JP7185734B1 - ドーピングシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】ハウジング外への気化した電解液の漏出をより確実に防止することができるとともに、酸素濃度を適切な範囲でより容易に維持可能なドーピングシステムを提供する。【解決手段】ドーピングシステム1は、電極前駆体100に対しリチウムをドーピングするドープ装置2と、ドープ槽25や電極前駆体100などを内部に収容するためのメインハウジング31を具備するインナーハウジング3と、インナーハウジング3を覆うアウターハウジング4とを備える。そして、アウターハウジング4内に対しメインハウジング31内を正圧とし、ドライルーム201に対しアウターハウジング4内を負圧とすることが可能とされる。これにより、アウターハウジング4外のドライルーム201への気化した電解液の漏出をより確実に防止でき、また、酸素供給装置57及び不活性ガス供給装置58によりメインハウジング31内の酸素濃度を適切な範囲でより容易に維持可能となる。【選択図】 図5

Description

本発明は、電極前駆体に対しリチウムをドーピングするためのドーピングシステムに関する。
例えば、リチウムイオン電池等の二次電池やリチウムイオンキャパシタなどの蓄電デバイスは、表面に正極活物質を有する正電極、表面に負極活物質を有する負電極、及び、これら両電極を絶縁するセパレータ等を備えている。
また近年では、表面に活物質を有する電極前駆体に対しリチウムなどのアルカリ金属をドーピング(メッキ)して、正電極又は負電極としてのドープ電極を製造するドープ装置が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。ドープ装置は、例えば、支持手段(供給ロール)、ドープ槽(ドーピング槽)、搬送手段(搬送ローラ群)、対極部材(アルカリ金属含有板)及び巻取手段(巻取ロール)などを備えている。支持手段は、電極前駆体がロール状に巻回されてなる原反を支持する。ドープ槽は、アルカリ金属イオンや溶剤などを含んでなる電解液を収容する。搬送手段は、前記原反から繰り出された電極前駆体をドープ槽内の電解液中を通る経路で搬送する。対極部材は、導電性金属などからなり、ドープ槽内に収容される。巻取手段は、ドープ槽を経て得られたドープ電極を巻取る。このようなドープ装置では、搬送手段によって電極前駆体を前記電解液中を通る経路で搬送しながら、電極前駆体及び対極部材間に電流を流すことで、電極前駆体にアルカリ金属がドーピングされる。
また、ドープ槽に収容される電解液においては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC),エチレンカーボネート(EC)などの可燃性を有する有機溶媒が溶剤として用いられることがある。しかしながら、このような電解液は、電極前駆体及び対極部材間に流れる電流の影響などにより、発熱して気化するおそれがある。そこで、ドープ槽(メッキ槽)などをハウジングの内部に収容するとともに、ハウジング内を不活性ガス(窒素ガス)で満たすことにより、気化した電解液がハウジング外へ漏出することを防止しつつ、気化した電解液への引火を防止することが考えられる(例えば、特許文献2等参照)。
国際公開第2020/084949号 特開昭49-41239号公報
ところで、リチウムをドーピングするドープ装置においては、一般のメッキ装置と異なり、ハウジング内の酸素濃度を比較的狭い適切な範囲で制御する必要がある。これは、酸素濃度が前記範囲を超えると、気化した電解液へと引火するおそれがあり、一方、酸素濃度が前記範囲を下回ると、不活性ガス(窒素ガス)及びリチウムが反応しやすくなり、ドープ電極の品質低下を招き得るためである。
この点、上記特許文献2に係る技術によれば、ハウジング外に対しハウジング内を負圧とすることで、ハウジング外への気化した電解液の漏れ出しをより確実に抑えることができるが、ハウジング内を負圧とすれば、ハウジング内に大気(酸素)が流入しやすくなって、ハウジング内の酸素濃度を適切な範囲内で維持することが難しくなる。これに対し、ハウジング外に対しハウジング内を正圧とすれば、ハウジング外へと気化した電解液が漏出しやすくなって、ハウジングを設ける技術的意義が十分に発揮されなくなる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハウジング外への気化した電解液の漏出をより確実に防止することができるとともに、酸素濃度を適切な範囲でより容易に維持可能なドーピングシステムを提供することにある。
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
手段1.帯状の電極前駆体に対しリチウムをドーピングしてドープ電極を製造するためのドーピングシステムであって、
前記電極前駆体が巻回されてなる原反を支持する支持手段、少なくとも可燃性の溶剤を含んでなる電解液を収容するドープ槽、前記原反から繰り出された前記電極前駆体を前記ドープ槽内を通る経路で搬送する搬送手段、前記ドープ槽内に収容される対極部材、及び、前記ドープ槽を経て得られた前記ドープ電極を巻取る巻取手段を有し、前記電解液中に前記電極前駆体を配置した状態で該電極前駆体及び前記対極部材間に電流を流すことにより該電極前駆体に対しリチウムをドーピングすることが可能なドープ装置と、
少なくとも前記支持手段、前記ドープ槽及び前記巻取手段、並びに、前記支持手段から前記巻取手段にかけて位置する前記電極前駆体及び前記ドープ電極を内部に収容するメインハウジングを具備するインナーハウジングと、
前記インナーハウジングを覆うアウターハウジングと、
前記メインハウジング内に酸素を含む酸素含有ガスを供給する酸素供給手段と、
前記メインハウジング内に窒素を含む不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段とを備え、
前記アウターハウジング内に対し前記メインハウジング内を正圧とし、前記アウターハウジングの周囲に位置するハウジング外空間に対し前記アウターハウジング内を負圧とすることが可能に構成されていることを特徴とするドーピングシステム。
上記手段1によれば、ドーピングシステムはインナーハウジングと該インナーハウジングを覆うアウターハウジングとを備えており、インナーハウジングは、少なくとも支持手段、ドープ槽、巻取手段、並びに、支持手段から巻取手段にかけて位置する電極前駆体及びドープ電極を収容するメインハウジングを具備している。そして、アウターハウジング内(但し、インナーハウジング外)に対しメインハウジング内を正圧とする(メインハウジング内の気圧をアウターハウジング内の気圧よりも大きなものとする)ことが可能に構成されている。そのため、アウターハウジング内に対しメインハウジング内を正圧とすることで、アウターハウジング内からメインハウジング内に対する酸素などの気体の流入を抑えることができる。これにより、メインハウジング内に酸素含有ガスを供給する酸素供給手段と、メインハウジング内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段とを用いて、メインハウジング内の酸素濃度を比較的狭い適切な範囲でより容易に維持することができる。
また、アウターハウジングの周囲(外)に位置するハウジング外空間(例えばアウターハウジングの設置されるエリア)に対しアウターハウジング内を負圧とすることができるため、アウターハウジング内からハウジング外空間に対する気体の漏出を抑えることができる。その結果、アウターハウジング外への気化した電解液の漏出をより確実に防止することができる。
加えて、不活性ガス供給手段は、不活性ガスとして窒素を含むガスを供給するため、コスト面で有利となる。尚、メインハウジング内に窒素を供給する構成であっても、メインハウジング内の酸素濃度を適切な範囲に制御することで、メインハウジング内の窒素濃度を十分に低くすることができ、ひいては窒素及びリチウムの反応を抑制することができる。
手段2.前記インナーハウジングは、内部空間が前記メインハウジング内とは別に区画された防爆ハウジングを有し、
前記防爆ハウジング内の酸素濃度を前記メインハウジング内の酸素濃度よりも小さくし、かつ、前記メインハウジング内に対し前記防爆ハウジング内を正圧とすることが可能に構成されていることを特徴とする手段1に記載のドーピングシステム。
上記手段2によれば、メインハウジング内に対し防爆ハウジング内を正圧とすることが可能とされている。そのため、メインハウジング内から防爆ハウジング内に対し、気化した電解液が流入することをより確実に防止することができる。
加えて、上記手段2によれば、防爆ハウジング内の酸素濃度をメインハウジング内の酸素濃度よりも小さくすることが可能とされている。そのため、上記作用効果と相まって、防爆ハウジング内を、酸素濃度が十分に低い雰囲気であって、気化した電解液が非常に少ない環境とすることができる。従って、バルブ(後述する流量調節手段など)を駆動するための電磁弁マニホールド、各種センサのアンプ、各種スイッチのIO等といった「電気的接点が設けられた電気回路を備えてなる非防爆機器」の収納空間として防爆ハウジング内を利用することが可能となる。さらに、システムの煩雑化防止などを図るために、防爆ハウジング内においてバルブやセンサなどに係る配線の省配線を行い、少ない配線のみをインナーハウジングの外へと出すといったことも可能となる。
手段3.前記メインハウジング内の酸素濃度を計測する酸素濃度計測手段と、
前記酸素濃度計測手段により計測された酸素濃度に基づき、前記酸素供給手段及び前記不活性ガス供給手段を制御し、前記メインハウジング内の酸素濃度を調節可能な酸素濃度制御手段とを備えることを特徴とする手段1又は2に記載のドーピングシステム。
上記手段3によれば、酸素濃度制御手段によって、メインハウジング内の酸素濃度を自動的かつ精度よく適切な範囲で維持することができる。これにより、気化した電解液への引火を一層確実に防止することができるとともに、不活性ガス(窒素ガス)及びリチウムの反応抑制をより確実に図ることができる。
手段4.前記メインハウジング内及び前記アウターハウジング内を連通する内外連通部と、
前記内外連通部に設けられ、前記メインハウジング内から前記アウターハウジング内へと流れる気体の流量を調節可能な流量調節手段と、
前記メインハウジング内の圧力を計測する圧力計測手段と、
前記圧力計測手段により計測された圧力に基づき前記流量調節手段を制御することで、前記アウターハウジング内に対する前記メインハウジング内の圧力を調節可能な圧力制御手段とを備えることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のドーピングシステム。
