〔第1の実施の形態〕
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。図1乃至図8は、本実施の形態による検査装置を説明するための図面である。なお、図1乃至図3および図6乃至図8において、被検査物を参照符号Lで示している。また、図3および図6において、撮像部の被写界深度を参照符号Dで示しており、図2、図3および図6において、平坦な状態を基準とした被検査物の撓み量を参照符号tで示している。
本実施の形態による検査装置10は、薄板状の被検査物の外観検査を行う際に用いられるようになっている。このような被検査物としては、例えば、半導体パッケージの内部配線に用いられるリードフレームが複数並ぶように形成された薄板状の金属が挙げられる。このような薄板状の被検査物に好適に適用される検査装置10について以下に詳細に説明する。
図1等に示すように、検査装置10は、被検査物を搬送する搬送部100と、搬送部100により搬送される被検査物を撮像して画像データを取得する撮像部200とを備えている。より具体的には、搬送部100は、水平面に沿って被検査物を搬送する第1搬送部110と、第1搬送部110とは離間した位置に設けられ、水平面に対して傾斜した姿勢で被検査物を搬送する第2搬送部120とを有している。また、第1搬送部110は一対の搬送ベルト112を有しており、被検査物は一対の搬送ベルト112により両側部を支持された状態で水平面に沿って搬送されるようになっている。このように被検査物が搬送されるため、例えば被検査物の両側部以外の箇所が製品となる領域であり、搬送するための機構(ベルトやローラ等)が当該領域に触れてしまうと問題がある場合でも、被検査物のうち製品となる領域を傷つけずに搬送することができる。また、第1搬送部110において被検査物が移し替え位置(図1において参照符号Uで表示)まで搬送されると、第1搬送部110による被検査物の搬送が停止させられるようになっている。
図2は、図1に示す矢印A方向から見たときの第1搬送部110および第2搬送部120の構成を概略的に示す側面図である。また、図2に示すように、水平面に対して傾斜した姿勢で被検査物を搬送する第2搬送部120には、上述した搬送ベルト112と同様の構成の搬送ベルト122と、水平面に対して傾斜した姿勢で搬送される被検査物の下端縁を保持する保持部材124が設けられている。このような保持部材124によって、第2搬送部120により搬送される被検査物が第2搬送部120から地面等に落下してしまうことを防止されるようになっている。
また、第2搬送部120には押さえ部材126が設けられており、この押さえ部材126は保持部材124に近づく方向および保持部材124から遠ざかる方向(すなわち、図2における矢印方向)に沿って移動することができるよう構成されている。また、被検査物は、当該被検査物の両側部が保持部材124と押さえ部材126との間に挟まれた状態で第2搬送部120により搬送されるようになっている。より詳細には、移し替え機構300(後述)によって被検査物が第1搬送部110から第2搬送部120に移し替えられる際には、押さえ部材126は保持部材124から遠ざかる位置(図2参照)に移動するようになっている。そして、第2搬送部120に被検査物が移し替えられると、押さえ部材126が保持部材124に向かって移動することにより、保持部材124と押さえ部材126との間に被検査物が挟まれるようになっている(図3参照)。なお、押さえ部材126は、保持部材124と押さえ部材126との間で被検査物を挟持するような力を加えるものではなく、搬送時の振動等で被検査物が搬送ベルト122等に対して移動してしまわないよう位置決めすることを目的として設けられている。
また、押さえ部材126が複数の押さえ部分に分けられており、各押さえ部分がそれぞれ独立して保持部材124に近づく方向および保持部材124から遠ざかる方向に沿って移動することができるようになっていてもよい。また、第1搬送部110に、保持部材124および押さえ部材126と同様の構成のものが取り付けられていてもよい。
また、検査装置10には投入部(図示せず)が設けられており、この投入部から被検査物が1枚ずつ第1搬送部110に投入されるようになっている。なお、作業者が手で1枚ずつ第1搬送部110に被検査物を投入するようにしてもよい。
