以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施形態によるトイレ装置である。
以下の実施形態の説明では、「上側」、「下側」、「前側」、「後側」、「右側」、および「左側」を用いるが、これらの方向は、図1に示すように、便座30に座った使用者から見た方向である。
図1に示すように、トイレ装置1は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)2と、便器2の上側に設けられた便座装置10とを備える。便器2は、下方に向けて窪んだボウル部(図示せず)において使用者の尿や便などの排泄物を受ける。
図2は、図1中のトイレ装置を右斜め後方からみた斜視図である。
図3は、図2中の本体部と便蓋とを矢示A-A方向からみた断面図である。
便座装置10は、便器2の上に設置される本体部20と、本体部20に回転可能に軸支された便座30と、本体部20に回転可能に軸支された便蓋40とを備えている。便座30と便蓋40とは、本発明の便体を構成している。便座装置10の本体部20は、便器2の後方上側に設置されている。本体部20は、後端側で便蓋40を開閉可能に軸支し、便蓋40よりも前側で便座30を開閉可能に軸支している。
本体部20は、内部が空洞のボックス状に形成され、便座30を開閉させる便座用電動開閉機構50、便座30の開動作速度を検出する便座速度検出部53、便蓋40を開閉させる便蓋用電動開閉機構60、便蓋40の開動作速度Vtを検出する便蓋速度検出部63、便座用電動開閉機構50および便蓋用電動開閉機構60を制御する制御部70が内蔵されている。また、本体部20には、その他に便座30の温度を制御する便座暖房ユニット、人体局部の洗浄を行う洗浄ユニット、臭気成分を低減する脱臭ユニット、およびリモコン等の操作部と通信可能な通信ユニット等(いずれも図示せず)が必要に応じて内蔵されている。
本体部20の上端側には、前端側の左右両端に便座30を回転可能に取付けるための便座取付部(図示せず)が設けられている。また、本体部20の上端側には、各便座取付部の後側に便蓋40を回転可能に取付けるための便蓋取付部22がそれぞれ設けられている。図3に示すように、便蓋取付部22は、本体部20の側面から左右方向の内側に窪んで形成されている。便蓋取付部22は、上方が開口した開口部22aとなり、上下方向の底部22bが前後方向に延びる半円形状の湾曲面となっている。すなわち、底部22bは、本体部20の上面20aから凹状に湾曲している。
そして、便蓋取付部22の側面部22cには、中央部に上下方向に延びる規制部材23が突出して設けられている。規制部材23は、便蓋40が全開角度に開いているとき(すなわち、起立しているとき)に、便蓋40が本体部20から取外されるのを許可し、それ以外の角度のときには便蓋40が本体部20から取外されるのを規制するものである。規制部材23の中央部には、回動軸62aが左右方向の外側に向けて突出している。この回動軸62aは、便蓋用電動開閉機構60の一部を構成するもので、本体部20の内部でモータ61に接続されている。この回動軸62aは、便蓋40の便蓋回動部42と係合して、便蓋40を便座30上に閉じた閉位置と起立した開位置との間で回転させるためのものである。
図1に示すように、便座30は、左右両側の後端が便座回動部31(右側のみ図示)となり、本体部20の便座取付部に回転可能に軸支されている。便座30は、便座回動部31が便座取付部に設けられた便座用電動開閉機構50に取付けられている。便座30は、例えばリモコン等の操作部からの指示や、人体検知センサによる使用者の検知により便座用電動開閉機構50が駆動して、便器2の上方に位置する閉位置と便器2を開放する開位置との間で電動開閉される。
便蓋40は、本体部20の便蓋取付部22に回転可能に軸支されている。図1に示すように、便蓋40は、便座30を覆う平板状の蓋部41と、蓋部41の後端側(本体部20側)の左右両端に設けられた便蓋回動部42とを備えている。便蓋回動部42は、本体部20の便蓋取付部22に対応する位置で、蓋部41から突出して設けられている。図3に示すように、便蓋回動部42は、便蓋40を閉じた状態で後端側が開口部42aとなったC字状に形成されている。
