以下、図面を参照しながら、画像処理装置及び画像処理方法の実施形態について詳細に説明する。
実施形態に係る画像処理装置は、磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置等の医用画像生成装置にコンソールとして備えられる。医用画像生成装置は、モダリティとも呼ばれる。又は、実施形態に係る画像処理装置は、医用画像管理装置(画像サーバ)や、ワークステーションや、読影端末等であってもよく、その場合、画像処理装置は、ネットワークを介して接続された医用画像システム上に設けられる。又は、実施形態に係る画像処理装置は、オフラインの装置であってもよく、その場合、画像処理装置は、医用画像生成装置によって生成された医用画像を可搬型の記憶媒体を介して読み出し可能な装置である。
以下、画像処理装置が、MRI装置にコンソールとして備えられる例について第1の実施形態を用いて説明し、医用画像システム上に設けられる例について第2の実施形態を用いて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る画像処理装置を含むMRI装置の全体構成を示す概略図である。
図1は、MRI装置1を示す。MRI装置1は、撮像装置10と、画像処理装置としてのコンソール50とを備える。撮像装置10は、磁石架台11と、制御キャビネット12と、寝台装置13とを備える。撮像装置10は、一般的には、検査室に備えられる。検査室は、撮影室とも呼ばれる。コンソール50は、制御室に備えられる。制御室は、操作室とも呼ばれる。
磁石架台11は、静磁場磁石21と、傾斜磁場コイル22と、WBコイル23とを内部に収容する。制御キャビネット12は、傾斜磁場電源31(X軸用31x、Y軸用31y、Z軸用31z)と、RF送信器32と、RF受信器33と、シーケンスコントローラ34とを備える。寝台装置13は、寝台本体41と天板42とを備える。
まず、磁石架台11について説明する。磁石架台11の静磁場磁石21は、磁石が円筒形状の磁石構造であるトンネルタイプと、撮像空間を挟んで上下に一対の磁石が配置された開放型(オープン型)とに大別される。ここでは、静磁場磁石21がトンネル型である場合について説明するが、その場合に限定されるものではない。
静磁場磁石21は、概略円筒形状をなしており、被検体、例えば患者Uが搬送されるボア内に静磁場を発生させる。ボアとは、磁石架台11の円筒内部の空間のことである。静磁場磁石21は、例えば、液体ヘリウムを保持するための筐体と、液体ヘリウムを極低温に冷却するための冷凍機と、筐体内部の超伝導コイルとによって構成される。なお、静磁場磁石21は、永久磁石によって構成されてもよい。以下、静磁場磁石21が、超伝導コイルを有する場合について説明する。
静磁場磁石21は、超伝導コイルを内蔵し、液体ヘリウムによって超伝導コイルが極低温に冷却されている。静磁場磁石21は、励磁モードにおいて静磁場電源から供給される電流を超伝導コイルに印加することで静磁場を発生する。その後、永久電流モードに移行すると、静磁場電源は切り離される。一旦永久電流モードに移行すると、静磁場磁石21は、長時間、例えば1年以上に亘って、静磁場を発生し続ける。
傾斜磁場コイル22は、静磁場磁石21と同様に概略円筒形状をなし、静磁場磁石21の内側に設置されている。傾斜磁場コイル22は、傾斜磁場電源31から供給される電流(電力)により傾斜磁場を患者Uに印加する。傾斜磁場コイル22は、X軸方向について傾斜磁場を発生させるXchコイルと、Y軸方向について傾斜磁場を発生させるYchコイルと、Z軸方向の傾斜磁場を発生させるZchコイルとを備える。ここで、Z軸方向は静磁場に沿った方向、Y軸方向は垂直方向、X軸方向はZ軸とY軸それぞれに直交する方向である。
ここで、傾斜磁場の生成に伴って発生する渦電流により発生する渦磁場がイメージングの妨げとなることから、傾斜磁場コイル22として、例えば、渦電流の低減を目的としたASGC(Actively Shielded Gradient Coil)が用いられてもよい。ASGCは、X軸、Y軸、及びZ軸方向の各傾斜磁場をそれぞれ形成するためのメインコイルの外側に、漏れ磁場を抑制するためのシールドコイルを設けた傾斜磁場コイルである。
