以下に添付図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
(原子力プラントの全体構成)
図1は、本実施形態に係る原子力プラントの概略構成図であり、図2は、本実施形態に係る原子炉を表す縦断面図である。図1に示す本実施形態に係る原子力プラント1は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)を有する。ただし、原子力プラント1は、沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)を有するものであってもよい。
図1に示すように、原子力プラント1の原子炉格納容器11内には、原子炉12及び蒸気発生器13が格納されており、この原子炉12と蒸気発生器13とは冷却水配管14,15を介して連結されており、冷却水配管14に加圧器16が設けられ、冷却水配管15に冷却水ポンプ15aが設けられている。この場合、減速材及び一次冷却水(冷却材)として軽水を用い、炉心部における一次冷却水の沸騰を抑制するために、一次冷却系統は加圧器16により150~160気圧程度の高圧状態を維持するように制御している。従って、原子炉12にて、燃料(原子燃料)として低濃縮ウランまたはMOXにより一次冷却水として軽水が加熱され、高温の一次冷却水が加圧器16により所定の高圧に維持した状態で冷却水配管14を通して蒸気発生器13に送られる。この蒸気発生器13では、高圧高温の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換が行われ、冷やされた一次冷却水は冷却水配管15を通して原子炉12に戻される。
蒸気発生器13は、蒸気タービン17と冷却水配管18を介して連結されており、この蒸気タービン17は高圧タービン19及び低圧タービン20を有すると共に、発電機21が接続されている。また、高圧タービン19と低圧タービン20との間には、湿分分離加熱器22が設けられており、冷却水配管18から分岐した冷却水分岐配管23が湿分分離加熱器22に連結される一方、高圧タービン19と湿分分離加熱器22は低温再熱管24により連結され、湿分分離加熱器22と低圧タービン20は高温再熱管25により連結されている。
更に、蒸気タービン17の低圧タービン20は、復水器26を有しており、この復水器26には冷却水(例えば、海水)を給排する取水管27及び排水管28が連結されている。この取水管27は、循環水ポンプ29を有し、排水管28と共に他端部が海中に配置されている。そして、この復水器26は、冷却水配管30を介して脱気器31に連結されており、この冷却水配管30に復水ポンプ32及び低圧給水加熱器33が設けられている。また、脱気器31は、冷却水配管34を介して蒸気発生器13に連結されており、この冷却水配管34には給水ポンプ35及び高圧給水加熱器36が設けられている。
従って、蒸気発生器13にて、高圧高温の一次冷却水と熱交換を行って生成された蒸気は、冷却水配管18を通して蒸気タービン17(高圧タービン19から低圧タービン20)に送られ、この蒸気により蒸気タービン17を駆動して発電機21により発電を行う。このとき、蒸気発生器13からの蒸気は、高圧タービン19を駆動した後、湿分分離加熱器22で蒸気に含まれる湿分が除去されると共に加熱されてから低圧タービン20を駆動する。そして、蒸気タービン17を駆動した蒸気は、復水器26で海水を用いて冷却されて復水となり、低圧給水加熱器33で、例えば、低圧タービン20から抽気した低圧蒸気により加熱され、脱気器31で溶存酸素や不凝結ガス(アンモニアガス)などの不純物が除去された後、高圧給水加熱器36で、例えば、高圧タービン19から抽気した高圧蒸気により加熱された後、蒸気発生器13に戻される。
このように構成された原子力発電プラントに適用された原子炉12において、図2に示すように、原子炉容器41は、その内部に炉内構造物が挿入できるように、原子炉容器本体42とその上部に装着される原子炉容器蓋43により構成されており、この原子炉容器本体42に対して原子炉容器蓋43が開閉可能となっている。原子炉容器本体42は、上部が開口して下部が球面状に閉塞された円筒形状をなし、上部に一次冷却水としての軽水(冷却材)を給排する入口ノズル44及び出口ノズル45が形成されている。
原子炉容器本体42内にて、入口ノズル44及び出口ノズル45より下方には、円筒形状をなす炉心槽46が原子炉容器本体42の内面と所定の隙間をもって配置されており、この炉心槽46の上部には、円板形状をなして図示しない多数の連通孔が形成された上部炉心板47が連結され、下部には、同じく円板形状をなして図示しない多数の連通孔が形成された下部炉心板48が連結されている。そして、原子炉容器本体42内には、炉心槽46の上方に位置して円板形状をなす上部炉心支持板49が固定されており、この上部炉心支持板49から複数の炉心支持ロッド50を介して上部炉心板47、つまり、炉心槽46が吊下げ支持されている。一方、下部炉心板48、つまり、炉心槽46は、原子炉容器本体42の内面に対して複数のラジアルキー52により位置決め保持されている。
炉心槽46と上部炉心板47と下部炉心板48により炉心53が形成されており、この炉心53には、多数の燃料集合体54が配置されている。この燃料集合体54は、図示しないが、多数の燃料棒が支持格子により格子状に束ねられて構成され、上端部に上部ノズルが固定される一方、下端部に下部ノズルが固定されている。そして、複数の制御棒55は、上端部がまとめられて制御棒クラスタ56となり、燃料集合体54内に挿入可能となっている。上部炉心支持板49には、この上部炉心支持板49を貫通して多数の制御棒クラスタ案内管57が支持されており、下端部が燃料集合体54の制御棒クラスタ56まで延出されている。
原子炉容器41を構成する原子炉容器蓋43の上部には、磁気式ジャッキの制御棒駆動装置58が設けられており、原子炉容器蓋43と一体をなすハウジング59内に収容されている。多数の制御棒クラスタ案内管57の上端部は、制御棒駆動装置58まで延出され、この制御棒駆動装置58から延出された制御棒クラスタ駆動軸60が、制御棒クラスタ案内管57内を通って燃料集合体54まで延出され、制御棒クラスタ56を把持可能となっている。また、図示しないが、上部炉心支持板49には、この上部炉心支持板49を貫通して多数の炉内計装案内管が支持されており、下端部が燃料集合体54まで延出されており、中性子束を計測できるセンサを挿入可能となっている。
この制御棒駆動装置58は、上下方向に延設されて制御棒クラスタ56に連結されると共に、その表面に複数の周溝を長手方向に等ピッチで配設してなる制御棒クラスタ駆動軸60を磁気式ジャッキで上下動させることで、原子炉の出力を制御している。
