JP6029466B2 - 管台補修方法及び原子炉容器 - Google Patents

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Description

本発明は、原子炉容器に設けられる管台を補修するための管台補修方法、並びに、管台が設けられる原子炉容器に関するものである。
例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)を備える原子力発電プラントは、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電するものである。
このような原子力発電プラントにて、加圧水型原子炉は、十分な安全性や信頼性を確保するために各種の構造物などを定期的に検査する必要がある。そして、各検査を施工して不具合を発見した場合は、その不具合に関係する必要箇所を補修している。例えば、加圧水型原子炉にて、原子炉容器本体は、下鏡を貫通する多数の計装管台が設けられ、この各計装管台は、炉内側の上端部に炉内計装案内管が固定される一方、炉外側の下端部にコンジットチューブが連結されている。そして、中性子束を計測可能な中性子束検出器は、コンジットチューブにより計装管台から炉内計装案内管を通して炉心(燃料集合体)まで挿入可能となっている。
この計装管台は、ニッケル基合金製の炉内計装筒が低合金鋼製の原子炉容器本体の取付孔に嵌入し、ニッケル基合金製の材料により溶接されて形成されている。そのため、長期の使用により、炉内計装筒に応力腐食割れが発生する可能性があり、この応力腐食割れが発生したときには、計装管台を補修する必要が生じる。従来の管台補修方法としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された管台部補修方法は、容器の内表面をJ開先を含む範囲に略円筒形状に掘設して肉盛開先部を形成し、肉盛開先部の外側面の延長部を形成する内側端面を有するプラグ本体部及び内側端面から突出して肉盛開先部と略同一軸線中心を有する突起部を有するプラグを、内側端面と肉盛開先部の外側面とが略一致するように管台孔に挿着し、肉盛開先部に肉盛溶接によって肉盛溶接部を形成し、肉盛溶接部にJ開先を形成し、管台を挿入して溶接するものである。
特開2011−075453号公報
上述した従来の管台補修方法では、容器の内表面に肉盛開先部を形成し、プラグを管台孔に挿着して肉盛溶接した後にJ開先を形成し、ここに管台を挿入して溶接している。そのため、新たに装着する管台を精度良く装着することができるものの、補修工程が複雑となり、補修コストが増加してしまう。
本発明は、上述した課題を解決するものであり、補修作業を容易に行うことで作業性の向上を可能とすると共に補修コストの低減を可能とする管台補修方法及び原子炉容器を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するための本発明の管台補修方法は、原子炉容器の半球部に形成された取付孔に炉内計装筒が挿入され、前記半球部の内面側が開先溶接されて前記炉内計装筒が固定された計装管台の補修方法であって、開先溶接部における前記炉内計装筒との接続部を除去する工程と、前記半球部から前記炉内計装筒を除去する工程と、前記開先溶接部を除去してプラグ装着部を加工する工程と、前記プラグ装着部にプラグを装着して前記半球部側に押付荷重を付与する工程と、前記プラグ装着部に装着されたプラグを溶接して固定する工程と、を有することを特徴とするものである。
従って、開先溶接部における炉内計装筒との接続部を除去し、半球部から炉内計装筒を除去し、開先溶接部を除去してプラグ装着部を加工し、このプラグ装着部にプラグを装着して半球部側に押付荷重を付与した状態で、このプラグを溶接して固定する。即ち、計装管台から炉内計装筒を除去すると共に、開先溶接部を全て除去し、プラグを固定することで、計装管台を使用不能とする。原子炉容器に計装管台が多数設けられていることから、少数の計装管台を使用不能としても、他の計装管台により対応することが可能となり、計装管台を修復するのに比べて補修作業を容易に行うことで作業性を向上することができると共に、補修コストを低減することができる。また、プラグをプラグ装着部に装着して半球部側に押付荷重を付与した状態で溶接することから、溶接により加熱したプラグが冷却しても、プラグとプラグ装着部との間に隙間が発生することが抑制され、プラグをプラグ装着部に密着して高精度に固定することができる。
本発明の管台補修方法では、前記半球部は、内面に耐応力腐食性を有する溶接肉盛層が設けられ、前記プラグは、前記プラグ装着部に嵌合した状態で、外周部が前記溶接肉盛層に溶接により固定されることを特徴としている。
従って、プラグをプラグ装着部に嵌合した状態で外周部を溶接肉盛層に溶接するため、プラグを固定するための溶接が原子炉容器に熱の影響をほとんど与えることはなく、熱処理を不要として補修作業を容易に行うことができ、作業性を向上することができる。
本発明の管台補修方法では、前記プラグは、上方への突出部が設けられ、前記プラグ装着部に嵌合した状態で、前記突出部の外面が前記半球部に溶接により固定されることを特徴としている。
従って、プラグをプラグ装着部に嵌合した状態で、突出部の外面を半球部に溶接により固定することで、溶接材料を減少して溶接コストを低減することができると共に、溶接作業を容易に行うことができる。
本発明の管台補修方法では、前記突出部は、前記プラグの外周上部に沿った縦壁部を有し、該縦壁部の内側に凹部が設けられることを特徴としている。
従って、プラグの外周上部に縦壁部を設けると共に、その内側に凹部を設けることで、プラグの軽量化が可能となり、低コスト化を可能とすることができると共に、溶接の熱が凹部を介して放熱されることとなり、溶接品質を向上することができる。
本発明の管台補修方法では、前記プラグ装着部は、前記取付孔より大きい開口であり、前記プラグを支持する支持面を有し、前記プラグは、溶接時に下面が前記支持面に押し付けられることで押付荷重が付与されることを特徴としている。
従って、プラグがプラグ装着部に装着され、半球部に固定されたとき、プラグの重量は、プラグ装着部の支持面に支持されることとなり、プラグを半球部に固定するための溶接部を簡素化することができる。また、プラグをプラグ装着部に装着して押付荷重を付与して溶接することで、溶接により加熱したプラグが冷却しても、プラグの下面と支持面との間に隙間が発生することが抑制され、プラグをプラグ装着部に密着して固定することができる。
本発明の管台補修方法では、前記プラグは、前記半球部の外側から前記取付孔を通して引っ張り荷重が付与されることで押付荷重が付与されることを特徴としている。
従って、プラグに対して半球部の外側から引っ張り荷重を付与することで、作業者が半球部内に入る必要はなく、容易にプラグに対して押付荷重を付与することができ、作業性を向上することができる。