上記手段4によれば、圧力制御手段によって、自動的にアウターハウジング内に対しメインハウジング内を正圧とすることができる。これにより、アウターハウジング内からメインハウジング内に対する酸素などの気体の流入をより確実に抑えることができる。
手段5.前記アウターハウジング内のガスを外部に排気する排気手段を備えることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載のドーピングシステム。
上記手段5によれば、排気手段によってアウターハウジング内のガスを外部(例えば、建物の外)に排出することで、ハウジング外空間に対しアウターハウジング内を負圧とすることがより確実に可能となる。
手段6.前記ドープ装置は、可燃性の洗浄液を収容する洗浄槽を有し、
前記搬送手段は、前記ドープ槽内を経て得られた前記ドープ電極を前記洗浄槽内を通る経路で搬送するように構成されており、
前記メインハウジングは、前記洗浄槽を内部に収容するように構成されていることを特徴とする手段1乃至5のいずれかに記載のドーピングシステム。
上記手段6によれば、洗浄槽に収容された洗浄液を用いてドープ電極を洗浄することができる。これにより、ドープ電極の品質向上を図ることができる。
一方、洗浄液は可燃性であるため、気化した洗浄液への引火防止を図るべきであるところ、上記手段6によれば、メインハウジングは洗浄槽を内部に収容した状態とされている。従って、気化した電解液と同様、気化した洗浄液がアウターハウジング外へと漏出することをより確実に抑制できる。
手段7.前記ドープ装置は、前記搬送手段による前記電極前駆体の搬送経路に沿って前記ドープ槽よりも上流に位置するとともに、少なくとも可燃性の溶剤を含んでなる電解液を収容するプリウェット槽を有し、
前記搬送手段は、前記電極前駆体を前記プリウェット槽内を通る経路で搬送するように構成されており、
前記メインハウジングは、前記プリウェット槽を内部に収容するように構成されていることを特徴とする手段1乃至6のいずれかに記載のドーピングシステム。
上記手段7によれば、プリウェット槽に収容された電解液を用いて、ドーピング前の電極前駆体を湿潤させることができる。これにより、電極前駆体に対するリチウムのドーピングをより効果的に行うことができる。
また、メインハウジングはプリウェット槽を内部に収容した状態とされているため、プリウェット槽の電解液が気化したとしても、この気化した電解液がアウターハウジング内からハウジング外空間に漏出することをより確実に防止できる。
電極前駆体の平面模式図である。 図1のJ-J線断面模式図である。 ドープ電極の断面模式図である。 ドーピングシステムの斜視模式図である。 ドープ装置などの概略構成を示すための図4のK-K線断面模式図である。 気体制御システムの構成を示すブロック図である。 ドープ槽などの拡大模式図である。 インナーハウジングの斜視模式図である。 インナーハウジングなどの概略構成を示すための図4のL-L線断面模式図である。 製造対応制御の実行に伴うバルブの状態を示す断面模式図である。 供給対応制御において操出側原反室の酸素濃度を調節するときのバルブの状態を示す断面模式図である。 供給対応制御において操出側原反室の酸素濃度が適正値になったときのバルブの状態を示す断面模式図である。 取外対応制御において巻取側原反室の酸素濃度を調節するときのバルブの状態を示す断面模式図である。 取外対応制御において巻取側原反室の酸素濃度が適正値になったときのバルブの状態を示す断面模式図である。 供給対応工程のフローチャートである。 取外対応工程のフローチャートである。
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、ドープ装置によってリチウムがドーピングされる対象である電極前駆体について説明する。
〔1.電極前駆体100〕
図1に示すように、電極前駆体100は帯状をなしている。電極前駆体100は、図2に示すように、帯状の集電体101と、該集電体101の表面及び裏面に形成された活物質層102とを備えている。
集電体101は、例えば所定の金属(例えば、銅、ニッケル、ステンレス等)からなる金属箔により構成されている。尚、集電体101として、前記金属箔の表面に炭素材料を主成分とする導電層が形成されたものを用いてもよい。
活物質層102は、リチウムイオンの挿入/離脱を利用する電池又はキャパシタに適用可能な活物質を含んでおり、本実施形態では負極活物質を含んでいる。負極活物質としては、例えば、黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、黒鉛粒子を樹脂等の炭化物で被覆してなる炭素材料などを挙げることができる。負極活物質は、単一の物質からなるものであってもよいし、複数の物質を混合してなるものであってもよい。
活物質層102は、例えば、負極活物質及びバインダーなどを含むスラリーを集電体101上に塗布した上で、該スラリーを乾燥させることにより形成することができる。尚、バインダーとしては、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)などのゴム系バインダー等を挙げることができる。また、前記スラリーは、活物質及びバインダー以外の成分(例えば、カーボンブラック、黒鉛、導電材、増粘剤など)を含むものであってもよい。
〔2.ドープ電極〕
次に、電極前駆体100にリチウムをドーピングしてなるドープ電極について説明する。
ドープ電極110は、電極前駆体100にリチウムをドーピング(めっき)することで形成されるものであり、例えば、図3に示すように、リチウム被膜103を備えている。本実施形態において、ドープ電極110は、リチウムイオン電池又はリチウムイオンキャパシタにおける負電極として用いられものである。このような用途のドープ電極110において、リチウムを予めドーピングしておくのは次の理由による。
すなわち、リチウムイオン電池及びリチウムイオンキャパシタは、巻回又は積層された正電極、負電極及びセパレータを所定のケースに収容した上で、該ケース内に電解液を収納し、その後、初期充放電を行うことで製造される。尚、正電極としては、例えば、アルミニウム等からなる基材に対し正極活物質(例えば、マンガン酸リチウム粒子等)を塗布したものが用いられる。
ここで、リチウムがドーピングされてない負電極を用いた場合には、初回充放電に伴い、負電極の表面に、リチウムを含むリチウム膜が形成される。このリチウム膜は、分解不能な不可逆膜である。そのため、リチウム膜の形成に伴い両電極間を移動可能なリチウムイオンが減少し、電池容量の低下を招く。
これに対し、予めリチウムをドーピングしてなる負電極を用いた場合には、初回充放電に伴う前記リチウム膜の形成が防止され、初回電池容量の低下が抑制される。また、予めドーピングを行うことで、電池容量の急速な低下が生じるまでの充放電サイクル数が増大し、電池やキャパシタの長寿命化が図られる。このような有利な効果を得るべく、リチウムのドーピングが予め行われる。
〔3.ドーピングシステム〕
次いで、電極前駆体100に対しリチウムをドーピングしてドープ電極110を製造するためのドーピングシステムについて説明する。図4に示すように、ドーピングシステム1は、所定のドライルーム201における床部202上に設置されている。ドーピングシステム1は、図5,6に示すように、ドープ装置2、インナーハウジング3、アウターハウジング4及び気体制御システム5を有している。
ドープ装置2は、電極前駆体100に対しリチウムをドーピングする機能を有し、ドープ電極110の製造を主に担う装置である。インナーハウジング3及びアウターハウジング4は、ドープ装置2を覆い、ドープ装置2の稼働による影響がドライルーム201(正確にはドライルーム201のうちアウターハウジング4の外に位置する空間)に及ぶことを防止して、該ドライルーム201における雰囲気を作業者などにとって適切な環境で維持するためのものである。気体制御システム5は、インナーハウジング3内及びアウターハウジング4内における酸素濃度や気圧といった気体に係る状態をコントロールするためのものである。
〔4.ドープ装置2〕
まず、図5を参照してドープ装置2について説明する。ドープ装置2は、所定経路を通るように電極前駆体100及びドープ電極110を搬送するための複数の搬送ロール21を備えている。また、ドープ装置2は、電極前駆体100及びドープ電極110の搬送経路に沿って、上流側から順に、支持装置22、終端検出センサ23、プリウェット槽24、ドープ槽25、洗浄槽26、乾燥装置27、始端検出センサ28及び巻取装置29を備えている。本実施形態では、搬送ロール21、支持装置22及び巻取装置29が「搬送手段」を構成する。また、支持装置22が「支持手段」を構成し、巻取装置29が「巻取手段」をそれぞれ構成する。
搬送ロール21は、自由回転可能であって電極前駆体100又はドープ電極110が掛装されている。複数の搬送ロール21のうちの一部は、プリウェット槽24、ドープ槽25又は洗浄槽26の内部に配置可能であり、この搬送ロール21によって、電極前駆体100及びドープ電極110を各槽24~26内にて折り返し可能である。そのため、電極前駆体100及びドープ電極110を、各槽24~26内に入った後、各槽24~26内に位置する搬送ロール21を経て、各槽24~26から出る経路で搬送することができる。
また、ドープ槽25の鉛直上方に配置される複数の搬送ロール21は、給電ロール21aを構成している。給電ロール21aには、ドープ槽25に入る直前又はドープ槽25を出た直後の電極前駆体100又はドープ電極110が掛装されている。そして、給電ロール21aのうち少なくとも電極前駆体100又はドープ電極110が掛装される部位は、導電性の材料により構成されるとともに、所定の直流電源(不図示)のマイナス極と接続されている。尚、給電ロール21aとドープ槽25内に配置された搬送ロール21とによって、ドープ槽25に対応する電極前駆体100の搬送経路は、複数回折り返された経路とされている。従って、電極前駆体100は、ドープ槽25内に繰り返し出入り可能である。
さらに、給電ロール21aとの間で電極前駆体100又はドープ電極110を挟む位置には、自由回転可能な押圧ロール21bが設けられている。押圧ロール21bは、電極前駆体100又はドープ電極110を給電ロール21a側へと押圧する。これにより、給電ロール21aと電極前駆体100又はドープ電極110とをより安定した状態で電気的に接続することが可能となっている。尚、給電ロール21a以外の搬送ロール21と押圧ロール21bとは、軸受部分を除き、所定の絶縁性材料(例えば絶縁性エラストマーなど)により形成されている。