WBコイル23は、全身用コイルとも呼ばれ、傾斜磁場コイル22の内側に患者Uを取り囲むように概略円筒形状に設置されている。WBコイル23は、送信コイルとして機能する。つまり、WBコイル23は、RF送信器32から伝送されたRFパルス信号に従ってRFパルスを患者Uに向けて送信する。一方、WBコイル23は、RFパルスを送信する送信コイルとしての機能に加え、受信コイルとしての機能を備える場合もある。その場合、WBコイル23は、受信コイルとして、原子核の励起によって患者Uから放出されるMR信号を受信する。
MRI装置1は、WBコイル23の他、ローカルコイル24を備える場合もある。ローカルコイル24は、患者Uの体表面に近接して配置される。ローカルコイル24は、複数のコイル要素を備えてもよい。これら複数のコイル要素をアレイ状に配列したコイルは、PAC(Phased Array Coil)と呼ばれることもある。
ローカルコイル24には幾つかの種別がある。例えば、ローカルコイル24には、図1に示すように患者Uの胸部、腹部、又は脚部に設置されるボディコイル(Body Coil)や、患者Uの背側に設置されるスパインコイル(Spine Coil)といった種別がある。この他、ローカルコイル24には、患者Uの頭部を撮像するための頭部コイル(Head Coil)や、足を撮像するためのフットコイル(Foot Coil)といった種別もある。また、ローカルコイル24には、手首を撮像するためのリストコイル(Wrist Coil)、膝を撮像するためのニーコイル(Knee Coil)、肩を撮像するためのショルダーコイル(Shoulder Coil)といった種別もある。
ローカルコイル24は、受信コイルとして機能する。つまり、ローカルコイル24は、前述のMR信号を受信する。ただし、ローカルコイル24は、MR信号を受信する受信コイルとしての機能に加え、RFパルスを送信する送信コイルとしての機能を備える送受信コイルでもよい。例えば、ローカルコイル24としての頭部コイル及びニーコイルの中には、送受信コイルも存在する。つまり、ローカルコイル24は、送信専用、受信専用、送受信兼用の種別を問わない。
続いて、制御キャビネット12の説明に移る。制御キャビネット12の傾斜磁場電源31は、X軸、Y軸、及びZ軸方向について傾斜磁場を発生するコイルそれぞれを駆動する各チャンネル用の傾斜磁場電源31x,31y,31zを備える。傾斜磁場電源31x,31y,31zは、シーケンスコントローラ34の指令により、必要な電流を各チャンネル独立に出力する。それにより、傾斜磁場コイル22は、X軸、Y軸、及びZ軸の方向における傾斜磁場(「勾配磁場」とも呼ばれる)を患者Uに印加することができる。
RF送信器32は、シーケンスコントローラ34からの指示に基づいてRFパルス信号を生成する。RF送信器32は、生成したRFパルス信号をWBコイル23に伝送する。
ローカルコイル24で受信したMR信号、より具体的には、ローカルコイル24内の各コイル要素で受信したMR信号は、RF受信器33に伝送される。各コイル要素の出力線路や、WBコイル23の出力線路はチャンネルと呼ばれる。このため、各コイル要素やWBコイル23から出力される夫々のMR信号をチャンネル信号と呼ぶこともある。WBコイル23で受信したチャンネル信号もRF受信器33に伝送される。
RF受信器33は、ローカルコイル24やWBコイル23からのチャンネル信号、即ち、MR信号をAD(Analog to Digital)変換して、シーケンスコントローラ34に出力する。デジタルに変換されたMR信号は、生データ(Raw Data)と呼ばれることもある。
シーケンスコントローラ34は、コンソール50による制御のもと、傾斜磁場電源31と、RF送信器32と、RF受信器33とをそれぞれ駆動することによって患者Uの撮像を行う。撮像によってRF受信器33から生データを受信すると、シーケンスコントローラ34は、その生データをコンソール50に送信する。
シーケンスコントローラ34は、処理回路(図示を省略)を具備する。この処理回路は、例えば所定のプログラムを実行するプロセッサや、FPGA(Field Programmable Gate Array)及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアで構成される。
続いて、寝台装置13の説明に移る。寝台装置13の寝台本体41は、天板42を例えば、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動可能なように支持する。天板42のX軸方向の移動は、天板42の左右方向、つまり、天板42の短手方向の移動である。天板42のY軸方向の移動は、天板42の上下方向、つまり、天板42の厚み方向の移動である。天板42のZ軸方向の移動は、天板42の前後方向、つまり、天板42の長手方向の移動である。