また、本発明の原子炉容器は、下部が半球形状をなす原子炉容器本体と、半球形状をなして前記原子炉容器本体の上部に装着される原子炉容器蓋と、前記原子炉容器本体の側部に設けられる入口ノズル及び出口ノズルと、前記原子炉容器本体の内部に配置されて多数の燃料集合体からなる炉心と、前記燃料集合体に対して挿入可能な多数の制御棒と、前記制御棒を上下動可能な制御棒駆動装置と、前記原子炉容器本体の下部に設けられて中性子束検出器を挿入可能な複数の計装管台と、前記複数の計装管台のうちのいずれかの管台取付孔を施栓するプラグと、前記プラグに設けられる押付荷重付与治具と、を有することを特徴とするものである。
従って、原子炉容器本体の下部に複数の計装管台が設けられると共に、不要な計装管台がプラグにより施栓されることとなり、補修後の原子炉容器は、高い耐応力腐食性が確保されることとなり、補修コストを低減して耐応力腐食性を向上することができる。また、プラグに押付荷重付与治具を設けることで、プラグに対して容易に押付荷重を付与することができ、作業性を向上することができる。
本発明の原子炉容器では、前記押付荷重付与治具は、前記プラグの下面に連結されるねじ軸を有することを特徴としている。
従って、事前にプラグの下面にねじ軸を連結することで、プラグをプラグ装着部に押し付ける押付荷重を容易に付与することができる。
本発明の原子炉容器では、前記プラグの下面と前記管台取付孔に形成された支持面との間に変形部材が設けられることを特徴としている。
従って、プラグの下面と管台取付孔の支持面との間に変形部材を設けることで、プラグをプラグ装着部に押し付ける押付荷重を付与したとき、変形部材を変形させることで、プラグの下面と管台取付孔の支持面を容易に密着させることができる。
本発明の管台補修方法によれば、開先溶接部における炉内計装筒との接続部を除去し、半球部から炉内計装筒を除去し、開先溶接部を除去してプラグ装着部を加工し、このプラグ装着部にプラグを装着して押付荷重を付与した状態でプラグを溶接して固定するので、計装管台を修復するのに比べて補修作業を容易に行うことで作業性を向上することができると共に、補修コストを低減することができ、このとき、プラグとプラグ装着部との間に隙間が発生することが抑制され、プラグをプラグ装着部に密着して高精度に固定することができる。また、原子炉容器によれば、原子炉容器本体の下部に複数の計装管台が設けられると共に、不要な計装管台がプラグにより施栓されるので、補修後の原子炉容器は、高い耐応力腐食性が確保されることとなり、補修コストを低減して耐応力腐食性を向上することができ、プラグに押付荷重付与治具を設けることで、プラグに対して容易に押付荷重を付与することができ、作業性を向上することができる。
図1は、本発明の実施例1に係る管台補修方法により補修された原子炉容器の計装管台を表す断面図である。 図2は、原子力発電プラントの概略構成図である。 図3は、加圧水型原子炉を表す縦断面図である。 図4は、実施例1の管台補修方法を表すフローチャートである。 図5は、シンブルチューブの引抜作業を表す概略図である。 図6は、原子炉容器からの炉内構造物の撤去作業を表す概略図である。 図7は、炉内計装筒の止水作業を表す概略図である。 図8は、コンジットチューブの切断作業を表す概略図である。 図9は、止水キャップの取付作業を表す概略図である。 図10は、炉内計装筒の切断作業を表す概略図である。 図11−1は、炉内計装筒のトレパニング作業を表す概略図である。 図11−2は、トレパニングされた炉内計装筒を表す断面図である。 図12は、炉内計装筒の引抜作業を表す断面図である。 図13は、計装管台における開先溶接部の切削作業を表す概略図である。 図14は、計装管台におけるプラグ装着部の切削作業を表す概略図である。 図15は、計装管台へのプラグ装着作業を表す概略図である。 図16は、計装管台へのハウジング装着作業を表す概略図である。 図17は、プラグに対する押付力付与作業を表す概略図である。 図18−1は、プラグに押付力が付与された計装管台を表す概略図である。 図18−2は、プラグに対する押付力を表す説明図である。 図19は、計装管台へのプラグ溶接作業を表す概略図である。 図20は、プラグ溶接された計装管台を表す概略図である。 図21は、本発明の実施例2に係る管台補修方法に用いるプラグの装着作業を表す概略図である。 図22は、本発明の実施例3に係る管台補修方法に用いるプラグの装着作業を表す概略図である。 図23は、本発明の実施例4に係る管台補修方法に用いるプラグの装着作業を表す概略図である。 図24は、実施例4のプラグの下面図である。
以下に添付図面を参照して、本発明に係る管台補修方法及び原子炉容器の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
図2は、原子力発電プラントの概略構成図、図3は、加圧水型原子炉を表す縦断面図である。
本実施例の原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。
本実施例の加圧水型原子炉を有する原子力発電プラントにおいて、図2に示すように、原子炉格納容器11は、内部に加圧水型原子炉12及び蒸気発生器13が格納されており、この加圧水型原子炉12と蒸気発生器13とは高温側送給配管14と低温側送給配管15を介して連結されており、高温側送給配管14に加圧器16が設けられ、低温側送給配管15に一次冷却水ポンプ17が設けられている。この場合、減速材及び一次冷却水(冷却材)として軽水を用い、炉心部における一次冷却水の沸騰を抑制するために、一次冷却系統は加圧器16により150〜160気圧程度の高圧状態を維持するように制御している。
従って、加圧水型原子炉12にて、燃料(原子燃料)として低濃縮ウランまたはMOXにより一次冷却水として軽水が加熱され、高温の一次冷却水が加圧器16により所定の高圧に維持された状態で、高温側送給配管14を通して蒸気発生器13に送られる。この蒸気発生器13では、高温高圧の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換が行われ、冷やされた一次冷却水は低温側送給配管15を通して加圧水型原子炉12に戻される。
蒸気発生器13は、加熱された二次冷却水、つまり、蒸気を送給する配管31を介して蒸気タービン32と連結されており、この配管31に主蒸気隔離弁33が設けられている。蒸気タービン32は、高圧タービン34と低圧タービン35を有すると共に、発電機(発電装置)36が接続されている。また、高圧タービン34と低圧タービン35は、その間に湿分分離加熱器37が設けられており、配管31から分岐した冷却水分岐配管38が湿分分離加熱器37に連結される一方、高圧タービン34と湿分分離加熱器37は低温再熱管39により連結され、湿分分離加熱器37と低圧タービン35は高温再熱管40により連結されている。
更に、蒸気タービン32の低圧タービン35は、復水器41を有しており、この復水器41は、配管31からバイパス弁42を有するタービンバイパス配管43が接続されると共に、冷却水(例えば、海水)を給排する取水管44及び排水管45が連結されている。この取水管44は、循環水ポンプ46を有し、排水管45と共に他端部が海中に配置されている。
そして、この復水器41は、配管47が接続されており、復水ポンプ48、グランドコンデンサ49、復水脱塩装置50、復水ブースタポンプ51、低圧給水加熱器52が接続されている。また、配管47は、脱気器53が連結されると共に、主給水ポンプ54、高圧給水加熱器55、主給水制御弁56が設けられている。
