JP7185212B2 - 工具材の再生方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高速度工具鋼基材の任意の領域に補修肉盛層を形成することによる、工具材の再生方法及び当該製造方法で製造した工具材に関する。
従来、表面処理技術の一つとして、金属基材の表面に当該金属基材とは異なる高硬度材料を肉盛りすることにより、最表面の耐摩耗性等を向上させる技術が知られている。当該技術を用いた場合、高硬度材料を用いて形成した表面の肉盛層が摩耗しても、基材は元の形状を保持できるため、当該基材に対して再度同様の肉盛りを行うことで、繰り返し使用することが可能である。例えば、特許文献1(特開2013-176778号公報)には、肉盛りを行う手法として、レーザを用いて金属基材表面に高硬度の肉盛層を形成するレーザクラッディング法が開示されている。
ここで、肉盛りに用いる代表的な高硬度材料として、金属部材の高速切削等に用いられる高速度工具鋼を挙げることができる。例えば、特許文献2(特開2016-155155号公報)には、レーザクラッディング法を用いて金属基材の表面に対して高速度工具鋼を多層肉盛りする技術が開示されており、形成した肉盛層は、HIP(熱間等方圧加圧法)材と同等以上の硬度及び耐摩耗性が得られている。
特開2013-176778号公報 特開2016-155155号公報
上記レーザクラッディング法を用いて、例えば、金属基材のクラックや欠け等が生じた領域のみに適当な肉盛層を形成させることができれば、極めて効率的かつ安価な補修方法となり得る。更に、レーザクラッディングによって形成されたレーザ肉盛層に対する補修方法を確立することができれば、工具材の製造から再生利用までを包含する新規なビジネスモデルを構築することができる。例えば、安価な鋼材の表面に適当なレーザ肉盛層を形成させて工具材とすることで材料コストが低減され、レーザ肉盛層の破損領域のみを補修することができれば、当該補修に必要なコストのみで使用を継続することができる。
しかしながら、工具材として汎用されている高速度工具鋼は、高い硬度や優れた耐摩耗性等を有しているが、当該特性のトレードオフとして、本質的に靭性が低下してしまう。その結果、金属基材を高速度工具鋼とする場合、再生補修した肉盛層が金属基材の熱影響部から剥離することが大きな問題となっていた。特に、高速度工具鋼基材が急冷凝固組織を有する場合、晶出炭化物が母材結晶粒界に偏析して靭性の低下がより顕著になることから、肉盛層を形成させて補修することは極めて困難であった。
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、高速度工具鋼基材の任意の領域に適当な肉盛層を形成させて補修する方法、及び当該方法によって製造される工具材を提供することにある。また、特に、急冷凝固組織を有する高速度工具鋼肉盛材に対しても、剥離や割れ等を生じることなく適当な補修肉盛層を形成することができる補修方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、高速度工具鋼基材に対する肉盛層の形成方法について鋭意研究を重ねた結果、高速度工具鋼基材に適当な温度範囲での熱処理を施すこと等が極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、
高速度工具鋼基材を700℃超825℃未満で熱処理する熱処理工程と、
前記熱処理を施した前記高速度工具鋼基材の表面に補修肉盛層を形成させる補修肉盛工程と、を有すること、
を特徴とする工具材の再生方法、を提供する。
補修肉盛層を形成させる高速度工具鋼基材の組織及び機械的性質は様々であるが、700℃超825℃未満で熱処理を施すことによって、補修肉盛工程に耐え得る靭性等を付与することができる。より具体的には、高速度工具鋼基材の補修肉盛層を形成させる領域を適当に軟化させることができれば、補修肉盛工程における剥離や割れ等を抑制することができる。
これに対し、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、高速度工具鋼基材を効率的に軟化させるためには、適当な熱処理温度範囲が存在し、当該温度範囲は700℃超825℃未満であることが明らかとなった。当該温度範囲で軟化が促進される理由については必ずしも明らかになっていないが、熱処理温度を700℃超825℃未満とすることで、母材のフェライトの相変態を伴うことなく、母材中に固溶している炭素と合金元素が炭化物として析出・凝集してある程度の大きさになり、固溶強化に寄与していた炭素や合金元素の量が低下するため、転位の移動が容易になり硬度が低下すると考えられる。また、高速度工具鋼基材を軟化させるより効率的な温度範囲は775℃超825℃未満である。
