JP7180357B2 - 捲縮糸 - Google Patents

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Description

本発明は、触感がソフトでありながら、初期伸長時に伸長応力を有することで、着用時に適度な着圧感や動作追従性が得られる着用快適性を有したストレッチ素材に適した捲縮糸に関するものである。
ポリエステルやポリアミドなどの熱可塑性ポリマーを用いた繊維は力学的特性、寸法安定性をはじめ様々な優れた特性を有していることから、衣料用途をはじめ、インテリア、車両内装、産業資材等各種分野で利用されており、繊維の用途が多様化するに伴い、その要求特性も多様なものになってきている。
特に、快適性や運動性を追い求める傾向にある衣料用テキスタイルにおいては、着用時のフィット感や動作の追従性が求められるようになり、ストレッチ素材に適した原糸に対する要求も高まりつつある。これらストレッチ素材は、ハイエンドなスポーツ衣料だけにとどまらず、一般ユーザーも好んで着用する傾向にあるため、基本的なストレッチ性能の高度化に加え、純粋なスポーツ衣料では取り上げられることの無かった審美性、風合い、軽量性、嵩高性、発色性等との複合的な機能を兼ね備える布帛への要求が高い。
ストレッチ性を有した布帛には、ゴム弾性をもつポリウレタン系の繊維を糸に混繊、あるいは組織の一部として活用する手法が広く用いられている。しかしながら、ポリウレタン系繊維は耐候性に劣ることから、主には芯糸に配置して、外部を他素材でカバーリングした加工糸として用いられることが多い。このため、該加工糸による布帛はおのずと厚みをもったものになり、更にポリウレタン系繊維自体が高剛性であることから、布帛の触感は柔軟であるとはいい難いものになる。また、ポリウレタン系繊維はその分子構造から染料の定着が悪く、発色性に優れるとは言い難く、他素材併用の場合には、染色工程が複雑になる場合があった。
このため、風合いや発色性の良いポリエステル繊維やポリアミド繊維等に顕在的あるいは潜在的に3次元的な形態を付与し、糸形態がバネのように伸び縮みすることによってストレッチ性を発現する捲縮糸に関する提案が種々行われている。
糸形態によりストレッチ性を発現させる手法は、加撚/解撚トルクにより捲縮形態を発現させる仮撚り加工糸を含めると種々のものが存在するが、その中でも収縮挙動の異なるポリマーを紡糸段階で複合化し、その収縮差を利用して潜在的に捲縮を発現させる捲縮糸に関する繊維技術が存在する。
例えば、特許文献1では、粘度差のある2成分のポリマーをサイドバイサイド型に貼り合わせた複合繊維による捲縮糸が提案されている。この複合繊維においては、ポリマー間の粘度差から生ずる加工時の応力差により、繊維を大きく湾曲させることで捲縮形態をとることから、ポリマーの組合せによって捲縮形態を制御することが可能となる。
特許文献2や特許文献3では、2種類のポリエステル系重合体からなり、少なくとも一方にポリトリメチレンテレフタレートやポリエステル系エラストマーを主体としたポリエステルを複合した捲縮糸が提案されている。この捲縮糸では片成分に伸長回復率が高く、ヤング率が低い弾性ポリマーを用いて、捲縮形態とポリマーの特性を組み合わせることで伸長性の向上を可能にしている。
特開平09-157941号公報(特許請求の範囲) 特開2002-339169号公報(特許請求の範囲) 特開2008―101281号公報(特許請求の範囲)
本発明の目的を説明するため、ポリウレタン系繊維及び特許文献1~3のようなポリマー複合による捲縮糸の伸長長さ-伸長応力の関係を図1に示す。
まずポリウレタン系繊維において伸長長さ-伸長応力の関係(図1のB)をみると、ゴム弾性の特徴から初期伸長時においても伸長応力が発現しており、この高い伸長応力が衣服として着用した際の着圧感や動作追従性へと繋がっている。しかし、ポリウレタン系繊維は初期伸長時の伸長応力には優れているものの、前述したように他素材とのカバーリングによる布帛の厚みやポリウレタン系繊維自体の剛性の高さが相まって着圧感が強すぎてしまうことがあり、着用時の締めつけ感や着脱時の硬さを感じる場合があった。このため、一般ユーザーに求められるスタイリッシュ性や快適性を満たすストレッチ素材への展開が難しい場合があった。
ポリマー複合による捲縮糸における伸長長さ-伸長応力の関係(図1のA)では、初期伸長時の伸長によって糸形態がコイル状からストレート状になる過程では応力がほとんど発現せず、糸形態がストレート状となるまで伸長すると、伸長応力が急に立ち上がることが分かる。このため、特許文献2においては、風合いや発色性に加えて伸長性にもある程度優れているものの、衣服として着用した際には着圧をほとんど感じることができず、また動作追従性においても急な変化に伸長が追従できず、衣服がタルミやすい場合があり、衣料用途における展開が限られてしまう場合があった。
特許文献3のように糸径の太さを太くし、糸自体の剛性を高めることで伸長応力の低さを補うことも可能であるが、その場合は布帛の触感は硬いものとなってしまい、ポリマー複合による捲縮糸の特徴であるソフトな触感が損なわれてしまう場合があった。
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点に鑑み、触感がソフトでありながら、初期伸長時に伸長応力を有することで、着用時に適度な着圧感や動作追従性が得られる着用快適性を有したストレッチ素材に適した捲縮糸を提供することにある。
上記課題は以下の手段によって達成される。すなわち、
(1)繊維径が18μm未満であり、コイル中心方向に0.05≦繊維径/捲縮径の捲縮を有することを特徴とする捲縮糸。
(2)コイル中心方向に捲縮ピッチが300μm未満の捲縮を有し、伸縮伸長率が80%以上であることを特徴とする(1)に記載の捲縮糸。
(3)繊維軸横断面において、少なくとも2種類以上のポリマーからなる偏心芯鞘断面であり、鞘部の最小厚みが0.1~1.0μmであることを特徴とする(1)または(2)に記載の捲縮糸。
(4)(1)から(3)のいずれか1項に記載の捲縮糸からなることを特徴とする繊維製品。
(5)(1)から(3)のいずれか1項に記載の捲縮糸からなることを特徴とする織編物。
本発明の捲縮糸は、触感がソフトでありながら、初期伸長時に伸長応力を有することで、着用時に適度な着圧感や動作追従性が得られる快適なストレッチ素材とすることができ、スポーツ・アパレル衣料用途から衛生材料などの産業資材用途まで幅広い用途の繊維製品への適用が期待できる。
従来のストレッチ繊維の伸長長さ-伸長応力の関係を表す特性図である。 本発明の捲縮糸の捲縮形態の概略図である。 (a)(b)本発明の捲縮糸の繊維横断面における複合断面の概略図である。
以下、本発明について望ましい実施形態と共に詳述する。
本発明は、捲縮糸の捲縮形態を制御することにより本来の糸が有するストレッチ機能を最大限に引き出すことを目的として鋭意検討したものであり、本発明により従来のストレッチ繊維では達成し得なかった、ソフトな触感と初期伸長時での伸長応力の両立を達成できることを発見したものである。