従って、制御棒駆動装置58により制御棒クラスタ駆動軸60を移動して燃料集合体54に制御棒55を挿入することで、炉心53内での核分裂を制御し、発生した熱エネルギにより原子炉容器41内に充填された軽水が加熱され、高温の軽水が出口ノズル45から排出され、上述したように、蒸気発生器13に送られる。即ち、燃料集合体54を構成する燃料としてのウランまたはプルトニウムが核分裂することで中性子を放出し、減速材及び一次冷却水としての軽水が、放出された高速中性子の運動エネルギを低下させて熱中性子とし、新たな核分裂を起こしやすくすると共に、発生した熱を奪って冷却する。また、制御棒55を燃料集合体54に挿入することで、炉心53内で生成される中性子数を調整し、また、原子炉を緊急に停止するときには炉心53に急速に挿入される。
また、原子炉容器41内には、炉心53に対して、その上方に出口ノズル45に連通する上部プレナム61が形成されると共に、下方に下部プレナム62が形成されている。そして、原子炉容器41と炉心槽46との間に入口ノズル44及び下部プレナム62に連通するダウンカマー部63が形成されている。従って、軽水は、4つの入口ノズル44から原子炉容器本体42内に流入し、ダウンカマー部63を下向きに流れ落ちて下部プレナム62に至り、この下部プレナム62の球面状の内面により上向きに案内されて上昇し、下部炉心板48を通過した後、炉心53に流入する。この炉心53に流入した軽水は、炉心53を構成する燃料集合体54から発生する熱エネルギを吸収することで、この燃料集合体54を冷却する一方、高温となって上部炉心板47を通過して上部プレナム61まで上昇し、出口ノズル45を通って排出される。
このように構成された原子炉容器41は、上述したように、原子炉容器本体42と原子炉容器蓋43とにより構成される。原子炉容器41は、本実施形態に係るボルト65が取り付けられる。より詳しくは、原子炉容器蓋43は、複数のボルト65及び複数のナット66により、原子炉容器本体42の上部に着脱自在に装着されている。
(ボルトの構成)
次に、原子力プラント1用のボルト65の構成について説明する。図3及び図4は、本実施形態に係るボルトの模式図である。図3は、ボルト65の正面図であり、図4は、ボルト65の上面図である。図3に示すように、ボルト65は、スタッドボルトであり、例えば径が150mm程度で、軸方向の全長が1000mm程度となっている。図3に示すように、ボルト65は、下部ねじ部65a、貫通部65b、上部ねじ部65c、平行溝部65d、開口部65e、及びタグ65fを有する。下部ねじ部65aと上部ねじ部65cとは、外周に雄ねじが形成されている箇所である。下部ねじ部65aと上部ねじ部65cとの間には、下部ねじ部65a及び上部ねじ部65cよりも径が小さい貫通部65bが形成されている。平行溝部65dは、上部ねじ部65cよりも上側、すなわち下部ねじ部65aの反対側に設けられている。平行溝部65dは、外周に、互いに平行な方向(周方向)に延在する複数の溝が設けられている。開口部65eは、平行溝部65dの上端面65d1から下部ねじ部65aの下端面65a1まで貫通する開口(穴)である。
また、タグ65fは、平行溝部65dの上端面65d1に設けられている。タグ65fは、端末、すなわち識別端末102の読取り部112で読み取られることにより、そのタグ65fが付されているボルト65を、他のボルト65から識別可能とする。言い換えれば、タグ65fは、そのタグ65fが付されているボルト65を識別(同定)する識別情報を有している。そして、識別端末102は、タグ65fを読み込むことで、その識別情報を取得して、その識別情報に基づき、そのボルト65を他のボルト65から識別することができる。この識別情報は、例えばボルト65毎に異なる数字が割り当てられた数字情報や、例えばボルト65毎に異なる記号が割り当てられた記号情報などである。ただし、識別情報は、ボルト65を他のボルト65から識別可能な情報であれば、任意である。なお、識別端末102の構成については後述する。
さらに詳しくは、識別端末102は、タグ65fからの信号(光や電波)を受信することで、識別情報を取得する。本実施形態では、タグ65fは、一次元コード、二次元コード、又はICタグ(Integrated Curcuitタグ)である。一次元コードは、バーコードなどであり、二次元コードは、QRコード(登録商標)などである。タグ65fは、一次元コード及び二次元コードである場合、割り当てられたボルト65毎に異なる所定の模様を有する。この場合、タグ65fに入射された外光などの可視光は、タグ65fで反射し、その反射光は、タグ65fの模様に応じて、タグ65f毎に異なるものとなる。識別端末102は、このタグ65fによる反射光(光の信号)を、識別情報として取得して、ボルト65を識別する。例えば、識別端末102は、タグ65fを撮像することで、反射光を識別情報として取得する。また、識別端末102は、タグ65fに光を照射し、タグ65fによるその光の反射光を、識別情報として取得してもよい。また、タグ65fがICコードである場合、識別端末102は、タグ65fに電波を出力する。この場合、ICコードであるタグ65fは、例えば図示しない集積回路(IC)及びメモリを備えており、識別端末102からの電波により、集積回路で電力を発生させ、その電力によって、メモリに記憶されている識別情報を読み出して、識別情報を電波として識別端末102に送信する。識別端末102は、そのタグ65fからの電波を取得することで識別情報を取得して、ボルト65を識別する。
このように、タグ65fは、作業者が目視で識別情報を認識するマーキングでなく、識別端末102が読み込むことで、識別情報を取得可能に構成されている。なお、識別端末102によるタグ65fの読み取り方法は、上記に限られず任意である。また、タグ65fは、本実施形態では上端面65d1に設けられているが、識別端末102が読み込み可能な位置に設けられていれば、ボルト65の任意の位置に設けられてよい。
このように構成されるボルト65は、上部ねじ部65cにナット66が螺合し、貫通部65bが原子炉容器蓋43に形成された取付孔43a(図6参照)を貫通し、下部ねじ部65aが原子炉容器本体42に形成されたねじ穴42a(図6参照)に捩じ込まれる。この状態で、ボルト65に対して原子炉容器本体42から離間する軸心方向(ここでは、上方)に圧力が印加させながら、ナット66を螺合することで、ボルト65を締結または弛緩することができ、原子炉容器本体42に対して原子炉容器蓋43を着脱することができる。このボルト65の締結、弛緩は、後述の締結弛緩システム104によって実行される。このボルト65の締結、弛緩の方法については、後述する。
また、ボルト65は、原子炉容器41の点検時に取り外される。この際、ボルト65は、清掃された後、きずの確認がなされ、その後、後述するボルトラック110に保管される。なお、ここでの「きず」とは、非破壊検査の分野で用いられる用語としての「きず」であり、ボルト65の、意図しない不連続部である。すなわち、きずは、傷や欠陥を含む。原子炉容器41の点検が終わったら、ボルト65は、原子炉容器41に再度取付けられる。本実施形態においては、作業者は、管理システム100を利用して、このようなボルト65を用いた作業を行う。そして、このボルト65を用いた作業の際に、タグ65fを読み込んでボルト65を識別することにより、作業を適切に進める。以下、管理システム100について説明する。