従って、蒸気発生器13にて、高温高圧の一次冷却水と熱交換を行って生成された蒸気は、配管31を通して蒸気タービン32(高圧タービン34から低圧タービン35)に送られ、この蒸気により蒸気タービン32を駆動して発電機36により発電を行う。このとき、蒸気発生器13からの蒸気は、高圧タービン34を駆動した後、湿分分離加熱器37で蒸気に含まれる湿分が除去されると共に加熱されてから低圧タービン35を駆動する。そして、蒸気タービン32を駆動した蒸気は、復水器41で海水を用いて冷却されて復水となり、グランドコンデンサ49、復水脱塩装置50、低圧給水加熱器52、脱気器53、高圧給水加熱器55などを通して蒸気発生器13に戻される。
このように構成された原子力発電プラントの加圧水型原子炉12において、図3に示すように、原子炉容器61は、その内部に炉内構造物が挿入できるように、原子炉容器本体62とその上部に装着される原子炉容器蓋(上鏡)63により構成されており、この原子炉容器本体62に対して原子炉容器蓋63が複数のスタッドボルト64及びナット65により開閉可能に固定されている。
この原子炉容器本体62は、原子炉容器蓋63を取り外すことで上部が開口可能であり、下部が半球形状をなす下鏡66により閉塞された円筒形状をなしている。そして、原子炉容器本体62は、上部に一次冷却水としての軽水(冷却材)を供給する入口ノズル(入口管台)67と、軽水を排出する出口ノズル(出口管台)68が形成されている。また、原子炉容器本体62は、この入口ノズル67及び出口ノズル68とは別に、図示しない注水ノズル(注水管台)が形成されている。
原子炉容器本体62は、内部にて、入口ノズル67及び出口ノズル68より上方に上部炉心支持板69が固定される一方、下方の下鏡66の近傍に位置して下部炉心支持板70が固定されている。この上部炉心支持板69及び下部炉心支持板70は、円板形状をなして図示しない多数の連通孔が形成されている。そして、上部炉心支持板69は、複数の炉心支持ロッド71を介して下方に図示しない多数の連通孔が形成された上部炉心板72が連結されている。
原子炉容器本体62は、内部に円筒形状をなす炉心槽73が内壁面と所定の隙間をもって配置されており、この炉心槽73は、上部が上部炉心板72に連結され、下部に円板形状をなして図示しない多数の連通孔が形成された下部炉心板74が連結されている。そして、この下部炉心板74は、下部炉心支持板70に支持されている。即ち、炉心槽73は、原子炉容器本体62の下部炉心支持板70に吊り下げ支持されることとなる。
炉心75は、上部炉心板72と炉心槽73と下部炉心板74により形成されており、この炉心75は、内部に多数の燃料集合体76が配置されている。この燃料集合体76は、図示しないが、多数の燃料棒が支持格子により格子状に束ねられて構成され、上端部に上部ノズルが固定される一方、下端部に下部ノズルが固定されている。また、炉心75は、内部に多数の制御棒77が配置されている。この多数の制御棒77は、上端部がまとめられて制御棒クラスタ78となり、燃料集合体76内に挿入可能となっている。上部炉心支持板69は、この上部炉心支持板69を貫通して多数の制御棒クラスタ案内管79が固定されており、各制御棒クラスタ案内管79は、下端部が燃料集合体76内の制御棒クラスタ78まで延出されている。
原子炉容器61を構成する原子炉容器蓋63は、上部が半球形状をなして磁気式ジャッキの制御棒駆動装置80が設けられており、原子炉容器蓋63と一体をなすハウジング81内に収容されている。多数の制御棒クラスタ案内管79は、上端部が制御棒駆動装置80まで延出され、この制御棒駆動装置80から延出されて制御棒クラスタ駆動軸82が、制御棒クラスタ案内管79内を通って燃料集合体76まで延出され、制御棒クラスタ78を把持可能となっている。
この制御棒駆動装置80は、上下方向に延設されて制御棒クラスタ78に連結されると共に、その表面に複数の周溝を長手方向に等ピッチで配設してなる制御棒クラスタ駆動軸82を磁気式ジャッキで上下動させることで、原子炉の出力を制御している。
また、原子炉容器本体62は、下鏡66を貫通する多数の計装管台83が設けられ、この各計装管台83は、炉内側の上端部に炉内計装案内管84が連結される一方、炉外側の下端部にコンジットチューブ85が連結されている。各炉内計装案内管84は、上端部が下部炉心支持板70に連結されており、振動を抑制するための上下の連接板86,87が取付けられている。シンブルチューブ88は、中性子束を計測可能な中性子束検出器(図示略)が装着されており、コンジットチューブ85から計装管台83及び炉内計装案内管84を通り、下部炉心板74を貫通して燃料集合体76まで挿入可能となっている。
従って、制御棒駆動装置80により制御棒クラスタ駆動軸82を移動して燃料集合体76から制御棒77を所定量引き抜くことで、炉心75内での核分裂を制御し、発生した熱エネルギにより原子炉容器61内に充填された軽水が加熱され、高温の軽水が出口ノズル68から排出され、上述したように、蒸気発生器13に送られる。即ち、燃料集合体76を構成する原子燃料が核分裂することで中性子を放出し、減速材及び一次冷却水としての軽水が、放出された高速中性子の運動エネルギを低下させて熱中性子とし、新たな核分裂を起こしやすくすると共に、発生した熱を奪って冷却する。一方、制御棒77を燃料集合体76に挿入することで、炉心75内で生成される中性子数を調整し、また、制御棒77を燃料集合体76に全て挿入することで、原子炉を緊急に停止することができる。
また、原子炉容器61は、炉心75に対して、その上方に出口ノズル68に連通する上部プレナム89が形成されると共に、下方に下部プレナム90が形成されている。そして、原子炉容器61と炉心槽73との間に入口ノズル67及び下部プレナム90に連通するダウンカマー部91が形成されている。従って、軽水は、入口ノズル67から原子炉容器本体62内に流入し、ダウンカマー部91を下向きに流れ落ちて下部プレナム90に至り、この下部プレナム90の球面状の内面により上向きに案内されて上昇し、下部炉心支持板70及び下部炉心板74を通過した後、炉心75に流入する。この炉心75に流入した軽水は、炉心75を構成する燃料集合体76から発生する熱エネルギを吸収することで、この燃料集合体76を冷却する一方、高温となって上部炉心板72を通過して上部プレナム89まで上昇し、出口ノズル68を通って排出される。
このように構成された原子炉容器61にて、計装管台83は、炉内計装筒が原子炉容器本体62の下鏡66に形成された取付孔に嵌入し、炉内計装筒の上端部が下鏡66の内面に開先溶接により固定されて形成されている。この場合、原子炉容器本体62は、母材となる低合金鋼の内面にステンレス鋼が肉盛溶接されて構成され、ニッケル基合金製の炉内計装筒がこの原子炉容器本体62の取付孔に嵌入した状態で、ニッケル基合金製の材料により原子炉容器本体62に溶接されている。そのため、長期の使用により、炉内計装筒に応力腐食割れが発生する可能性があり、この応力腐食割れが発生したときには、計装管台83を補修する必要が生じる。しかし、原子炉容器本体62は、低合金鋼製であることから、溶接後に応力除去のための熱処理が必要となるが、内部が高放射線領域であることから、熱処理が困難である。