本発明者等が鋭意検討した結果、繊維径が細く、繊維径と捲縮の曲率サイズがある一定の関係にある際に目的とする特性を達成することを発見したことが、本発明の根幹をなしており、具体的には繊維径が18μm未満であり、繊維径と捲縮径の比(繊維径/捲縮径)が0.05以上であることが本発明の第1および第2の要件になる。
布帛の触感を制御するためには、糸1本当たりの剛性を考えることが重要となる。この剛性は、材料の弾性率及び曲げモーメントに対する部材の変形しにくさを表す量である断面二次モーメントで考えることができ、材料が真円の場合の断面二次モーメントは、以下の式(1)で計算することができる。
I=πd/64 ・・・ 式(1)
I : 断面二次モーメント (mm
d : 材料径(=繊維径) (mm)
式(1)より、糸の剛性は、ポリマー固有の値である弾性率のみならず繊維径を細くすることで下げることが可能であることが分かる。
すなわち、ポリマーに依存すること無く、布帛とした際にソフトな触感を得るためには、捲縮糸の繊維径を18μm未満とすることが必要になる。
本発明で言う繊維径とは、光学顕微鏡にて繊維の捲縮形態を観察したときの繊維径を意味する。具体的にはサンプルを単糸一本に分解し、KEYENCE社製デジタルマイクロスコープにて、コイル中心方向に長さ3mm間の捲縮形態を観察したときの、繊維径(μm)(図2のC)を求めるものである。本発明においては、1単糸あたり任意の3箇所で測定を行い、これを異なる10本の単糸において行った結果の単純な数平均を求め、小数点以下を四捨五入した値が本発明で言う繊維径である。
前述した考えを推し進めると、繊維径はより細くなるほど、布帛とした際にはソフトな触感が得られることとなり、アウターの中に羽織るミドルレイヤーやシャツ、ブラウス等にも適用可能な柔軟な布帛とするには、繊維径を14μm未満とすることが好ましい。また、ストレッチ性と柔軟な触感による快適性に加え、薄地化による軽量感も得られるため、肌に触れるインナーや動作性が必要となるスポーツ下着には、繊維径を10μm未満とすることがより好ましい。
単糸1本が持つ収縮力が単糸同士の摩擦による拘束力を上回り、布帛とした際に十分な捲縮形態の発現が可能になる範囲として、本発明者等の検討では繊維径が4μm以上であることであり、この観点から本発明の目的を達成できる実質的な下限値として、繊維径は4μm以上であることである。
次に、本発明の捲縮糸の第2の特徴である初期伸長時での伸長応力を発現するためには、捲縮糸の捲縮形態が0.05≦繊維径/捲縮径であることが必要になる。
ここで言う繊維径/捲縮径とは、光学顕微鏡にて繊維の捲縮形態を観察したときの捲縮径を繊維径で割った値を意味する。具体的にはサンプルを単糸一本に分解し、KEYENCE社製デジタルマイクロスコープにて、コイル中心方向に長さ3mm間の捲縮形態を観察したときの、繊維径(μm)(図2のC)を捲縮径(μm)(図2のD)で割った値を求めるものである。本発明における繊維径は図2のCに示すような繊維軸に対して垂直方向での繊維の幅を、捲縮径は図2のDに示すような捲縮形態の山、谷の頂点に対してコイル中心方向と平行に線を引き、2つの線を直行する一本の線が交わる二点間の距離を求めるものであり、それぞれ1単糸あたり任意の3箇所で測定を行い、これを異なる10本の単糸において行った結果の単純な数平均を求め、小数点3桁以下を四捨五入した値が本発明で言う繊維径/捲縮径である。
この繊維径/捲縮径というパラメータの原理は、金属ばねにおける引きばねの原理である以下の式から考えることができる。すなわち、式(2)からばねの引張荷重は材料固有の値であるGを除くと、有効巻数Na・コイル中心径D・線径dに依存しており、最も効果的に引張荷重を変化させることを想定すると、3乗の値である線径/コイル中心径を制御することが必要であると理解することができる。
P=δ・(Gd/8Na)・(d/D) ・・・ 式(2)
P : 引張荷重(=伸長応力) (N)
δ : ばねのたわみ(=伸長長さ) (mm)
G : 横弾性係数 (N/mm
Na: 有効巻数(=1/捲縮ピッチ)
D : コイル中心径(=捲縮径) (mm)
d : 線径(=繊維径) (mm)
この原理を本発明の捲縮糸に置き換えると、線径/コイル中心径は繊維径/捲縮径で表され、捲縮糸の初期伸長時の伸長応力を高めるには、繊維径/捲縮径を増大させることが重要であり、この観点から、本発明の目的を達成するためには、繊維径/捲縮径を0.05以上であることが必要になる。係る範囲であれば、前述した繊維径が18μm未満であることによるソフトな触感に加えて、初期伸長時に伸長応力が発現する従来のストレッチ素材にはなかった特異な伸長挙動になり、着用時に適度な着圧感や動作追従性が得られる快適なストレッチ素材とすることができる。前述した引張ばねの原理から、繊維径/捲縮径の値が大きいほど高い伸長応力を発現することになるため、ソフトな触感を維持しながら、伸長変形時には抵抗感を感じることができ、心地よい着圧による疲労軽減や運動能力向上を促すコンプレッションウェアに適する範囲としては、繊維径/捲縮径を0.1以上であることが好ましい。係る範囲では繊維径14μm未満の細繊度領域においても一般的なストレッチ素材同等以上の伸長時の抵抗感を感じることが出来る。
本発明においては、繊維径/捲縮径の値が大きいほど、伸長応力が増大するものであるが、捲縮糸の繊維軸方向にみて斑無く、特徴的な微細捲縮が発現できる範囲は繊維径/捲縮径が0.25以下までであり、本発明の実質的な上限値である。
本発明で言う、この特徴的な捲縮形態により発現する初期伸長時の伸長応力は、原糸の100%伸長時における応力の値を指し、以下の方法で測定することができる。すなわち、具体的には繊維を1m×10ループでかせ取りし、98℃の沸騰水中にて1.765×10-4cN/dtexの荷重下で15分間処理後乾燥し、4.413×10-1cN/dtexの荷重下で試料の中央部から上75mmの位置に印をつける。その後、引張試験機(オリエンテック製“テンシロン”(TENSILON)UCT-100)でJIS L1013(2010) 8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で印をつけた箇所を固定し、初期試料長50mm、引張速度100mm/分で引っ張り、伸度100%における荷重(cN)を、該繊維の繊度(dtex)×20の値で割った値を求めるものである。これを異なる10本の繊維において行った結果の単純な数平均を求め、小数点3桁以下を四捨五入した値が本発明で言う100%伸長時の応力である。
該伸長応力に関しては、本発明の目的とする快適性を有したストレッチ素材にするには、100%伸長時の応力が0.05cN/dtex以上であることが好ましい。係る範囲であれば、着用した際に強い締めつけ感を感じることなく、心地よい着圧感が発現することとなる。更に激しい動きをする際に着用するスポーツ衣料、特に機能性インナー等に適用するには、優れた動作追従性が要求され、これを快適に発現させるためには100%伸長時の応力が0.15cN/dtex以上の範囲とすることが目安となり、より好ましい範囲として挙げることができる。
