JP7186165B2 - 可視光域で光架橋可能な光応答性ヌクレオチドアナログ - Google Patents
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Description
(1)
次の式Iで表される化合物:
(ただし、式Iにおいて、
Xは、酸素原子又は硫黄原子であり、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH基、アミノ基、ニトロ基、メチル基、フッ化メチル基、エチル基、フッ化エチル基、及びC1~C3のアルキルスルファニル基からなる群から選択された基であり、
Yは、水素原子、糖(糖は、リボース、及びデオキシリボースを含む)、多糖類(多糖類は、核酸のポリリボース鎖、及びポリデオキシリボース鎖を含む)、ポリエーテル、ポリオール、ポリペプチド鎖(ポリペプチド鎖は、ペプチド核酸のポリペプチド鎖を含む)、又は水溶性合成高分子である。)。
(2)
Yが、次の式IIで表される基である、(1)に記載の化合物:
(ただし、式IIにおいて、
R11は、水素原子又は水酸基であり、
R12は、水酸基、又は-O-Q1基であり、
R13は、水酸基、又は-O-Q2基であり、
Q1は、
Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基;
Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド、核酸又はペプチド核酸; 及び
以下から選択される保護基:
トリチル基、モノメトキシトリチル基、ジメトキシトリチル基、トリメトキシトリチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、アセチル基、ベンゾイル基;
からなる群から選択される基であり、
Q2は、
Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基;
Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド、核酸又はペプチド核酸; 及び
以下から選択される保護基:
2-シアノエチル-N,N-ジアルキル(C1~C4)ホスホロアミダイト基、メチルホスホンアミダイト基、エチルホスホンアミダイト基、オキサザホスホリジン基、チオホスファイト基、-PH(=O)OHのTEA塩、-PH(=O)OHのDBU塩、-PH(=S)OHのTEA塩、-PH(=S)OHのDBU塩;
からなる群から選択される基である。)。
(3)
Yが、水素原子、次の式IIIで表される基、又は式IVで表される基である、(1)に記載の化合物:
(4)
塩基部分として、次の式Ib:
(ただし、式Ibにおいて、
Xは、酸素原子又は硫黄原子であり、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH基、アミノ基、ニトロ基、メチル基、フッ化メチル基、エチル基、フッ化エチル基、及びC1~C3のアルキルスルファニル基からなる群から選択された基である。)
で表される基を有するヌクレオシドである、(1)に記載の化合物。
(5)
塩基部分として、次の式Ib:
(ただし、式Ibにおいて、
Xは、酸素原子又は硫黄原子であり、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH基、アミノ基、ニトロ基、メチル基、フッ化メチル基、エチル基、フッ化エチル基、及びC1~C3のアルキルスルファニル基からなる群から選択された基である。)
で表される基を有するヌクレオチドである、(1)に記載の化合物。
(6)
塩基部分として、次の式Ib:
(ただし、式Ibにおいて、
Xは、酸素原子又は硫黄原子であり、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH基、アミノ基、ニトロ基、メチル基、フッ化メチル基、エチル基、フッ化エチル基、及びC1~C3のアルキルスルファニル基からなる群から選択された基である。)
で表される基を有する核酸又はペプチド核酸である、(1)に記載の化合物。
(7)
(1)~(6)のいずれかに記載の化合物からなる、光反応性架橋剤。
(8)
(1)~(6)のいずれかに記載の化合物を使用して、ピリミジン環を有する核酸塩基との間に光架橋を形成する方法。
Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基;
Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド、核酸又はペプチド核酸; 及び
以下から選択される保護基:
トリチル基、モノメトキシトリチル基、ジメトキシトリチル基、トリメトキシトリチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、アセチル基、ベンゾイル基;
からなる群から選択される基とすることができる。
Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基;
Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド、核酸又はペプチド核酸; 及び
以下から選択される保護基:
2-シアノエチル-N,N-ジアルキル(C1~C4)ホスホロアミダイト基、メチルホスホンアミダイト基、エチルホスホンアミダイト基、オキサザホスホリジン基、チオホスファイト基、-PH(=O)OHのTEA塩、-PH(=O)OHのDBU塩、-PH(=S)OHのTEA塩、-PH(=S)OHのDBU塩;
からなる群から選択される基とすることができる。
上記ジアルキル基となるR基とR’基は、それぞれC1~C4のアルキル基とすることができる。このような2-シアノエチル-N,N-ジアルキル(C1~C4)ホスホロアミダイト基として、例えば、2-シアノエチル-N,N-ジメチルホスホロアミダイト基、2-シアノエチル-N,N-ジエチルホスホロアミダイト基、2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト基をあげることができる。
好適な実施の態様において、Yは、デオキシリボースとすることができ、すなわち、次の式IIIで表される基とすることができ、この場合に式Iの化合物は、次の式VIIで表されるヌクレオシド(デオキシリボヌクレオシド)アナログである:
で表される基を有するヌクレオシド(ヌクレオシドアナログ)ということができる。
で表される基を有するヌクレオシド(ヌクレオシドアナログ)ということができる。
好適な実施の態様において、Q1を、Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基とすることができ、Q2を、水素原子とすることができる。すなわち、上記式Iで表される化合物は、特徴的な構造を備えた光応答性人工ヌクレオチドアナログ分子とすることができる。
好適な実施の態様において、Q1を、Q1に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸として、Q2を、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸とすることができる。すなわち、上記式Iで表される化合物は、特徴的な構造を備えた光応答性人工ヌクレオチドアナログが配列中に取り込まれた修飾核酸又は修飾オリゴヌクレオチドとすることができる。本発明において、このように調整された光応答性修飾核酸と光応答性修飾オリゴヌクレオチドをまとめて光応答性修飾核酸ということがある。本発明に係る修飾核酸において、特徴的な構造を備えた光応答性人工ヌクレオチドアナログが配列中の末端に位置していてもよく、この場合にはQ1又はQ2のいずれかの側のみがQ1又はQ2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結される修飾ヌクレオチド又は修飾核酸となる。また、上記の核酸に代えてペプチド核酸を用いて、特徴的な構造を備えた光応答性人工ヌクレオチドアナログが配列中に取り込まれた光応答性修飾ペプチド核酸とすることができる。
本発明に係る化合物は、式I等において、天然のヌクレオシド及びヌクレオチドが備えているべきプリン塩基あるいはピリミジン塩基による塩基構造を備えていない。それにもかかわらず、本発明に係る化合物は、1本鎖の修飾核酸として形成されると、これと相補的な1本鎖の核酸と二重らせんを形成することができる。そして、ピラノカルバゾール部分が光反応によって架橋を形成することができる。
好適な実施の態様において、Q1を、上述の保護基とすることができ、Q2を、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基、Q2に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド又は核酸、あるいは上述の保護基、とすることができる。すなわち、上記式I、式I’、式I”、及び式I'''で表される化合物は、光反応性修飾核酸の製造用試薬(合成用試薬)とすることができる。
本発明に係る化合物は、ピラノカルバゾール部分が光反応によって架橋を形成することができる。本発明に係る化合物を、1本鎖の修飾核酸として形成すると、これと相補的な1本鎖の核酸と二重らせんを形成することができ、ピラノカルバゾール部分が光反応によって架橋を形成することができ、結果として、二重らせんの一方の鎖からもう一方の鎖へと形成された鎖間の光架橋(光クロスリンク)を形成することができる。すなわち、本発明に係る化合物は、光反応性架橋剤として使用することができる。