支持装置22は、電極前駆体100がロール状に巻回されてなる原反105を支持しており、ここから繰り出された電極前駆体100が前記経路を通って搬送される。支持装置22は、原反105を支持する支持軸22aと、該支持軸22aを回転させるための繰出モータ(不図示)とを備えている。本実施形態では、前記繰出モータの駆動により原反105から電極前駆体100が繰り出される。
また、本実施形態において、前記繰出モータは所定のケース(図示せず)に収容されており、該ケース内に対し、気体制御システム5の後述する不活性ガス供給装置58から、主に窒素からなる不活性ガスが供給されている。この不活性ガスの供給により、ケース外に対しケース内を正圧とすることができ、ひいてはケース内への酸素や気化した電解液などの流入を防止可能となっている。
終端検出センサ23は、原反105から繰り出される電極前駆体100の終端を検出するためのものである。この終端は、支持装置22へと新たな原反105を供給する際に、該原反105における電極前駆体100の始端を接続する対象となる。本実施形態において、終端検出センサ23は、支持装置22により支持された原反105の巻き径(外径)を把握可能なセンサにより構成されている。この巻き径が予め設定された所定値以下となったときに、終端検出センサ23から後述する制御装置59に対し前記終端を検出した旨の信号が送られる。
プリウェット槽24は、上部が開口した槽であり、内部に電解液を収容している。電解液については後述する。プリウェット槽24は、所定の昇降装置24aによって上下動可能とされている。
前記昇降装置24aによりプリウェット槽24が所定の上方位置に配置された状態においては、プリウェット槽24に収容された電解液中に電極前駆体100の搬送経路が位置する状態となり、搬送される電極前駆体100は電解液中を通過する。電解液中を電極前駆体100が通過することで、電極前駆体100が電解液で湿潤される。一方、前記昇降装置24aによりプリウェット槽24が所定の下方位置に配置された状態においては、プリウェット槽24に収容された電解液の外に電極前駆体100の搬送経路が位置した状態となる。
電解液は、リチウムイオン及び可燃性の溶剤(溶媒)を含む。リチウムイオンは、リチウム塩を構成するイオンである。リチウム塩を構成するアニオン部としては、六フッ化リン酸アニオン(PF6-)、PF3(C2F5)3-、PF3(CF3)3-などのフルオロ基を有するリンアニオンなどを挙げることができる。尚、PF6-などは化学式を示すものである。また、各化学式において、数字は正確には下付き数字であり、“-”は正確には上付き記号であるが、便宜上、下付き数字及び上付き記号とはせずに示している。
また、電解液におけるリチウム塩の濃度は、0.1モル/L以上であることが好ましい。本実施形態においては、リチウムのドーピングを効率よく行うべく、電解液におけるリチウム塩の濃度は0.8~1.5モル/Lとされている。
さらに、電解液を構成する溶剤(溶媒)としては、有機溶媒を挙げることができ、有機溶媒としては、非プロトン性の有機溶媒を挙げることができる。非プロトン性の有機溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC),エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、1-フルオロエチレンカーボネート、γ-ブチロラクタンなどを挙げることができる。尚、有機溶媒は、単一の成分からなるものであってもよいし、複数成分を混合してなるものであってもよい。本実施形態において、電解液の溶剤(溶媒)は、DMC、EMC及びECがそれぞれ同量ずつ混合されてなる。
尚、電解液は、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1-(トリフルオロメチル)エチレンカーボネート、無水コハク酸、無水マレイン酸、プロパンスルトン、ジエチルスルホン等の添加物を含有するものであってもよい。また、電解液は、ホスファゼン化合物などの難燃剤を含有するものであってもよい。
ドープ槽25は、上部が開口した槽であり、内部に電解液を収容している。ドープ槽25に収容される電解液は、プリウェット槽24に収容される電解液と同一である。ドープ槽25は、プリウェット槽24と同様に、所定の昇降装置25aによって上下動可能とされている。
前記昇降装置25aによってドープ槽25が所定の上方位置に配置された状態においては、ドープ槽25に収容された電解液中に電極前駆体100の搬送経路が位置した状態となり、搬送される電極前駆体100が電解液中を通過する。一方、前記昇降装置25aによってドープ槽25が所定の下方位置に配置された状態においては、ドープ槽25に収容された電解液の外に電極前駆体100及びドープ電極110の搬送経路が位置した状態となる。
また、ドープ槽25には、ろ過循環装置(不図示)が設けられている。該ろ過循環装置には、ポンプ及びフィルタを有する循環路が設けられている。そして、ドープ槽25内の電解液は、前記ポンプにより圧送されて前記フィルタを通るように循環し、最終的にドープ槽25内に戻るようになっている。これにより、電解液に含まれる不純物の除去がなされている。尚、前記フィルタは、例えば、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂により形成することができる。また、上記ろ過循環装置を、プリウェット槽24や洗浄槽26に設けることとしてもよい。
加えて、ドープ槽25に対応して複数の対極ユニット251が設けられている。対極ユニット251は、導電性基材251a及び対極部材251bを備えている(図7参照)。
導電性基材251aは、銅、ステンレス、ニッケルなどの導電性金属により構成された板状部材である。導電性基材251aは、自身の上端部を図7の紙面直交方向に貫く支持棒(不図示)によって支持されており、その結果、対極ユニット251は、ドープ槽25の上下位置によることなく常に一定の高さ位置に配置されるようになっている。
対極部材251bは、所定厚さ(例えば0.03~3mm程度)を有する板状部材であり、リチウムを含む金属(例えばリチウムを主として含む合金など)により形成されている。対極部材251bは、導電性基材251aの側面に固定されている。
また、1組(2つ)の対極ユニット251において、対極部材251b同士は、所定の隙間をあけた状態で相対向しており、この隙間を通って電極前駆体100が搬送されるようになっている。対極部材251bと電極前駆体100(の搬送経路)との間の距離は、対極部材251bに対する電極前駆体100の接触を防止可能な大きさに設定される。
加えて、各対極ユニット251の所定部位(例えば導電性基材251aの上端部)は、前記直流電源のプラス極に接続されている。そのため、給電ロール21aに接する電極前駆体100と対極部材251bとの間に電位差を発生させることが可能となっている。そして、この電位差を利用し、ドープ槽25内の電解液中で電極前駆体100及び対極部材251b間に電流を流すことにより、電極前駆体100に対しリチウムがドーピングされる。電極前駆体100にリチウムがドーピングされることで、ドープ電極110が得られる。
尚、リチウムのドーピングの態様としては、リチウムをイオンの状態で活物質にインターカレーションさせる態様であってもよいし、リチウムの合金が形成される態様であってもよいし、リチウムイオンがSEI被膜となって消費される態様であってもよい。
洗浄槽26は、上部が開口した槽であり、内部に可燃性の溶剤(溶媒)を収容している。洗浄槽26に収容される溶剤としては、上述した、電解液を構成する溶剤を挙げることができる。洗浄槽26は、ドープ槽25などと同様に、所定の昇降装置26aによって上下動可能とされている。
前記昇降装置26aにより洗浄槽26が所定の上方位置に配置された状態においては、洗浄槽26に収容された溶剤中にドープ電極110の搬送経路が位置した状態となり、搬送されるドープ電極110が溶剤中を通過する。溶剤中をドープ電極110が通過することで、ドープ電極110の表面に付着した不純物の除去等がなされ、ドープ電極110が洗浄される。一方、前記昇降装置26aによって洗浄槽26が所定の下方位置に配置された状態においては、洗浄槽26に収容された溶剤の外にドープ電極110の搬送経路が位置した状態となる。
乾燥装置27は、ドープ電極110に付着した溶剤を気化させて、ドープ電極110を乾燥させる。乾燥装置27は、ドープ電極110の搬送経路に沿って設けられた複数の吹き出し口を備えており、これら吹き出し口から、主に窒素からなる不活性ガスをドープ電極110に向けて吹き付けることで、ドープ電極110を乾燥させる。尚、ドープ電極110を乾燥させるための不活性ガスは、後述する不活性ガス供給装置58から供給される。
始端検出センサ28は、巻取装置29によって次に巻取られる新たな原反105に係る電極前駆体100(ドープ電極110)の始端を検出するためのものである。この始端は、巻取装置29に対して固定される。始端検出センサ28は、巻取装置29により巻取られたドープ電極110の巻き径(外径)を把握可能なセンサにより構成されている。この巻き径が予め設定された所定値以上となったときに、始端検出センサ28から後述する制御装置59に対し前記始端を検出した旨の信号が送られる。
巻取装置29は、ドープ槽25を経て得られたドープ電極110を巻取るための装置であり、巻取軸29aと該巻取軸29aを回転させるための巻取モータ(不図示)とを備えている。巻取軸29aは、例えば、チャックなど、新たな原反105における電極前駆体100(ドープ電極110)の始端を自身へと固定するための手段を備えている。そして、巻取軸29aに前記始端を固定した状態で前記巻取モータの駆動により巻取軸29aが回転することによって、ドープ電極110が巻取られるようになっている。
また、前記巻取モータは、前記操出モータと同様に、所定のケース(図示せず)に収容されており、該ケース内に対する気化した電解液の流入などを防止すべく、該ケース内に対し、後述する不活性ガス供給装置58から不活性ガスが供給されている。尚、不活性ガス供給装置58とは別に、前記操出モータ又は前記巻取モータを収容する各ケースに対し不活性ガスを供給する装置を別途設けてもよい。
〔5.インナーハウジング3〕
次に、インナーハウジング3について説明する。インナーハウジング3は、アウターハウジング4よりも内側においてドープ装置2を覆い、内部にドープ装置2を収容するハウジングである。つまり、インナーハウジング3内の空間である内部屋3sは、ドープ装置2の配置空間として機能する。インナーハウジング3は、メインハウジング31及び防爆ハウジング32(図8,9参照)を備えている。尚、図9では、ドープ装置2を簡略化して示している。
〔5-1.メインハウジング31〕