本発明においては、100%伸長時の応力が大きいほど着圧感を感じることができるが、着用時に適度な着圧感や動作追従性が得られる範囲としては100%伸長時の応力が0.3cN/dtexまでであり、本発明の実質的な上限値である。
捲縮糸における初期伸長時の伸長応力とは、伸長によって糸形態がコイル状からストレート状になる過程で発生する応力を利用して、初期伸長時に伸長応力を有する独特の伸長挙動を発現するものであるが、糸形態がコイル状からストレート状になるまでの長さが短いと、着用時には完全にストレート状に伸び切ってしまい、強い締めつけ感を感じることとなる。そのため、糸形態がコイル状からストレート状になるまでの長さは長いことが好ましく、本発明では伸縮伸長率が80%以上であることが好ましい。
ここで言う伸縮伸長率とは、おおよそ捲縮糸の糸形態がコイル状からストレート状になるまでの長さを意味し、一般のストレッチ性能として、JIS L1013(2010) 8.11項C法(簡便法)によって評価するものである。
本発明の捲縮糸の伸縮伸長率を80%以上とすることで、布帛中にて捲縮形態を発現した際に、コイル状からストレート状になるまでに十分な伸長長さを有していることを意味し、捲縮形態を活かした伸長応力の発現を十分に発揮することができる。
また、昨今のコンプレッションインナーや動作の負担を軽減させるサポートウェアー等においては、布帛をより体に密着させることが必要となっており、この機能発現および着脱を快適に行えるようにするためには、伸縮伸長率は高いほど好適であり、本発明の捲縮糸においては、伸縮伸長率が100%以上であることがより好ましい範囲となる。
本発明の捲縮糸を用いた布帛において、原糸が有する初期伸長時の伸長応力を発揮するためには、布帛中の該捲縮糸がコイル状の捲縮形態を発現しており、コイル状からストレート状になるまでの十分な伸長長さがあることが重要となる。すなわち本発明の捲縮糸において、捲縮ピッチを300μm未満とすると、布帛組織に関係なく、布帛にて捲縮形態を発現出来るため好ましい。
ここで言う捲縮ピッチとは、光学顕微鏡にて繊維の捲縮形態を観察したときのコイル中心方向における捲縮山-山間の距離を意味する。具体的にはサンプルを単糸一本に分解し、KEYENCE社製デジタルマイクロスコープにて、コイル中心方向に長さ3mm間の捲縮形態を観察したときの、捲縮位相における山-山間の距離(μm)(図2のE)を求めるものである。本発明においては、1単糸あたり任意の3箇所で測定を行い、これを異なる10本の単糸において行った結果の単純な数平均を求め、小数点以下を四捨五入した値が本発明で言う捲縮ピッチである。
捲縮ピッチを300μm未満とすると、布帛とした際に糸-糸の拘束間で捲縮形態を発現することが可能となる。このため、布帛組織に関係なく、布帛中で捲縮糸が有する捲縮形態のポテンシャルを発現出来るため好ましい。この考えを推し進めると、さらに捲縮ピッチを200μm未満とすると、一般的に糸-糸の拘束が強い平織物などにおいても、捲縮糸が有する捲縮形態のポテンシャルを十分に発現できるため、より好ましい範囲として挙げることが出来る。
一方、捲縮ピッチは繊維径を細くしていくことでより短くすることが可能であるが、前述のように繊維径は4μm以上であれば、単糸1本が持つ収縮力が単糸同士の摩擦による拘束力を上回ることから好ましく、すなわち捲縮ピッチの下限値も、該繊維径から得られる捲縮ピッチ50μm以上である。
本発明の捲縮糸の複合断面形状としては、少なくとも2種類以上のポリマーからなる偏心芯鞘断面において、鞘部の最小厚みが0.1~1.0μmであることが好ましい。
本発明で言う偏心芯鞘断面とは、例えば図3(a)に示すような異なる2種類以上のポリマーからなる複合繊維断面において、鞘成分であるポリマーBが芯成分であるポリマーAを完全に覆っており、芯成分の重心点位置aが複合繊維断面中心cと異なっていることを意味する。
ポリマー複合を利用した捲縮糸においては、本来それぞれのポリマーが図3(b)のように貼り合わせ界面のみで接していることで、重心aと中心cが最も離れることになる。これにより繊維が高収縮成分側に大きく湾曲することにより、3次元的なスパイラル構造をとり、布帛にした際に良好なストレッチ性能を発現する微細な捲縮形態を得ることが出来る。一方、図3(a)のように片成分が他方成分を完全に覆っているような偏心芯鞘断面では、重心位置が近づくのみならず、被膜部分が抵抗となり、図3(b)のような単純貼り合わせ構造と同等のストレッチ性能を発現する捲縮形態を得ることは困難であった。ところが、本発明者らが鋭意検討した結果、鞘成分の最小厚みを本発明の範囲とすることで、単純貼り合わせ構造と遜色ない捲縮形態を実現する複合繊維とすることが可能となった。すなわち、本発明の捲縮糸は、少なくとも2種類以上のポリマーからなる偏心芯鞘断面において、鞘部の最小厚みが0.1~1.0μmであることが好ましい。
ここでいう鞘部の最小厚みとは、例えば図3(a)のbに示すような芯成分を覆っている鞘成分の最小となる厚みを意味しており、具体的には捲縮糸サンプルをエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋した後、この横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で10本以上の単糸が観察できる倍率として画像を撮影し、撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した10本以上の単糸について、芯成分を覆っている鞘成分の最小となる厚みを単位μmにて求めるものである。この際、金属染色を施すとポリマー間の染め差ができることを利用して、芯成分と鞘成分の接合部のコントラストを明確にすることができる。本発明においては、これを異なる10本の単糸において行った結果の単純な数平均を求め、小数点2桁以下を四捨五入した値を、鞘部の最小厚みとしている。
本発明の捲縮糸は、鞘部の最小厚みが1.0μm以下であることが好ましい。この範囲であれば被膜部分の抵抗が非常に少なくなり、単純貼り合わせ構造と遜色ない微細な捲縮形態が得られる。さらに捲縮形態を単純貼り合わせ構造で得られる捲縮形態に近づけるには0.8μm以下であることがより好ましい。
また、本発明においては、芯成分が鞘成分を完全に覆っていることにより、従来の単純貼り合わせ構造では表面露出して複合繊維の欠点となる耐熱性や摩耗性の低い弾性ポリマー、あるいは吸湿性のポリマーなどを複合繊維の一方成分として用いても、摩擦や衝撃によって界面において剥離が生じることなく、繊維特性を良好に保持することができる。
