JP7181624B2 - フィルタエレメント、及びフィルタエレメントの製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載されたフィルタは、最も内径側に位置する第一層と、第一層の外径側に固定された第二層と、第二層の外径側に固定された第三層とから構成されている。特許文献1において、第一層は、金属線材を螺旋状に巻き付けることにより形成されている。第二層は、金網、又はパンチングメタル等の金属製板材等から構成されている。第三層は、金属線材を螺旋状に巻き付けることにより形成されている。
〔水素ステーション〕
図1は、水素ステーションの構成を示す概略図である。
水素ステーション100は、燃料電池自動車110に搭載された車載水素タンク112に水素を充填するための固定設備である。
図示する水素ステーション100は、水素を蓄える水素タンク、蓄えられた水素を適切な圧力に高める圧縮機、圧縮されて高温となった水素を冷却するクーラ(以上不図示)、及び、冷却された水素を燃料電池自動車110に供給するディスペンサ101、等を備える。ディスペンサ101は、所定の圧力(例えば0~87.5MPa)及び所定の温度(例えば、-40℃~85℃)に制御された水素H2を、充填ホース102、及び充填ノズル103を介して燃料電池自動車110に供給する。
燃料電池自動車110は、充填ノズル103と接続する受け口としてのレセプタクル111と、水素を蓄える車載水素タンク112を備える。水素H2は、充填ノズル103及びレセプタクル111を介して車載水素タンク112に充填される。
図2は、本発明の一実施形態に係る高圧流体用管継手部材を示す図であり、(a)は外観を示す側面図であり、(b)は分解した様子を示す側面図である。図3は、本発明の一実施形態に係る高圧流体用管継手部材を示す縦断面図である。
高圧流体用管継手部材(以下、単に「管継手部材」という)1は、水素中の異物を除去する濾過手段であるフィルタエレメント(以下、単に「フィルタ」という)10を備えており、図1に示した充填ノズル103とレセプタクル111の双方又は一方の内部に収容される。
管継手部材1の各部を構成する材料は、使用環境条件(圧力、温度等)、及び濾過対象とする物質に応じて最適なものが使用される。例えば、濾過対象が燃料電池用途向けの高圧水素である場合は、水素の圧力(例えば0~87.5MPa)及び温度(例えば、-40℃~85℃)に耐え、且つ水素脆化に対する耐性を有するオーステナイト系ステンレス鋼を用いることが望ましい。もちろん、管継手部材1には、他の種類のステンレス鋼や、炭素鋼等の合金、その他の金属を用いてもよい。また、必要に応じて表面に皮膜を形成した金属材料を用いてもよい。
以下、管継手部材1を構成する各部材について順次説明する。先にフィルタ支持部材20とフィルタ固定部材40について説明し、フィルタ10については後述する。
フィルタ支持部材20は、図3に示すように概略、軸方向一端面が閉塞された有底円筒形状である。
フィルタ支持部材20は、フィルタ10の中空部10a内に嵌合する外形状を有した円筒状の挿通支持部21と、挿通支持部21の軸方向一端に連接されて外径方向に突出したフランジ状の大径部29と、挿通支持部21の軸方向他端から軸方向に突出した雄ネジ部33とを備える。
挿通支持部21は、フィルタ10内に挿入されることにより、フィルタ10を内径側から支持する。なお、図2(b)に示す挿通支持部21の軸方向長Aは、フィルタ10の軸方向長Bよりも短くなるように設定されている。挿通支持部21の側面には、内外空間を連通させる複数の流体通過孔23、23…が厚さ方向に貫通形成されている。挿通支持部21から雄ネジ部33の中空内部にかけて、流体の通路となる第一中空流路25が形成されている。流体通過孔23、23…は、フィルタ10の外径側から内径方向(中空部10a内)に通過した水素を第一中空流路25内に導入する手段である。
大径部29は、挿通支持部21の軸方向一端面を閉塞する。また、大径部29は、挿通支持部21の外周面から外径方向に伸びる環状の第一端縁支持部31を、軸方向他端面に備えている。第一端縁支持部31は、フィルタ10の軸方向一端10bを支持する。
雄ネジ部33の外径は挿通支持部21の外径よりも小さく、挿通支持部21と雄ネジ部33との間には段差が形成されている。この段差部分、即ち、挿通支持部21の軸方向他端面には、フィルタ固定部材40との間でメタルシール手段を構成する環状の第一メタルシール部(第一シール部)27が形成されている。
フィルタ固定部材40は軸方向両端面が開口した概略円筒形状である。
