JP7180053B1 - ダイヤモンド多結晶体、及びダイヤモンド多結晶体を備える工具 - Google Patents

ダイヤモンド多結晶体、及びダイヤモンド多結晶体を備える工具 Download PDF

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Abstract

ダイヤモンド粒子を含むダイヤモンド多結晶体であって、上記ダイヤモンド粒子の含有率は、上記ダイヤモンド多結晶体に対して、99体積%を超えていて、上記ダイヤモンド粒子のメジアン径d50は、10nm以上200nm以下であり、上記ダイヤモンド粒子の転位密度は、2.0×1015m-2以上4.0×1016m-2以下である。

Description

本開示は、ダイヤモンド多結晶体、及びダイヤモンド多結晶体を備える工具に関する。
ダイヤモンド多結晶体は、優れた硬度を有するとともに、硬さの方向性及び劈開性がないことから、切削バイト、ドレッサー及びダイス等の工具、並びに、掘削ビット等に広く用いられている。
従来のダイヤモンド多結晶体は、原料であるダイヤモンドの粉末を、焼結助剤又は結合材とともに、ダイヤモンドが熱力学的に安定な高圧高温(一般的には、圧力が5~8GPa程度及び温度が1300~2200℃程度)の条件で焼結することにより得られる。焼結助剤としては、Fe、Co及びNi等の鉄族元素金属、CaCO等の炭酸塩等が用いられる。結合材としては、SiC等のセラミックス等が用いられる。
上記の方法で得られるダイヤモンド多結晶体には、焼結助剤又は結合材が含まれる。焼結助剤及び結合材は、ダイヤモンド多結晶体の硬度及び強度等の機械的特性又は耐熱性を低下させる原因となり得る。
ダイヤモンド多結晶体中の焼結助剤を酸処理により除去したもの、及び結合材として耐熱性のSiCを用いた耐熱性に優れたダイヤモンド多結晶体も知られている。しかし、該ダイヤモンド多結晶体は硬度又は強度が低く、工具材料としての機械的特性は不十分である。
一方、グラファイト、グラッシーカーボン、アモルファスカーボン、オニオンライクカーボン等の非ダイヤモンド状炭素材料を超高圧高温下で、焼結助剤等を用いることなく、直接的にダイヤモンドに変換させることが可能である。非ダイヤモンド相からダイヤモンド相へ直接変換すると同時に焼結させることでダイヤモンド多結晶体が得られる(国際公開第2005/065809号(特許文献1)、H. Sumiya et al., Japanese Journal of Applied Physics 48 (2009) 120206(非特許文献1))。
国際公開第2005/065809号
H. Sumiya et al., Japanese Journal of Applied Physics 48 (2009) 120206
本開示のダイヤモンド多結晶体は、
ダイヤモンド粒子を含むダイヤモンド多結晶体であって、
前記ダイヤモンド粒子の含有率は、前記ダイヤモンド多結晶体に対して、99体積%を超えていて、
前記ダイヤモンド粒子のメジアン径d50は、10nm以上200nm以下であり、
前記ダイヤモンド粒子の転位密度は、2.0×1015-2以上4.0×1016-2以下である。
本開示の工具は、上記ダイヤモンド多結晶体を備える。
図1は、炭素の相平衡図である。
[本開示が解決しようとする課題]
近年はより高効率な(例えば、送り速度が大きい)切削加工が求められており、ダイヤモンド多結晶体の更なる性能の向上(例えば、熱伝導率の向上、硬度の向上、靱性の向上等)が期待されている。
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた靱性及び優れた硬度を有するダイヤモンド多結晶体、及びダイヤモンド多結晶体を備える工具を提供することを目的とする。
[本開示の効果]
本開示によれば、優れた靱性及び優れた硬度を有するダイヤモンド多結晶体、及びダイヤモンド多結晶体を備える工具を提供することが可能になる。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示の一態様に係るダイヤモンド多結晶体は、
ダイヤモンド粒子を含むダイヤモンド多結晶体であって、
上記ダイヤモンド粒子の含有率は、上記ダイヤモンド多結晶体に対して、99体積%を超えていて、
上記ダイヤモンド粒子のメジアン径d50は、10nm以上200nm以下であり、
上記ダイヤモンド粒子の転位密度は、2.0×1015-2以上4.0×1016-2以下である。
上記ダイヤモンド多結晶体は、ダイヤモンド粒子の転位密度が適度に低いため、靱性及び硬度が向上している。すなわち、上記ダイヤモンド多結晶体は、優れた靱性及び優れた硬度を有する。
[2]上記ダイヤモンド粒子の転位密度は、4.0×1015-2以上1.0×1016-2以下であることが好ましい。このように規定することで、更に靱性及び硬度に優れるダイヤモンド多結晶体となる。
[3]上記ダイヤモンド粒子のメジアン径d50は、10nm以上100nm以下であることが好ましい。このように規定することで、更に硬度に優れるダイヤモンド多結晶体となる。
[4]上記ダイヤモンド多結晶体は、ホウ素を更に含み、上記ホウ素の含有率は、上記ダイヤモンド多結晶体に対して、0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましい。このように規定することで、摺動性及び導電性を備えるダイヤモンド多結晶体となる。
[5]常温におけるヌープ硬度は、80GPa以上であることが好ましい。このように規定することで、更に耐摩耗性に優れるダイヤモンド多結晶体となる。
[6]本開示のダイヤモンド多結晶体は、周期表の第4族元素、第5族元素、第6族元素、鉄、アルミニウム、珪素、コバルト及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の含有率は、1体積%未満であることが好ましい。このように規定することで、更に硬度に優れるダイヤモンド多結晶体となる。
