以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
[1.第1実施形態]
[1-1.シート製造装置の全体構成]
図1は、シート製造装置100の構成を示す模式図である。
シート製造装置100は、繊維を含む原料MAを繊維化して、新しいシートSに再生する再生処理を実行する。シート製造装置100は、複数の種別のシートSを製造可能であり、例えば、原料MAに添加物を混合することにより、用途に合わせて、シートSの結合強度や白色度の調製や、色、香り、難燃等の機能を付加することもできる。また、シート製造装置100は、シートSの密度や厚さ、サイズ、形状を調整可能である。シートSの代表的な例として、A4やA3の定型サイズの印刷用紙、床掃除用シート等の掃除用シート、油汚れ用シート、トイレ掃除用シート等のシート状の製品の他に、紙皿形状等が挙げられる。
シート製造装置100は、収容供給部10、粗砕部12、解繊部20、選別部40、第1ウェブ形成部45、回転体49、混合部50、堆積部60、第2ウェブ形成部70、搬送部79、シート形成部80、及び、切断部90を備える。粗砕部12は本発明の供給部に相当する。解繊部20は本発明の解繊処理装置に相当する。
粗砕部12、解繊部20、選別部40、及び、第1ウェブ形成部45は、原料MAを微細化してシートSの材料を得る解繊処理部101を構成する。また、回転体49、混合部50、堆積部60、第2ウェブ形成部70、シート形成部80、及び、切断部90は、解繊処理部101で得られる材料を処理してシートSを製造する製造部102を構成する。
収容供給部10は、原料MAを収容し、粗砕部12に原料MAを連続的に投入する自動投入装置である。原料MAは、繊維を含むものであればよく、例えば、古紙、廃棄紙、パルプシートである。
粗砕部12は、収容供給部10によって供給された原料MAを裁断する粗砕刃14を備え、原料MAを粗砕刃14により空気中で裁断して、数cm角の細片にする。細片の形状や大きさは任意である。粗砕部12は、例えばシュレッダーを用いることができる。粗砕部12で裁断された原料MAは、ホッパー9により集められて、管2を介して解繊部20に搬送される。
解繊部20は、粗砕部12によって裁断された粗砕片を解繊する。解繊とは、複数の繊維が結着された状態の原料MAを、1本または少数の繊維に解きほぐす加工である。原料MAは、被解繊物と呼ぶこともできる。解繊部20が原料MAを解繊することにより、原料MAに付着した樹脂粒やインク、トナー、にじみ防止剤等の物質を、繊維から分離させる効果も期待できる。解繊部20を通過したものを解繊物という。解繊物は、解きほぐされた解繊物繊維の他に、繊維を解きほぐす際に繊維から分離された樹脂粒や、インク、トナーなどの色剤や、にじみ防止材、紙力増強剤等の添加剤を含んでいてもよい。解繊物に含まれる樹脂粒は、原料MAの製造時に複数の繊維同士を結着させるために混合された樹脂である。解繊物に含まれる繊維の形状は、ひも状、すなわち、string状や、平ひも、すなわち、ribbon状である。解繊物に含まれる繊維は、他の繊維と絡み合っていない、独立した状態で存在してもよい。或いは、他の解きほぐされた解繊物と絡み合って塊状となり、いわゆる「ダマ」を形成している状態で存在してもよい。
解繊部20は、乾式で解繊を行う。乾式とは、液体中ではなく、大気中、空気中等の気中において、解繊等の処理を行うことを指す。解繊部20は、例えば、インペラーミルなどの解繊機を用いて構成することができる。具体的には、解繊部20は、図示は省略するが、回転するローター、及び、ローターの外周に位置するライナーを備え、粗砕片をローターとライナーとの間に挟んで解繊する。
粗砕部12から解繊部20には、気流により粗砕片が搬送される。この気流を解繊部20が発生する構成であってもよいし、粗砕片や解繊物の搬送方向における解繊部20の上流または下流側に、不図示のブロアーを設けて、気流を発生させてもよい。また、解繊物は、気流により、解繊部20から管3を介して選別部40に移送される。解繊物を選別部40に搬送する気流は、解繊部20が発生させてもよいし、上述したブロアーの気流を利用してもよい。
選別部40は、解繊部20により解繊された解繊物に含まれる成分を繊維のサイズによって選別する。繊維のサイズとは、主に繊維の長さを指す。選別部40は、ドラム部41と、ドラム部41を収容するハウジング部43とを有する。ドラム部41は、例えば、篩を用いる。具体的には、ドラム部41は、開口を有して篩として機能する網、フィルター、スクリーン等を備える。より詳細には、ドラム部41は、モーターによって回転駆動される円筒形状であり、周面の少なくとも一部が網となる。ドラム部41の網は、金網、切れ目が入った金属板を引き延ばしたエキスパンドメタル、パンチングメタル等で構成される。導入口42からドラム部41の内部に導入された解繊物は、ドラム部41の回転により、ドラム部41の開口を通過する通過物と、開口を通過しない残留物とに分けられる。開口を通過した通過物は、開口より小さい繊維または粒子を含み、これを第1選別物とする。残留物は、開口より大きい繊維や未解繊片やダマを含み、これを第2選別物と呼ぶ。第1選別物は、ハウジング部43内の内部を、第1ウェブ形成部45に向けて下降する。第2選別物は、ドラム部41の内部に連通する排出口44から、管8を介して解繊部20に搬送される。
シート製造装置100は、選別部40に代えて、第1選別物と第2選別物とを選別および分離する分級機を備えてもよい。分級機は、例えば、サイクロン分級機、エルボージェット分級機、エディクラシファイヤーである。これらの分級機は、第1選別物に含まれる成分のうち、より小さいものや密度の低いものを分離する構成であってもよい。例えば、第1選別物から、解繊部20で繊維から引きはがされた樹脂粒や色剤や添加剤を、分級機で分離し、除去する構成を採用できる。この場合、第1選別物を、樹脂粒や色剤や添加剤などの微細な粒子を除いた状態にして、第1ウェブ形成部45や、混合部50に搬送できる。