補修肉盛工程における肉盛方法は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の肉盛方法を用いることができる。例えば、レーザクラッディングやプラズマアーク溶接等を用いることができるが、レーザクラッディングを用いることが好ましい。レーザクラッディングを用いることで、所望の領域のみに正確に肉盛層を形成させることができる。また、レーザクラッディングを用いることで、高速度工具鋼基材に対する入熱量を抑制できることに加えて、肉盛層と高速度工具鋼基材との間における希釈を抑制することができる。
また、本発明の工具材の再生方法においては、前記高速度工具鋼基材が高速度工具鋼レーザ肉盛層であること、が好ましい。高速度工具鋼レーザ肉盛層は形成プロセスにおいて急冷されるため、晶出炭化物が母材結晶粒界に偏析する典型的な急冷凝固組織となるが、本発明の工具材の製造方法を用いることで、当該高速度工具鋼レーザ肉盛層の表面においても良好な補修肉盛層を形成させることができる。また、高速度工具鋼レーザ肉盛層に対して補修を行うことで、高価かつ希少な原料の使用を最小限に抑えた工具材を再生使用することができる。
レーザクラッディング法によって形成される高速度工具鋼レーザ肉盛層の金属組織は急冷凝固組織となり、タングステン炭化物、クロム炭化物、バナジウム炭化物及びモリブデン炭化物等の晶出炭化物が母材結晶粒界に網目状に偏析してしまう。当該晶出炭化物の偏析は肉盛層の曲げ応力、靭性及び耐衝撃性等を低下させてしまうが、特に、775℃超825℃未満の温度域で熱処理を施すことによって、晶出炭化物が球状化すると共に、網目状の分布が分断される。
レーザクラッディング法で形成された肉盛層を再生補修する場合、当該肉盛層に対してレーザクラッディングを施すと、熱影響部からの剥離が生じてしまう。これに対し、本発明の工具材の再生方法では熱処理工程によって肉盛層の晶出炭化物の偏析が改善されていることに加えて、適度に硬度が低下していることから、再生補修を目的として肉盛層を形成させる場合であっても、効果的に剥離を抑制することができる。
また、本発明の工具材の再生方法においては、前記熱処理の保持時間を30分以上とすること、が好ましい。熱処理の保持時間を30分以上とすることで、網目状に偏析した晶出炭化物の分断を十分に進行させることができると共に、高速度工具鋼基材の硬度を500HV以下に低下させることができる。その結果、高速度工具鋼基材の靭性及び耐衝撃性等を改善することができ、再生補修時の剥離を抑制することができる。なお、高速度工具鋼基材のより好ましい硬度は400HV以下であり、より好ましい保持時間は1時間以上、最も好ましい保持時間は3時間以上である。
また、本発明の工具材の再生方法においては、レーザ照射によって前記熱処理を施すこと、が好ましい。熱処理にレーザ照射を用いることで、熱処理炉等の設備を別途準備する必要がなく、レーザクラッディング用のレーザ照射装置を用いることができる。また、所望の領域のみに熱処理を施すことができ、熱処理に必要なエネルギー消費量を低減することができる。加えて、レーザ照射位置は容易に制御することができ、圧延ロール等の大型部材に対しても容易に熱処理を施すことができる。
更に、本発明の工具材の再生方法においては、前記高速度工具鋼基材と前記補修肉盛層の組成が略同一であること、が好ましい。高速度工具鋼基材と当該高速度工具鋼基材の表面に形成させる補修肉盛層の組成を略同一とすることで、希釈に起因する材料特性の低下を抑制することができる。また、高速度工具鋼基材を高速度工具鋼レーザ肉盛層とする場合は、基本的に、補修肉盛の条件には肉盛時に用いた条件をそのまま適用することができることに加え、原料粉末の交換に伴う作業を行う必要がない。
また、本発明は、
高速度工具鋼基材の少なくとも一部分に補修肉盛層が形成し、
前記補修肉盛層と前記高速度工具鋼基材の接合界面近傍における、前記高速度工具鋼基材の晶出炭化物が略球状で、母材結晶粒界に偏析していないこと、
を特徴とする工具材、も提供する。
高速度工具鋼基材の材質は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の高速度工具鋼材を用いることができる。高速度工具鋼材としては、例えば、JIS G 4403:2006に規定されている各種SKH材やSKH40等を用いることができる。