続いて、コンソール50の説明に移る。コンソール50は、処理回路51と、メモリ52と、入力インターフェース53と、ディスプレイ54とを備える。
処理回路51は、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processor Unit)等のプロセッサの他、特定用途向け集積回路(ASIC)、及び、プログラマブル論理デバイス等の処理回路を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等の回路が挙げられる。処理回路51は、メモリ52に記憶された、又は、処理回路51内に直接組み込まれたプログラムを読み出し実行することで、シーケンスコントローラ34の動作を制御し、パルスシーケンスに従った撮像を実行してMR画像を生成する機能を実現する。なお、処理回路51は、処理部の一例である。
また、処理回路51は、単一の処理回路によって構成されてもよいし、複数の独立した処理回路要素の組み合わせによって構成されてもよい。後者の場合、複数のメモリ52が複数の処理回路要素の機能に対応するプログラムをそれぞれ記憶するものであってもよいし、1個のメモリ52が複数の処理回路要素の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。
メモリ52は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、及び光ディスク等を備える。メモリ52は、USB(Universal Serial bus)メモリ及びDVD(Digital Video Disk)等の可搬型メディアを備えてもよい。メモリ52は、処理回路51において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータや、医用画像を記憶する。また、OSに、操作者に対するディスプレイ54への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力インターフェース53によって行うことができるGUI(Graphical User Interface)を含めることもできる。なお、メモリ52は、記憶部の一例である。
入力インターフェース53は、操作者によって操作が可能な入力デバイスと、入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、トラックボール、スイッチ、マウス、キーボード、操作面に触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力デバイス、及び音声入力デバイス等によって実現される。操作者により入力デバイスが操作されると、入力回路はその操作に応じた信号を生成して処理回路51に出力する。なお、入力インターフェース53は、入力部の一例である。
ディスプレイ54は、例えば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等の一般的な表示出力装置により構成される。ディスプレイ54は、処理回路51の制御に従って各種情報を表示する。なお、ディスプレイ54は、表示部の一例である。
コンソール50は、処理回路51による制御の下、撮像装置10のシーケンスコントローラ34から送信される生データをk空間に配置し、メモリ52に記憶する。コンソール50は、処理回路51による制御の下、メモリ52に記憶されたk空間データに対して、逆フーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、患者U内の所望のMR画像を生成する。そして、コンソール50は、処理回路51による制御の下、生成した各種MR画像をメモリ52に格納する。
続いて、MRI装置1、特にコンソール50の機能について説明する。
図2は、コンソール50の機能を示すブロック図である。
コンソール50の処理回路51は、メモリ52に記憶された、又は、処理回路51内に直接組み込まれたプログラムを読み出して実行することで、撮像制御機能511と、画像生成機能512と、画像取得機能513と、第1拡大画像生成機能514と、縮小画像生成機能515と、差分画像生成機能516と、拡大差分画像生成機能517と、第2拡大画像生成機能518とを実現する。以下、機能511~518がソフトウェア的に機能する場合を例に挙げて説明するが、機能511~518の全部又は一部は、MRI装置1にASIC等の回路等として設けられるものであってもよい。また、機能511~518の全部又は一部は、シーケンスコントローラの処理回路(図示省略)によって実現されるものであってもよい。