[7]本開示のダイヤモンド多結晶体は、水素、酸素、窒素、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の不可避不純物の含有率は、0.1体積%未満であることが好ましい。このように規定することで、更に硬度に優れるダイヤモンド多結晶体となる。
[8]本開示の一態様に係る工具は、上記ダイヤモンド多結晶体を備える。
上記工具は、靱性及び硬度に優れるダイヤモンド多結晶体を備えるため、各種材料の高速加工等において優れた耐摩耗性及び優れた耐欠損性を有する。ここで、「耐摩耗性」とは、材料の加工時における工具の摩耗に対する耐性を意味する。「耐欠損性」とは、材料の加工時における工具の欠けに対する耐性を意味する。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の詳細を、以下に説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではない。ここで、本明細書において「A~Z」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上Z以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Zにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とZの単位とは同じである。
≪ダイヤモンド多結晶体≫
本実施形態に係るダイヤモンド多結晶体は、
ダイヤモンド粒子を含むダイヤモンド多結晶体であって、
上記ダイヤモンド粒子の含有率は、上記ダイヤモンド多結晶体に対して、99体積%を超えていて、
上記ダイヤモンド粒子のメジアン径d50は、10nm以上200nm以下であり、
上記ダイヤモンド粒子の転位密度は、2.0×1015-2以上4.0×1016-2以下である。
上記ダイヤモンド多結晶体は、ダイヤモンド粒子を含む。すなわち、ダイヤモンド多結晶体は、粒子であるダイヤモンドを基本組成とし、実質的に焼結助剤及び結合材の一方又は両方により形成される結合相(バインダー)を含まない。したがって、上記ダイヤモンド多結晶体は、非常に高い硬度と強度とを備える。また上記ダイヤモンド多結晶体は、高温条件下においても結合材との熱膨張率の差異又は結合材の触媒作用による機械的特性の劣化又は脱粒が発生しない。また、本実施形態の一側面において、ダイヤモンド粒子は、ダイヤモンドの結晶粒と把握することもできる。
上記ダイヤモンド多結晶体は、複数のダイヤモンド粒子により構成される多結晶体である。そのため、上記ダイヤモンド多結晶体は、単結晶のような方向性(異方性)及び劈開性がなく、全方位に対して等方的な硬度及び耐摩耗性を有する。
ダイヤモンド多結晶体は、本実施形態の効果を示す範囲において不可避不純物を含んでいても構わない。不可避不純物としては、例えば、水素、酸素、窒素、アルカリ金属元素(リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等)及びアルカリ土類金属元素(カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)等)等の金属元素等を挙げることができる。すなわち、本実施形態において、上記ダイヤモンド多結晶体は、水素、酸素、窒素、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の不可避不純物の含有率は、0.1体積%未満であることが好ましい。上記不可避不純物の含有率の下限値は、例えば0体積%以上であってもよい。なお、上記不可避不純物が二種以上の元素を含む場合、各元素における含有率の合計が、上記不可避不純物の含有率となる。
ダイヤモンド多結晶体中の水素、酸素、窒素等の濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS)によって測定することができる。この測定方法としては、たとえば装置に「CAMECA IMS-7f」(アメテック社製)を用い、一次イオン種をCs、一次加速電圧15.0kVとし、検出領域はφ30μmとして不純物濃度を測定する。
本実施形態のダイヤモンド多結晶体は焼結体であるが、通常焼結体とはバインダーを含むことを意図する場合が多いため、本実施形態では「多結晶体」という用語を用いている。
<ダイヤモンド粒子>
(ダイヤモンド粒子の含有率)
本実施形態において、上記ダイヤモンド粒子の含有率は、上記ダイヤモンド多結晶体に対して、99体積%を超えていて、99体積%を超えて100体積%以下であることが好ましい。
ダイヤモンド多結晶体におけるダイヤモンド粒子の含有率(体積%)は、走査電子顕微鏡(SEM)(例えば、日本電子社製の「JSM-7800F」(商品名))付帯のエネルギー分散型X線分析装置(EDX)(例えば、OXFORD製X-MAX80 EDSシステム)(以下「SEM-EDX」とも記す。)を用いた方法、及びX線回折法を組み合わせることにより測定することができる。具体的な測定方法は下記の通りである。
まず、ダイヤモンド多結晶体の任意の位置を切断し、ダイヤモンド多結晶体の断面を含む試料を作製する。断面の作製には、集束イオンビーム装置、クロスセクションポリッシャ装置等を用いることができる。次に、上記断面をSEMにて観察して、反射電子像を得る。反射電子像においては、ダイヤモンド粒子及び非ダイヤモンド状炭素が存在する領域が黒色領域となり、その他の領域(例えば、結合材に由来する元素等)が灰色領域又は白色領域となる。SEMにて上記断面を観察する際の倍率は、測定視野において観察されるダイヤモンド粒子の数が100個以上となるように適宜調整する。例えば、SEMにて上記断面を観察する際の倍率は10000倍であってもよい。