便蓋40は、便蓋40を起立状態にしたときに本体部20に対して着脱可能となっている。具体的には、便蓋40は、起立状態で便蓋回動部42の開口部42aから規制部材23を挿通させて、便蓋回動部42を回動軸62aに係合させることができるようになっている。そのため、図2、図3に示すように、便蓋40を閉じたときには、開口部42aが後方に向けて開口することになる。従って、便蓋40の開口部42aと本体部20の開口部22aとの間には、所定の隙間43が形成される。また、便蓋40を閉じた状態では、規制部材23が開口部42aを挿通することができないようになっている。この場合、図2示すように、左右の便蓋回動部42が蓋部41から突出しているので、左右の便蓋回動部42の間に位置する蓋部41と本体部20の上面20aとの間には、隙間44が形成される。
図4は、トイレ装置の電動システムを示すブロック図である。
便座用電動開閉機構50は、本体部20内に設けられている。便座用電動開閉機構50は、モータ51を有し、モータ51の出力により便座30を電動開閉する。具体的には、便座用電動開閉機構50は、モータ51と、モータ51に接続された伝達機構52とを有している。モータ51は、制御部70を介して本体部20内の電源回路80に電気的に接続されている。電源回路80は、外部の電力源に接続されている。伝達機構52は、モータ51の出力軸に接続されるギア部(図示せず)と、一端側がギア部に接続され他端側が便座30の便座回動部31に接続される回動軸(図示せず)とを有している。これにより、便座用電動開閉機構50は、制御部70により制御されて便座30を電気的に開閉動作させる。
便座速度検出部53は、便座30の開動作速度を検出するものである。便座速度検出部53は、例えばロータリエンコーダからなり、回動軸の回転速度を検出する。便座速度検出部53は、例えば便座30の閉位置と開位置との間の途中位置を速度検出点としている。速度検出点は、例えば便座30を開動作させたときに、開位置からモータ51の数パルス分手前として設定することができる。そして、便座速度検出部53は、速度検出点での回動軸の変位(パルス信号)を検出して、その検出値を制御部70に出力する。
便蓋用電動開閉機構60は、本体部20内に設けられ、便座用電動開閉機構50と同様の構成となっている。便蓋用電動開閉機構60は、モータ61を有し、モータ61の出力により便蓋40を電動開閉する。具体的には、便蓋用電動開閉機構60は、モータ61と、モータ61に接続された伝達機構62とを有している。モータ61は、制御部70を介して本体部20内の電源回路80に電気的に接続されている。伝達機構62は、モータ61の出力軸に接続されるギア部(図示せず)と、一端側がギア部に接続され他端側が便蓋40の便蓋回動部42に接続される回動軸62a(図3参照)とを有している。これにより、便蓋用電動開閉機構60は、制御部70により制御されて便蓋40を電気的に開閉動作させる。
便蓋速度検出部63は、便蓋40の開動作速度Vtを検出するものである。便蓋速度検出部63は、例えばロータリエンコーダからなり、回動軸62aの回転速度を検出する。便蓋速度検出部63は、例えば便蓋40の閉位置と開位置との間の途中位置を速度検出点としている。速度検出点は、例えば便蓋40を開動作させたときに、開位置からモータ61の数パルス分手前として設定することができる。そして、便蓋速度検出部63は、速度検出点での回動軸62aの変位(パルス信号)を検出して、その検出値を制御部70に出力する。
制御部70は、例えばマイクロコンピュータ等によって構成され、便座用電動開閉機構50と、便蓋用電動開閉機構60とを制御するものである。具体的には、制御部70は、便座用電動開閉機構50のモータ51に電力を供給して便座30に駆動力を付与する。また、制御部70は、便蓋用電動開閉機構60のモータ61に電力を供給して便蓋40に駆動力を付与する。これにより、便座30と便蓋40とは、開位置と閉位置との間で電動開閉が行われる。
また、制御部70は、記憶部75に記憶された開動作速度処理のプログラムを実行して、便座30と便蓋40との開動作速度を制御する。制御部70が実行する便座30と便蓋40との開動作速度制御は、同様の制御となっているので、以下便蓋40の開動作速度制御について説明し、便座30の開動作速度制御についてはその説明を省略する。
制御部70は、便蓋速度検出部63によって便蓋40の開動作速度Vtを検出する速度検出工程と、速度検出工程の検出結果に基づいて、便蓋40の開動作速度Vtが設定速度よりも遅いか速いかを判定する速度判定工程と、速度判定工程の判定結果に基づいて、便蓋40の開動作速度Vtが設定速度に近づくようにモータ61の出力を変更する出力変更工程とを有している。