撮像制御機能511は、シーケンスコントローラ34を制御してMR撮像を実行させ、シーケンスコントローラ34から送信されるk空間データを収集する機能を含む。撮像制御機能511によって実行されるMR撮像は、プリスキャン又はメインスキャン等を含む。プリスキャン又はメインスキャンのパルスシーケンスは、特に限定されるものではなく、グラディエントエコー系のパルスシーケンスや、スピンエコー系のパルスシーケンスなど各種のシーケンスを使用することができる。
画像生成機能512は、撮像制御機能511によって収集されたk空間データに基づいて、撮像時に指定されたマトリクスサイズで構成されるMR画像を、後述する元画像として生成する機能と、元画像をメモリ52に記憶させる機能とを含む。
画像取得機能513は、メモリ52から、所定の元画像を取得する機能を含む。
第1拡大画像生成機能514は、画像取得機能513によって取得された元画像を、第1の補間方法により拡大した第1の拡大画像を生成する機能を含む。
例えば、第1拡大画像生成機能514で用いられる第1の補間方法は、k空間データの外縁部に0詰めを行う方法である。この方法では、元画像に対してフーリエ変換を行い、一旦k空間データに戻し、このk空間データ外縁部にゼロのデータを付加し、k空間データを拡張する。拡張後のk空間データを逆フーリエ変換することにより元画像よりも大きなマトリクスサイズを有する第1の拡大画像を生成する。
画像サイズの拡大の際、バイリニア補間法、バイキュービック補間法、スプライン補間法等の、実空間での複数の画素値を使用する補間方法が用いられることがある。これらの補間方法は、元画像の周波数成分の一部を低下させる側面、つまり平滑化を伴うものであるため、画質の劣化を生じやすい。
これに対して、第1拡大画像生成機能514で用いられる補間法は、元画像の空間周波数成分の劣化を抑えながら画像サイズを拡大する方法であるため、元画像の画質を維持しながら、元画像のマトリクスサイズから操作者の所望のマトリクスサイズに拡大して第1の拡大画像を生成することができる。
一方で、k空間データの外縁部に0詰めを行う補間法では、高周波成分をゼロ詰めしたk空間データを補間するため、逆フーリエ変換されて得られる第1の拡大画像にリンギングアーチファクトが発生する場合がある。リンギングアーチファクトは、高周波成分が打ち切られた信号の近似計算を行う際に発生しやすく、画像上では縞模様として現れる。また、マトリクスサイズの拡大率が大きいほどゼロ詰めする周波数範囲が広くなるので、リンギングアーチファクトが発生しやすくなる。そこで、機能515~518により、k空間データの外縁部に0詰めを行う補間法により得られた、リンギングアーチファクトを含む第1の拡大画像から、リンギングアーチファクト成分が除去された第2の拡大画像を生成する。
縮小画像生成機能515は、第1拡大画像生成機能514によって生成された第1の拡大画像を、元画像と同じマトリクスサイズに縮小した縮小画像を生成する機能を含む。例えば、縮小画像生成機能515は、第1の拡大画像を、リンギングアーチファクトを発生させない第2の補間方法により、元画像と同じマトリクスサイズに縮小した縮小画像を生成する。リンギングアーチファクトを発生させない第2の補間方法の一例は、バイリニア補間法である。
差分画像生成機能516は、画像取得機能513によって取得された元画像と、縮小画像生成機能515によって生成された縮小画像との差分をとって差分画像を生成する機能を含む。
拡大差分画像生成機能517は、差分画像生成機能516によって生成された差分画像を、第1の補間方法と異なる第2の補間方法により拡大して、第1の拡大画像と同じマトリクスサイズである拡大差分画像を生成する機能である。例えば、拡大差分画像生成機能517は、第2の補間方法であるバイリニア補間法により、第1の拡大画像と同じマトリクスサイズに差分画像を拡大した拡大差分画像を生成する。
ここで、拡大差分画像生成機能517で用いられる第2の補間方法は、第1の補間方法であるk空間データの外縁部に0詰めを行う補間法とは異なり、リンギングアーチファクトを発生させない補間方法である。例えば、縮小画像生成機能515で用いられる第2の補間方法は、バイリニア補間法である。バイリニア補間法は、補間対象となる位置の値を、周辺の複数位置の値を使って線形的に補間する方法である。なお、第2の補間方法は、バイリニア補間法に限定されるものではなく、補間時におけるリンギングアーチファクトの発生が低い補間法、例えば、バイキュービック補間法、スプライン補間法等であってもよい。