第1ウェブ形成部45は、メッシュベルト46と、張架ローラー47と、吸引部48と、を備える。メッシュベルト46は、無端形状の金属製ベルトであり、複数の張架ローラー47に架け渡される。メッシュベルト46は、張架ローラー47により構成される軌道を周回する。メッシュベルト46の軌道の一部は、ドラム部41の下方で平坦であり、メッシュベルト46は平坦面を構成する。吸引部48はサクション機構に相当する。
メッシュベルト46には多数の開口が形成される。メッシュベルト46の上方に位置するドラム部41から降下する第1選別物のうち、メッシュベルト46の開口より大きい成分がメッシュベルト46に堆積する。また、第1選別物のうちメッシュベルト46の開口より小さい成分は、開口を通過する。
吸引部48は、図示しないブロアーを備え、メッシュベルト46に対してドラム部41とは反対側から、空気を吸引する。メッシュベルト46の開口を通過する成分は吸引部48によって吸い込まれる。吸引部48が吸引する気流は、ドラム部41から降下する第1選別物をメッシュベルト46に引き寄せることで、堆積を促進する効果がある。
メッシュベルト46に堆積した成分はウェブ形状となり、第1ウェブW1を構成する。つまり、第1ウェブ形成部45は、選別部40で選別された第1選別物から第1ウェブW1を形成する。メッシュベルト46、張架ローラー47および吸引部48の基本的な構成は、後述する第2ウェブ形成部70のメッシュベルト72、張架ローラー74およびサクション機構76と同様である。
第1ウェブW1は、第1選別物に含まれる成分のうち、メッシュベルト46の開口より大きい繊維を主たる成分としており、空気を多く含み柔らかくふくらんだ状態に形成される。第1ウェブW1は、メッシュベルト46の移動に伴い回転体49に搬送される。
回転体49は、モーター等の不図示の駆動部に連結された基部49aと、基部49aから突出する突部49bを備え、基部49aが方向Dに回転することにより、突部49bが基部49aを中心として回転する。突部49bは、例えば、板状の形状を有する。図1の例では、基部49aに、4つの突部49bが等間隔に設けられる。
回転体49は、メッシュベルト46の軌道のうち平坦部分の端部に位置する。この端部ではメッシュベルト46の軌道が下方に屈曲しているため、メッシュベルト46が下方に屈曲して移動する。このため、メッシュベルト46が搬送する第1ウェブW1は、メッシュベルト46から突出して、回転体49に接触する。第1ウェブW1は、突部49bが第1ウェブW1に衝突することによって解きほぐされ、小さい繊維の塊となる。この塊は、回転体49の下方に位置する管7を通り、混合部50に搬送される。第1ウェブW1は、上述のように、繊維がメッシュベルト46に堆積して形成された柔らかい構造であるため、回転体49に衝突した際に容易に分断される。
回転体49の位置は、突部49bが第1ウェブW1と接触可能な位置であり、突部49bがメッシュベルト46と接触しない位置に設けられる。突部49bとメッシュベルト46とが最も接近する位置における相互間の距離は、例えば、0.05mm以上0.5mm以下とすることが好ましい。
混合部50は、第1選別物と、添加物とを混合する。混合部50は、添加物を供給する添加物供給部52と、第1選別物と添加物とを搬送する管54と、混合ブロアー56と、を有する。
添加物供給部52には、添加物を蓄積する添加物カートリッジ52aがセットされる。添加物カートリッジ52aは、添加物供給部52に着脱可能であってもよい。添加物供給部52は、添加物カートリッジ52aから添加物を取り出す添加物取出部52bと、添加物取出部52bにより取り出された添加物を管54に排出する添加物投入部52cとを備える。添加物取出部52bは、添加物カートリッジ52a内部の微粉または微粒子からなる添加物を繰り出す不図示のフィーダーを備え、一部または全部の添加物カートリッジ52aから添加物を取り出す。添加物取出部52bにより取り出された添加物は、添加物投入部52cに送られる。添加物投入部52cは、添加物取出部52bが取り出した添加物を収容する。添加物投入部52cは、管54との連結部に開閉可能な不図示のシャッターを備え、シャッターを開くことで、添加物取出部52bが取り出した添加物が管54に送り出される。
添加物供給部52から供給される添加物は、複数の繊維を結着させるための樹脂、すなわち、結着剤を含む。添加物に含まれる樹脂は、シート形成部80を通過する際に溶融して、複数の繊維を結着させる。この樹脂は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であり、例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレートである。他には、この樹脂は、例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、などである。これらの樹脂は、単独または適宜混合して用いてもよい。
添加物供給部52から供給される添加物は、繊維を結着させる樹脂以外の成分を含んでもよい。例えば、製造されるシートSの種類に応じて、繊維を着色するための着色剤や、繊維の凝集や樹脂の凝集を抑制するための凝集抑制剤、繊維等を燃えにくくするための難燃剤等が含まれていてもよい。また、添加物は繊維状であってもよく、粉末状であってもよい。
混合ブロアー56は、管7と、堆積部60とを繋ぐ管54に気流を発生させる。また、管7から管54に搬送される第1選別物と、添加物供給部52により管54に供給される添加物とは、混合ブロアー56を通過する際に混合される。混合ブロアー56は、例えば、不図示のモーターと、モーターにより駆動されて回転する不図示の羽根と、羽根を収容する不図示のケースを備える構成とすることができ、羽根とケースとが連結された構成であってもよい。また、混合ブロアー56が、気流を発生させる羽根に加え、第1選別物と添加物とを混合させるミキサーを備えてもよい。混合部50で混合された混合物は、混合ブロアー56が発生する気流により、堆積部60に搬送され、堆積部60の導入口62に導入される。