次に、上記反射電子像に対して画像解析ソフト(三谷商事(株)の「Win ROOF ver.7.4.5」、「WinROOF2018」等)を用いて二値化処理を行う。上記画像解析ソフトは画像情報に基づき適切な二値化の閾値を自動的に設定する(測定者が恣意的に閾値を設定することはない)。また、画像の明るさ等を変動させた場合でも測定結果に大きな変動がないことを発明者らは確認している。二値化処理後の画像から、測定視野の面積に占める暗視野に由来する画素(ダイヤモンド粒子及び非ダイヤモンド状炭素に由来する画素)の面積比率を算出する。算出された面積比率を体積%とみなすことにより、ダイヤモンド粒子の含有率と非ダイヤモンド状炭素の含有率との合計(体積%)を求めることができる。
二値化処理後の画像から、測定視野の面積に占める明視野に由来する画素(その他の領域に由来する画素)の面積比率を算出することにより、その他の領域の含有率(体積%)を求めることができる。
同一の試料においてダイヤモンド多結晶体におけるダイヤモンド粒子の含有率と非ダイヤモンド状炭素の含有率との合計(体積%)を測定する限り、測定視野の選択箇所を変更して複数回算出しても、測定結果のばらつきはほとんどないことを、本発明者らは確認している。すなわち、任意に測定視野を設定しても恣意的にはならないと本発明者らは考えている。
なお、暗視野に由来する画素がダイヤモンド粒子及び非ダイヤモンド状炭素に由来することは、ダイヤモンド多結晶体に対してSEM-EDXによる元素分析を行うことにより確認することができる。
次に、X線回折装置(Rigaku社製「MiniFlex600」(商品名))を用いてダイヤモンド多結晶体の上記切断面のX線スペクトルを得る。このときのX線回折装置の条件は、下記の通りとする。
特性X線: Cu-Kα(波長1.54Å)
管電圧: 45kV
管電流: 40mA
フィルター: 多層ミラー
光学系: 集中法
X線回折法: θ-2θ法。
得られたX線スペクトルにおいて、下記のピーク強度A、及びピーク強度Bを測定する。
ピーク強度A:回折角2θ=28.5°付近のピーク強度から、バックグランドを除いた非ダイヤモンド状炭素のピーク強度。
ピーク強度B:回折角2θ=43.9°付近のピーク強度から、バックグラウンドを除いたダイヤモンド粒子のピーク強度。
ダイヤモンド粒子の含有率(体積%)は、{ピーク強度B/(ピーク強度A+ピーク強度B)}×{上述のSEM-EDXにおいて求めたダイヤモンド粒子の含有率と非ダイヤモンド状炭素の含有率との合計(体積%)}の値を算出することにより得られる。非ダイヤモンド状炭素とダイヤモンド粒子は、全て同程度の電子的な重みを有するため、上記のX線ピーク強度比をダイヤモンド多結晶体中の体積比と見なすことができる。なお、本手法ではホウ素に由来するピークが検出されない。そのため、ダイヤモンド多結晶体がホウ素を含む場合でも、ダイヤモンド粒子の含有率が100体積%となる場合がある。
(ダイヤモンド粒子のメジアン径d50)
ダイヤモンド粒子のメジアン径d50は、10nm以上200nm以下であり、10nm以上100nm以下であることが好ましい。ダイヤモンド粒子のメジアン径d50が10nm以上であることによって、強度に優れるダイヤモンド多結晶体となる。ダイヤモンド粒子のメジアン径d50が200nm以下であることによって、硬度に優れるダイヤモンド多結晶体となる。
本実施形態において、ダイヤモンド粒子のメジアン径d50とは、任意に選択された5箇所の各測定視野において、複数のダイヤモンド粒子のメジアン径d50をそれぞれ測定し、これらの平均値を算出することにより得られた値を意味する。具体的な方法は下記の通りである。
まず、ダイヤモンド多結晶体の任意の位置を切断し、ダイヤモンド多結晶体の断面を含む試料を作製する。断面の作製には、集束イオンビーム装置、クロスセクションポリッシャ装置等を用いることができる。次に、上記断面をSEMにて観察して、反射電子像を得る。SEMにて上記断面を観察する際の倍率は、測定視野において観察されるダイヤモンド粒子の数が100個以上となるように適宜調整する。例えば、SEMにて上記断面を観察する際の倍率は10000倍であってもよい。
5つのSEM画像のそれぞれについて、測定視野内に観察されるダイヤモンド粒子の粒界を分離した状態で、画像処理ソフト(三谷商事(株)の「Win ROOF ver.7.4.5」、「WinROOF2018」等)を用いて、各ダイヤモンド粒子の円相当径を算出する。このとき、一部が上記測定視野の外に出ているダイヤモンド粒子については、カウントしないものとする。
算出された各ダイヤモンド粒子の円相当径の分布から、各測定視野におけるメジアン径d50を算出し、これらの平均値を算出する。該平均値が、ダイヤモンド粒子のメジアン径d50に該当する。
なお、同一の試料においてダイヤモンド粒子のメジアン径d50を算出する限り、ダイヤモンド多結晶体における測定視野の選択箇所を変更して複数回算出しても、測定結果のばらつきはほとんどないことを本発明者らは確認している。すなわち、任意に測定視野を設定しても恣意的にはならないと本発明者らは考えている。
(ダイヤモンド粒子の粒径d90)
本実施形態において、ダイヤモンド粒子の粒径d90は、15nm以上300nm以下であり、15nm以上150nm以下であることが好ましい。ダイヤモンド粒子の粒径d90が15nm以上であることによって、強度に優れるダイヤモンド多結晶体となる。ダイヤモンド粒子の粒径d90が150nm以下であることによって、硬度に優れるダイヤモンド多結晶体となる。
本実施形態において、ダイヤモンド粒子の粒径d90とは、任意に選択された5箇所の各測定視野において、複数のダイヤモンド粒子の粒径d90をそれぞれ測定し、これらの平均値を算出することにより得られた値を意味する。具体的な方法は上述したメジアン径d50を求める方法と同様の方法である。
(ダイヤモンド粒子の転位密度)
