次撮像し、それと並行して、撮像された2次元のX線画像に3D画像データを重畳して3Dロードマップ画像を生成する処理を実行する。
画像データメモリ25bは、画像演算回路25aにより生成されたX線画像、3D画像及び3Dロードマップ画像といった画像データを保存する。
領域設定回路25c(関心領域設定部)は、X線画像に関心領域を設定する。例えば、領域設定回路25cは、複数のX線画像のいずれかのX線画像における画素値が閾値よりも高い領域を関心領域として設定してもよい。また例えば、領域設定回路25cは、以下の(r1)~(r4)のいずれかの方法により、関心領域を設定可能としてもよい。
(r1)操作者による入力インタフェース23の操作に応じて関心領域を設定する方法。例えば、領域設定回路25cは、操作者による入力インタフェース23の操作により、3Dロードマップ画像内の3D画像(3Dボリューム画像)に関心領域を設定してもよい。この場合、3Dロードマップ画像が被検体Pに位置合わせされていることから、関心領域を正確な位置に設定することができる。
(r2)管電圧の切替え前又は切替え後のX線画像全体において、画素値が閾値を超えた領域を関心領域として設定する方法。なお、「管電圧の切替え」は、「kV切替え」と呼んでもよい。
(r3)例えば図2に示すように、管電圧の切替え前又は切替え後のX線画像30内の指定された領域(以下、指定領域ともいう)31のうち、画素値が閾値を超えた領域32を関心領域として設定する方法。ここで、指定領域31は、X線画像の撮像対象部位に関する解剖学的情報に基づいて指定されてもよく、操作者による入力インタフェース23の操作に応じて指定されてもよい。解剖学的情報は、撮像対象部位の情報と、X線管3a及びX線検出器5の幾何学的配置に係る情報とを含んでもよい。すなわち、領域設定回路25cは、例えば、システム制御部22から取得した検査プロトコル内の撮像対象部位の情報と、システム制御部22から取得したCアーム9の角度及び位置に基づいて、視野の位置を推定し、視野の位置から指定領域31を指定してもよい。この指定領域31は、例えば、X線画像の中心領域(又は上側領域)というように、(術者が指定可能な領域よりも)広い領域を設定すればよい。また、領域設定回路25cは、X線管3a及びX線検出器5の幾何学的配置に係る情報に加え、寝台7の位置・SID(source-image distance:線源-画像間距離)・FOV(field of view:視野)、被検体情報(身長・体重)、被検体体位情報などを用いて、指定領域31を指定してもよい。
(r4)例えば図3に示すように、管電圧の切替え直前のX線画像30aと、当該X線画像30aから1~数フレーム前のX線画像30bとの差分を求め、当該差分が閾値を超えた領域を関心領域として設定する方法。
切替えタイミング取得回路25d(タイミング取得部)は、管電圧の切替えを伴い時系列に沿って撮像される複数のX線画像における当該管電圧の切替えタイミングに関する情報を取得する。具体的には例えば、切替えタイミング取得回路25dは、システム制御部22から管電圧の切替えタイミングに関する情報を取得する。管電圧の切替えタイミングに関する情報としては、例えば、管電圧の切替えタイミングを示す切替え信号が使用可能となっている。
表示用データ生成回路25eは、画像演算回路25aにより生成されたX線画像に基づく表示用データを生成し、当該表示用データをディスプレイ24に送出する。ここで、表示用データ生成回路25eは、画素値補正回路25f(画素値補正部)及びカラー画像作成回路25g(カラー画像作成部)を含んでいる。なお、画素値補正回路25f又はカラー画像作成回路25gは、必須ではなく、省略してもよい。画素値補正回路25fを省略する場合には、カラー画像作成回路25gの他に、後述するウインドウ幅変更回路を用いてもよい。
画素値補正回路25fは、複数のX線画像における切替えタイミングの前の複数の第1X線画像と、切替えタイミングの後の複数の第2X線画像とのうちの少なくとも一方における画素値の補正を実行する。画素値補正回路25fは、例えば図4及び図5に示すように、複数のX線画像のうち、切替えタイミング取得回路25dに取得された切替えタイミングT_swの後の複数の第2X線画像における画素値の補正を実行する。なお、画素値補正回路25fは、複数のX線画像の撮像中に、複数の第2X線画像に対して補正を実行してもよく、複数のX線画像の撮像後に、複数の第2X線画像に対して補正を実行してもよい。なお、複数のX線画像の撮像中に補正を実行する場合には、複数のX線画像のうち、切替えタイミングの前の複数の第1X線画像における画素値の補正を実行しない。複数のX線画像の撮像後に補正を実行する場合には、切替えタイミングの前の複数の第1X線画像における画素値の補正を実行してもよく、切替えタイミングの後の複数の第2X線画像における画素値の補正を実行してもよく、両画像の画素値の補正を実行してもよい。複数のX線画像の撮像後に補正を実行する場合については、後述する。言い換えると、補正処理は、リアルタイムでも撮像後でも実行可能である。補正する画素値は、管電圧の切替え前後のいずれか一方又は両方でもよい。但し、リアルタイムで補正処理する場合には、補正する画素値は、管電圧の切替え後のみが適用可能である。第1の実施形態では、管電圧の切替え後に補正処理する場合を述べる。また、画素値補正回路25fは、関心領域内の画素値に基づいて、補正に用いるパラメータ値を決定してもよい。
ここで、画素値補正回路25fは、複数の第1X線画像のうちの切替えタイミングT_swの直前の第1X線画像の画素値LBeforeと、複数の第2X線画像のうちの切替えタイミングT_swの直後の第2X線画像の画素値LAfterとに基づいて、補正に用いるパラメータ値CAfterを決定してもよい。なお、画素値補正回路25fは、複数の第1X線画像のうちの少なくとも一つと、複数の第2X線画像のうちの少なくとも一つとに基づいて、補正に用いるパラメータ値を決定してもよい。あるいは、画素値補正回路25fは、複数の第1X線画像のうちの二つ以上及び複数の第2X線画像のうちの二つ以上に基づいて、補正に用いるパラメータ値を決定してもよい。ここで、複数の第1X線画像のうちの二つ以上は、複数の第1X線画像のうちの切替えタイミングT_swの直前の第1X線画像を含んでもよく、複数の第2X線画像のうちの二つ以上は、複数の第2X線画像のうちの切替えタイミングT_swの直後の第2X線画像を含んでもよい。これらの場合、LBefore は、例えば、管電圧の切替えタイミングの直前の1又は複数フレームにおける関心領域内の平均の画素値としてもよい。同様に、LAfter は、例えば、管電圧の切替えタイミングの直後の1又は複数フレームにおける関心領域内の平均の画素値としてもよい。CAfter は、管電圧の切替えタイミングの後の複数の第2X線画像の画素値の補正に用いるパラメータ値であり、例えば次式に示すように決定してもよい。
CAfter = LBefore - LAfter
画素値補正回路25fは、決定したパラメータ値に基づいて、切替えタイミングT_swの後の複数の第2X線画像における画素値の補正を実行する。例えば、画素値補正回路25fは、切替えタイミングT_swの後の複数の第2X線画像における画素値にパラメータ値CAfter を加算することにより、当該画素値の補正を実行してもよい。なお、この例では、負の値のパラメータ値CAfter を加算したが、これに限らず、CAfter を LAfter - LBefore として求めた場合には正の値のパラメータ値CAfter を減算してもよい(但し、LBefore < LAfter )。
カラー画像作成回路25gは、画素値補正回路25fによる補正後の画素値に基づいて画素毎に時間濃度曲線を作成し、時間濃度曲線に基づく血流情報パラメータを算出し、血流情報パラメータに応じた色を各画素に割り当てることによりカラー画像を作成する。血流情報パラメータとしては、TTP(Time To Peak)、PH(Peak Height)、TTA(Time To Arrival)、WIDTH、MTT(Mean Transit Time)、AUC(Area Under Curve)等がある。なお、時間濃度曲線は、横軸が時間、縦軸が造影剤濃度を示し、造影剤濃度(画素値)の時間変化を表す曲線である。ここで、TTPは、造影剤濃度がピークに到達するまでの時間を示す。PHは、造影剤濃度のピーク値を示す。AUCは、最初の時相から最後の時相までの造影剤濃度の時間積分値を示す。AUCは、時間濃度曲線及び横軸(時間軸)で囲まれる領域の面積に相当する。TTAは、時間濃度曲線において、造影剤濃度が閾値THを最初に超えた時相(時刻)であり、造影剤の到達時間を示す。閾値THとしては、例えば、ピーク値の30~60%の範囲内の任意の値が使用可能である。WIDTHは、造影剤濃度が閾値THを超えている期間(時間幅)であり、閾値THがピーク値の50%の場合には半値幅と呼んでもよい。MTTは、造影剤の平均通過時間を示す。なお、カラー画像作成回路25gは、補正後の画素値に限らず、補正前後に亘る画素値に基づいて画素毎に時間濃度曲線を作成し、時間濃度曲線に基づく血流情報パラメータを算出し、当該血流情報パラメータに応じた色を各画素に割り当てることによりカラー画像を作成してもよい。具体的には例えば、カラー画像作成回路25gは、予め血流情報パラメータ毎に、血流情報パラメータの値と色情報とを対応付けたテーブルを用い、血流情報パラメータの値を画素毎に色情報に対応付けることにより、画素毎の血流情報パラメータの値を色で表すカラー画像(パラメトリック画像)を作成する。このようなカラー画像は、例えば、DSA画像の血管の上流側から下流側に向けて各画素のピーク到達時間(TTP)の値がt1,t2,t3,t4,t5と長くなるとき、TTPの値に応じて各画素を、赤(t1)、黄色(t2)、黄緑(t3)、水色(t4)、青(t5)のように色付けして作成される。作成されたカラー画像を含む表示用データは、ディスプレイ24に表示される。ここで、テーブルとしては、例えば、TTP用のテーブル、PH用のテーブル、TTA用のテーブル、WIDTH用のテーブル、MTT用のテーブル及びAUC用のテーブル等が予め準備されている。これに伴い、カラー画像としては、例えば、画素毎にTTPの値が色分けされた画像、画素毎にPHの値が色分けされた画像、画素毎にTTAの値が色分けされた画像、画素毎にWIDTHの値が色分けされた画像、画素毎にMTTの値が色分けされた画像などが適宜、作成可能となっている。このようなカラー画像作成回路25gとしては、例えば、パラメトリック・イメージング(PI)と呼ばれる技術が使用可能となっている。PIは、血管造影時の1画素毎の時間濃度曲線から、造影剤の到達時間や平均通過時間といった血流情報パラメータの値を算出し、血流情報パラメータの値をカラースケール又はグレースケールにより画像化して表示する技術である。カラースケールは、血流情報パラメータの値毎に、カラー画像の色(例、赤から青まで、黄色、緑、水色を介して、連続的に変化するグラデーション)を定めている。グレースケールは、血流情報パラメータの値毎に、白黒画像の階調(例、黒から白まで、濃淡の異なる灰色を介して、連続的に変化するグラデーション)を定めている。本明細書中では、PIに関し、カラースケールにより画像化する場合を例に挙げて述べている。