堆積部60は、混合物の繊維をほぐして、空気中で分散させながら第2ウェブ形成部70に降下させる。添加物供給部52から供給される添加物が繊維状である場合、これらの繊維も堆積部60で解きほぐされ、第2ウェブ形成部70に降下する。
堆積部60は、ドラム部61と、ドラム部61を収容するハウジング部63と、を有する。ドラム部61は、例えばドラム部41と同様に構成される円筒形状の構造体であり、ドラム部41と同様に不図示のモーターの動力によって回転し、篩として機能する。ドラム部61は、開口を有し、ドラム部61の回転によって解きほぐされた混合物を、開口から下降させる。
ドラム部61の下方には第2ウェブ形成部70が配置される。第2ウェブ形成部70は、例えば、メッシュベルト72と、張架ローラー74と、サクション機構76と、を有する。
メッシュベルト72は、メッシュベルト46と同様の無端形状の金属製ベルトで構成され、複数の張架ローラー74に架け渡される。メッシュベルト72は、張架ローラー74により構成される軌道を周回する。メッシュベルト72の軌道の一部は、ドラム部61の下方で平坦であり、メッシュベルト72は平坦面を構成する。また、メッシュベルト72には多数の開口が形成される。
メッシュベルト72の上方に位置するドラム部61から降下する混合物のうち、メッシュベルト72の開口より大きい成分がメッシュベルト72に堆積する。また、混合物のうちメッシュベルト72の開口より小さい成分は、開口を通過する。
サクション機構76は、図示しないブロアーを備え、メッシュベルト72に対してドラム部61とは反対側から、空気を吸引する。メッシュベルト72の開口を通過した成分はサクション機構76によって吸い込まれる。サクション機構76が吸引する気流は、ドラム部61から降下する混合物をメッシュベルト72に引き寄せて、堆積を促進する効果がある。また、サクション機構76の気流は、ドラム部61から混合物が落下する経路にダウンフローを形成し、落下中に繊維が絡み合うことを防ぐ効果も期待できる。メッシュベルト72に堆積した成分はウェブ形状となり、第2ウェブW2を構成する。
メッシュベルト72の搬送経路において、堆積部60の下流側には、調湿部78が設けられる。調湿部78は、水をミスト状にしてメッシュベルト72に向けて供給するミスト式加湿器である。調湿部78は、例えば、水を貯留するタンクや、水をミスト状にする超音波振動子を備える。調湿部78が供給するミストにより、第2ウェブW2の含有水分量が調整されるので、静電気によるメッシュベルト72への繊維の吸着等を抑制する効果が期待できる。
第2ウェブW2は、搬送部79によって、メッシュベルト72から剥がされてシート形成部80へと搬送される。搬送部79は、例えば、メッシュベルト79aと、ローラー79bと、サクション機構79cと、を有する。サクション機構79cは、不図示のブロアーを備え、ブロアーの吸引力によってメッシュベルト79aを通じて上向きの気流を発生させる。この気流により、第2ウェブW2はメッシュベルト72から離れてメッシュベルト79aに吸着される。メッシュベルト79aは、ローラー79bの回転により移動され、第2ウェブW2をシート形成部80に搬送する。
メッシュベルト79aは、メッシュベルト46、及び、メッシュベルト72と同様に、開口を有する無端形状の金属製ベルトで構成できる。
シート形成部80は、第2ウェブW2に対して熱を加えることにより、第2ウェブW2に含まれる第1選別物由来の繊維を、添加物に含まれる樹脂により結着させる。
シート形成部80は、第2ウェブW2を加圧する加圧部82、及び、加圧部82により加圧された第2ウェブW2を加熱する加熱部84を備える。加圧部82は、一対のカレンダーローラー85、85で構成される。加圧部82は、油圧によりカレンダーローラー85、85にニップ圧を与える不図示のプレス機構と、カレンダーローラー85、85を加熱部84に向けて回転させるモーター等の不図示の駆動部とに連結される。加圧部82は、カレンダーローラー85、85によって第2ウェブW2を所定のニップ圧で加圧して、加熱部84に向けて搬送する。加熱部84は、一対の加熱ローラー86、86を備える。加熱部84は、加熱ローラー86の周面を所定温度まで加熱する不図示のヒーターと、加熱ローラー86、86を切断部90に向けて回転させるモーター等の不図示の駆動部とを備える。加熱部84は、加圧部82で高密度化された第2ウェブW2を挟んで熱を与え、切断部90に搬送する。第2ウェブW2は、加熱部84において、第2ウェブW2に含まれる樹脂のガラス転移点より高温に加熱され、シートSとなる。
切断部90は、シート形成部80で成形されたシートSを切断する。切断部90は、図中符号Fで示すシートSの搬送方向と交差する方向にシートSを切断する第1切断部92と、搬送方向Fに平行な方向にシートSを切断する第2切断部94と、を有する。切断部90は、シートSの長さおよび幅を所定のサイズにカットして、単票のシートSを形成する。切断部90でカットされたシートSは、排出部96に収容される。排出部96は、製造されたシートを収容するトレイやスタッカーを備え、トレイに排出されたシートSは、ユーザーが取り出して使用することができる。
シート製造装置100の各部は、解繊処理部101と、製造部102とを構成する。解繊処理部101は、少なくとも解繊部20を含み、選別部40および第1ウェブ形成部45を含んでもよい。解繊処理部101は、原料MAから解繊物、または、解繊物をウェブ状にした第1ウェブW1を製造する。解繊処理部101の製造物は、回転体49を経て混合部50に搬送するだけでなく、回転体49に移送せずに、シート製造装置100から取り出して貯留することも可能である。また、この製造物を所定のパッケージに封入し、搬送および取引可能な形態としてもよい。