メインハウジング31は、ドープ装置2における主要な装置と、該装置による処理の対象となる電極前駆体100及びドープ電極110とを内部に収容する。つまり、メインハウジング31は、少なくとも支持装置22、プリウェット槽24、ドープ槽25、洗浄槽26、乾燥装置27及び巻取装置29、並びに、支持装置22から巻取装置29にかけて位置する電極前駆体100及びドープ電極110を内部に収容する。メインハウジング31は、電極前駆体100及びドープ電極110の搬送経路に沿って上流側から順に、操出側ハウジング311、第一中間ハウジング312、ドープ処理ハウジング313、第二中間ハウジング314及び巻取側ハウジング315を備えている。
操出側ハウジング311は、電極前駆体100の操り出しが行われる位置に対応して設けられたハウジングである。操出側ハウジング311は、少なくとも支持装置22及び該支持装置22により支持された原反105を内部に収容する。
また、操出側ハウジング311における所定部位(例えば、天井部分)には、操出側内外連通部311aが形成されている。操出側内外連通部311aは、操出側ハウジング311の内部空間である操出側原反室311sと、後述する第一コンポーネント41内(第一介在室41s)との間を連通する開口(空間)である。
さらに、操出側ハウジング311における所定部位(例えばドープ処理ハウジング313とは反対側に位置する壁部)には、出入口及び該出入口を密閉可能な扉(それぞれ不図示)が設けられている。この出入口は、操出側原反室311sと後述する第一コンポーネント41内との間を連通しており、操出側原反室311sに対する作業者の出入りや原反105の搬入などに利用される。
第一中間ハウジング312は、操出側ハウジング311とドープ処理ハウジング313との間に設けられたハウジングである。支持装置22から繰り出された電極前駆体100は、第一中間ハウジング312の内部空間である第一中間連通室312sを通ってドープ槽25側へと搬送される。
また、第一中間ハウジング312における所定部位(例えば、天井部分)には、第一内外連通部312aが形成されている。第一内外連通部312aは、第一中間ハウジング312内(第一中間連通室312s)と後述する第三コンポーネント43内(第三介在室43s)との間を連通する開口(空間)である。
ドープ処理ハウジング313は、ドーピング処理が行われる位置に対応して設けられるハウジングである。本実施形態におけるドープ処理ハウジング313は、少なくともプリウェット槽24、ドープ槽25、洗浄槽26及び乾燥装置27を内部に収容する。ドープ処理ハウジング313の内部空間であるドープ処理室313sは、操出側ハウジング311内(操出側原反室311s)及び巻取側ハウジング315内(後述する巻取側原反室315s)とは別に区画されている。
また、ドープ処理ハウジング313における所定部位(例えば、天井部分)には、中央側内外連通部313aが形成されている。中央側内外連通部313aは、ドープ処理室313sと後述する第三コンポーネント43内(第三介在室43s)との間を連通する開口(空間)である。本実施形態において、中央側内外連通部313aは複数(例えば3つ以上)設けられている。本実施形態では、中央側内外連通部313aが「内外連通部」に相当する。
第二中間ハウジング314は、ドープ処理ハウジング313及び巻取側ハウジング315間に設けられたハウジングである。ドープ槽25を経て得られたドープ電極110は、第二中間ハウジング314の内部空間である第二中間連通室314sを通って巻取装置29側へと搬送される。
また、第二中間ハウジング314における所定部位(例えば、天井部分)には、第二内外連通部314aが形成されている。第二内外連通部314aは、第二中間ハウジング314内(第二中間連通室314s)と後述する第三コンポーネント43内(第三介在室43s)との間を連通する開口(空間)である。
巻取側ハウジング315は、ドープ電極110の巻取りが行われる箇所に対応して設けられたハウジングである。巻取側ハウジング315は、少なくとも巻取装置29及び該巻取装置29により巻取られたドープ電極110を内部に収容する。
また、巻取側ハウジング315における所定部位(例えば、天井部分)には、巻取側内外連通部315aが形成されている。巻取側内外連通部315aは、巻取側ハウジング315の内部空間である巻取側原反室315sと後述する第二コンポーネント42内(第二介在室42s)との間を連通する開口(空間)である。
さらに、巻取側ハウジング315における所定の壁部(例えばドープ処理ハウジング313とは反対側に位置する壁部)には、操出側ハウジング311と同様に、出入口及び該出入口を密閉可能な扉(それぞれ不図示)が設けられている。この出入口は、巻取側原反室315sと後述する第二コンポーネント42内(第二介在室42s)との間を連通しており、巻取側原反室315sに対する作業者の出入りや巻取られたドープ電極110の搬出などに利用される。
尚、本実施形態では、操出側原反室311s、第一中間連通室312s、ドープ処理室313s、第二中間連通室314s及び巻取側原反室315sによって、メインハウジング31の内部空間であるメイン部屋31sが構成されている。そして、メイン部屋31s及び防爆ハウジング32の内部空間(後述する防爆部屋32s)によって前記内部屋3sが構成されている。
〔5-2.防爆ハウジング32〕
防爆ハウジング32は、インナーハウジング3のうち、ドープ装置2における「電気的接点が設けられた電気回路を備えてなる非防爆機器」や各種配線などを内部に収容するためのハウジングである。防爆ハウジング32の内部空間である防爆部屋32s(図8,9参照)には、例えば、後述するバルブ群51~53を構成する各種バルブを駆動するための電磁弁マニホールド、後述する酸素濃度計測センサ群55や圧力計測センサ群56を構成する各センサのアンプ、各種スイッチのIO等の機器が配置されている。これら機器は、コスト低減や小型化などを図るべく、上記の通り非防爆機器である。尚、図9では、防爆部屋32sに配置される機器などの図示を省略している。
さらに、システムの煩雑化防止などを図るために、防爆部屋32sではバルブやセンサなどに係る配線の省配線がなされている。つまり、メイン部屋31sから防爆部屋32sに入る配線の数よりも、防爆部屋32sからその外に出る配線の数が少なくなるように、防爆部屋32sにて配線に係る処理がなされている。
また、本実施形態において、防爆ハウジング32は、操出側ハウジング311の側方位置から巻取側ハウジング315の側方位置にかけて設けられている(図8参照)。これにより、防爆部屋32sは、それぞれ壁部を介して操出側原反室311sに隣接する空間、ドープ処理室313sに隣接する空間及び巻取側原反室315sに隣接する空間を備えるとともに、これら空間が連続した状態となっている。従って、操出側原反室311s、ドープ処理室313s及び巻取側原反室315sから防爆部屋32sに対する配線の導入に係る構造の簡素化や、省配線に係る利便性の向上などを図ることが可能である。
加えて、防爆ハウジング32における所定部位(例えば、天井部分)には、防爆側内外連通部32aが形成されている(図9参照)。防爆側内外連通部32aは、防爆ハウジング32内(防爆部屋32s)と後述する第一コンポーネント41内(第一介在室41s)との間を連通する開口(空間)である。
尚、本実施形態において、基本的には、防爆ハウジング32内がメインハウジング31内から空間的に隔てられた状態となるように構成されている。但し、両ハウジング31,32に共通する壁部に設けられた、前記配線を通すための孔などの影響により、防爆ハウジング32内がメインハウジング31内から完全に空間的に隔てられた状態となっている訳ではない。すなわち、メインハウジング31内と防爆ハウジング32内との間において、気体の移動が僅かに生じ得る状態となっている。
〔6.アウターハウジング4〕
次いで、アウターハウジング4について説明する。アウターハウジング4は、インナーハウジング3を覆い、内部にインナーハウジング3を収容するハウジングである。アウターハウジング4内の空間である外部屋4sは、内部屋3s(インナーハウジング3の内部空間)とドライルーム201とを空間的に隔離する役割を有する。アウターハウジング4は、第一コンポーネント41、第二コンポーネント及び第三コンポーネント43を備えている。
第一コンポーネント41は、操出側ハウジング311を覆い、該操出側ハウジング311を内部に収容している。第一コンポーネント41の内部空間である第一介在室41sと操出側原反室311s(操出側ハウジング311の内部空間)とは、操出側内外連通部311aを除き空間的に隔てられた状態となっている。
第二コンポーネント42は、巻取側ハウジング315を覆い、巻取側ハウジング315を内部に収容している。第二コンポーネント42の内部空間である第二介在室42sと巻取側原反室315s(巻取側ハウジング315の内部空間)とは、巻取側内外連通部315aを除き空間的に隔てられた状態となっている。
第三コンポーネント43は、第一コンポーネント41及び第二コンポーネント42間に位置する。第三コンポーネント43は、ドープ処理ハウジング313を覆い、ドープ処理ハウジング313を内部に収容している。
第三コンポーネント43の内部空間である第三介在室43sは、第一介在室41s及び第二介在室42sとは別に区画されている。また、第三介在室43sとドープ処理室313s(ドープ処理ハウジング313の内部空間)とは、中央側内外連通部313aを除き空間的に隔てられた状態となっている。尚、各介在室41s,42s,43sとは、より正確には、コンポーネント41,42,43の内部空間のうちインナーハウジング3よりも外に位置する空間をいう。また、前記外部屋4sは第一介在室41s、第二介在室42s及び第三介在室43によって構成されている。
さらに、アウターハウジング4は、第一コンポーネント41内(第一介在室41s)と第三コンポーネント43内(第三介在室43s)との間に、第一外部屋隔壁部44を備えている。そして、第一外部屋隔壁部44における所定部位(例えば両ハウジング3,4の各天井部分の間に位置する部位)には、第一外部屋連通部44aが形成されている。第一外部屋連通部44aは、第一コンポーネント41内(第一介在室41s)と第三コンポーネント43内(第三介在室43s)との間を連通する開口(空間)である。尚、両介在室41s,43sは、第一外部屋連通部44aを除いて空間的に隔てられた状態となっている。
さらに、アウターハウジング4は、第二コンポーネント42内(第二介在室42s)と第三コンポーネント43内(第三介在室43s)との間に、第二外部屋隔壁部45を備えている。そして、第二外部屋隔壁部45における所定部位(例えば両ハウジング3,4の各天井部分の間に位置する部位)には、第二外部屋連通部45aが形成されている。第二外部屋連通部45aは、第二コンポーネント42内(第二介在室42s)と第三コンポーネント43(第三介在室43s)との間を連通する開口(空間)である。両介在室42s,43sは、第二外部屋連通部45aを除いて空間的に隔てられた状態となっている。