本発明に係る修飾核酸は、これを1本鎖核酸として使用すると、これと相補的な1本鎖核酸とハイブリダイズして二重らせんを形成することができる。二重らせんの形成にあたって、ピラノカルバゾール構造部分に対して、相補鎖中において塩基対を形成すべき位置にある核酸塩基については、特段の制約がなく、自由に選択できる。形成された二重らせんに光照射を行うと、二重らせんを形成する核酸鎖の間に、光反応によって架橋を形成することができる。この光架橋は、配列中でピラノカルバゾール構造部分が核酸塩基として位置する位置から配列中で1塩基分だけ5’末端側に位置する核酸塩基に対して、相補鎖中において塩基対を形成する位置にある核酸塩基と、ピラノカルバゾール構造との間に形成される。言い換えれば、この光架橋は、ピラノカルバゾール構造部分に対して、相補鎖中において塩基対を形成すべき位置にある核酸塩基から、配列中で1塩基分だけ3’末端側に位置する核酸塩基と、ピラノカルバゾール構造との間に形成される。
本発明において、ピラノカルバゾール構造が光架橋を形成可能である相手方の塩基は、ピリミジン環を有する塩基である。一方で、ピラノカルバゾール構造は、プリン環を有する塩基とは光架橋を形成しない。すなわち、本発明に係る光架橋性の化合物は、天然の核酸塩基としては、シトシン、ウラシル、及びチミンに対して光架橋を形成し、一方で、グアニン及びアデニンに対しては光架橋を形成しないという、特異性を有している。
本発明に係る光反応性修飾核酸(光架橋性修飾核酸)は、修飾核酸と相補的な塩基配列を有する配列とハイブリダイズさせて二重らせんを形成させた後に、光架橋させることができる。これによって、目的とする特定の配列に対してのみ光クロスリンク反応(光架橋反応)を行わせることができる。すなわち、本発明に係る光反応性架橋剤は、非常に高い塩基配列選択性を、所望に応じて配列設計して、付与することができる。
光架橋のために照射される光の波長は、例えば350~600nmの範囲、好ましくは400~600nmの範囲、さらに好ましくは400~550nmの範囲、さらに好ましくは400~500nmの範囲、さらに好ましくは400~450nmの範囲とすることができ、特に400nmの波長を含む光が好ましい。好適な実施の態様において、これらの範囲の波長にある単波長のレーザー光を使用することができる。このように本発明では、可視光域の波長の光照射によって、光架橋を形成することができる。従来の光反応性架橋剤では、これらの範囲よりも短波長の光照射を必要としていた。本発明によれば、従来の光反応性架橋剤よりも長波長の光照射によって光架橋を形成できることから、光照射による核酸や細胞への悪影響を最小限とすることができる点で、有利である。
本発明の化合物によれば、光架橋を形成した後に、さらに光照射によって光開裂をすることができる。すなわち、本発明に係る光反応性の化合物は、可逆的な光架橋を可能とするものであり、可逆的な光架橋剤として使用することができる。
好適な実施の態様において、光架橋反応を進行させるためには、一般に0~50℃、好ましくは0~40℃、さらに好ましくは0~30℃、さらに好ましくは0~20℃、さらに好ましくは0~10℃、さらに好ましくは0~5℃の範囲の温度で光照射を行う。光開裂反応を進行させるためには、一般に55~100℃、好ましくは60~100℃、さらに好ましくは60~90℃、さらに好ましくは60~80℃の範囲の温度で光照射を行う。
本発明による光架橋及び光開裂は、光反応を利用しているために、pH、塩濃度などに特段の制約がなく、核酸類等の生体高分子が安定に存在可能なpH、塩濃度とした溶液中で、光照射によって行うことができる。
本発明による光架橋及び光開裂は、極めて迅速に進行する。例えば、光反応性の化合物として知られるソラレンであれば数時間を要する(350nm光照射)ような場合に、それよりもはるかに長波長の光照射によって、例えばわずか10秒間~60秒間(400nm光照射)で光反応が進行して光架橋する。すなわち、本発明に係る光架橋剤を使用すれば、例えば1~120秒間、又は1~60秒間の光照射によって、光反応を進行させて光架橋を形成させることができる。さらに、本発明による光架橋は、上記の波長及び温度を採用して、例えば1~120秒間、又は1~60秒間の光照射によって、光反応を進行させて光架橋を開裂させることができる。
後述するスキーム1又はスキーム2に記載の手法、あるいは当業者に公知の手法を使用して、ピラノカルバゾール構造を有する化合物(例えば後述するスキーム1の化合物2)から、本発明に係る修飾核酸を得るための合成用モノマー(製造用試薬)(例えば後述するスキーム1の化合物3、化合物4、化合物5、化合物6、あるいはスキーム2において対応する化合物)を得ることができる。本発明に係る修飾核酸の合成用モノマーの構造は上述した通りであり、これを、ホスホロアミダイト法、及びH-ホスホネート法等の公知の手法における核酸合成試薬として使用すれば、光応答性人工ヌクレオシドアナログ分子(式VIIの化合物、式VIIIの化合物)が配列中に取り込まれた核酸又はオリゴヌクレオチド(本発明に係る修飾核酸)あるいはペプチド核酸を得ることができる。このように、本発明に係る修飾核酸合成モノマーは、ホスホロアミダイト法、及びH-ホスホネート法等の公知の手法において核酸合成試薬として使用できる点で、優れたものである。