また、図1および図2に示すように、検査装置10には、第1搬送部110の移し替え位置(図1において参照符号Uで表示)から、第2搬送部120に被検査物を移し替える移し替え機構300が設けられている。このような移し替え機構300としては、例えば、ロボットアーム等を用いたものが挙げられる。また、移し替え機構300は、被検査物の両側部を保持して持ち上げることにより第1搬送部110から第2搬送部120に被検査物を移し替えるようになっている。このため、一対の搬送ベルト112について上述したように、被検査物の両側部以外の箇所が製品となる領域であり、被検査物を搬送するための機構が当該領域に触れてしまうと問題がある場合でも、被検査物のうち製品となる領域を傷つけずに被検査物を移し替えることができる。
また、第1搬送部110および第2搬送部120において、薄板状の被検査物は両側部を支持された状態で搬送されるため、被検査物の剛性が低く撓みやすいものである場合に被検査物は自重により撓んでしまう(図2参照)。ここで、図2における参照符号tは平坦な状態を基準とした被検査物の撓み量を概略的に示すものであり、水平面に対して傾斜させる角度が変化すると自重により撓む量も変化するようになっている。より具体的には、水平面に沿った姿勢で搬送されるときに自重による撓み量が最大値となり、0~90度の範囲において水平面に対する角度が大きいほど自重による撓み量が小さくなる。言い換えると、被検査物の水平面に対する傾斜角度を大きくすることにより、断面二次半径の増加、および部材全体での断面二次モーメントが増加するため、被検査物の自重による撓みを抑制することができる。
また、図1および図3に示すように、検査装置10の撮像部200は、第2搬送部120により水平面に対して傾斜した姿勢で搬送される被検査物を撮像して画像データを取得するようになっている。また、撮像部200は一対のカメラ210、220を有しており、各カメラ210、220により取得された画像データは後述する制御部500に送られるようになっている。また、各カメラ210、220は、それぞれ被検査物の一方の面または他方の面を撮像するようになっている。また、各カメラ210、220は、それぞれ傾斜している第2搬送部120の搬送面に直交する方向を向いた状態で被検査物を撮像して画像データを取得するようになっている(図3参照)。また、カメラ210の光軸と、カメラ220の光軸とが一致するよう各カメラ210、220が配置されている。
なお、第2搬送部120により搬送される被検査物は、撮像部200により画像データが取得される領域(図1等において参照符号Cで表示)を通過した後、後述する排出機構410により第2搬送部120から排出される排出位置(図1において参照符号Hで表示)で停止させられるようになっている(図1参照)。
また、各カメラ210、220は、各々がその構成(例えば、レンズの絞り値、焦点距離、撮像距離等)から決定される所定の深さ(距離)の被写界深度を有している。図3では、各カメラ210、220の被写界深度が参照符号Dにより示されている。また、被写界深度とは、ピントが正確に合った位置から被写体(ここでは被検査物)が光軸(図3において参照符号Kで表示)方向にずれたとしても、ピントが合っているように見える範囲のことを指す。他の表現をすると、被写界深度とは、取得された画像データの中でピントが合っていると判断することができる一定の範囲のことである。例えば、図3に示す例では、被検査物の撓み量tが各カメラ210、220の被写界深度Dよりも小さく、かつ各カメラ210、220の被写界深度の内側に被検査物が位置しているため、この状態で取得された画像データは、被検査物の全ての箇所にピントが合っているように見えるものとなる。この場合には、各カメラ210、220により取得された画像データに基づく外観検査を正常に行うことができる。一方、被検査物の撓み量tが各カメラ210、220の被写界深度Dよりも大きい場合には、少なくとも被検査物の一部が被写界深度の外側に位置してしまうため、取得された画像データにおける被検査物の一部にピントが合わない箇所が生じてしまう。この場合には、各カメラ210、220により取得された画像データの被検査物の一部がぼやけてみえるため、画像データに基づく外観検査を正常に行うことができない場合があるという問題がある。
