JP7181842B2 - 農業用保水材 - Google Patents

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Description

本発明は、ビニルアルコール系重合体と特定のSP値を有する化合物(X)とを含んでなる農業用保水材に関する。
昨今、慢性的な水資源の枯渇に伴い、農業用水を有効にかつ適切に利用すること、および従来よりも少量の灌漑水量でも農産物の収穫量を維持若しくは増大させる試みが、いわゆる農業用保水材を用いて検討されている(例えば、特許文献1~3を参照)。これらの農業用保水材は高吸水性樹脂(SAP)を主要構成成分としており、例えば、土壌全体の保水性の改善に用いられるピートモス等と比べると、極めて少量で保水効果を発現することから、農家が用いる際の負担が少ないという利点がある。
特許文献1および2では、ポリアクリル酸塩ゲルを主成分とする高吸水性樹脂を農業用保水材として用いることが開示されている。しかしながら、ポリアクリル酸塩ゲルは生分解性を有さないため、環境中で消滅しにくいという課題がある。
このような課題を解決する手段として、特許文献3には、複雑な表面形状特徴を有するポリビニルアルコール系吸水性樹脂粒子が開示され、係る粒子が衛生用品または園芸用保水剤等に適用できることが記載されている。
国際公開第1998/005196号パンフレット 特表2013-544929号公報 特表2013-540164号公報
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献3に開示されたポリビニルアルコール系吸水性樹脂粒子は、複雑な表面形状特徴により粒子表面の吸水速度は向上しても、粒子内部への水の拡散速度は向上しないため、吸水速度はなお不十分である。吸水速度が不十分である場合、粒子が吸水する前に水が地下に若しくは栽培容器の下面から流出してしまい、農業用水としての水の利用効率が低下する。また、吸水性樹脂の粒子径を小さくすることでも吸水速度を増加させることはできるが粉塵が発生しやすくなり、作業者が粉塵を吸引することで健康を害する恐れがある。加えて、粒子径の小さい吸水性樹脂を農業用として用いる場合、農機具は防爆仕様でないものが多く、粉塵爆発の危険性がある。
本発明が解決しようとする課題は上記問題を解決することであり、吸水速度に優れ、かつ粉塵が発生しにくい農業用保水材を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決するために、農業用保水材について詳細に検討を重ね、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕ビニルアルコール系重合体と、SP値が6.0(cal/cm1/2以上30.0(cal/cm1/2以下である化合物(X)とを含んでなる農業用保水材であって、当該化合物(X)の含有量は当該保水材の質量に対して0.001質量%以上98.0質量%以下である、農業用保水材。
〔2〕4.93×10-3MPaの圧縮応力を前記保水材に印加した際のひずみεから算出される弾性率Eの、当該圧縮応力を前記化合物(X)を含まない状態の当該保水材に印加した際のひずみεから算出される弾性率Eに対する比:
Figure 0007181842000001

[上記式中、
は式:(4.93×10-3)/εにより算出される弾性率であり、
は式:(4.93×10-3)/εにより算出される弾性率である]
は99.99%以下である、前記〔1〕に記載の保水材。
〔3〕前記ビニルアルコール系重合体は、ビニルアルコール構成単位とイオン性基またはその誘導体を有するモノマー構成単位を含む共重合体を含む、前記〔1〕または〔2〕に記載の保水材。
〔4〕前記ビニルアルコール系重合体は、イオン性基のカウンターカチオンとしてカリウムイオンまたはアンモニウムイオンを含む、前記〔3〕に記載の保水材。
〔5〕前記ビニルアルコール系重合体は架橋構造を有する、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の保水材。
〔6〕前記化合物(X)は、水、グリセリン、メタノール、ジメチルスルホキシド、エタノール、アセトニトリル、イソプロパノール、N-メチル-2-ピロリドン、酢酸メチル、酢酸、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミドおよびエチレングリコールからなる群から選択される1以上の化合物を含む、前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の保水材。
〔7〕前記化合物(X)は、水、グリセリン、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールからなる群から選択される1以上の化合物を含み、当該化合物の含有量は前記保水材の質量に対して3質量%以上である、前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の保水材。
〔8〕前記化合物(X)は水を含む、前記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の保水材。
〔9〕ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドンおよびN,N-ジメチルホルムアミドからなる群から選択される1以上の化合物の含有量は、前記保水材の質量に対して60質量%以下である、前記〔6〕~〔8〕のいずれかに記載の保水材。
〔10〕前記保水材は粒子状であり、その体積平均粒子径は1μm以上10000μm以下である、前記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の保水材。
〔11〕育苗用である、前記〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の保水材。
本発明によれば、吸水速度に優れ、かつ粉塵が発生しにくい農業用保水材を提供することができる。
以下、本発明の実施態様について説明するが、本発明は、本実施態様に限定されない。
[農業用保水材]
本発明の農業用保水材(以下、単に「保水材」とも称する)は、ビニルアルコール系重合体と、SP値が6.0(cal/cm1/2以上30.0(cal/cm1/2以下である化合物(X)とを含んでなり、当該化合物(X)の含有量は当該保水材の質量に対して0.001質量%以上98.0質量%以下である。
農業用保水材は、任意に培土若しくは肥料等と組み合わせて、育苗のための培地に用いることができる。先に述べた通り、保水材の吸水速度が不十分である場合、潅水時に保水材が吸水する前に水が流出することにより、水の利用効率が低下する。また、ベルトコンベヤー等を用いて流れ作業で製造されることの多い水稲育苗箱の製造において、培地の構成成分として保水材を用いる場合、培地には十分な吸水速度が求められる。本発明者らは、ビニルアルコール系重合体について、ビニルアルコール系重合体が吸収可能な物質(例えば水、グリセリンおよびエタノール等)を含まない状態である方が吸水速度はより速いと考えていたところ、意外なことに、ビニルアルコール系重合体が、特定のSP値を有する化合物(X)を特定の量で含むことにより、ビニルアルコール系重合体の吸水速度が向上することを見出した。
ビニルアルコール系重合体が化合物(X)を特定の量で含むことがビニルアルコール系重合体の吸水速度に影響を及ぼす作用機構は明らかではないが、下記作用機構が推定される。潅水時に、樹脂であるビニルアルコール系重合体に水が接触すると、樹脂マトリックスの隙間に水が浸透し、徐々に樹脂マトリックスが広がっていく。このとき、樹脂が硬いとマトリックスが広がるまでに時間を要し、結果として吸水速度が低下する。特定の量の特定のSP値を有する化合物(X)を樹脂に予め含ませておくことで、水が浸透する際に樹脂マトリックスが素早く広がり、吸水速度が速くなるものと推定される。ただし、本発明の保水材が上記効果に優れる理由(作用機構)について、仮に上記理由とは異なっていたとしても、本発明の範囲内であることをここで明記する。
また、ビニルアルコール系重合体が、特定のSP値を有する化合物(X)を特定の量で含むことにより、ビニルアルコール系重合体が粉末状または粒子状である場合に、その粉塵が発生しにくくなる。その作用機構として、限定されるものではないが下記作用機構が推定される。粉末状または粒子状のビニルアルコール系重合体の製造には通常粉砕工程が含まれるため、得られたビニルアルコール系重合体は亀裂、またはビニルアルコール系重合体の膠着により生じた空隙を有する。このため、ビニルアルコール系重合体の比重は亀裂または空隙を持たない場合と比較して低く、粉塵が発生しやすくなる。このようなビニルアルコール系重合体に化合物(X)を含ませることにより、ビニルアルコール系重合体が膨張して亀裂または空隙を埋めるため比重が高くなり、粉塵が発生しにくくなるものと推定される。