そこで、実施例1の管台補修方法は、開先溶接部における炉内計装筒との接続部を除去する工程と、下鏡66から炉内計装筒を除去する工程と、開先溶接部を除去してプラグ装着部を加工する工程と、プラグ装着部にプラグを装着して下鏡66側に押付荷重を付与する工程と、プラグ装着部に装着されたプラグを溶接して固定する工程と、を有するものである。このとき、開先溶接部及び炉内計装筒を除去してプラグを固定することで、計装管台83を使用不能とする。原子炉容器61には計装管台83が多数設けられていることから、少数の計装管台83を使用不能としても、他の計装管台83により対応することが可能となり、計装管台83を修復するのに比べて補修作業を容易に行うことで作業性を向上することができると共に、補修コストを低減することができる。また、プラグをプラグ装着部に装着して下鏡66側に押付荷重を付与した状態で溶接することから、溶接により加熱したプラグが冷却しても、プラグとプラグ装着部との間に隙間が発生することが抑制され、プラグをプラグ装着部に密着して高精度に固定することができる。
図1は、本発明の実施例1に係る管台補修方法により補修された原子炉容器の計装管台を表す断面図、図4は、実施例1の管台補修方法を表すフローチャート、図5は、シンブルチューブの引抜作業を表す概略図、図6は、原子炉容器からの炉内構造物の撤去作業を表す概略図、図7は、炉内計装筒の止水作業を表す概略図、図8は、コンジットチューブの切断作業を表す概略図、図9は、止水キャップの取付作業を表す概略図、図10は、炉内計装筒の切断作業を表す概略図、図11−1は、炉内計装筒のトレパニング作業を表す概略図、図11−2は、トレパニングされた炉内計装筒を表す断面図、図12は、炉内計装筒の引抜作業を表す断面図、図13は、計装管台における開先溶接部の切削作業を表す概略図、図14は、計装管台におけるプラグ装着部の切削作業を表す概略図、図15は、計装管台へのプラグ装着作業を表す概略図、図16は、計装管台へのハウジング装着作業を表す概略図、図17は、プラグに対する押付力付与作業を表す概略図、図18−1は、プラグに押付力が付与された計装管台を表す概略図、図18−2は、プラグに対する押付力を表す説明図、図19は、計装管台へのプラグ溶接作業を表す概略図、図20は、プラグ溶接された計装管台を表す概略図である。
以下、図1の断面図、図4のフローチャート、図5から図20の概略図を用いて実施例1の管台補修方法について詳細に説明する。
図4及び図5に示すように、ステップS11にて、加圧水型原子炉12にて、原子炉容器61の下方を遮蔽部材101により遮蔽すると共に、コンジットチューブ85を遮蔽部材102により遮蔽し、原子炉容器61内に挿入されているシンブルチューブ(中性子束検出器)88を外部に抜き取る。
そして、図4及び図6に示すように、ステップS12にて、加圧水型原子炉12にて、原子炉容器61を構成する原子炉容器本体62から原子炉容器蓋63を取外し、内部に収容されている炉内構造物(上部炉内構造物12A,下部炉内構造物12B)を吊具153により吊上げて撤去する。この場合、原子炉建屋111は、冷却水を貯留可能なキャビティ112が設けられており、加圧水型原子炉12が吊り下げ支持される原子炉プール113に隣接して機器仮置プール114が形成されている。そのため、上部炉内構造物12A及び下部炉内構造物12Bは、この機器仮置プール114で冷却水に浸漬した状態で仮置きされる。
図7に示すように、原子炉容器本体62は、低合金鋼により製造される母材201の内面にステンレス鋼を材料とする溶接肉盛層202が形成されて構成されている。そして、計装管台83は、原子炉容器本体62の下鏡66に鉛直方向に沿って形成された取付孔203にニッケル基合金(例えば、インコネル600/商標)製の炉内計装筒204が挿入位置決めされ、下鏡66の内面側に形成された開先部205に対して、ニッケル基合金(例えば、インコネル600)を材料とする開先溶接部206(下溶接部206a、本溶接部206b)が設けられて構成されている。
図4及び図7に示すように、ステップS13にて、キャビティ112の上方に止水プラグ取扱装置(図示略)を設置し、止水プラグ取付装置(図示略)が止水プラグ115を把持し、キャビティ112の冷却水内を下降する。そして、原子炉容器本体62の計装管台83を構成する炉内計装筒204の上端部に止水プラグ115を嵌合し、施栓する。また、図4及び図8に示すように、ステップS14にて、炉内計装筒204の下端部に連結されているコンジットチューブ85を切断する。このとき、炉内計装筒204内の冷却水を除去し、補修を必要としない周辺の計装管台83における炉内計装筒204には、異物混入防止用の栓を装着する。
図4及び図9に示すように、ステップS15にて、計装管台83の下部に止水キャップ116を固定する。この場合、止水キャップ116は、上端が開放されて下端部が閉塞されたケース116aと、このケース116aの下部に連結された配管116b、配管116bに設けられた開閉弁116cとから構成されている。一方、下鏡66は、外面にステンレス鋼を材料とする溶接肉盛層207が予め設けられており、超音波探傷検査装置により、溶接肉盛層207の検査を行う。そのため、止水キャップ116は、炉内計装筒204の下部を下から被覆するように、ケース116aの上端部が下鏡66の溶接肉盛層207に溶接して固定される。この場合、図示しないカメラを用いた目視試験によりケース116aの溶接部を検査し、リークが発生していないことを確認する。なお、止水キャップ116は、炉内計装筒204を支持するように、内部にジャッキ117が設けられている。
計装管台83における既設の炉内計装筒204の上端部と下端部が止水されると、図4及び図10に示すように、ステップS16にて、図示しない切断装置を用いて計装管台83における炉内計装筒204の上部を切断(または、切削)し、切断した炉内計装筒204の上部を回収する。図4及び図11−1に示すように、ステップS17にて、下鏡66に固定されている炉内計装筒204の開先溶接部206を図示しない切削装置を用いてトレパニング加工(トレパニング加工部208)し、図11−2に示すように、炉内計装筒204と開先溶接部206との間に開口隙間209を形成する。即ち、開先溶接部206における炉内計装筒204との接続部としてのトレパニング加工部208を除去する。このとき、トレパニング加工は、開先溶接部206における上端、つまり、下鏡66の内面側から、開先溶接部206の下方、つまり、下鏡66の母材201まで行われる。なお、切削装置を用いて炉内計装筒204の開先溶接部206をトレパニング加工するとき、図示しない吸引装置により発生した切粉の回収を行う。
図4及び図12に示すように、ステップS18にて、図示しない抜取装置を用いて下鏡66の取付孔203から炉内計装筒204を上方に抜き取って除去し、回収する。このとき、止水キャップ116内のジャッキ117を作動(伸張)させ、炉内計装筒204を上方に押し上げてもよい。そして、図4及び図13に示すように、ステップS19にて、図示しない切削装置(または、放電加工装置など)を用いて下鏡66の内面に設けられていた開先溶接部206を除去する。ステップS20にて、開先溶接部206を切削除去した後、渦電流探傷試験装置を用いて、この切削面210における開先溶接部206の残存部や欠陥(割れ)を検査する。