本実施の形態による検査装置10は、各カメラ210、220の被写界深度と、水平面に対する傾斜角度に応じた被検査物の撓み量とに基づいて、水平面に対する第2搬送部120の搬送面の傾斜角度を予め設定することにより、このような問題を解決することができるようになっている。言い換えると、第2搬送部120により水平面に対して傾斜した姿勢で搬送される被検査物の撓み量が、各カメラ210、220の被写界深度よりも小さくなるよう(すなわち、各カメラ210、220により取得された画像データにおける被検査物の全ての箇所にピントが合うよう)、第2搬送部120の搬送面の水平面に対する傾斜角度が予め設定されるようになっている。
上述のように第2搬送部120の傾斜角度を設定する方法としては、例えば被検査物に係る情報に基づいて行うシミュレーションを利用する方法がある。より具体的には、水平面に対する傾斜角度に応じた被検査物の自重による撓み量を予め計算しておき、被検査物の自重による撓み量が各カメラ210、220の被写界深度よりも小さくなるよう、第2搬送部120の搬送面の傾斜角度を設定する方法が考えられる。なお、シミュレーション結果のみに基づいて第2搬送部120の搬送面の水平面に対する傾斜角度を設定する構成のみに限定されることはない。例えば、シミュレーション結果に基づいて第2搬送部120の搬送面の傾斜角度を仮決定しておき、各カメラ210、220により取得される、仮決定された傾斜角度で搬送された被検査物の画像データに基づいて、第2搬送部120の搬送面の傾斜角度を変更(設定)するようにしてもよい。
なお、自重による撓み量を最小とすることのみを目的とした場合には、被検査物を鉛直面に沿って搬送しながら各カメラ210、220により画像データを取得することが好ましい。しかしながら、この場合には、搬送中の振動や空気による影響を受けやすく、各カメラ210、220に対する被検査物の位置がずれやすくなってしまう傾向がある。本実施の形態においては、自重による撓みを軽減するとともに、各カメラ210、220により被検査物を撮像する際の被検査物の位置ずれを小さくするため、水平面に対する被検査物の傾斜角度を80度以上かつ90度未満となるよう設定している。なお、被検査物の撓み量が各カメラ210、220の被写界深度よりも小さくなる角度であれば、搬送部100の水平面に対する傾斜角度を80度以上かつ90度未満ではない他の角度としてもよい。
また、検査装置10には排出部400が設けられており、排出部400は、排出機構410と、正常品排出部420と、異常品排出部430とを備えている。また、排出機構410は上述した移し替え機構300と略同一の構成を有しており、正常品排出部420および異常品排出部430は上述した第1搬送部110と略同一の構成を有している。このような排出機構410により、外観検査において異常がない(正常である)と判断された被検査物が第2搬送部120から正常品排出部420に移し替えられるようになっている。一方、外観検査において異常があると判断された被検査物は、排出機構410により第2搬送部120から異常品排出部430に移し替えられるようになっている。また、正常品排出部420または異常品排出部430に移し替えられた被検査物は、それぞれ正常品集積部(図示せず)または異常品集積部(図示せず)に搬送されて集積されるようになっている。
なお、排出部400により、外観に異常があると判定された被検査物および外観に異常がないと判定された被検査物の両方を第2搬送部120からそれぞれ移し替えるような構成に限定されることはない。例えば、外観に異常がないと判定された被検査物については第2搬送部120によりそのまま正常品集積部に搬送して集積させるようにし、外観に異常があると判定された被検査物についてのみ排出部400により第2搬送部120から異常品排出部430に移し替えるようにしてもよい。
また、検査装置10には制御部500(図4参照)が設けられており、当該制御部500には、搬送部100(具体的には、第1搬送部110および第2搬送部120)、撮像部200、移し替え機構300、および排出部400(具体的には、排出機構410、正常品排出部420および異常品排出部430)が接続されている。また、検査装置10の各構成要素は、制御部500から送られる指令信号により制御されるようになっている。また、撮像部200により取得された画像データが制御部500に送られるようになっており、制御部500は、撮像部200により取得された画像データに基づいて被検査物の外観検査を行うようになっている。このような外観検査としては、例えば、取得された画像のコントラスト等に基づいて被検査物の外観に異常があるか否かについて判断する方法がある。しかしながら、検査装置10の記憶部(図示せず)や検査装置10とは別個に設けられたサーバー等に記録された画像データと各カメラ210、220により取得された画像データを比較することにより、被検査物の外観に異常があるか否かについて判断するようにしてもよい。