なお、以上のように構成されたX線診断装置1は、図6に示すように、システム制御部22及び画像データ処理部25といった個別のハードウェア回路と同等のシステム制御機能271及び画像データ処理機能272を処理回路27が実現する構成としてもよい。この処理回路27は、メモリ26内のプログラムを読出実行することにより、システム制御部22に対応するシステム制御機能271と、画像データ処理部25に対応する画像データ処理機能272とを実現する。画像データ処理機能272は、画像演算機能272a、領域設定機能272c、切替えタイミング取得機能272d及び表示用データ生成機能272eを含んでいる。表示用データ生成機能272eは、画素値補正機能272f及びカラー画像作成機能272gを含んでいる。画像演算機能272a、領域設定機能272c、切替えタイミング取得機能272d、表示用データ生成機能272e、画素値補正機能272f及びカラー画像作成機能272gは、それぞれ画像演算回路25a、領域設定回路25c、切替えタイミング取得回路25d、表示用データ生成回路25e、画素値補正回路25f及びカラー画像作成回路25gに対応する。この種のプログラムとしては、例えば、システム制御機能271、画像演算機能272a、領域設定機能272c、切替えタイミング取得機能272d、画素値補正機能272f及びカラー画像作成機能272gをコンピュータに実現させるための情報処理プログラムが使用可能となっている。あるいは、システム制御機能271をコンピュータに実現させるための制御プログラムと、画像演算機能272a、領域設定機能272c、切替えタイミング取得機能272d、画素値補正機能272f及びカラー画像作成機能272gをコンピュータに実現させるための医用画像処理プログラムとが使用可能となっている。なお、医用画像処理プログラムは、幾つかの医用画像処理プログラムに分けてもよい。例えば、画像演算機能272aをコンピュータに実現させるための第1の医用画像処理プログラムと、領域設定機能272cをコンピュータに実現させるための第2の医用画像処理プログラム、切替えタイミング取得機能272d及び画素値補正機能272fをコンピュータに実現させるための第3の医用画像処理プログラム、カラー画像作成機能272gをコンピュータに実現させるための第4の医用画像処理プログラムなどとしてもよい。また、各々の医用画像処理プログラムは、適宜、組み合わせてもよい。例えば、第3の医用画像処理プログラムは、適宜、第2及び第4の医用画像処理プログラムの少なくとも一方を含んでもよい。また、メモリ26は、位置データメモリ21及び画像データメモリ25bに保存される情報を記憶し、さらにプログラムを記憶する。メモリ26、入力インタフェース23、ディスプレイ24及び処理回路27は、互いにバスを介して接続され、コンソール装置20に設けられている。メモリ26、入力インタフェース23、ディスプレイ24、処理回路27における領域設定機能272c、切替えタイミング取得機能272d、表示用データ生成機能272e、画素値補正機能272f及びカラー画像作成機能272gは、医用画像処理装置200を構成している。なお、医用画像処理装置200は、後述するように、X線診断装置1とは別の装置として設けてもよい。
メモリ26は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hardware Disk Drive)及び画像メモリなど電気的情報を記録するメモリ本体と、それらメモリ本体に付随するメモリコントローラやメモリインタフェースなどの周辺回路とを備えている。メモリ26は、例えば、処理回路27に実行されるプログラムと、処理回路27により生成されたX線画像と、処理回路27の処理に用いるデータ、処理途中のデータ及び処理後のデータ等とが記憶される。処理回路27の処理に用いるデータは、X線画像の撮像対象部位に関する解剖学的情報を含んでもよい。メモリ26は、3D画像及び3Dロードマップ画像を記憶してもよい。
入力インタフェース23及びディスプレイ24は、前述同様の構成である。
処理回路27は、メモリ26に保存されたプログラムを読み出し実行することにより、プログラムに対応するシステム制御機能271及び画像データ処理機能272を実現するプロセッサである。ここで、「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)等の回路を意味する。なお、メモリ26にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、図6においては単一の処理回路27にてシステム制御機能271、画像データ処理機能272(画像演算機能272a、領域設定機能272c、切替えタイミング取得機能272d、表示用データ生成機能272e(画素値補正機能272f及びカラー画像作成機能272g))が実現されるものとして説明した。しかしながら、これに限らず、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能を実現するものとしても構わない。これらのプロセッサに関する説明は、以下の各実施形態及びその変形例でも同様である。
なお、以下の説明は、図1及び図6に示した構成のうち、図1に示した構成を代表例に挙げて行う。代表例に挙げたシステム制御部22及び画像データ処理部25は、図6に示したシステム制御機能271及び画像データ処理機能272と同様の動作を実行する。従って、このような代表例の説明は、適宜、構成要素名及び参照符号などを読み替えることにより、図6に示した処理回路27の動作の説明に適用することができる。このことは、以下の各実施形態及び各変形例でも同様である。
次に、以上のように構成されたX線診断装置の動作について図7のフローチャートを用いて説明する。以下の説明中、撮像により得られた複数のX線画像のうち、管電圧の切替えタイミングより前に得られたX線画像を第1X線画像ともいい、管電圧の切替えタイミングより後に得られたX線画像を第2X線画像ともいう。
始めに、被検体Pに関する情報(患者氏名、撮像対象部位等)の確認が行われた後、被検体Pを載置した寝台7の位置や、Cアーム9の角度・位置などの幾何学的配置が調整される。寝台7及びCアーム9の幾何学的配置に係る情報は、位置データメモリ21に保存される。また、医師または技師等の操作者により当該被検体Pに対して適切な照射条件(管電圧、管電流、照射レート等)が入力インタフェース23を介して入力される。なお、造影剤注入前に照射条件毎にマスク画像を撮像する場合には、切替えて用いる照射条件のうち、いずれかの照射条件を入力する。
次に、システム制御部22の制御により、X線コントローラ11および高電圧発生装置13を介して、寝台7に載せられた被検体PにX線管3aからX線が照射される。
次に、被検体Pを透過したX線に基づいて、X線画像が生成され表示される。すなわち、X線検出器5では、被検体Pを透過したX線を検出して電気信号に変換する。この変換は、X線から電気信号に変換する直接変換であっても良いし、X線から光を介して電気信号に変換する間接変換であっても良い。X線検出器5で収集された電気信号は、所定の変換処理が施された後、画像データ処理部25に出力される。画像データ処理部25の画像演算回路25aは、X線検出器5の出力に基づいてX線画像を生成し、当該X線画像を表示用データ生成回路25e及び画像データメモリ25bに送出する。表示用データ生成回路25eは、当該X線画像を含む表示用データを生成し、当該表示用データをディスプレイ24に表示する。画像データメモリ25bは、当該X線画像をマスク画像として保存する。また同様に、他の照射条件を入力して、他の照射条件に対応するマスク画像を撮像する。これにより、切替えて用いる照射条件毎に、造影剤注入前の撮影対象部位のマスク画像が撮像される。例えば、高い管電圧を照射条件に含むマスク画像と、低い管電圧を照射条件に含むマスク画像とが撮像される。各マスク画像は、画像データメモリ25bに保存される。マスク画像の撮像後、高い管電圧を含む照射条件が入力され、被検体Pに造影剤が注入され、コントラスト画像(注入時間毎のX線画像)が撮像される。
次に、ステップST1~ST2において、画像演算回路25aは、造影剤注入前の1フレーム目のマスク画像から、造影剤注入後の2フレーム目以降のコントラスト画像を減算し、造影剤の流入血管を表す第1X線画像(DSA画像)を生成する。生成した第1X線画像は、領域設定回路25c、表示用データ生成回路25e及び画像データメモリ25bに入力される。以下、特に断らない限り、画像演算回路25aが生成するX線画像は、DSA画像であり、表示用データ生成回路25eを介してディスプレイ24に表示される一方、画像データメモリ25bに保存される。なお、時系列に沿ったフレームである第1X線画像は、動画像として表示される。また、第1X線画像に代えて、カラー画像作成回路25gによって第1X線画像から作成されたカラー画像(パラメトリック画像)がディスプレイ24に表示されてもよい。
ステップST2の後、ステップST3において、切替えタイミング取得回路25dは、システム制御部22からX線コントローラ11に対して管電圧の切替えタイミングを示す切替え信号が出力されたか否かに応じて、管電圧の切替えタイミングか否かを判定する。判定の結果、管電圧の切替えタイミングでない場合には、ステップST1~ST2の処理を繰返して実行する。ステップST3の判定の結果、管電圧の切替えタイミングの場合には、ステップST4に移行する。
ステップST4において、X線コントローラ11は、システム制御部22からの切替え信号に応じて、現在の高い管電圧を低い管電圧に切替えるように、高電圧発生装置13を制御する。これにより、X線管3aの管電圧が切替えられる。