上記ダイヤモンド粒子の転位密度は、2.0×1015-2以上4.0×1016-2以下であり、4.0×1015-2以上1.0×1016-2以下であることが好ましい。ダイヤモンド粒子の転位密度が2.0×1015-2以上であることによって、靱性及び硬度に優れるダイヤモンド多結晶体となる。ダイヤモンド粒子の転位密度が4.0×1016-2以下であることによって、強度に優れるダイヤモンド多結晶体となる。
従来、結合相を含まないダイヤモンド多結晶体におけるダイヤモンド粒子の転位密度と、当該ダイヤモンド多結晶体の物性との相関関係については着目されていなかった。そこで本発明者らは、両者の相関関係に着目し、ダイヤモンド多結晶体におけるダイヤモンド粒子の転位密度と、ダイヤモンド多結晶体の靱性及び硬度との関係について鋭意調査を行った。その結果、従来から存在するダイヤモンド多結晶体に比べて、ダイヤモンド粒子の転位密度を適度に低くすると、靱性及び硬度が向上することを初めて見出した。このような靱性及び硬度に優れるダイヤモンド多結晶体を切削工具等の工具(例えば、超微細エンドミル、超微細ドリル)に使用すると、超硬合金等の硬質材料又はセラミックス等の硬脆材料の微細な加工を行った場合や過酷な断続切削加工を行なった場合でも、優れた耐摩耗性及び優れた耐欠損性を発揮することができる。なお、この調査によって、従来のダイヤモンド多結晶体(例えば、特許文献1に記載のダイヤモンド多結晶体)は、ダイヤモンド粒子の転位密度が5×1016-2以上8×1016-2以下であることが明らかになっている。このように従来のダイヤモンド多結晶体は、本開示のダイヤモンド多結晶体よりも転位密度が高すぎるため、その転位が亀裂の起点となったり、転位に沿って亀裂が伝搬するなどで、ダイヤモンド多結晶体の性能(靭性、硬度等)が低下していると考えられる。
本明細書において、ダイヤモンド多結晶体の転位密度は大型放射光施設(例えば、九州シンクロトロン光研究センター(佐賀県))において測定される。具体的には下記の方法で測定される。
ダイヤモンド多結晶体からなる試験体を準備する。試験体の大きさは、観察面が2mm×2mmであり、厚みが1.0mmである。試験体の観察面を平均粒径3μmのダイヤモンドスラリーを用いて鏡面研磨する。
該試験体について、下記の条件でX線回折測定を行い、ダイヤモンドの主要な方位である(111)、(220)、(311)、(331)、(422)、(440)、(531)の各方位面からの回折ピークのラインプロファイルを得る。
(X線回折測定条件)
X線源:放射光
装置条件:検出器NaI(適切なROIにより蛍光をカットする。)
エネルギー:18keV(波長:0.6888Å)
分光結晶:Si(111)
入射スリット:幅3mm×高さ0.5mm
受光スリット:ダブルスリット(幅3mm×高さ0.5mm)
ミラー:白金コート鏡
入射角:2.5mrad
走査方法:2θ-θscan
測定ピーク:ダイヤモンドの(111)、(220)、(311)、(331)、(422)、(440)、(531)の7本。ただし、集合組織、配向などによりプロファイルの取得が困難な場合は、その面指数のピークを除く。
測定条件:各測定ピークに対応する半値全幅中に、測定点が9点以上となるようにする。ピークトップ強度は2000counts以上とする。ピークの裾も解析に使用するため、測定範囲は半値全幅の10倍程度とする。
上記のX線回折測定により得られるラインプロファイルは、試験体の不均一ひずみなどの物理量に起因する真の拡がりと、装置起因の拡がりの両方を含む形状となる。不均一ひずみ及び結晶子サイズを求めるために、測定されたラインプロファイルから、装置起因の成分を除去し、真のラインプロファイルを得る。真のラインプロファイルは、得られたラインプロファイルおよび装置起因のラインプロファイルを擬Voigt関数によりフィッティングし、装置起因のラインプロファイルを差し引くことにより得る。装置起因の回折線拡がりを除去するための標準サンプルとしては、LaBを用いる。また、平行度の高い放射光を用いる場合は、装置起因の回折線拡がりは0とみなすこともできる。
得られた真のラインプロファイルを修正Williamson-Hall法及び修正Warren-Averbach法を用いて解析することによって転位密度を算出する。修正Williamson-Hall法及び修正Warren-Averbach法は、転位密度を求めるために用いられている公知のラインプロファイル解析法である。
修正Williamson-Hall法の式は、下記式(I)で示される。
Figure 0007180053000001
上記式(I)において、ΔKはラインプロファイルの半値幅を示す。Dは結晶子サイズを示す。Mは配置パラメータを示す。bはバーガースベクトルを示す。ρは転位密度を示す。Kは散乱ベクトルを示す。O(KC)はKCの高次項を示す。Cはコントラストファクターの平均値を示す。
上記式(I)におけるCは、下記式(II)で表される。
C=Ch00[1-q(h+h+k)/(h+k+l] (II)
上記式(II)において、らせん転位と刃状転位におけるそれぞれのコントラストファクターCh00およびコントラストファクターに関する係数qは、計算コードANIZCを用い、すべり系が<110>{111}、弾性スティフネスC11が1076GPa、C12が125GPa、C44が576GPaとして求める。上記式(II)中、h、k及びlは、それぞれダイヤモンドのミラー指数(hkl)に相当する。コントラストファクターCh00は、らせん転位0.183であり、刃状転位0.204である。コントラストファクターに関する係数qは、らせん転位1.35であり、刃状転位0.30である。なお、らせん転位比率は0.5、刃状転位比率は0.5に固定する。
また、転位と不均一ひずみとの間にはコントラストファクターCを用いて下記式(III)の関係が成り立つ。下記式(III)において、Rは転位の有効半径を示す。ε(L)は、不均一ひずみを示す。