従って、化合物(X)のSP値が6.0(cal/cm1/2より小さいか若しくは30.0(cal/cm1/2より大きい場合、または化合物(X)の含有量が0.001質量%より小さいか若しくは98.0質量%より大きい場合、ビニルアルコール系重合体の吸水速度の向上および粉塵発生の抑制を達成することは困難である。
ビニルアルコール系重合体が化合物(X)を含むことで、ビニルアルコール系重合体の弾性率を低下させることができる。従って、好ましい一実施態様において、4.93×10-3MPaの圧縮応力を保水材に印加した際のひずみεから算出される弾性率Eの、当該圧縮応力を化合物(X)を含まない状態の当該保水材に印加した際のひずみεから算出される弾性率Eに対する比:
Figure 0007181842000002

[上記式中、
は式:(4.93×10-3)/εにより算出される弾性率であり、
は式:(4.93×10-3)/εにより算出される弾性率である]
は、99.99%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下、特に好ましくは50%以下(例えば30%以下)であり、好ましくは0.1%以上、より好ましくは1%以上、更に好ましくは5%以上、特に好ましくは10%以上(例えば15%以上)である。前記比が前記下限値以上であり前記上限値以下であると、ビニルアルコール系重合体の吸水速度の向上および粉塵発生の抑制を達成しやすい。前記比は、化合物(X)の種類および/またはその含有量を選択することにより、前記下限値以上および前記上限値以下に調整することができる。前記比は、後述の実施例に記載の方法で求めることができる。
〔ビニルアルコール系重合体〕
ビニルアルコール系重合体〔以下、ビニルアルコール系重合体(A)と称することがある〕としては、例えばポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、およびそれらのビニルアルコール構成単位がアセタール化剤によりアセタール化されたものが挙げられる。
優れた吸水性または吸水速度を発現させやすい観点から、上記ビニルアルコール系重合体(A)は、ビニルアルコール構成単位とイオン性基またはその誘導体を有するモノマー構成単位を含む共重合体を含む。イオン性基またはその誘導体は、好ましくはカルボキシル基、スルホン酸基、アンモニウム基またはその塩であり、より好ましくはカルボキシル基またはその塩である。ビニルアルコール系重合体(A)における前記共重合体の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更により好ましくは95質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。即ち、好ましい一実施態様では、ビニルアルコール系重合体(A)は、ビニルアルコール構成単位とイオン性基またはその誘導体を有するモノマー構成単位との共重合体からなる。
ビニルアルコール系重合体(A)がイオン性基としてカルボキシル基を有する場合、ビニルアルコール系重合体(A)としては、例えば(i-1)カルボキシル基を有するモノマーおよび該モノマーの誘導体から選ばれる1種以上とビニルエステルとの共重合体のケン化物;(i-2)ビニルアルコール系重合体と、ヒドロキシル基と反応可能な官能基(b1)とカルボキシル基および/またはカルボキシル基に誘導可能な官能基(b2)とを有する化合物(B)との反応物;等が挙げられる。
上記(i-1)において、カルボキシル基を有するモノマーとしては特に制限はないが、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、およびマレイン酸等が挙げられる。また、上記カルボキシル基を有するモノマーの誘導体としては、該モノマーの無水物、エステル化物、および中和物等が挙げられ、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、イタコン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、および無水マレイン酸等が用いられる。
上記(i-1)において、ビニルエステルとしては特に制限はないが、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、およびピバル酸ビニル等が挙げられ、酢酸ビニルが好ましい。
上記(i-1)のケン化物を製造する方法に特に制限はなく、カルボキシル基を有するモノマーおよび該モノマーの誘導体から選ばれる1種以上とビニルエステルとを、公知の重合開始剤を用いて公知の重合反応を行い、次いで公知の方法でケン化反応を行うことで製造できる。
上記(i-2)で用いる、ヒドロキシル基と反応可能な官能基(b1)とカルボキシル基および/またはカルボキシル基に誘導可能な官能基(b2)とを有する化合物(B)において、ヒドロキシル基と反応可能な官能基(b1)としては特に制限はないが、例えばアルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基およびこれらの官能基の誘導体等が挙げられる。中でも、製造容易性、またはビニルアルコール系重合体の耐久性の観点から、アルデヒド基およびアルデヒド基の誘導体が好ましい。すなわち、前記化合物(B)としては、カルボキシル基を有するアルデヒドおよび/または該アルデヒドの誘導体が好ましい。
すなわち、上記(i-2)の反応物としては、カルボキシル基を有するアルデヒドおよび/または該アルデヒドの誘導体から選ばれる1種以上により少なくとも一部のビニルアルコール構成単位がアセタール化されたビニルアルコール系重合体〔以下、ビニルアルコール系重合体(A-1)と称することがある〕が好ましい。
前記化合物(B)である、上記カルボキシル基を有するアルデヒドとしては特に制限はないが、例えばグリオキシル酸、2-ホルミルプロパン酸、3-ホルミルプロパン酸、およびフタルアルデヒド酸等が挙げられる。中でも、入手容易性および生分解性の観点から、グリオキシル酸が好ましい。また、前記化合物(B)である、上記カルボキシル基を有するアルデヒドの誘導体としては、該アルデヒドの無水物、水和物、エステル化物、アセタール化物、および中和物等が挙げられ、例えばグリオキシル酸塩、グリオキシル酸一水和物、グリオキシル酸エステルおよびグリオキシル酸ジメチルアセタール等が用いられる。
上記グリオキシル酸塩のカウンターカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、およびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、およびマグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン等の有機カチオン:等が挙げられる。中でも、より優れた吸水速度を発現させやすい観点から、カリウムイオン、カルシウムイオン、およびマグネシウムイオンが好ましい。土壌中に含まれる二価イオンとの接触時の吸水性を維持しやすい観点からはカルシウムイオンがより好ましく、植物の生育の観点からはカリウムイオンがより好ましい。
上記グリオキシル酸エステルとしては、例えばグリオキシル酸メチル、グリオキシル酸エチル、グリオキシル酸プロピル、グリオキシル酸イソプロピル、グリオキシル酸ブチル、グリオキシル酸イソブチル、グリオキシル酸sec-ブチル、グリオキシル酸tert-ブチル、グリオキシル酸ヘキシル、グリオキシル酸オクチル、およびグリオキシル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
ビニルアルコール系重合体(A-1)の製造方法としては特に制限はなく、公知の手法で製造されたビニルアルコール系重合体の少なくとも一部のビニルアルコール構成単位を、触媒の存在下または不存在下で、カルボキシル基を有するアルデヒドおよび該アルデヒドの誘導体から選ばれる1種以上によりアセタール化することで製造できる。
上記触媒としては、例えば塩酸、硫酸、およびリン酸等の無機酸;カルボン酸、およびスルホン酸等の有機酸;陽イオン交換樹脂、およびヘテロポリ酸等の固体酸;等が挙げられる。これらの触媒は単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。なお、グリオキシル酸はアセタール化反応を促進する酸でもあるため、ビニルアルコール系重合体(A-1)を製造する際には触媒としても作用する。すなわち、反応後の処理の容易性の観点からは、ビニルアルコール系重合体(A-1)の製造に際して、カルボキシル基を有するアルデヒドとしてグリオキシル酸を用いる方法が好ましい。
