JP7182736B1 - ダイヤフラムとリテーナの取付構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポンプ装置において安定した吐出量とダイヤフラムの高寿命化を図る。【解決手段】円板状に形成され、外周部に位置する固定部、中央部に位置する可動部、及び固定部と可動部とを連結する連結部を有し、ポンプ室に対向する側を前側、ポンプ室と反対側を裏側とするダイヤフラムと、ダイヤフラムの可動部の裏側を支持し可動部と共にポンプ室への進退方向に往復動する円環状のリテーナと、を備えたダイヤフラムとリテーナの取付構造であって、ダイヤフラムは、可動部と連結部との境界部位の裏側に、ポンプ室側へ凹む第1R形状部を有し、リテーナは、ダイヤフラムの裏側と当接する当接部と、当接部の外周位置にポンプ室側へ突出し、第1R形状部と適合する第2R形状部と、を含む。【選択図】図4

Description

本発明は、ダイヤフラムとリテーナの取付構造に関する。
往復動部材としてのダイヤフラムを用いたポンプ装置(例えば、特許文献1参照)が知られている。この装置において、ダイヤフラムは、厚肉の中央部に位置する可動部と、その外周部に位置する固定部と、これらを連結する連結部と、を含んで構成される。また、ダイヤフラムには、その裏側に、駆動軸が、ダイヤフラムを支持する押圧部材としてのリテーナを介して取り付けられる。リテーナは、ダイヤフラムの可動部を平坦面で支持する押圧部位と、押圧部位よりも駆動軸側に下がるように連結部に添接し得る形状の膜受部位と、を有する。
特開2017-106325号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来技術のダイヤフラムは、駆動軸の往復動の上死点位置から下死点位置にかけて連結部が大きく変形し、ダイヤフラムとリテーナとの接触範囲も変化する。このため、リテーナの膜受部位が連結部を支持したとしても、高圧負荷がかかるほど歪みが外側へ流れるようにダイヤフラムが変形する。
そうなると、例えばポンプ装置において、実際に移送流体を押している部分の面積を決める径である有効径が変化すると共に、可動部と連結部との境界部位、すなわち中央部分から可動部位にかけて歪みが伝わり易く、応力集中が起こり易くなる。
そして、特にこのような構造のダイヤフラムとリテーナをポンプ装置に適用した場合、ダイヤフラムの変形量が大きくなるとポンプ装置の吐出量が不安定になるという問題がある。また、有効径が変化すると吐出量が大きく変動してしまうという問題もある。更に、応力集中が起こると、その部分の劣化が進み破損し易くなるという問題もある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ポンプ装置において安定した吐出量とダイヤフラムの高寿命化を図ることができるダイヤフラムとリテーナの取付構造を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係るダイヤフラムとリテーナの取付構造は、円板状に形成され、外周部に位置する固定部、中央部に位置する可動部、及び固定部と可動部とを連結する連結部を有し、ポンプ室に対向する側を前側、ポンプ室と反対側を裏側とするダイヤフラムと、前記ダイヤフラムの可動部の裏側を支持し前記可動部と共に前記ポンプ室への進退方向に往復動する円環状のリテーナと、を備えたダイヤフラムとリテーナの取付構造であって、前記ダイヤフラムは、前記可動部と前記連結部との境界部位の前記裏側に、前記ポンプ室側へ凹む第1R形状部を有し、前記リテーナは、前記ダイヤフラムの前記裏側と当接する当接部と、前記当接部の外周位置に前記ポンプ室側へ突出し、前記第1R形状部と適合する第2R形状部と、を含む。
本発明の一実施形態において、前記リテーナの前記第2R形状部の前記頂部は、前記ダイヤフラムの可動部が前記ポンプ室側へ最も移動した上死点位置にある場合、前記ダイヤフラムの前記固定部の裏側の面よりも前記ポンプ室側に位置する。