(管理システムの構成)
図5は、本実施形態に係る管理システムの模式的なブロック図である。図5に示すように、管理システム100は、識別端末102と、締結弛緩システム104と、清掃システム106と、探傷システム108と、ボルトラック110とを有する。管理システム100は、識別端末102で複数のボルト65のそれぞれを識別しつつ、締結弛緩システム104によるボルト65の原子炉容器41への取付け及び取外しと、清掃システム106によるボルト65の清掃と、探傷システム108によるボルト65のきずの検出と、ボルトラック110によるボルト65の保管と、を行う。
識別端末102は、上述のようにボルト65のタグ65fを読み込むことで、ボルト65の識別を行う装置である。識別端末102は、作業者が携帯して持ち運び可能な装置(端末)であるが、定められた位置に備えられる装置(コンピュータ)であってもよい。識別端末102は、読取り部112と、入力部114と、出力部116と、記憶部118と、制御部120とを有する。読取り部112は、タグ65fを読み取る機構であり、言い換えれば、タグ65fが有している識別情報を取得する機構である。例えば、タグ65fが一次元コードや二次元コードである場合、読取り部112は、撮像素子であり、タグ65f(からの反射光)を撮像することで、識別情報を取得する。また、タグ65fがICタグである場合、読取り部112は、例えばアンテナ機構であり、タグ65fからの識別情報を含む電波を取得する。
入力部114は、作業者からの操作を取得可能な機構である。入力部114は、例えばタッチパネルやボタンなどである。例えば作業者は、入力部114を操作することで、読取り部112にタグ65fを読み取らせる。例えば、作業者は、入力部114を操作することで、タグ65fを撮像させたり、タグ65fに電波を送信させてタグ65fからの電波を取得させたりする。出力部116は、制御部120の制御結果や作業者からの入力内容などの情報を出力する機構である。本実施形態では、出力部116は、情報を表示する表示部(ディスプレイ)であり、タッチパネル型ディスプレイなどであってもよい。
記憶部118は、各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などである。本実施形態において、記憶部118は、ボルト65に関する情報を、ボルト65毎に記憶している。すなわち、記憶部118は、ボルト65に関する情報をボルト65の識別情報と紐付けて記憶しており、言い換えれば、ボルト65の識別情報とボルト65に関する情報とを、テーブルとして記憶している。ボルト65に関する情報としては、ボルト65の設計に関する情報や、ボルト65の製造に関する情報や、ボルト65の締結時の伸びに関する情報や、ボルト65の清掃に関する情報や、ボルト65のきずに関する情報などを含む。ボルト65の設計に関する情報は、例えばボルト65がどのように設計されたかを示す情報であり、例えばボルト65の図面や規格の情報である。また、ボルト65の製造に関する情報とは、ボルト65がどのようにして製造されたかや製造後の検査を示す情報であり、例えばミルシートの内容である。また、ボルト65の締結時の伸びに関する情報とは、ボルト65が原子炉容器41に締結された際の伸び量を示す情報であり、後述する伸び量検出装置132によって検出される。また、ボルト65の清掃に関する情報とは、ボルト65が清掃システム106によって清掃されたかを示す情報であり、後述する清掃制御装置142によって検出される。また、ボルト65のきずに関する情報とは、ボルト65のきずの状態を示す情報であり、後述する探傷システム108によって検出される。以下、ボルト65に関する情報を、ボルト関連情報と記載する。なお、本実施形態では、識別端末102が、記憶部118において、ボルト関連情報を記憶しているが、ボルト関連情報は、識別端末102に記憶されなくてもよい。この場合、例えば、ボルト関連情報は、管理システム100が有する識別端末102以外のサーバの記憶部(メモリ)に記憶される。
制御部120は、演算装置、すなわちCPU(Central Processing Unit)である。制御部120は、識別部122と、情報取得部124と、情報管理部125と、出力制御部126とを有する。識別部122と、情報取得部124と、出力制御部126とは、記憶部118に記憶されたソフトウェア(プログラム)を読み出し、CPUで処理することによりその機能を実現する。
識別部122は、読取り部112のタグ65fの読み取り結果に基づき、タグ65fが付されたボルト65を識別する。すなわち、識別部122は、読取り部112が取得した識別情報を取得して、その識別情報によりボルト65を識別する。言い換えれば、識別部122は、読取り部112が取得した識別情報に基づき、タグ65fが読み取られたボルト65が、どのボルト65であるかを識別する。情報取得部124は、識別部122によるボルト65の識別結果に基づき、ボルト65のボルト関連情報を取得する。詳しくは後述するが、情報取得部124は、識別端末102以外の管理システム100、すなわち、後述する伸び量検出装置132と清掃制御装置142と探傷システム108とから、ボルト関連情報を取得し、そのボルト関連情報と、識別部122に識別されたボルト65の識別情報とを紐付けて、テーブルとして記憶部118に記憶させる。また、情報管理部125は、記憶部118に記憶されていたテーブルを読み出し、識別部122からの識別情報に一致するテーブル内の識別情報を、照会する。そして、情報管理部125は、識別部122からの識別情報に一致するテーブル内の識別情報に紐付けられたボルト関連情報を読み出すことで、タグ65fが読み取られたボルト65のボルト関連情報を取得する。これにより、情報管理部125は、識別されたボルト65について、記憶部118に記憶されていた過去のボルト関連情報を読み出すことができる。すなわち、情報管理部125は、記憶部118に記憶されたボルト関連情報を管理するものである。なお、テーブルが記憶部118でなく外部サーバに記憶されていた場合、情報管理部125は、外部サーバからこのテーブルを読み出す。
出力制御部126は、識別部122が取得した識別情報や、情報取得部124が取得したボルト関連情報や、記憶部118に記憶されていた識別情報及びボルト関連情報などを、出力部116に出力させる。具体的には、出力制御部126は、識別部122が取得した識別情報を、出力部116に表示させる。すなわち、出力制御部126は、出力部116に、タグ65fを読み取ったボルト65の識別情報(例えばそのボルト65に割り当てられた数字情報)を表示させる。また、出力制御部126は、情報取得部124が取得したボルト関連情報を、出力部116に表示させる。すなわち、出力制御部126は、出力部116に、タグ65fを読み取ったボルト65のボルト関連情報を表示させる。なお、識別情報やボルト関連情報の出力部116における出力方法は、表示に限られず、例えば、出力部116により、音声で識別情報を出力させてもよい。