次のスキーム1に示す合成経路に沿って、光応答性人工ヌクレオシドアナログ分子(ヌクレオシドアナログ、あるいは光反応性素子又は光架橋素子ということがある)、さらに修飾核酸合成モノマーの合成を行った。
二口ナスフラスコに2-hydroxycarbazole(2.0g、11mmol)、InCl3(260mg、1.18mmol)を入れ、還流管をつけ、窒素置換を行った。オイルバスを90℃にセットし、二口ナスフラスコにEthyl propiolate(4ml)を加え90℃,24h撹拌した。TLCで反応の進行を確認した後、水2mLを加え反応をクエンチした。酢酸エチルに溶かし、抽出を行った。硫酸ナトリウムを用い、脱水を行い、エバポレータにより溶媒を除去した。その後、カラム(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)により精製を行い、化合物2を得た。(収量:503mg、2.75mmol、収率:25%)
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 11.67(s,1H),8,47(s,1H),8,17(dt,2H,J=11.4Hz),7.50-7.43(m,2H),7.25(dt,1H,J=8.54Hz),6.33(d,1H,J=4.75Hz)
二口ナスフラスコに化合物2(324mg、1.38mmol)、KOH(224mg,4.00mmol)を入れ、窒素置換を行った。脱水アセトニトリルを36mLとTDA-1を24μL入れて30分撹拌した。その後、クロロシュガー(674mg、1.94mmol)を加え一晩撹拌した。反応液を濾過した後、エバポレータにより溶媒を除去した。除去後の混合液にメタノール40mLに溶解させた後、ナトリウムメトキシド54mgとクロロホルム5mLを加え、4時間撹拌した。その後、濾過、エバポレータによる溶媒の除去を行った。その後、カラム(クロロホルム)による精製を行い、化合物4を得た。(収量:80mg、0.23mmol、収率:17%)
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6) δ 8.50(s,1H),8.18(m,2H),7.50(dd,2H,J=8.28,8.0),7.31(dt,1H,J=7.17),6.71(dt,1H,J=6.2),6.38(d,1H,4.6Hz),5.40(d,1H,J=5.4Hz),5.10(dt,1H,J=5.07Hz),3.95-3.87(m,3H),2.74(dt,1H,J=14.0,8.2Hz),2.26(ddd,1H,J=14.0,6.9,3.3Hz)
以降の合成は常法に従い、ジメトキシトリチル化、アミダイト化を行った。
DNA自動合成機(ABI3400)を用い、修飾DNAの合成を行った。その後、28%アンモニア水溶液による切り出しを行った後、65℃で4時間加熱し、脱保護を行った。SpeedVacによりアンモニアを除去、HPLCによる精製を行った。その後、MALDI-TOF-MSによる解析を行い目的物の同定を行った。
Calcd.for [M+H]+ 2798.40,Found 2798.72
10μM修飾ODN、10μM相補鎖ODN、50μM deoxyuridine、100mM NaClを含む50mMカコジル酸buffer(pH7.4)を90℃で1分間加熱し、4℃で静置した。その後、UV-LED(OmniCure,LX405-S)を用いて400nmの光照射を4℃で行った。図1aはこの光架橋反応の流れを示す説明図である。
DNAサンプル50μLをUPLC用バイアル瓶に移し、UPLC(超高速液体クロマトグラフ)解析を行った。解析には50mMギ酸アンモニウムとアセトニトリルを用い、分析開始時ギ酸アンモニウム100%、10分時点でギ酸アンモニウム90%、アセトニトリル10%になるように直線的に溶媒比率を変化させた。流速は0.2mL/min、検出波長は260nmで分析を行った。図1b及び図1cにこれらの結果をまとめて示す。
図1bは、光照射時間を0~15秒と変化させた場合のUPLC解析のチャートである。図1bの横軸は保持時間[分]である。相補鎖ODN、修飾ODN、光架橋されたODNのピークの位置をそれぞれ図1b中に示す。図1cは、光照射時間を0~15秒と変化させた場合の各光照射時間における光架橋率を算出して作成したグラフである。図1cの横軸は光照射時間[秒]、縦軸は架橋率[%]を示す。
上記の光応答性人工ヌクレオシドアナログ分子(ピラノカルバゾール構造を有する光架橋素子)(PyranoCarbazole Photo-Cross-linker)(PCX)について、光架橋可能な波長を以下のように検討した。
図2bは、照射する光波長を450~550nmと変化させた場合のUPLC解析のチャートである。図2bの横軸は保持時間[分]である。相補鎖ODN(cODN)、修飾ODN(ODN(PCX))、光架橋されたODN(*)のピークの位置をそれぞれ図2b中に示す。このように、450nmから開始して少なくとも550nmまでの波長の光照射によって、光架橋可能であることがわかった。