本発明の他の実施形態において、前記ダイヤフラム及び前記リテーナは、少なくとも前記第1R形状部及び前記第2R形状部の頂部よりも径方向内側の部位が、前記ダイヤフラムの往復動の際にそれぞれ互いに接触しているように取り付けられる。
本発明の更に他の実施形態において、前記ポンプ室はポンプヘッドに設けられ、前記ポンプヘッドは前記ダイヤフラム側に第1挟持面を有し、前記ポンプヘッドの第1挟持面と対向する第2挟持面を有するブラケットが設けられ、前記ダイヤフラムの固定部は、前記ポンプヘッドの第1挟持面と前記ブラケットの第2挟持面との間で挟持され、前記ダイヤフラムは、前記固定部の外周縁に、前記外周縁の内側よりも厚肉の弾性変形可能なシール部をさらに有し、前記ポンプヘッドの第1挟持面の外周側には、前記第1挟持面から凹む第1押圧面が形成され、前記ブラケットの第2挟持面の外周側には、前記第2挟持面から凹む第2押圧面が形成され、前記シール部は、前記第1押圧面と前記第2押圧面との間で押圧保持される。
本発明の更に他の実施形態において、前記ダイヤフラム及び前記リテーナは、前記ダイヤフラムが上死点位置と下死点位置の間の中立位置又は前記中立位置よりも前記上死点位置側にある場合、前記第1R形状部及び前記第2R形状部が互いに接触するように取り付けられる。
本発明の更に他の実施形態において、前記ダイヤフラムの可動部は、駆動部材によって前記ポンプ室への進退方向に駆動され、前記リテーナは、前記駆動部材に取り付けられ、前記駆動部材の先端には、前記ダイヤフラムの可動部に先端部がインサートされたインサート部材が取り付けられ、前記ダイヤフラムの可動部の一部は、前記インサート部材の先端部と前記リテーナとで挟持される。
本発明の更に他の実施形態において、前記インサート部材の先端部の直径は、前記リテーナの前記当接部の内径以上で、前記第2R形状部の頂部の径以下である。
本発明によれば、ポンプ装置において安定した吐出量とダイヤフラムの高寿命化を図ることができる。
本発明の一実施形態に係るダイヤフラムとリテーナの取付構造を適用したポンプ装置の外観構成を示す斜視図である。 図1のA-A線断面図である。 図2のB-B線断面図である。 同ダイヤフラムとリテーナの一部拡大断面図である。 ダイヤフラムとリテーナの往復動方向の上死点位置及び下死点位置における状態を説明するための拡大縦断面図である。 比較例のダイヤフラムとリテーナの往復動方向の上死点位置及び下死点位置における状態を説明するための拡大断面図である。 ダイヤフラムとリテーナの往復動範囲毎の有効径の解析結果を比較例と共に示す図である。 ダイヤフラムとリテーナの往復動方向の上死点位置における状態を比較例と共に説明するための拡大断面図である。
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態に係るダイヤフラムとリテーナの取付構造を詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、以下の実施形態において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、実施形態においては、各構成要素の配置、縮尺及び寸法等が誇張或いは矮小化されて、実際のものとは一致しない状態で示されている場合、並びに一部の構成要素につき省略されて示されている場合がある。
[ポンプ装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係るダイヤフラムとリテーナの取付構造を適用したポンプ装置の外観構成を示す斜視図である。図2は図1のA-A線断面図、図3は図2のB-B線断面図、図4はダイヤフラムとリテーナの一部拡大断面図である。なお、図4(a)はダイヤフラムとリテーナのポンプ装置への取り付け直前の様子を示し、図4(b)は取り付け後の様子を示している。
図1に示すように、ポンプ装置100は、ポンプヘッド10と、このポンプヘッド10が着脱可能に取り付けられる装置本体部50と、を備える。