作業者は、このような識別端末102を用いてボルト65を識別してから、ボルト65の締結や清掃やきず検出などを行う。
締結弛緩システム104は、締結弛緩装置130と、伸び量検出装置132とを有する。締結弛緩装置130は、原子炉容器本体42及び原子炉容器蓋43の外周部に対して複数のボルト65が捩じ込まれて配列されると共に、この複数のボルト65にそれぞれナット66が螺合し、ボルト65に原子炉容器本体42から離間する軸心方向に圧力を印加させながらナット66を回転して、ボルト65の締結または弛緩を行う装置である。伸び量検出装置132は、締結弛緩装置130による作業前後(締結の前後)におけるボルト65の伸び量を検出する装置である。
図6から図10は、締結弛緩装置の作動を示す模式図である。図6から図10に示すように、締結弛緩装置130は、ボルトテンショナ130Aと、プラーバソケット130Bと、プラーバ130Cと、油圧ポンプユニット130Dと、ナット回転装置130Eと、ナットソケット130Fとを有する。締結弛緩装置130によってボルト65を締結する際、作業者は、最初に、識別端末102を操作して、締結する複数のボルト65のそれぞれを識別しておく。すなわち、作業者は、締結するボルト65のそれぞれの識別情報を、識別端末102に識別、表示させることで、締結する複数のボルト65のそれぞれを識別しておく。そして、作業者は、識別したボルト65を、ナット66と共に、それぞれの原子炉容器41の取付孔(ねじ穴42a、取付孔43a)に締結しない状態で取り付ける。作業者は、全ての原子炉容器41に締結する全てのボルト65を、それぞれの取付孔に取付ける。ただし、ボルト65の取付孔への取付けは、作業者の手作業で行われず、装置によって自動で行われてもよい。また、原子炉容器41の取付孔にどの識別情報のボルト65を取り付けるかは、予め定められていてもよい。この場合、作業者は、そのボルト65に対して割り当てられていた原子炉容器41の取付孔に、ボルト65を取り付ける。この場合、識別端末102は、情報取得部124により、ボルト65の識別情報と、そのボルト65が取付けられた取付孔の情報とを、関連付けて取得して、記憶部118に記憶させる。ただし、原子炉容器41の取付孔にどの識別情報のボルト65を取り付けるかは、定められていなくてもよく、この場合、各取付孔には、識別済みの任意のボルト65が取り付けられる。
ボルト65を原子炉容器41の取付孔に取付けたら、締結弛緩装置130を制御する図示しない締結弛緩制御部は、締結弛緩装置130を、例えば図示しない搬送装置により、ボルト65の位置に移動させる。この場合、締結弛緩制御部は、識別端末102によって識別されたボルト65の識別情報に基づき、締結弛緩装置130を、ボルト65の位置に移動させる。すなわち、締結弛緩制御部は、締結弛緩装置130を移動させる先のボルト65を指定して、締結弛緩装置130を移動させる。
締結弛緩制御部は、締結弛緩装置130を移動させて、図6に示すように、所定の位置、つまり、ボルト65及びナット66の位置で停止させる。次に、図7に示すように、締結弛緩制御部は、図示しないリフト装置により締結弛緩装置130を下降し、ボルトテンショナ130Aをボルト65及びナット66に係合させる。そして、図8に示すように、例えば周方向に4分割された円筒形状なすプラーバソケット130Bを、径方向の内側に移動し、ボルト65の平行溝部65dをチャッキングする。ここで、プラーバ130Cは、例えば円筒形状をなし、油圧ポンプユニット130Dにより給排される油圧により、軸心方向(上下方向)に沿って移動可能となっている。従って、締結弛緩制御部は、この状態で、図9に示すように、油圧ポンプユニット130Dを作動することでプラーバ130Cを上昇させ、ボルト65に対して原子炉容器本体42から離間する軸心方向(上方)に圧力を印加する。そして、図10に示すように、締結弛緩制御部は、ナットソケット130Fを回転させるナット回転装置130Eを作動することでナットソケット130Fを回転し、ナット66を回転して締結することができる。
また、図5に示す、伸び量検出部としての伸び量検出装置132は、締結弛緩装置130によるボルト65の締結時に、ボルト65の伸び量を検出(測定)する。例えば、伸び量検出装置132は、ボルト65の開口部65eに参照用の棒体を挿入し、その棒体とボルト65との軸方向の長さ比に基づき、締結時のボルト65の伸び量を検出する。また、締結弛緩制御部は、締結時にボルト65に対して印加される圧力を、図示しない圧力計で検出する。識別端末102の情報取得部124は、締結弛緩制御部から、ボルト65に対して印加された圧力の検出値をボルト65の識別情報に関連付けて取得し、伸び量検出装置132から、その圧力が印加されて締め付けられたボルト65の伸び量の検出値をボルト65の識別情報に関連付けて取得する。そして、識別端末102は、記憶部118に、締結時の圧力の検出値とボルトとの伸び量とを、ボルト65の識別情報に関連付けて記憶する。締結弛緩装置130は、全てのボルト65について締付を行う。従って、識別端末102は、ボルト65毎に、圧力の検出値と伸び量の検出値とを取得し、それらの検出値を、ボルト65毎に、すなわちボルト65の識別情報毎に、ボルト関連情報として記憶する。
また、締結弛緩装置130は、原子炉容器41の点検の際に、原子炉容器41からボルト65を取り外すために、ボルト65の締結を弛緩する。この場合でも、締結弛緩制御部は、図6から図10で説明した方法と同様の方法で、締結弛緩装置130をボルト65に取付け、ナット回転装置130Eを作動することでナットソケット130Fを締結時とは反対側の回転し、ナット66を回転して弛緩する。そして、作業者が、弛緩されたボルト65を取り外す。作業者は、締結弛緩装置130でボルト65を弛緩する前に、識別端末102を操作して、取り外す複数のボルト65のそれぞれを識別しておく。また、締結弛緩制御部は、弛緩時において、ボルト65に対して印加される圧力を、図示しない圧力計で検出する。識別端末102の情報取得部124は、締結弛緩制御部から、弛緩時にボルト65に対して印加された圧力の検出値を取得し、そのボルト65の識別情報に紐づいたボルト関連情報として、記憶部118に記憶する。すなわち、識別端末102は、弛緩時のボルト65の印加圧力の検出値を、ボルト65毎に、すなわちボルト65の識別情報毎に、ボルト関連情報として記憶する。