フィルタ固定部材40は、フィルタ支持部材20によって支持されたフィルタ10の軸方向他端部外面を覆う円筒状のカバー部41と、カバー部41の内周面に形成されてフィルタ10の軸方向他端10c及びフィルタ支持部材20の第一メタルシール部27の双方に当接する環状のシール部43と、シール部43の内奥部に連設されてフィルタ支持部材20の雄ネジ部33に螺着して固定される雌ネジ部49とを備える。
雌ネジ部49は、カバー部41の内径よりも小径である。雌ネジ部49は、フィルタ10の軸方向他端10cに設けた開口から突出するフィルタ支持部材20の雄ネジ部33に螺着される。雌ネジ部49は、カバー部41に対して、カバー部41の内面から内径方向に伸びる環状のシール部43を介して階段状に配置されている。
シール部43は、外径側に配置された環状の第二端縁支持部45と、第二端縁支持部45よりも内径側に隣接配置された環状の第二メタルシール部(第二シール部)47と、を備える。第二端縁支持部45は、フィルタ10の軸方向他端10cと当接することにより、第一端縁支持部31との間でフィルタ10を軸方向に挟圧、保持する。第二メタルシール部47は、フィルタ支持部材20の第一メタルシール部27と密着して、フィルタ支持部材20とフィルタ固定部材40との間を気密に封止するメタルシール手段を構成する。
フィルタ固定部材40の中空部には流体の通路となる第二中空流路51が形成されている。第二中空流路51はフィルタ支持部材20の第一中空流路25と連通して連続する流路を形成する。第一中空流路25及び第二中空流路51を通過した流体は、フィルタ固定部材40の軸方向他端から管継手部材1の外部に流出する。
フィルタ支持部材20とフィルタ固定部材40との間には、両者間における水素の漏出(ショートパス)を防止する環状のメタルシール手段が設けられる。メタルシール手段は、挿通支持部21の軸方向他端に形成された環状の壁面である第一メタルシール部27と、フィルタ固定部材40の第二端縁支持部45に隣接してその内周側に配置された第二メタルシール部47とにより構成される。第一メタルシール部27と第二メタルシール部47が密着することにより、フィルタ支持部材20とフィルタ固定部材40との間を気密封止する。
本例に示すメタルシール手段は、フィルタ支持部材20及びフィルタ固定部材40と一体的に設けられているが、メタルシール手段はフィルタ支持部材20及びフィルタ固定部材40と別体に設けられたシールリング等を備える構成でもよい。また、メタルシール手段の代わりにメタル材料以外の材料を用いた他のシール手段を配置してもよい。
図4は、本発明の一実施形態に係るフィルタを示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は縦断面図である。
フィルタ10は、高圧流体中の異物を除去する手段である。ここで、フィルタ10が濾過対象とする高圧流体は、例えば、圧力が0~87.5MPa、温度が-40℃~85℃の燃料電池用途に用いられる水素である。なお、フィルタ10は、液体を濾過対象としてもよいし、気体を濾過対象としてもよい。ここでいう液体は原則として常温・常圧下において液体である物質であり、液体には水素の貯蔵・輸送用に利用されるメチルシクロヘキサン(MCH)を含む。もちろんフィルタ10は、水素以外の物質(流体)を濾過対象としてもよい。
第一層11は、金属線材(第一金属線材)を螺旋状に(渦巻き状、或いはぜんまい状に)、且つ内外径方向に隣接する金属線材同士が互いに交差する方向に伸びるように多層状に巻付けることにより円筒状に形成されている。
第二層13は、金属線材(第二金属線材)を織るか、又は編むことにより形成された平面状の組織(布状の組織)である金網を、第一層11の上に(外径側に)巻き付けて固定することにより形成されている。ここで、織るとは、縦糸となる金属線材と横糸となる金属線材とを一定の規則の下に交差させて布状の組織(織物組織)を作ることである。また、編むとは、細長い線材を結び合わせたりからみ合わせたりして、打ち違えに組む(互い違いに交差させる)ことにより、布状の組織を作り上げることである。第二層13を構成する金網は、単層でも複数層でもよい。即ち、第二層13は、金網を一周だけ巻き付けることにより形成されていても、複数層巻き付けることにより形成されていてもよい。第二層13を構成する金属線材は、第一層11を構成する金属線材よりも断面積(金属線材の長手方向と直交する断面における面積。以下、同様。)が小さく、第二層13の濾過粒度は第一層11よりも細かい。