<ε(L)>=(ρCb/4π)ln(R/L) (III)
上記式(III)の関係と、Warren-Averbachの式より、下記式(IV)の様に表すことができ、修正Warren-Averbach法として、転位密度ρ及び結晶子サイズを求めることができる。下記式(IV)において、A(L)はフーリエ級数を示す。A(L)は結晶子サイズに関するフーリエ級数を示す。Lはフーリエ長さを示す。
lnA(L)=lnA(L)-(πLρb/2)ln(R/L)(KC)+O(KC) (IV)
修正Williamson-Hall法及び修正Warren-Averbach法の詳細は、“T.Ungar and A.Borbely,“The effect of dislocation contrast on x-ray line broadening:A new approach to line profile analysis”Appl.Phys.Lett.,vol.69,no.21,p.3173,1996.”及び“T.Ungar,S.Ott,P.Sanders,A.Borbely,J.Weertman,“Dislocations,grain size and planar faults in nanostructured copper determined by high resolution X-ray diffraction and a new procedure of peak profile analysis”Acta Mater.,vol.46,no.10,pp.3693-3699,1998.”に記載されている。
同一の試料においてダイヤモンド粒子の転位密度を測定する限り、測定範囲の選択箇所を変更して複数回算出しても、測定結果のばらつきはほとんどないことを本発明者らは確認している。すなわち、任意に測定視野を設定しても恣意的にはならないと本発明者らは考えている。
<ホウ素>
本実施形態において、上記ダイヤモンド多結晶体は、ホウ素を更に含み、上記ホウ素の含有率は、上記ダイヤモンド多結晶体に対して、0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上0.6質量%以下であることがより好ましい。このようにすることで、摺動性及び導電性を備えるダイヤモンド多結晶体となる。ホウ素の含有率は、上述した二次イオン質量分析法(SIMS)によって測定することができる。
本実施形態の一側面において、上記ダイヤモンド多結晶体は、周期表の第4族元素、第5族元素、第6族元素、鉄、アルミニウム、珪素、コバルト及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の含有率が、1体積%未満であることが好ましく、0体積%以上0.1体積%以下であることがより好ましい。ここで、金属元素が2種以上含まれる場合、上記「金属元素の含有率」は、その2種以上の金属元素の合計の含有率を意味する。上述の金属元素の含有率は、SEM付帯のEDXを用いて、ダイヤモンド多結晶体に対し、組織観察、元素分析等を実施することによって確認することができる。
周期表の第4族元素は、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)を含む。第5族元素は、例えば、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)及びタンタル(Ta)を含む。第6族元素は、例えば、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)及びタングステン(W)を含む。
<ヌープ硬度>
本実施形態のダイヤモンド多結晶体は、室温におけるヌープ硬度が80GPa以上であることが好ましく、100GPa以上であることがより好ましい。上記ヌープ硬度の上限は特に設けないが、製造上の観点から150GPa以下であることが好ましい。上記ヌープ硬度は、JIS Z2251:2009に規定される条件で行われるヌープ硬さ試験によって求められる。
JIS Z 2251:2009に規定されるヌープ硬さ試験は、工業材料の硬さの測定方法の一つとして公知である。ヌープ硬さ試験は、所定の温度及び所定の荷重(試験荷重)でヌープ圧子を被測定材料へ押圧することにより、被測定材料の硬度を求めるものである。本実施形態において、所定の温度は室温(23℃±5℃)であり、所定の荷重は4.9Nである。ヌープ圧子とは、底面が菱型の四角錐の形状を有するダイヤモンド製の圧子をいう。
≪工具≫
本実施形態のダイヤモンド多結晶体は、硬度及び靱性に優れているため、切削工具、耐摩工具、研削工具、摩擦撹拌接合用ツール、スタイラス等に好適に用いることができる。すなわち、本実施形態の工具は、上記のダイヤモンド多結晶体を備えるものである。上記工具は、各種材料の高速加工において優れた耐摩耗性及び優れた耐欠損性を有する。上記工具が切削工具である場合、上記切削工具は超硬合金、セラミックス、樹脂、カーボン等の微細な加工に特に適している。
上記の工具は、その全体がダイヤモンド多結晶体で構成されていてもよいし、その一部(例えば切削工具の場合、刃先部分)のみがダイヤモンド多結晶体で構成されていてもよい。
切削工具としては、ドリル、エンドミル、ドリル用刃先交換型切削チップ、エンドミル用刃先交換型切削チップ、フライス加工用刃先交換型切削チップ、旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップ、切削バイト等を挙げることができる。
耐摩工具としては、ダイス、スクライバー、スクライビングホイール、ドレッサー等を挙げることができる。
研削工具としては、研削砥石等を挙げることができる。
≪ダイヤモンド多結晶体の製造方法≫
本実施形態に係るダイヤモンド多結晶体の製造方法は、
出発物質として非ダイヤモンド状炭素材料を準備する工程(第1工程)と、