次に、上述した本実施の形態による検査装置10により被検査物の外観検査が行われる際の動作の流れについて図5に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、投入部(図示せず)により、外観検査されるべき被検査物が第1搬送部110に1枚ずつ投入されると、投入された被検査物は第1搬送部110により移し替え位置(図1において参照符号Uで表示)まで搬送される(STEP1)。なお、検査装置10に投入部を設ける代わりに、作業者が1枚ずつ被検査物を第1搬送部110に投入するようにしてもよい。次に、移し替え機構300により、第1搬送部110の移し替え位置に位置する被検査物が第2搬送部120に移し替えられる(STEP2)。そして、各カメラ210、220により、第2搬送部120によって水平面に傾斜した姿勢で搬送される被検査物が撮像されて画像データが取得される(STEP3)。上述したように、第2搬送部120の搬送面の水平面に対する傾斜角度が予め適切な値に設定されているため、取得された画像データにおける被検査物の全ての箇所にピントが合うようになっている。
その後、制御部500により、各カメラ210、220による取得された画像データに基づいて被検査物の外観検査が行われる(STEP4)。なお、各カメラ210、220により撮像された被検査物は第2搬送部120によりそのまま搬送され、排出位置(図1において参照符号Hで表示)において停止させられる。そして、制御部500により被検査物の外観に異常がないと判定された場合には(STEP5のNo)、被検査物は正常品であると判定される。また、正常品であると判定された被検査物は、排出機構410により第2搬送部120から正常品排出部420に移し替えられ(STEP6)、その後正常品集積部に集積させられるようになっている(STEP7)。一方、制御部500により被検査物の外観に異常があると判定された場合には(STEP5のYes)、被検査物は異常品であると判定される。また、異常品であると判定された被検査物は、排出機構410により第2搬送部120から異常品排出部430に移し替えられ(STEP8)、その後異常品集積部に集積させられるようになっている(STEP9)。このようにして、被検査物の外観検査が完了する。
ここで、比較対象として、従来の検査装置90について図6を参照して説明する。図6に示される従来の検査装置90は、一対の搬送ベルト910により被検査物を水平面に沿って搬送しながら画像データを取得して外見検査を行っている。このため、被検査物が撓みやすいものである場合に外観検査を正常に行うことができない場合が生じるという問題があった。すなわち、従来の検査装置90において撓みやすい被検査物の外観検査を行う場合には、被検査物の撓み量が一対のカメラ920の被写界深度よりも大きくなってしまうことがあった。この場合には、各カメラ920により取得された被検査物の画像データにピントが合っていない箇所が発生してしまい、画像データに基づく外観検査を正常に行うことができないという問題があった。これに対し、本実施の形態の検査装置10によれば、薄板状の被検査物を水平面に対して傾斜した姿勢で搬送する搬送部(具体的には、第2搬送部120)と、搬送部により水平面に対して傾斜した姿勢で搬送される被検査物を撮像して画像データを取得する撮像部200と、撮像部200により取得された画像データに基づいて被検査物の外観検査を行う制御部500とを備えているため、高い剛性を有する撓みにくい被検査物および低い剛性を有する撓みやすい被検査物の両方を検査することができる。
また、従来の検査装置90では、被検査物が、複数のリードフレームが形成された金属板である場合には、水平面に沿って搬送される金属板の撓み量を各カメラ920の被写界深度よりも小さくするため、金属板の厚みや大きさを制限する必要があった。すなわち、金属板のサイズを大きくすると当該金属板が撓みやすくなってしまうため、金属板のサイズを大きくできないので1枚の金属板に形成されるリードフレームの個数を増やすことができず、リードフレームの生産性を向上させることができないという問題があった。また、金属板を薄くすると当該金属板が撓みやすくなってしまうため、リードフレームを軽量化することができないという問題があった。これに対し、上述した検査装置10は、被検査物を傾斜させることによって自重による撓み量を減少させるものであり、従来技術のように被検査物の厚みや大きさを制限する必要がないため、リードフレームの生産性向上や軽量化に対応することができる。