本発明の工具材においては、前記高速度工具鋼基材が高速度工具鋼レーザ肉盛層であること、が好ましい。安価な金属基材の表面に優れた高温軟化抵抗を有する高速度工具鋼の肉盛層が形成し、当該肉盛層の晶出炭化物は略球状で結晶粒界に偏析していないことから、靭性及び耐衝撃性等が要求される用途にも好適に用いることができる。ここで、「晶出炭化物が略球状」とは、結晶粒界に偏析する晶出炭化物と比較して、球状化が進行していることを意味している。また、「晶出炭化物が母材結晶粒界に偏析していない」とは、一般的な急冷凝固組織では母材結晶粒界に偏析する晶出炭化物が、母材結晶粒界のみではなく母材結晶粒内にも存在し、晶出炭化物同士の並びが分断されていることを意味している。その結果、晶出炭化物に沿った亀裂の伝播を抑制することができる。
補修肉盛層は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の金属材を用いることができるが、高速度工具鋼基材との密着性、希釈の抑制、機械的性質等の観点から選択することが好ましい。
また、補修肉盛層を形成させる領域及び補修肉盛層の厚さは特に限定されず、高速度工具鋼基材表面の必要な領域のみに適当な厚さの補修肉盛層が形成されていればよい。
また、本発明の工具材においては、前記高速度工具鋼基材の硬度が500HV以下であること、が好ましい。高速度工具鋼基材の硬度が500HV以下となっていることで、高速度工具鋼基材に優れた靭性及び耐衝撃性等が付与され、再生補修を目的として補修肉盛層を形成させる際の剥離を抑制することができる。なお、高速度工具鋼基材の硬度を400HV以下とすることで、靭性及び耐衝撃性等をより向上させることができ、再生補修時の剥離もより効果的に抑制することができる。ここで、高速度工具鋼基材の全領域で上記硬度となっている必要はなく、補修肉盛層を形成する領域で硬度調整が達成されていればよい。
また、本発明の工具材においては、前記高速度工具鋼基材が高速度工具鋼レーザ肉盛層であることが好ましく、高速度工具鋼レーザ肉盛層が多層肉盛層であること、がより好ましい。多層肉盛層はレーザクラッディング法を用いて形成させることができ、肉盛層を水平方向及び/又は垂直方向に連続形成させることで得ることができる。肉盛層を多層肉盛層とすることで、肉盛層を形成させる面積や厚さを容易に制御することができる。
更に、本発明の工具材においては、前記高速度工具鋼基材が円柱状であること、が好ましい。また、円柱状の安価な金属基材の表面に高速度工具鋼レーザ肉盛層が形成されていることがより好ましい。円柱状の高速度工具鋼基材の表面に高速度工具鋼の肉盛層が形成されていることで、例えば、比較的安価な圧延ロールとして好適に用いることができる。また、肉盛層が破損等した場合には、容易に再生補修することができる。
なお、本発明の工具材は、本発明の工具材の製造方法を用いて好適に製造することができる。
本発明によれば、高速度工具鋼基材の任意の領域に適当な肉盛層を形成させて補修する方法、及び当該方法によって製造される工具材を提供することができ、特に、急冷凝固組織を有する高速度工具鋼基材に対しても、剥離や割れ等を生じることなく適当な肉盛層を形成することができる補修方法を提供することができる。
本発明の工具材の再生方法の工程図である。 熱処理工程前における肉盛層の金属組織の模式図である。 熱処理工程後における肉盛層の金属組織の模式図である。 本発明の工具材の一例を示す概略断面図である。 本発明の工具材(熱延用ロール)の概略断面図である。 本発明の工具材(棒鋼・線材用ロール)の概略断面図である。 本発明の工具材(分塊・鋼片用ロール)の概略断面図である。 実施例1で得られた高速度工具鋼基材の断面マクロ写真である。 実施例で得られた肉盛層のビッカース硬度を示すグラフである。 実施例1の熱処理前における肉盛層の組織写真である。 実施例1の熱処理後における肉盛層の組織写真である。 実施例1で形成させた補修肉盛層の概観写真である。 比較例で得られた肉盛層のビッカース硬度を示すグラフである。 比較例1で得られた肉盛層断面の光学顕微鏡写真である。 比較例3で得られた肉盛層断面の光学顕微鏡写真である。 比較例4で得られた肉盛層断面の光学顕微鏡写真である。 比較例5で形成させた補修肉盛層の概観写真である。