第三層17は、金属線材(第三金属線材)を、第二層13の上に(外径側に)螺旋状に(渦巻き状、或いはぜんまい状に)、且つ内外径方向に隣接する金属線材同士が互いに交差する方向に伸びるように多層状に巻付けて固定することにより形成されている。第三層17を構成する金属線材は、第二層13を構成する金属線材よりも断面積が大きく、第三層17の濾過粒度は、第二層13よりも粗い。
なお、各層を構成する金属線材の断面形状は真円形状でもよいし、金属線材は圧延により所定形状に塑性変形されたものでもよい。
各突出部15は、押圧により所定形状に成型されている。本例において突出部15は、軸方向に圧縮成型されることにより、突出部15の軸方向の外側の端面位置(端縁13a、13bの位置)が周方向の全域に亘って均一に揃えられている。また、突出部15は、フィルタ10を管継手部材1内に組み付けたときに第一メタルシール部27と第二メタルシール部47への干渉が回避される軸方向長及び形状となるように成型されている。更に突出部15は、軸方向に圧縮成型される際に、全体として内径方向に湾曲しつつ傾倒する姿勢に成型されている。
なお、突出部15の傾倒方向は外径方向でもよい。突出部15は軸方向の適所が屈曲することにより内径方向又は外径方向に部分的に傾倒してもよい。突出部15に施す押圧成型は、径方向への押圧による成型を含んでもよい。また、突出部15は蛇腹状に(縦断面視でジグザグ状に)成型されていてもよい。
フィルタ10の各層を構成する金属線材には、SUS316Lを使用することができる。上記金属線材としてはSUS316L以外にも、SUS316、SUS304、鉄、軟鋼、ニッケル合金、銅合金、チタン、ハステロイ、インコネル、等を使用することができる。フィルタ10を構成する材料は、フィルタ10が使用される環境に関する条件(圧力、温度等)、及び濾過する物質に応じて最適なものが使用される。例えば、濾過対象が水素である場合は、水素脆化に対する耐性を有した材料が使用される。この場合は、特に、オーステナイト系ステンレスが好適である。
第一層11には、断面積が0.0007mm^2~0.00314mm^2(線径が0.03mm~0.2mm)の金属線材を用いることができる。
第二層13には、断面積が7.854E-05mm^2~0.00785mm^2(線径が0.01mm~0.10mm)の金属線材を用いることができる。第二層13には、綾畳織りの金網の他、平織りや平畳織り等の金網を使用できる。第二層13の厚さ(径方向長)は、0.03mm~0.50mmに設定される。第二層13の濾過精度は、第一層11よりも細かく設定される。例えば第二層13の濾過精度(公称濾過粒度)は、例えば5μm(濾過効率99.9%)に設定することができる。なお、必要な濾過精度を確保できれば、第二層13にはパンチングメタル、ラスメタル、エキスパンドメタル等の板状の部材を用いてもよい。
突出部15の軸方向長は1.00mm以内の長さに設定される。突出部15の軸方向長がこれよりも長くなると、管継手部材1へのフィルタ10の組み込み時に突出部15に不均質なしわが発生しやくすなり、シール性低下の要因となりうる。
本発明の一実施形態に係るフィルタ10は、線材及び金網の巻き付け工程、焼結工程(抜き取り工程)、全長成型工程、洗浄・検査工程等を経ることにより製造される。
まず、線材及び金網の巻き付け工程について説明する。
図5(a)~(d)は、線材及び金網の巻き付け工程を説明する図である。本工程では、フィルタの各層を形成するために、各層を構成する線材及び金網を巻き付けて多孔状の円筒体を形成する。以下、巻き付け工程について順次説明する。
本工程では、軸線Dを中心として円筒状のマンドレル61を一定方向(図中矢印E方向)に回転させながら、マンドレル61の周囲に金属線材(第一金属線材)63を螺旋状、且つ多層状に巻き付ける。
金属線材63は、テンションユニット(不図示)により所定の張力を与えられた状態にて、軸線Dに沿って図中矢印F1、F2方向に往復移動するガイドノズル65から順次繰り出される。金属線材63は、所定のピッチ(軸線D方向における間隔)、及び、所定の角度(図5(a)、(b)に示す軸線Dに対する傾斜角度α1、α2)にて螺旋状に巻き付けられる。
ガイドノズル65を往復移動させることにより、図5(b)に示すように内外径方向に隣接する金属線材63同士が互いに交差する方向に伸びて網目状に重なった多孔状の円筒体である第一層11を得る。
本工程では、第一層11の表面(外周面)に第二層となる金網67を巻き付けて固定する。使用する金網67は、所定の軸方向長及び厚さ(巻回数)の第二層13を形成可能な矩形状に予め調整されている。なお、本工程で巻き付ける金網67の軸方向長に相当する長さB1は、図2(b)に示す軸方向長Bよりも長い。