また、検査装置10a、10bとして、上述した検査装置10とは異なる構成の搬送部100a、100bを有するものが用いられるようになっていてもよい。以下、図7および図8を参照してこれらの検査装置10a、10bについて説明する。
図7に示す検査装置10aの搬送部100aは、水平面に沿って被検査物を搬送する第3搬送部130と、第3搬送部130に接続されており、水平面に対して傾斜した姿勢で被検査物を搬送する第4搬送部140とを有している。また、第3搬送部130から第4搬送部140に向かって搬送面の傾斜角度が連続的に変化するようになっている。このような検査装置10aの第3搬送部130、第4搬送部140の構成は、検査装置10の第1搬送部110および第2搬送部120の構成とそれぞれ略同一であるため、略同一の構成部材については同一の参照符号を付して説明を省略する。
また、第4搬送部140の搬送面の水平面に対する傾斜角度は、上述した検査装置10の第2搬送部120の搬送面の水平面に対する傾斜角度と同様に、被検査物に係る情報に基づいて予め設定されるようになっている。また、撮像部200は、第4搬送部140により搬送される被検査物を撮像して画像データを取得するとともに、取得された画像データを制御部500に送るようになっている。また、制御部500は、取得された画像データに基づいて被検査物の外観検査を行うようになっている。このような検査装置10aによっても、高い剛性を有する撓みにくい被検査物および低い剛性を有する撓みやすい被検査物の両方を検査することができるとともに、リードフレームの生産性向上や軽量化に対応することができる。また、検査装置10aでは、上述した検査装置10とは異なり移し替え機構300の設置を省略することができるため、装置全体の構成をよりシンプルなものとすることができる。
また、図8に示す検査装置10bは、水平面に対して常に所定の角度傾斜した搬送面を有する搬送部100bを備えるものである。また、搬送部100bの構成は、検査装置10の第2搬送部120の構成と略同一のものとなっている。このような検査装置10aの搬送部100bの構成は、検査装置10の第2搬送部120の構成とそれぞれ略同一であるため、略同一の構成部材については同一の参照符号を付して説明を省略する。
また、搬送部100bの搬送面の水平面に対する傾斜角度は、上述した検査装置10の第2搬送部120の搬送面の水平面に対する傾斜角度と同様に、被検査物に係る情報に基づいて予め設定されるようになっている。また、撮像部200は、搬送部100bにより搬送される被検査物を撮像して画像データを取得するとともに、取得された画像データを制御部500に送るようになっている。また、制御部500は、取得された画像データに基づいて被検査物の外観検査を行うようになっている。このような検査装置10bによっても、高い剛性を有する撓みにくい被検査物および低い剛性を有する撓みやすい被検査物の両方を検査することができるとともに、リードフレームの生産性向上や軽量化に対応することができる。また、検査装置10bでは、上述した検査装置10とは異なり移し替え機構300の設置を省略することができるため、装置の構成をよりシンプルなものとすることができる。また、搬送される被検査物の水平面に対する傾斜角度を変更する必要が無いため、被検査物を移し替える場合や被検査物の水平面に対する傾斜角度を変更する場合と比較して、より迅速に被検査物の外観検査を行うことができる。
〔第2の実施の形態〕
以下、図面を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。図9乃至図13は、本実施の形態による検査装置を説明するための図面である。このうち、図9(a)は、本発明の第2の実施の形態による検査装置の概略的な構成を示す上面図であり、図9(b)は、(a)に示す状態から水平方向に延びる軸を中心として撮像部と搬送部とを一体的に回転させたときの構成を概略的に示す上面図である。また、図10(a)(b)は、それぞれ、図9(a)(b)に示す状態の検査装置を図9に示す矢印B方向から見たときの概略的な構成を示す側面図であり、図11は、図9に示す検査装置の制御系の構成を示す機能ブロック図である。また、図12は、図9等に示す検査装置により被検査物の外観検査が行われるときの動作の流れを示すフローチャートであり、図13は、図9等に示す検査装置の他の構成における制御系の構成を示す機能ブロック図である。なお、図9および図10において、被検査物を参照符号Lで示している。