ステップST4の後、ステップST5において、X線診断装置1は、切替えた管電圧でX線管3aがX線を発生し、当該X線を被検体に照射する。X線検出器5は、被検体を通過したX線を検出して電気信号を出力する。画像演算回路25aは、X線検出器の出力に基づいて、第2X線画像を生成する。
ステップST5の後、ステップST6において、領域設定回路25cは、管電圧の切替えタイミングの直前の第1X線画像又は切替えタイミングの直後の第2X線画像に関心領域を設定する。関心領域の設定動作としては、前述した(r1)~(r4)のいずれの方法を用いてもよい。なお、ここでは、(r3)の方法を用いた場合を例に挙げて述べる。領域設定回路25cは、例えば図2に示したように、領域設定回路25cは、切替えタイミングの直後の第2X線画像30の撮像対象部位に関する解剖学的情報に基づいて、第2X線画像30内の指定領域31を指定する。しかる後、領域設定回路25cは、指定領域31のうち、画素値が閾値を超えた領域32を関心領域として設定する。
ステップST6の後、ステップST7において、画素値補正回路25fは、管電圧の切替えタイミングの直後の第2X線画像の関心領域内の画素値を取得する。同様に、画素値補正回路25fは、管電圧の切替えタイミングの直前の第1X線画像の関心領域内の画素値を取得する。
ステップST7の後、ステップST8において、画素値補正回路25fは、ステップST7で第2X線画像の関心領域から取得した画素値を平均化し、平均の画素値LAfter を得る。同様に、画素値補正回路25fは、ステップST7で第1X線画像の関心領域から取得した画素値を平均化し、平均の画素値LBefore を得る。これにより、画素値補正回路25fは、管電圧の切替えタイミングの後の複数の第2X線画像の画素値の補正に用いるパラメータ値CAfter (= LBefore - LAfter )を決定する。
ステップST8の後、ステップST9~ST10において、画素値補正回路25fは、決定したパラメータ値に基づいて、切替えタイミングの後の複数の第2X線画像における画素値の補正を実行する。例えば、画素値補正回路25fは、切替えタイミングの後の複数の第2X線画像における画素値にパラメータ値CAfter を加算することにより、当該画素値の補正を実行する。これにより、補正後の第2X線画像が得られる。補正後の第2X線画像は、画像データメモリ25bに入力される。以下、特に断らない限り、画素値補正回路25fが補正したX線画像は、DSA画像であり、表示用データ生成回路25eを介してディスプレイ24に表示される一方、画像データメモリ25bに保存される。なお、時系列に沿ったフレームである第2X線画像は、動画像として表示される。また、第2X線画像に代えて、カラー画像作成回路25gによって第2X線画像から作成されたカラー画像(パラメトリック画像)がディスプレイ24に表示されてもよい。
ステップST10の後、ステップST11において、画像演算回路25aは、システム制御部22から撮像終了を示す信号を受けたか否かに応じて、撮像終了か否かを判定する。判定の結果、撮像終了でない場合には、ステップST12に移行する。ステップST11の判定の結果、撮像終了の場合には、処理を終了する。
ステップST11の後、ステップST12において、画像演算回路25aは、X線診断装置1は、X線管3aがX線を発生し、当該X線を被検体に照射する。X線検出器5は、被検体を通過したX線を検出して電気信号を出力する。画像演算回路25aは、X線検出器の出力に基づいて、第2X線画像を生成する。しかる後、ステップST9に移行する。以下、ステップST11で撮像終了が判定されるまで、ステップST9~ST12の処理が繰り返し実行される。
上述したように第1の実施形態によれば、管電圧の切替えを伴い時系列に沿って撮像される複数のX線画像における管電圧の切替えタイミングに関する情報を取得する。また、当該複数のX線画像における切替えタイミングの前の複数の第1X線画像と、切替えタイミングの後の複数の第2X線画像とのうち、複数の第2X線画像における画素値の補正を実行する。
このように、切替えタイミングの後の複数の第2X線画像における画素値の補正を実行する構成により、管電圧の切替え前後において、画像のコントラストの急激な変化を阻止し、画像を見やすくすることができる。従って、X線画像のコントラストを確保するとともに、画素値の急激な変化を阻止することができる。
続いて、第1の実施形態の効果につき、多相DSAと呼ばれる関連技術を比較例に挙げて補足的に説明する。多相DSAでは、動画像全体のコントラストを確保しつつ被ばくを抑える技術として知られている。多相DSAでは、造影開始時には高い管電圧で撮影し、造影剤が抹消血管に到達するタイミングで低い管電圧に切替える。また、多相DSAでは、管電圧毎にマスク画像を準備する必要がある。
このような多相DSAは、通常は特に問題ないが、本発明者の検討によれば、管電圧の切替え前後において、画像がコントラストの急激な変化により見づらくなる点で改善の余地がある。
一方、前述した第1の実施形態の効果は、このような多相DSAに比べ、画像のコントラストの急激な変化を阻止し、画像を見やすくする点で優れている。
また、第1の実施形態によれば、複数の第1X線画像のうちの切替えタイミングの直前の第1X線画像の画素値と、複数の第2X線画像のうちの切替えタイミングの直後の第2X線画像の画素値とに基づいて、補正に用いるパラメータ値を決定する。補足すると、造影剤濃度のフレーム間連続性を利用し、管電圧の切替え前後の画素値(血管コントラスト)の変化から、補正に用いるパラメータを決定する。このように、補正に用いるパラメータ値を決定するために用いるX線画像の枚数が、管電圧の切替え直前及び直後の2枚で済むため、3枚以上のX線画像を用いる場合に比べ、小さい演算負荷でパラメータ値を決定することができる。
また、第1の実施形態によれば、複数のX線画像のいずれかのX線画像における画素値が閾値よりも高い領域を関心領域として設定し、当該関心領域内の画素値に基づいて、当該パラメータ値を決定する。従って、管電圧の切替え前後において、画像内の関心領域のコントラストの急激な変化を阻止し、当該関心領域を見やすくすることができる。
また、第1の実施形態によれば、複数のX線画像の撮像中に、複数の第2X線画像に対して補正を実行する。これにより、検査中に、管電圧の切替え前後において、画像のコントラストの急激な変化を阻止し、画像を見やすくすることができる。
また、第1の実施形態によれば、補正後の画素値に基づいて画素毎に時間濃度曲線を作成し、前記時間濃度曲線に基づく血流情報パラメータを算出し、当該血流情報パラメータに応じた色を各画素に割り当てることによりカラー画像を作成する。従って、管電圧の切替えによって画素値(血管コントラスト)が変化しても、画素値を補正することにより、時間濃度曲線の急激な変化を阻止でき、時間濃度曲線のピーク(TTP、PH)や面積(AUC)といった血流情報パラメータを正しく計算することが可能となる。
補足すると、高い管電圧で撮影した画像の各画素における第1時間濃度曲線と、低い管電圧で撮影した画像の各画素における第2時間濃度曲線とは、濃度が通常目盛の場合には互いに相似形状を有し、濃度が対数目盛の場合には互いに平行移動した形状を有する関係がある。例えば、縦軸の濃度が通常目盛の場合、第1時間濃度曲線を相似的に拡大すると、第2時間濃度曲線が得られる。縦軸の濃度が対数目盛の場合、第1時間濃度曲線を上方に平行移動させると、第2時間濃度曲線が得られる。いずれにしても、管電圧を切替えて画素値を補正しない場合には、切替えタイミングを境にして、第1時間濃度曲線と第2時間濃度曲線とを接続した形状の第3時間濃度曲線が得られる。このような第3時間濃度曲線は、造影剤濃度が連続的に変化する正しい時間濃度曲線を表現せず、切替えタイミング前後の造影剤濃度に不連続性が生じている。具体的には第3時間濃度曲線は、切替えタイミング直後の画素値が急激に上昇して切替えタイミング前のピーク値を超えてしまっている。このため、第3時間濃度曲線は、ピーク高さ(PH)やピーク到達時間(TTP)、面積(AUC)といった血流情報パラメータを正しく計算できない問題がある。これに対し、第1の実施形態によれば、管電圧の切替えによって画素値(血管コントラスト)が変化しても、画素値を補正することにより、正しい時間濃度曲線を作成できるので、時間濃度曲線から正しい血流情報パラメータを計算することができる。なお、血管コントラストは、造影領域と造影されていない領域との差分画像上の画像レベル差であり、血管濃度、又は血管コントラスト濃度とも呼ばれる。
[第1の実施形態の第1変形例]
続いて、第1の実施形態の第1変形例について説明する。
第1の実施形態の第1変形例は、図4に示した補正に代えて、図8に示すように、切替えタイミングの直前の複数の第1X線画像の画素値を外挿することにより、補正に用いるパラメータ値を決定する構成である。
例えば、画素値補正回路25fは、複数の第1X線画像のうちの切替えタイミングT_swの直前の複数の第1X線画像の画素値と、切替えタイミングT_swの直後の第2X線画像の画素値LAfter とに基づいて、補正に用いるパラメータ値CAfter を決定する。
具体的には、画素値補正回路25fは、複数の第1X線画像のうちの切替えタイミングT_swの直前の複数の第1X線画像の画素値を近似的に結ぶ近似曲線Cvを外挿し、切替えタイミングT_swの直後の1~数フレームの第1X線画像の画素値LPredic を予測する。しかる後、画素値補正回路25fは、予測した第1X線画像の画素値LPredic と、切替えタイミングT_swの直後の第2X線画像の画素値LAfter とに基づいて、補正に用いるパラメータ値CAfter を決定する。なお、画素値LPredic ,LAfter は、前述同様に、1フレームにおける関心領域内の平均の画素値としてもよい。CAfter は、管電圧の切替えタイミングの後の複数の第2X線画像の画素値の補正に用いるパラメータ値であり、例えば次式に示すように決定してもよい。
CAfter =LAfter - LPredic
他の構成は、第1の実施形態と同様である。
以上のような構成によれば、図9に示すように、ステップST1~ST3は、第1の実施形態と同様に実行される。但し、ステップST3の判定の結果、管電圧の切替えタイミングの場合には、ステップST6Aに移行する。
ステップST6Aにおいて、領域設定回路25cは、管電圧の切替えタイミングの直前の第1X線画像に関心領域を設定する。