そして、制御部70は、速度判定工程によって、便蓋40の開動作速度Vtが遅いことを1回のみ検知した場合には、出力変更工程を実行せず、速度判定工程によって、便蓋40の開動作速度Vtが遅いことを複数回検知した場合には、出力変更工程を実行する。設定速度は、所定の速度範囲(下限速度閾値Vdと上限速度閾値Vuとの間)をもって設定されている。すなわち、設定速度は、出力変更工程を実行した場合の目標速度となっている。
制御部70は、例えば便蓋40の開動作速度Vtが遅いことを複数回(例えば、3回)連続して検知した場合に、出力変更工程を実行する。この出力変更工程は、モータ61に対する出力を高くすることにより、便蓋40の開動作速度Vtを速くすることができる。この場合、制御部70は、複数回の開動作速度Vtのうち、最も速い開動作速度Vtmaxに基づいて出力変更工程を実行することができる。これにより、便蓋40に使用者の手が当たるなどのイレギュラな事象で便蓋40の開動作速度Vtが変化するのを抑制できる。また、制御部70は、便蓋40の重み等で便蓋用電動開閉機構60の負荷が変化したことに対応して、いち早く便蓋40の開動作速度Vtを最適に補正することができる。
また、制御部70は、速度判定工程によって、便蓋40の開動作速度Vtが速いことを1回検知した場合に、出力変更工程を実行する。この出力変更工程は、モータ61に対する出力を低くすることにより、便蓋40の開動作速度Vtを遅くすることができる。すなわち、モータ61の出力を弱めて、便蓋40の開動作速度Vtを遅くする場合は、より安全側への変更になるため、1回のみの検知でもすぐに出力変更を行い、便蓋40の速度を早期に最適速度(設定速度)に補正することができる。
記憶部75は、例えばフラッシュメモリによって構成され、制御部70が行う便蓋40の開動作制御の他に、図5に示す開動作速度処理のプログラムが格納(記憶)されている。また、記憶部75には、便蓋40の下限速度閾値Vdと、上限速度閾値Vuとが記憶されている。下限速度閾値Vdと上限速度閾値Vuとは、便蓋40の最適な開動作速度Vtを設定したもので、実験、シミュレーション等により定めることができる。すなわち、便蓋40は、下限速度閾値Vdと上限速度閾値Vuとの間の速度が目標速度となっている。
また、記憶部75には、便蓋40の開動作速度Vtが遅いことを複数回検知するためのカウンタTの閾値Tmaxが記憶されている。閾値Tmaxは、便蓋40の開動作速度Vtが遅かったときの回数Tの閾値で、T=0(リセット時に0)とした場合にはTmaxは2以上に設定される。すなわち、閾値Tmaxは、遅かった開動作速度Vtが何回連続した場合に、制御部70がモータ61の出力を変更するかを設定するものである。
記憶部75には、駆動デューティ比を変化させた複数レベルの動作テーブルが記憶されている。制御部70は、モータ61の出力を高くするときには開動作速度Vtと下限速度閾値Vdとの速度差から各レベルの動作テーブルを決定する。すなわち、制御部70は、開動作速度Vtと下限速度閾値Vdとの速度差に基づき、便蓋40が目標速度になるように、モータ61への出力値を制御する。
記憶部75は、制御部70に接続され、制御部70のによる出力変更工程によって変更されたモータ61の最新出力値を記憶する。この記憶部75は、トイレ装置1の電源をオフにすることにより、記憶部75への電源が切断された場合であっても、少なくとも最新出力値を記憶している。これにより、電源が切断されたとしても、電源の再投入後には電源切断前のモータ出力を引き継ぐことができるので、便蓋40の開動作速度Vtが速くなることをより確実に抑制できる。記憶部75は、例えば不揮発性である。記憶部75には、例えばフラッシュメモリなどの不揮発性メモリが用いられる。
本実施形態による便座装置10は、上述の如き構成を有するもので、次に便座装置10の作動について説明する。
便座装置10は、例えばリモコン等の操作部からの指示や、人体検知センサによる使用者の検知により、便座30および便蓋40の開閉動作が電気的に行われる。この場合、例えば便蓋40にカバー等が取付けられたときには、便蓋40の重量が増加するので、便蓋40の開閉動作の速度が変化する場合がある。
そこで、上述した従来技術では、便蓋を最適な速度で電動開閉動作させるために、便蓋の実際の開動作の速度を検出して、目標速度と差がある場合には次回動作時からモータの出力を変化させている。しかし、従来技術では、便蓋の開動作中に使用者の手が触れるなどのイレギュラな速度変化に対しても反応してしまい、次回動作時に便蓋の開動作速度が速くなり過ぎてしまう虞がある。