ビニルアルコール系重合体(A-1)の製造において原料として用いるビニルアルコール系重合体は、工業的に製造された市販品;酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルおよび必要に応じて他のモノマーを共存させて、公知の重合開始剤を用いて公知の重合反応を行い、次いで公知の方法でケン化反応を行って製造したもの;ビニルエーテルのカチオン重合反応および加水分解反応により製造したもの;アセトアルデヒドの直接重合により製造したもの;等のいずれでもよいが、酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをケン化して製造したものが好ましい。上記原料として用いるビニルアルコール系重合体のケン化度は30モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、本発明の一実施態様において適量のカルボキシル基を導入しやすい観点からは、80モル%以上が更に好ましい。
ビニルアルコール系重合体(A-1)のアセタール化度は0.01モル%以上85モル%以下であることが好ましい。アセタール化度が前記範囲内であると、水の吸収性を向上させやすい。前記観点からアセタール化度は好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは1モル%以上、更に好ましくは5モル%以上、より更に好ましくは8モル%以上、特に好ましくは10モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下、より更に好ましくは50モル%以下、特に好ましくは45モル%以下、一層好ましくは40モル%以下である。
ビニルアルコール系重合体の育苗時における溶出を抑制しやすい観点から、ビニルアルコール系重合体(A-1)の製造において、カルボキシル基を有するアルデヒドおよび該アルデヒドの誘導体以外の他のアルデヒドを併用してアセタール化反応を行ってもよい。かかる他のアルデヒドとしては、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、i-ブチルアルデヒド、sec-ブチルアルデヒド、およびtert-ブチルアルデヒド等の脂肪族アルデヒド;ベンズアルデヒド、アニスアルデヒド、ケイ皮アルデヒド、4-ベンジルオキシベンズアルデヒド、3-ベンジルオキシベンズアルデヒド、4-アミルオキシベンズアルデヒド、および3-アミルオキシベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒド;等が挙げられる。中でも、製造容易性または得られるビニルアルコール系重合体の吸水性の観点から、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、およびn-ブチルアルデヒドが好ましい。他のアルデヒドを併用する場合、その使用量に特に制限はないが、カルボン酸を有するアルデヒドおよび該アルデヒドの誘導体の合計に対して通常0.01~30モル%、好ましくは0.1~10モル%、更に好ましくは1~5モル%である。他のアルデヒドの使用量が前記上限値以下であると、得られるビニルアルコール系重合体の吸水性が優れる傾向があり、前記下限値以上であると、他のアルデヒドを併用することによるビニルアルコール系重合体の育苗時における溶出を抑制する効果を得やすい。なお、前記他のアルデヒドは、例えばアセタール体等の誘導体として用いてもよい。
本発明の一実施態様において、ビニルアルコール系重合体(A)がイオン性基(例えばカルボキシル基)を有する場合、イオン性基の一部または全部が塩(イオン性基がカルボキシル基の場合はカルボン酸塩)の形態であってもよい。塩のカウンターカチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、およびセシウムイオン等のアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、およびバリウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アルミニウムイオン、および亜鉛イオン等のその他金属イオン;アンモニウムイオン、イミダゾリウム類、ピリジニウム類、およびホスホニウムイオン類等のオニウムカチオン;等が挙げられる。中でも、所望の吸水性を得やすい観点から、カリウムイオン、カルシウムイオン、およびアンモニウムイオンが好ましく、土壌中に含まれる二価イオンとの接触時の吸水性を維持しやすい観点からはカルシウムイオンがより好ましく、植物の生育の観点からはカリウムイオンがより好ましい。従って、本発明の好ましい一実施態様では、ビニルアルコール系重合体(A)は、イオン性基のカウンターカチオンとしてカリウムイオンまたはアンモニウムイオン、好ましくはカリウムイオンを含む。イオン性基がカルボキシル基である場合、カルボキシル基の一部または全部がカルボン酸塩であるビニルアルコール系重合体(A)の製造方法としては、例えば、上記(i-1)においてカルボキシル基を有するモノマーの中和物を用いる方法(I);上記(i-2)においてヒドロキシル基と反応可能な官能基とカルボキシル基とを有する化合物の中和物を用いる方法(II);上述の各種方法等によりカルボキシル基を有するビニルアルコール系重合体(A)を製造した後、中和する方法(III);等が挙げられ、中でも上記方法(III)が好ましい。
本発明の一実施態様において、ビニルアルコール系重合体(A)がイオン性基を有する場合、該ビニルアルコール系重合体(A)中のイオン性基の量は、上記ビニルアルコール系重合体(A)の全構成単位に対して好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは1モル%以上、特に好ましくは3モル%以上、最も好ましくは5モル%以上であり、好ましくは80モル%以下、より好ましくは50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは25モル%以下、特に好ましくは20モル%以下、最も好ましくは18モル%未満である。上記イオン性基の量が前記下限値以上であると、本発明に用いられるビニルアルコール系重合体の吸水性がより優れ、前記上限値以下であると、土壌中に含まれる二価イオンとの接触時にも吸水性を維持しやすい。また、ビニルアルコール系重合体(A)がイオン性基としてカルボキシル基を有する場合、上記カルボキシル基のうちアクリル酸またはその塩に由来するカルボキシル基の量は、ビニルアルコール系重合体の全構成単位に対して、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下、特に好ましくは10モル%以下であり、0モル%であってもよい。上記カルボキシル基のうちアクリル酸またはその塩に由来するカルボキシル基の量が前記上限値以下であると、より優れた耐候性(特に耐紫外線性)を得やすい。なお、ビニルアルコール系重合体(A)に含まれるイオン性基の一部または全部がその誘導体(例えば塩)の形態をとっている場合、上述のイオン性基の含有量は、イオン性基およびその誘導体の含有量またはイオン性基の誘導体の含有量である。
好ましい一実施態様において、ビニルアルコール系重合体(A)に含まれるイオン性基の半数以上は誘導体の形態であり、より好ましい一実施態様において、ビニルアルコール系重合体(A)に含まれるイオン性基のほとんどは誘導体の形態であり、特に好ましい一実施態様において、ビニルアルコール系重合体(A)に含まれるイオン性基の全ては誘導体の形態である。
ビニルアルコール系重合体(A)中の上記カルボキシル基の量および当該カルボキシル基のうちのアクリル酸またはその塩に由来するカルボキシル基の量は、例えば固体13C-NMR(核磁気共鳴分光法)、FTIR(フーリエ変換赤外分光法)または酸塩基滴定等によって測定できる。なお、本発明において「構成単位」は重合体を構成する繰り返し単位のことを意味し、例えばビニルアルコール構成単位は「1単位」、2単位のビニルアルコール構成単位がアセタール化された構造は「2単位」と数えることとする。
ビニルアルコール系重合体(A)のビニルアルコール構成単位の含有量は、上記ビニルアルコール系重合体(A)の全構成単位に対して好ましくは20モル%超、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上であり、好ましくは98モル%以下、より好ましくは95モル%以下、更に好ましくは90モル%以下である。上記ビニルアルコール構成単位の含有量は、例えばFTIR(フーリエ変換赤外分光法)、固体13C-NMR(核磁気共鳴分光法)等により測定できるほか、一定量の無水酢酸と反応させた際の無水酢酸の消費量から算出することもできる。