以下、図1~4を参照しながら、本発明の工具材の再生方法及び工具材における代表的な実施形態を詳細に説明する。但し、本発明は図示されるものに限られるものではなく、各図面は本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて比や数を誇張又は簡略化して表している場合もある。更に、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
1.工具材の再生方法
図1に本発明の工具材の再生方法の工程図を示す。本発明の工具材の再生方法は、必須の工程として、熱処理工程(S01)と、熱処理工程(S01)を施した高速度工具鋼基材に補修肉盛層を形成させる補修肉盛工程(S02)と、を有している。
(1)熱処理工程(S01)
熱処理工程(S01)は、補修肉盛層を形成させる高速度工具鋼基材に熱処理を施す工程である。
補修肉盛層を形成させる高速度工具鋼基材の組織及び機械的性質は様々であるが、700℃超825℃未満で熱処理を施すことによって、補修肉盛工程に耐え得る靭性等を付与することができる。より具体的には、高速度工具鋼基材の補修肉盛層を形成させる領域を適当に軟化させることができれば、補修肉盛工程(S02)における剥離や割れ等を抑制することができる。
特に、熱処理の温度を775℃超825℃未満とすることで、急冷凝固組織となっている高速度工具鋼基材の金属組織に関し、母材結晶粒界に網目状に偏析する晶出炭化物を球状化することができると共に、網目状の分布を分断することができる。当該晶出炭化物の変化によって、靭性及び耐衝撃性等を改善することができる。
図2及び図3に、熱処理工程(S01)前後における高速度工具鋼基材の金属組織の模式図を示す。例えば、高速度工具鋼基材が高速度工具鋼レーザ肉盛層の場合、熱処理工程(S01)の前においては、肉盛層は母材結晶粒2の粒界に晶出炭化物4が網目状に偏析した状態となっている。また、多くの晶出炭化物4は扁平形状又は板状となっている。これに対し、熱処理工程(S01)を施すことによって、晶出炭化物4が母材結晶粒2の粒内にも分散し、明確な網目状のネットワーク構造が消失する。加えて、熱処理によって晶出炭化物4の形状は球状化が進行する。
晶出炭化物4の分布状況及び形状の変化は、775℃超825℃未満の温度範囲における熱処理によって効率的に進行し、特に略800℃における熱処理で顕著である。なお、本発明者らは急冷凝固組織を有する高速度工具鋼肉盛層に対する熱処理条件を詳細に検討した結果、当該温度範囲を見出したものであり、異なる温度における熱処理では当該効果を十分に得ることができない。
熱処理工程(S01)における熱処理時間は、30分以上とすることが好ましい。熱処理の保持時間を30分以上とすることで、網目状に偏析した晶出炭化物4の分断を十分に進行させることができると共に、高速度工具鋼肉盛層の硬度を500HV以下に低下させることができる。その結果、高速度工具鋼肉盛層の曲げ応力、靭性及び耐衝撃性等を改善することができることに加え、再生補修時の剥離を抑制することができる。なお、より好ましい高速度工具鋼肉盛層の硬度は400HV以下であり、より好ましい保持時間は1時間以上であり、最も好ましい保持時間は3時間以上である。
熱処理の加熱手段には、熱処理炉や熱処理槽等を用いることができるが、酸化を防止する観点から、不活性ガス雰囲気や減圧・真空下で行うことが好ましい。また、レーザ照射によって熱処理を施すことが好ましい。熱処理にレーザ照射を用いることで、熱処理炉等の設備を別途準備する必要がなく、レーザクラッディング用のレーザ照射装置を用いることができる。また、所望の領域のみに熱処理を施すことができ、熱処理に必要なエネルギー消費量を低減することができる。加えて、レーザ照射位置は容易に制御することができ、圧延ロール等の大型部材に対しても容易に熱処理を施すことができる。
レーザ照射を用いた熱処理の具体的な方法としては、高速度工具鋼基材の熱処理を施す領域が上記所定温度を保持できるよう、レーザの出力及びフォーカス等のパラメータを最適化し、対象領域にレーザを所定時間照射することにより加熱を行う。
なお、対象とする領域の面積が広く、照射範囲を最も広域としたフォーカス設定を用いても表面全域にレーザ照射が行えない場合は、レーザの走査速度を最適化したうえでレーザ照射範囲を移動又は当該移動の繰り返しを行うことにより、対象とする全領域を走査する。この場合は、レーザ照射域と非レーザ照射域とで入熱量に差異が発生するが、対象領域の全域が上記所定温度を保持できる走査速度及びフォーカス設定を用いることにより、熱処理条件を満足することができる。
(2)補修肉盛工程(S02)