本実施の形態による検査装置10dは、上述した検査装置10、10a、10bと同様に、薄板状の被検査物の外観検査を行う際に用いられるようになっている。また、検査装置10dは、上述した検査装置10の搬送部100の第2搬送部120、撮像部200、排出部400(図示せず)、投入部(図示せず)と略同一の構成のものを含んでいるため、略同一の構成部材については同一の参照符号を付して説明を省略する。
図10等に示すように、検査装置10dは傾斜機構600を有しており、この傾斜機構600によって搬送部100dの搬送面が水平面に対して傾斜させられるようになっている。より具体的には、傾斜機構600は、水平方向に延びる軸602と、支持部材604とを有しており、搬送部100dおよび撮像部200の各構成部材は支持部材604を介して軸602に取り付けられるようになっている。また、傾斜機構600は、軸602を中心として、撮像部200と搬送部100dとを支持部材604ごと図10(a)に示す矢印方向に一体的に回転させることにより、搬送部100dの搬送面を水平面に対して傾斜させるようになっている(図10(b)参照)。このような傾斜機構600により、被検査物の撓み量が撮像部200の各カメラ210、220の被写界深度よりも小さくなるよう搬送部100dの搬送面の傾斜角度を設定することによって、被検査物の外観検査を行うことができるようになる。
被検査物の撓み量が撮像部200の各カメラ210、220の被写界深度よりも小さくなるよう搬送部100dの搬送面の傾斜角度を設定する方法として、図9乃至図11に示すような、被検査物の撓み量を検知する撓み量検知センサ610を利用する方法が考えられる。また、撓み量検知センサ610は検査装置10dの制御部500dに接続されており、撓み量検知センサ610により検知された情報が制御部500dに送られるようになっている。このような構成とすることにより、制御部500dは、撓み量検知センサ610により検知される撓み量が、撮像部200の各カメラ210、220の被写界深度よりも小さくなるように、搬送部100dの搬送面の水平面に対する傾斜角度を設定するよう傾斜機構600を制御することができるようになっている。
なお、図9等に示す例においては、撓み量検知センサ610は撮像部200の近傍に配置されているが、このような構成に限定されることはない。被検査物の搬送方向において撮像部200よりも上流の箇所であれば、撓み量検知センサ610を他の箇所に配置してもよい。
このような検査装置10dにより被検査物の外観検査を行う際の動作の流れについて図12に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、投入部(図示せず)により、搬送面が水平面に沿った状態の搬送部100dに外観検査されるべき被検査物が1枚ずつ投入される。そして、投入された被検査物は水平面に沿って撓み量検知センサ610の近傍まで搬送され、撓み量検知センサ610により被検査物の撓み量が検知される(STEP1)。次に、制御部500により、撓み量検知センサ610により検知された被検査物の撓み量が所定の値(具体的には、撮像部200の各カメラ210、220の被写界深度)よりも小さいか否かが判定される(STEP2)。このとき、撓み量検知センサ610により検知される被検査物の撓み量が所定の大きさよりも大きいと判定されると(STEP2のNo)、制御部500により、搬送部100dの搬送面の水平面に対する傾斜角度が所定の大きさだけ増加するよう傾斜機構600が制御される(STEP3)。なお、上述したように、搬送部100dと撮像部200は水平方向に延びる軸602を中心として一体的に回転するようになっている。
また、傾斜機構600により搬送部100dの搬送面の水平面に対する傾斜角度が所定の大きさだけ増加させられた後に、撓み量検知センサ610により被検査物の撓み量が再度検知される(STEP1)。そして、制御部500dにより、撓み量検知センサ610により検知された撓み量が所定の値よりも小さいか否かが再度判定される(STEP2)。このとき、撓み量検知センサ610により検知される被検査物の撓み量が所定の大きさよりも大きいと再度判定されると(STEP2のNo)、搬送部100dの搬送面の水平面に対する傾斜角度が所定の大きさだけ増加するよう傾斜機構600が制御される(STEP3)。このような動作は、撓み量検知センサ610により検知される被検査物の撓み量が所定の大きさよりも小さくなるまで繰り返し行われる。