ステップST6Aの後、ステップST7Aにおいて、画素値補正回路25fは、管電圧の切替えタイミングの直前の複数の第1X線画像の関心領域内の画素値を取得し、各第1X線画像の関心領域毎に、取得した画素値を平均化して平均の画素値を得る。
ステップST7Aの後、ステップST8Aにおいて、画素値補正回路25fは、平均の画素値の各々を近似的に結ぶ近似曲線Cvを外挿し、切替えタイミングT_swの直後の第1X線画像の画素値LPredic を予測する。
しかる後、X線コントローラ11は、システム制御部22からの切替え信号に応じて、現在の高い管電圧を低い管電圧に切替えるように、高電圧発生装置13を制御する。これにより、X線管3aの管電圧が切替えられる。
X線診断装置1は、切替えた管電圧でX線管3aがX線を発生し、当該X線を被検体に照射する。X線検出器5は、被検体を通過したX線を検出して電気信号を出力する。画像演算回路25aは、X線検出器の出力に基づいて、第2X線画像を生成する。
画素値補正回路25fは、生成された第2X線画像の関心領域から取得した画素値を平均化し、平均の画素値LAfter を得る。これにより、画素値補正回路25fは、管電圧の切替えタイミングの後の複数の第2X線画像の画素値の補正に用いるパラメータ値CAfter (=LAfter - LPredic )を決定する。
ステップST8Aの後、前述同様にステップST9以降の処理が実行される。
上述したように第1の実施形態の第1変形例によれば、複数の第1X線画像のうちの切替えタイミングの直前の複数の第1X線画像の画素値と、切替えタイミングの直後の第2X線画像の画素値とに基づいて、補正に用いるパラメータ値を決定する。これにより、切替えタイミングの直前の複数の第1X線画像の画素値を外挿する場合でも、第1の実施形態と同様に、管電圧の切替え前後において、画像のコントラストの急激な変化を阻止し、画像を見やすくすることができる。
[第1の実施形態の第2変形例]
続いて、第1の実施形態の第2変形例について説明する。
第1の実施形態の第2変形例は、図4に示した画素値の補正に代えて、図10に示すように、画素値の表示の仕方を変更する構成である。表示の仕方としては、例えば、ウインドウ幅WWを変更する方法が使用可能となっている。ここで、ウインドウ幅WWは、X線画像の画素値をグレースケールにより表示する場合における当該X線画像の画素値の分布範囲を示す。グレースケールは、DA画像又はDSA画像の画素値毎に、DA画像又はDSA画像を表示する表示画像の階調(例、黒から白まで、濃淡の異なる灰色を介して、連続的に変化するグラデーション)を定めている。図10に示す例においても同様に、表示画像の階調として、黒と白との間を連続的に変化させるグラデーションを用いている。補足すると、管電圧の切替え前後の見づらさを解消する観点から、X線画像の画素値の補正に代えて、X線画像の画素値を表示画像の画素値に変換するためのウインドウ幅WWを補正している。具体的には例えば、切替えタイミングT_swの直前の画素値LBefore を示す灰色の濃さと、当該T_swの直後の画素値LAfter を示す灰色の濃さとを同一にするように、グレースケールに係るウインドウ幅WWを切替える。なお、「グレースケール」は、「表示の階調」又は「表示画像の階調」等と呼んでもよい。
これに伴い、表示用データ生成回路25eは、図11に示すように、前述した画素値補正回路25f及びカラー画像作成回路25gに代えて、画像作成回路25i(画像作成部)及びウインドウ幅変更回路25h(ウインドウ幅変更部)を備えている。
画像作成回路25iは、複数のX線画像の画素値を画素毎に、グレースケールに係るウインドウ幅に応じて変換することにより複数の表示画像を作成する。なお、「表示画像」は、「白黒画像」又は「濃淡画像」等と呼んでもよい。
ウインドウ幅変更回路25hは、複数の表示画像のうち、切替えタイミングの後の複数の第2表示画像を作成するための当該ウインドウ幅を変更する。
他の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
なお、第1の実施形態の第2変形例は、図12に示すように、前述した画素値補正機能272f及びカラー画像作成機能272gを省略し、画像作成回路25i及びウインドウ幅変更回路25hと同等の画像作成機能272i及びウインドウ幅変更機能272hを処理回路27が実現する構成としてもよい。この場合、処理回路27は、メモリ26内のプログラムを読出実行することにより、画像作成回路25iに対応する画像作成機能272iと、ウインドウ幅変更回路25hに対応するウインドウ幅変更機能272hとを実現する。他の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
なお、以下の説明は、図11及び図12に示した構成のうち、図11に示した構成を代表例に挙げて行う。代表例に挙げた画像作成回路25i及びウインドウ幅変更回路25hは、図12に示した画像作成機能272i及びウインドウ幅変更機能272hと同様の動作を実行する。従って、このような代表例の説明は、適宜、構成要素名及び参照符号などを読み替えることにより、図12に示した処理回路27の動作の説明に適用することができる。このことは、以下の各実施形態及び各変形例でも同様である。
以上のような構成によれば、図13に示すように、ステップST1~ST7は、第1の実施形態と同様に実行される。但し、ステップST2では、画像作成回路25iによって第1X線画像の画素値を画素毎にグレースケールに係るウインドウ幅に応じて変換することにより作成された第1表示画像がディスプレイ24に表示される。言い換えると、ウインドウ幅WWに対応して第1X線画像を表す第1表示画像が表示される。
ステップST7の後、ステップST8Bにおいて、ウインドウ幅変更回路25hは、複数の表示画像のうち、切替えタイミングの後の複数の第2表示画像を作成するためのウインドウ幅を変更する。例えば、ウインドウ幅変更回路25hは、ステップST7で第2X線画像の関心領域から取得した画素値を平均化し、平均の画素値LAfter を得る。同様に、ウインドウ幅変更回路25hは、ステップST7で第1X線画像の関心領域から取得した画素値を平均化し、平均の画素値LBefore を得る。これにより、ウインドウ幅変更回路25hは、管電圧の切替えタイミングT_swの後の複数の第2表示画像を作成するためのウインドウ幅WWを変更する。例えば、ウインドウ幅変更回路25hは、前述同様に、パラメータ値CAfter (=LAfter - LBefore )を決定し、当該パラメータ値CAfter だけウインドウ幅WWを変更する。具体的には、管電圧の切替えタイミングT_swの前のウインドウ幅WWにおける画素値の上限がL1で下限がL2のとき、管電圧の切替えタイミングT_swの後のウインドウ幅WWにおける画素値の上限をL1-CAfter とし、画素値の下限をL2-CAfter とするように、ウインドウ幅WWを変更する。
ステップST8Bの後、ステップST10Bにおいて、ディスプレイ24は、変更されたウインドウ幅WWに対応して第2X線画像を表す第2表示画像を表示する。詳しくは、画像作成回路25iが、変更されたウインドウ幅WWを用い、第2X線画像から第2表示画像を作成する。この第2表示画像がディスプレイ24に表示される。
ステップST10Bの後、前述同様にステップST11以降の処理が実行される。但し、ステップST12の戻り先は、ステップST10Bとなる。
上述したように第1の実施形態の第2変形例によれば、複数のX線画像の画素値を画素毎に、グレースケールに係るウインドウ幅に応じて変換することにより複数の表示画像を作成する。複数の表示画像のうち、切替えタイミングの後の複数の第2表示画像を作成するためのウインドウ幅を変更する。
このように、画素値を画素毎にウインドウ幅に応じて変換して表示画像を作成し、切替えタイミングの後の当該ウインドウ幅を変更する構成に変形しても、第1の実施形態と同様に、管電圧の切替え前後において、画像のコントラストの急激な変化を阻止し、画像を見やすくすることができる。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、X線診断装置1が補正を実行する第1の実施形態とは異なり、図14に示すように、X線診断装置1にネットワークを介して通信可能な医用画像処理装置40が補正を実行する構成となっている。これに伴い、管電圧の切替えタイミングの前の第1X線画像であっても補正可能としている。詳しくは、第2の実施形態は、管電圧の切替えタイミングの前の複数の第1X線画像、管電圧の切替えタイミングの後の複数の第2X線画像、又はその両方のX線画像を補正可能としている。
ここで、X線診断装置1の構成は、第1の実施形態と同様である。但し、X線診断装置1のうち、前述した補正を実行するための構成(切替えタイミング取得回路25d及び画素値補正回路25f)は省略してもよい。
医用画像処理装置40は、互いにバスを介して接続された入力インタフェース43、ディスプレイ44、メモリ46、処理回路47及びネットワークインタフェース48を備えている。なお、この医用画像処理装置40は、前述した医用画像処理装置200に対応する。このため、医用画像処理装置40は、X線診断装置1の一部として設けることも可能である。医用画像処理装置40をX線診断装置1の一部として設ける場合には、医用画像処理装置40の説明を、X線診断装置1内の医用画像処理装置200の説明に読み替えればよい。このことは、以下の各実施形態及び各変形例でも同様である。
入力インタフェース43は、各種情報の入力、各種条件の設定、各種コマンド信号の入力等を行う。入力インタフェース23は、例えば、入力や設定などを行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、及び表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等によって実現される。入力インタフェース43は、処理回路47に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し、処理回路47へと出力する。なお、本明細書において入力インタフェース43はマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路47へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース43の例に含まれる。