ここで、開先溶接部206が全て除去され、且つ、欠陥(割れ)がなく、未検出が確認されたら、図4及び図14に示すように、ステップS21にて、図示しない切削装置(または、放電加工装置など)を用いて、下鏡66の内面にプラグ装着開口(プラグ装着部)211を加工する。このとき、プラグ装着開口211は、下鏡66の内面に形成された円柱形状をなす開口であり、プラグ装着開口211の軸心と取付孔203の軸心を合わせることが望ましい。それにより、プラグ装着開口211は、内周面211aが鉛直方向に沿った面となり、リング形状をなす底面(支持面)211bが水平方向に沿った面となる。
なお、下鏡66の内面(溶接肉盛層202)やプラグ装着開口211の内面の加工が不十分なときは、図示しない研磨装置などを用いて仕上げ加工を行うことで、内周面211aと底面211bを平坦面とする。また、図示しないカメラを用いた目視試験によりプラグ装着開口211の深さや幅(内径)を計測し、予め設定された深さや幅であるか確認する。
そして、図4及び図15に示すように、ステップS22にて、プラグ装着開口211にプラグ212を嵌合して装着する。このプラグ212は、プラグ装着開口211に嵌合可能な外径を有する円柱形状のプラグ本体212aと、このプラグ本体212aの上面部に上方へ突出する突出部として外周上部に沿った縦壁部212bと、この縦壁部212bの内側に設けられた凹部212cと、プラグ本体212aの下面部に下方へ突出する突起部212dと、プラグ本体212aの下面部における突起部212dの周囲に設けられた平坦な下面212eとを有している。また、このプラグ212は、下部に押付荷重付与治具としてのねじ軸213が一体に設けられている。このねじ軸213は、プラグ212における突起部212dの下面から取付孔203側に延出され、先端部(下部)にねじ部213aが形成されている。この場合、ねじ軸213は、プラグ212がプラグ装着開口211に装着されたとき、ねじ部213aが取付孔203から下鏡66の外側に突出する長さに設定されている。
このプラグ212は、プラグ装着開口211に嵌合したとき、プラグ本体212aがプラグ装着開口211を埋め、突起部212dが取付孔203に嵌入し、ねじ軸213が取付孔203内に挿入される。そのため、プラグ212は、リング形状をなす縦壁部212bが下鏡66の内面から上方に突出し、凹部212cが下鏡66の内面と同一平面をなす。なお、プラグ212がプラグ装着開口211に嵌合したとき、図示しないカメラを用いた目視試験によりプラグ212とプラグ装着開口211との合わせ面を検査する。
ここで、図4及び図16に示すように、計装管台83の上部、つまり、取付孔203の上部が貫通したプラグ装着開口211の周囲に気中空間を形成し、この気中空間でプラグ212の固定作業を行う。即ち、下方が開口したハウジング121を下鏡66におけるプラグ装着開口211の上方に配置し、シール部材122を介して固定することにより内部空間をシールし、図示しない配管を通して内部にある冷却水を排出することで、内部を気中空間Aとする。その後、ハウジング121内に図示しない搬入配管を通して溶接装置123を搬入し、その後、止水キャップ116を撤去する。この場合、ハウジング121をシール部材122により下鏡66におけるプラグ装着開口211の上方に固定した後、開閉弁116cを開放し、止水キャップ116の配管116bからハウジング121内の冷却水を排出することで、内部を気中空間Aとしてもよい。
そして、図4及び図17に示すように、ステップS23にて、下鏡66の外側からプラグ装着開口211に装着されたプラグ212に対して、押付荷重を付与する作業を行う。まず、下鏡66の外側にて、取付孔203から突出しているねじ軸213の先端部に支持板(押付荷重付与治具)214を貫通し、下鏡66の溶接肉盛層207に仮固定する。次に、ナット回転工具126のナット保持部127にナット(押付荷重付与治具)215を保持させ、ナット保持部127を回転しながらナット215をねじ軸213のねじ部213aに押し付けることで、図18−1に示すように、このナット215がねじ軸213のねじ部213aに螺合し、プラグ212が固定される。
ここで、ナット215をねじ軸213のねじ部213aに更に螺合させていくと、支持板214を基点とし、ねじ軸213を介してプラグ212が下方、つまり、下鏡66の外側へ牽引される。すると、プラグ212は、下面212eがプラグ装着開口211の底面211bに押し付けられ、プラグ212は、下鏡66側へ押付荷重が付与される。この場合、図18−2に示すように、プラグ装着開口211に固定されたプラグ212は、下鏡66側へ押付荷重が付与されることで、下面212eが底面211bに押し付けられ、図18−2に二点鎖線で示すように、プラグ212の下面212e側が圧縮されて変形すると共に、プラグ装着開口211の底面211b側が圧縮されて若干変形する。
そして、図4及び図19に示すように、ステップS24にて、ハウジング121内に搬入された溶接装置123を用い、移動装置124により溶接ヘッド125を移動することで、プラグ212における縦壁部212bの外周面と下鏡66における内面、つまり、溶接肉盛層202の表面とを隅肉溶接する。すると、図20に示すように、プラグ装着開口211にプラグ212が嵌合した状態で、縦壁部212bの外周面と下鏡66における溶接肉盛層202の表面との隅部に隅肉溶接部216が形成されることで、プラグ212が下鏡66に固定される。
プラグ212の溶接時に、このプラグ212は溶接熱により熱伸びした後、冷却されることで収縮する。そのため、プラグ212は、冷却後に隅肉溶接部216を基点として上方に収縮し、下面212eとプラグ装着開口211の底面211bとの間に隙間が発生するおそれがある。ところが、本実施例では、上述したように、プラグ212は、下鏡66側へ押付荷重が付与されることで、圧縮変形した状態で溶接されるため、溶接熱により熱伸びした後に冷却されて隅肉溶接部216を基点として上方に収縮しても、下面212eがプラグ装着開口211の底面211bから離間することがなく、両者の間に隙間が発生することが抑制される。
なお、プラグ装着開口211に装着されるプラグ212と、プラグ212を下鏡66に内面に固定するときに使用する溶接材料(隅肉溶接部216)は、既設の炉内計装筒204や開先溶接部206の溶接材料であるニッケル基合金(例えば、インコネル600)より高い耐応力腐食性を有する溶接材料であるニッケル基合金(例えば、インコネル690)を使用することが望ましい。但し、プラグ212や溶接材料(隅肉溶接部216)を既設の炉内計装筒204や開先溶接部206と同様の材料としてもよく、例えば、両者をステンレス鋼としてもよい。
その後、ステップS25にて、図示しないカメラを用いた目視試験により隅肉溶接部216の検査を行う。ここで、隅肉溶接部216にリークがなくてシール性が確保されていれば、ハウジング121や溶接装置123を撤去する。また、補修を必要としない周辺の計装管台83における炉内計装筒204に装着された異物混入防止用の栓を取外す。