本発明の工具材の再生方法においては、高速度工具鋼基材が急冷凝固組織を有する場合であっても、熱処理工程(S01)によって母材結晶粒界に網目状に偏析する晶出炭化物4が球状化されると共に、網目状の分布が分断されている。加えて、高速度工具鋼基材は適度に軟化していることから、レーザクラッディングを用いて容易に再生補修を施すことができる。
レーザクラッディング法で形成された高速度工具鋼レーザ肉盛層を再生補修する場合、当該肉盛層に対してレーザクラッディングを施すと熱影響部からの剥離が生じてしまう。これに対し、熱処理工程(S01)によって肉盛層の晶出炭化物4の偏析が改善されていることに加えて、適度に硬度が低下していることから、補修肉盛層を形成させる場合であっても効果的に剥離を抑制することができる。
レーザクラッディングは、例えば、金属基材の表面に高速度工具鋼粉末を供給しつつ、当該高速度工具鋼粉末にレーザビームを照射することで達成できる。なお、高速度工具鋼粉末には、一部の組成を異にした複数種が存在するが、耐摩耗性や靭性等の要求される特性に応じて適宜選択すればよい。
レーザクラッディングの方法は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々のレーザクラッディング法を用いることができる。レーザクラッディング法は、金属基材の表面に粒径が統一された微細な金属粉末をレーザの照射領域に供給し、当該金属基材の上に肉盛層を一体的に形成する表面処理法であって、切断工具や圧延工具等の、製作段階の中間体である工具材の製作にも利用されている。
当該レーザクラッディング法では、レーザ光源から射出されたレーザビームを集光させて局所的な入熱を行うことにより金属粉末を溶融するため、肉盛層は急速溶融及び急冷凝固により形成される。また、基材に対する熱ひずみや熱影響部を少なくし、基材と形成した肉盛層とにおける希釈率を低減することが可能である。更に、レーザビーム及び金属粉末を射出するトーチ部はプログラムによるロボット制御が可能であり、肉盛層の形成場所及び形状を比較的正確にコントロールすることができるため、金属部材の一部分に発生したクラック等の補修にも好適に用いることができる。
レーザクラッディングでは、適当な組成及び粒度分布等を有する高速度工具鋼粉末を原料として用い、形成させる肉盛層のサイズ及び特性等に応じて適宜プロセス条件を最適化すればよいが、直径50~150μmの高速度工具鋼粉末を用いることが好ましい。また、金属基材も本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の金属基材を用いることができるが、表面に形成させる高速度工具鋼肉盛層との密着性、希釈の抑制、機械的性質等の観点から、鋼材を用いることが好ましく、工具鋼や軸受鋼等を好適に用いることができる。より具体的には、例えば、中炭素鋼材(S45C等)、クロムモリブデン鋼鋼材、合金工具鋼鋼材、高炭素クロム軸受鋼鋼材等を用いることができる。
ここで、レーザクラッディングでは、レーザビームの直線移動及び所定の間隔による並行移動、更に全体を複数回往復させることで略面状の多層肉盛層を形成させることが基本であるが、これに限定されるものではなく、例えば直線移動のみを所定回数繰り返して肉盛り部を形成してもよく、補修部の形状に合わせて直線移動や曲線移動を組み合わせ、更にこれを所定回数繰り返してもよい。
なお、高速度工具鋼基材と補修によって形成させる補修肉盛層の組成は略同一とすることが好ましい。高速度工具鋼基材と補修肉盛層の組成を略同一とすることで、希釈に起因する材料特性の低下を抑制することができる。また、高速度工具鋼基材を高速度工具鋼レーザ肉盛層とする場合、当該高速度工具鋼レーザ肉盛層と補修肉盛層の組成を略同一とすることで、原料粉末の交換に伴う作業を省略することができる。
2.工具材
図4に本発明の工具材の概略断面図を示す。なお、ここでは金属基材の表面に高速度工具鋼レーザ肉盛層が形成され、当該高速度工具鋼レーザ肉盛層の一部分に補修肉盛層が形成された態様について説明する。本発明の工具材10は、金属基材12の表面に高速度工具鋼レーザ肉盛層14が形成し、高速度工具鋼レーザ肉盛層14の晶出炭化物4は略球状で、母材結晶2の粒界に偏析していない。また、高速度工具鋼レーザ肉盛層14の一部分には補修肉盛層16が形成されている。
補修肉盛層16との接合界面近傍における高速度工具鋼レーザ肉盛層14の金属組織は図3で説明した通りであり、晶出炭化物4が母材結晶粒2の粒内にも分散し、晶出炭化物4の明確な網目状のネットワーク構造が消失している。加えて晶出炭化物4は球状化が進行し、略球状の晶出炭化物4が含まれている。ここで、「接合界面近傍」は高速度工具鋼レーザ肉盛層14及び補修肉盛層16の材質、厚さやクラッディング条件等によって異なるが、例えば、被接合界面から2mm程度の範囲が該当する。