加えて、アウターハウジング4(第三コンポーネント43)における所定部位(例えば天井部分)には、排気用開口43aが形成されている。排気用開口43aは、所定のダクト46の内部空間を介して外部(インナーハウジング3内、アウターハウジング4内及びドライルーム201とは異なる空間であって、例えば屋外など)に通じている。これにより、第三介在室43sの気体を外部に排出可能となっている。
〔7.気体制御システム5〕
次いで、気体制御システム5について説明する。図6に示すように、気体制御システム5は、内部屋対応バルブ群51、内外対応バルブ群52、外部屋対応バルブ群53、排気装置54、酸素濃度計測センサ群55、圧力計測センサ群56、酸素供給装置57、不活性ガス供給装置58及び制御装置59を備えている。本実施形態では、排気装置54が「排気手段」を構成し、同様に、酸素濃度計測センサ群55が「酸素濃度計測手段」を、圧力計測センサ群56が「圧力計測手段」を、酸素供給装置57が「酸素供給手段」を、不活性ガス供給装置58が「不活性ガス供給手段」をそれぞれ構成する。
〔7-1.内部屋対応バルブ群51〕
内部屋対応バルブ群51は、メイン部屋31sを構成する各室311s,312s,313s,314s,315s間における気体の出入りを制御するためのものである。内部屋対応バルブ群51は、電極前駆体100及びドープ電極110の搬送経路に沿って設けられており、図5に示すように、第一上流バルブ511、第二上流バルブ512、第一下流バルブ513及び第二下流バルブ514を備えている。
第一上流バルブ511は、第一中間連通室312sにおける操出側ハウジング311側の開口に設けられており、操出側ハウジング311内(操出側原反室311s)と第一中間ハウジング312内(第一中間連通室312s)との間の連通、非連通を切換える機能を有する。第二上流バルブ512は、第一中間連通室312sにおけるドープ処理ハウジング313側の開口に設けられており、ドープ処理ハウジング313内(ドープ処理室313s)と第一中間ハウジング312内(第一中間連通室312s)との間の連通、非連通を切換える機能を有する。また、これら上流バルブ511,512によって、第一中間連通室312sにおける操出側ハウジング311内とドープ処理ハウジング313内との間の連通、非連通が切換可能とされている。
第一下流バルブ513は、第二中間連通室314sにおける巻取側ハウジング315側の開口に設けられており、巻取側ハウジング315内(巻取側原反室315s)と第二中間ハウジング314内(第二中間連通室314s)との間の連通、非連通を切換える機能を有する。第二下流バルブ514は、第二中間連通室314sにおけるドープ処理ハウジング313側の開口に設けられており、ドープ処理ハウジング313内(ドープ処理室313s)と第二中間ハウジング314内(第二中間連通室314s)との間の連通、非連通を切換える。また、これら下流バルブ513,514によって、ドープ処理ハウジング313内と巻取側ハウジング315内との間の連通、非連通を切換可能となっている。
尚、各バルブ511~514は、電極前駆体100又はドープ電極110をその厚さ方向に沿って上下から挟むことで、空間同士を非連通とすることが可能に構成されている。
〔7-2.内外対応バルブ群52〕
内外対応バルブ群52は、内部屋3sと外部屋4sとの間における気体の出入りを制御する。内外対応バルブ群52は、操出側内外バルブ521、第一中間内外バルブ522、中央側内外バルブ523、第二中間内外バルブ524、巻取側内外バルブ525及び防爆側内外バルブ526(図9参照)を備えている。
操出側内外バルブ521は、操出側内外連通部311aに設けられており、操出側内外連通部311aにおける操出側ハウジング311内(操出側原反室311s)と第一コンポーネント41内(第一介在室41s)との連通、非連通を切換可能とされている。また、操出側内外バルブ521は、開度を調節可能に構成されており、操出側内外連通部311aにおける操出側ハウジング311内から第一コンポーネント41内への気体の流れ(流量など)を調節する機能を備えている。
第一中間内外バルブ522は、第一内外連通部312aに設けられており、第一内外連通部312aにおける第一中間ハウジング312内(第一中間連通室312s)と第三コンポーネント43内(第三介在室43s)との間の連通、非連通を切換える機能を有する。
中央側内外バルブ523は、複数設けられており、それぞれ中央側内外連通部313aに設置されている。これら中央側内外バルブ523によって、中央側内外連通部313aにおけるドープ処理室313sと第三介在室43sとの間の連通、非連通を切換可能である。また、中央側内外バルブ523は、開度を調節可能に構成されており、ドープ処理室313sから第三介在室43sへの気体の流れ(流量など)を調節可能となっている。本実施形態では、中央側内外バルブ523によって、メインハウジング31内(メイン部屋31s)からアウターハウジング4内(外部屋4s)へと流れる気体の流量を調節可能な「流量調節手段」が構成されている。
第二中間内外バルブ524は、第二内外連通部314aに設けられており、第二内外連通部314aにおける第二中間ハウジング314内(第二中間連通室314s)と第三コンポーネント43内(第三介在室43s)との間の連通、非連通を切換可能とされている。
巻取側内外バルブ525は、巻取側内外連通部315aに設けられており、巻取側内外連通部315aにおける巻取側ハウジング315内(巻取側原反室315s)と第二コンポーネント42内(第二介在室42s)との間の連通、非連通を切換可能である。また、巻取側内外バルブ525は、開度を調節可能に構成されており、巻取側内外連通部315aにおける巻取側ハウジング315内から第二コンポーネント42内への気体の流れ(流量など)を調節する機能を備えている。
防爆側内外バルブ526は、防爆側内外連通部32aに設けられており、防爆側内外連通部32aにおける防爆ハウジング32内(防爆部屋32s)と第一コンポーネント41内(第一介在室41s)の連通、非連通を切換える機能を有する。
〔7-3.外部屋対応バルブ群53〕
外部屋対応バルブ群53は、外部屋4sを構成する各介在室41s~43s間における気体の出入りを制御する。外部屋対応バルブ群53は、第一外部屋バルブ531及び第二外部屋バルブ532を備えている。
第一外部屋バルブ531は、第一外部屋連通部44aに設けられており、第一外部屋連通部44aにおける第一コンポーネント41内(第一介在室41s)と第三コンポーネント43内(第三介在室43s)との間の連通、非連通を切換える。
第二外部屋バルブ532は、第二外部屋連通部45aに設けられており、第二外部屋連通部45aにおける第二コンポーネント42内(第二介在室42s)と第三コンポーネント43内(第三介在室43s)との間の連通、非連通を切換可能とされている。
尚、上述したバルブ群51~53を構成する各種バルブは、防爆の観点から、エアを駆動源として動作するエアオペレートバルブによって構成されている。
〔7-4.排気装置54〕
排気装置54は、所定のファンなどを備えており、排気用開口43aに設けられている。排気装置54が駆動することで、アウターハウジング4内(第三コンポーネント43内)のガスを外部(例えばドーピングシステム1の設置される建物の外)に排出することが可能である。
〔7-5.酸素濃度計測センサ群55〕
酸素濃度計測センサ群55は、メインハウジング31内の各所における酸素濃度を計測するためのものである。酸素濃度計測センサ群55は、操出側濃度計測センサ551、処理側濃度計測センサ552、巻取側濃度計測センサ553及び防爆側濃度計測センサ554(図9参照)を備えている。
操出側濃度計測センサ551は、操出側ハウジング311内(操出側原反室311s)に設けられており、操出側原反室311sの酸素濃度を計測する。
処理側濃度計測センサ552は、ドープ処理ハウジング313内(ドープ処理室313s)に設けられており、ドープ処理室313sの酸素濃度を計測する。
巻取側濃度計測センサ553は、巻取側ハウジング315内(巻取側原反室315s)に設けられており、巻取側原反室315sの酸素濃度を計測する。
防爆側濃度計測センサ554は、防爆ハウジング32内(防爆部屋32s)に設けられており、防爆部屋32sの酸素濃度を計測する。各濃度計測センサ551~554により計測された酸素濃度に係る情報は、制御装置59へと送られる。
尚、上記各濃度計測センサ551~554に加えて、第一中間連通室312s及び第二中間連通室314sにおける各酸素濃度を計測するためのセンサを設けてもよい。
〔7-6.圧力計測センサ群56〕
圧力計測センサ群56は、メインハウジング31内の各所における気圧を計測するためのものである。圧力計測センサ群56は、操出側圧力計測センサ561、処理側圧力計測センサ562、巻取側圧力計測センサ563及び防爆側圧力計測センサ564(図9参照)を備えている。
操出側圧力計測センサ561は、操出側ハウジング311内(操出側原反室311s)の気圧を計測するためのものであり、例えば操出側原反室311sの気圧と大気圧との差圧(気圧差)を計測するセンサによって構成されている。
処理側圧力計測センサ562は、ドープ処理ハウジング313内(ドープ処理室313s)の気圧を計測するためのものであり、例えばドープ処理室313sの気圧と大気圧との差圧を計測するセンサによって構成されている。
巻取側圧力計測センサ563は、巻取側ハウジング315内(巻取側原反室315s)の気圧を計測するためのものであり、例えば巻取側原反室315sの気圧と大気圧との差圧を計測するセンサによって構成されている。
防爆側圧力計測センサ564は、防爆ハウジング32内(防爆部屋32s)の気圧を計測するためのものであり、例えば防爆部屋32sの気圧と大気圧との差圧を計測するセンサにより構成されている。各圧力計測センサ561~564により計測された気圧に係る情報は、制御装置59へと送られる。
尚、上記圧力計測センサ561~564に加えて、第一中間連通室312s及び第二中間連通室314sの各気圧を計測するためのセンサを設けてもよい。
〔7-7.酸素供給装置57〕
酸素供給装置57は、インナーハウジング3内に、酸素を含む酸素含有ガスを供給するものである。酸素供給装置57は、操出側原反室311s、ドープ処理室313s、巻取側原反室315s及び防爆部屋32sに対し酸素含有ガスを個別に供給可能とされている。本実施形態では、酸素含有ガスとしてクリーンドライエア(CDA)が用いられている。尚、酸素供給装置を複数設け、各酸素供給装置が、操出側原反室311s、ドープ処理室313s、巻取側原反室315s又は防爆部屋32sに対する酸素の供給を個別に行うように構成してもよい。
