JP7180498B2 - ダイカストマシンの射出装置の寿命予測方法 - Google Patents
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Description
一般に射出装置は、長期間に亘って運転、例えば溶湯の射出を繰り返すと、プランジャーチップ5に摩耗が生じ、また、射出スリーブ4内に固化した金属粒が付着することで安定した所定の射出速度が達成できなくなり、射出速度が波打つように変化するなどいわゆるかじりが発生する。
また摩耗が進行すると充填完了位置の近傍で、プランジャーチップ5と射出スリーブ4の隙間にバリ(カエリバリ)が発生し、突出や射出後退の動作ができず、短時間の停止が繰り返し発生する。極端な場合にはバックフラッシュが発生し、火災等に繋がるおそれがある。
さらにプランジャーチップ5と射出スリーブ4の隙間が増加すると、アルミが差し込み、所望の射出速度が得られず製品不良が発生する。
また、溶湯温度の低下を生じさせて溶湯へ空気を巻き込むことがある。そうすると、キャビティ8内への湯まわりの悪化や製品における巣の発生などの欠陥を生じさせたり、プランジャーチップ5や射出スリーブ4の寿命を短くしたりするおそれがあった。
バックフラッシュ等の生産阻害要因が発生すると稼働停止してチップを交換するなど生産ロスが大きいため、同図(2)に示すように過去の経験に基づいてあらかじめ定めた交換のタイミング(ショット数量など)に達した時点でチップAからチップBへ、チップBからチップCに交換している。この場合、現時点のかじり度合いによらず一律のタイミングで交換するため、実際にはまだ十分に使用できる部品(同図中のBの使用ロス参照)を廃棄することがあった。
特許文献1に開示のかじり度合検出方法は、1ショット毎にプランジャーチップ5にかかる鋳造圧力の値を詳細に検出して、鋳造圧力の値からかじり大きさと位置を検出している。しかしながら構成部品の現状のかじり度合いを認識することができるが、その後の寿命に関する情報が得られず、直近の1ショットデータから交換のタイミングを決定するため、急に生産計画の変更が生じるおそれや、交換部品の手配が遅れて稼働停止するおそれなどがあった。
前記射出プランジャーのショット数ごとに前記点数の積算値が、あらかじめ定めた直ちに部品交換が必要ではなく、まだ数ショット行える状態の寿命積算値に達したときに部品交換と判断する工程と、を有することを特徴とするダイカストマシンの射出装置の寿命予測方法を提供することにある。
上記第1の手段によれば、構成部品の交換時期を高精度で予測することができる。
上記第2の手段によれば、寿命予測の精度を高めることができる。
上記第3の手段によれば、部品交換が必要となる前にあらかじめ交換部品を手配するなど稼働時間のロスを少なくできる。
一般的なダイカストマシンの鋳造作業は、型締め、注湯、射出開始、冷却(凝固)、型開き、製品取出、製品検知、金型スプレー、射出後退、チップ潤滑までの工程で製品1つが成形される1ショット(1サイクルともいう)とし、このショットを繰り返し行っている(図3参照)。本発明は射出開始時のプランジャーチップ5にかかる鋳造圧力の値を詳細に検出(具体的に射出波形を採取した後(図3中のS1)、時間、射出ストローク、射出速度、ヘッド圧、ロッド圧、鋳造圧力などの採取データを得る(図3中のS2)。)そして、鋳造圧力の値(図3中のS3)からかじり大きさと位置を検出している。
ここで、評価区間と鋳造圧力の値について模擬的に説明する。評価区間をXからYとした時、鋳造圧力のきざみを例として1mmとするとPmの値はその1mm幅の値の平均値をとることにする。
前記圧力Pmの定義をもとに、図2は鋳造圧力と射出速度の波形を書き直したものである。
かじりを評価、管理したい低速区間の射出ストローク範囲を設定する。評価区間X~Y(mm)(Y>X)は図2では20~535mmとなっている。
高速区間も評価可能であるが、高速区間の鋳造圧力値はゲート抵抗や射出速度設定値に依存し変化する。
評価区間X~Y(mm)(図4中のS5)のPm値(MPa)を積算してPsum値(MPa)とする。評価区間距離Y-X(mm)で除して一般化して、Psum/(Y-X)=Pav値(MPa/mm)とする(図4中のS6)。これにより、鋳造圧力と射出ストロークの面積を一般化することができる。これにより、低い鋳造圧力でも、幅が広いとかじり度合が悪いと判定する。
評価区間X~Y(mm)の鋳造圧力またはPm値の最大値とその発生ストローク値を抽出する。Pmax値(MPa)とSt値(mm)である(図4中のS7)。これは、鋳造圧力のピークの大きさに着目して評価するものである。すなわち幅が狭くても、高い鋳造圧力ピークは悪いと判定する。