なお、ここでは、プラグ装着開口211の周囲に気中空間Aを形成し、この気中空間Aでプラグ212の溶接作業を行ったが、例えば、原子炉容器本体62の上端部をシールプレートにより止水し、内部の全ての水を排出して気中空間を形成してもよい。
そして、図4及び図5に示すように、ステップS26にて、原子炉容器本体62内に炉内構造物(上部炉内構造物12A,下部炉内構造物12B)を戻し、原子炉容器蓋63を取付け、外部に抜き取られていたシンブルチューブ(中性子束検出器)88を原子炉容器61内に挿入して復旧させる。加圧水型原子炉12にて、原子炉容器61の下方の遮蔽部材101とコンジットチューブ85の遮蔽部材102を撤去する。
補修された計装管台83は、図1に示すように、低合金鋼製の母材201の内面にステンレス鋼製の溶接肉盛層202が形成された原子炉容器本体62の取付孔203に対して、この取付孔203の上端部における下鏡66の内面にプラグ装着開口211が形成され、このプラグ装着開口211にプラグ212が嵌合し、プラグ212における縦壁部212bの外周面と下鏡66における溶接肉盛層202が隅肉溶接部216により固定されて閉塞されている。そして、プラグ212は、プラグ装着開口211に嵌合して固定され、下面212eがプラグ装着開口211の底面211bに密着した状態に維持されている。
なお、プラグ212は、ねじ軸213が支持板214を介してナット215により下鏡66に固定され、下鏡66側へ押付荷重が付与されたままであるが、この押付荷重が下鏡66に対して悪影響を与えるものでないことからそのままとした。但し、ナット215を弛緩し、ねじ軸213から支持板214とナット215を取外してもよいし、ねじ軸213も切断して除去してもよい。
このように実施例1の管台補修方法にあっては、開先溶接部206における炉内計装筒204との接続部(トレパニング加工部208)を除去する工程と、下鏡66から炉内計装筒204を除去する工程と、開先溶接部206を除去してプラグ装着開口211を加工する工程と、プラグ装着開口211にプラグ212を装着して下鏡66側に押付荷重を付与する工程と、プラグ装着開口211に装着されたプラグ212を溶接して固定する工程とを設けている。
従って、開先溶接部206における炉内計装筒204とのトレパニング加工部208を除去し、下鏡66から炉内計装筒204を除去し、開先溶接部206を除去してプラグ装着開口211を加工し、このプラグ装着開口211にプラグ212を溶接して固定する。即ち、計装管台83から炉内計装筒204を除去すると共に、開先溶接部206を全て除去してプラグ212を固定することで、計装管台83を閉塞して使用不能とする。原子炉容器61は、下鏡66に多数の計装管台83が設けられていることから、少数の計装管台83を使用不能としても、他の計装管台83により対応することが可能となり、計装管台83を修復するのに比べて補修作業を容易に行うことで作業性を向上することができると共に、補修コストを低減することができる。
このプラグ212をプラグ装着開口211に溶接するとき、プラグ装着開口211に嵌合したプラグ212に対して、事前に下鏡66側に押付荷重を付与し、この状態で溶接する。そのため、溶接により加熱したプラグ212が冷却しても、プラグ212とプラグ装着開口211との間に隙間が発生することが抑制され、プラグ212をプラグ装着開口211に密着して高精度に固定することができる。
実施例1の管台補修方法では、下鏡66は、母材201の内面に耐応力腐食性を有する溶接肉盛層202が設けられ、プラグ212がプラグ装着開口211に嵌合した状態で、外周部を溶接肉盛層202に溶接により固定している。従って、プラグ212を固定するための溶接が原子炉容器本体62の母材201に熱の影響をほとんど与えることはなく、熱処理を不要として補修作業を容易に行うことができ、作業性を向上することができる。
実施例1の管台補修方法では、プラグ212に上方への縦壁部212bを設け、プラグ212がプラグ装着開口211に嵌合した状態で、縦壁部212bの外周面を溶接肉盛層202に溶接により固定している。従って、溶接材料を減少して溶接コストを低減することができると共に、溶接作業を容易に行うことができる。
実施例1の管台補修方法では、プラグ212における縦壁部211bの内側に凹部211cを設けている。従って、プラグ212の軽量化が可能となり、低コスト化を可能とすることができると共に、溶接の熱が凹部211cを介して放熱されることとなり、溶接品質を向上することができる。
実施例1の管台補修方法では、開先溶接部206を切削除去した後、この切削面210における欠陥の未検出を確認してから、プラグ装着開口211を加工している。従って、開先溶接部206を切削した切削面210における欠陥の未検出を確認することで、応力腐食割れの発生部分が確実に除去されたことが確認され、良質な原子炉容器本体62を維持することができる。
実施例1の管台補修方法では、プラグ装着開口211は、取付孔203より大きい開口であり、プラグ212を支持する底面211bを設け、プラグ212の下面212eを底面211bに押し付けられることで押付荷重を付与している。従って、プラグ212がプラグ装着開口211に装着されて固定されたとき、プラグ212の重量は、プラグ装着開口211の底面211bに支持されることとなり、プラグ212を下鏡66に固定するための溶接部を簡素化することができる。また、プラグ212をプラグ装着開口211に装着して押付荷重を付与して溶接することで、溶接により加熱したプラグ211が冷却しても、プラグ212の下面212eと底面211bとの間に隙間が発生することが抑制され、プラグ212をプラグ装着開口211に密着して固定することができる。
実施例1の管台補修方法では、プラグ212に対して下鏡66の外側から取付孔203を通して引っ張り荷重を付与することで押付荷重が付与している。従って、プラグ212に対して下鏡66の外側から作業を行うこととなり、作業者が下鏡66内に入る必要はなく、容易にプラグ212に対して押付荷重を付与することができ、作業性を向上することができる。
実施例1の管台補修方法では、原子炉容器61の下方を遮蔽部材101により遮蔽すると共に、コンジットチューブ85を遮蔽部材102により遮蔽し、原子炉容器61内に挿入されているシンブルチューブ88を外部に抜き取る一方、原子炉容器本体62から炉内構造物を撤去し、水中で開先溶接部206及び炉内計装筒204を除去し、気中でプラグ装着開口211の加工及びプラグ212の溶接を行っている。従って、被爆を低減して作業の安全性を向上することができる。
また、実施例1の原子炉容器にあっては、原子炉容器本体62の下鏡66に複数の計装管台83が設けられ、この複数の計装管台83のうちのいずれかの取付孔203が高い耐応力腐食性を有するニッケル基合金製のプラグ212により施栓されている。
従って、原子炉容器本体62の下鏡66に設けられた不要な計装管台83がプラグ212により施栓されることとなり、補修後の原子炉容器61は、高い耐応力腐食性が確保されることとなり、補修コストを低減して耐応力腐食性を向上することができる。