ポンプヘッド10は、例えば樹脂成形品からなる。装置本体部50は、例えば樹脂製の筐体を有し、その一側面(図1における、右側面)側に、上面、側面及び背面の一部を取り除いて形成された凹み形状のヘッド装着部51を有する。ポンプヘッド10は、装置本体部50に対して、それぞれ上面、側面及び背面がはみ出さないように、ヘッド装着部51に装着されている。このように、ポンプヘッド10は、ヘッド装着部51に装着された際に、ポンプ装置100が全体として矩形状となるように、ヘッド装着部51の空間を埋めて収まる範囲の寸法で形成されている。
装置本体部50は、後述するポンプヘッド10の複数のポンプ室13(図2参照)にそれぞれ液密に取り付けられる可撓性のダイヤフラム14(図2参照)と、このダイヤフラム14を往復動させる複数のアクチュエータ110(図2参照)とを内部に有する。なお、ポンプ室13及びアクチュエータ110は、本実施形態では例えばそれぞれ2つずつ設けられている。
また、装置本体部50は、正面側に設けられた、ディスプレイ52を有する操作パネル部53と、装置本体部50のヘッド装着部51と反対側の側面に設けられた外部入出力用ポート54と、を備える。更に、装置本体部50の内部には、ポンプ装置100の動作を制御する制御部(図示せず)が設けられている。ディスプレイ52には、ポンプ装置100の設定流量をはじめ、ポンプ装置100に関する各種の情報が表示される。なお、設定流量は、例えば100ml/min~0.01ml/minの流量範囲で設定可能に構成される。
操作パネル部53は、上記ディスプレイ52と共に、電源ボタン53a、ポンプ動作の開始・停止ボタン53b及びカーソル・リターン操作部53cを有する。また、操作パネル部53は、キャリブレーションボタン53d、モード設定ボタン53e、レンジ設定ボタン53f、ストローク設定ボタン53g及びI/O設定ボタン53hを有する。
カーソル・リターン操作部53cには、最大量指定ボタン53ca及びエスケープボタン53cbが併設されている。ポンプ装置100のユーザは、操作パネル部53を介して各種の操作入力を行うことで、ポンプ装置100の動作・設定等の各種の操作を行うことができる。
図2及び図3に示すように、ポンプヘッド10は、図示しない接続ナットを介して吸込側ホースが接続された移送流体の吸込口11と、図示しない接続ナットを介して吐出側ホースが接続された移送流体の吐出口12と、これら吸込口11及び吐出口12と連通する複数のポンプ室13と、を有する。ポンプヘッド10は、その内部に、水平方向に並設された複数のバルブモジュール20を収容する。バルブモジュール20は、垂直方向に配置された、例えばボールバルブにより構成される吸込バルブ30及び吐出バルブ40を有する。
ポンプヘッド10のポンプ室13には、吸込側ホース、吸込口11及びポンプ室連絡流路74を介してタンク(図示せず)からの移送流体を内部に導入するようになっている。また、ポンプ室13からは、ポンプ室連絡流路74、吐出口12及び吐出側ホースを介して内部の移送流体を外部に吐出するようになっている。
ポンプヘッド10は、複数のバルブモジュール20の吸込バルブ30及び吐出バルブ40の間で垂直方向に分離可能な複数のポンプヘッドブロックを構成する第1ブロック15及び第2ブロック16を有する。第1ブロック15は、側面に形成された吸込口11と連通し水平方向に延びる第1吸込側流路71と、この第1吸込側流路71と連通し垂直方向の上方に延びる複数の第2吸込側流路72と、を有する。
第1ブロック15には、第2吸込側流路72と連通し上方に向けて開口すると共に、バルブモジュール20の吸込バルブ30側の部分が収容される複数の第1収容室73が形成されている。また、第1ブロック15には、ダイヤフラム14と共にポンプ室13を形成するためのダイヤフラム取付孔17が、第1及び第2吸込側流路71,72と交差する方向で、装置本体部50のヘッド装着部51の壁面に向けて開口するように形成されている。