ビニルアルコール系重合体(A)は、ビニルアルコール構成単位以外の他の構成単位を含んでいてもよい。上記他の構成単位の例としては、酢酸ビニル、およびピバル酸ビニル等のカルボン酸ビニル由来の構成単位;エチレン、1-ブテン、およびイソブチレン等のオレフィン由来の構成単位;アクリル酸およびその誘導体、メタクリル酸およびその誘導体、アクリルアミドおよびその誘導体、メタクリルアミドおよびその誘導体、マレイン酸およびその誘導体、およびマレイミド誘導体等に由来する構成単位;等が挙げられる。上記他の構成単位は1種を含有していても複数種を含有していてもよい。上記他の構成単位の含有量は、ビニルアルコール系重合体(A)の全構成単位に対して好適には50モル%以下、より好適には30モル%以下、更に好適には15モル%以下であり、0モル%であってもよい。上記他の構成単位の含有量が前記上限値以下であると、本発明の保水材のより優れた吸水性および吸水速度を得やすい。
ビニルアルコール系重合体(A)の粘度平均重合度に特に制限はないが、製造容易性の観点から、好ましくは20000以下、より好ましくは10000以下、更に好ましくは4000以下、特に好ましくは3000以下である。一方、ビニルアルコール系重合体(A)の力学特性および水への耐溶出性の観点からは、好ましくは100以上、より好ましくは200以上、更に好ましくは400以上である。ビニルアルコール系重合体(A)の粘度平均重合度は、例えばJIS K 6726に準拠した方法により測定できる。
本発明に用いられるビニルアルコール系重合体(A)は、ビニルアルコール系重合体の育苗時の溶出を防ぐ観点から、架橋構造を有することが好ましい。本発明に用いられるビニルアルコール系重合体(A)が架橋構造を有する場合、吸水時にはゲル状態となる。架橋構造の形態に特に制限はなく、例えばエステル結合、エーテル結合、アセタール結合、および炭素-炭素結合等による架橋構造が挙げられる。
上記エステル結合の例としては、ビニルアルコール系重合体(A)がイオン性基としてカルボキシル基を有する場合に、ビニルアルコール系重合体(A)が有する水酸基とカルボキシル基との間で形成されるエステル結合が挙げられる。上記エーテル結合の例としては、ビニルアルコール系重合体(A)が有する水酸基間の脱水縮合により形成されるエーテル結合が挙げられる。上記アセタール結合の例としては、ビニルアルコール系重合体(A)の製造においてカルボキシル基を有するアルデヒドを用いた場合に、2つのビニルアルコール系重合体(A)が有する水酸基同士が上記アルデヒドとアセタール化反応することにより形成されるアセタール結合が挙げられる。上記炭素-炭素結合としては、例えば活性エネルギー線をビニルアルコール系重合体(A)に照射したときに生じる、ビニルアルコール系重合体(A)の炭素ラジカル間のカップリングにより形成される炭素-炭素結合が挙げられる。これらの架橋構造は単独で含まれていても、複数種が含まれていてもよい。中でも、製造容易性の観点からエステル結合、アセタール結合による架橋構造が好ましく、育苗時における保水性維持および耐紫外線性の観点から、アセタール結合による架橋構造がより好ましい。
このような架橋構造は、例えばカルボキシル基を有するアルデヒドおよび該アルデヒド誘導体から選ばれる1種以上により少なくとも一部のビニルアルコール構成単位をアセタール化する工程において、アセタール化反応と同時に形成されてもよいし、別の工程において形成されてもよいが、本発明においては架橋剤を更に添加することにより架橋構造を形成することが好ましい。
架橋剤としては、グリオキサール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、1,9-ノナンジアール、アジポアルデヒド、マレアルデヒド、タルタルアルデヒド、シトルアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、およびテレフタルアルデヒド等が挙げられる。
架橋剤を添加する場合、ビニルアルコール系重合体(A)中の架橋剤量としては、土壌中での保水性を維持しやすい観点から、好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.005モル%以上、更に好ましくは0.01モル%以上、より更に好ましくは0.03モル%以上であり、好ましくは0.5モル%以下、より好ましくは0.4モル%以下、更に好ましくは0.3モル%以下である。
〔化合物(X)〕
化合物(X)のSP値は、6.0(cal/cm1/2以上30.0(cal/cm1/2以下である。好ましくは9.0(cal/cm1/2以上、より好ましくは11.0(cal/cm1/2以上、更に好ましくは13.0(cal/cm1/2以上であり、好ましくは29.0(cal/cm1/2以下、より好ましくは26.0(cal/cm1/2以下、更に好ましくは25.0(cal/cm1/2以下である。SP値が前記下限値以上であり前記上限値以下であると、ビニルアルコール系重合体の吸水速度の向上および粉塵発生の抑制を達成しやすい。
ここで、本発明におけるSP値は、Fedors法〔SP値 基礎・応用と計算方法(発行:情報機構、著者:山本秀樹、2005年)、R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.14,147(1974)〕に準じて計算されたSP値である。
そのようなSP値を有する化合物(X)は、ビニルアルコール系重合体の吸水速度の向上および粉塵発生の抑制を達成しやすい観点から、好ましくは、水、グリセリン、メタノール、ジメチルスルホキシド、エタノール、アセトニトリル、イソプロパノール、N-メチル-2-ピロリドン、酢酸メチル、酢酸、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミドおよびエチレングリコールからなる群から選択される1以上の化合物を含む。
保水材における化合物(X)の含有量は、保水材の質量に対して、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上(例えば15質量%以上)であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、特に好ましくは50質量%以下(例えば40質量%以下)である。化合物(X)の含有量が前記下限値以上であり前記上限値以下であると、ビニルアルコール系重合体の吸水速度の向上および粉塵発生の抑制を達成しやすい。
上記一実施態様において、保水材における化合物(X)の含有量は、ビニルアルコール系重合体の質量に対して、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、特に好ましくは11質量%以上(例えば18質量%以上)であり、好ましくは4900質量%以下、より好ましくは900質量%以下、更に好ましくは400質量%以下、特に好ましくは100質量%以下(例えば67質量%以下)である。このときのビニルアルコール系重合体の質量は、その乾燥状態の質量である。本発明において「乾燥状態」とは、ビニルアルコール系重合体が水または有機溶媒等の揮発成分を一般的な方法(例えば、真空下において60℃で加熱した前後での質量変化)により検出可能な量(例えば0.1質量%以上)では含んでいない状態のことを言う。
好ましい一実施態様において、化合物(X)は、水、グリセリン、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールからなる群から選択される1以上の化合物を含み、当該化合物の含有量は、保水材の質量に対して、3質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。この態様では、ビニルアルコール系重合体の迅速な吸水速度および低い粉塵発生に加えて、優れた出芽率を得やすい。
この一実施態様において、化合物(X)の含有量はビニルアルコール系重合体の質量に対して、3質量%以上、好ましくは11質量%以上、より好ましくは18質量%以上であり、好ましくは900質量%以下、より好ましくは400質量%以下、特に好ましくは67質量%以下である。このときのビニルアルコール系重合体の質量は、その乾燥状態の質量である。
好ましい一実施態様において、化合物(X)は水を含む。別の好ましい一実施態様では、化合物(X)は水からなる。これらの態様では、低い粉塵発生および優れた出芽率に加えて、ビニルアルコール系重合体の極めて迅速な吸水速度を得やすい。水の含有量は、保水材の質量に対して、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上(例えば15質量%以上)であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