Pav値(MPa/mm)にa個の隔たりAaを設け、a回の評価を実施し、点数を付ける。隔たりAaは変更できるようにしてもよいし、固定値でもよい(図4中のS8)。
Pmax値(MPa)にb個の隔たりBbを設け、b回の評価を実施する。前記Pav値のように点数付ける。隔たりBbは変更できるようにし、固定しておいてもよい(図4中のS10)。
例えば隔たりB1、B2、・・・・Bbの場合Pmax値≧B1なら1点、Pmax値≧B2なら1点追加・・・Pmax値≧Bbなら1点追加し、最大b点となるようにする(図4中のS11)。
かじり度合いの点数付け、すなわちa,b段階評価の点数(図4中のS9とS11)の合計を算出する(図3中のS12)。
かじり度合いの点数(合計)の積算を行い、所定稼働時間経過後に残寿命(残ショット数)の予測計算を行う(図3中のS13)。図6は本発明のショット数とかじり度合いの関係を示す説明図である。同図(2)に示すように、1ショット毎の点数を積算していくと、チップA積算値aのような右肩上がりのほぼ直線状に現れる。
またかじり度合い(摩耗の具合等)に応じて、合計点数が大きいときなどの場合に任意の値を加算しても良い。これにより高精度の寿命予測が行える。
すでに部品交換した実績値がある場合、部品寿命に至るまでの残ショット数Lは、部品寿命をM、鋳造済みのショット数をN、累積点数をAとしたとき、L=M/(A/N)-Nから求めることができる。なお、鋳造済みのショット数Nは多いほど、寿命予測の精度は上がる。
かじり度合いの累積値と残寿命予測値を表示する(図3中のS15)。
かじり度合い点数の積算値を設定する(寿命積算値)(図3中のS16)。あらかじめ部品寿命となる寿命積算値cを決定する。本実施形態の寿命積算値cとは、例えば、過去に交換した部品の使用実績値を参考にして決定することができ、直ちに部品交換が必要ではなく、まだ数ショット行える状態の積算値である。
積算値が寿命積算値に達したとき警報を発し又は警告する(図3中のS17)。これにより、部品交換が必要となる前にあらかじめ交換部品を手配するなど稼働時間のロスを少なくできる。
警告後、必要に応じて、次サイクルは行わず(No)鋳造終了して部品交換を行う。一方、積算値が寿命積算値に達するまでは、次サイクルを行う(Yes)。
このような本発明のダイカストマシンの射出装置の寿命予測方法によれば、図6(1)に示すようにチップAの製品寿命(要部品交換)に達する前にチップBを手配し、部品交換を行うことができ、チップAの使用ロスを大幅に削減できる。またダイカストマシンの射出装置を構成する部品、例えばプランジャー機構、射出スリーブ、プランジャーチップの残ショット数などを高精度で寿命予測することができる。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
2 固定型
3 可動型
4 射出スリーブ
5 プランジャーチップ
6 射出プランジャー
8 キャビティ
Claims (3)
- 射出プランジャーの移動範囲内に評価区間を設定してN分割し、各分割区間にかかる鋳造圧力の平均値をPm値(m=1、2、…N)とし、前記評価区間X~YのPm値の積算値Psum値を評価区間の長さY-Xで除した値をPav値とし、前記評価区間X~Yの鋳造圧力Pm値の最大値をPmax値とし、その発生ストローク値をSt値としたとき、前記Pav値と前記Pmax値のそれぞれに、あらかじめ決めた数値との隔たりに対する基準値を設け、前記Pav値と前記Pmax値をそれぞれの隔たりと比較し、前記Pav値と前記Pmax値のそれぞれにかじり度合いの点数を付ける工程と、
前記射出プランジャーのショット数ごとに前記点数の積算値が、あらかじめ定めた直ちに部品交換が必要ではなく、まだ数ショット行える状態の寿命積算値に達したときに部品交換と判断する工程と、を有することを特徴とするダイカストマシンの射出装置の寿命予測方法。 - 請求項1に記載されたダイカストマシンの射出装置の寿命予測方法において、
前記かじり度合いの点数は、かじり度合いに応じて任意の値を加算したことを特徴とするダイカストマシンの射出装置の寿命予測方法。 - 請求項1又は請求項2に記載のダイカストマシンの射出装置の寿命予測方法において、
前記積算値が、前記寿命積算値に達したとき部品交換のアラームを発生することを特徴とするダイカストマシンの射出装置の寿命予測方法。
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