グラファイト安定領域からダイヤモンド領域に移動するように、開始圧力及び開始温度から、300℃以下の温度を維持しながら昇圧を行う工程(第2工程)と、
温度を上げてダイヤモンド領域からグラファイト安定領域に移動した後に、グラファイト安定領域における圧力及び温度で10分以上60分以下の間、維持する工程(第3工程)と、
更に、焼結圧力及び焼結温度まで昇圧及び昇温を行い、上記焼結圧力及び上記焼結温度において、上記非ダイヤモンド状炭素材料をダイヤモンド粒子に変換させ、かつ焼結させる工程(第4工程)と、
を備える。
<第1工程:非ダイヤモンド状炭素材料を準備する工程>
本工程では、出発物質として非ダイヤモンド状炭素材料を準備する。非ダイヤモンド状炭素材料は、炭素材料であれば特に制限はない。非ダイヤモンド状炭素材料は、低結晶性グラファイト、熱分解性グラファイト又はアモルファスカーボンを含むことが好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
非ダイヤモンド状炭素材料は、その純度が99体積%以上であることが好ましく、99.5体積%以上であることがより好ましく、99.9体積%以上であることが更に好ましく、100体積%であることが最も好ましい。換言すれば、非ダイヤモンド状炭素材料は、結晶粒の成長を抑制する観点から、不純物である鉄族元素金属を含まないものが好ましい。鉄族元素金属としては、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)等が挙げられる。
非ダイヤモンド状炭素材料は、結晶粒の成長を抑制し、ダイヤモンドへの直接変換を促進する観点から、不純物である水素、酸素、窒素等の濃度が低いものが好ましい。非ダイヤモンド状炭素材料中の水素、酸素及び窒素の濃度は、それぞれ0.1体積%が好ましく、0.01体積%以下がより好ましい。また、非ダイヤモンド状炭素材料中の全不純物濃度は0.3体積%以下が好ましく、0.1体積%以下がより好ましい。
非ダイヤモンド状炭素材料中の不純物の濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS)によって測定することができる。この測定方法としては、たとえば装置に「CAMECA IMS-7f」(アメテック社製)を用い、一次イオン種をCs、一次加速電圧15.0kVとし、検出領域はφ30μmとして不純物濃度を測定する。
<第2工程:グラファイト安定領域からダイヤモンド領域に移動するように、低温を維持しながら昇圧を行う工程>
本工程では、グラファイト安定領域からダイヤモンド領域に移動するように、開始圧力及び開始温度から、300℃以下の温度を維持しながら昇圧を行う。ここで、「グラファイト安定領域」とは、炭素の相平衡図(図1)におけるグラファイトが熱力学的に安定な領域を意味する。上記グラファイト安定領域における圧力P(単位:GPa)と温度T(単位:℃)との間には以下の関係式が成り立っている。
P<T×0.00286+1.4185
本実施形態において、「ダイヤモンド領域」とは、炭素の相平衡図(図1)におけるダイヤモンドが熱力学的に安定な領域を意味する。上記ダイヤモンド領域における圧力P(単位:GPa)と温度T(単位:℃)との間には以下の関係式が成り立っている。
P>T×0.00286+1.4185
開始圧力及び開始温度から、グラファイト安定領域からダイヤモンド領域に移動するように昇圧及び昇温を行うことで、目的の転位密度とすることができる。
本実施形態において、開始温度は常温(23±5℃)であり、開始圧力は大気圧(1013.25hPa)である。
本工程において、開始圧力及び開始温度から昇圧を行う際には、300℃以下の温度を維持しながら行うことが好ましく、0℃以上300℃以下の温度を維持しながら行うことがより好ましい。本実施形態の一側面において、開始圧力及び開始温度から昇圧を行う際には、300℃を超えない範囲において昇温を行ってもよい。
<第3工程:グラファイト安定領域において圧力及び温度を維持する工程>
本工程では、温度を上げてダイヤモンド領域からグラファイト安定領域に移動した後に、グラファイト安定領域における圧力及び温度で10分以上60分以下の間、維持する。ダイヤモンド領域からグラファイト安定領域に再び移動して、グラファイト安定領域において圧力及び温度を維持することで転位密度を増加させることができる。
上記グラファイト安定領域における圧力としては、1.5GPa以上8GPa以下であることが好ましく、2GPa以上8GPa以下であることがより好ましい。
上記グラファイト安定領域における温度としては、0℃以上2500℃以下であることが好ましく、100℃以上2000℃以下であることがより好ましい。
本実施形態の一側面において、上記グラファイト安定領域における圧力Pは3GPa以上5GPa以下であり、上記グラファイト安定領域温度Tは1000℃以上1300℃以下であり、上記圧力Pと上記温度Tとは以下の関係式を満たすことが好ましい。
P<T×0.00286+1.4185
グラファイト安定領域において圧力及び温度を維持する時間は、10分以上であることが好ましく、20分以上であることがより好ましい。グラファイト安定領域において圧力及び温度を維持する時間の上限は、製造上の観点(例えば、生産のサイクルタイムの観点)から60分以下が好ましい。
<第4工程:ダイヤモンド粒子に変換させ、かつ焼結させる工程>
本工程では、更に、焼結圧力及び焼結温度まで昇圧及び昇温を行い、上記焼結圧力及び上記焼結温度において、上記非ダイヤモンド状炭素材料をダイヤモンド粒子に変換させ、かつ焼結させる。本実施形態の一側面において、焼結圧力及び焼結温度まで同時に昇温及び昇圧を行ってもよいし、焼結圧力まで昇圧を行い、その後に焼結温度まで昇温してもよい。
上記焼結圧力は、12GPa以上であることが好ましく、15GPa以上であることがより好ましい。上記焼結圧力の上限は、製造上の観点から25GPa以下であることが好ましい。