この一実施態様において、水の含有量は、ビニルアルコール系重合体の質量に対して、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは11質量%以上(例えば18質量%以上)であり、好ましくは900質量%以下、より好ましくは400質量%以下、特に好ましくは67質量%以下である。このときのビニルアルコール系重合体の質量は、その乾燥状態の質量である。
好ましい一実施態様において、化合物(X)は、グリセリン、メタノール、ジメチルスルホキシド、エタノール、アセトニトリル、イソプロパノール、N-メチル-2-ピロリドン、酢酸メチル、酢酸、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミドおよびエチレングリコールからなる群から選択される1以上の化合物を含む。この態様では、構成成分として保水材を用いた培地においてカビの発生が抑制されやすい。前記化合物の含有量は、カビ発生の抑制効果を得やすい観点から、保水材の質量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、ビニルアルコール系重合体の迅速な吸水速度および低い粉塵発生に加えて、より優れた出芽率を得やすい観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。
この一実施態様において、化合物(X)の含有量は、ビニルアルコール系重合体の質量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは11質量%以上、特に好ましくは25質量%以上であり、ビニルアルコール系重合体の迅速な吸水速度および低い粉塵発生に加えて、より優れた出芽率を得やすい観点から、好ましくは150質量%以下、より好ましくは67質量%以下、特に好ましくは43質量%以下である。このときのビニルアルコール系重合体の質量は、その乾燥状態の質量である。
好ましい一実施態様において、化合物(X)は、水と、グリセリン、メタノール、ジメチルスルホキシド、エタノール、アセトニトリル、イソプロパノール、N-メチル-2-ピロリドン、酢酸メチル、酢酸、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミドおよびエチレングリコールからなる群から選択される1以上の化合物との組み合わせ、好ましくは、水と、グリセリン、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールからなる群から選択される1以上の化合物との組み合わせを含む。この態様では、低い粉塵発生および優れた出芽率に加えて、ビニルアルコール系重合体の極めて迅速な吸水速度、および構成成分として保水材を用いた培地におけるカビ発生の抑制が達成されやすい。水の含有量は、ビニルアルコール系重合体の極めて迅速な吸水速度を得やすい観点から、保水材の質量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上(例えば15質量%以上)、特に好ましくは30質量%以上であり、カビ発生の抑制効果を得やすい観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは60質量%以下(例えば40質量%以下)である。水以外の上記化合物の含有量は、カビ発生の抑制効果を得やすい観点から、保水材の質量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上であり、優れた出芽率を得やすい観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。水と水以外の上記化合物との合計含有量は、低い粉塵発生、優れた出芽率、迅速な吸水速度およびカビ発生の良好な抑制を得やすい観点から、保水材の質量に対して、好ましくは7質量%以上(例えば10質量%以上)、より好ましくは20質量%以上(例えば30質量%以上)、特に好ましくは50質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは70質量%以下である。
この一実施態様において、水の含有量は、ビニルアルコール系重合体の極めて迅速な吸水速度を得やすい観点から、ビニルアルコール系重合体の質量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは11質量%以上(例えば18質量%以上)、特に好ましくは43質量%以上であり、カビ発生の抑制効果を得やすい観点から、好ましくは900質量%以下、より好ましくは400質量%以下、特に好ましくは150質量%以下(例えば67質量%以下)である。水以外の上記化合物の含有量は、カビ発生の抑制効果を得やすい観点から、ビニルアルコール系重合体の質量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは11質量%以上、特に好ましくは18質量%以上であり、優れた出芽率を得やすい観点から、好ましくは150質量%以下、より好ましくは67質量%以下、特に好ましくは43質量%以下である。水と水以外の上記化合物との合計含有量は、低い粉塵発生、優れた出芽率、迅速な吸水速度およびカビ発生の良好な抑制を得やすい観点から、ビニルアルコール系重合体の質量に対して、好ましくは8質量%以上(例えば11質量%以上)、より好ましくは25質量%以上(例えば43質量%以上)、特に好ましくは100質量%以上であり、好ましくは900質量%以下、より好ましくは400質量%以下、特に好ましくは233質量%以下である。このときのビニルアルコール系重合体の質量は、その乾燥状態の質量である。
また、好ましい一実施態様において、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドンおよびN,N-ジメチルホルムアミドからなる群から選択される1以上の化合物の含有量は、保水材の質量に対して、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは10質量%以下であり、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上である。この態様では、優れた出芽率を確保しつつ、ビニルアルコール系重合体の迅速な吸水速度、低い粉塵発生、およびカビ発生の良好な抑制効果を得やすい。
この一実施態様において、上記化合物の含有量は、ビニルアルコール系重合体の質量に対して、好ましくは150質量%以下、より好ましくは67質量%以下、更に好ましくは43質量%以下、特に好ましくは11質量%以下であり、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上である。このときのビニルアルコール系重合体の質量は、その乾燥状態の質量である。
〔添加剤〕
本発明の保水材は、ビニルアルコール系重合体および化合物(X)に加えて、任意に添加剤を含有してよい。そのような添加剤の例としては、例えば、デンプン、変性デンプン、アルギン酸ナトリウム、キチン、キトサン、セルロースおよびその誘導体等の多糖類;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリコハク酸、ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・12、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミド、ポリノナメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸塩、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸塩共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、およびエチレン-メタクリル酸塩共重合体等の樹脂類;天然ゴム、合成イソプレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、およびアミド系熱可塑性エラストマー等のゴム・エラストマー類;紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、消泡剤、増粘剤、界面活性剤、滑剤、防カビ剤および帯電防止剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。保水材が添加剤を含有する場合、その合計含有量は本発明の効果を損なわない範囲であればよく、保水材の総質量に対して通常は30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。