加えて、従来の単純貼り合わせ構造では、粘度差の大きいポリマーの溶融体を複合流として口金から紡出すると、口金孔内の壁面から受ける抵抗の違いによる流速差から、低粘度側のポリマーが高粘度側のポリマーを押し出すような形態となる糸曲がりが発生し、口金に接触あるいは別箇所から紡出した複合流に干渉して糸切れの原因となるが、本発明では芯成分が鞘成分を完全に覆っていることで流速差が緩和され糸曲がりが抑制できることから、粘度差の大きいポリマー組合せを用いたとしても、糸切れの発生しない安定製糸が可能となる。これらの観点から考えると、鞘部の最小厚みは0.1μm以上であることが好ましく、さらに0.2μm以上とすると糸の擦過による削れにも耐えうるため、より好ましい範囲として挙げることが出来る。
また従来の単純貼り合わせ構造の場合では、口金吐出後の紡糸線上での細化時のそれぞれのポリマーにかかる応力バランス差による伸長変形の斑や融点差の大きいポリマーが繊維表面に露出していることから冷却斑が生じ、それに応じて繊度斑も発生していた。しかし、偏心芯鞘断面とすることで、片方のポリマーで覆われていることにより応力バランスや冷却が繊維断面内で均衡化し、繊度斑を抑制することが可能となる。すなわち、本発明の捲縮糸は、繊維長手方向の太さ斑いわゆる繊度斑の指標であるウスター斑U%が1.5%未満となることが好ましい。これにより、布帛の染め斑を回避できるのみならず、布帛の収縮斑による品位の低下を回避し、良好な布帛品位を得ることが出来る。より好ましくは1.0%未満である。
本発明の捲縮糸において、少なくとも2種類以上のポリマーからなる偏心芯鞘断面とする場合には、芯成分と鞘成分の繊維横断面における複合面積比率を芯成分:鞘成分=65:35~35:65(面積比)の範囲とすることが好ましい。この範囲であれば、重心aと中心cの距離が十分離れることで、微細なスパイラル構造を実現できる。
ただし、本発明でいう複合面積比率とは、次の方法で測定したものである。すなわち、捲縮糸サンプルをエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、この横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で10本以上の単糸が観察できる倍率として画像を撮影する。この際、金属染色を施すとポリマー間の染め差ができることを利用して、複合断面の接合部のコントラストを明確にすることができる。そして、撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した10本以上の単糸について、画像解析ソフト三谷商事社製「WinROOF2015」を用いて、繊維全体の面積および芯成分、鞘成分の面積を求めた後、その面積比を求める。本発明においては、これを異なる10本の単糸において行った結果の単純な数平均を求め、小数点以下を四捨五入した値を、複合面積比率としている。
本発明の捲縮糸を用いた織編物を設計する際には、織編物の厚みを薄い設計とすることで、本発明の捲縮糸の特徴であるソフトな触感や適度な着圧感を感じることができ、好ましい。上記の観点から、総繊度としては小さいほど好ましく、100dtex未満とすることで、従来のポリウレタン系繊維等にはない心地よい着圧感が得られるため、好ましい範囲として挙げることが出来る。さらに50dtex未満とすれば、ソフトな触感や適度な着圧感のみならず、軽量感も得られるため、より好ましい。ただし、取り扱い性の観点から総繊度は10dtex以上であることが好ましく、本発明の実質的な下限値である。
ここでいう総繊度とは100mの繊維の重量を測定し、その値を100倍した値を算出したものであり、この動作を10回繰り返し、その平均値の小数点第2位を四捨五入した値が総繊度(dtex)である。
本発明の捲縮糸は、触感がソフトでありながら、初期伸長時に伸長応力を有することで、着用時に適度な着圧感や動作追従性が得られる快適なストレッチ素材とすることができる。このため、スポーツ・アパレル衣料用途から衛生材料などの産業資材用途まで幅広い用途の繊維製品への適用が期待でき、特に織編物に加工することにより、ハイエンドなスポーツ衣料から、アパレル衣料などのテキスタイル用途で望まれる心地よい着圧による疲労軽減や運動能力向上を促すコンプレッションウェアからスタイリッシュな快適衣料への適用が期待できる。
以下に本発明の捲縮糸の製造方法の一例を詳述する。
本発明の捲縮糸の製造方法においては、仮撚り加工などの糸加工等を応用することにより達成することも不可能ではないが、本発明に必要となる微細捲縮の発現と捲縮形態の制御、また本発明の捲縮糸を生産性高く製造可能とするという観点では、少なくとも2種類以上のポリマーによる複合紡糸が好ましく用いられる。
上記の複合紡糸の方法としては、後述する複合口金を用いた溶融紡糸が生産性を高めるという観点から好適である。その際の紡糸温度については、用いるポリマー種のうち、主に高融点や高粘度ポリマーが流動性を示す温度とする。この流動性を示す温度としては、分子量によっても異なるが、そのポリマーの融点から融点+60℃の間で設定すると安定して製糸することができる。
本発明の捲縮糸を複合紡糸する際に用いる複合口金としては、品質および操業安定的に紡糸することが可能であれば公知のいずれの内部構造のものであっても良いが、特に特開2011-174215号公報や特開2011-208313号公報、特開2012-136804号公報に例示される分配板方式口金を用いると、後述する複合断面形状を安定的に形成出来るため好ましい。
本発明の捲縮糸において、分子量の異なるポリマーの組合せを用いる場合には、高分子量成分の粘度(η)と低分子量成分の粘度(η)の粘度比η/ηが5~15であることが好ましい。
ポリマー複合による捲縮糸においては、ポリマー間の粘度差から生ずる加工時の応力差により、繊維を大きく湾曲させることで捲縮形態をとることが可能となる。すなわち、粘度差が大きいほど応力差が大きくなるため、より微細な捲縮形態を発現できる。一方、粘度差が大きすぎると、安定的に複合ポリマー流を形成することが難しくなるだけでなく、前述した糸曲がりも顕在化し、糸切れの発生しない安定製糸が困難となる。このため、高分子量成分の粘度(η)と低分子量成分の粘度(η)の粘度比η/ηとしては5~15であることが好ましく、より好ましくは7~12である。加えて、高分子量成分に高収縮ポリマーや弾性ポリマーを用い、低分子量成分に低収縮ポリマーを用いると、加工時の応力差から、高分子量成分は配向が促進されてより高収縮に、低分子量成分は配向が抑制されてより低収縮になることから、ポリマーの特性を活かすことができるため、好ましい範囲としてあげることができる。
本発明の捲縮糸の繊維横断面形状は、丸、三角、中空、偏平、非対称扁平など公知の断面であればよく、特に限定されるものではないが、捲縮形態の発現や製糸安定性とのバランスから、丸断面や扁平断面、三角断面、中空断面が好ましく用いられる。特に異型断面とすると、丸断面対比立体障害が大きいことから嵩高性を向上できるため、より好ましい範囲として挙げることができる。
本発明でいうポリマーとしては、繊維形成性が良好な熱可塑性重合体が好適に用いられ、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリ乳酸、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル系エラストマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。