そして、プラグに押付荷重付与治具としてのねじ軸213、支持板214、ナット215を設けている。従って、プラグ212に対して容易に押付荷重を付与することができ、作業性を向上することができる。この場合、事前にプラグ212の下面にねじ軸213を固定しておくことで、プラグ212をプラグ装着開口211に押し付ける押付荷重を容易に付与することができる。
なお、上述した実施例1では、原子炉容器61の下方とコンジットチューブ85を遮蔽し、原子炉容器61からシンブルチューブ88を外部に抜き取り、原子炉容器本体62から炉内構造物を撤去し、水中で開先溶接部206及び炉内計装筒204を除去し、気中でプラグ装着開口211の加工及びプラグ212の溶接を行ったが、この方法に限定されるものではない。例えば、原子炉容器本体62から炉内構造物を撤去し、原子炉容器61内にシンブルスタンドを配置し、補修しない計装管台83のシンブルチューブ88を支持する一方、水中で開先溶接部206及び炉内計装筒204を除去し、気中でプラグ装着開口211の加工及びプラグ212の溶接を行ってもよい。
図21は、本発明の実施例2に係る管台補修方法に用いるプラグの装着作業を表す概略図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
実施例2の管台補修方法では、上述した実施例1に対してプラグと押付荷重付与治具の構成が相違している。図21に示すように、下鏡66の内面に形成されたプラグ装着開口211は、内周面211aと底面211bにより構成されている。一方、このプラグ装着開口211に装着されるプラグ311は、プラグ本体311aと、縦壁部311bと、凹部311cと、突起部311dと、下面311eとを有すると共に、突起部311dに設けられためねじ部311fを有している。
このプラグ311は、プラグ装着開口211に嵌合したとき、プラグ本体311aがプラグ装着開口211を埋め、突起部311dが取付孔203に嵌入し、リング形状をなす縦壁部311bが下鏡66の内面から上方に突出し、凹部311cが下鏡66の内面と同一平面をなす。
ここで、下鏡66の外側からプラグ装着開口211に装着されたプラグ311に対して、押付荷重を付与する作業を行う。プラグ311のめねじ部311fに螺合可能な押付荷重付与治具としてのねじ軸312を用意する。このねじ軸312は、プラグ311のめねじ部311fに螺合することができる長さに設定されている。まず、下鏡66の外側にて、取付孔203に対応して下鏡66の溶接肉盛層207に支持板313を仮固定する。次に、回転工具(図示略)にねじ軸312を保持させ、支持板313を貫通した後、ねじ軸312を回転しながら先端部をめねじ部311fに押し付けることで、ねじ軸213をめねじ部311fに螺合し、プラグ311を固定する。
ここで、ねじ軸312をめねじ部311fに更に螺合させていくと、支持板313を基点とし、ねじ軸312を介してプラグ311が下方、つまり、下鏡66の外側へ牽引される。すると、プラグ311は、下面311eがプラグ装着開口211の底面211bに押し付けられ、下鏡66側への押付荷重が付与される。ここで、プラグ311における縦壁部311bの外周面と下鏡66における内面、つまり、溶接肉盛層202の表面とを隅肉溶接する。
プラグ311は、溶接熱により熱伸びした後、冷却されることで収縮するが、このプラグ311は、下鏡66側へ押付荷重が付与されることで、圧縮変形した状態で溶接されるため、熱伸びした後に冷却されて収縮しても、下面311eがプラグ装着開口211の底面211bから離間することがなく、両者の間に隙間が発生することが抑制される。
このように実施例2にあっては、プラグ311に押付荷重付与治具としてのめねじ部311f、ねじ軸312、支持板313を設けている。従って、プラグ311に対して容易に押付荷重を付与することができ、作業性を向上することができる。この場合、事前にプラグ311の下面311eにめねじ部311fを形成しておくことで、プラグ311をプラグ装着開口211に押し付ける押付荷重を容易に付与することができる。
図22は、本発明の実施例3に係る管台補修方法に用いるプラグの装着作業を表す概略図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
実施例3の管台補修方法では、上述した実施例1、2に対してプラグと押付荷重付与治具の構成が相違している。図22に示すように、下鏡66の内面に形成されたプラグ装着開口211は、内周面211aと底面211bにより構成されている。一方、このプラグ装着開口211に装着されるプラグ321は、プラグ本体321aと、縦壁部321bと、凹部321cと、突起部321dと、下面321eとを有している。
このプラグ321は、プラグ装着開口211に嵌合したとき、プラグ本体321aがプラグ装着開口211を埋め、突起部321dが取付孔203に嵌入し、リング形状をなす縦壁部321bが下鏡66の内面から上方に突出し、凹部321cが下鏡66の内面と同一平面をなす。
ここで、下鏡66の外側からプラグ装着開口211に装着されたプラグ321に対して、押付荷重を付与する作業を行う。プラグ321をプラグ装着開口211に押付ける押付荷重付与治具としての押付シリンダ331を用意する。この押付シリンダ311は、支持台322に支持され、駆動ロッド333を介して押付部334を有している。まず、押付シリンダ331を作動し、駆動ロッド333を伸長して押付部334をプラグ321の凹部331cに密着させる。次に、押付シリンダ331により駆動ロッド333を更に伸長することで、押付部334によりプラグ321を押圧する。すると、プラグ321は、下面321eがプラグ装着開口211の底面211bに押し付けられ、下鏡66側への押付荷重が付与される。この状態で、プラグ321における縦壁部321bの外周面と下鏡66における内面、つまり、溶接肉盛層202の表面とを隅肉溶接する。その後、押付シリンダ331を撤去する。
プラグ321は、溶接熱により熱伸びした後、冷却されることで収縮するが、このプラグ321は、下鏡66側へ押付荷重が付与されることで、圧縮変形した状態で溶接されるため、熱伸びした後に冷却されて収縮しても、下面321eがプラグ装着開口211の底面211bから離間することがなく、両者の間に隙間が発生することが抑制される。
このように実施例3にあっては、押付荷重付与治具としての押付シリンダ331を用意し、この押付シリンダ331により下鏡66の内側からプラグ321を押圧して押付荷重を付与している。従って、プラグ321に対して各種の加工を行う必要がなく、プラグ321の構造を簡素化して製造コストを低減することができる。
図23は、本発明の実施例4に係る管台補修方法に用いるプラグの装着作業を表す概略図、図24は、実施例4のプラグの下面図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
実施例4の管台補修方法では、上述した実施例1に対してプラグの構成が相違している。図23及び図24に示すように、下鏡66の内面に形成されたプラグ装着開口211は、内周面211aと底面211bにより構成されている。一方、このプラグ装着開口211に装着されるプラグ341は、プラグ本体341aと、縦壁部341bと、凹部341cと、突起部341dと、下面341eとを有している。また、プラグ341は、下面341eに放射方向(径方向)に沿った溝部341fが周方向に均等間隔で複数形成されている。この複数の溝部341fは、プラグ341の下面341eとプラグ装着開口211の底面211bとの間に設けられる変形部材として機能する。