このようにして、撓み量検知センサ610により検知される被検査物の撓み量が所定の大きさよりも小さいと判定されるようになると(STEP2のYes)、撮像部200により被検査物が撮像されて画像データが取得される(STEP4)。なお、上述した動作により、被検査物の撓み量は撮像部200の各カメラ210、220の被写界深度よりも小さくなっているため、取得された画像データは被検査物の全ての箇所にピントが合っているように見えるものとなる。また、各カメラ210、220により撮像された被検査物は、搬送部100dによりそのまま搬送され、排出部(図示せず)により排出される排出位置に停止させられるようになっている。また、撮像部200により取得された画像データは制御部500dに送られるようになっており、制御部500dは、この画像データに基づいて被検査物の外観検査を行う(STEP5)。
なお、水平面に沿って搬送される被検査物の撓み量が各カメラ210、220の被写界深度よりも小さい場合には、傾斜機構600により搬送部100dの搬送面を水平面に対して傾斜させる動作を省略することができる。
そして、制御部500dにより被検査物の外観に異常がないと判定された場合には(STEP6のNo)、被検査物は正常品であると判定される。また、正常品であると判定された被検査物は、排出部の排出機構により搬送部100dから正常品排出部に移し替えられ(STEP7)、その後正常品集積部に集積させられる(STEP8)。一方、制御部500dにより被検査物の外観に異常があると判定された場合には(STEP6のYes)、被検査物は異常品であると判定される。また、異常品であると判定された被検査物は、排出部の排出機構により搬送部100dから異常品排出部に移し替えられ(STEP9)、その後異常品集積部に集積させられるようになっている(STEP10)。このようにして、被検査物の外観検査が完了する。
また、同一の構成の被検査物の外観検査を連続して行う場合には、2つ目以降の被検査物を検査する際に傾斜機構600により搬送部100dの搬送面の傾斜角度を変更する必要はなく、上述したSTEP4以降の動作を行うようにすればよい。
また、撮像部200により水平面に対して傾斜した姿勢で搬送される被検査物の画像データを取得した後に、搬送部100dが水平面に沿って被検査物を搬送するよう、搬送部100dの搬送面の水平面に対する傾斜角度が変更されるようになっていてもよい。この場合には、排出機構として、ロボットアーム等を含まない、ピックアンドプレース方式の簡易な構成のものを使用することができる。
また、他の方法により、被検査物の撓み量が撮像部200の各カメラ210、220の被写界深度よりも小さくなるよう搬送部100dの搬送面の傾斜角度を設定するようにしてもよい。
例えば、撓み量検知センサ610が設けられていない検査装置10eが用いられるようになっていてもよい。より具体的には、撓み量検知センサ610により検知された撓み量に基づいて搬送部100dの搬送面の傾斜角度を制御する代わりに、撮像部200により取得された画像データに基づいて搬送部100dの搬送面の傾斜角度を制御するようにしてもよい。このような検査装置10eにより被検査物の外観検査を行う場合には、まず、水平面に沿って搬送される被検査物の画像データを取得し、この画像データにおける被検査物の全ての箇所にピントが合っているか否かを判定するようにする。例えば、被検査物の中央近傍の箇所や外周縁近傍の箇所に複数の目印を予め形成しておき、これらの目印全てにピントがあっているか否かを判定するようにしてもよい。また、取得された画像データにおいて、被検査物に形成された複数の目印のうちの少なくとも1つの目印にピントが合っていないと判定された場合には、搬送部100dの搬送面の水平面に対する傾斜角度が所定の大きさだけ増加するよう傾斜機構600が制御するようにする。このような動作を繰り返すことにより、撮像部200の各カメラ210、220により取得された画像データは、被検査物の全ての箇所にピントが合っているように見えるものとなる。そして、被検査物の全ての箇所にピントが合ったと判断されると、図12におけるSTEP5以降の動作を行うようにする。このような検査装置10eによっても、被検査物の外観検査を正常に行うことができる。