製造部102は、解繊処理部101で製造された製造物をシートSに再生する機能部であり、加工部に相当する。製造部102は、混合部50、堆積部60、第2ウェブ形成部70、搬送部79、シート形成部80、および、切断部90を含み、回転体49を含んでもよい。また、添加物供給部52を含んでもよい。
シート製造装置100は、解繊処理部101と製造部102とを一体として構成してもよいし、別体として構成してもよい。この場合、解繊処理部101は、本発明の繊維原料再生装置に相当する。製造部102は、解繊物をシート形状に成形するシート成形部に相当する。また、これらのいずれも加工部に相当するといえる。
[1-2.解繊部の構成]
次に、本発明の解繊処理装置としての解繊部20の構成について説明する。
図2は、解繊部20の斜視図である。図3は、図2のA-A線断面図である。図4は、図2のB-B線断面図である。
図2~図4に示すように、本実施形態における解繊部20は、回転駆動される回転体160と、回転体160の周囲を覆い且つ回転体160との間にギャップGを空けて配置される円筒状の固定部材150とを備える。また、解繊部20は、回転体160および固定部材150を覆って収容するハウジング180と、ハウジング180の両端部に配置されたカバー190、200とを備える。なお、本実施形態では、固定部材150が円筒状の構成を説明するが、固定部材150は円筒状でなくても良い。例えば、固定部材150は、角筒状の構成でも良い。すなわち、固定部材150は、回転体160に対して回転体160の回転中心から離れる方向に離間して配置され且つ回転体160を覆う構成であれば良い。
解繊部20のハウジング180は、回転体160の回転軸171に沿って延びる回転体形状である。本実施形態では、回転軸171が上下方向に延びるのに応じてハウジング180などが上下方向に延びる構成を説明する。ただし、回転体160の回転軸171は水平方向に延びる構成でも良く、それに応じてハウジング180が水平方向に延びる軸中心を備えた構成でも良い。以降の説明では、回転軸171の延びる方向、すなわち、ハウジング180などの軸中心の方向を軸方向と呼ぶ。また、回転体160や固定部材150などの回転体形状の径方向の中心を軸中心110と呼ぶ。
ハウジング180の一端開口部180aには、上流カバー190が支持される。上流カバー190は、円環状の蓋部190aを備える。蓋部190aはハウジング180の外径と同一の外径に形成される。蓋部190aの下方には、下方に突出する円環状の挿入部190bが形成される。挿入部190bの外径は、ハウジング180の内径に対応する。挿入部190bがハウジング180の一端開口部180aに挿入された状態で上流カバー190が配置される。
上流カバー190の径方向中央部には、上下方向に延びる筒状の入口配管部190cが形成される。入口配管部190cは上下方向に連通して、上流カバー190及びハウジング180についての内部と外部とを連通する。入口配管部190cの上部には、上方に開口する投入口194が設けられる。投入口194には、図1に示すホッパー9の管2が接続される。投入口194を介して、管2から原料MAが解繊部20内に投入される。なお、解繊部20において原料MAとは、収容供給部10から供給された原料MAと、選別部40から解繊部20に再送された上述の第2選別物と、の両方を含んだ意味で用いる。
図2に示すように、入口配管部190cの内側下部には、軸受支持部191が形成される。軸受支持部191は、円形状の支持部191aと、支持部191aから十字方向に延びる4つの基部191bとを備える。支持部191aには、回転体160を回転可能に支持する軸受192が支持される。また、基部191b同士の間には、上下方向に連通する空間が生じており、投入口194から投入された原料MAがハウジング180の内部に移動可能である。
ハウジング180の他端開口部180bには、基部カバー200が支持される。基部カバー200は、円環状の本体部200aを備える。本体部200aはハウジング180の外径と同一の外径に形成される。本体部200aには、上方に突出する円環状の挿入部200bが形成される。挿入部200bの外径は、ハウジング180の内径に対応する。挿入部200bがハウジング180の他端開口部180bに挿入された状態で基部カバー200が配置される。基部カバー200の径方向中央部には、上方に凹んだ軸受配置部200cが形成される。軸受配置部200cには、回転体160を支持する軸受201が配置される。
図5は、図3のC-C線断面図である。なお、図5では、リングプレート155の位置が分かり易いようにリングプレート155の部分に微小なドットを付して図示する。
ハウジング180の内部には、回転体160が配置される。回転体160は、上下方向に延びる回転軸171と、回転軸171に固定支持される回転体本体161とを備える。回転体本体161は一体形状のブロックである。回転体本体161の断面形状は十字状である。回転体本体161は、回転軸171が挿通される孔162aが形成された基部162と、基部162から径方向に突出する解繊内刃163とを備える。例えば、回転体本体161は鋳造により製造可能である。回転軸171と回転体本体161とはマシンキー164を介して嵌合される。回転軸171と回転体本体161が周方向にずれることなく一体に回転可能となる。
回転軸171の一端側は、図3、図4に示すように、ボルト172が挿通され、軸受192のインナーレース192aに固定される。軸受192のアウターレース192bは軸受支持部191の支持部191aに支持される。これにより、回転軸171が軸受192に回転可能に支持される。回転軸171の他端側は、ボルト173が挿通され、軸受201のインナーレース201aに固定される。軸受201のアウターレース201bは、肉厚円筒状のステー202に固定される。ステー202は、軸受配置部200cに配置されて、ボルト204で基部カバー200に固定される。