本発明の保水材は粒子状であることが好ましい。本発明の保水材が粒子状であるとき、該粒子の体積平均粒子径は好ましくは1μm以上、より好ましくは50μm以上、更に好ましくは100μm以上、特に好ましくは300μm以上であり、好ましくは10000μm以下、より好ましくは2000μm以下、更に好ましくは1500μm以下である。上記体積平均粒子径が前記下限値以上であると優れた取扱い性および粉塵抑制効果を得やすく、前記上限値以下であると優れた吸水速度を得やすい。前記体積平均粒子径は、レーザー回折/散乱で測定できる。
[保水材の製造方法]
本発明の保水材は、例えば、(ii-1)ビニルアルコール系重合体、化合物(X)、および任意に上記添加剤を混合する方法、(ii-2)ビニルアルコール系重合体に化合物(X)をスプレー噴霧して混合するか若しくは化合物(X)にビニルアルコール系重合体を浸漬して混合し、任意に、混合後のビニルアルコール系重合体と上記添加剤とを混合する方法、(ii-3)ビニルアルコール系重合体の調製中に化合物(X)を残留させ、任意に、得られた調製物と上記添加剤とを混合する方法、または(ii-4)上記(ii-1)~(ii-3)を組み合わせた方法等により製造することができる。
上記(ii-1)~(ii-3)において、混合は、一般的な装置(例えば、撹拌翼を備えた反応釜およびミキサー等)で、順次または同時に実施してよい。上記(ii-3)において、残留させる化合物(X)としては、ビニルアルコール系重合体の調製に用いることができる化合物、例えば水、アセトニトリル、エタノール、酢酸メチルおよびメタノール等が挙げられる。
本発明の保水材は、育苗のための培地に用いることができる。従って、本発明の一実施態様において、保水材は育苗用である。培地は、保水材以外に任意成分を含んでもよい。
[任意成分]
そのような任意成分としては、例えば、保水材に含まれるビニルアルコール系重合体以外の樹脂、培土、後述するその他の任意成分、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。なお、以下における、培地が上記任意成分を含む場合の任意成分の好ましい含有量等の記載において、化合物(X)以外の固体の培地構成成分(保水材に含まれるビニルアルコール系重合体、保水材に含まれている場合の添加剤、および培地に含まれている場合の任意成分)の質量は、乾燥状態の質量である。
〔ビニルアルコール系重合体以外の樹脂〕
ビニルアルコール系重合体以外の樹脂の例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミドおよびポリウレタンを挙げることができる。これらの樹脂は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて使用できる。
培地が上記樹脂を含む場合、その合計含有量は、培地の総質量に対して好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
〔培土〕
培地が培土を含有する場合、培土の間隙に根が生長することで適当に根が互いに絡み合いやすくなり、また、培地の優れた排水性および通気性を得やすくなる。培土は特に限定されず、市販の培土の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、培土に、後述する任意成分を常法(例えば、任意成分の溶液または分散液を培土に噴霧した後に乾燥させる方法)で付着させ、用いることもできる。
より優れた排水性および通気性を得やすい観点から、培土は粒状であることが好ましい。粒状培土の粒径は、好ましくは0.2~20mm、より好ましくは0.5~10mm、特に好ましくは1~5mmである。粒状培土の粒径を前記範囲内に調整するため、市販の水稲用粒状培土を篩過して用いることもできる。粒状培土の製造には圧縮造粒法、押し出し造粒法、転動造粒法、流動層造粒法等の造粒法を用いることができる。粒状培土の粒径は、次の方法で測定できる。粒状培土から粒子をランダムに30個選び、ノギスを用いて各粒子の直径を測定し、その平均値を粒状培土の粒径とする。なお、粒子が球状ではない場合、最も長い辺と最も短い辺の平均値をその粒子の直径とする。
培地が培土を含む場合、培土の含有量は、培地の総質量に対して、好ましくは20~99.9999質量%、より好ましくは70~99.95質量%、特に好ましくは80~99.9質量%、最も好ましくは90~99.8質量%である。
〔その他の任意成分〕
その他の任意成分としては、泥炭、草炭、ピート、ピートモス、ココピート、籾殻、腐植酵質資材、木炭、珪藻土焼成粒、貝化石粉末、貝殻粉末、カニ殻、VA菌根菌、微生物資材等の動植物質;バーミキュライト、パーライト、ベントナイト、天然ゼオライト、合成ゼオライト、石こう、フライアッシュ、ロックウール、カオリナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、セリサイト、クロライト、グローコナイトおよびタルク等の鉱物質;肥料およびこれらの組み合わせが挙げられる。これらは、必要に応じて消毒または殺菌して用いてもよく、pH調整剤または農薬と一緒に用いてもよい。培地がその他の任意成分を含有する場合、その合計含有量は本発明の効果を損なわない範囲であればよく、培地の総質量に対して通常は50質量%以下、好ましくは30質量%以下である。
肥料の例としては、窒素系肥料、リン系肥料およびカリウム系肥料の三大肥料;カルシウム、マグネシウム、硫黄、鉄、銅、マンガン、亜鉛、ホウ素、モリブデン、塩素、ニッケル等の植物に必須の要素を含む肥料;バーク堆肥、牛糞、豚糞、鶏糞、生ごみおよび剪定クズ等の堆肥等が挙げられる。窒素系肥料としては、硫安、塩安、硝安、硝酸ソーダ、硝酸石灰、腐植酸アンモニア肥料、尿素、石灰窒素、硝酸アンモニア石灰、硝酸アンモニアソーダ、硝酸苦土肥;リン系肥料としては、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔性リン肥、腐植酸リン酸肥、焼リン、重焼リン、リンスター、苦土過リン酸、混合リン酸肥料、副産リン酸肥料、高濃度リン酸;カリウム系肥料としては、硫酸カリ、塩化カリ、硫酸カリ苦土、炭酸カリ、重炭酸カリ、ケイ酸カリ等が挙げられる。これらの肥料は固形、ペースト、液体、溶液等の状態として用いてもよく、被覆肥料として用いてもよい。
農薬の例としては、殺虫剤、殺菌剤、殺虫殺菌剤、除草剤、殺鼠剤、防腐剤、植物生長調整剤等が挙げられる。
本発明の保水材を肥料と組み合わせて培地を作製する場合、好ましい一実施態様では、肥料は被覆肥料として用いられる。被覆肥料は肥料を樹脂でコートしたものである。樹脂としては例えばポリオレフィンが挙げられる。被覆肥料を用いる場合、樹脂の分解に伴い継時的に土壌へ肥料を供給できる。また、粒状の被覆肥料を用いてマット苗を作製した場合、得られるマット苗の強度が高くなる傾向がある。被覆肥料の粒径は好ましくは1mm~10mm、より好ましくは3mm~6mmである。被覆肥料を用いる場合、培地における被覆肥料の含有量は、好ましくは10~99.99質量%、より好ましくは15~90質量%、特に好ましくは20~80質量%、最も好ましくは30~60質量%である。
保水材を任意成分と組み合わせて用いる場合、保水材と任意成分とを混合して用いることが好ましい。混合方法は特に限定されない。一般的な方法により保水材と任意成分とを混合することで、育苗用の培地を作製できる。
本発明における培地が水稲育苗用である場合、培地には、種籾を播種することができる。更に種籾の播種は、水稲育苗培地が導入された水稲育苗箱に対して行うことが多い。通常、種籾の量は水稲育苗箱(縦28cm×横58cm)1箱あたり100~500gである。本発明の保水材は優れた吸水速度および粉塵抑制効果を有するため、流れ作業で水稲育苗箱を製造する場合であっても、十分な製造速度を達成でき、また、保水材の取扱者が吸引することによる健康リスクおよび粉塵爆発の危険性を回避できる。
本発明における培地は、床土(種籾を播種する前に水稲育苗箱に導入されている土)または覆土(種籾を播種した後に上から覆う土)のいずれか一方に用いてもよく、両方に用いてもよい。両方に用いる場合、培地の組成は床土と覆土で同一であっても、同一でなくてもよい。