まず、第一層11の外周側に金網67を位置決めする。位置決めでは、金網67によって形成される第二層13の少なくとも軸方向の一方の端部が第一層11の軸方向端面11a、11b(図4(b)参照)よりも軸方向の外側に突出するように金網67を配置する。金網67の適所、例えば周方向一端部67aを第一層11にスポット溶接により固定する。金網67を所定回数巻き付けた後、金網67の周方向他端部67bを第一層11又は金網67にスポット溶接により固定する。
本工程では、第一層11を形成した金属線材63を切断せずに残置したまま金網67を巻き付けると共に、残置した切断されていない金属線材63を用いて第三層17を形成する。即ち、第一層11の外周面と金属線材63との間に金網67を挿入して、第一層11と金属線材63との間に金網67を巻き込んでいくことで、第三層17を形成する金属線材63を切断せずに金網67の外径側に引き出す。本図には巻き付け回数が一回の例を示しており、図5(c)では金属線材63は周方向の各端部67a、67bの間から金網67の外径側に引き出されている。金属線材63を切断しないので、切断による微細な金属片(金属粉)の発生を防止できる。
本工程は第一層11の形成工程と略同様である。即ち、軸線Dを中心として円筒状のマンドレル61を一定方向(図中矢印E方向)に回転させながら、ガイドノズル65を図中矢印F1、F2方向に往復移動させることにより、金網67の周囲に金属線材63(第三金属線材)を所定のピッチ及び所定の角度にて、螺旋状、且つ多層状に巻き付ける。この際、第三層17の軸方向の少なくとも一方の端面が金網67の軸方向端縁よりも軸方向の内側に位置するように、ガイドノズル65を往復移動させる。
所定の軸方向長及び所定長さの円筒状の第三層17が形成された後、金属線材63を第三層17の適所にスポット溶接にて固定する。最後に金属線材63を切断して、図5(d)に示すようなフィルタ10の前駆体としての多孔状円筒体70を完成する。
多孔状円筒体70はそのままでもフィルタとして使用可能であるが、必要に応じて真空雰囲気中や不活性ガス雰囲気中で1回又は複数回の焼結処理を実施する。また、マンドレル61は、焼結処理の前後の何れかのタイミングで多孔状円筒体70から抜き取られる。
例えば二回の焼結処理を実施する場合、第一回目の焼結処理は、マンドレル61から多孔状円筒体70を取り外さずに、500℃~1500℃の範囲で30分~5時間程度実施する。第二回目の焼結処理は、マンドレル61から多孔状円筒体70を取り外した後、500℃~1500℃の範囲で30分~5時間程度実施する。
焼結工程を経ることにより隣接した金属線材同士が拡散接合するので、金属線材同士の位置ずれを防止し、フィルタの強度を高め、濾過精度を長期にわたって維持することができる。
図6は、成型工程を説明する図である。
成型工程では、圧縮治具73、73を用いて、多孔状円筒体70を軸方向に挟んで圧縮することにより、多孔状円筒体70が所定の軸方向長となるように成型する。本工程では第二層13が圧縮される。即ち、本工程においては、多孔状円筒体70の軸方向両端部に位置する突出部15の突出量(第一層11及び第三層17の軸方向端面からの第二層13の突出量、軸方向長)がG1からG2(但し、G1>G2)となるように調整される。
なお、成型前の突出量G1は例えば0.1~2.0mmに設定され、成型後の突出量G2は例えば0.0~1.0mmに設定される。即ち、成型によって突出部15は0.1~1.0mm圧縮される。
図6(b)の拡大図に示すように、突出部15は、その突出量がG1からG2に変化する過程で内径方向に湾曲した(或いは、傾斜した)形状に調整される。第二層13の軸方向各端縁13a、13bと接触する圧縮治具73、73の押圧面73a、73aは平坦面でもよいし、第二層13の突出部15が内径側へ所望の形状に変形するようにガイドするガイド面を備えていてもよい。本例において、突出部15は内径方向に湾曲変形しているが、外径方向に湾曲変形させてもよい。また、圧縮治具73、73の押圧面73a、73aには、突出部15が外径側へ所望の形状に変形するようにガイドするガイド面を備えてもよい。
このようにして形成されたフィルタ10について、外観検査、寸法検査等を実施し、洗浄を施してフィルタ10として完成する。
図7(a)、(b)は、フィルタの組み付け方法を説明する模式的縦断面図である。
図2(b)及び図7(a)に示すように、まず、フィルタ支持部材20の挿通支持部21をフィルタ10の軸方向一端10bに設けた開口から中空部10a内に挿通して嵌合させる。