また、図13に示すような、被検査物の情報を入力するための入力部620と、入力部620から入力されるべき被検査物の情報と、水平面からの傾斜角度に対する被検査物の撓み量とを関連付けて記憶する記憶部630とを有する検査装置10fが用いられるようになっていてもよい。また、制御部500fにより、入力部620から入力された被検査物の情報および記憶部630に記憶された情報に基づいて、搬送部100dの搬送面の水平面に対する傾斜角度を設定するよう傾斜機構600が制御されるようになっていてもよい。ここで、入力部620により入力される被検査物の情報には、少なくとも材質、厚み、大きさが含まれる。また、被検査物の種類によっては、更に別の情報が入力部620により入力されるようになっていてもよい。例えば、被検査物が開口の形成された金属板(例えば、複数のリードフレームが形成された金属板)である場合には、当該金属板に設けられた開口の数および位置等についても入力するようにしてもよい。
このような検査装置10fにより被検査物の検査を行う場合には、作業者は、まず、入力部620により被検査物に係る情報を入力する。そして、制御部500fは、入力部620により入力された情報、記憶部630に記憶されている情報および撮像部200の各カメラ210、220の被写界深度に基づいて、撮像部200の各カメラ210、220の被写界深度よりも被検査物の撓み量が小さくなるよう、搬送部100dの搬送面の水平面に対する傾斜角度を設定するよう傾斜機構600を制御する。なお、各カメラ210、220の被写界深度に係る情報は入力部620から入力されるようになっていてもよいし、記憶部630に予め記憶させておくようにしてもよい。そして、被検査物の撓み量が各カメラ210、220の被写界深度よりも小さくなるよう搬送部100dの搬送面の水平面に対する傾斜角度が設定された後に、図12におけるSTEP5以降の動作を行うようにする。このような検査装置10fによっても、被検査物の外観検査を正常に行うことができる。
なお、入力部620から入力された情報および記憶部630に記憶された情報に基づいて、水平面に沿って搬送される被検査物の撓み量が各カメラ210、220の被写界深度よりも小さいものであると判定された場合には、傾斜機構600により搬送部100dの搬送面の水平面に対する傾斜角度を変更する手順を省略することができる。
また、入力部620から入力されるべき被検査物の情報と、水平面からの傾斜角度に対する被検査物の撓み量とを関連付けて記憶部630に記憶させておく代わりに、検査装置10fとは別個に設けられたサーバー等にこれらの情報を記憶させておくようにしてもよい。この場合には、検査装置10fとサーバーとが相互に通信可能となるよう構成し、検査装置10fが入力部620により入力された情報に基づいてサーバーと情報の送受信を行うことにより搬送部100dの搬送面の水平面に対する傾斜角度を設定するようにしてもよい。
以上のような構成からなる検査装置10d、10e、10fによれば、薄板状の被検査物を水平面に対して傾斜した姿勢で搬送する搬送部100dと、搬送部100dにより水平面に対して傾斜した姿勢で搬送される被検査物を撮像して画像データを取得する撮像部200と、撮像部200により取得された画像データに基づいて被検査物の外観検査を行う制御部500d、500e、500fとを備えているため、高い剛性を有する撓みにくい被検査物および低い剛性を有する撓みやすい被検査物の両方を検査することができる。また、被検査物を傾斜させることによって自重による撓み量を減少させるものであり、従来技術のように被検査物の厚みや大きさを制限する必要がないため、リードフレームの生産性向上や軽量化に対応することができる。
なお、各実施の形態による検査装置10、10a、10b、10d、10e、10fは、上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
例えば、一対の搬送ベルトにより被検査物が直接搬送される態様について上述したが、このような構成に限定されることはない。複数の枠体が所定の間隔をあけて搬送ベルトに設けられており、各々の枠体に被検査物が保持されることによって被検査物が搬送されるようになっていてもよい。
また、撮像部200として使用されるカメラは、上述した一対のカメラ210、220に限定されることはない。撮像部として、複数組の一対のカメラを用いるようにしてもよいし、被検査物の一方の面のみを撮像するカメラを用いるようにしてもよい。また、撮像部としてカメラ以外のものが用いられてもよい。