さらに2種類以上のポリマーを用いる際は、これ等の分子量を変更して一方成分を高分子量ポリマー、他方成分を低分子量ポリマーとして使用することもできる。さらに一方成分を高収縮ポリマーとし、他方成分を低収縮ポリマーとして使用すると、加工時の応力差と熱収縮差から微細な捲縮形態が得られるため、好ましい。高収縮ポリマーと低収縮ポリマーの組合せとしては、例えばポリエステル系としてポリブチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性ポリウレタン/ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル系エラストマー/ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル系エラストマー/ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド系としてナイロン6‐ナイロン66共重合体/ナイロン6または610、PEG共重合ナイロン6/ナイロン6または610、熱可塑性ポリウレタン/ナイロン6または610、ポリオレフィン系としてエチレン‐プロピレンゴム微分散ポリプロピレン/ポリプロピレン、プロピレン‐αオレフィン共重合体/ポリプロピレンなどの種々の組み合わせが挙げられるが、特にポリエステル系エラストマー/ポリエチレンテレフタレートやポリエステル系エラストマー/ポリブチレンテレフタレートの組合せは微細な捲縮形態の発現が可能となるだけでなく、発色性や風合い、耐摩耗性、寸法安定性等にも優れているため好ましい。
ここで言うポリエステル系エラストマーとは、ハードセグメントとソフトセグメントからなるブロック共重合体であり、ハードセグメントとしてポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル成分が挙げられ、ソフトセグメントとしてポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールといったポリエーテル成分、ポリラクトンといった脂肪族ポリエステル成分などが挙げられる。
その中でも特にソフトセグメントとしてポリオキシテトラメチレングリコール成分を共重合したポリエステル系エラストマーは、弾性ポリマーのような伸長回復性と高収縮性を兼ね合わせているのみならず、ポリオキシテトラメチレングリコール成分が共重合成分として存在することで分子運動性が高まり、前述した糸曲がりも抑制することができ、製糸安定性や繊度斑による布帛品位の低下も回避できるため、より好ましい。
上記ポリエステル系エラストマーにおけるポリオキシテトラメチレングリコール成分の共重合率としては10~40wt%が好ましい。この範囲とすることで、弾性ポリマーのような伸長回復性と高収縮性を兼ね合わせているのみならず、ポリエステルとの相溶性にも優れることから、耐摩耗性や製糸安定性の向上につながる。より好ましくは、15~30%である。
これらのポリマーにおいては、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化チタンなどの艶消し剤、難燃剤、滑剤、抗酸化剤、着色顔料等として無機微粒子や有機化合物、カーボンブラックを必要に応じて含有させることができる。
本発明の捲縮糸における口金での単孔当たりにおける吐出量としては、0.02~10g/分・孔程度にすると安定して製造することが可能となる。吐出されたポリマー流は、冷却固化後、油剤を付与され、規定の周速になったローラーで引き取られる。その後、加熱ローラーで延伸され、所望の捲縮糸となる。
ローラーの引取速度については、500~6000m/分程度にするとよく、ポリマーの物性や繊維の使用目的によって変更可能である。特に500~4000m/分とし、その後延伸することで、繊維の一軸配向の促進により力学特性が向上できるだけでなく、複合したポリマー間での延伸時の応力差と延伸時の配向差から生じる熱収縮差から、捲縮がより微細となり、所望の捲縮形態の範囲に近づけることができるため、好ましい。延伸に際しては、ポリマーのガラス転移温度(Tg)など、軟化できる温度を目安として、予熱温度を適切に設定することが好ましい。予熱温度の上限としては、予熱過程で繊維の自発伸長により糸道乱れが発生しない温度とすることが好ましい。例えば、Tgが70℃付近に存在するPETの場合には、通常この予熱温度は80~95℃程度で設定される。ここで言うTgとは、ポリマーのチップを示差走査熱量測定(DSC)することで測定されるものである。
本発明の捲縮糸は仮撚加工が施されたものであってもよい。仮撚加工を施すと、単糸間空隙が増大することで風合いが向上できるのみならず、ポリマー複合によって得られる微細な捲縮ピッチ(300μm未満)と仮撚加工によって得られる粗大な捲縮ピッチ(500μm以上)が混ざり合うことで、糸-糸間での捲縮ピッチの位相揃いに伴う糸-糸間の絡み合いを防ぐことができ、本発明の捲縮糸の有する捲縮ポテンシャルを最大限に発揮することが可能となるため、好ましい。
仮撚加工を施す方法としては、ポリエステルで汎用的に用いられている方法であれば特に限定するものではないが、生産性を考慮するとディスクやベルトを用いた摩擦仮撚機を用いて加工することが好ましい。
仮撚加工によって本発明の捲縮糸を安定的に製造するには、加撚領域での糸束の実撚数により捲縮糸の捲縮径をコントロールすることが好適である。
すなわち、加撚領域での糸束の撚数である仮撚数T(単位は回/m)が、仮撚加工後の糸束の総繊度Df(単位はdtex)に応じて決定される、以下の条件を満たすように、加撚機構の回転数や加工速度等の仮撚条件を設定することが好ましい。
20000/Df0.5≦T≦40000/Df0.5
ここで仮撚数Tは、次の方法で測定したものである。すなわち、仮撚工程の加撚領域で走行している糸束を、ツイスター直前で撚りをほどかないよう、50cm以上の長さで採取する。そして、採取した糸サンプルについて検撚機に取り付け、JIS L1013(2010)8.13に記載の方法にて撚数を測定したものが仮撚数Tである。仮撚数が上述の条件を満たすことで、得られた糸束では300μm以上の粗大な捲縮径を制御でき、シボやスジといった布帛品位の低下を抑制できるのみならず、本発明の捲縮糸の有する捲縮ポテンシャルを最大限に発揮することが可能となる。
また、上記の仮撚条件において、糸束中の単糸全体に均一な捲縮を付与し、品位良く本発明の加工糸を得るためには、加撚領域での延伸倍率を調整するとよい。ここで言う延伸倍率とは加撚領域に糸を供給するローラーの周速V0と加撚機構の直後に設置されたローラーの周速Vdを用い、Vd/V0として算出されるものであり、供給する糸の特性に応じて決定することが好ましい。
供給糸に延伸糸を使用する場合には、Vd/V0を0.9~1.4倍とすれば良く、供給糸に未延伸糸を使用する場合には、Vd/V0を1.2~2.0倍として、仮撚加工と同時に延伸を行うこともよい。延伸倍率を係る範囲とすることで、加撚領域での過張力や糸束のたるみが発生することなく、糸束中の単糸全体に均一な捲縮を付与できる。