ここで、図2(b)にて説明したように、挿通支持部21の軸方向長Aよりもフィルタ10の軸方向長B、言い換えればフィルタ10の第二層の軸方向長Bの方が長いので、図7(a)に示すように、フィルタ10をフィルタ支持部材20に嵌合させただけでは、フィルタ10の軸方向他端10cは、フィルタ支持部材20の第一メタルシール部27よりも軸方向他端側に突出する。
フィルタ10の軸方向他端10cに設けた開口から突出したフィルタ支持部材20の雄ネジ部33にフィルタ固定部材40の雌ネジ部49を螺着、締結する。
ここで、軸方向両端部に位置する突出部15、15は、螺着、締結の際に、フィルタ固定部材40からネジの締結に起因する回転力を受けて、円周方向(フィルタ固定部材40の回転方向、言い換えればネジの締結方向)に沿って均一に倒されつつ軸方向に徐々に圧縮される。軸方向他端に位置する突出部15は、第二端縁支持部45から摩擦により直接回転力を受けて円周方向に沿って傾斜(捻転)する。軸方向一端に位置する突出部15は、第二端縁支持部45から伝達される回転力によってフィルタ10自身が回転することにより、第一端縁支持部31との間に働く摩擦力によって円周方向に沿って傾斜(捻転)する。このように、第二端縁支持部45と第一端縁支持部31が、フィルタ10の突出部15、15に対して螺旋状の移動軌跡を描きつつ相対回転する(軸方向への移動を伴って回転する)ことにより、突出部15、15を円周方向に徐々に馴染ませつつ圧縮し、周方向の全体に亘って均一にシールすることができる。
各突出部15、15は、図6(b)の拡大図に示す形状に戻ろうとする弾性力(或いは反発力)により、夫々第一端縁支持部31と第二端縁支持部45に圧接し、必要なシール性を確保する。なお、軸方向他端側に位置する突出部15は、第一メタルシール部27及び第二メタルシール部47には干渉せずに第二端縁支持部45に圧接するので、メタルシール手段による封止状態を阻害することなく、濾過対象とする流体のショートパスを防止できる。
本実施形態によれば、第二層13の軸方向両端部に位置する突出部15、15を押圧により成型してシールに適した所要形状に変形させるので、フィルタ10と他部品、例えば管継手部材1を構成するフィルタ支持部材20とフィルタ固定部材40とのシール性が向上する。
即ち、本実施形態においては、第二層13を軸方向に押圧(圧縮)することにより、軸方向各端縁13a、13bの軸方向位置が周方向の全域において均一に整えられる。従って、軸方向各端縁13a、13bが夫々第一端縁支持部31と第二端縁支持部45に対して周方向の全域に亘って均一に接触するため、フィルタ支持部材20とフィルタ固定部材40とのシール性が向上する。
本実施形態においては、成型(図6参照)によってフィルタ10の突出部15、15を予め径方向に湾曲させつつ、傾倒させている。しかし、成型後の突出部15、15は、軸線方向に沿って直線的に伸びる形状(径方向に傾倒や湾曲等していない形状)であってもよく、またそのような形状となるように成型時の圧縮量や圧縮力を調整してもよい。仮に、突出部15、15が軸線方向に沿って直線的に伸びる形状であっても、フィルタ10を螺着により管継手部材1に組み付ける場合には、突出部15、15は円周方向への回転を伴う圧縮力を受けて円周方向に徐々に馴染みながら圧縮される。その結果、組み付け後の突出部15、15の姿勢(径方向及び周方向への傾倒状態、捻転状態等)を周方向の全体に亘って均一にすることができ、シール性を向上させて濾過対象物質の漏れを防止できる。
本実施形態に示した成型工程(図6参照)においては、圧縮治具73、73を軸方向のみに移動させたが、圧縮治具73、73を多孔状円筒体70の周方向に沿って、フィルタ組み付け時の締結方向に沿った回転方向に回転させながら多孔状円筒体70を軸方向に圧縮するようにしてもよい。このような成型を実施することにより、成型後の突出部15、15は予め円周方向に沿った傾斜状態(捻転状態)に癖付けされることから、管継手部材1に対してフィルタ10を組み付ける際に、突出部15、15が第一端縁支持部31と第二端縁支持部45に馴染みやすくなる。
突出部15の突出量G2が調整されているため、フィルタ支持部材20に対してフィルタ固定部材40を締結するときに、第二層13が内外径方向に必要以上に湾曲又は屈曲変形することを防止できる。従って、第二層13の軸方向他端縁13bがフィルタ固定部材40の第二端縁支持部45にのみ当接し、メタルシール手段(第一メタルシール部27及び第二メタルシール部47)には干渉しないように制御される。
押圧成型によりフィルタ10の軸方向長、言い換えれば第二層13の軸方向長(突出量G2)が調整されるため、フィルタ固定部材40をフィルタ支持部材20に対して比較的低トルクにて螺着できるようになり、管継手部材1の組立が容易となる。