上記焼結温度は、1800℃以上2800℃以下であることが好ましく、2000℃以上2600℃以下であることがより好ましい。
上記焼結圧力及び上記焼結温度における焼結時間は1分以上20分以下であることが好ましく、5分以上20分以下であることがより好ましく、10分以上20分以下であることが更に好ましい。
本実施形態のダイヤモンド多結晶体の製造方法において用いられる高圧高温発生装置は、ダイヤモンド相が熱力学的に安定な相である圧力及び温度の条件が得られる装置であれば特に制限はないが、生産性及び作業性を高める観点から、高圧高温発生装置又はマルチアンビル型の高圧高温発生装置が好ましい。また、原料である非ダイヤモンド状炭素材料を収納する容器は、耐高圧高温性の材料であれば特に制限はなく、たとえば、Ta、Nb等が好適に用いられる。
ダイヤモンド多結晶体中への不純物の混入を防止するためには、例えば、まず原料である非ダイヤモンド状炭素材料をTa、Nb等の高融点金属製のカプセルに入れて真空中で加熱して密封し、非ダイヤモンド状炭素材料から吸着ガス及び空気を除去する。その後、上述した第2工程から第4工程を行うことが好ましい。
本実施形態におけるダイヤモンド多結晶体の製造方法では、開始温度及び開始圧力から焼結温度及び焼結圧力まで昇温及び昇圧する際に、グラファイト安定絵領域とダイヤモンド領域との境界を複数回跨いでいる。このように昇温及び昇圧を行うことで、製造されるダイヤモンド多結晶体における転位密度を増加させることが可能になる。
本実施の形態を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本実施の形態が限定されるものではない。
≪ダイヤモンド多結晶体の作製≫
<第1工程:非ダイヤモンド状炭素材料を準備する工程>
まず、試料1~試料12では、原料として以下の非ダイヤモンド状炭素材料を準備した。
非ダイヤモンド状炭素材料
試料1~5及び8~11:粒径3μmのグラファイト粉末
試料6、7及び12 :粒径3μmのグラファイト粉末にホウ素を添加した粉末
<第2工程:グラファイト安定領域からダイヤモンド領域に移動するように、低温を維持しながら昇圧を行う工程>
次に、上記非ダイヤモンド状炭素材料を、Ta製のカプセルに入れて真空中で加熱して密閉した。その後、高圧高温発生装置を用いて、表1に示す開始圧力及び開始温度から表1に示す第一段階の到達圧力及び到達温度まで、昇圧させた。表1における開始圧力は、「0GPa」と表記しているが大気圧のことを意味している。なお、試料9及び10については、第2工程(第一段階)を経ずに後述する第二段階の到達圧力及び到達温度まで昇温及び昇圧させた。第一段階の到達圧力及び到達温度は、上述したダイヤモンド領域に対応し、以下の関係式が成り立つ。
P>T×0.00286+1.4185
<第3工程:グラファイト安定領域において圧力及び温度を維持する工程>
上述の第一段階から温度を上げて表1に示す第二段階の到達圧力及び到達温度まで到達させ、表1に示す第二段階の保持時間の間、その状態を維持した。ここで、試料1~9及び試料10~12における第二段階の到達圧力及び到達温度は、上述したグラファイト安定領域の圧力P(単位:GPa)及び温度T(単位:℃)に対応し、以下の関係式が成り立つ。
P<T×0.00286+1.4185
<第4工程:ダイヤモンド粒子に変換させ、かつ焼結させる工程>
第3工程を行った後、表1に示す第三段階の到達圧力及び到達温度を経由して第四段階の焼結圧力及び焼結温度まで昇温、昇圧を行い、表1に示す第四段階の焼結時間で加圧加熱処理することで、上記非ダイヤモンド状炭素材料をダイヤモンド粒子に変換させ、かつ焼結させた。ここで試料9については、第三段階を経ずに焼結圧力及び焼結温度まで昇温及び昇圧させた。以上の手順で、試料1~試料12のダイヤモンド多結晶体を得た。なお、非ダイヤモンド状炭素材料には、焼結助剤及び結合材のいずれも添加しなかった。また、試料13として市販のダイヤモンド焼結体(住友電工ハードメタル株式会社製、商品名:DA1000)を準備した。試料1~試料7は実施例に相当する。試料8~試料13は比較例に相当する。上記ダイヤモンド焼結体は、ダイヤモンド粒子のメジアン径d50が0.5μmであり、ダイヤモンド粒子の含有率が90-95体積%である。また、上記ダイヤモンド焼結体は、結合材としてコバルトを使用している。
Figure 0007180053000002
≪ダイヤモンド多結晶体の特性評価≫
得られたダイヤモンド多結晶体について、以下に示すとおり、ダイヤモンド粒子及びホウ素の含有率、金属元素の含有率、不可避不純物の含有率、ダイヤモンド粒子のメジアン径d50及び粒径d90、ダイヤモンド粒子の転位密度、ダイヤモンド粒子の抵抗率、並びに、ダイヤモンド粒子のヌープ硬度を測定した。
<ダイヤモンド粒子及びホウ素の含有率>
ダイヤモンド多結晶体におけるダイヤモンド粒子をSEM付帯のEDXを用いた方法及びX線回折法を組み合わせて用いることにより特定した。また、ダイヤモンド多結晶体におけるホウ素の含有率をSIMSにより特定した。具体的な測定方法は、上記の[本開示の実施形態の詳細]の欄に記載された方法と同一であるため、その説明は繰り返さない。結果を表2(「ダイヤ含有率」及び「ホウ素含有率」の欄参照)に示す。なお、試料2及び3については、残部が未変換のグラファイトであることを確認している。
<金属元素の含有率(鉄族元素の含有率)>
ダイヤモンド多結晶体及びダイヤモンド焼結体における鉄族元素の含有率をSEM付帯のEDXにより特定した。具体的な測定条件は、以下の通りである。結果を表2(「鉄族元素Fe,Co,Ni含有率」の欄参照)に示す。
EDXの条件
加速電圧15kV
<不可避不純物の含有率>
ダイヤモンド多結晶体における不可避不純物の含有率をSIMSにより特定した。具体的な測定方法は、上記の[本開示の実施形態の詳細]の欄に記載された方法と同一であるため、その説明は繰り返さない。結果を表2(「不可避不純物含有率」の欄参照)に示す。