さらに、加撚工程で得られる捲縮を強固に固定する観点から仮撚温度は複合したポリマーにおける高Tg側のポリマーのTgを基準として、Tg+50~Tg+150℃の範囲から決定することが好ましい。ここで言う仮撚温度とは、加撚領域に設置されたヒーターの温度を意味する。仮撚温度を係る範囲とすることで、単糸断面内で大きく捻り変形したポリマーを十分に構造固定できるため、加撚工程で得られる捲縮の寸法安定性は良好となり、シボやスジのない品位の良い布帛を得ることができる。なお、本発明の捲縮糸では、加撚工程で得られる捲縮を固定し、かつポリマー複合によって得られる捲縮の発現力を損なわないためにも、加撚領域にのみヒーターを配置する1ヒーター法を用いることが好ましい。
本発明の捲縮糸において、布帛に用いた際に安定的に捲縮形態を発現させるためには、布帛拘束力に打ち勝つ収縮応力が重要な特性となる。収縮応力が高いほど、布帛拘束下での捲縮発現を高めることができることから、収縮応力の最大値としては0.15cN/dtex以上が好ましく、より好ましくは0.20cN/dtex以上となるよう製造条件を適正化するのが良い。
以下実施例を挙げて、本発明の捲縮糸を具体的に説明する。
実施例および比較例については下記の評価を行った。
A.ポリマーの溶融粘度、粘度比
チップ状のポリマーを真空乾燥機によって、水分率200ppm以下とし、東洋精機製キャピログラフによって、歪速度を段階的に変更して、溶融粘度を測定した。なお、測定温度は紡糸温度と同様にし、窒素雰囲気下で加熱炉にサンプルを投入してから測定開始までを5分とし、せん断速度1216s-1の値をポリマーの溶融粘度として評価した。さらに、ポリマーAの溶融粘度をポリマーBの溶融粘度で割った値について、小数点2桁以下を四捨五入した値をポリマーAとポリマーBの粘度比とした。
B.総繊度
100mの繊維の重量を測定し、その値を100倍した値を算出した。この動作を10回繰り返し、その平均値の小数点第2位を四捨五入した値を総繊度(dtex)とした。また上記の繊度をフィラメント数で割った値が単糸繊度(dtex)となる。
C.断面(断面形状、複合断面、複合面積比率、鞘部の最小厚み)
繊維をエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋した後、この横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で10本以上の単糸が観察できる倍率として画像を撮影し、断面形状・複合断面を観察した。この際、金属染色を施すとポリマー間の染め差ができることを利用して、複合断面の接合部のコントラストを明確にした。
撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した10本以上の単糸について、画像解析ソフト三谷商事社製「WinROOF2015」を用いて、繊維全体の面積およびポリマーA、Bの面積を求めた。なお、これを異なる10本の単糸において行った結果の単純な数平均を求め、その面積比の小数点以下を四捨五入した値を、複合面積比率とした。
さらに撮影された画像の複合断面が図3(a)に示すような偏心芯鞘断面であった場合には、各画像から同一画像内で無作為に抽出した10本以上の単糸について、芯成分を覆っている鞘成分の最小となる厚み(図3(a)のb)を単位μmにて求めた。なお、これを異なる10本の単糸において行った結果の単純な数平均を求め、小数点3桁以下を四捨五入した値を鞘部の最小厚みとした。
D.繊維径、捲縮径
繊維を1m×10ループでかせ取りし、98℃の沸騰水中にて1.765×10-4cN/dtexの荷重下で15分間処理後乾燥する。その後、繊維を単糸一本に分解し、KEYENCE社製デジタルマイクロスコープにて、コイル中心方向に長さ3mm間の捲縮形態を観察したときの、繊維径(μm)及び捲縮径(μm)を求めた。なお、ここでいう繊維径は図2のCに示すような繊維軸に対して垂直方向での繊維の幅を、捲縮径は図2のDに示すような捲縮形態の山、谷の頂点に対してコイル中心方向と平行に線を引き、2つの線を直行する一本の線が交わる二点間の距離を求めるものであり、それぞれについて1単糸あたり任意の3箇所で測定を行い、これを異なる10本の単糸において行った結果の単純な数平均を求め、小数点以下を四捨五入した値を繊維径及び捲縮径とした。また得られた繊維径を捲縮径で割った値について小数点3桁以下を四捨五入した値を繊維径/捲縮径とした。
E.捲縮ピッチ
繊維を1m×10ループでかせ取りし、98℃の沸騰水中にて1.765×10-4cN/dtexの荷重下で15分間処理後乾燥する。その後、繊維を単糸一本に分解し、KEYENCE社製デジタルマイクロスコープにて、コイル中心方向に長さ3mm間の捲縮形態を観察したときの、捲縮位相における山-山間の距離(μm)(図2のE)を求めた。なお、1単糸あたり任意の3箇所で測定を行い、これを異なる10本の単糸において行った結果の単純な数平均を求め、小数点以下を四捨五入した値を捲縮ピッチとした。
F.100%伸長時の応力
繊維を1m×10ループでかせ取りし、98℃の沸騰水中にて1.765×10-4cN/dtexの荷重下で15分間処理後乾燥し、4.413×10-1cN/dtexの荷重下で試料の中央部から上75mmの位置に印をつける。その後、引張試験機(オリエンテック製“テンシロン”(TENSILON)UCT-100)でJIS L1013(2010) 8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で印をつけた箇所を固定し、初期試料長50mm、引張速度100mm/分で引っ張り、伸度100%における荷重(cN)を、該繊維の繊度(dtex)×20の値で割った値を求めた。なお、これを異なる10本の繊維において行った結果の単純な数平均を求め、小数点3桁以下を四捨五入した値を100%伸長時の応力とした。
G.伸縮伸長率
JIS L1013(2010)8.11項C法(簡便法)により伸縮伸長率を評価した。
H.収縮応力
インテック社製(旧カネボウエンジニアリング社製)KE-2S熱応力測定器で、昇温速度150℃/分で測定した。サンプルは、0.1m×2ループとし、初期張力は繊度(dtex)×0.03cNとした。なお、収縮応力が最大値となったときの温度が最大値温度(℃)である。
I.繊度斑(U%(H))
繊度斑測定装置Zellweger製(UT-4)を用いて、供糸速度200m/分、ツイスター回転数6000rpm、測定長200mの条件で、U%(H)を測定した。
K.風合い(肌触り、着圧感)
30インチ(76.2cm)28ゲージ針本数2640本のシングル丸編機にて編み地を作成し、得られた編み地を緯方向が円周方向でかつ30%伸長時の長さが検査者ら(5人)それぞれの手首周りと同じ長さになるような円筒サンプルを設計した。該サンプルを検査者らの手首にはめ、触感及び着圧感を次の基準に基づき、それぞれ以下の3段階で判定した。