上記実施形態において、フィルタ10の突出部15、15と夫々接触するシール面としての第一端縁支持部31と第二端縁支持部45は、軸線方向に対して直交する環状の平面から構成されている。しかし、突出部15、15と接触するシール面の少なくとも一方は、軸線方向に対して傾斜する傾斜シール面を備えて構成されてもよい。傾斜シール面は、突出部15を湾曲又は屈曲させつつ徐々に内径方向に縮径させながら又は外径方向に拡径させながら傾倒させる。また、傾斜シール面は、突出部15の内周面又は外周面に接触して、ショートパスを阻止可能にフィルタ10との間の隙間をシールする。
例えば、軸方向他端側に位置する突出部15を内径方向に傾倒させる傾斜シール面は、軸方向の一端から他端に向かって内径が縮径する内周面として形成される。また、軸方向他端側に位置する突出部15を外径方向に傾倒させる傾斜シール面は、軸方向の一端から他端に向かって外径が拡径する外周面として形成される。傾斜シール面は、フィルタ支持部材10に対するフィルタ固定部材40の螺着、締結時に、フィルタ支持部材10に対して相対回転しながら突出部15を径方向に押圧変形させつつ、突出部15の周面(内周面又は外周面)に圧接する。傾斜シール面を形成することにより、突出部15を均一に変形させつつ、周面を傾斜シール面に均一に圧接させることができ、シール性が向上する。
なお、上記実施形態に示すフィルタは、燃料電池用途向けの高圧水素を濾過する用途以外にも、油圧ポンプ用のフィルタや、燃料噴射弁用フィルタ等として使用できる。
<第一の実施態様>
本態様は、流体中の異物を除去するフィルタエレメント10であって、第一金属線材を螺旋状、且つ多層状に巻付けることにより形成された円筒状の第一層11と、第一層の外径側に固定されて、第一金属線材よりも断面積が小さい第二金属線材を織るか又は編むことにより形成された金網から構成され、第一層よりも濾過粒度が細かい第二層13と、第二層の外径側に固定されて、第二金属線材よりも断面積が大きい第三金属線材を螺旋状、且つ多層状に巻付けることにより形成された、第二層よりも濾過粒度が粗い第三層17と、を備え、第二層は少なくとも軸方向の一端部に、第一層及び第三層の軸方向端面から軸方向の外側に向けて突出すると共に押圧により成型された突出部15を有することを特徴とする。
第二層を周方向に挟む第一層と第三層は、主として第二層を補強する補強材として機能する。本態様においては、第二層の少なくとも一方の軸方向端部を軸方向の外側に突出させた突出部を設けることによって、突出部を、フィルタエレメントを組み付ける他部品に対して弾性的に圧接するシール手段として機能させることができる。
本実施態様においては突出部が押圧により成型されている。突出部を軸方向への圧縮により成型する場合、突出部の突出量と軸方向端縁の位置が周方向に一様に揃うため、他部品との接触が周方向に均一となり、シール性が向上する。また、軸方向への圧縮により突出部を内径方向又は外径方向に傾倒させた場合は、他部品への組み付け時における突出部の変形状態を制御できるので、シール性を確保しつつ歩留まりを向上させることができる。なお、突出部の成型は、軸方向への圧縮に限らない。上記成型は、例えば内径方向又は外径方向への押圧による成型を含んでもよい。
本実施態様によれば、第一層と第三層よりも軸方向の外側に突出した突出部を押圧により成型するので、他部品とのシール性を向上させることができ、濾過対象とする流体のショートパスをより効果的に防止できる。
本態様に係るフィルタエレメント10において、突出部15は、内径方向又は外径方向に傾倒していることを特徴とする。
本態様によれば、他部品への組み付け時における突出部の変形状態を制御できるので、シール性を確保しつつ歩留まりを向上させることができる。
本態様に係るフィルタエレメント10において、突出部15は、周方向に沿って傾倒していることを特徴とする。
本態様によれば、他部品への組み付け時における突出部の変形状態を制御できるので、シール性を確保しつつ歩留まりを向上させることができる。
本態様に係るフィルタエレメント10は、第二層13の軸方向両端縁13a、13bに第二金属線材の切断面が現れないことを特徴とする。
第二層は、第二金属線材を編むことにより形成された金網から構成されている。金網を切断すれば第二層の軸方向長(或いは突出部15の突出量)を容易に調整できるが、軸方向の端縁に金属線材の切断面が多数形成されることとなり、微細な金属片又は金属粉が発生する虞がある。特にフィルタエレメントが清浄な環境下で使用される場合には、極力、異物が発生しないようにしておくことが望ましい。