回転軸171は、図示しない駆動機構により回転駆動される。本実施形態では、駆動機構は、チェーン及びスプロケットにより構成され、後述する回転駆動部431から動力が伝達され、図示しないチェーン及びスプロケットを介して回転軸171が駆動する。なお、駆動機構としては、チェーン及びスプロケットに代えて、例えば、モーターにより直接、回転軸171を回転させる機構や、ベルト及びプーリー、又はギア等の動力伝達装置を介して回転軸171を回転させる機構等でも良い。
図6は、固定部材150の斜視図である。図6では、固定プレート151およびリングプレート155の外側面に微小なドットを付して図示する。
ハウジング180の内部には、固定部材150が配置される。固定部材150は回転体160の回転軸171に沿って延びる円筒状の部材であり、回転体160の周囲を覆う。
図7は、固定プレート151の平面図である。図8は、リングプレート155の平面図である。
図6~図8に示すように、固定部材150は、複数の固定プレート151とリングプレート155とを積層することによって、円筒状に形成される。図6に示すように、本実施形態では、複数枚の固定プレート151が積層される毎に、リングプレート155が一枚積層され、これが複数回繰り返されることで、固定部材150が構成される。
図7に示すように、固定プレート151は、板状の部材であり、平面視において円環状の形状の本体部151bを有する。固定プレート151の本体部151bの内周部には、軸中心110に向う方向に、山状に突出する解繊外刃152が形成される。解繊外刃152は周方向に等間隔に形成される。解繊外刃152は、周方向に凹凸形状を構成する。固定プレート151において、軸中心110から各解繊外刃152の頂部152aまでの距離である内径はR1に形成される。また、軸中心110から各解繊外刃152の間の谷部152bまでの距離である内径はR2に形成される。谷部152bは解繊外刃152の刃と刃の間の凹部に相当する。
固定プレート151には、厚み方向に貫通する固定孔151aが一対設けられる。固定孔151aには、図6に示すように、ボルト157が挿通され、固定プレート151間の周方向の位置決めがされる。本実施形態では、積層される解繊外刃152の刃の位置は一致しており、頂部152aおよび谷部152bが軸方向に筋状に延びる。
固定部材150の解繊外刃152は、回転体160が固定部材150の内側で回転した場合に、固定部材150の内周面と回転体本体161の解繊内刃163とのギャップGに進入した被解繊物を解きほぐすような気流を生じさせる機能を有する。解繊外刃152の凹凸形状は、回転体160が固定部材150内で回転した場合に、ギャップGに進入した被解繊物を解きほぐすような気流を生じさせることができるかぎり任意である。例えば、解繊外刃152は、突出した台形形状であり、その先端に平面部が形成されてもよい。その上で、解繊外刃152は、鋭利な形状でないことがより好ましい。例えば、解繊外刃152が先端ほど厚みが薄く鋭利な形状である場合、回転体160の回転により被解繊物が解繊外刃152に衝突したときに、解繊外刃152が被解繊物に食込んで繊維を過剰に切断する可能性があるためである。
図8に示すように、リングプレート155は、板状の部材であり、平面視において円環状の本体部155aを有する。リングプレート155はスペーサー部材に対応する。リングプレート155の内径R11は、固定プレート151の解繊外刃152の頂部152aまでの内径R1よりもやや大きく形成される。リングプレート155の外径R12は、固定プレート151の内周面、すなわち、谷部152bまでの内径R2よりも小さく形成される。リングプレート155の外周部には、固定片156が軸中心110を挟んで一対形成される。固定片156には、厚み方向に貫通する固定孔156aが設けられる。つまり、リングプレート155には固定孔156aが一対設けられる。各固定孔156aには、固定プレート151を固定するボルト157が挿通され、リングプレート155の位置決めがされる。
複数の固定プレート151とリングプレート155が積層されて、固定部材150が構成される。積層された固定プレート151の本体部151bとリングプレート155の本体部155aとにより、固定部材150の内壁部150aが構成される。内壁部150aには解繊外刃152が設けられる。固定部材150は、図3、図4に示すようにボルト157が基部カバー200の挿入部200bに固定される。
なお、固定プレート151やリングプレート155の厚みは、特に限定されないが、固定プレート151とリングプレート155の厚みは同程度に形成されることが好ましい。また、固定部材150では、3枚の固定プレート151が積層される毎にリングプレート155が1枚積層されたが、これに限らない。固定プレート151やリングプレート155を積層する枚数は、解繊部20の処理能力や、後述する回転体160の解繊内刃163とのギャップG等の設計に応じて適宜決定することができる。固定プレート151やリングプレート155は、例えば、冷間圧延鋼板、鋼帯等をプレスによって打抜いて形成することができる。
図5、図6に示すように、複数枚の固定プレート151が連続して積層された部分では、固定プレート151同士が軸方向に接触して配置される。これに対して、固定プレート151と固定プレート151との間にリングプレート155が配置された部分では、リングプレート155の内径R12が固定プレート151の外径よりも小さいために、リングプレート155の外側にスペース210が形成される。スペース210は固定部材150の外周側にまで広がる。
図5に示すように、解繊外刃152の谷部152bの内径R2に対して、リングプレート155の外径R12は小さいため、解繊外刃152の刃と刃の間を完全には閉塞しない。リングプレート155は、この閉塞しない部分で、谷部152bをスペース210に開口させる。リングプレート155と、谷部152bの解繊外刃152とで囲まれた開口縁形状により分級口211が形成される。分級口211は、分級口211の開口面積は、0.25mm2~1.0mm2に設定される。本実施形態では、固定プレート151の解繊外刃152及びリングプレート155の組が複数設けられるため、分級口211及びスペース210が軸方向に複数設けられる。固定部材150の解繊外刃152と、回転体160の解繊内刃163とにより解繊された解繊物は、軸方向に複数設けられた分級口211により分級されながらスペース210に排出される。