(触感)
◎ : 非常にソフトな触感である
○ : ソフトな触感である
× : 硬い触感である
(着圧感)
◎ : 非常に心地よい着圧感である
○ : 心地よい着圧感である
× : 着圧を感じない/着圧が強すぎる。
L.耐摩耗性(フロスティング)
K.で得られた編み地を直径10cmに切ったサンプルを10枚準備し、2枚ずつのセットとし、それぞれ評価用ホルダーにセットする。片側のサンプルを蒸留水にて完全に湿潤させた後、2枚サンプルを重ね合わせ押し付け圧7.4Nを掛けながら摩耗させ、単糸の毛羽立ち(フィブリル化)および白化の様子を(株)キーエンス社製マイクロスコープVHX-2000にて50倍で観察した。この際、摩耗処理前後のサンプル表面変化を確認し、フィブリル化と白化の様子から以下の3段階で評価した。
◎ : フィブリル化または白化の発生が認められない
○ : フィブリル化または白化が一部に発生
× : フィブリル化または白化が発生。
[実施例1]
ポリマーAとして、ポリオキシテトラメチレングリコール20%共重合ポリブチレンテレフタレート(PTMG20%共重合PBT 溶融粘度:410Pa・s)、ポリマーBとして、ポリエチレンテレフタレート(PET 溶融粘度:39Pa・s)を準備した。ポリマーAとポリマーBをいずれもエクストルーダーを用いてそれぞれ260℃、280℃で溶融後、ポンプによる計量を行い、ポリマーAとポリマーBの繊維断面中の面積比が50/50となるように、紡糸温度を280℃として複合紡糸用口金に流入させ、吐出孔から流入ポリマーを吐出した。このとき複合紡糸用口金としては、各ポリマーが口金内部で合流し、図3(a)に示すようなポリマーAが芯、ポリマーBが鞘となる偏心芯鞘複合形態を形成する分配板方式の口金を用いた。
吐出された複合ポリマー流に冷却固化後油剤を付与し、紡糸速度1000m/minで巻取り、70℃と130℃に加熱したローラー間で延伸を行うことで、紡糸・延伸工程を通じて安定的に56dtex-72フィラメントの捲縮糸を得た。
得られた捲縮糸の複合断面は偏心芯鞘断面であり、鞘部の最小厚みは0.23μmであった。また繊維径は8μmであり、捲縮形態としては捲縮径が72μm、捲縮ピッチが167μmの微細な捲縮を有していた。さらに該捲縮糸の100%伸長時の応力は0.18cN/dtexと初期伸長時での伸長応力の発現を達成しており、伸縮伸長率が105%と優れた伸長性を有したものであった。
実施例1の捲縮糸を用いた編み地は、その繊維径の細さと初期伸長時の伸長応力から、触感はソフトでありながら、本発明に特有の微細な捲縮が伸長した際に発現する伸長応力により、着用時には柔軟でありながらも適度な着圧感(締め付け感)を感じられる従来にはないストレッチ特性を有したものであり、耐摩耗性にも優れたものであった。結果を表1に示す。
[実施例2]
ポリマーBを、ポリブチレンテレフタレート(PBT 溶融粘度:37Pa・s)とし、ポリマーBのエクストルーダーでの溶融温度を260℃とする以外は全て実施例1に従い、56dtex-72フィラメントの捲縮糸を得た。
得られた捲縮糸を用いた編み地は、実施例1と比較して、ポリマーBをPETからPBTに変更したことから、捲縮が圧縮方向に柔軟に変形するものであり、着用時にはより肌に密着する心地良い着圧感を感じられるものであった。結果を表1に示す。
[実施例3~6]
最終到達品種を56dtex-18フィラメント(繊維径17μm、実施例3)、56dtex-24フィラメント(繊維径15μm、実施例4)、56dtex-48フィラメント(繊維径10μm、実施例5)、56dtex-288フィラメント(繊維径4μm、実施例6)とする以外は全て実施例1に従い、捲縮糸を得た。
実施例3~6で得られた本発明の捲縮糸においては、その繊維径が大きくなるに伴い、ポリマーAとしたPTMG20%共重合PBTの弾性的な挙動が強く感じられるものとなり、着用時の着圧感は向上し、心地よい反発感を備えたものであった。結果を表1に示す。
[比較例1]
最終到達品種を56dtex-12フィラメント(繊維径22μm)とする以外は全て実施例1に従い、捲縮糸を得た。
得られた捲縮糸は、繊維径が太いことから、該編み地を着用した時の触感も硬く、風合い(肌触り)に劣るものであった。結果を表1に示す。
[実施例7]
鞘部の最小厚みを0.11μmとする以外は全て実施例1に従い、56dtex-72フィラメントの捲縮糸を得た。
得られた捲縮糸は実施例1と比べると、芯成分の重心点位置が複合繊維断面中心から離れたことで捲縮がより微細になっており、該捲縮糸を用いた編み地を着用した時の着圧感も増して非常に心地良いものであった。結果を表2に示す。
[実施例8]
鞘部の最小厚みを0.87μmとする以外は全て実施例1に従い、56dtex-72フィラメントの捲縮糸を得た。
得られた捲縮糸は、芯成分の重心点位置が複合繊維断面中心に近づいたことにより捲縮が大きいものであり、実施例1と比較して伸長性はわずかに低下するものの、該捲縮糸も用いた編み地では、本発明の目的とする心地良い着圧感を十分感じられるものであった。結果を表2に示す。
[比較例2]
鞘部の最小厚みを1.12μmとする以外は全て実施例1に従い、56dtex-72フィラメントの捲縮糸を得た。
得られた捲縮糸は、芯成分の重心点位置が複合繊維断面中心に近づいたことで、捲縮の曲率が大きく、実施例1と比べると伸長性が大きく低下するものであった。このため、着用時に着圧感を発現する捲縮の伸長は部分的に集中して起こるものであり、伸長性の低さも相まって、本発明の目的とする心地よい着圧感を達成する編地にはならなかった。結果を表2に示す。
[実施例9]
ポリマーAとポリマーBの繊維断面中の面積比を40/60とする以外は全て実施例1に従い、56dtex-72フィラメントの捲縮糸を得た。
得られた捲縮糸は、芯成分の重心点位置が複合繊維断面中心に近づいたことにより捲縮が大きいものであり、実施例1と比較して伸長性はわずかに低下するものであったが、着用時の心地良い着圧感を十分感じられるものであり、耐摩耗性にも優れていた。結果を表2に示す。
[比較例3、4]
ポリマーAとポリマーBの繊維断面中の面積比を75/25(比較例3)、25/75(比較例4)とする以外は全て実施例1に従い、56dtex-72フィラメントの捲縮糸を得た。
得られた捲縮糸は、芯成分の重心点位置が複合繊維断面中心に近づいたことにより捲縮が大きいものであり、実施例1と比較すると伸長性が低下するものであった。また、この伸長性の低下により該捲縮糸を用いた編み地では、いずれも着用時の風合い(着圧感)が劣るものであった。結果を表2に示す。
[実施例10]
ポリマーAのポリオキシテトラメチレングリコール20%共重合ポリブチレンテレフタレート(PTMG20%共重合PBT)の溶融粘度を211Pa・sとする以外は全て実施例1に従い、56dtex-72フィラメントの捲縮糸を得た。
得られた捲縮糸は、捲縮が大きいものであり、実施例1と比較して伸長性はわずかに低下するものの、該捲縮糸も用いた編み地では、本発明の目的とする心地良い着圧感を十分感じられるものであった。結果を表3に示す。