ディスプレイ44は、医用画像などを表示するディスプレイ本体と、ディスプレイ本体に表示用の信号を供給する内部回路、ディスプレイ本体と内部回路とをつなぐコネクタやケーブルなどの周辺回路から構成されている。内部回路は、処理回路47から供給される表示用データに対しD/A変換とTVフォーマット変換を行なってディスプレイ本体に表示する。
メモリ46は、ROM、RAM、HDD及び画像メモリなど電気的情報を記録するメモリ本体と、それらメモリ本体に付随するメモリコントローラやメモリインタフェースなどの周辺回路とを備えている。メモリ46は、例えば、処理回路47に実行されるプログラムと、処理回路47の処理に用いるデータ、処理途中のデータ及び処理後のデータ等とが記憶される。処理回路47の処理に用いるデータは、主に、X線画像であり、X線画像の撮像対象部位に関する解剖学的情報を含んでもよい。メモリ46は、3D画像及び3Dロードマップ画像を記憶してもよい。
処理回路47は、メモリ46に保存されたプログラムを読み出し実行することにより、プログラムに対応する領域設定機能472c、切替えタイミング取得機能472d、表示用データ生成機能472eを実現するプロセッサである。表示用データ生成機能472eは、画素値補正機能472f及びカラー画像作成機能472gを含んでいる。この種のプログラムとしては、例えば、切替えタイミング取得機能472d及び画素値補正機能472fをコンピュータ(医用画像処理装置40)に実現させるための医用画像処理プログラムが使用可能となっている。この医用画像処理プログラムは、適宜、領域設定機能472cやカラー画像作成機能472gなどをコンピュータに更に実現させてもよい。領域設定機能472c、切替えタイミング取得機能472d、表示用データ生成機能472e、画素値補正機能472f及びカラー画像作成機能472gは、前述した領域設定機能272c、切替えタイミング取得機能272d、表示用データ生成機能272e、画素値補正機能272f及びカラー画像作成機能272gと同様の機能である。但し、切替えタイミング取得機能472d及び画素値補正機能472fは、X線画像の撮像中に動作する第1の実施形態に比べ、X線画像の撮像後に動作することに関して若干異なる動作を行う。
例えば、切替えタイミング取得機能472d(タイミング取得部)は、管電圧の切替えを伴い時系列に沿って撮像される複数のX線画像における管電圧の切替えタイミングに関する情報を取得する。具体的には例えば、切替えタイミング取得機能472dは、メモリ46内のX線画像の付帯情報から管電圧の切替えタイミングに関する情報を取得する。管電圧の切替えタイミングに関する情報としては、例えば、管電圧の切替えタイミングを示す時刻情報やフレーム番号などが使用可能となっている。あるいは、切替えタイミング取得機能472dは、メモリ46内の複数のX線画像からコントラストの変化を検出し、当該検出結果から管電圧の切替えタイミングに関する情報を取得してもよい。
表示用データ生成機能472eは、メモリ46内のX線画像に基づく表示用データを生成し、当該表示用データをディスプレイ44に送出する。ここで、表示用データ生成機能472eは、画素値補正機能472f(画素値補正部)及びカラー画像作成機能472g(カラー画像作成部)を含んでいる。なお、画素値補正機能472f及び/又はカラー画像作成機能472gは、必須ではなく、省略してもよい。少なくとも画素値補正機能472fを省略する場合には、後述する画像作成機能及びウインドウ幅変更機能を用いてもよい。
画素値補正機能472fは、複数のX線画像における切替えタイミングの前の複数の第1X線画像と、切替えタイミングの後の複数の第2X線画像とのうちの少なくとも一方における画素値の補正を実行する。補足すると、管電圧を切替える場合には、いずれか一つの管電圧での画素値を基準とするか、目標となる画素値を基準とする。これは、管電圧を複数回切替える場合でも同様である。ここでは、管電圧を1回切替える場合を代表例として述べる。例えば図4及び図5に示したように、切替えタイミング取得機能472dに取得された切替えタイミングT_swの後の複数の第2X線画像における画素値の補正を実行する。また例えば図15及び図16に示すように、切替えタイミング取得機能472dに取得された切替えタイミングT_swの前の複数の第1X線画像における画素値の補正を実行する。あるいは例えば、図17に示すように、切替えタイミングT_swの前の複数の第1X線画像と、切替えタイミングT_swの後の複数の第2X線画像との両方における画素値の補正を実行する。なお、画素値補正機能472fは、複数のX線画像の撮像後に、画素値の補正を実行する。また、画素値補正機能472fは、関心領域内の画素値に基づいて、補正に用いるパラメータ値を決定してもよい。
ここで、画素値補正機能472fは、切替えタイミングT_swの後の複数の第2X線画像を補正する場合、前述同様に、補正に用いるパラメータ値CAfterを決定してもよい。また、画素値補正機能472fは、切替えタイミングT_swの前の複数の第1X線画像を補正する場合、次に示すように、補正に用いるパラメータ値CBeforeを決定してもよい。すなわち、前述同様に、複数の第1X線画像のうちの切替えタイミングT_swの直前の第1X線画像の画素値LBeforeと、複数の第2X線画像のうちの切替えタイミングT_swの直後の第2X線画像の画素値LAfterとを求める。なお、画素値補正機能472fは、複数の第1X線画像のうちの少なくとも一つと、複数の第2X線画像のうちの少なくとも一つとに基づいて、補正に用いるパラメータ値を決定してもよい。この場合、LBefore は、例えば、管電圧の切替えタイミングの直前の1フレームにおける関心領域内の平均の画素値としてもよい。同様に、LAfter は、例えば、管電圧の切替えタイミングの直後の1フレームにおける関心領域内の平均の画素値としてもよい。このとき、CBefore は、例えば次式に示すように決定してもよい。
CBefore = LAfter - LBefore
また、切替えタイミングT_swの前の複数の第1X線画像と、切替えタイミングT_swの後の複数の第2X線画像との両方の補正を実行する場合、次に示すように、補正に用いるパラメータ値CBefore ,CAfterを決定してもよい。すなわち、前述同様に、複数の第1X線画像のうちの切替えタイミングT_swの直前の第1X線画像の画素値LBeforeと、複数の第2X線画像のうちの切替えタイミングT_swの直後の第2X線画像の画素値LAfter とを求める。また、両方の画素値の間の目標となる画素値LTarget を求める。LTarget は、例えば、次式に示すように算出してもよい。
LTarget = (LBefore + LAfter )/2
このとき、CBefore は、例えば以下に示すように決定してもよい。
CBefore = LTarget - LBefore
CAfter = LTarget - LAfter
なお、この例では、負の値のパラメータ値CAfter を算出したが、これに限らず、CAfter = LAfter - LTarget とし、正の値のパラメータ値CAfter を算出してもよい(但し、LTarget < LAfter )。
画素値補正機能472fは、決定したパラメータ値に基づいて、複数のX線画像における切替えタイミングの前の複数の第1X線画像と、切替えタイミングの後の複数の第2X線画像とのうちの少なくとも一方における画素値の補正を実行する。例えば、切替えタイミングT_swの後の複数の第2X線画像を補正する場合、前述同様に、複数の第2X線画像における画素値に対してパラメータ値CAfter を加算(又は減算)することにより、当該画素値の補正を実行してもよい。また例えば、切替えタイミングT_swの前の複数の第1X線画像を補正する場合、複数の第1X線画像における画素値にパラメータ値CBefore を加算することにより、当該画素値の補正を実行してもよい。また例えば、切替えタイミングT_swの前の複数の第1X線画像と、切替えタイミングT_swの後の複数の第2X線画像との両方の補正を実行する場合、同様に、それぞれ補正を実行してもよい。すなわち、複数の第1X線画像における画素値にパラメータ値CBefore を加算し、複数の第2X線画像における画素値に対してパラメータ値CAfter を加算(又は減算)することにより、当該画素値の補正を実行してもよい。
カラー画像作成機能472gは、前述したカラー画像作成回路25g及びカラー画像作成機能272gと同様の機能をもっている。すなわち、カラー画像作成機能472gは、画素値補正機能472fによる補正後の画素値に基づいて画素毎に時間濃度曲線を作成し、時間濃度曲線に基づく血流情報パラメータを算出し、血流情報パラメータに応じた色を各画素に割り当てることによりカラー画像(パラメトリック画像)を作成する。血流情報パラメータについては、前述した通りである。また同様に、カラー画像作成機能472gは、補正後の画素値に限らず、補正前後に亘る画素値に基づいて画素毎に時間濃度曲線を作成し、時間濃度曲線に基づく血流情報パラメータを算出し、当該血流情報パラメータに応じた色を各画素に割り当てることによりカラー画像(パラメトリック画像)を作成してもよい。
ネットワークインタフェース48は、医用画像処理装置40をネットワークNwに接続してX線診断装置1といった他の装置と通信するための回路である。ネットワークインタフェース48としては、例えば、ネットワークインタフェースカード(NIC)が使用可能となっている。以下の説明では、他の装置との通信にネットワークインタフェース48が介在する旨の記載を省略する。
次に、以上のように構成されたX線診断装置及び医用画像処理装置の動作を図18のフローチャートを用いて説明する。
いま、X線診断装置1は、造影開始時に高い管電圧の下で、時系列に沿ったフレームである複数の第1X線画像を撮像し、高い管電圧を低い管電圧に切替えた後、時系列に沿ったフレームである複数の第2X線画像を撮像したとする。X線診断装置1は、これら複数の第1X線画像及び複数の第2X線画像からなる複数のX線画像を医用画像処理装置40に送信する。医用画像処理装置40は、複数のX線画像を医用画像処理装置40から受信し、複数のX線画像をメモリ46に記憶したとする。
ステップST21において、医用画像処理装置40の処理回路47は、管電圧の切替えを伴い時系列に沿って撮像される複数のX線画像における管電圧の切替えタイミングに関する情報を取得する。例えば、切替えタイミング取得機能472dは、メモリ46内のX線画像の付帯情報から管電圧の切替えタイミングに関する情報を取得する。