このプラグ341は、プラグ装着開口211に嵌合したとき、プラグ本体341aがプラグ装着開口211を埋め、突起部341dが取付孔203に嵌入し、リング形状をなす縦壁部341bが下鏡66の内面から上方に突出し、凹部341cが下鏡66の内面と同一平面をなす。このとき、プラグ341は、各溝部341fを除く下面341eがプラグ装着開口211の底面211bに接触することとなる。
ここで、下鏡66の外側からプラグ装着開口211に装着されたプラグ341に対して、押付荷重を付与する作業を行う。即ち、プラグ341のねじ軸342を下方に牽引することで、プラグ341は、下面341eがプラグ装着開口211の底面211bに押し付けられ、下鏡66側への押付荷重が付与される。この状態で、プラグ341における縦壁部341bの外周面と下鏡66における内面、つまり、溶接肉盛層202の表面とを隅肉溶接する。このとき、プラグ341は、下鏡66側への押付荷重が付与されることで、圧縮変形した状態で溶接されるため、溶接熱により熱伸びした後に冷却されて収縮しても、下面341eがプラグ装着開口211の底面211bから離間することがなく、両者の間に隙間が発生することが抑制される。そして、プラグ341は、下面341eに複数の溝部341fが設けられていることから、下部の強度が少しだけ低下して圧縮変形しやすくなっており、容易に圧縮変形することができる。
このように実施例4にあっては、プラグ341の下面341eに複数の溝部341fを設けている。従って、プラグ341をプラグ装着開口211に押し付ける押付荷重を付与したとき、複数の溝部341fにより下部の強度が少しだけ低下して圧縮変形しやすくなっており、プラグ341に対して容易に圧縮変形させることができる。
なお、この実施例4では、本発明の変形部材として、プラグ341の下面341eに複数の溝部341fを形成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、溝部341fに代えて凹部としてもよい。また、プラグ341とは別に設けてもよい。
また、上述した実施例では、プラグ装着開口211の軸心が取付孔203の軸心と合うように切削加工したが、プラグ装着開口211の軸心が下鏡66の径方向に沿う方向に加工してもよい。また、プラグ装着開口211の形状を円柱形状としたが、この形状に限らず、角柱形状、半球形状、円錐形状などとしてもよい。
また、上述した実施例では、プラグ本体212a,311a,321a,341aの上面部に上方へ突出する突出部として、内側に凹部212c,311c,321c,341cを有する縦壁部212b,311b,321b,341bとしたが、凹部212c,311c,321c,341cを設けなくてもよい。
また、上述した実施例では、原子炉容器本体62の下鏡66に設けられた計装管台83の補修方法について説明したが、原子炉容器蓋63の上鏡に設けられた計装管台の補修方法にも適用することができる。また、本発明の管台補修方法を加圧水型原子炉に適用して説明したが、沸騰水型原子炉に適用してもよい。
61 原子炉容器
62 原子炉容器本体
63 原子炉容器蓋
66 下鏡(半球部)
83 計装管台
84 炉内計装案内管
85 コンジットチューブ
88 シンブルチューブ
126 ナット回転工具
201 母材
202 溶接肉盛層
203 取付孔
204 炉内計装筒
205 開先部
206 開先溶接部
208 トレパニング加工部(接続部)
210 切削面
211 プラグ装着開口(プラグ装着部)
211b 底面(支持面)
212,311,321,341 プラグ
212b,311b,321b,341b 縦壁部(突出部)
212c,311c,321c,341c 凹部
212e,311e,321e,341e 下面(支持面)
213,312 ねじ軸(押付荷重付与治具)
214,313 支持板(押付荷重付与治具)
215 ナット(押付荷重付与治具)
216 隅肉溶接部
311f めねじ部
331 押付シリンダ
341f 溝部(変形部材)

Claims (8)

  1. 原子炉容器の半球部に形成された取付孔に炉内計装筒が挿入され、前記半球部の内面側が開先溶接されて前記炉内計装筒が固定された計装管台の補修方法であって、
    開先溶接部における前記炉内計装筒との接続部を除去する工程と、
    前記半球部から前記炉内計装筒を除去する工程と、
    前記開先溶接部を除去してプラグ装着部を加工する工程と、
    前記プラグ装着部にプラグを装着して前記半球部側に押付荷重を付与する工程と、
    前記プラグ装着部に装着されたプラグを溶接して固定する工程と、
    を有することを特徴とする管台補修方法。
  2. 前記半球部は、内面に耐応力腐食性を有する溶接肉盛層が設けられ、前記プラグは、前記プラグ装着部に嵌合した状態で、外周部が前記溶接肉盛層に溶接により固定されることを特徴とする請求項1に記載の管台補修方法。
  3. 前記プラグは、上方への突出部が設けられ、前記プラグ装着部に嵌合した状態で、前記突出部の外面が前記半球部に溶接により固定されることを特徴とする請求項1または2に記載の管台補修方法。
  4. 前記突出部は、前記プラグの外周上部に沿った縦壁部を有し、該縦壁部の内側に凹部が設けられることを特徴とする請求項3に記載の管台補修方法。
  5. 前記プラグ装着部は、前記取付孔より大きい開口であり、前記プラグを支持する支持面を有し、前記プラグは、下面が前記支持面に押し付けられることで押付荷重が付与されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の管台補修方法。
  6. 前記プラグは、前記半球部の外側から前記取付孔を通して引っ張り荷重が付与されることで押付荷重が付与されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の管台補修方法。
  7. 下部が半球形状をなす原子炉容器本体と、
    半球形状をなして前記原子炉容器本体の上部に装着される原子炉容器蓋と、
    前記原子炉容器本体の側部に設けられる入口ノズル及び出口ノズルと、
    前記原子炉容器本体の内部に配置されて多数の燃料集合体からなる炉心と、
    前記燃料集合体に対して挿入可能な多数の制御棒と、
    前記制御棒を上下動可能な制御棒駆動装置と、
    前記原子炉容器本体の下部に設けられて中性子束検出器を挿入可能な複数の計装管台と、
    前記複数の計装管台のうちのいずれかの管台取付孔を施栓するプラグと、
    前記プラグに設けられる押付荷重付与治具と、
    を有し、
    前記プラグの下面と前記管台取付孔に形成された支持面との間に変形部材が設けられる、
    ことを特徴とする原子炉容器。
  8. 前記押付荷重付与治具は、前記プラグの下面に連結されるねじ軸を有することを特徴とする請求項7に記載の原子炉容器。
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