〔7-8.不活性ガス供給装置58〕
不活性ガス供給装置58は、インナーハウジング3内に、窒素を含む不活性ガスを供給するものである。不活性ガス供給装置58は、操出側原反室311s、ドープ処理室313s、巻取側原反室315s及び防爆部屋32sに対し不活性ガスを個別に供給可能とされている。本実施形態では、不活性ガスとして窒素濃度がほぼ100%の窒素ガスが用いられている。尚、不活性ガス供給装置を複数設け、各不活性ガス供給装置58が、操出側原反室311s、ドープ処理室313s、巻取側原反室315s又は防爆部屋32sに対する不活性ガスの供給を個別に行うように構成してもよい。また、不活性ガスは、窒素ガスに限定されず、例えばアルゴンガスなどであってもよい。
〔7-9.制御装置59〕
制御装置59は、ドーピングシステム1における各装置(例えばドープ装置2や各バルブ群51~53を構成する各種バルブ、酸素供給装置57、不活性ガス供給装置58など)の制御を担う。制御装置59は、演算装置としてのCPUや、各種プログラムを記憶するROM、演算データや入出力データなどの各種データを一時的に記憶するRAM、データを長期保存するための記憶媒体などを備えてなるコンピュータシステムにより構成されている。制御装置59によって、電極前駆体100及びドープ電極110の搬送又は搬送停止を切換えたり、電極前駆体100等に対する通電又は通電停止を切換えたり、内部屋3s及び外部屋4sにおける酸素濃度及び気圧を調節したりすることが可能である。本実施形態において、制御装置59は、「酸素濃度制御手段」及び「圧力制御手段」を構成する。
制御装置59は、上記の通り、各バルブ群51~53を構成する各種バルブ、酸素供給装置57及び不活性ガス供給装置58の動作を制御可能である。制御装置59は、これらの制御に関し、ドープ電極110の製造に対応する制御(製造対応制御)と、支持装置22に対する新たな原反105の供給に対応する制御(供給対応制御)と、巻取られたドープ電極110の巻取装置29からの取外しに対応する制御(取外対応制御)と、防爆部屋32sに対応する制御(防爆対応制御)とをそれぞれ実行可能である。次に、これら制御について説明する。
〔A.製造対応制御〕
製造対応制御は、例えばキーボードなどの入力装置(不図示)を介して、制御装置59に対し命令を入力することにより実行される。入力装置は、例えばアウターハウジング4外のドライルーム201に設置される。
製造対応制御は次のように実行される。すなわち、制御装置59は、メイン部屋31sを構成する各室311s~315sが連通した状態となるように内部屋対応バルブ群51を制御する。換言すると、制御装置59は、第一中間連通室312sにおけるハウジング311,313側の各開口及び第二中間連通室314sにおけるハウジング313,315側の各開口が開放されるように、各バルブ511~514を制御する。
さらに、制御装置59は、中央側内外連通部313aを除いてメイン部屋31s及び外部屋4sが気体的に隔てられた状態となるように内外対応バルブ群52を制御する。すなわち、制御装置59は、操出側内外連通部311a、第一内外連通部312a、第二内外連通部314a及び巻取側内外連通部315aが閉鎖されるように各バルブ521,522,524,525を制御する。尚、本実施形態において、制御装置59は、複数の中央側内外連通部313aのうちの一部が閉鎖されるように中央側内外バルブ523を制御する。
また、制御装置59は、各介在室41s~43sが連通した状態となるように外部屋対応バルブ群53を制御する。すなわち、制御装置59は、各外部屋連通部44a,45aが開放されるように各バルブ531,532を制御する。
上記各バルブ群51~53に対する制御の結果、図10に示すように、中央側内外連通部313aの一部のみを除いてメイン部屋31s及び外部屋4sが空間的に隔てられる一方、メイン部屋31sを構成する各室311s~315sが連通し、また、外部屋4sを構成する各介在室41s~43sが連通した状態となる。尚、図10~14では、閉鎖されたバルブを黒塗りで示し、開放されたバルブを白塗りで示す。また、開度が調節されるバルブについては、半分のみを黒塗りとして示す。
その上で、制御装置59は、各濃度計測センサ551~553により計測された酸素濃度に基づき、メイン部屋31s(メインハウジング31内)の酸素濃度が予め設定された所定範囲内となるように酸素供給装置57及び不活性ガス供給装置58を制御する。尚、前記所定範囲の上限は、例えば気化した電解液などへの引火防止の点から定めることができる。一方、前記所定範囲の下限は、例えばリチウム及び酸素の反応抑止の点から定めることができる。
さらに、制御装置59は、酸素濃度の制御に加えて、外部屋4s(アウターハウジング4内)に対しメイン部屋31s(メインハウジング31内)が正圧となり、ドライルーム201に対し外部屋4s(アウターハウジング4内)が負圧となるように、中央側内外バルブ523の開度を制御する。中央側内外バルブ523の制御は、各圧力計測センサ561~563から送られた気圧に係る情報や、酸素供給装置57及び不活性ガス供給装置58から供給されるガスの量に係る情報に基づき行われる。本実施形態において、制御装置59は、メイン部屋31sの気圧が例えば5~10Pa(ゲージ圧)となるように中央側内外バルブ523を制御する。尚、排気装置54によって、外部屋4sの気圧をメイン部屋31sの気圧よりも十分に低いもの〔例えば-25Pa(ゲージ圧)〕とすることができる。
上記のようなメイン部屋31s等に係る気体の制御が完了した後、制御装置59は、電極前駆体100及びドープ電極110の搬送を開始(再開)したり、電極前駆体100等に対する通電を実行したりすること等により、ドープ電極110の製造を再開(開始)する。これにより、適切な雰囲気下でドープ電極110の製造が再開(開始)されることとなる。
〔B.供給対応制御〕
供給対応制御は、終端検出センサ23によって、原反105から繰り出される電極前駆体100における終端が検出されたときに実行される。つまり、供給対応制御は、終端検出センサ23から制御装置59へと前記終端を検出した旨の信号が入力されたことを契機として自動的に実行される。
供給対応制御は、次のように実行される。すなわち、制御装置59は、電極前駆体100及びドープ電極110の搬送を停止したり、電極前駆体100等に対する通電を停止したりすること等により、ドープ電極110の製造を一時的に中断する。このとき、原反105における電極前駆体100の終端が操出側原反室311sに位置した状態で電極前駆体100及びドープ電極110の搬送が停止される。
その上で、制御装置59は、操出側原反室311s及びドープ処理室313sが空間的に隔てられた状態となるように内部屋対応バルブ群51を制御する。より詳しくは、制御装置59は、第一中間連通室312sにおけるハウジング311,313側の各開口が閉鎖されるように各上流バルブ511,512を制御する。これにより、第一中間連通室312sにおいて操出側原反室311sとドープ処理室313sとの間が非連通となる。
さらに、制御装置59は、操出側内外連通部311a及び第一外部屋連通部44aが開放されるように操出側内外バルブ521及び第一外部屋バルブ531を制御する。これにより、操出側原反室311s、第一介在室41s及び第三介在室43sは、一続きに連通した空間となる。
加えて、制御装置59は、第一内外連通部312aが開放されるように第一中間内外バルブ522を制御する。これにより、第一中間連通室312sと第三介在室43sとの間が連通した状態となる。
上記のような制御の結果、図11に示すように、第一中間連通室312sにおいて操出側原反室311s及びドープ処理室313sが空間的に隔てられる一方、外部屋4s及び第一中間連通室312sが連通した状態となる。
その上で、制御装置59は、操出側濃度計測センサ551からの情報に基づき、操出側原反室311sの酸素濃度が前記所定範囲の上限よりも大きな適正値となるように、酸素供給装置57及び不活性ガス供給装置58を制御する。この適正値は、例えば18%以上の値であり、作業者(人)にとって好ましい酸素濃度を示す。
さらに、制御装置59は、酸素濃度の制御に加えて、操出側圧力計測センサ561により計測された圧力に基づき、操出側原反室311sの気圧が過度に大きなものとならず、例えば大気圧と近いものとなるように操出側内外バルブ521の開度を制御する。
そして、制御装置59は、操出側濃度計測センサ551により計測された酸素濃度に係る情報に基づき、操出側原反室311sの酸素濃度が前記適正値となった段階で、第一外部屋連通部44aが閉鎖されるように第一外部屋バルブ531を制御する。これにより、第一介在室41s及び操出側原反室311sは、第三介在室43sから空間的に隔てられた状態となる(図12参照)。尚、第一内外連通部312aが開放されているため、第一外部屋連通部44aの閉鎖に伴い、第一中間連通室312sの雰囲気は第三介在室43sの雰囲気と同一となる。
さらに、制御装置59は、第一外部屋連通部44aの閉鎖後、操出側原反室311s及び第一介在室41sにおいて、酸素濃度が前記適正値で維持されるとともに、気圧が過度に大きなものとならないように酸素供給装置57及び不活性ガス供給装置58などを制御する。これにより、操出側原反室311s及び第一介在室41sは、作業者にとって適切な環境で維持される。
尚、制御装置59は、供給対応制御の実行時においても、ドープ処理室313sや巻取側原反室315sに対する酸素濃度や気圧に係る制御として、製造対応制御と同様の制御を行う。
〔C.取外対応制御〕
取外対応制御は、始端検出センサ28によって、新たな原反105に係る電極前駆体100(ドープ電極110)の始端が検出されることで実行される。つまり、取外対応制御は、始端検出センサ28から制御装置59へと前記始端を検出した旨の信号が入力されたことを契機として自動的に実行される。
取外対応制御は次のように実行される。すなわち、制御装置59は、供給対応制御の実行時と同様、電極前駆体100及びドープ電極110の搬送を停止すること等により、ドープ電極110の製造を一時的に中断する。このとき、新たな原反105における電極前駆体100の始端が巻取側原反室315sに位置した状態で電極前駆体100及びドープ電極110の搬送が停止される。
その上で、制御装置59は、巻取側原反室315s及びドープ処理室313sが空間的に隔てられた状態となるように内部屋対応バルブ群51を制御する。より詳しくは、制御装置59は、第二中間連通室314sにおける各ハウジング313,315側の各開口が閉鎖されるように各下流バルブ513,514を制御する。これにより、第二中間連通室314sにおいて巻取側原反室315sとドープ処理室313sとの間が非連通となる。