固定部材150の外周側には、ハウジング180が配置される。ハウジング180は固定部材150を覆う。スペース210があるため、固定部材150の外表面150bと、ハウジング180との間は、少なくともスペース210の部分で離間する。固定部材150の外表面150bと、ハウジング180との間には、スペース210などの空間が生じる。したがって、分級口211から分級された解繊物がスペース210を移動可能である。
ハウジング180の側部の収容壁部180cには、ハウジング180の内外を連通する開口状の導出口182が形成される。導出口182の周方向の位置に応じて、ハウジング180の収容壁部180cの内周面には、軸方向に延びる凹部183が形成される。凹部183は、固定部材150とハウジング180との間に下流空間212を形成する。下流空間212は各スペース210と連通する。よって、スペース210に流入した解繊物は、下流空間212を介して導出口182に移動可能である。
図3、図5に示すように、導出口182には、出口配管184が挿入されて接続される。出口配管184は、図1に示す選別部40に延びる管3に接続される。出口配管184は、回転体160によって解繊された解繊物を解繊部20から導出する。
分級口211と、スペース210と、下流空間212とにより、導出口182から解繊物を導出するための経路213が構成される。経路213は、回転体160の回転軸171から径方向外側に離間する方向に設けられる。スペース210は経路213の一部であり、固定部材150が経路213の一部のスペース210を備える。
ここで、投入口194が回転軸171の一端側に形成されているのに対して、導出口182は、図3に示すように、回転軸171の中央部よりも他端側に形成される。よって、投入口194から投入された原料MAは、回転軸171の軸方向に沿って移動し易く、固定部材150と回転体160との全体を用いて解繊し易くできる。軸方向には複数の分級口211があるため、解繊された解繊物から順に経路213に導出され易くなる。
[1-3.解繊部の動作]
次に、解繊部20の動作について説明する。
解繊部20は、回転軸171を回転させることによって回転体160を回転させ、回転体160と固定部材150との間のギャップGに被解繊物を気流によって導くことにより、被解繊物を乾式解繊処理することができる。
被解繊物は、解繊部20の投入口194から供給されると、上流カバー190の入口配管部190cを介してハウジング180の内部に導入される。ハウジング180の内部では、回転体160の解繊内刃163と固定部材150の解繊外刃152との間のギャップGに送られ、解繊内刃163から遠心力を受けるなどして飛行して、解繊外刃152に衝突して解きほぐされる。解きほぐされた解繊物は分級口211から固定部材150の外側に排出される。そして、図5の矢印Aで示すように経路213のスペース210を通って、導出口182側に送られる。導出口182側に送られた解繊物は出口配管184を介して外部の選別部40に送られる。
図9は、解繊物の挙動を示す図である。
固定部材150と回転体160との間で解繊される被解繊物220が、十分に解繊されて微小な解繊物221になると、径方向外側に移動し易く、軸中心110から離間した解繊外刃152の谷部152bに溜まり易い。
本実施形態では、谷部152bには、経路213に通ずる分級口211があるため、解繊物221が速やかに排出され易い。よって、解繊物221が過剰に解繊されることが抑制される。また、解繊された解繊物221から順に分級口211から排出されるため、分級が可能になる。
[1-5.シート供給装置の制御系の構成]
図10はシート製造装置100の制御部230のブロック図である。
シート製造装置100は、シート製造装置100の各部を制御する制御部230を備える。制御部230は、プログラムを実行するプロセッサー231、及び、記憶部232を備える。プロセッサー231は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、マイコン等で構成される演算処理装置である。また、プロセッサー231は、複数のハードウェアにより構成されてもよいし、単一のプロセッサーで構成されてもよい。また、プロセッサー231が、後述する各部の機能を実現するようプログラムされたハードウェアであってもよい。すなわち、プロセッサー231は、制御プログラムをハードウェア回路として搭載した構成であってもよい。この場合、例えば、プロセッサー231は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成される。
以下の説明では、プロセッサー231が制御プログラムを実行することにより、制御部230の各種の機能を実現する構成例を説明する。
記憶部232は、プロセッサー231が実行するプログラムや、プロセッサー231により処理されるデータを記憶する記憶領域を有する。記憶部232は、プロセッサー231が実行する制御プログラム、及び、シート製造装置100の動作に関する各種の設定値を含む設定データを記憶する。記憶部232は、プログラムやデータを不揮発的に記憶する不揮発性記憶領域を有する。また、記憶部232は、揮発性記憶領域を備え、プロセッサー231が実行するプログラムや処理対象のデータを一時的に記憶する印刷媒体エリアを構成してもよい。
制御部230には、粗砕部12に動力を供給する供給駆動部241が電気的に接続される。供給駆動部241は、例えば、電動モーターである。ここで、粗砕部12の粗砕刃14は、駆動部材14aと、駆動部材14aに対向して配置された従動部材14bとを備える。供給駆動部241は、駆動部材14aを駆動する。従動部材14bは駆動部材14aと共に原料MAを挟んで従動して回転する。