本態様においては、第二層の軸方向の端縁に金属線材の切断面を有さないので、金属線材の切断に起因する異物の発生を防止でき、フィルタエレメントの清浄性を保持できる。また、製造段階で異物の発生が抑制されるので、フィルタエレメントの洗浄工程を簡易にすることができ、製造コストの低減を図ることができる。なお、第二層の軸方向長(或いは突出部15の突出量)は、軸方向への押圧成型により調整可能である。
本態様に係るフィルタエレメント10は、第一金属線材と第三金属線材とが連続していることを特徴とする。
金属線材が連続するとは、少なくとも第一層11を構成する第一金属線材と第三層17を構成する第三金属線材との間に切断面が形成されていないことをいう。第一金属線材と第三金属線材は、長手方向の端部にある切断面同士を接合により一体化させることによって、連続する一の金属線材として構成されたものでもよい。しかし、共通する一の金属線材のうちの長手方向の一部を第一金属線材とし、長手方向の他部を第三金属線材として、夫々第一層と第三層を構成することが望ましい。この場合は、第一層を形成した第一金属線材を切断せずに、当該第一金属線材により第三層を形成することになる。
本態様によれば、金属線材の切断による微細な金属片又は金属粉の発生を防止できる。
本態様に係るフィルタエレメントは、温度が-40℃~85℃、且つ圧力が0~87.5MPaの流体中の異物を除去することを特徴とする。
本実施態様に係るフィルタエレメントは、燃料電池用途に用いられる高圧の水素を濾過するフィルタとして好適に使用できる。
本態様に係るフィルタエレメント10において、第一層11を構成する第一金属線材の断面積は0.0007mm^2~0.00314mm^2であり、第二層13を構成する第二金属線材の断面積は7.854E-05mm^2~0.00785mm^2であり、第三層17を構成する第三金属線材の断面積は第二の金属線材の断面積よりも大きく、突出部15の軸方向への突出量G2が1.00mm以内であることを特徴とする。
本実施態様に係るフィルタエレメントは、燃料電池用途に用いられる高圧の水素を濾過するフィルタとして好適に使用できる。
本態様は、流体中の異物を除去するフィルタエレメント10の製造方法であって、第一金属線材(金属線材63)を螺旋状、且つ多層状に巻付けて円筒状の第一層11を形成する工程と、第一金属線材よりも断面積が小さい第二金属線材を編むことにより形成された金網67を第一層の外径側に巻き付けることにより、第一層よりも濾過粒度が細かく、且つ少なくとも軸方向一端部が第一層の軸方向端面(11a、11b)よりも軸方向の外側に突出した突出部15を有する第二層13を形成する工程と、第二金属線材よりも断面積が大きい第三金属線材(金属線材63)を、第二層の外径側に螺旋状、且つ多層状に巻付けることにより、軸方向端面(17a、17b)が突出部の軸方向端縁(15a、15b)よりも軸方向の内側に位置する第三層17を形成する工程と、突出部を押圧により成型する工程と、を含むことを特徴とする。
突出部を押圧により成型することにより、上記各実施態様に記載された種々の効果を奏するフィルタエレメントを得ることができる。本態様によれば、高性能のフィルタを安価に製造することができる。
本態様に係るフィルタエレメント10の製造方法において、突出部15を押圧により成型する工程は、突出部を内径方向又は外径方向に傾倒させる工程であることを特徴とする。
本態様によれば、他部品への組み付け時における突出部の変形状態を制御できるフィルタエレメントを得られるので、シール性を確保しつつ歩留まりを向上させることができる。
本態様に係るフィルタエレメント10の製造方法において、突出部15を押圧により成型する工程は、突出部を周方向に沿って傾倒させる工程であることを特徴とする。
本態様によれば、他部品への組み付け時における突出部の変形状態を制御できるフィルタエレメントを得られるので、シール性を確保しつつ歩留まりを向上させることができる。
本態様に係るフィルタエレメント10の製造方法において、突出部15を押圧により成型する工程は、第二層13に対する軸方向への圧縮を含む工程であることを特徴とする。
第二層を軸方向へ圧縮することにより、突出部の突出量と軸方向端縁の位置が周方向に一様に揃うため、他部品との接触が周方向に均一となり、フィルタエレメントのシール性が向上する。また、第二層を軸方向へ圧縮することにより、突出部を内径方向又は外径方向に傾倒させることができるので、他部品への組み付け時における突出部の変形状態を制御できるので、シール性を確保しつつ歩留まりを向上させることができる。また、このように形状が制御されたフィルタエレメントを安価に製造できる。