ステップST21の後、ステップST22において、処理回路47は、メモリ46内の複数のX線画像から、管電圧の切替えタイミングT_swの直前の第1X線画像と、管電圧の切替えタイミングT_swの直後の第2X線画像とを取得する。
ステップST22の後、ステップST23において、処理回路47は、取得した第1X線画像又は第2X線画像に関心領域を設定する。関心領域の設定動作としては、前述した(r1)~(r4)のいずれの方法を用いてもよい。
ステップST23の後、ステップST24において、処理回路47は、管電圧の切替えタイミングT_swの直前の第1X線画像の関心領域内の画素値と、当該切替えタイミングT_swの直後の第2X線画像の関心領域内の画素値を取得する。
ステップST24の後、ステップST25において、処理回路47は、ステップST24で第2X線画像の関心領域から取得した画素値を平均化し、平均の画素値LAfter を得る。同様に、処理回路47は、ステップST24で第1X線画像の関心領域から取得した画素値を平均化し、平均の画素値LBefore を得る。また、処理回路47は、切替え前後のX線画像を補正する場合には、両方の画素値LBefore ,LAfter の間の値を、目標の画素値LTarget としてさらに算出する。しかる後、処理回路47は、両方の画素値LBefore ,LAfter に基づいて、複数のX線画像の画素値の補正に用いるパラメータ値を決定する。
ここでは、切替え前後のX線画像を補正する場合を例に挙げて述べる。すなわち、処理回路47は、以下のように、補正に用いるパラメータ値CBefore ,CAfter を決定する。
CBefore = LTarget - LBefore
CAfter = LTarget - LAfter
ステップST25の後、ステップST26において、処理回路47は、補正前のX線画像を1枚乃至複数枚毎に取得する。
ステップST26の後、ステップST27において、処理回路47は、ステップST26で取得したX線画像の画素値を補正する。ここで、切替えタイミングT_swの前の第1X線画像の画素値を補正する場合には、当該第1X線画像の画素値にパラメータ値CBefore を加算することにより、当該画素値の補正を実行する。また、切替えタイミングT_swの後の第2X線画像の画素値を補正する場合には、当該第2X線画像の画素値にパラメータ値CAfter を加算することにより、当該画素値の補正を実行する。
ステップST27の後、ステップST28において、処理回路47は、補正したX線画像をディスプレイ44に表示する。なお、処理回路47は、補正したX線画像に代えて、補正したX線画像から作成したカラー画像(パラメトリック画像)をディスプレイ44に表示してもよい。
ステップST28の後、ステップST29において、処理回路47は、補正対象のX線画像のうち、補正前のX線画像の有無に応じて補正終了か否かを判定する。判定の結果、補正終了でない場合には、ステップST26に移行する。以下、ステップST29で補正終了が判定されるまで、ステップST26~ST29の処理が繰り返し実行される。ステップST29の判定の結果、補正終了の場合には、処理を終了する。
上述したように第2の実施形態によれば、管電圧の切替えを伴い時系列に沿って撮像される複数のX線画像における管電圧の切替えタイミングに関する情報を取得する。複数のX線画像における切替えタイミングの前の複数の第1X線画像と、切替えタイミングの後の複数の第2X線画像とのうちの少なくとも一方における画素値の補正を実行する。従って、管電圧の切替え前後において、画像のコントラストの急激な変化を阻止し、画像を見やすくすることができる。
また、第2の実施形態によれば、複数の第1X線画像のうちの少なくとも一つと複数の第2X線画像のうちの少なくとも一つとに基づいて補正に用いるパラメータ値を決定する。このため、最少の場合、2枚のX線画像を用いて当該パラメータ値を決定できるので、3枚以上のX線画像を用いる場合に比べ、小さい演算負荷でパラメータ値を決定することができる。
また、第2の実施形態によれば、複数の第1X線画像のうちの切替えタイミングの直前の第1X線画像の画素値と、複数の第2X線画像のうちの切替えタイミングの直後の第2X線画像の画素値とに基づいて、補正に用いるパラメータ値を決定する。このため、切替えタイミングの直前及び直後ではないX線画像を用いる場合に比べ、切替えタイミング前後の補正後の画素値の変化をより低減することができる。
また、第2の実施形態によれば、複数のX線画像のいずれかのX線画像における画素値が閾値よりも高い領域を関心領域として設定し、当該関心領域内の画素値に基づいて、当該パラメータ値を決定する。従って、管電圧の切替え前後において、画像内の関心領域のコントラストの急激な変化を阻止し、当該関心領域を見やすくすることができる。
また、第2の実施形態によれば、複数のX線画像の撮像後に、複数の第1X線画像と複数の第2X線画像とのうちの少なくとも一方に対して補正を実行する。これにより、検査後に、管電圧の切替え前後において、画像のコントラストの急激な変化を阻止し、画像を見やすくすることができる。
また、第2の実施形態によれば、パラメトリック画像であるカラー画像を作成する場合、管電圧の切替え時に画素値が変化しても、画素値の補正により、第1の実施形態と同様に、時間濃度曲線に基づく血流情報パラメータを正しく計算することが可能となる。
[第2の実施形態の第1変形例]
続いて、第2の実施形態の第1変形例について説明する。
第2の実施形態の第1変形例は、図15に示した補正に代えて、図19及び図20に示すように、関心領域(ROI)における画素値の時間的な変化を示す曲線Cv1と、関心領域の周辺部における画素値の時間的な変化を示す曲線Cv2とを比較する構成である。補足すると、2つの曲線Cv1,Cv2を比較し、関心領域における曲線Cv1が周辺部における曲線Cv2に一致又は相似になるように、第1X線画像と第2X線画像との少なくとも一方の画素値を補正する構成である。以下の説明は、主に、切替えタイミングT_swの前の複数の第1X線画像の画素値を補正する場合を例に挙げて述べる。
ここで、領域設定機能472cは、前述した関心領域を設定する機能に加え、関心領域の周辺部を設定する機能を有している。周辺部を設定する機能は、例えば、関心領域内の血管を上流側に辿ることにより実現してもよく、操作者の操作により実現してもよい。
画素値補正機能472fは、切替えタイミングT_swの前の複数の第1X線画像のうちの二つ以上及び切替えタイミングT_swの後の複数の第2X線画像のうちの二つ以上に基づいて、補正に用いるパラメータ値を決定する。ここで、複数の第1X線画像のうちの二つ以上は、複数の第1X線画像のうちの切替えタイミングT_swの直前の第1X線画像を含んでもよい。同様に、複数の第2X線画像のうちの二つ以上は、複数の第2X線画像のうちの切替えタイミングT_swの直後の第2X線画像を含んでもよい。例えば、画素値補正機能472fは、関心領域における複数の第1X線画像の画素値と、複数の第2X線画像の画素値とを結ぶ曲線Cv1を作成する。また、切替えタイミングT_swの前の複数の第1X線画像の画素値を結ぶ曲線Cv2を作成する。例えば、T_swの前の関心領域の画素値のピーク値の時刻t1と、T_swの前の周辺部の画素値のピーク値の時刻t2との差分をΔt(=t1-t2)とし、曲線Cv1,Cv2の期間をTcvとする。このとき、曲線Cv1は、切替えタイミングt_swから差分Δtだけ経過した時点を終端とする期間Tcv内の関心領域の画素値を結んで作成してもよい。また例えば、曲線Cv2は、切替えタイミングt_swを終端とする期間Tcv内の周辺部の画素値を結んで作成してもよい。但し、曲線Cv1の期間Tcvは、曲線Cv2の期間Tcvと同一の場合に限らず、異なっていてもよい。ここで、画素値補正機能472fは、関心領域に関する曲線Cv1の形状が、周辺部に関する曲線Cv2の形状に一致又は相似になるように、関心領域内の画素値の補正を実行する。この例では、切替えタイミングT_swの後の曲線Cv1に一部を重ね合わせた曲線Cv2における切替えタイミングT_swの直前の画素値LCv2 と、当該画素値LCv2 に対応する曲線Cv1上の画素値LCv1 とに基づいて、補正に用いるパラメータ値CBefore を決定する。
CBefore = LCv2 - LCv1
また、画素値補正機能472fは、切替えタイミングT_swの前の関心領域における複数の第1X線画像の画素値を補正する場合には、当該第1X線画像の画素値にパラメータ値CBefore を加算することにより、当該画素値の補正を実行する。
他の構成は、第2の実施形態と同様である。
以上のような構成によれば、図18に示したように、ステップST21~ST22は、第2の実施形態と同様に実行される。
ステップST22の後、ステップST23において、処理回路47は、処理回路47は、取得した第1X線画像又は第2X線画像に関心領域と、当該関心領域の周辺部とを設定する。
ステップST23の後、ステップST24において、処理回路47は、管電圧の切替えタイミングT_swの前の関心領域における複数の第1X線画像の画素値と、当該T_swの前の周辺部における複数の第1X線画像の画素値とを取得する。また、処理回路47は、当該切替えタイミングT_swの直後の第2X線画像の関心領域内の画素値とを取得する。
ステップST24の後、ステップST25において、処理回路47は、ステップST24で第2X線画像の関心領域から取得した画素値を平均化し、平均の画素値を得る。
また、処理回路47は、ステップST24で複数の第1X線画像の関心領域から取得した画素値を第1X線画像毎に平均化し、複数の第2X線画像の関心領域から取得した画素値を第2X線画像毎に平均化し、これら平均の画素値を結んで曲線Cv1を得る。同様に、処理回路47は、ステップST24で複数の第1X線画像の周辺部から取得した画素値を第1X線画像毎に平均化し、第1X線画像毎の周辺部の平均の画素値を結んで曲線Cv2を得る。処理回路47は、2つの曲線Cv1,Cv2を比較し、切替えタイミングT_swの後の曲線Cv1に一部を重ね合わせた曲線Cv2における切替えタイミングT_swの直前の画素値LCv2 と、当該画素値LCv2 に対応する曲線Cv1上の画素値LCv1 とを得る。しかる後、処理回路47は、当該画素値LCv2,LCv1 に基づいて、補正に用いるパラメータ値CBefore を決定する。