ダイヤフラム取付孔17は、ポンプ室13の上部がバルブモジュール20の周方向に所定間隔で配置された複数の側方流路の位置よりも低くなる第1ブロック15の位置に設けられている。なお、各ポンプ室連絡流路74は、複数のポンプ室13からそれぞれ斜め上方に延びて複数の第1収容室73と連通する。
第2ブロック16は、側面に形成された吐出口12と連通し水平方向に延びる第1吐出側流路81と、この第1吐出側流路81と連通し垂直方向の下方に延びる複数の第2吐出側流路82と、を有する。第2ブロック16には、第2吐出側流路82と連通し下方に向けて開口すると共に、バルブモジュール20の吐出バルブ40側の部分が収容される複数の第2収容室83が形成されている。なお、各第2収容室83の上方には、円錐台状空間84が形成され、この円錐台状空間84を介して第2吐出側流路82と連通するようになっている。
第1ブロック15及び第2ブロック16は、垂直方向に延伸する、結合手段としての複数の固定ボルト19によって、ねじ止め固定されることにより一体化され、ポンプヘッド10を構成する。本実施形態の第1ブロック15及び第2ブロック16は、一体化されたときの装置本体部50の操作パネル部53側の角部が、それぞれ面取りされたような矩形状を有している。このように構成されたポンプヘッド10は、装置本体部50に対し、取付孔15aを介して図示しない複数の取付ねじでヘッド装着部51にねじ止め固定されることにより、装置本体部50の側面側に一体的に装着される。
図2に示すように、アクチュエータ110は、例えば電磁アクチュエータで、位相をずらせて複数のダイヤフラム14をそれぞれ駆動可能に構成されている。アクチュエータ110は、外観円筒状のアクチュエータ本体部111を有する。なお、このアクチュエータ本体部111の基端側には、図示しない電気配線及び信号配線が接続された制御基板(図示せず)が取り付けられている。アクチュエータ本体部111の制御基板とは反対側の先端側は、装置本体部50の図示しない内部取付部への取付パネル63に、例えばねじ止め等により装着されている。
アクチュエータ110のアクチュエータ本体部111には、ポンプ室13に向けて軸方向(往復動方向)に往復動する駆動部材としての可動軸112が設けられている。可動軸112の先端側には、ダイヤフラム14が装着されている。
ダイヤフラム14は、ゴムやエラストマー等の弾性部材からなり、例えばフッ素樹脂等からなる接液部14aと、ゴム等からなる屈伸部14bとを備える。ダイヤフラム14は、円板状に形成され、外周部に位置する固定部23、中央部に位置する可動部21、及び固定部23と可動部21とを連結する連結部22を有する。ここでは、ダイヤフラム14のポンプ室13に対向する側を前側、ポンプ室13と反対側を裏側と定義する。
可動軸112の先端側には、円環状のリテーナ18が装着されている。リテーナ18は、ダイヤフラム14の可動部21の裏側を保持する。また、可動軸112の先端側には、インサート部材としてのインサートボルト19aが締結されている。インサートボルト19aは、拡径された頭部を有し、この頭部がダイヤフラム14の可動部21にインサートされて、ダイヤフラム14と一体化されている。ダイヤフラム14の可動部21は、インサートボルト19aの頭部とリテーナ18とに挟持されている。従って、ダイヤフラム14の可動部21は、可動軸112によってポンプ室13への進退方向(往復動方向)に駆動される。
なお、アクチュエータ110が装着された取付パネル63とポンプヘッド10の第1ブロック15との間には、円筒状のブラケット66が取り付けられている。ブラケット66の内周側には、内側を可動軸112が挿通する円筒状の防水用のブッシュ65が装着されている。ブラケット66の先端側の外周部は、ポンプヘッド10の第1ブロック15のダイヤフラム取付孔17に嵌合する。ダイヤフラム14の外周部に位置する固定部23は、第1ブロック15のダイヤフラム取付孔17の底部の第1挟持面69と、ブラケット66の先端部の第2挟持面67との間で往復動方向(軸方向)に挟持される。こうして、ダイヤフラム14は、ブラケット66とポンプヘッド10の第1ブロック15との間で液密に固定され、その前側でポンプヘッド10の第1ブロック15との間にポンプ室13を形成する。