晶出炭化物4が母材結晶粒2の粒界に偏析すると、曲げ応力の低下及び隣接する母材結晶粒の結合力が低下するため、クラック発生時は母材結晶粒界に沿ってクラックが進展するが、晶出炭化物4の分散により隣接する母材結晶粒2の結合力が改善されるため、クラック及び剥離等の進展を抑制することができる。
補修肉盛層16との接合界面近傍における高速度工具鋼レーザ肉盛層14の硬度は500HV以下であることが好ましく、400HV以下であることがより好ましい。高速度工具鋼レーザ肉盛層14の硬度を当該範囲に調製することで、曲げ応力や靭性が十分に改善されるため、耐衝撃性が向上すると共に、レーザクラッディングを用いた再生補修時に発生する凝固時の収縮が高速度工具鋼レーザ肉盛層14に印加しても、クラック及び剥離の発生を抑制することができる。
また、高速度工具鋼レーザ肉盛層14は多層肉盛層であること、が好ましい。多層肉盛層は、例えばレーザクラッディング法を用いて形成させることができ、1パスのレーザクラッディングで形成する肉盛層を水平方向及び/又は垂直方向に連続形成させることで得ることができる。高速度工具鋼レーザ肉盛層14を多層肉盛層とすることで、形成させる面積や厚さを容易に制御することができる。
更に、金属基材12は円柱状であることが好ましい。円柱状の金属基材12の表面に高速度工具鋼の高速度工具鋼レーザ肉盛層14が形成されていることで、工具材10を圧延ロールとして好適に用いることができる。また、高速度工具鋼レーザ肉盛層14が破損等した場合には、容易に再生補修することができる。
高速度工具鋼レーザ肉盛層14の原料には高速度工具鋼粉末が使用される。当該高速度工具鋼粉末には一部の組成を異にした複数種が存在するが、耐摩耗性や靭性等の要求される特性に応じて適宜選択すればよい。なお、高速度工具鋼粉末の組成は、C:1.3質量%以上、Cr:3質量%以上、Mo:4質量%以上、W:4質量%以上、V:2質量%以上とすることが好ましい。
また、金属基材12も本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の金属基材を用いることができるが、表面に形成させる高速度工具鋼レーザ肉盛層14との密着性、希釈の抑制、機械的性質等の観点から、鋼材を用いることが好ましく、工具鋼や軸受鋼等を好適に用いることができる。より具体的には、金属基材12として、例えば、中炭素鋼材(S45C等)、クロムモリブデン鋼鋼材、合金工具鋼鋼材、高炭素クロム軸受鋼鋼材等を用いることができる。
また、補修肉盛層16の材質は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の金属材を用いることができるが、高速度工具鋼レーザ肉盛層14の組成と略同一の高速度工具鋼材を用いることが好ましい。補修肉盛層16の材質を高速度工具鋼レーザ肉盛層14の組成と略同一の高速度工具鋼材とすることで、最表面が均質な工具材10を得ることができる。
また、本発明の工具材は、従来のHIP(熱間等方圧加圧法)ではサイズが大きすぎる用途や経済的に割が合わない用途に適用することができる。加えて、例えば、高速度工具鋼レーザ肉盛層14を有する円柱状の工具材を大型の圧延ロール等に適用することで、極めて経済的なビジネスモデルを構築することができる。
工具材10を用いた代表的なロールの断面図を図5~図7に示す。図5は熱延用ロール、図6は棒鋼・線材用ロール、図7は分塊・鋼片用ロールをそれぞれ示している。各ロールにおいて、被加工材が当接する金属基材12の表面には高速度工具鋼レーザ肉盛層14が形成されており、十分な曲げ応力、靭性、耐衝撃性及び耐摩耗性が担保されている。
また、これらのロールは表面の必要とされる領域のみに高速度工具鋼レーザ肉盛層14が形成されていることから比較的に安価であることに加えて、使用によって破損・摩耗等するのは高速度工具鋼レーザ肉盛層14であり、破損・摩耗等した領域の高速度工具鋼レーザ肉盛層14を再生補修することで再使用が可能である。その結果、鋳造によって製造したロールを使用する場合と比較して、大幅な省エネルギー、省資源及び低環境負荷を達成することができる。
ここで、本発明の工具材においては任意の領域に高速度工具鋼レーザ肉盛層14が形成されていることから、高速度工具鋼レーザ肉盛層の原料粉末の選定等によって、高速度工具鋼レーザ肉盛層14の硬度及び硬度分布を適宜調整することができる。例えば、図6に示す棒鋼・線材用ロールの高速度工具鋼レーザ肉盛層14について、被加工材との相互作用による摩耗の程度に応じて、領域毎に硬度を調整することができる。一般的には、底面と側面の境界領域の摩耗が顕著になることから、当該領域をより高硬度とすることが好ましい。