CBefore = LCv2 - LCv1
ステップST25の後、ステップST26以降の処理が同様に実行される。但し、この例では、ステップST27において、処理回路47は、ステップST26で取得した第1X線画像の関心領域内の画素値にパラメータ値CBefore を加算することにより、当該画素値の補正を実行する。
上述したように第2の実施形態の第1変形例によれば、複数の第1X線画像のうちの二つ以上及び複数の第2X線画像のうちの二つ以上に基づいて、補正に用いるパラメータ値を決定する。なお、複数の第1X線画像のうちの二つ以上は、複数の第1X線画像のうちの切替えタイミングの直前の第1X線画像を含んでもよい。また、複数の第2X線画像のうちの二つ以上は、複数の第2X線画像のうちの切替えタイミングの直後の第2X線画像を含んでもよい。補足すると、造影剤濃度のフレーム間連続性を利用し、管電圧の切替え前後の数フレームずつの画素値(血管コントラスト)の変化から、補正に用いるパラメータを決定する。例えば、関心領域における複数の第1X線画像の画素値と、複数の第2X線画像の画素値とを結ぶ曲線Cv1を作成する。また、切替えタイミングT_swの前の複数の第1X線画像の画素値を結ぶ曲線Cv2を作成する。関心領域に関する曲線Cv1の形状が、周辺部に関する曲線Cv2の形状に一致又は相似になるように、第1X線画像と第2X線画像との少なくとも一方の画素値の補正に用いるパラメータ値を決定する。このようにしても、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
[第2の実施形態の第2変形例]
続いて、第2の実施形態の第2変形例について説明する。
第2の実施形態の第2変形例は、図8、図21又は図22に示すように、切替えタイミングの直前の複数の第1X線画像の画素値を外挿することにより、補正に用いるパラメータ値を決定する構成である。なお、図8に示した補正については、前述同様に実行可能である。このため、以下の説明は、主に、図21又は図22に示す補正について述べる。
画素値補正機能472fは、複数の第1X線画像のうちの切替えタイミングT_swの直前の複数の第1X線画像の画素値と、切替えタイミングT_swの直後の第2X線画像の画素値LAfter とに基づいて、補正に用いるパラメータ値CBefore を決定してもよい。
具体的には、画素値補正機能472fは、複数の第1X線画像のうちの切替えタイミングT_swの直前の複数の第1X線画像の画素値を近似的に結ぶ近似曲線Cvを外挿し、切替えタイミングT_swの直後の第1X線画像の画素値LPredic を予測する。しかる後、画素値補正機能472fは、予測した第1X線画像の画素値LPredic と、切替えタイミングT_swの直後の第2X線画像の画素値LAfter とに基づいて、補正に用いるパラメータ値CBefore を決定する。なお、画素値LAfter は、前述同様に、1又は複数フレームにおける関心領域内の平均の画素値としてもよい。CBefore は、管電圧の切替えタイミングの前の複数の第1X線画像の画素値の補正に用いるパラメータ値であり、前述同様に、次式に示すように決定してもよい。
CBefore = LAfter - LPredic
また、切替えタイミングT_swの前の複数の第1X線画像と、当該T_swの後の複数の第2X線画像との両方の補正を実行する場合、前述同様に、目標となる画素値LTarget と、補正に用いるパラメータ値CBefore ,CAfterを決定してもよい。
LTarget = (LPredic + LAfter )/2
このとき、CBefore は、例えば以下に示すように決定してもよい。
CBefore = LTarget - LPredic
CAfter = LTarget - LAfter
なお、この例では、負の値のパラメータ値CAfter を算出したが、これに限らず、前述同様に、正の値のパラメータ値CAfter を算出してもよい。
他の構成は、第2の実施形態と同様である。
以上のような構成によれば、図18に示したように、ステップST21~ST23は、第2の実施形態と同様に実行される。
ステップS23の後、ステップST24において、処理回路47は、管電圧の切替えタイミングT_swの直前の複数の第1X線画像の関心領域内の画素値を取得する。また、処理回路47は、当該T_swの直後の第2X線画像の関心領域内の画素値を取得する。
ステップST24の後、ステップST25において、処理回路47は、ステップST24で複数の第1X線画像の関心領域から取得した画素値を、当該関心領域毎に平均化して平均の画素値を得る。また、処理回路47は、得られた平均の画素値の各々を近似的に結ぶ近似曲線Cvを外挿し、切替えタイミングT_swの直後の第1X線画像の画素値LPredic を予測する。また、処理回路47は、ステップST24で第2X線画像の関心領域から取得した画素値を平均化し、平均の画素値LAfter を得る。これにより、処理回路47は、管電圧の切替えタイミングの前の複数の第1X線画像の画素値の補正に用いるパラメータ値CBefore (=LAfter - LPredic )を決定する。あるいは、切替えタイミングT_swの前の複数の第1X線画像と、当該T_swの後の複数の第2X線画像との両方の補正を実行する場合、前述同様に、目標となる画素値LTarget と、補正に用いるパラメータ値CBefore ,CAfterを決定してもよい。
ステップST25の後、前述同様にステップST26以降の処理が実行される。
上述したように第2の実施形態の第2変形例によれば、複数の第1X線画像のうちの切替えタイミングの直前の複数の第1X線画像の画素値と、切替えタイミングの直後の第2X線画像の画素値とに基づいて、補正に用いるパラメータ値を決定する。これにより、切替えタイミングの直前の複数の第1X線画像の画素値を外挿する場合でも、第2の実施形態と同様に、管電圧の切替え前後において、画像のコントラストの急激な変化を阻止し、画像を見やすくすることができる。
[第2の実施形態の第3変形例]
続いて、第2の実施形態の第3変形例について説明する。
第2の実施形態の第3変形例は、図4に示した画素値の補正に代えて、例えば図10に示したように、ウインドウ幅WWを変更する構成である。なお、図示しないが、図15及び図17に示した画素値の補正に代えて、ウインドウ幅WWを変更してもよい。いずれにしても、第2の実施形態の第3変形例は、切替えタイミングT_swの直前の画素値LBefore を示す灰色の濃さと、当該T_swの直後の画素値LAfter を示す灰色の濃さとを同一にするように、グレースケールに係るウインドウ幅WWを切替える。
これに伴い、処理回路47の表示用データ生成機能472eは、図23に示すように、前述した画素値補正機能472f及びカラー画像作成機能472gに代えて、画像作成機能472i及びウインドウ幅変更機能472h(ウインドウ幅変更部)を備えている。
カラー画像作成機能472gは、複数のX線画像の画素値を画素毎に、グレースケールに係るウインドウ幅に応じて変換することにより複数の表示画像を作成する。
ウインドウ幅変更機能472hは、複数の表示画像のうち、切替えタイミングの前の複数の第1表示画像及び切替えタイミングの後の複数の第2表示画像のうちの少なくとも一方を作成するための当該ウインドウ幅を変更する。
他の構成は、第2の実施形態の構成と同様である。
以上のような構成によれば、図24に示すように、ステップST21~ST24は、第2の実施形態と同様に実行される。
ステップST24の後、ステップST25Cにおいて、ウインドウ幅変更機能472hは、複数の表示画像のうち、切替えタイミングの後の複数の第2表示画像を作成するためのウインドウ幅WWを決定する。例えば、ウインドウ幅変更機能472hは、ステップST24で第2X線画像の関心領域から取得した画素値を平均化し、平均の画素値LAfter を得る。同様に、ウインドウ幅変更回路25hは、ステップST24で第1X線画像の関心領域から取得した画素値を平均化し、平均の画素値LBefore を得る。これにより、ウインドウ幅変更機能472hは、管電圧の切替えタイミングT_swの後の複数の第2表示画像を作成するためのウインドウ幅WWを決定する。例えば、ウインドウ幅変更機能472hは、前述同様に、パラメータ値CAfter (= LBefore - LAfter )を決定し、ウインドウ幅WWを当該パラメータ値CAfter だけ移動させるように決定する。具体的には、管電圧の切替えタイミングT_swの前のウインドウ幅WWにおける画素値の上限がL1で下限がL2のとき、管電圧の切替えタイミングT_swの後のウインドウ幅WWにおける画素値の上限をL1-CAfter とし、画素値の下限をL2-CAfter とするように、ウインドウ幅WWを決定する。なお、これに限らず、ウインドウ幅変更機能472hは、パラメータ値CBefore (= LAfter - LBefore )を決定し、管電圧の切替えタイミングT_swの前の複数の第1表示画像を作成するためのウインドウ幅WWをCBefore だけ移動させるように決定してもよい。あるいは、目標の画素値LTarget を算出し、画素値LTarget ,LBefore ,LAfter に基づき、当該T_swの前のウインドウ幅WWと、当該T_swの後のウインドウ幅WWとを決定してもよい。
ステップST25Cの後、ステップST26Cにおいて、処理回路47は、X線画像を1枚乃至複数枚毎に取得する。
ステップST26Cの後、ステップST27C-1において、処理回路47は、ステップST21で取得した切替えタイミングに関する情報に基づいて、ステップST26Cで取得したX線画像に対応するウインドウ幅WWを変更するか否かを判定する。判定の結果、変更する場合には、ステップST27-2において、処理回路47は、現在のウインドウ幅WWを、ステップST25Cで決定したウインドウ幅WWに変更する。一方、ステップST27C-1の判定の結果、否の場合には、処理回路47は、ステップST28Cに移行する。
ステップST28Cにおいて、処理回路47は、最新のウインドウ幅WWを用い、ステップST26Cで取得したX線画像からウインドウ幅に応じた表示画像を作成し、この表示画像をディスプレイ24に表示させる。
ステップST28Cの後、前述同様にステップST29以降の処理が実行される。但し、ステップST29の戻り先は、ステップST26Cとなる。