ダイヤフラム14は、可動部21の前側が固定部23の前側よりもポンプ室13側に突出している。ダイヤフラム14は、図4(b)に詳細に示すように、可動部21と連結部22との境界部位(又は境界近傍部位)の裏側に、ポンプ室13側へ凹む第1R形状部91を有する。第1R形状部91は、例えば周方向の全周において設けられ、且つ径方向においては可動部21の外周側の部位から連結部22の内周側の部位にわたるように形成され、ポンプ室13側へ湾曲形状で凹んでいる。
一方、リテーナ18は、上述したようにダイヤフラム14の可動部21の裏側を支持し可動部21と共にポンプ室13への進退方向に往復動する円環状の樹脂成形部材又は金属部材からなる。従って、リテーナ18は、可動軸112の往復動に伴ってダイヤフラム14を保持しながら往復動する。
リテーナ18は、ダイヤフラム14の(可動部21の)裏側と当接する当接部31と、この当接部31の外周位置にポンプ室13側へ突出し、第1R形状部91と適合する第2R形状部92と、を含んで形成されている。第2R形状部92は、例えば周方向の全周において設けられ、且つ当接部31の前面よりもポンプ室13側へ湾曲形状で突出している。
なお、図4に示すように、ダイヤフラム14は、固定部23の外周縁に、この外周縁の内側よりも厚肉の弾性変形可能なシール部24をさらに有して形成される。シール部24は、周方向の全周において湾曲形状でブラケット66側に突出するように設けられている。また、ポンプヘッド10の挟持面69の一部には、ブラケット66の挟持面67に向けて突出する凸部69aが設けられている。凸部69aは、押圧によるシール部24のひずみを連結部22側に伝えない役割を担っている。
そして、ブラケット66の挟持面67の外周側には、挟持面67からテーパ部67tを介して凹む押圧面67a(第2押圧面)が形成されている。また、ポンプヘッド10の挟持面69の外周側には、挟持面69から凹む押圧面69b(第1押圧面)が形成されている。なお、押圧面67aと押圧面69bとは、往復動方向に対向する。また、押圧面69bは、縦断面形状が多角形状又は湾曲形状となるように形成されている。これにより、図4(a)から図4(b)に至るダイヤフラム14の組付け工程において、ダイヤフラム14のシール部24は、押圧面67aと押圧面69bとの間で押圧保持される。シール部24は、押圧面67a,69bの間で広い接触面積でシールされるので、局所的負荷によるクリープ等が発生せずに、一定の安定したシール力を維持する。なお、この実施形態によれば、押圧面69bの縦断面形状が多角形状又は湾曲形状となるように形成され、押圧面69bの外縁部にテーパ部69tが形成されているので、ポンプ室13の内圧が上昇した際に、厚肉のシール部24が圧力によってテーパ部69tに押し付けられるように変形する。これにより、圧力が上昇するほどシール力が増すというセルフシール構造を実現することができる。また、挟持面67からテーパ部67tを介して凹むように押圧面67aが形成されているので、シール部24が押圧された際に、ブラケット66の挟持面67と押圧面67aとの間のテーパ部67tによって、シール部24が、より押圧面69bの外縁部に形成されたテーパ部69tに向かって押し付けられる。これによって、シール力を向上させることが可能な構造を実現している。
[実施例の作用]
図5は、ポンプ装置100におけるダイヤフラム14とリテーナ18の往復動方向の上死点位置及び下死点位置における状態を説明するための拡大縦断面図である。なお、図5(a)は上死点位置における状態を示し、図5(b)は下死点位置における状態を示している。
ポンプヘッド10に取り付けられたダイヤフラム14及びリテーナ18は、少なくとも第1R形状部91及び第2R形状部92の頂部R1,R2よりも径方向内側の部位が、ダイヤフラム14の往復動の際にそれぞれ互いに接触しているように取り付けられる。すなわち、図5(a)に示す上死点位置から図5(b)に示す下死点位置までの往復動の間、上記各R形状部91,92の径方向内側の部位は、常時接触しているように取り付けられている。