また、例えば、図7に示す分塊・鋼片用ロールにおいては、高速度工具鋼レーザ肉盛層14毎に異なる原料粉末を用い、各高速度工具鋼レーザ肉盛層に適当な機械的性質を付与することもできる。具体的には、例えば、ロール軸の進行方向に対して、高速度工具鋼レーザ肉盛層14の硬度を順番に増加又は低減させることができる。
以下、実施例において本発明の工具材の再生方法及び工具材について更に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
粒径50~150μmの高速度工具鋼(JIS-SKH40)粉末を用い、SCM440の基材上にレーザクラッディングを施して肉盛層を形成した後、当該肉盛層に対して熱処理を行った。レーザにはディスクレーザを用い、レーザクラッディング条件を、レーザ出力2kW、レーザスポット径(フォーカス径)4.3mm、レーザ移動速度0.01m/sとした。また、熱処理には真空中にて高周波加熱を用い、800℃で3時間保持とした。
得られた高速度工具鋼基材の断面マクロ写真を図8に示す。SCM440基材の表面に高速度工具鋼の肉盛層が形成されており、剥離やクラック等の欠陥は認められない。また、図8に示す断面において、表面から1mm及び2mmの肉盛層のビッカース硬度を測定し、得られた結果を図9に示した。なお、硬度測定は荷重:100gf、荷重負荷時間:10sで行い、図9に示す値は各深さで水平に50点測定した平均値である。
熱処理前後における肉盛層の組織写真(走査電子顕微鏡写真)を図10及び図11にそれぞれ示す。熱処理前は母材結晶粒界に晶出炭化物が網目状に偏析しているが、熱処理後は当該網目状構造が分断され、晶出炭化物が母材結晶粒内にも分布していることが分かる。また、晶出炭化物の形状は球状化しており、特に母材結晶粒内の晶出炭化物は略球状となっている。
得られた高速度工具鋼基材の肉盛層の最表面を平面研削し、当該肉盛層を形成させた条件を用いてレーザクラッディングを施して、補修肉盛層を形成させた。当該補修肉盛層の概観写真を図12に示す。熱影響部での補修肉盛層の剥離は認められず、良好な補修肉盛層が得られていることが確認された。
<実施例2>
熱処理の保持時間を30分間としたこと以外は実施例1と同様にして、高速度工具鋼基材を得た。また、実施例1と同様にして肉盛層のビッカース硬度を測定し、得られた結果を図9に示した。なお、実施例1と同様にして補修肉盛層を形成させたところ、当該補修肉盛層の剥離は認められなかった。
<実施例3>
熱処理の保持時間を1時間としたこと以外は実施例1と同様にして、高速度工具鋼基材を得た。また、実施例1と同様にして肉盛層のビッカース硬度を測定し、得られた結果を図9に示した。なお、実施例1と同様にして補修肉盛層を形成させたところ、当該補修肉盛層の剥離は認められなかった。
<実施例4>
熱処理温度を750℃としたこと以外は実施例と同様にし、高速度工具鋼基材を得た。また、実施例1と同様にして肉盛層のビッカース硬度を測定し、得られた結果を図13に示した(図13には実施工具材1の硬度も示している)。なお、実施例1と同様にして補修肉盛層を形成させたところ、当該補修肉盛層の剥離は認められなかった。
<実施例5>
熱処理温度を775℃としたこと以外は実施例1と同様にし、高速度工具鋼基材を得た。また、実施例1と同様にして肉盛層のビッカース硬度を測定し、得られた結果を図13に示した。なお、実施例1と同様にして補修肉盛層を形成させたところ、当該補修肉盛層の剥離は認められなかった。
<比較例1>
熱処理の温度を700℃としたこと以外は実施例1と同様にして、高速度工具鋼基材を得た。また、実施例1と同様にして肉盛層のビッカース硬度を測定し、得られた結果を図13に示した。
得られた高速度工具鋼基材の肉盛層断面の光学顕微鏡写真を図14に示す。網目状模様が明瞭に観察され、晶出炭化物が母材結晶粒界に偏析していることが分かる。なお、実施例1と同様にして補修肉盛層を形成させたところ、熱影響部における当該補修肉盛層の剥離が認められた。
<比較例2>
熱処理温度を825℃としたこと以外は実施例1と同様にし、高速度工具鋼基材を得た。また、実施例1と同様にして肉盛層のビッカース硬度を測定し、得られた結果を図13に示した。なお、実施例1と同様にして補修肉盛層を形成させたところ、熱影響部における当該補修肉盛層の剥離が認められた。