押圧により成型する工程において、突出部は、軸方向への圧縮のみを受けても、軸方向への圧縮と共に周方向への回転を受けてもよい。後者の場合、突出部は、周方向に沿って傾倒することとなる。
本態様に係るフィルタエレメント10の製造方法は、第一金属線材(金属線材63)を第二層13の外径側に引き出すと共に、該第一金属線材を第三金属線材(金属線材63)として第三層17を形成することを特徴とする。
本態様によれば、金属線材の切断による微細な金属片又は金属粉の発生を防止可能なフィルタエレメントを得ることができる。
本態様に係るフィルタエレメント10の製造方法は、第一層11、第二層13及び第三層17を形成した後に、少なくとも1回の焼結工程を実施することを特徴とする。
焼結工程を経ることにより、各層を形成する隣接した金属線材同士が拡散接合し、金属線材同士の位置ずれを防止し、フィルタエレメントの強度を高めることができる。
本態様に係る管継手部材1は、上記各実施態様に係るフィルタエレメント10と、フィルタエレメントの軸方向一端10bに設けた開口から中空部10a内に挿通される挿通支持部21、挿通支持部の軸方向一端から外径方向に伸びてフィルタエレメントの軸方向一端縁13aを支持する環状の第一端縁支持部31、及び、挿通支持部の軸方向他端面に形成される環状の第一シール部(第一メタルシール部27)を有したフィルタエレメント支持部材20と、フィルタエレメントの軸方向他端縁13bを支持する環状の第二端縁支持部45、及び第二端縁支持部に隣接配置されて第一シール部との間を気密封止する環状の第二シール部(第二メタルシール部47)を有し、フィルタエレメント支持部材の軸方向他端部に固定されるフィルタエレメント固定部材40と、を備えることを特徴とする。
上記各実施態様に係るフィルタエレメントを管継手部材に用いることで、フィルタエレメントと各部品とのシール性を確保でき、高い濾過性能を有した管継手部材を提供することができる。
本態様に係る管継手部材1において、フィルタエレメント10の突出部15は、第一シール部(第一メタルシール部27)と第二シール部(第二メタルシール部47)への干渉を回避する軸方向長と形状を有することを特徴とする。
突出部の軸方向長と形状(例えば傾倒方向等)は、押圧による成型により制御される。適切な軸方向長と形状となるように突出部を成型することで、フィルタエレメントを他部品に組み付けたときに、突出部が第一シール部及び第二シール部に干渉しなくなり、流体のショートパスといった不具合を防止できる。
Claims (2)
- 流体中の異物を除去するフィルタエレメントであって、
第一金属線材を螺旋状、且つ多層状に巻付けることにより形成された円筒状の第一層と、
前記第一層の外径側に固定されて、前記第一金属線材よりも断面積が小さい第二金属線材を織るか又は編むことにより形成された金網から構成され、前記第一層よりも濾過粒度が細かい第二層と、
前記第二層の外径側に固定されて、前記第二金属線材よりも断面積が大きい第三金属線材を螺旋状、且つ多層状に巻付けることにより形成された、前記第二層よりも濾過粒度が粗い第三層と、を備え、
前記金網は、前記第二金属線材の切断面が前記フィルタエレメントの軸方向両端に現れないように、前記第一層と前記第三層との間に巻き込まれており、
前記第一金属線材と前記第三金属線材とが連続していることを特徴とするフィルタエレメント。 - 流体中の異物を除去するフィルタエレメントの製造方法であって、
第一金属線材を螺旋状、且つ多層状に巻付けて円筒状の第一層を形成する工程と、
前記第一金属線材よりも断面積が小さい第二金属線材を編むことにより形成された金網を前記第一層の外径側に巻き付けることにより、前記第一層よりも濾過粒度が細かく、且つ少なくとも軸方向一端部が前記第一層の軸方向端面よりも軸方向の外側に突出した突出部を有する第二層を形成する工程と、
前記第二金属線材よりも断面積が大きい第三金属線材を、前記第二層の外径側に螺旋状、且つ多層状に巻付けて第三層を形成する工程と、を含み、
前記第二層を形成する工程は、前記第二金属線材の切断面が前記第一層の軸方向の各端面よりも内側となるように前記金網を巻き付ける工程であり、
前記第三層を形成する工程では、前記第一金属線材を前記第二層の外径側に引き出すと共に、該第一金属線材を前記第三金属線材として、前記第二金属線材の切断面が前記フィルタエレメントの軸方向両端に現れないように前記第三金属線材を巻き付けることを特徴とするフィルタエレメントの製造方法。
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