さらに、制御装置59は、巻取側内外連通部315a及び第二外部屋連通部45aが開放されるように巻取側内外バルブ525及び第二外部屋バルブ532を制御する。これにより、巻取側原反室315s、第二介在室42s及び第三介在室43sが一続きに連通した状態となる。さらに、制御装置59は、第二内外連通部314aが開放されるように第二中間内外バルブ524を制御する。これにより、第二中間連通室314s及び第三介在室43sが連通した状態となる。
上記のような制御の結果、図13に示すように、第二中間連通室314sにおいてドープ処理室313s及び巻取側原反室315sが空間的に隔てられる一方、外部屋4s及び第二中間連通室314sが連通した状態となる。
その上で、制御装置59は、巻取側濃度計測センサ553により計測された酸素濃度に係る情報に基づき、巻取側原反室315sの酸素濃度が前記適正値となるように、酸素供給装置57及び不活性ガス供給装置58を制御する。
さらに、制御装置59は、酸素濃度の制御に加えて、巻取側圧力計測センサ563により計測された圧力に基づき、巻取側原反室315sの気圧が過度に大きなものとならず、例えば大気圧と近いものとなるように巻取側内外バルブ525の開度を制御する。
そして、制御装置59は、巻取側濃度計測センサ553からの情報に基づき、巻取側原反室315sの酸素濃度が前記適正値となった段階で、第二外部屋連通部45aが閉鎖されるように第二外部屋バルブ532を制御する。これにより、第二介在室42s及び巻取側原反室315sは、第三介在室43sから空間的に隔てられた状態となる(図14参照)。尚、第二内外連通部314aが開放されているため、第二外部屋連通部45aの閉鎖に伴い、第二中間連通室314sの雰囲気は、第三介在室43sの雰囲気と同一となる。
また、制御装置59は、第二外部屋連通部45aの閉鎖後、巻取側原反室315s及び第二介在室42sにおいて、酸素濃度が前記適正値で維持されるとともに、気圧が過度に大きなものとならないように酸素供給装置57及び不活性ガス供給装置58などを制御する。これにより、巻取側原反室315s及び第二介在室42sは、作業者にとって適切な環境で維持される。
尚、制御装置59は、取外対応制御の実行時においても、ドープ処理室313sや操出側原反室311sにおける酸素濃度や気圧に係る制御として、製造対応制御と同様の制御を行う。
〔D.防爆対応制御〕
防爆対応制御は、常時、防爆部屋32sを対象として行われる制御である。防爆対応制御は、次のように行われる。すなわち、制御装置59は、防爆側濃度計測センサ554により計測された酸素濃度に基づき、防爆ハウジング32内(防爆部屋32s)の酸素濃度がメインハウジング31内(メイン部屋31s)の酸素濃度よりも小さなもの(例えばほぼ0%)となるように酸素供給装置57及び不活性ガス供給装置58を制御する。
また、制御装置59は、酸素濃度の制御に加えて、防爆側圧力計測センサ564により計測された気圧に係る情報に基づき、メインハウジング31内(メイン部屋31s)に対し防爆ハウジング32内(防爆部屋32s)が正圧となるように、酸素供給装置57及び不活性ガス供給装置58を制御する。尚、防爆対応制御では、防爆部屋32sの気圧が過大とならないように、必要に応じて防爆側内外バルブ526が制御される。
本実施形態では、防爆対応制御の実行により、防爆部屋32sの酸素濃度は例えばほぼ0%で維持され、防爆部屋32sの気圧は例えば30~45Pa(ゲージ圧)で維持される。
〔8.ドープ電極の製造方法〕
次いで、上記ドーピングシステム1を用いたドープ電極110の製造方法のうち、特に支持装置22に対する新たな原反105の供給に係る工程(供給対応工程)、及び、巻取られたドープ電極110の取外しに係る工程(取外対応工程)について説明する。
〔8-1.供給対応工程〕
まず、図15を参照して供給対応工程について説明する。供給対応工程では、まずステップS11において、終端検出センサ23によって、原反105から繰り出されている電極前駆体100の終端が検出されたか否かを判定する。この判定は、前記終端が検出されるまで繰り返し行われる。
電極前駆体100の終端が検出された場合、ステップS12にて、上述した供給対応制御を実行する。供給対応制御の実行により、ステップS121の終端検出時停止工程と、ステップS122の操出側閉鎖工程と、ステップS123の操出側酸素濃度調節工程とがこの順序で行われる。
終端検出時停止工程では、電極前駆体100の終端が操出側ハウジング311内(操出側原反室311s)に位置した状態で、電極前駆体100及びドープ電極110の搬送が停止される。尚、この工程では、電極前駆体100等に対する通電停止などが合わせて行われ、その結果、ドープ電極110の製造が一時停止される。
操出側閉鎖工程では、各上流バルブ511,512により操出側ハウジング311内(繰出側原反室311s)とドープ処理ハウジング313(ドープ処理室313s)との間が非連通とされる。尚、この工程では、バルブ521,522,531を対象とした上述の制御も行われる。
操出側酸素濃度調節工程では、制御装置59によって操出側ハウジング311内(操出側原反室311s)及び第一介在室41sの酸素濃度が適切に調節される。尚、供給対応制御の実行により、操出側原反室311s及び第一介在室41sは作業者にとって安全な環境となる。
その後、ステップS13にて、原反供給工程を実行する。原反供給工程では、支持装置22に対し新たな原反105を供給するとともに、該支持装置22によって該原反105を支持した状態とする。
さらに、ステップS14にて、両端接続工程を実行する。両端接続工程では、操出側ハウジング311内(操出側原反室311s)にて、先の原反105における電極前駆体100の終端と新たな原反105における電極前駆体100の始端とが接続される。両端接続工程において、電極前駆体100は、例えばテープ状の接続用部材などを用いて接続される。
尚、本実施形態において、原反供給工程及び両端接続工程は、第一介在室41sを通って操出側原反室311sに入った作業者によって手作業で行われる。原反供給工程及び両端接続工程の実行により、供給対応工程が完了する。また、供給対応工程の後に上述の製造対応制御が実行されることで、内部屋3s及び外部屋4sの気圧や酸素濃度が適切に調節された上で、ドープ電極110の製造を再開することができる。
〔8-2.取外対応工程〕
次いで、図16を参照して取外対応工程について説明する。取外対応工程では、まずステップS21において、始端検出センサ28によって、新たな原反105における電極前駆体100(ドープ電極110)の始端が検出されたか否かを判定する。この判定は、前記始端が検出されるまで繰り返し行われる。
電極前駆体100(ドープ電極110)の始端が検出された場合、ステップS22にて、上述した取外対応制御を実行する。取外対応制御の実行により、ステップS221の始端検出時停止工程と、ステップS222の巻取側閉鎖工程と、ステップS223の巻取側酸素濃度調節工程とがこの順序で行われる。
始端検出時停止工程では、電極前駆体100の始端が巻取側ハウジング315内(巻取側原反室315s)に位置した状態で、電極前駆体100及びドープ電極110の搬送を停止する。尚、この工程では、電極前駆体100等に対する通電停止などが合わせて行われ、その結果、ドープ電極110の製造が一時停止される。
巻取側閉鎖工程では、各下流バルブ513,514により巻取側ハウジング315内(巻取側原反室315s)とドープ処理ハウジング313内(ドープ処理室313s)との間が非連通とされる。尚、この工程では、バルブ524,525,532を対象とした上述の制御も行われる。
巻取側酸素濃度調節工程では、制御装置59によって巻取側ハウジング315内(巻取側原反室315s)及び第二介在室42sの酸素濃度が適切に調節される。取外対応制御の実行により、巻取側原反室315s及び第二介在室42sは作業者にとって安全な環境となる。
その後、ステップS23にて、ロール取外工程を実行する。ロール取外工程では、例えば前記両端接続工程にて接続された電極前駆体100(ドープ電極110)の始端及び終端を分離した上で、巻取られたドープ電極110を巻取装置29から取り外す。
さらに、ステップS24において、始端固定工程を実行する。始端固定工程では、ドープ電極110が取外された巻取装置29の巻取軸29aに対し、新たな原反105における電極前駆体100の始端を固定する。始端固定工程において、巻取装置29に対する電極前駆体100の固定は、巻取軸29aに設けられた、電極前駆体100を固定するための手段(不図示)を用いて行うことができる。勿論、その他の手段により、巻取装置29に対し電極前駆体100を固定するようにしてもよい。
尚、本実施形態において、ロール取外工程及び始端固定工程は、第二介在室42sを通って巻取側原反室315sに入った作業者によって手作業で行われる。ロール取外工程及び始端固定工程の実行により、取外対応工程が完了する。また、取外対応工程の後に上述の製造対応制御が実行されることで、内部屋3s及び外部屋4sの気圧や酸素濃度が適切に調節された上で、ドープ電極110の製造を再開することができる。
尚、新たな原反105の供給時や巻取られたドープ電極110の取外時には、電極前駆体100がドープ槽25の電解液中につかったままの状態となるが、電極前駆体100などに対する通電が停止されるため、電極前駆体100に対しドーピングは行われない。そして、ドープ電極110の製造再開に伴い、電解液中に位置していた電極前駆体100に対しても適切なドーピングが行われることとなる。
以上詳述したように、本実施形態によれば、アウターハウジング4内に対しメインハウジング31内を正圧とすることで、アウターハウジング4内からメインハウジング31内に対する酸素などの気体の流入を抑えることができる。これにより、酸素供給装置57及び不活性ガス供給装置58を用いて、メインハウジング31内の酸素濃度を比較的狭い適切な範囲でより容易に維持することができる。
また、ドライルーム201に対しアウターハウジング4内が負圧とされることで、アウターハウジング4内からドライルーム201に対する気体の漏出を抑えることができる。その結果、アウターハウジング4外への気化した電解液の漏出をより確実に防止することができる。
加えて、不活性ガス供給装置58は、不活性ガスとして窒素を含むガスを供給するため、コスト面で有利となる。尚、メインハウジング31内に窒素を供給する構成であっても、メインハウジング31内の酸素濃度を適切な範囲に制御することで、メインハウジング31内の窒素濃度を十分に低くすることができ、ひいては窒素及びリチウムの反応を抑制することができる。
加えて、メインハウジング31内に対し防爆ハウジング32内が正圧とされるため、メインハウジング31内から防爆ハウジング32内に対し、気化した電解液が流入することをより確実に防止することができる。