また、点検時に原子炉容器41から取り外されたボルト65は、後述する清掃やきず検出の後に、原子炉容器41に再度締結される。締結弛緩制御部は、ボルト65を再締結する際に、過去の締結での圧力の検出値と伸び量の検出値とを、識別端末102から取得して、それらの検出値に基づき、締結時に印加する圧力の値を設定してもよい。この再締結の際にも、ボルト65への印加圧力とボルト65の伸び量とが検出され、ボルト関連情報として記憶される。すなわち、ボルト65への印加圧力とボルト65の伸び量とは、締結毎に、記録される。同様に、ボルト65への印加圧力は、弛緩毎に記録される。なお、ボルト65は、原子炉容器41の点検の際に取り外されるが、それ以外の理由で取り外されてもよい。
なお、上述の説明では、ボルト65への印加圧力とボルト65の伸び量とは、締結弛緩制御部及び伸び量検出装置132により、識別端末102に送信される。すなわち、締結弛緩制御部及び伸び量検出装置132は、ボルト65の識別情報を識別端末102から取得した上で、その識別情報のボルト65への印加圧力とボルト65の伸び量とを、識別端末102に送信する。ただし、ボルト65への圧力とボルト65の伸び量とは、例えば作業者によって、識別端末102に入力されてもよい。この場合、作業者は、締結弛緩制御部及び伸び量検出装置132から、ボルト65への圧力とボルト65の伸び量との検出値を読み出し、それらの検出値を、ボルト65毎に、識別端末102の入力部114に入力する。このようにしても、識別端末102は、ボルト65毎に、ボルト65への印加圧力とボルト65の伸び量との検出値を記憶可能である。
図5に示す清掃システム106は、原子炉容器41から取り外されたボルト65を清掃(洗浄)するシステムである。清掃システム106は、図5に示すように、清掃装置140と、清掃制御装置142とを有する。図11は、本実施形態に係る清掃装置の一例を示す模式図である。図11に示すように、清掃装置140は、筐体140Aと、筐体140A内に設けられる基台140B及びノズル140Cと、を有する。作業者は、原子炉容器41から取り外されたボルト65を、清掃装置140の筐体140A内に収納して、基台140Bに固定する。筐体140A内には、複数のボルト65が収納可能になっており、作業者は、複数のボルト65を、筐体140A内に収納し、基台140Bに固定する。
清掃制御装置142は、清掃装置140を制御する装置(例えばコンピュータ)である。清掃制御装置142は、ボルト65が筐体140A内に収納されて基台140Bに固定されたら、ノズル140Cを制御して、ノズル140Cからボルト65に、洗浄材(研掃材)を噴射させる。これにより、ボルト65が清掃される。例えば、洗浄材としては、クルミの殻の粉末が用いられる。清掃制御装置142は、予め定めた所定の工程が終了すると、ボルト65の清掃処理を終了させる。清掃制御装置142は、ボルト65の清掃の状態を検出する清掃状態検出部であるともいえる。
ここで、原子炉容器41から取り外されて清掃装置140の筐体140Aに収納されるボルト65は、識別端末102によって識別されている。例えば、清掃制御装置142は、識別端末102から、筐体140A内に収納されたボルト65の識別情報を取得して、どのボルト65が収納されたかを把握する。清掃制御装置142は、ボルト65の清掃に関する情報として、清掃処理が終了した旨の情報を、ボルト65の識別情報に関連付けて、識別端末102に送信する。識別端末102の情報取得部124は、清掃制御装置142から、清掃処理が終了した旨の情報をボルト65の識別情報に関連付けて取得し、そのボルト65の識別情報に紐づいたボルト関連情報として、記憶部118に記憶する。識別端末102は、このように清掃処理が終了した旨の情報を取得することで、ボルト65毎に、清掃が完了したか否かの情報を記憶することができる。なお、清掃処理が終了した旨の情報は、例えば作業者によって、識別端末102に入力されてもよい。この場合、例えば清掃制御装置142は、清掃が終了したら、その旨を、例えば音声や表示などで報知する。作業者は、その報知から清掃処理が終了したことを把握し、識別端末102の入力部114に、清掃処理が終了したボルト65毎に、清掃処理が終了した旨の情報を入力する。このようにしても、識別端末102は、清掃が完了したか否かの情報を記憶可能である。
図5に示す探傷システム108は、原子炉容器41から取り外されたボルト65のきずを検出するシステムである。探傷システム108は、図5に示すように、探傷装置150と、探傷制御装置152とを有する。図12は、本実施形態に係る探傷装置の一例を示す模式図である。探傷装置150は、本実施形態では、超音波探傷装置であり、図12に示すように、筐体150Aと、支柱150Bと、探傷軸150Cと、プローブ150Dとを有する。作業者は、原子炉容器41から取り外されて清掃装置140で清掃された後のボルト65を、清掃装置140から取り出して、探傷装置150の筐体150A内に収納する。筐体150A内には、複数のボルト65が収納可能になっており、作業者は、複数のボルト65を、筐体150A内に収納する。探傷制御装置152は、ボルト65が筐体150A内に収納されたら、例えば筐体150A内を液体(水など)で満たす。そして、探傷制御装置152は、支柱150Bに設けられた探傷軸150Cを駆動して、探傷軸150Cをボルト65の開口部65e内に挿入する。探傷制御装置152は、その状態で、探傷軸150Cの先端に設けられたプローブ150Dから超音波を出力させ、その超音波のボルト65による反射波を検出することで、ボルト65のきず(内部欠陥など)を検出する。すなわち、探傷制御装置152は、ボルト65のきずの状態を検出する探傷部であるともいえる。探傷制御装置152は、探傷軸150Cを回転させつつ、軸方向に移動可能なので、ボルト65の広範囲における探傷(きずの検出)が可能である。
なお、本実施形態では、例えば、探傷制御装置152が、内部欠陥のない状態の反射波を参照反射波情報として記憶しておき、実際に検出したボルト65からの反射波と参照反射波情報とを比較して、ボルト65のきずの状態を検出する。すなわち、本実施形態では、探傷制御装置152が、きずの有無、すなわち、きずが許容範囲を超えるものか否か(ボルト65を再利用できる程度のきずであるか否か)を判断している。ただし、例えば、探傷制御装置152によるボルト65の反射波の波形に基づき、作業者がきずの有無を判断してもよい。