また、リテーナ18の第2R形状部92の頂部R2は、例えばダイヤフラム14の可動部21がポンプ室13側へ最も移動した上死点位置にある場合、ダイヤフラム14の固定部23の裏側の面(例えば、第2挟持面67)よりもポンプ室13側に位置するように取り付けられている。また、ダイヤフラム14及びリテーナ18は、例えばダイヤフラム14が上死点位置及び下死点位置の間の中立位置にある場合、第1R形状部91及び第2R形状部92が互いに接触するように取り付けられている。
そして、ダイヤフラム14の第1R形状部91及びリテーナ18の第2R形状部92は、例えばそれぞれ半径rRがリテーナ18の半径rLの1/2以下となるように形成されていても良い。また、第2R形状部92の半径rRは、第1R形状部91の半径と同じ若しくはやや小さい寸法(-10%以内)であることが望ましい。さらに、リテーナ18の当接部31は、例えばダイヤフラム14の可動部21の裏側に位置する平坦面として形成されている。なお、インサートボルト19aの頭部の直径x1は、例えばリテーナ18の当接部31の内径x2以上で、第2R形状部92の頂部R2の径x3以下であるように形成されている。
ダイヤフラム14とリテーナ18は、上記のような関係性を持って取り付けられることにより、ポンプ装置100において安定した吐出量とダイヤフラム14の高寿命化を図ることが可能となった。本出願人は、このことを実証するために、第1及び第2R形状部91,92が設けられ、上記のような関係性を持って取り付けられたダイヤフラム14とリテーナ18の実施例と、第1及び第2R形状部91,92に相当する部分を持たない比較対象となる比較例とを、同一材料を用いた同一寸法のシミュレーションにて、各種解析を実施して検証を行った。
図6は、比較例のダイヤフラム14Cとリテーナ18Cの往復動方向の上死点位置及び下死点位置における状態を説明するための拡大断面図である。なお、図6(a)は上死点位置における状態を示し、図6(b)は下死点位置における状態を示している。また、図6においては、ポンプ室連絡流路74に相当する構成の図示は省略している。
まず、ダイヤフラム14,14Cの有効径について検証を行った。有効径とは、上述したように移送流体を押している部分の面積を決める径であり、例えばダイヤフラム14,14Cがリテーナ18,18Cと共に実際にポンプ室13の移送流体を押している部分の面積を決める径のことを意味する。
はじめに、下死点位置でのダイヤフラム14,14Cの解析形状と、上死点位置に向かう任意の地点でのダイヤフラム14,14Cの解析形状とに基づいて、ストロークにより変化する体積から有効径を確認した。実施例及び比較例共に、無負荷状態の有効径と、ダイヤフラム14,14Cに1MPaの圧力負荷をかけた状態の有効径とを比較した。比較例においては、例えば図6(a)に示す解析形状の無負荷時の有効径が8.64mmとなり、例えば図6(b)に示す解析形状の圧力負荷時の有効径が5.36mmとなった。従って、比較例では、圧力の増加により有効径が約38%も減少する結果となった。
一方、実施例においては、例えば図5(a)に示す解析形状の無負荷時の有効径が12.0mmとなり、例えば図5(b)に示す解析形状の圧力負荷時の有効径が10.48mmとなった。従って、実施例では、圧力の増加により有効径が約13%減少する結果となった。以上の結果から、有効径の減り方は、実施例のダイヤフラム14及びリテーナ18が、比較例のダイヤフラム14C及びリテーナ18Cに比べて約1/3程度に抑えられることが判明した。
これは、比較例のダイヤフラム14Cが、高圧負荷になる程ひずみが径方向外側へ流れていくため大きく変形し、歪も大きなっていることを表している。これに対し、実施例のダイヤフラム14は、高圧負荷になっても第1及び第2R形状部91,92の径方向内側の領域辺りで歪みが滞留し、変形し難くなっていることを表している。従って、実施例のダイヤフラム14及びリテーナ18によれば、比較例に対して圧力負荷に対するダイヤフラム14の変形を極力抑えることが可能となり、結果として無負荷時と圧力負荷時の有効径の差が小さくなるので、ポンプ装置100の吐出量を安定させることができると言える。