上述の通り、育苗のための培地として、本発明の保水材以外に任意成分を含んでもよい培地が挙げられる。一方で、本発明の保水材は粉塵が発生しにくいため、本発明の保水材は培地の形態にせずとも作業性に優れる。例えば、本発明の保水材を保管する際、運搬する際、使用する際(例えば、培地を作成するために培土と保水材を混合する直前の段階)等において、保水材と併存する任意成分の含有量が少量であっても作業性に優れる。例えば、本発明の保水材と上記任意成分からなる混合物において、任意成分の含有量は、20質量%以下でもよく、10質量%以下でもよく、5質量%以下でもよく、1質量%以下であってもよく、0.5質量%以下であってもよく、0質量%であってもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例により何ら限定されない。
[ビニルアルコール系重合体の原料]
グリオキシル酸一水和物、40質量%グリオキサール水溶液、25質量%グルタルアルデヒド水溶液、アセトニトリル、メタノール、酢酸ビニル、水酸化ナトリウム、アクリル酸メチル、およびアゾビスイソブチロニトリル:以上、和光純薬工業株式会社製
ポリビニルアルコールa:クラレアメリカ社製ELVANOL(登録商標)71-30
[ビニルアルコール系重合体aの合成]
還流冷却管および撹拌翼を備えた容量500mLの四つ口セパラブルフラスコに、グリオキシル酸一水和物12.55g、40質量%グリオキサール水溶液0.11g、イオン交換水12.55g、アセトニトリル150mLおよびポリビニルアルコールa40.0gを導入し、23℃で1時間撹拌した。70℃に昇温した後、25質量%硫酸水溶液16.87gを10分かけて滴加し、70℃に保持したまま6時間反応させた。次いで30℃に冷却した後、イオン交換水150mLを加え、ろ過により樹脂を取り出した。続いて、ろ取した樹脂を200mLのメタノールで5回洗浄した。洗浄した樹脂を還流冷却管および撹拌翼を備えた容量500mLの四つ口セパラブルフラスコに導入し、メタノール180mL、イオン交換水11.6mLおよび8モル/L水酸化カリウム水溶液16.8mLを加え、還流下で2時間反応させた。ろ過により樹脂を取り出し、ろ取した樹脂を200mLのメタノールで6回洗浄し、40℃で6時間真空乾燥を行い、目的のビニルアルコール系重合体(以下、「ビニルアルコール系重合体a」と称する)を得た。
[ビニルアルコール系重合体bの合成]
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、および開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル602g、アクリル酸メチル1.21g、およびメタノール254gを導入し、窒素バブリングをしながら30分間反応器内を不活性ガス置換した。水浴を用いて反応器の昇温を開始し、反応器の内部温度が60℃となったところで、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.16g添加し、重合を開始させた。適宜サンプリングを行い、その固形分濃度から重合の進行を確認し、導入した酢酸ビニルとアクリル酸メチルの合計質量に対する、重合により消費された酢酸ビニルとアクリル酸メチルの合計質量である、消費率を求めた。消費率が4質量%に到達したところで、反応器の内部温度を30℃まで冷却して重合を停止させた。真空ラインに接続し、残留する酢酸ビニルをメタノールとともに30℃で減圧留去した。反応器内を目視で確認しながら、粘度が上昇したところで適宜メタノールを添加しながら留去を続け、5.2モル%のアクリル酸由来構成単位を含有するポリ酢酸ビニルを得た。アクリル酸に由来する構成単位の含有量は固体13C-NMRを用いて測定した。
次に、上記と同様の反応器に、得られたアクリル酸由来構成単位含有ポリ酢酸ビニル1gとメタノール18.2gを添加し、アクリル酸由来構成単位含有ポリ酢酸ビニルを溶解させた。水浴を用いて反応器の昇温を開始し、反応器の内部温度が70℃になるまで撹拌しながら加熱した。ここに水酸化ナトリウムのメタノール溶液(メタ苛性、濃度15質量%)0.78gを添加し、70℃で2時間ケン化を行った。得られた溶液をろ過し、5.2モル%のアクリル酸由来構成単位を含有するポリビニルアルコール(以下、「ポリビニルアルコールb」と称する)を得た。
還流冷却管および撹拌翼を備えた三つ口セパラブルフラスコに、アセトニトリル58.9g、イオン交換水6.28g、25質量%グルタルアルデヒド水溶液0.171g、およびポリビニルアルコールb20gを導入し、23℃で撹拌し、ポリビニルアルコールbを分散させた。16.9質量%硫酸水溶液12.38gを15分かけて滴加し、65℃に昇温して6時間反応させた。反応後、ろ過により樹脂を取り出した後、ろ取した樹脂を160gのメタノールで6回洗浄した。洗浄後の樹脂を還流冷却管および撹拌翼を備えた三つ口セパラブルフラスコに導入し、メタノール71g、イオン交換水13.3g、および水酸化カリウム5.7gを加え、65℃で2時間反応させた。反応後、ろ過により樹脂を取り出した後、ろ取した樹脂を160gのメタノールで6回洗浄し、40℃で12時間真空乾燥を行い、目的のビニルアルコール系重合体(以下、「ビニルアルコール系重合体b」と称する)を得た。
[評価項目および評価方法]
<SP値>
SP値はFedors法〔SP値 基礎・応用と計算方法(発行:情報機構、著者:山本秀樹、2005年)、R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.14,147(1974)〕により計算した。なお、水のSP値は23.4とした。
上記方法により求めた、実施例で用いた化合物(X)のSP値を、下記表1に示す。
Figure 0007181842000003
<弾性率>
直径5cmの円筒型容器に、100mLの試料1(保水材)および試料2〔化合物(X)を含まない状態の保水材〕をそれぞれ導入した。テクスチャーアナライザー(TAインスツルメンツ株式会社製、型番TA.XTplus、プローブ直径4.5cm)を用いて、速度19.8mm/分で各試料を押し込んだ。圧縮応力が4.93×10-3MPa(ロードセルにかかる荷重が800g)となるときのひずみεから、下記式に従って弾性率Eを測定した。
Figure 0007181842000004

保水材(試料1)のひずみεから保水材の弾性率Eを求め、化合物(X)を含まない状態の保水材(試料2)のひずみεから、化合物(X)を含まない状態の保水材の弾性率Eを求め、弾性率Eの弾性率Eに対する比を下記式に従って求めた。
Figure 0007181842000005

なお、上記試料2としては、調製したビニルアルコール系重合体に化合物(X)および任意に添加剤を付与して保水材を製造する場合は、化合物(X)を付与していない状態の保水材を用い、ビニルアルコール系重合体の調製中に化合物(X)をビニルアルコール系重合体中に残留させ、場合により添加剤を付与して、保水材を製造した場合は、残留させた化合物(X)を乾燥(例えば60℃で質量の変化がなくなるまでの真空乾燥)により除去した状態の保水材を用いた。
<体積平均粒子径>
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用い、保水材の体積平均粒子径を計測した。
<吸水速度(ボルテックス法)>
JIS K 7224に準じて、固形分を一定にした場合(固形分一定)または全量を一定にした場合(全量一定)の、実施例および比較例で得られた保水材の吸水時間を測定した。係る方法により測定した吸水時間が短いほど、保水材の吸水速度が速いことを意味する。
固形分一定:化合物(X)を除いた質量が0.5gとなるように保水材を秤量し、秤量した保水材と純水50gとを使用して、JIS K 7224に準じて吸水時間を測定した。
全量一定:化合物(X)を含んだ質量が0.5gとなるように保水材を秤量し、秤量した保水材と純水50gとを使用して、JIS K 7224に準じて吸水時間を測定した。
<純水吸収量>
JIS K 7223に準じて、実施例および比較例で得られた保水材の純水吸収量を測定し、下記式に基づいて、試料の単位質量当たりの純水吸収量X[g/g]を算出した。
Figure 0007181842000006

ここで、「純水吸収後の保水材の試料質量」は、保水材0.1gを使用して測定した値である。
また、「純水吸収前の試料質量」は、保水材0.1gに含まれるビニルアルコール系重合体の質量であり、その値は0.1×(100-C1)/100(単位:g)で表される。ここでC1は、表2に記載の数値である。
<粉体飛散率>
内径2.9cm、長さ44cmのステンレス鋼製の支柱を垂直に立て、支柱下面から15cmの場所に内径4.1cmのシャーレを配置した。支柱上面から試料である保水材2gを3秒間かけて投入し、飛散せずにシャーレ内に収まった試料の質量を測定し、下記式に基づいて、粉体飛散率を算出した。粉体飛散率が低いほど、保水材の取扱者が吸引することによる健康リスクが減り、また粉塵爆発も発生しにくくなる。
Figure 0007181842000007