ここで、原子炉容器41から取り外されて探傷装置150の筐体150A内に収納されるボルト65は、識別端末102によって識別されている。従って、例えば、探傷制御装置152は、識別端末102から、筐体150A内に収納されたボルト65の識別情報を取得して、どのボルト65が収納されたかを把握する。なお、上述の説明では、清掃装置140に収納される前に、ボルト65が識別されていたが、清掃装置140での清掃が完了した後であって探傷装置150に収納される前にも、識別端末102によって、ボルト65が再度識別されてもよい。探傷制御装置152は、ボルト65のきずの検出結果を、ボルト65のきずに関する情報として、ボルト65の識別情報に関連付けて、識別端末102に送信する。識別端末102の情報取得部124は、探傷制御装置152から、ボルト65のきずの検出結果の情報をそのボルト65の識別情報に関連付けて取得し、そのボルト65の識別情報に紐づいたボルト関連情報として記憶部118に記憶する。識別端末102は、このようにボルト65のきずの検出結果の情報を取得することで、ボルト65毎に、ボルト65のきずの検出結果の情報を記憶することができる。なお、ボルト65のきずの検出結果の情報は、例えば作業者によって、識別端末102に入力されてもよい。この場合、作業者は、探傷制御装置152によるきずの検出結果を把握して、識別端末102の入力部114に、ボルト65毎に、きずの検出結果の情報を入力する。このようにしても、識別端末102は、きずの検出結果の情報を記憶可能である。
探傷システム108は、このように超音波探傷により、ボルト65のきずの状態を検出する。ただし、ボルト65のきずの状態検出の方法は、これに限られず任意であるし、複数の方法を組み合わせてもよい。
図5に示すボルトラック110は、原子炉容器41から取り外されたボルト65を保管する容器である。図13は、ボルトラックの一例の模式図である。図13に示すように、ボルトラック110は、筐体110Aと、基台110Bとを有する。作業者は、原子炉容器41から取り外されて探傷システム108できずの検出がなされた後のボルト65を、探傷装置150から取り出して、ボルトラック110の筐体110A内に収納し、基台110Bに固定する。ボルトラック110は、1つのボルト65のみを保管するものであるが、複数のボルト65を保管可能であってもよい。また、作業者は、きずの検出において再利用可能であると判断されたボルト65のみを、ボルトラック110に保管してもよい。
ここで、原子炉容器41から取り外されてボルトラック110内に収納されるボルト65は、識別端末102によって識別されている。従って、例えば、識別端末102は、どのボルト65が、探傷を終了してボルトラック110に保管されているかを、把握することができる。なお、上述の説明では、清掃装置140に収納される前に、ボルト65が識別されていたが、探傷装置150での探傷(きずの検出)が完了した後であってボルトラック110に収納される前にも、識別端末102によって、ボルト65が再度識別されてもよい。
ボルト65は、例えば、原子炉容器41の点検が終了して原子炉容器41を再組立てするまで、ボルトラック110に保管される。原子炉容器41を再組立てする際には、作業者は、ボルトラック110ごと、ボルト65を原子炉容器41の近傍までは運び、ボルトラック110からボルト65を取り出して、ボルト65の原子炉容器41への再締結を行う。この再締結の際にも、ボルト65の識別が行われる。
図14は、ボルト関連情報のテーブルの一例である。識別端末102は、以上説明したように、記憶部118により、ボルト65毎に、ボルト65のボルト関連情報を記憶する。すなわち、図14に示すように、識別端末102は、識別情報毎(図14の例ではボルト65A、ボルト65B)に、ボルト関連情報を紐付けて記憶する。図14の例では、ボルト関連情報として、設計情報(ボルト65の設計に関する情報)と、製造情報(ボルト65の製造に関する情報)と、圧力値及び伸び量(ボルト65への圧力及びボルト65の伸び量)と、清掃状態(ボルト65の清掃に関する情報)と、きず情報(ボルト65のきずに関する情報)と、保管ラックの情報(どのボルトラック110にいつから保管されているかの情報)とが、記憶される。ただし、ボルト関連情報は、以上挙げたものに限られず、他の情報も含んでよい。例えば、作業者は、ボルト65を取り外す毎に、ボルト65の外観写真を撮像し、外観写真のデータを、ボルト関連情報として記憶させてもよい。
また、記憶部118は、情報取得部124がボルト関連情報を取得する毎に、ボルト関連情報を記憶する。従って、記憶部118は、情報取得部124によって今回取得されたボルト関連情報と、情報取得部124によって過去に取得されたボルト関連情報とを、ボルト関連情報の履歴として記憶する。具体的には、ボルト65は、定期点検などの機会毎に取り外されて、取り外される毎に、清掃、きずの確認、及び保管などの作業がなされる。情報取得部124は、ボルト65が取り外される機会毎に、圧力値、伸び量、清掃状態、きず情報、及び保管ラックの情報などのボルト関連情報を取得する。記憶部118は、情報取得部124が取得したボルト関連情報を、この機会毎に区分して記憶する。この場合、情報取得部124は、機会毎に、ボルト関連情報を取得し、記憶部118は、ボルト関連情報を機会と関連付けて、機会毎に区別して記憶している。図14では、機会T1にボルト65が取り外され、作業がなされた後ボルト65が再度取付けられ、その後、機会T2において、再度ボルト65が取り外された例を示している。ただし、機会の数は、図14に示すような2回に限られない。記憶部118は、機会毎にボルト関連情報を記憶しており、図14の例では、機会T1におけるボルト関連情報(過去に取得されたボルト関連情報)と、機会T2におけるボルト関連情報(今回取得されたボルト関連情報)とを、それぞれ記憶している。これにより、記憶部118は、機会毎にボルト関連情報の履歴を記憶することができ、情報管理部125は、機会毎に記憶されたボルト関連情報の履歴を管理することができる。なお、設計情報や製造情報は、機会毎に検出される情報でないため、機会T1、T2において共通した情報となっている。このように、情報取得部124は、ボルト65が取り外された機会毎に、その機会において行った作業において検出された複数種類のボルト関連情報を取得して、記憶部118は、その機会において検出された複数種類のボルト関連情報を一群の情報として、機会毎にその一群の情報を区別して記憶する。なお、本実施形態では、機会とは、ボルト65が取り外される機会であるが、点検など、ボルト65に対して所定の作業が行われる機会であれば、ボルト65が取り外される機会に限られない。