上述したように第2の実施形態の第3変形例によれば、管電圧の切替えを伴い時系列に沿って撮像される複数のX線画像における前記管電圧の切替えタイミングに関する情報を取得する。複数のX線画像の画素値を画素毎に、グレースケールに係るウインドウ幅に応じて変換することにより複数の表示画像を作成する。複数の表示画像のうち、切替えタイミングの前の複数の第1表示画像及び当該切替えタイミングの後の複数の第2表示画像のうちの少なくとも一方を作成するための当該ウインドウ幅を変更する。
このように、画素値を画素毎にウインドウ幅に応じて変換して表示画像を作成し、切替えタイミング前後の当該ウインドウ幅を変更する構成に変形しても、第2の実施形態と同様に、管電圧の切替え前後において、画像のコントラストの急激な変化を阻止し、画像を見やすくすることができる。
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、X線画像の画素値に基づいて、補正に用いるパラメータ値を決定する第1の実施形態とは異なり、造影剤のX線減弱係数に基づいて、補正に用いるパラメータ値を決定する構成である。これに伴い、複数のX線画像は、被検体の血管に注入された造影剤を用いて撮像して得られる画像である必要がある。
ここで、画素値補正回路25fは、切替えタイミングT_swの前の管電圧における造影剤のX線減弱係数μBefore と、切替えタイミングT_swの後の管電圧における造影剤のX線減弱係数μAfter との差に基づいて、補正に用いるパラメータ値CAfter を決定する。
CAfter = μBefore - μAfter
なお、この式に限らず、パラメータ値CAfter は、他の式から決定してもよい。
また、画素値補正回路25fは、決定したパラメータ値CAfter を用い、切替えタイミングの後の複数の第2X線画像の画素値の補正を実行する。
補足すると、造影剤のX線減弱係数μは、管電圧kVに依存する。
μ = f(kV)
このため、管電圧ごとに造影剤のX線減弱係数を予め取得しておき、管電圧の切替えタイミングの前後の減弱係数の差を補正係数として、切替え後の画素値を補正する。
X線減弱係数は、例えば、次の(a)又は(b)の方法により取得可能である。
(a)造影剤ごとの各管電圧kVでのX線減弱係数μを予め測定しておく。
(b)造影剤の含有成分iごとのX線減弱係数μiから、造影剤の各管電圧kVでのX線減弱係数μを算出する。
μ = g(μi)
μi = fi(kV)
他の構成は、第1の実施形態と同様である。
以上のような構成によれば、図25に示すように、ステップST0において、画素値補正回路25fは、システム制御部22から、検査に用いる造影剤と複数の管電圧とを受ける。画素値補正回路25fは、切替えタイミングT_swの前の管電圧における造影剤のX線減弱係数μBefore と、当該T_swの後の管電圧における造影剤のX線減弱係数μAfter との差に基づいて、補正に用いるパラメータ値CAfter を決定する。なお、ステップST0は、第1X線画像の撮像前に限らず、第1X線画像の撮像に並行して実行してもよい。
ステップST0の後、ステップST1~ST5が前述同様に実行される。
ステップST5の後、ステップST9D~ST10において、画素値補正回路25fは、ステップST0で決定したパラメータ値CAfter に基づいて、切替えタイミングの後の複数の第2X線画像における画素値の補正を実行する。これにより、補正後の第2X線画像が得られる。補正後の第2X線画像は、表示用データ生成回路25eを介してディスプレイ24に表示される一方、画像データメモリ25bに保存される。なお、時系列に沿ったフレームである第2X線画像は、動画像として表示される。また、第2X線画像に代えて、カラー画像作成回路25gによって第2X線画像から作成されたカラー画像がディスプレイ24に表示されてもよい。また、補正する画素値は、関心領域内の画素値に限定してもよい。
以下、ステップST11以降の処理が前述同様に実行される。すなわち、以下、ステップST11で撮像終了が判定されるまで、ステップST9D~ST12の処理が繰り返し実行される。
上述したように第3の実施形態によれば、複数のX線画像は、被検体の血管に注入された造影剤を用いて撮像して得られる画像である。また、画素値補正部は、切替えタイミングの前の管電圧における造影剤のX線減弱係数と、切替えタイミングの後の管電圧における造影剤のX線減弱係数との差に基づいて、補正に用いるパラメータ値を決定する。補足すると、造影剤のX線減弱係数の管電圧依存性を利用し、管電圧の切替え前後のX線減弱係数の差から、補正に用いるパラメータ値を決定する。
従って、第1の実施形態の効果に加え、複数のX線画像の撮像前に、補正に用いるパラメータ値を決定することができる。すなわち、複数のX線画像の画素値を用いずに、補正に用いるパラメータ値を決定することができる。これに伴い、パラメータ値の決定に用いる画素値を得るための関心領域の設定を省略することができる。
[第3の実施形態の第1変形例]
次に、第3の実施形態の第1変形例について説明する。
第3の実施形態の第1変形例は、医用画像処理装置40が補正を実行する第2の実施形態に対し、造影剤のX線減弱係数に基づいてパラメータ値を決定する第3の実施形態を適用させたものである。前述同様に、複数のX線画像は、被検体の血管に注入された造影剤を用いて撮像して得られる画像である必要がある。
ここで、処理回路47の画素値補正機能472fは、第3の実施形態における画素値補正回路25fに対応する。すなわち、画素値補正機能472fは、切替えタイミングT_swの前の管電圧における造影剤のX線減弱係数μBefore と、切替えタイミングT_swの後の管電圧における造影剤のX線減弱係数μAfter との差に基づいて、補正に用いるパラメータ値を決定する。パラメータ値は、補正するX線画像に応じて、次の(i),(ii)又は(iii)に示すように決定してもよい。
(i)切替えタイミングT_swの前の複数の第1X線画像の画素値の補正を実行する場合、例えば次式に示すように、補正に用いるパラメータ値CBefore を決定する。
CBefore = μAfter - μBefore
(ii)切替えタイミングT_swの後の複数の第2X線画像の画素値の補正を実行する場合、例えば前述同様に、補正に用いるパラメータ値CAfter を決定する。
CAfter = μBefore - μAfter
(iii)切替えタイミングT_swの前の複数の第1X線画像の画素値の補正と、当該T_swの後の複数の第2X線画像の画素値の補正とをそれぞれ実行する場合、例えば、目標となるX線減弱係数μTarget を定める。しかる後、補正に用いるパラメータ値CBefore ,CAfter を決定する。
CBefore = μTarget - μBefore
CAfter = μTarget - μAfter
なお、以上の4つの式に限らず、パラメータ値CBefore ,CAfter は、それぞれ他の式から決定してもよい。また、X線減弱係数を取得する方法は、前述した通りである。
また同様に、画素値補正機能472fは、決定したパラメータ値CAfter を用い、切替えタイミングの後の複数の第2X線画像の画素値の補正を実行する。
他の構成は、第2の実施形態と同様である。
以上のような構成によれば、図26に示すように、前述同様にステップST21が実行される。
ステップST21の後、ステップST25Eにおいて、処理回路47は、例えば、X線画像の付帯情報から、検査に用いた造影剤と複数の管電圧とを読み出す。処理回路47は、切替えタイミングT_swの前の管電圧における造影剤のX線減弱係数μBefore と、当該T_swの後の管電圧における造影剤のX線減弱係数μAfter との差に基づいて、補正に用いるパラメータ値を決定する。パラメータ値は、上記(A)~(C)のいずれでもよいが、ここでは上記(A)の場合を例に挙げて述べる。すなわち、処理回路47は、造影剤のX線減弱係数μBefore ,μAfter の差に基づいて、補正に用いるパラメータ値CBefore = μAfter - μBefore を決定する。なお、ステップST25Eは、ステップST21の前に実行してもよい。
ステップST25Eの後、ステップST26が前述同様に実行される。
ステップST26の後、ステップST27E~ST28において、処理回路47は、ステップST25Eで決定したパラメータ値CBefore に基づいて、切替えタイミングの前の複数の第1X線画像における画素値の補正を実行する。これにより、補正後の第1X線画像が得られる。補正後の第1X線画像は、ディスプレイ44に表示される一方、メモリ46に保存される。なお、時系列に沿ったフレームである第1X線画像は、動画像として表示される。また、第1X線画像に代えて、カラー画像作成機能472gによって第1X線画像から作成されたカラー画像(パラメトリック画像)がディスプレイ44に表示されてもよい。また、補正する画素値は、関心領域内の画素値に限定してもよい。
以下、ステップST29以降の処理が前述同様に実行される。すなわち、以下、ステップST29で補正終了が判定されるまで、ステップST9D~ST12の処理が繰り返し実行される。
上述したように第3の実施形態の第1変形例によれば、複数のX線画像は、被検体の血管に注入された造影剤を用いて撮像して得られる画像である。また、画素値補正部は、切替えタイミングの前の管電圧における造影剤のX線減弱係数と、切替えタイミングの後の管電圧における造影剤のX線減弱係数との差に基づいて、補正に用いるパラメータ値を決定する。従って、第2の実施形態の効果に加え、複数のX線画像の撮像前に、補正に用いるパラメータ値を決定することができる。すなわち、複数のX線画像の画素値を用いずに、補正に用いるパラメータ値を決定することができる。これに伴い、パラメータ値の決定に用いる画素値を得るための関心領域の設定を省略することができる。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、管電圧の切替えを伴い時系列に沿って撮像される複数のX線画像における管電圧の切替えタイミングに関する情報を取得する。複数のX線画像における切替えタイミングの前の複数の第1X線画像と、切替えタイミングの後の複数の第2X線画像とのうちの少なくとも一方における画素値の補正を実行する。従って、管電圧の切替え前後において、画像のコントラストの急激な変化を阻止し、画像を見やすくすることができる。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。