制御部230には、解繊部20に動力を供給する回転駆動部242が電気的に接続される。回転駆動部242は、例えば、電動モーターである。回転駆動部242は、回転体160の回転軸171を不図示の駆動機構を介して駆動する。
制御部230には、回転駆動部242の負荷を検出する検出部243が電気的に接続される。検出部243としては、例えば、電力計である。検出部243は、負荷として、回転駆動部242の消費電力を検出する。
制御部230は、過剰な消費電力か否かを判別するための予め設定された上限閾値を記憶する。制御部230は、検出部243が検出する消費電力が上限閾値を上回るか否かを判別する。制御部230は、消費電力が上限閾値を上回ると判別した場合には、供給駆動部241の回転速度を減速させる制御を行う。これにより、粗砕刃14の回転速度が減速され、解繊部20に送られる原料MAを減少させることができる。
また、制御部230は、適正な消費電力か否かを判別するための下限閾値を記憶する。下限閾値は予め設定される。制御部230は、検出部243が検出する消費電力が下限閾値を下回るか否かを判別する。制御部230は、消費電力が下限閾値を下回ると判別した場合には、供給駆動部241の回転速度を増速させる制御を行う。これにより、粗砕刃14の回転速度が増速され、粗砕刃14から解繊部20に送られる原料MAを増加させることができる。
[1-5.シート供給装置の動作]
シート製造装置100では、解繊部20の回転体160の回転時の消費電力を検出する。消費電力が大きい場合には、回転体160の負荷が大きい状態である。これに対して、本実施形態では、消費電力が過剰に大きい場合には、粗砕刃14の回転速度を減速させており、解繊部20に送られる原料MAを減らすことが可能である。よって、解繊部20に投入される原料MAを減らすことで、解繊部20の負荷を減らし易くできる。
また、消費電力が小さい場合には、回転体160の負荷が小さ過ぎる恐れがあり、被解繊物が、解繊内刃163や解繊外刃152により過剰に解繊されてしまう状態、いわゆる、過解繊になる恐れがある。過解繊されると、解繊物をシートSとして再生するこがが困難となり原料MAの無駄になる。本実施形態では、消費電力が過剰に小さい場合には、粗砕刃14の回転速度を増速させており、解繊部20に送られる原料MAを増やすことが可能である。よって、解繊部20に投入される原料MAを増やすことで、解繊部20の負荷を適正にして、所望の解繊を行い易くなる。
以上述べたように、本実施形態の解繊部20は、投入口194から投入される原料MAを、回転体160に設けられた解繊内刃163と回転体160を覆う固定部材150に設けられた解繊外刃152とで解繊して、導出口182から解繊された解繊物を導出する解繊処理装置である。この解繊部20において、固定部材150には、固定部材150に対して、回転体160が配置される側から、回転体160が配置される側とは反対側に向けて設けられた導出口182と連通する経路213が設けられる。したがって、解繊された解繊物を、分級口211による分級機能により、速やかに排出して効率的に排出することができる。
本実施形態では、投入口194は回転体160の回転軸方向、すなわち、回転軸171の延びる方向における一端側に開口し、導出口182は回転軸171の延びる方向における他端側に開口する。したがって、回転軸171の一端側から他端側に向けて被解繊物が移動しながら解繊され易く、回転軸171の長さに応じた距離を有効に利用して解繊することができる。
また、本実施形態では、固定部材150は、回転体160の回転軸171の方向に向けて、解繊外刃152を有する固定プレート151が複数積層されて構成される。したがって、積層構造により解繊外刃152を構成できる。また、解繊外刃152が摩耗、破損等した場合に、摩耗、破損等した部分の固定プレート151のみを交換できる。
また、本実施形態では、解繊外刃152は、回転体160を覆う内壁部150aにおいて、回転体160の回転方向に沿って設けられる複数の刃を備え、固定部材150は、固定プレート151の間に挟まれるリングプレート155を有する。リングプレート155が配置される固定プレート151の間であって、回転体160の回転軸171の方向において、固定プレート151とリングプレート155とが重ならない領域にスペース210が構成されており、スペース210が固定プレート151の解繊外刃152の刃と刃の間に構成される谷部152bと連通することで、経路213のスペース210が固定部材150に備えられる。固定プレート151とリングプレート155の積層構造で経路213を形成できる。
本実施形態では、固定部材150を覆って収容するハウジング180を備える。ハウジング180は、固定部材150を内包して固定部材150の外表面150bから離間して設けられた収容壁部180cを備える。収容壁部180cに導出口182が設けられており、固定部材150の外表面150bと収容壁部810cとの間の空間により経路213を形成する。ハウジング180と固定部材150との間に経路213を形成することにより、解繊部20をコンパクトに設けることができる。
本実施形態のシート製造装置100は、上述の解繊部20を備え、解繊部20で解繊された解繊物の少なくとも一部を堆積させて加熱してシートを製造する。解繊部20内で解繊された解繊物を、解繊された解繊物を、分級口211による分級機能により、速やかに排出し効率的に排出することができる。
本実施形態では、シート製造装置100は、解繊部20の投入口194に原料MAを供給する粗砕部12と、粗砕部12の粗砕刃14を駆動する供給駆動部241とを備える。また、シート製造装置100は、解繊部20の回転体160を駆動する回転駆動部242と、回転駆動部242の消費電力を検出する検出部243とを備える。また、検出部243が検出する消費電力が上限閾値を上回る場合に、供給駆動部241を制御して、粗砕部12の供給速度を低下させる制御部230を備える。したがって、解繊部20の負荷を減らし易くできる。