[実施例11]
ポリマーAのポリオキシテトラメチレングリコール20%共重合ポリブチレンテレフタレート(PTMG20%共重合PBT)の溶融粘度を573Pa・sとする以外は全て実施例1に従い、56dtex-72フィラメントの捲縮糸を得た。
得られた捲縮糸は実施例1に比べて、捲縮がより微細になっており、該捲縮糸を用いた編み地を着用した時の着圧感も増し、非常に心地良いものであった。結果を表3に示す。
[比較例5]
ポリマーAをポリオキシテトラメチレングリコール20%共重合ポリブチレンテレフタレート(PTMG20%共重合PBT)の溶融粘度を101Pa・sとする以外は全て実施例1に従い、56dtex-72フィラメントの捲縮糸を得た。
得られた捲縮糸は、実施例1に比べて捲縮が大きいものであり、伸長性にも劣っていた。また該捲縮糸も用いた編み地は、着用時の着圧感をほとんど感じることができなかった。結果を表3に示す。
[実施例12]
ポリマーAをポリオキシテトラメチレングリコール5%共重合ポリブチレンテレフタレート(PTMG5%共重合PBT 溶融粘度:382Pa・s)とする以外は全て実施例1に従い、56dtex-72フィラメントの捲縮糸を得た。
得られた捲縮糸は、実施例1対比わずかに捲縮が大きいものであったが、該捲縮糸も用いた編み地は、着用時に心地良い着圧感を感じられるものであり、耐摩耗性にも優れていた。結果を表3に示す。
[実施例13]
ポリマーAをポリオキシテトラメチレングリコール50%共重合ポリブチレンテレフタレート(PTMG50%共重合PBT 溶融粘度:402Pa・s)とする以外は全て実施例1に従い、56dtex-72フィラメントの捲縮糸を得た。
得られた捲縮糸は、実施例1対比捲縮がより微細になっており、またPTMGの共重合量が増したことでより弾性的な挙動が得られ、該捲縮糸を用いた編み地は着用時の着圧感が非常に心地良いものであった。結果を表3に示す。
[比較例6]
ポリマーAとして、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT 溶融粘度:109Pa・s)、ポリマーBとして、ポリエチレンテレフタレート(PET 溶融粘度:39Pa・s)を準備した。ポリマーAとポリマーBをいずれもエクストルーダーを用いてそれぞれ260℃、280℃で溶融後、ポンプによる計量を行い、ポリマーAとポリマーBの繊維断面中の面積比が50/50となるような吐出比にて、紡糸温度を280℃として複合紡糸用口金に流入させ、吐出孔から流入ポリマーを吐出した。このとき複合紡糸用口金としては、各ポリマーが口金内部で合流し、図3(b)に示すようなポリマーAとポリマーBの単純貼り合わせ複合形態を形成する複合口金を用いた。
吐出された複合ポリマー流に冷却固化後油剤を付与し、紡糸速度1000m/minで巻取り、70℃と130℃に加熱したローラー間で延伸を行うことで、安定的に56dtex-24フィラメントの捲縮糸を得た。紡糸工程においては吐出時の糸曲がりが大きく、製糸性としては不可なレベルであった。
得られた捲縮糸は、実施例1に比べて捲縮が大きく、100%伸長時の応力は0.02cN/dtexと低いものであり、伸縮伸長率も劣っていた。また該捲縮糸を用いた編み地は、着用時の着圧感をほとんど感じることができなかった。結果を表3に示す。
[実施例14]
最終到達品種を28dtex-12フィラメント(繊維径15μm)とする以外は全て実施例1に従い、捲縮糸を得た。
得られた捲縮糸を用いた編み地は、実施例4と比べて薄地であることで、着用時の着圧感は同等でありながら非常にソフトな肌触りを感じられ、また軽量感も兼ね備えたものであった。結果を表3に示す。
[実施例15]
最終到達品種を115dtex-96フィラメント(繊維径10μm)とする以外は全て実施例1に従い、捲縮糸を得た。
得られた捲縮糸を用いた編み地は、実施例5と比べて厚地であることで、着用時の肌触りは若干劣るものの、着用時の着圧感は向上し、心地よい反発感を備えたものであった。結果を表3に示す。
[実施例16]
最終到達品種を56dtex-24フィラメント(繊維径15μm)とし、延伸後に加工速度を250m/分、延伸倍率を1.0倍としたローラー間で、160℃に設定したヒーターにて加熱しながら、フリクションディスクを用い、仮撚数が3000T/mとなるような回転数にて仮撚加工を施す以外は全て実施例1に従い、捲縮糸を得た。
得られた捲縮糸は実施例4に比べて、捲縮がより微細に発現しており、該捲縮糸を用いた編み地を着用した時の着圧感や伸長性も増し、非常に心地良いものであった。また仮撚り加工による単糸間空隙増大に伴い、編地の肌触りも非常にソフトであった。結果を表3に示す。
本発明の捲縮糸は、触感がソフトでありながら、初期伸長時に伸長応力を有することで、着用時に適度な着圧感や動作追従性が得られる快適なストレッチ素材とすることができる。このため、スポーツ・アパレル衣料用途から衛生材料などの産業資材用途まで幅広い用途の繊維製品への適用が期待でき、特に織編物に加工することにより、ハイエンドなスポーツ衣料から、アパレル衣料などのテキスタイル用途で望まれる心地よい着圧による疲労軽減や運動能力向上を促すコンプレッションウェアからスタイリッシュな快適衣料への適用が期待できる。
Figure 0007180357000001
Figure 0007180357000002
Figure 0007180357000003
A : 既存の捲縮糸における伸長長さ-伸長応力の関係の一例
B : 既存のポリウレタン系繊維における伸長長さ-伸長応力の関係の一例
C : 捲縮糸における繊維径
D : 捲縮糸のコイル中心方向における捲縮径
E : 捲縮糸のコイル中心方向における捲縮ピッチ
a : 繊維横断面の複合断面におけるポリマーAの重心点
b : 繊維横断面の複合断面におけるポリマーBの最小となる厚み
c : 繊維横断面の複合断面における重心点
ポリマーA : 繊維横断面の複合断面を形成するポリマー
ポリマーB : 繊維横断面の複合断面を形成するポリマー

Claims (5)

  1. 繊維径が18μm未満であり、コイル中心方向に0.05≦繊維径/捲縮径の捲縮を有することを特徴とする捲縮糸。
  2. コイル中心方向に捲縮ピッチが300μm未満の捲縮を有し、伸縮伸長率が80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の捲縮糸。
  3. 繊維軸横断面において、少なくとも2種類以上のポリマーからなる偏心芯鞘断面であり、鞘部の最小厚みが0.1~1.0μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の捲縮糸。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の捲縮糸からなることを特徴とする繊維製品。
  5. 請求項1から3のいずれか1項に記載の捲縮糸からなることを特徴とする織編物。
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