異なる補間方法(例えば、k空間データの外縁部に0詰めを行う補間法及びバイリニア補間法)により生成された拡大差分画像により、第1拡大画像生成機能514のk空間データの外縁部に0詰めを行う補間法に起因して発生するリンギングアーチファクト成分を抽出することができる。
第2拡大画像生成機能518は、第1拡大画像生成機能514によって生成された第1の拡大画像と、拡大差分画像生成機能517によって生成された拡大差分画像との差分をとって第2の拡大画像を生成する機能を含む。
なお、機能511~518の詳細については、図3~図6を用いて説明する。
続いて、MRI装置1、特にコンソール50の動作について説明する。
図3は、コンソール50の動作をフローチャートとして示す図である。図3において、「ST」に数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。図4は、コンソール50によって行われる画像処理の流れを示す概念図である。
撮像制御機能511は、シーケンスコントローラ34を制御してMR撮像を実行させる(ステップST1)。画像生成機能512は、シーケンスコントローラ34から送信されるMR信号に対して、逆フーリエ変換等の再構成処理を施すことでMR画像を元画像として生成し(ステップST2)、元画像をメモリ52に記憶させる。
撮像制御機能511は、シーケンスコントローラ34を駆動させて、パルスシーケンスを実行し、収集したMR信号に基づいて、画像生成機能512に対してMR画像を生成させる。
続いて、画像取得機能513は、メモリ52から元画像を取得する(ステップST3)。元画像は、図4(A)に示される。元画像にはリンギングアーチファクトは生じていない。続いて、第1拡大画像生成機能514は、ステップST3によって取得された元画像を、第1の補間方法であるk空間データの外縁部に0詰めを行う補間法により拡大した第1の拡大画像を生成し(ステップST4)、第1の拡大画像をメモリ52に記憶させる。
例えば、第1拡大画像生成機能514は、入力インターフェース53を介した操作者により256×256マトリクスサイズの元画像の拡大操作を受け付けると、元画像に対するk空間データの外縁部に0詰めを行う補間により、384×384マトリクスサイズの第1の拡大画像を生成する。第1の拡大画像は、図4(B)に示される。図4(B)の画像における破線部分は、リンギングアーチファクト成分を模式的に示している。
図5は、k空間データの外縁部に0詰めを行う補間によるマトリクスサイズの拡大を説明するための図である。
図5(A)~(D)の左側、つまり、図5(A),(C)は、k空間における信号強度、つまり、k空間データを示す。一方で、図5(A)~(D)の右側、つまり、図5(B),(D)は、実空間における輝度値、つまり、実空間データを示す。図5(A)~(D)における左右は、左側のk空間データを逆フーリエ変換すると右側の実空間データに変換され、右側の実空間データをフーリエ変換すると左側のk空間データに変換される関係である。また、図5(D)は、k空間データの外縁部に0詰めを行う補間により生成された第1拡大画像の実空間データを示す。
図5(A)は、連続関数であるk空間データが離散化された場合のデータを示す。図5(A)は、例えば、kx方向及びky方向に配列された256×256マトリクスサイズの2次元k空間データをkx方向から見た図である。図5(A)の離散化されたデータ高周波成分をゼロ詰めして高周波成分の打ち切りを行うことで拡大マトリクスサイズの配列に整序すると、図5(C)のk空間データが得られる。図5(C)に示すk空間データの数は、例えば、元の256個のk空間データの両外側にそれぞれ64個のゼロが付加され、ゼロも含めて合計384個となっている。2次元で考えると、ゼロを付加した後のk空間データの合計数は、384×384個となっている。このk空間データを逆フーリエ変換することにより、図5(D)に示す384×384マトリクスサイズの実空間データをもつ第1の拡大画像が生成される。
k空間では外縁部に0詰めを行うため、本来の連続的な波形が打ち切られることになる。その結果、図5(D)に示すように、第1の拡大画像には、高周波成分の打ち切りによる縞模様のリンギングアーチファクトが生じることになる。