本実施形態では、シート製造装置100は、解繊部20の投入口194に原料MAを供給する粗砕部12と、粗砕部12の粗砕刃14を駆動する供給駆動部241とを備える。また、シート製造装置100は、解繊部20の回転体160を駆動する回転駆動部242と、回転駆動部242の消費電力を検出する検出部243とを備える。また、検出部243が検出する消費電力が下限閾値を下回る場合に、供給駆動部241を制御して、粗砕部12の粗砕刃14の供給速度を増加させる制御部230を備える。したがって、解繊物を過剰に解繊してしまう過解繊を抑制できる。
[2.第2実施形態]
[2-1.解繊部の構成]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、前述の第1実施形態と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
図11は、本発明の第2実施形態の固定部材250の斜視図である。
図11に示すように、本実施形態においては、第1実施形態の固定部材150に代えて固定部材250を有する。固定部材250は一体形状のブロックとして構成される。固定部材250は、例えば、鋳造により製造可能である。
固定部材250は、いわば、厚みが大きな一つの固定プレート151で構成された形状である。固定部材250は、軸方向に延びる解繊外刃152を備える。また、解繊外刃152の頂部152aや谷部152bは軸方向に筋状に延びる。
谷部152bには、固定部材250の内壁部250aから外表面250bに向けて貫通する貫通孔250cが形成される。貫通孔250cは谷部152bに沿って軸方向に複数設けられる。貫通孔250cの開口面積は、0.25mm2~1.0mm2に設定される。
固定部材250の外表面250bには、軸方向に沿って延びるスリット孔250dが形成される。スリット孔250dに、各貫通孔250cが連通する。したがって、第2実施形態の固定部材250の谷部152bは、第1実施形態と同様に固定部材250の外部に連通する。貫通孔250cは分級口に相当する。
固定部材250はハウジング180で包囲されるため、ハウジング180の収容壁部180cと固定部材250との間には、貫通孔250c、スリット孔250d、下流空間212などが連通して構成される経路213が構成される。第2実施形態でも、第1実施形態と同様に固定部材250で解繊された解繊物は貫通孔250cを介して順次経路213に導出される。スリット孔250dは経路213の一部であり、固定部材250が経路213の一部のスリット孔250dを備える。
[2-2.解繊部の動作]
第2実施形態の固定部材250は一体形状のブロックであるが、固定部材250と回転体160とのギャップGで解繊された解繊物は、貫通孔250cを介して、経路213に導出可能である。よって、第2実施形態の解繊部20でも、被解繊物を乾式解繊処理する際に、解繊された解繊物を、貫通孔250cによる分級機能により、速やかに排出して効率的に排出することができる。
以上説明したように、第2実施形態の解繊部20では、固定部材250は、回転体160の回転軸171の方向に向けて複数配列された解繊外刃152を有する一体形状のブロックとして構成される。したがって、固定プレート151やリングプレート155などの多数の部品を製造、組み立てる必要がなくなる。
[3.他の実施形態]
上述した各実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明を実施する具体的態様に過ぎず、本発明を限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、例えば以下に示すように、種々の態様において実施することが可能である。
上記実施形態において、固定部材150、250とハウジング180の収容壁部180cは離間しても良いし、固定部材150、250とハウジング180の収容壁部180cを接触させて、例えば、スペース210の部分だけで解繊物を移動させても良い。
上記実施形態において、回転体160はブロックとしての回転体本体161を有する構成を説明した。しかし、回転体本体161を複数のプレートを積層して構成しても良い。
上記第1実施形態では、リングプレート155は円環状に形成された構成を説明した。しかし、円環状に限定されず、例えば、放射状に延びる複数の突部を備える構成でも良い。すなわち、リングプレート155は、分級口211を形成し且つ分級口211が固定部材150の外表面に通ずるスペースを形成さえすれば任意の形状で良い。
上記第2実施形態では、貫通孔250cがスリット孔250dに連通する構成を説明した。しかし、スリット孔250dを省略し、貫通孔250cが固定部材250の外表面まで延びる構成でも良い。
また、シート製造装置100は、シートSに限らず、硬質のシート或いは積層したシートで構成されるボード状、或いは、ウェブ状の製造物を製造する構成であってもよい。また、製造物は紙に限らず不織布であってもよい。シートSの性状は特に限定されず、筆記や印刷を目的とした記録紙(例えば、いわゆるPPC用紙)として使用可能な紙であってもよいし、壁紙、包装紙、色紙、画用紙、ケント紙等であってもよい。また、シートSが不織布である場合、一般的な不織布のほか、繊維ボード、ティッシュペーパー、キッチンペーパー、クリーナー、フィルター、液体吸収材、吸音体、緩衝材、マット等としてもよい。
また、上記実施形態のシート製造装置100は、原料を気中で解繊することにより材料を得て、この材料と樹脂とを用いてシートSを製造する乾式のシート製造装置100として説明した。本発明の適用対象はこれに限定されず、水等の溶媒中に繊維を含む原料を溶解または浮遊させ、この原料をシートに加工する、いわゆる湿式のシート製造装置にも適用できる。また、気中で解繊された繊維を含む材料をドラムの表面に静電気等により吸着させ、ドラムに吸着された原料をシートに加工する静電方式のシート製造装置にも適用できる。