ところで、便蓋40は、起立した状態(開位置)で上下方向に移動させることで本体部20に対して着脱可能となっている。従って、便蓋40の便蓋回動部42と本体部20の便蓋取付部22との間には、所定の隙間43が形成されている。また、本体部20の上面20aと便蓋40との間には、隙間44が形成されている。この場合、例えば使用者が便座装置10の掃除をしているときに、便蓋40が高速で開動作すると、使用者の指が隙間43、44に挟まれたり、使用者に便蓋40が強く接触したりする虞がある。
そこで、本実施形態では、制御部70は、速度判定工程によって、便蓋40の開動作速度Vtが遅いことを1回のみ検知した場合には、モータ61への出力変更工程を実行せず、速度判定工程によって、便蓋40の開動作速度Vtが遅いことを複数回連続して検知した場合には、モータ61への出力変更工程を実行している。
一例を挙げると、制御部70は、便蓋40の開動作速度Vtが下限速度閾値Vd未満であることを3回(Tmax=3)連続して検出した場合に、モータ61の出力変更工程を実行する。この場合、制御部70は、3回の開動作速度Vtのうち、最も速い開動作速度Vtmaxに基づいてモータ61の出力を変更する。これにより、便蓋40が開動作の途中で止まった場合等のイレギュラな事象を排除して、便蓋40が高速で開動作することを抑制できる。
また、トイレ装置1は、例えば使用者が掃除を行うときに電源が切断され、掃除が終わった後に電源が再投入されることがある。このような場合に、記憶部75に記憶されたモータ61への出力値が消去されて、初期値に戻されると、電源再投入後の便蓋40の開動作速度Vtが変化してしまう。そこで、記憶部75は、トイレ装置1の電源が切断された場合でも最後に記憶されたモータ61への最新出力値を消去せずに記憶している。これにより、電源の再投入後には、電源切断前のモータ出力を引き継ぐことができるので、便蓋40の開動作速度Vtが変化することをより確実に抑制できる。
次に、制御部70が行う便蓋40の開動作制御について図5を参照して説明する。なお、便座30についても同様の開動作制御が実行されるので、便座30の開動作制御の説明については省略する。図5に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用い、例えばステップ1を「S1」として示すものとする。また、図5の制御処理は、例えばトイレ装置1に通電している間、所定の制御周期で繰り返し実行される。
図5は、図4中の制御部が行う開動作速度制御を示す流れ図である。
まず、S1では、便蓋40の開動作があるか否かを判定する。制御部70は、例えばリモコン等の操作部からの指示や、人体検知センサによる使用者の検知を受信することにより、便蓋40が開動作があるか否かを判定することができる。そして、S1で「YES」、すなわち便蓋40の開動作ありと判定された場合には、S2に進む。一方、S1で「NO」、すなわち便蓋40の開動作なしと判定された場合には、便蓋開動作の監視を行う。
S2では、開動作速度Vtを検出する速度検出工程を実行する。この場合、制御部70は、便蓋速度検出部63から速度検出点での検出値(パルス信号)を受信する。そして、制御部70は、この検出値から開動作速度Vtを演算する。なお、便蓋40が開動作の途中で止められた場合や速度検出点より開位置側から開動作された場合には、開動作速度Vt=0°/秒として設定する。
次のS3では、開動作速度Vtが下限速度閾値Vd以上で、上限速度閾値Vu以下か否かを判定する速度判定工程を実行する(Vd≦Vt≦Vu)。この場合、制御部70は、記憶部75から下限速度閾値Vdと上限速度閾値Vuとを読み込み、開動作速度Vtと比較して便蓋40の現在の開動作速度Vtが目標速度となっているか否かを判定する。そして、S3で「YES」、すなわち便蓋40が目標速度以内で開動作していると判定された場合には、S4に進む。一方、S3で「NO」、すなわち便蓋40の開動作が遅すぎるか速すぎると判定された場合には、S6に進む。
S4では、モータ61への次回出力を現在の出力に維持して(出力変更なし)、S5に進み、カウンタTをリセット(T=0)してリターンする。