<ダイヤモンド粒子のメジアン径d50及び粒径d90>
各ダイヤモンド多結晶体に含まれるダイヤモンド粒子のメジアン径d50及び粒径d90を測定した。具体的な測定方法は、上記の[本開示の実施形態の詳細]の欄に記載された方法と同一であるため、その説明は繰り返さない。結果を表2(「メジアン径d50」及び「粒径d90」の欄参照)に示す。
<ダイヤモンド粒子の転位密度>
ダイヤモンド多結晶体におけるダイヤモンド粒子の転位密度を測定した。具体的な測定方法は、上記の[本開示の実施形態の詳細]の欄に記載された方法と同一であるため、その説明は繰り返さない。結果を表2(「転位密度」の欄参照)に示す。
<ダイヤモンド粒子の抵抗率>
ダイヤモンド多結晶体における抵抗率を、JIS規格のJIS K 7194に準じて4端針法で測定した。このとき、試料サイズはφ5×1mmとした。結果を表2(「抵抗率」の欄参照)に示す。表2中、「-」と表記されている箇所は、ダイヤモンド多結晶体が絶縁体であったため測定が不可能であったことを意味する。
<ダイヤモンド粒子のヌープ硬度>
ダイヤモンド多結晶体及びダイヤモンド焼結体におけるヌープ硬度を測定した。具体的な測定方法は、上記の[本開示の実施形態の詳細]の欄に記載された方法と同一であるため、その説明は繰り返さない。結果を表2(「ヌープ硬度」の欄参照)に示す。
≪ダイヤモンド多結晶体を備える工具の評価≫
<切削加工試験>
試料1~試料12のダイヤモンド多結晶体又は試料13のダイヤモンド焼結体を備える切削工具の耐摩耗性を調べるために、上記ダイヤモンド多結晶体又は上記ダイヤモンド焼結体を用いて小径エンドミル(工具形状:住友電気工業株式会社製のNPDB1050-020と同形状、R0.5)を作製し、以下の切削条件で切削加工を行い、切削距離が24mになった時点における摩耗量を算出した。このとき、試料1の摩耗量を基準として上記摩耗量の比を求めた。結果を表2に示す。超硬合金は難削材として知られており、下記切削条件で切削加工を行った場合、切削工具の刃先負荷が大きくなると考えられる。そのため、上述の摩耗量の比が小さい程、微細な加工を行う切削加工において耐欠損性及び耐摩耗性に優れると評価することができる。
(切削条件)
被削材 :超硬合金VF20(HRA92.5)
回転速度 :40000/分
送り速度 :200m/分
クーラント:オイルミスト
Figure 0007180053000003
≪結果≫
表2の結果から、試料1~試料7(実施例)は、摩耗量の比が0.9~1.2であり、耐欠損性、耐摩耗性に優れることが分かった。一方、試料8~10及び12(比較例)は、摩耗量の比が1.4~2.0であった。試料11(比較例)は、切削距離が10mに到達した時点で刃先が欠損したため、以降の切削試験を中止した。試料13(比較例)は、切削距離が7mに到達した時点で、刃先が欠損したため、以降の切削試験を中止した。以上の結果から、実施例に係る切削工具は、耐欠損性及び耐摩耗性に優れることが分かった。また、実施例に係る切削工具に用いられているダイヤモンド多結晶体は、硬度及び靱性に優れることが分かった。
以上のように本開示の実施の形態及び実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態及び実施例の構成を適宜組み合わせたり、様々に変形することも当初から予定している。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (8)

  1. ダイヤモンド粒子を含むダイヤモンド多結晶体であって、
    前記ダイヤモンド粒子の含有率は、前記ダイヤモンド多結晶体に対して、99体積%を超えていて、
    前記ダイヤモンド粒子のメジアン径d50は、10nm以上200nm以下であり、
    前記ダイヤモンド粒子の転位密度は、2.0×1015-2以上4.0×1016-2以下である、ダイヤモンド多結晶体。
  2. 前記ダイヤモンド粒子の転位密度は、4.0×1015-2以上1.0×1016-2以下である、請求項1に記載のダイヤモンド多結晶体。
  3. 前記ダイヤモンド粒子のメジアン径d50は、10nm以上100nm以下である、請求項1又は請求項2に記載のダイヤモンド多結晶体。
  4. 前記ダイヤモンド多結晶体は、ホウ素を更に含み、
    前記ホウ素の含有率は、前記ダイヤモンド多結晶体に対して、0.01質量%以上1質量%以下である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のダイヤモンド多結晶体。
  5. 常温におけるヌープ硬度は、80GPa以上である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のダイヤモンド多結晶体。
  6. 周期表の第4族元素、第5族元素、第6族元素、鉄、アルミニウム、珪素、コバルト及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の含有率は、1体積%未満である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のダイヤモンド多結晶体。
  7. 水素、酸素、窒素、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の不可避不純物の含有率は、0.1体積%未満である、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のダイヤモンド多結晶体。
  8. 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のダイヤモンド多結晶体を備える工具。
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