また、防爆ハウジング32内の酸素濃度がメインハウジング31内の酸素濃度よりも小さくされることで、上記作用効果と相まって、防爆ハウジング32内を、酸素濃度が十分に低い雰囲気であって、気化した電解液が非常に少ない環境とすることができる。従って、防爆ハウジング32内において、「電気的接点が設けられた電気回路を備えてなる非防爆機器」を安全に収容することができる。さらに、防爆ハウジング32内においてバルブやセンサなどに係る配線の省配線を行い、少ない配線のみをハウジング3,4の外へと出すといったことを安全に行うことができる。
さらに、制御装置59によって、メインハウジング31内の酸素濃度を自動的かつ精度よく適切な範囲で維持することができる。これにより、気化した電解液などへの引火を一層確実に防止することができるとともに、不活性ガス(窒素ガス)及びリチウムの反応抑制をより確実に図ることができる。
加えて、制御装置59によって、自動的にアウターハウジング4内に対しメインハウジング31内を正圧とすることができる。これにより、アウターハウジング4内からメインハウジング31内に対する酸素などの気体の流入をより確実に抑えることができる。
併せて、排気装置54によってアウターハウジング4内のガスを外部に排出することで、ドライルーム201に対しアウターハウジング4内を負圧とすることがより確実に可能となる。
また、洗浄槽26に収容された洗浄液を用いてドープ電極110を洗浄することができる。これにより、ドープ電極110の品質向上を図ることができる。一方、洗浄液は可燃性であるため、気化した洗浄液への引火防止を図るべきであるところ、本実施形態において、メインハウジング31は洗浄槽26を内部に収容している。従って、気化した電解液と同様、気化した洗浄液がアウターハウジング4外へと漏出することをより確実に抑制できる。
さらに、プリウェット槽24に収容された電解液を用いて、ドーピング前の電極前駆体100を湿潤させることができる。これにより、電極前駆体100に対するリチウムのドーピングをより効果的に行うことができる。
また、メインハウジング31はプリウェット槽24を内部に収容した状態とされているため、プリウェット槽24の電解液が気化したとしても、この気化した電解液がアウターハウジング4内からドライルーム201に漏出することをより確実に防止できる。
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
(a)上記実施形態において、終端検出手段としての終端検出センサ23及び始端検出手段としての始端検出センサ28は、電極前駆体100又はドープ電極110の巻き径を把握することで、電極前駆体100(ドープ電極110)の終端又は始端を検出するように構成されている。これに対し、支持装置22又は巻取装置29の回転数を把握可能なエンコーダと、該エンコーダにより把握された回転数に基づき前記始端又は前記終端を検出する装置とによって、終端検出手段又は始端検出手段を構成してもよい。
また、電極前駆体100(ドープ電極110)に予め設けられたマーク(例えば孔)などを検出することで、電極前駆体100(ドープ電極110)の始端又は終端を検出するようにしてもよい。尚、始端検出手段や終端検出手段の設置位置については適宜変更してもよい。
(b)上記実施形態では、操出側ハウジング311及びドープ処理ハウジング313間に第一中間ハウジング312が設けられ、第一中間ハウジング312の内部空間(第一中間連通室312s)において操出側ハウジング311内とドープ処理ハウジング313内との間が連通可能とされている。これに対し、第一中間ハウジング312を設けることなく、操出側ハウジング311及びドープ処理ハウジング313を構成する共通の壁部に孔(開口)を形成し、この孔(開口)において操出側ハウジング311内とドープ処理ハウジング313内との間が連通可能となるように構成してもよい。
また、上記実施形態では、巻取側ハウジング315及びドープ処理ハウジング313間に第二中間ハウジング314が設けられ、第二中間ハウジング314の内部空間(第二中間連通室314s)において巻取側ハウジング315内とドープ処理ハウジング313内との間が連通可能とされている。これに対し、第二中間ハウジング314を設けることなく、巻取側ハウジング315及びドープ処理ハウジング313を構成する共通の壁部に孔(開口)を形成し、この孔(開口)において巻取側ハウジング315内とドープ処理ハウジング313内との間が連通可能となるように構成してもよい。
(c)上記実施形態において、インナーハウジング3は防爆ハウジング32を備えているが、防爆ハウジング32を備えないものであってもよい。
(d)上記実施形態では、終端検出センサ23による終端の検出を契機として供給対応制御が自動的に実行され、始端検出センサ28による始端の検出を契機として取外対応制御が自動的に実行されるように構成されている。これに対し、例えば作業者が制御装置59に対し命令を入力することで、供給対応制御又は取外対応制御が実行されるように構成してもよい。
(e)上記実施形態において、ドープ装置2は、リチウムイオン電池又はリチウムイオンキャパシタの負電極として用いられるドープ電極110を製造しているが、ドープ装置2によって製造可能なドープ電極110は、このような負電極として用いられるものに限られない。従って、例えば、ドープ装置2によって電池やキャパシタの正電極として用いられるドープ電極を製造してもよい。
(f)上記実施形態において、電極前駆体100は、表面に活物質層102を備えたものとされているが、活物質層102を具備しないものであってもよい。
1…ドーピングシステム、2…ドープ装置、3…インナーハウジング、4…アウターハウジング、21…搬送ロール(搬送手段)、22…支持装置(支持手段、搬送手段)、24…プリウェット槽、25…ドープ槽、26…洗浄槽、29…巻取装置(巻取手段、搬送手段)、31…メインハウジング、32…防爆ハウジング、54…排気装置(排気手段)、55…酸素濃度計測センサ群(酸素濃度計測手段)、56…圧力計測センサ群(圧力計測手段)、57…酸素供給装置(酸素供給手段)、58…不活性ガス供給装置(不活性ガス供給手段)、59…制御装置(酸素濃度制御手段、圧力制御手段)100…電極前駆体、110…ドープ電極、201…ドライルーム(ハウジング外空間)、251b…対極部材、313a…中央側内外連通部(内外連通部)、523…中央側内外バルブ(流量調節手段)。

Claims (7)

  1. 帯状の電極前駆体に対しリチウムをドーピングしてドープ電極を製造するためのドーピングシステムであって、
    前記電極前駆体が巻回されてなる原反を支持する支持手段、少なくとも可燃性の溶剤を含んでなる電解液を収容するドープ槽、前記原反から繰り出された前記電極前駆体を前記ドープ槽内を通る経路で搬送する搬送手段、前記ドープ槽内に収容される対極部材、及び、前記ドープ槽を経て得られた前記ドープ電極を巻取る巻取手段を有し、前記電解液中に前記電極前駆体を配置した状態で該電極前駆体及び前記対極部材間に電流を流すことにより該電極前駆体に対しリチウムをドーピングすることが可能なドープ装置と、
    少なくとも前記支持手段、前記ドープ槽及び前記巻取手段、並びに、前記支持手段から前記巻取手段にかけて位置する前記電極前駆体及び前記ドープ電極を内部に収容するメインハウジングを具備するインナーハウジングと、
    前記インナーハウジングを覆うアウターハウジングと、
    前記メインハウジング内に酸素を含む酸素含有ガスを供給する酸素供給手段と、
    前記メインハウジング内に窒素を含む不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段とを備え、
    前記アウターハウジング内に対し前記メインハウジング内を正圧とし、前記アウターハウジングの周囲に位置するハウジング外空間に対し前記アウターハウジング内を負圧とすることが可能に構成されていることを特徴とするドーピングシステム。
  2. 前記インナーハウジングは、内部空間が前記メインハウジング内とは別に区画された防爆ハウジングを有し、
    前記防爆ハウジング内の酸素濃度を前記メインハウジング内の酸素濃度よりも小さくし、かつ、前記メインハウジング内に対し前記防爆ハウジング内を正圧とすることが可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のドーピングシステム。
  3. 前記メインハウジング内の酸素濃度を計測する酸素濃度計測手段と、
    前記酸素濃度計測手段により計測された酸素濃度に基づき、前記酸素供給手段及び前記不活性ガス供給手段を制御し、前記メインハウジング内の酸素濃度を調節可能な酸素濃度制御手段とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のドーピングシステム。
  4. 前記メインハウジング内及び前記アウターハウジング内を連通する内外連通部と、
    前記内外連通部に設けられ、前記メインハウジング内から前記アウターハウジング内へと流れる気体の流量を調節可能な流量調節手段と、
    前記メインハウジング内の圧力を計測する圧力計測手段と、
    前記圧力計測手段により計測された圧力に基づき前記流量調節手段を制御することで、前記アウターハウジング内に対する前記メインハウジング内の圧力を調節可能な圧力制御手段とを備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のドーピングシステム。
  5. 前記アウターハウジング内のガスを外部に排気する排気手段を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のドーピングシステム。
  6. 前記ドープ装置は、可燃性の洗浄液を収容する洗浄槽を有し、
    前記搬送手段は、前記ドープ槽内を経て得られた前記ドープ電極を前記洗浄槽内を通る経路で搬送するように構成されており、
    前記メインハウジングは、前記洗浄槽を内部に収容するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のドーピングシステム。
  7. 前記ドープ装置は、前記搬送手段による前記電極前駆体の搬送経路に沿って前記ドープ槽よりも上流に位置するとともに、少なくとも可燃性の溶剤を含んでなる電解液を収容するプリウェット槽を有し、
    前記搬送手段は、前記電極前駆体を前記プリウェット槽内を通る経路で搬送するように構成されており、
    前記メインハウジングは、前記プリウェット槽を内部に収容するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のドーピングシステム。
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