<出庫調査(播種から2日後)>
実施例に記載の方法で水稲育苗箱を作製して出芽を行い、出庫調査として以下の評価を行った。
(1)カビの発生具合
カビの発生を目視により観察し、下記基準により評価した。
A:カビの発生は確認できなかった。
B:カビの発生は確認できたが、カビに覆われている培地の上面(地表に現れている覆土表面)の面積は5%以下であった。
C:カビの発生が確認でき、カビに覆われている培地の上面の面積が5%より大きかった。
(2)出芽率
出芽して覆土の上に出てきている芽の数(N1)を目視により数えた。播種した催芽籾の数(N2)を用い、下記式に従い出芽率を算出した。
Figure 0007181842000008
実施例1
ビニルアルコール系重合体b30gにアセトニトリル1.6gをスプレー噴霧して混合することで、保水材を作製した。この保水材と粒状培土(肥料としてN-P-KO=0.5-1.5-0.5g/kgを含む、平均粒径2.7mm)1500gとを均一に混合し、培地を作製した。この培地の60質量%を、内寸58cm×28cmの水稲育苗箱に敷き詰め、1000mLの水をじょうろで5秒間かけて潅水した。催芽籾(品種:コシヒカリ)200gを均一に撒いた後、その上に残りの培地(作製した培地の40質量%)を均一に敷き詰め、培地、催芽籾および水が導入された水稲育苗箱を作製した。以上の操作を更に2回行い、同じ水稲育苗箱を3個作製した。30℃、湿度100%の出芽庫にて2日間かけて出芽を行った後、出庫調査を行った。調査は3個の育苗箱それぞれで行い、出芽率はその平均値を採用した。カビの発生具合については3個の育苗箱で最も評価が悪いものを採用した。結果を表2に示す。なお、表2における化合物(X)の含有量について、C1は保水材の質量に対する含有量、C2はビニルアルコール系重合体に対する含有量を意味する。
実施例2~10、12~20および23~33(実施例28~29は参考例)
ビニルアルコール系重合体の種類並びに化合物(X)の種類および/またはその含有量を表2に記載の通り変更したこと以外は実施例1と同様にして、水稲育苗箱の作製、調査および評価を行った。結果を表2に示す。



実施例11
40℃で12時間真空乾燥を行ったことに代えて、メタノールで6回洗浄した後の樹脂をエバポレーターに投入し、メタノールおよび一部の水を除去したこと以外はビニルアルコール系重合体bの合成と同様にして、ビニルアルコール系重合体(以下、「ビニルアルコール系重合体b'」と称する)を得た。ビニルアルコール系重合体b'をガスクロマトグラフィー測定に付したところ、メタノールを30質量%含んでいた。即ち、ビニルアルコール系重合体b'は保水材に相当する。
この保水材を用いたこと以外は実施例1と同様にして、水稲育苗箱の作製、調査および評価を行った。結果を表2に示す。
実施例21
40℃で12時間真空乾燥を行ったことに代えて、メタノールで6回洗浄した後の樹脂に2.2gのイオン交換水を添加し、得られた樹脂をエバポレーターに投入してメタノールおよび一部の水を除去したこと以外はビニルアルコール系重合体bの合成と同様にして、ビニルアルコール系重合体(以下、「ビニルアルコール系重合体b''」と称する)を得た。ビニルアルコール系重合体b''をカールフィッシャー水分測定に付したところ、水を9質量%含んでいた。即ち、ビニルアルコール系重合体b''は保水材に相当する。
この保水材を用いたこと以外は実施例1と同様にして、水稲育苗箱の作製、調査および評価を行った。結果を表2に示す。
実施例22
2.2gのイオン交換水に代えて6.7gのイオン交換水を添加したこと以外は実施例21と同様にして、ビニルアルコール系重合体(以下、「ビニルアルコール系重合体b'''」と称する)を得た。ビニルアルコール系重合体b'''をカールフィッシャー水分測定に付したところ、水を22質量%含んでいた。即ち、ビニルアルコール系重合体b'''は保水材に相当する。
この保水材を用いたこと以外は実施例1と同様にして、水稲育苗箱の作製、調査および評価を行った。結果を表2に示す。
比較例1および2
表2に記載のビニルアルコール系重合体を用い、化合物(X)を混合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、水稲育苗箱の作製、調査および評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 0007181842000009
表2から分かるように、本発明の保水材(実施例1~33)は、比較例1のビニルアルコール系重合体(比較例1)と比べて吸水速度が速く、粉体飛散率が小さかった。また、比較例2のビニルアルコール系重合体は、吸水速度には優れるものの、粉体飛散率が大きかった。
また、化合物(X)として水、グリセリン、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールを含む場合〔実施例25、20、11、14、18および19、いずれも同程度の含有量(30質量%または31質量%)の実施例のデータを比較〕は、良好な出芽率を確保しつつも、吸水速度がより速く、粉体飛散率がより小さかった。
また、ビニルアルコール系重合体および化合物(X)の種類が同じである実施例23および24と比較例1とを比べると、実施例23および24における全量一定の吸水時間は比較例1における全量一定の吸水時間より顕著に短かった。このように、実施例23および24ではビニルアルコール系重合体の量が比較例1におけるビニルアルコール系重合体の量より少ないにもかかわらず、顕著に短い吸水時間が達成された。
更に、化合物(X)として水以外の化合物が含まれる場合(実施例1~20および30~32)は、カビの発生が抑制された。
本発明の保水材は、吸水速度に優れ、かつ粉塵が発生しにくいため、農業用保水材として好適に利用できる。

Claims (11)

  1. ビニルアルコール系重合体と、SP値が6.0(cal/cm1/2以上30.0(cal/cm1/2以下である化合物(X)とを含んでなる農業用保水材であって、当該化合物(X)の含有量は当該保水材の質量に対して0.001質量%以上66質量%以下である、農業用保水材。
  2. 4.93×10-3MPaの圧縮応力を前記保水材に印加した際のひずみεから算出される弾性率Eの、当該圧縮応力を前記化合物(X)を含まない状態の当該保水材に印加した際のひずみεから算出される弾性率Eに対する比:
    Figure 0007181842000010

    [上記式中、
    は式:(4.93×10-3)/εにより算出される弾性率であり、
    は式:(4.93×10-3)/εにより算出される弾性率である]
    は99.99%以下である、請求項1に記載の保水材。
  3. 前記ビニルアルコール系重合体は、ビニルアルコール構成単位とイオン性基またはその誘導体を有するモノマー構成単位を含む共重合体を含む、請求項1または2に記載の保水材。
  4. 前記ビニルアルコール系重合体は、イオン性基のカウンターカチオンとしてカリウムイオンまたはアンモニウムイオンを含む、請求項3に記載の保水材。
  5. 前記ビニルアルコール系重合体は架橋構造を有する、請求項1~4のいずれかに記載の保水材。
  6. 前記化合物(X)は、水、グリセリン、メタノール、ジメチルスルホキシド、エタノール、アセトニトリル、イソプロパノール、N-メチル-2-ピロリドン、酢酸メチル、酢酸、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミドおよびエチレングリコールからなる群から選択される1以上の化合物を含む、請求項1~5のいずれかに記載の保水材。
  7. 前記化合物(X)は、水、グリセリン、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールからなる群から選択される1以上の化合物を含み、当該化合物の含有量は前記保水材の質量に対して3質量%以上である、請求項1~6のいずれかに記載の保水材。
  8. 前記化合物(X)は水を含む、請求項1~7のいずれかに記載の保水材。
  9. ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドンおよびN,N-ジメチルホルムアミドからなる群から選択される1以上の化合物の含有量は、前記保水材の質量に対して60質量%以下である、請求項6~8のいずれかに記載の保水材。
  10. 前記保水材は粒子状であり、その体積平均粒子径は1μm以上10000μm以下である、請求項1~9のいずれかに記載の保水材。
  11. 育苗用である、請求項1~10のいずれかに記載の保水材。
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