上記の光応答性人工ヌクレオシドアナログ分子(PCX)の光架橋体に対して、光開裂可能な波長を以下のように検討した。
長波長の光照射が、短波長の光照射と比較して、細胞へのダメージが少ないことを検討するために、以下の実験を行った。
図4は、各波長での光照射時間(秒)と細胞生存率(%)を対比したグラフである。この結果から、366nmの光照射では数秒の光照射でも細胞生存率が大きく低下しているのに対して、400nm、450nmでは、数十秒光照射を行ってもほとんど細胞生存率が低下していない。すなわち、このことからもピラノカルバゾールが細胞毒性の少ない長波長の光で操作可能であることが明らかとなった。
光応答性人工ヌクレオシドアナログ分子として、次の構造を有するピラノカルバゾール誘導体(SPCX)の合成を、スキーム2に従って行った。
SPCX:
スキーム2の枠内の合成について以下のように行った。
1H-NMR(400MHz,CDCl3) ∂ 8.50(s,1H),8.21(s,1H),8.19(d,1H),7.90(s,1H),7.93(d,1H),7.50(t,1H),7.31(t,1H),6.70(t,1H),6.34(d,1H),5.41(d,1H),5.16(t,1H),4.50(d,1H),3.78(q,2H),2.60-2.68(m,1H),2.14-2.18(m,1H),1.18(s,6H).
1H-NMR(400MHz,CDCl3) ∂ 8.56(s,1H),8.23(s,1H),8.20(d,1H),7.90(s,1H),7.36(d,1H),7.51(t,1H),7.35(t,1H),6.72(t,1H),6.21(d,1H),5.41(d,1H),5.16(t,1H),4.51(d,1H),3.90(q,1H),3.90(q,2H),2.48-2.65(m,1H),2.12-2.16(m,1H).
スキーム2によって得られた修飾核酸合成モノマーを用いて、光応答性核酸含有DNAの合成を行って、光架橋反応することを確認した。
ODN(SPCX) 5’-TGCASPCXCCGT-3’
cODN 5’-ACGGGTGCA-3’
この光架橋反応の流れを示す説明図を、図5に示す。
光架橋試験のUPLCによる解析結果を図6に示す。
UPLCで解析を行った結果、光照射前に確認できたcODNとODN(SPCX)のピークが光照射時間依存的に減少し、新たなピークが確認でき、光架橋反応の進行が確認された。450nmの光照射を10秒行うことにより光架橋していることから、ピラノカルバゾール(PCX)よりもS-ピラノカルバゾール(SPCX)はさらに高い光反応性を有するものであった。
Claims (7)
- 次の式Iで表される化合物:
(ただし、式Iにおいて、
Xは、酸素原子又は硫黄原子であり、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH基、アミノ基、ニトロ基、メチル基、フッ化メチル基、エチル基、フッ化エチル基、及びC1~C3のアルキルスルファニル基からなる群から選択された基であり、
Yは、次の式IIで表される基である:
(ただし、式IIにおいて、
R11は、水素原子又は水酸基であり、
R12は、水酸基、又は-O-Q 1 基であり、
R13は、水酸基、又は-O-Q 2 基であり、
Q 1 は、
Q 1 に結合するOと一体となって形成されるリン酸基;
Q 1 に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド、核酸又はペプチド核酸; 及び
以下から選択される保護基:
トリチル基、モノメトキシトリチル基、ジメトキシトリチル基、トリメトキシトリチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、アセチル基、ベンゾイル基;
からなる群から選択される基であり、
Q 2 は、
Q 2 に結合するOと一体となって形成されるリン酸基;
Q 2 に結合するOと一体となって形成されるリン酸基によって形成されるリン酸ジエステル結合を介して連結されるヌクレオチド、核酸又はペプチド核酸; 及び
以下から選択される保護基:
2-シアノエチル-N,N-ジアルキル(C1~C4)ホスホロアミダイト基、メチルホスホンアミダイト基、エチルホスホンアミダイト基、オキサザホスホリジン基、チオホスファイト基、-PH(=O)OHのTEA塩、-PH(=O)OHのDBU塩、-PH(=S)OHのTEA塩、-PH(=S)OHのDBU塩;
からなる群から選択される基である。)。)。 - 請求項1~5のいずれかに記載の化合物からなる、光反応性架橋剤。
- 請求項1~5のいずれかに記載の化合物を使用して、ピリミジン環を有する核酸塩基との間に光架橋を形成する方法。
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