図7は、ダイヤフラム14とリテーナ18の往復動範囲毎の有効径の解析結果を比較例と共に示す図である。図7においては、実線で示す実施例及び破線で示す比較例共に1MPaの圧力負荷をかけている。図7の縦軸は平均有効径(mm)を表し、横軸は上死点位置及び下死点位置を最大とした場合のストローク範囲を表している。なお、ストローク範囲1は100%~75%の範囲を、ストローク範囲2は75%~25%の範囲を、ストローク範囲3は25%~0%の範囲をそれぞれ示している。
図7に示すように、ストローク範囲1においては、実施例の平均有効径がΦ12.2mmであったのに対し、比較例の平均有効径はΦ10.9mmであった。また、ストローク範囲2においては、実施例の平均有効径がΦ11.9mmであったのに対し、比較例の平均有効径はΦ10.6mmであった。
さらに、ストローク範囲3においては、実施例の平均有効径がΦ9.6mmであったのに対し、比較例の平均有効径はΦ4.7mmであった。このように、ストローク範囲1~3のそれぞれにおいて、実施例及び比較例の有効径を比較した結果、明らかに実施例の構造の方が比較例と比べて平均有効径の変化が少ないことが判明した。これは、リテーナ18の第2R形状部92の頂部R2よりも径方向内側の部分が、ダイヤフラム14の第1R形状部91の頂部R1よりも径方向内側の部分と常に接触しており、これらの頂部R1,R2の径方向外側の部分においてのみ接触範囲が変化する構造のため、上死点位置及び下死点位置における接触面積の差が小さく、且つひずみも小さいことを表している。
図8は、ダイヤフラム14とリテーナ18の往復動方向の上死点位置における状態を比較例と共に説明するための拡大断面図である。図8(a)は実施例を示し、図8(b)は比較例を示している。なお、図8(b)においては、ポンプ室連絡流路74に相当する構成の図示は省略している。
図8(a)に示すように、上死点位置における実施例のダイヤフラム14及びリテーナ18のひずみ点F1において解析された相当ひずみは、約31.0%であった。一方、上死点位置における比較例のダイヤフラム14C及びリテーナ18Cのひずみ点F2において解析された相当ひずみは、約69.4%であった。このことから、実施例の構造は、比較例の構造に比べて相当ひずみを約55%減少させていることが把握できた。
このように、実施例のダイヤフラム14及びリテーナ18によれば、第1及び第2R形状部91,92によって、ひずみが連結部22から固定部23に伝わり難いため、応力集中が起きにくく、反対に比較例のダイヤフラム14C及びリテーナ18Cによれば、ダイヤフラム14Cの連結部22Cから固定部23Cにひずみが伝搬してしまうため、応力集中が起こってしまうことが判明した。従って、実施例のダイヤフラム14及びリテーナ18では応力集中が緩和される構造を実現するため、その部分の劣化が進み難く破損し難くなるので、ダイヤフラム14の高寿命化を図ることが可能となる。
以上述べたように、本実施形態のダイヤフラム14とリテーナ18の取付構造によれば、ダイヤフラム14及びリテーナ18に第1R形状部91及び第2R形状部92を、上述したような構成で設けたため、ダイヤフラム14に圧力負荷がかかってもダイヤフラム14が変形し難い構造を実現し、有効径の変化を抑えつつ、応力集中を緩和することができる。これにより、ポンプ装置100の吐出量を安定化させ、ダイヤフラム14の高寿命化を図ることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、上記の実施形態では、ポンプヘッド10を装置本体部50の側面に設けた例について説明したが、ポンプヘッドを装置本体部の上部に設けた、いわゆる縦型のポンプ装置に用いられるダイヤフラムとリテーナの取付構造にも適用可能である。この場合には、アクチュエータが縦型になるので、ダイヤフラムは水平に配置される。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10 ポンプヘッド