<比較例3>
熱処理の温度を850℃としたこと以外は実施例1と同様にして、高速度工具鋼基材を得た。また、実施例1と同様にして肉盛層のビッカース硬度を測定し、得られた結果を図13に示した。
得られた高速度工具鋼基材の肉盛層断面の光学顕微鏡写真を図15に示す。網目状模様が明瞭に観察され、晶出炭化物が母材結晶粒界に偏析していることが分かる。なお、実施例1と同様にして補修肉盛層を形成させたところ、熱影響部における当該補修肉盛層の剥離が認められた。
<比較例4>
熱処理の温度を900℃としたこと以外は実施例1と同様にして、高速度工具鋼基材を得た。また、実施例1と同様にして肉盛層のビッカース硬度を測定し、得られた結果を図13に示した。
得られた高速度工具鋼基材の肉盛層断面の光学顕微鏡写真を図16に示す。網目状模様が明瞭に観察され、晶出炭化物が母材結晶粒界に偏析していることが分かる。なお、実施例1と同様にして補修肉盛層を形成させたところ、熱影響部における当該補修肉盛層の剥離が認められた。
<比較例5>
熱処理を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして、SCM440基材の表面に肉盛層を形成させた。得られた肉盛層の最表面を平面研削し、当該肉盛層を形成させた条件でレーザクラッディングを施して、補修肉盛層を形成させた。当該補修肉盛層の概観写真を図17に示す。補修肉盛層は熱影響部で剥離しており、適当な熱処理を施さない場合は、良好な補修肉盛層が得られないことが確認された。
図9に示すビッカース硬度より、800℃の熱処理を30分間施すことで肉盛層の硬度は500HVよりも低くなり、3時間施すことで400HVよりも低くなっている。
また、図13に示すビッカース硬度より、熱処理温度が700℃以下及び825℃以上の場合では肉盛層の硬度低下が小さくなっており、500HV以上の硬度となっている。これに対し、熱処理温度が700℃超825未満の場合はビッカース硬度が500HV以下となっており、特に、熱処理温度を略800℃とすることで最も効果的に硬度が低下することが分かる。なお、800℃における硬度低下は、上述の組織変化に対応していると考えられる。即ち、当該結果は、800℃の熱処理によって、硬度調整を容易に行うことができるだけでなく、理想的な組織を得ることができることを示している。
2・・・母材結晶粒、
4・・・晶出炭化物、
10・・・工具材、
12・・・金属基材、
14・・・高速度工具鋼レーザ肉盛層、
16・・・補修肉盛層。

Claims (7)

  1. 高速度工具鋼基材を700℃超825℃未満で熱処理する熱処理工程と、
    前記熱処理を施した前記高速度工具鋼基材の表面に補修肉盛層を形成させる補修肉盛工程と、を有し、
    前記高速度工具鋼基材をJIS-SKH40からなる基材とし、
    前記熱処理工程によって、前記補修肉盛層と前記高速度工具鋼基材の接合界面からの距離が2mmまでの領域において、前記高速度工具鋼基材の母材結晶粒内に晶出炭化物を形成させること、
    を特徴とする高速度工具鋼基材の再生方法。
  2. 前記熱処理の温度を775℃超825℃未満とすること、
    を特徴とする請求項1に記載の高速度工具鋼基材の再生方法。
  3. 前記高速度工具鋼基材が高速度工具鋼レーザ肉盛層であること、
    を特徴とする請求項1又は2に記載の高速度工具鋼基材の再生方法。
  4. 前記熱処理の保持時間を30分以上とすること、
    を特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の高速度工具鋼基材の再生方法。
  5. 前記熱処理によって前記高速度工具鋼基材の硬度を500HV以下にすること、
    を特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の高速度工具鋼基材の再生方法。
  6. レーザ照射によって前記熱処理を施すこと、
    を特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の高速度工具鋼基材の再生方法。
  7. 前記高速度工具鋼基材と前記補修肉盛層の組成が略同一であること、
    を特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の高速度工具鋼基材の再生方法。
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