S6では、開動作速度Vtが上限速度閾値Vuより大きいか否かを判定する速度判定工程を実行する(Vt>Vu)。この場合、制御部70は、記憶部75から上限速度閾値Vuが開動作速度Vtと比較して便蓋40の現在の開動作速度Vtが速すぎるか遅すぎるかを判定する。そして、S6で「YES」、すなわち便蓋40の開動作速度Vtが速すぎると判定された場合には、S7に進む。一方、S6で「NO」、すなわち便蓋40の開動作速度Vt下限速度閾値Vd未満であり、遅すぎると判定された場合には、S8に進む。
S7では、モータ61への次回出力を低くする出力変更工程を実行する。この場合、制御部70は、開動作速度Vtと目標速度との速度差に基づき、記憶部75から動作テーブルを決定して、S5に進み、カウンタTをリセット(T=0)してリターンする。目標速度は、例えば下限速度閾値Vdと上限速度閾値Vuとの中間速度に設定されている。
S8では、カウンタTを加算する(T=T+1)。すなわち、制御部70は、便蓋40の開動作速度Vtが遅い場合には、その回数を記憶部75に記憶させて、S9に進む。また、制御部70は、開動作速度VtをカウンタTの回数に対応させて記憶部75に記憶する。
次のS9では、カウンタTが閾値Tmaxか否かを判定する。すなわち、制御部70は、記憶部75から閾値Tmaxを読み込み、カウンタTが閾値Tmaxに達しているか否かを判定する。この場合、開動作速度Vtが目標速度の場合と速すぎる場合とでは、S5でカウンタTをリセットしている。従って、閾値Tmaxは、遅すぎる開動作速度Vtの連続回数となっている。そして、S9で「YES」、すなわち、カウンタTが閾値Tmaxに達していると判定された場合には、S10に進む。一方、S9で「NO」、すなわちカウンタTが閾値Tmaxに達していないと判定された場合には、S11に進み、モータ61への次回出力を現在の出力に維持して(出力変更なし)、リターンする。
S10では、複数の開動作速度Vtのうち最も速い速度Vtmaxを算出する。すなわち、制御部70は、記憶部75に記憶された複数の開動作速度Vtを読み込み、速い速度Vtmaxを抽出して、S12に進む。この場合、最も速い速度Vtmaxよりも遅い開動作速度Vtは、便蓋40に使用者の手が当たって便蓋40の速度が遅くなった等のイレギュラな事象である可能性が高い。従って、それを基準に出力補正すると次回の便蓋40の速度が速くなりすぎる虞がある。従って、制御部70は、最も速い速度Vtmaxを抽出している。
S12では、開動作速度Vtmaxに基づき、モータ61への次回出力を高くする出力変更工程を実行する。この場合、制御部70は、開動作速度Vtmaxと目標速度との速度差に基づき、記憶部75から動作テーブルを決定する。モータ61は、制御部70により出力が高くされることで、回転数を上げることができ、便蓋40を目標速度で開動作させることができる。そして、S5に進み、カウンタTをリセット(T=0)してリターンする。
なお、目標速度は、上限速度閾値Vuを設定してもよいし、下限速度閾値Vdを設定してもよい。すなわち、目標速度は、下限速度閾値Vdと上限速度閾値Vuとの間で設定することができる。この場合、目標速度を下限速度閾値Vdと上限速度閾値Vuとの間の中間速度に設定することで、次回の開動作速度Vtに所定の幅をもたせることができ、出力補正の回数を低減させることができる。本実施形態では、図5中のS2が本発明の速度検出工程を構成し、S3とS6とが本発明の速度判定工程を構成し、S7とS12とが本発明の出力変更工程を構成している。
かくして、本実施形態では、制御部70は、便蓋速度検出部63によって便蓋40の開動作速度Vtを検出する速度検出工程と、速度検出工程の検出結果に基づいて、便蓋40の開動作速度Vtが設定速度よりも遅いか速いかを判定する速度判定工程と、速度判定工程の判定結果に基づいて、便蓋40の開動作速度Vtが設定速度に近づくようにモータ61の出力を変更する出力変更工程と、を有しており、速度判定工程によって、便蓋40の開動作速度Vtが遅いことを1回のみ検知した場合には、出力変更工程を実行せず、速度判定工程によって、便蓋40の開動作速度Vtが遅いことを複数回検知した場合には、出力変更工程を実行する。
これにより、便蓋40の開動作速度Vtが遅いことを1回のみ検知した場合には、出力変更工程を実行しないため、便蓋40に使用者の手が当たるなどのイレギュラな事象により便蓋40の開動作速度Vtが誤って速くなることを抑制できる。また、便蓋40の開動作速度Vtが遅いことを複数回検知した場合には、出力変更工程を実行するため、便蓋40の重みや、便蓋用電動開閉機構60の負荷が変化した場合には、便蓋40を最適な開動作速度Vtに補正することができる。