13 ポンプ室
14 ダイヤフラム
17 ダイヤフラム取付孔
18 リテーナ
19a インサートボルト
21 可動部
22 連結部
23 固定部
24 シール部
31 当接部
50 装置本体部
66 ブラケット
67 挟持面(第2挟持面)
67a 押圧面(第2押圧面)
69 挟持面(第1挟持面)
69b 押圧面(第1押圧面)
91 第1R形状部
92 第2R形状部
100 ポンプ装置

Claims (6)

  1. 円板状に形成され、外周部に位置する固定部、中央部に位置する可動部、及び固定部と可動部とを連結する連結部を有し、ポンプ室に対向する側を前側、ポンプ室と反対側を裏側とするダイヤフラムと、
    インサート部材が先端に取り付けられ、前記ダイヤフラムの可動部に前記インサート部材の先端部がインサートされて前記可動部を軸方向に往復駆動する可動軸と、
    前記可動軸の先端に前記可動軸と同軸で取り付けられて前記ダイヤフラムの可動部の裏側を支持し前記可動部と共に前記方向に往復動する円環状のリテーナと、
    を備えたダイヤフラムとリテーナの取付構造であって、
    前記ダイヤフラムは、前記可動部と前記連結部との境界部位の前記裏側に、前記ポンプ室側へ凹む第1R形状部を有し、
    前記リテーナは、前記ダイヤフラムの前記裏側と当接する当接部と、前記当接部の外周位置に前記当接部よりも前記ポンプ室側へ突出し、前記第1R形状部と適合する第2R形状部と、を含み、
    前記ダイヤフラムの前記可動部の一部は、前記リテーナの前記第2R形状部の内周部及び前記当接部と前記インサート部材の前記先端部とで挟持されている
    ダイヤフラムとリテーナの取付構造。
  2. 前記リテーナの前記第2R形状部の頂部は、前記ダイヤフラムの可動部が前記ポンプ室側へ最も移動した上死点位置にある場合、前記ダイヤフラムの前記固定部の裏側の面よりも前記ポンプ室側に位置する
    請求項1記載のダイヤフラムとリテーナの取付構造。
  3. 前記ダイヤフラム及び前記リテーナは、少なくとも前記第1R形状部及び前記第2R形状部の頂部よりも径方向内側の部位が、前記ダイヤフラムの往復動の際にそれぞれ互いに接触しているように取り付けられる
    請求項1又は2記載のダイヤフラムとリテーナの取付構造。
  4. 前記ポンプ室はポンプヘッドに設けられ、
    前記ポンプヘッドは前記ダイヤフラム側に第1挟持面を有し、
    前記ポンプヘッドの第1挟持面と対向する第2挟持面を有するブラケットが設けられ、
    前記ダイヤフラムの固定部は、前記ポンプヘッドの第1挟持面と前記ブラケットの第2挟持面との間で挟持され、
    前記ダイヤフラムは、前記固定部の外周縁に、前記外周縁の内側よりも厚肉の弾性変形可能なシール部をさらに有し、
    前記ポンプヘッドの第1挟持面の外周側には、前記第1挟持面から凹む第1押圧面が形成され、
    前記ブラケットの第2挟持面の外周側には、前記第2挟持面から凹む第2押圧面が形成され、
    前記シール部は、前記第1押圧面と前記第2押圧面との間で押圧保持される
    請求項1~3のいずれか1項記載のダイヤフラムとリテーナの取付構造。
  5. 前記ダイヤフラム及び前記リテーナは、前記ダイヤフラムが上死点位置と下死点位置の間の中立位置又は前記中立位置よりも前記上死点位置側にある場合、前記第1R形状部及び前記第2R形状部が互いに接触するように取り付けられる
    請求項1~4のいずれか1項記載のダイヤフラムとリテーナの取付構造。
  6. 前記インサート部材の先端部の直径は、前記リテーナの前記当接部の内径以上で、前記第2R形状部の頂部の径以下である
    請求項1~5のいずれか1項記載のダイヤフラムとリテーナの取付構造。
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