情報管理部125は、識別部122からの識別情報に一致する識別情報に紐付けられたボルト65の過去のボルト関連情報を、記憶部118から読み出す。情報管理部125は、このようにして読み出した過去のボルト関連情報を、出力部116に表示させることができる。また、情報管理部125は、今回の機会(例えば機会T2)に取得されて記憶部118に記憶されたボルト関連情報、すなわち今回のボルト関連情報と、過去の機会(例えば機会T1)に取得されて記憶部118に記憶されたボルト関連情報、すなわち過去のボルト情報とを、照合する。情報管理部125は、今回のボルト関連情報と過去のボルト関連情報とに矛盾が生じている場合、取得したボルト関連情報に誤りがあると判断して、出力部116に、その旨を報知させる。出力部116による報知の方法は任意であり、例えば、アラームなどの音声によって矛盾が生じている旨を報知してもよいし、表示によって矛盾が生じている旨を報知してもよい。ここで、今回のボルト関連情報と過去のボルト関連情報とに矛盾が生じているかについては、情報管理部125によって判断される。情報管理部125は、今回のボルト関連情報と過去のボルト関連情報とが、予め定めた所定の関係となっている場合に、矛盾が生じていると判断する。例えば、情報管理部125は、過去のきず情報において、ボルト65にきずがある(例えば、ボルト65の再利用には問題無い程度のきずがある)とされた場合において、今回のきず情報において、きずが無いとされた場合、予め定めた所定の関係になっていると判断して、きず情報に矛盾が生じていると判断する。また、例えば、情報管理部125は、ボルト65の伸び量が、過去の機会と今回の機会とで所定値以上異なる場合、予め定めた所定の関係になっていると判断して、伸び量の情報に矛盾が生じていると判断する。また、例えば、情報管理部125は、ボルト65が過去に取付けられた取付孔と、今回取付けられた取付孔とが異なる場合は、予め定めた所定の関係になっていると判断して、取付孔の情報に矛盾が生じていると判断してもよい。なお、所定の関係は、以上に限られず適宜設定することができる。今回のボルト関連情報と過去のボルト関連情報とに矛盾がある場合は、ボルト関連情報の検出が間違っているなど、今回のボルト関連情報が不適切なデータがあることが予測される。情報管理部125は、このような場合にその旨を報知させることで、作業者にその旨を伝えることができる。従って、情報管理部125は、間違った状態のまま(例えばきずがあるのにきずが無いと判断されたまま)、作業が続くことを抑制することができる。
以上説明した管理システム100によるボルト65の管理のフローを、フローチャートに基づき説明する。図15は、本実施形態に係る管理システムによるボルトの管理を説明するフローチャートである。図15に示すように、管理システム100は、ボルト65を原子炉容器41に締結する際に、最初に、識別端末102により、締結するボルト65のそれぞれを識別する(ステップS10)。すなわち、作業者が、識別端末102を操作して、ボルト65の識別情報を取得して、例えば識別端末102の出力部116に、ボルト65の識別情報を表示させる。ボルト65を識別したら、作業者は、ボルト65を原子炉容器41の取付孔に案内する(ステップS12)。すなわち、作業者は、識別したボルト65を、原子炉容器41の取付孔(ねじ穴42a、取付孔43a)に、締結しない状態で取り付ける。そして、管理システム100は、締結弛緩制御部により締結弛緩装置130を制御して、ボルト65を原子炉容器41に締結し、締結の際のボルト65の伸び量を検出する(ステップS14)。識別端末102は、締結の際のボルト65の伸び量の検出値を取得して、記憶部118に記憶する(ステップS16)。識別端末102は、識別したボルト65毎に、ボルト65の伸び量を記憶する。なお、締結弛緩制御部は、ボルト65の締結の際のボルト65への圧力の値を検出して、識別端末102が、その圧力の検出値も記憶してもよい。
ボルト65を締結した後、原子炉容器41の点検などによりボルト65の取外しが必要である場合(ステップS18;Yes)、管理システム100は、識別端末102により、取り外すボルト65のそれぞれを識別し(ステップS19)、締結弛緩制御部により締結弛緩装置130を制御して、ボルト65を原子炉容器41から取り外す(ステップS20)。なお、ボルト65の取外しが必要でない場合(ステップS18;No)、ステップS18に戻り、ボルト65の取外しが必要となるまで待機する。
ステップS20でボルト65を取り外したら、管理システム100は、清掃制御装置142によって清掃装置140を制御することで、ボルト65を清掃し、識別端末102がボルト65の清掃状態を記憶する(ステップS22)。ボルト65の清掃が終了したら、管理システム100は、探傷制御装置152によって探傷装置150を制御することで、ボルト65のきずを検出し、識別端末102がボルト65のきずの状態を記憶する(ステップS24)。ボルト65のきずの状態の検出が終了したら、管理システム100は、ボルトラック110にボルト65を保管する(ステップS26)。そして、例えば原子炉容器41の点検が終了して、ボルト65の原子炉容器41への取付けが必要となったら(ステップS28;Yes)、ステップS10に戻り、ボルト65を識別して、原子炉容器41に再度締結する。ボルト65の原子炉容器41への取付けが必要でない場合(ステップS28;No)、ボルト65の管理は終了する。
以上説明したように、本実施形態に係る原子力プラント1のボルト65は、端末(識別端末102)で読み取られることにより、ボルト65を他のボルト65から識別可能なタグ65f、すなわち、読取り部112に読取り可能なタグ65fが設けられる。従来、原子力プラントのボルトは、作業者の目視により識別が行われていた。しかし、作業者の目視によると、識別を間違えて、ボルトの管理が適切に行われなくなるおそれがある。特に、原子力プラント1のボルトは、原子炉容器41への取付け及び取外しが行われ、さらに、取り外された後に再取付けが行われるなど、何度も使用される場合がある。このような場合、ボルトを正確に識別して管理することが特に重要となる。それに対し、本実施形態に係るボルト65は、端末によって識別可能なタグ65fが設けられている。そのため、本実施形態に係るボルト65によると、ボルト65のタグ65fを端末で読み取ることで、識別を間違えるおそれを抑制し、ボルト65を適切に管理することが可能となる。
また、タグ65fは、ICタグ、一次元コード、又は二次元コードである。本実施形態に係るボルト65は、このようなタグ65fが設けられることで、端末で適切に識別することが可能となり、ボルト65をより適切に管理することが可能となる。
また、本実施形態に係る管理システム100は、ボルト65を管理するものであって、読取り部112と、識別部122と、情報取得部124と、記憶部118とを有する。読取り部112は、ボルト65に設けられるタグ65fを読み取り、識別部122は、読取り部112が読み取った結果、すなわち読取り部112が読み取った識別情報に基づき、ボルト65を識別する。また、情報取得部124は、識別部122が識別したボルト65に関する情報(ボルト関連情報)を取得する。記憶部118は、情報取得部124が取得したボルト関連情報を記憶する。この管理システム100は、タグ65fを読み取ってボルト65を識別し、そのボルト65のボルト関連情報を取得し、記憶部118に記憶させる。従って、この管理システム100によると、ボルト65を識別してから、締結など、ボルト65の作業を行うことで、ボルト65を用いた作業を適切に行うことができる。さらに、この管理システム100によると、識別したボルト65のボルト関連情報を取得することで、識別したボルト65とそのボルト65のボルト関連情報とを適切に関連付けて、ボルト関連情報の管理(データ管理)を適切に行うことができる。