また、制御部70は、速度判定工程によって、便蓋40の開動作速度Vtが遅いことを複数回連続して検知した場合に、出力変更工程を実行する。これにより、便蓋40に使用者の手が当たるなどのイレギュラな事象で便蓋40の開動作速度Vtが変化するのを抑制できる。また、便蓋40の開動作速度Vtが遅いことを複数回連続して検知した場合には、出力変更工程を実行することにより、便蓋40の重みや、便蓋用電動開閉機構60の負荷が変化したことに対応して、いち早く便蓋40の開動作速度Vtを最適に補正することができる。
また、制御部70は、速度判定工程によって、便蓋40の開動作速度Vtが遅いことを複数回検知した場合に、複数回の開動作速度Vtのうち最も速い開動作速度Vtmaxに基づいて出力変更工程を実行する。この場合、便蓋40の最も遅い開動作速度Vtは便蓋40に使用者の手が当たった等のイレギュラな事象である可能性が高い。従って、それを基準に出力補正すると便蓋40の速度が速くなりすぎる虞がある。しかし、本発明によれば、最も速い開動作速度Vtmaxを基準に出力補正しているため、便蓋40の速度が速くなりすぎることを抑制できる。
また、制御部70は、速度判定工程によって、便蓋40の開動作速度Vtが速いことを1回検知した場合に、出力変更工程を実行する。この場合、モータ61の出力を弱めて開動作速度Vtを遅くする場合は、より安全側への変更になるため、1回のみの検知でもすぐに出力変更を行い、便蓋40の速度を早期に最適速度に補正することができる。
また、出力変更工程によって変更されたモータ61の最新出力値を記憶する記憶部75を備え、記憶部75は、記憶部75への電源が切断された場合であっても、最新出力値を記憶している。これにより、電源が切断されたとしても、電源の再投入後には電源切断前のモータ出力を引き継ぐことができるので、便蓋40の開動作速度Vtが変化することをより確実に抑制できる。
なお、上述した実施形態では、制御部70は、便蓋40と便座30との開動作制御を実行することを例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、制御部70は、便座30のみに開動作制御を実行させてもよいし、便蓋40のみに開動作制御を実行させてもよい。すなわち、制御部70は、便座30と便蓋40とのうち、少なくとも一方の開動作制御の実行を行う。
また、上述した実施形態では、制御部70は、下限速度閾値Vdよりも小さい開動作速度Vtが複数回連続して検出されたときに、出力変更工程を実行した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば制御部70は、下限速度閾値Vdよりも小さい開動作速度Vtが複数回検出されたときに、出力変更工程を実行してもよい。一例を挙げると、下限速度閾値Vdよりも小さい開動作速度Vtが連続ではなく3回検出された場合に出力変更工程を実行してもよい。この場合、例えば開動作回数に上限(閾値)をもうけてもよい。5回の開動作の検出を上限として、そのうちの3回が下限速度閾値Vdよりも小さい開動作速度Vtとなっているときに出力変更工程を実行してもよい。
また、上述した実施形態では、便蓋40が途中で止まった場合等により、開動作速度Vtを検出できないときには、開動作速度Vt=0°/秒とみなした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば開動作速度Vtを検出できない場合には、イレギュラな事象が起こっているものとみなして、開動作のカウントを行わなくてもよい。
また、上述した実施形態では、制御部70は、複数の遅い開動作速度Vtのうち、最も速い開動作速度Vtmaxを用いて、出力変更工程を実行した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば制御部70は、複数の遅い開動作速度Vtの平均値を用いて出力変更工程を行ってもよい。
また、上述した実施形態では、制御部70は、便座30と便蓋40との開閉動作制御を行うことを例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば便座30と便蓋40との開閉動作制御は、別々の制御部によって行われてもよい。
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便座装置10が備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。