また、管理システム100は、ボルト65を締め付けた際の伸び量を検出する伸び量検出部(伸び量検出装置132)を更に備える。情報取得部124は、伸び量検出部が検出したボルト65の伸び量を、ボルト65に関する情報(ボルト関連情報)として取得する。この管理システム100によると、ボルト65の締結時の伸び量を取得するため、識別したボルト65の締結時の管理を適切に行うことができる。
また、管理システム100は、ボルト65を取り外した際に実施されるボルト65の清掃の状態を検出する清掃状態検出部(清掃制御装置142)を更に備える。情報取得部124は、清掃状態検出部が検出したボルト65の清掃状態を、ボルト65に関する情報(ボルト関連情報)として取得する。この管理システム100によると、ボルト65の清掃状態の情報を取得するため、識別したボルト65の清掃の管理を適切に行うことができる。
また、管理システム100は、ボルト65を取り外した際に実施されるボルト65のきずの状態を検出する探傷部(探傷制御装置152)を更に備える。情報取得部124は、探傷部が検出したボルト65のきずの状態を、ボルト65に関する情報(ボルト関連情報)として取得する。この管理システム100によると、ボルト65のきずの状態の情報を取得するため、識別したボルト65のきずの状態の管理を適切に行うことができる。
また、記憶部118は、情報取得部124によって今回取得されたボルト関連情報と、情報取得部124によって過去に取得されたボルト関連情報とを、ボルト関連情報の履歴として記憶する。この管理システム100によると、ボルト関連情報の履歴を記憶することで、ボルト65の状態の管理を適切に行うことができる。
また、管理システム100は、記憶部118が記憶したボルト関連情報を管理する情報管理部125を更に備える。情報管理部125は、今回取得されたボルト関連情報と、過去に取得されたボルト関連情報とに矛盾がある場合に、出力部116に報知させる。この過去の情報と照合して矛盾があれば報知することで、間違いがあったまま作業されるおそれを抑制し、ボルト65を適切に管理することが可能となる。
また、本実施形態に係る識別端末102は、読取り部112と、識別部122と、情報取得部124とを有する。読取り部112は、ボルト65に設けられるタグ65fを読み取り、識別部122は、読取り部112が読み取った結果、すなわち読取り部112が読み取った識別情報に基づき、ボルト65を識別する。また、情報取得部124は、識別部122が識別したボルト65に関する情報(ボルト関連情報)を取得する。この識別端末102は、タグ65fを読み取ってボルト65を識別し、そのボルト65のボルト関連情報を取得する。従って、この識別端末102によると、ボルト関連情報の管理(データ管理)を適切に行うことができる。
また、本実施形態に係るボルト65は、原子炉容器41に取付けられるスタッドボルトである。このような原子炉容器41に取付けられるスタッドボルトにタグ65fを設けることで、スタッドボルトを適切に管理することが可能となる。ただし、ボルト65は、原子力プラント1に用いられるボルトであれば、任意のボルトであってよいが、取り外された後に再度取付けられる、すなわち再利用されるボルトであることが好ましい。
図16は、本実施形態に係るボルトの他の例を示す模式図である。図16は、他の例のボルト65Aの上面図である。図16に示すように、ボルト65Aは、タグ65fに加え、メモリ(記憶部)65hとセンサ65iとを備えている。この場合、タグ65fは、ICタグであることが好ましい。メモリ65hは、ボルト65に関する情報、すなわちボルト関連情報が記憶されるメモリである。メモリ65hとしては、例えば、フラッシュメモリであるが、ボルト関連情報を上書きや更新可能に記憶可能なものであれば、任意のメモリであってよい。また、センサ65iは、ボルト65Aやボルト65Aの周辺環境の状態を検出可能なセンサである。センサ65iとしては、例えば、ボルト65Aの温度を検出する温度センサが挙げられる。メモリ65hとセンサ65iとは、タグ65fに接続されている。従って、メモリ65hが記憶しているボルト関連情報や、センサ65iの検出結果とは、タグ65fを介して、ボルト65の識別情報に紐付けられて、識別端末102に読み取られることが可能となる。また、メモリ65hとセンサ65iとは、ボルト65の内部に設けられていることが好ましいが、ボルト65の表面など、任意の位置に設けてもよい。また、ボルト65Aは、メモリ65hとセンサ65iとの少なくとも一方が設けられていればよい。
このように、ボルト65Aは、ボルト65に関する情報(ボルト関連情報)が記憶されるメモリ65hを備えており、メモリ65hに、そのボルト65についてのボルト関連情報が記憶されている。従って、識別端末102は、タグ65fを読み取ることで、そのボルト65の識別情報と、そのボルト65のボルト関連情報とを、紐付けて取得することができる。すなわち、このボルト65Aによると、識別したボルト65Aとそのボルト65Aのボルト関連情報とを適切に関連付けて、ボルト関連情報の管理(データ管理)を適切に行うことができる。メモリ65hに記憶されるボルト関連情報は、第1実施形態と同様の情報であり、例えば、ボルト65Aを締め付けた際の伸び量と、ボルト65Aを取り外した際に実施されるボルト65Aの清掃の状態と、ボルト65Aを取り外した際に実施されるボルト65Aのきずの状態の検出の結果と、の少なくとも1つを含むことが好ましい。このような情報をボルト65Aに記憶させておくことで、これらの情報の管理を適切に行うことができる。なお、この場合、識別端末102は、記憶部118にボルト関連情報を記憶していなくてもよい。すなわち、ボルト関連情報は、ボルトに記憶されていてもよく、ボルトを管理する管理システム100に記憶されていてもよい。
また、ボルト65Aは、センサ65iを備えており、センサ65iが、ボルト65Aや外部環境の状態を検出する。このセンサ65iの検出結果は、メモリ65hに記憶される。従って、識別端末102は、タグ65fを読み取ることで、そのボルト65の識別情報と、センサ65iの検出結果とを、紐付けて取得することができる。なお、ボルト65Aがメモリ65hを備えない場合、識別端末102は、タグ65fを読み取ることで、そのボルト65の識別情報と、センサ65iの検出結果とを、紐付けて取得して、取得したセンサ65iの検出結果を、記憶部118に記憶する。
センサ65iは、上述のように、例えば温度センサである。この場合、センサ65iは、ボルト65の締結時に、温度検出を行う。これにより、ボルト65を締結した際の温度を検出、記録することができ、温度とボルト65の伸び量との関係についても、管理することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。