図3及び図4の説明に戻って、縮小画像生成機能515は、ステップST4によって生成された第1の拡大画像を、第2の補間方法であるバイリニア補間法により、元画像と同じマトリクスサイズに縮小した縮小画像を生成する(ステップST5)。例えば、縮小画像生成機能515は、384×384マトリクスサイズの第1の拡大画像のバイリニア補間法による補間により、256×256マトリクスサイズの縮小画像を生成する。縮小画像は、図4(C)に示される。
差分画像生成機能516は、ステップST3によって取得された元画像と、ステップST5によって生成された縮小画像との差分をとって差分画像を生成する(ステップST6)。差分画像は、図4(D)に示される。
拡大差分画像生成機能517は、差分画像生成機能516によって生成された差分画像を、第2の補間方法であるバイリニア補間により拡大して、第1の拡大画像と同じマトリクスサイズである拡大差分画像を生成する(ステップST7)。拡大差分画像は、図4(E)に示される。
図6は、バイリニア補間によるマトリクスサイズの拡大を説明するための図である。
図6は、拡大差分画像のうち、輝度値の変化が大きい部分の実空間データを示す。仮に差分画像に対して再びフーリエ変換を行い、k空間データの外縁部に0詰めを行う補間を行うと、図6の細い実線に示す実空間データが得られることになる。一方で、差分画像に対してバイリニア補間を行うと、図6の太い実線に示す実空間データが得られることになる。
バイリニア補間は線形補間なので点列を滑らかに曲線的に補間することはできないものの、k空間データの外縁部に0詰めを行う補間法に比べれば、補間関数の特性に起因する本来の値(図6中の一点破線が示す第1の拡大画像の実空間データ)からのズレは小さい。差分画像に対してバイリニア補間でマトリクスサイズを拡大することで、差分画像をk空間データの外縁部に0詰めを行う補間法によりマトリクスサイズを拡大した場合におけるオーバーシュートやアンダーシュートの影響を抑えることができる。つまり、k空間データの外縁部に0詰めを行う補間とは異なるバイリニア補間により、第1の拡大画像のリンギングアーチファクト成分のみを忠実に再現した拡大差分画像を生成することができ、後述する第1の拡大画像と拡大差分画像との差分処理によりリンギングアーチファクト成分の消え残りを極力低減させることができる。
図3及び図4の説明に戻って、第2拡大画像生成機能518は、ステップST4によって生成された第1の拡大画像と、ステップST7によって生成された拡大差分画像との差分をとって第2の拡大画像を生成する(ステップST8)。第2の拡大画像は、図4(F)に示される。第2の拡大画像は、拡大差分画像のリンギングアーチファクト成分が抑制された画像である。
上述した画像処理装置(コンソール50)によれば、元画像のマトリクスサイズを拡大する際、異なる補間方法(例えば、k空間データの外縁部に0詰めを行う補間法及びバイリニア補間法)で得た拡大画像の差分からリンギングアーチファクトの成分を抽出でき、リンギングアーチファクトが抑制された第2の拡大画像を提供することができる。
(第1の変形例)
以上では、第1拡大画像生成機能514が、画像取得機能513によって取得された撮像時のマトリクスサイズの元画像を一旦k空間データに戻し、k空間データを第1の補間方法により逆フーリエ変換することで第1の拡大画像を生成する場合、いわゆる再々構成の場合について説明した。この場合、操作者がディスプレイ54に表示された元画像を参照した後のマトリクスサイズの拡大操作に従って、元画像をフーリエ変換して得られるk空間データから第1の拡大画像を生成することができる。しかし、その場合に限定されるものではない。元画像をk空間データに戻すのではなく、収集されたk空間の生データを第1の補間方法により逆フーリエ変換することで第1の拡大画像を生成してもよい。
図7は、コンソール50の機能を示すブロック図である。
図7は、図2に示す機能の変形例である。図7の図2との異なる点は、処理回路51がプログラムを読み出して実行することで、第1拡大画像生成機能514Aとして機能する点である。
第1拡大画像生成機能514Aは、撮像制御機能511が撮像装置10を制御することによって収集されたk空間データに基づいて、第1の補間方法により拡大した第1の拡大画像を生成する機能を含む。例えば、第1拡大画像生成機能514Aで用いられる第1の補間方法は、第1拡大画像生成機能514と同様に、k空間データの外縁部に0詰めを行う補間法である。つまり、第1拡大画像生成機能514Aは、元画像をフーリエ変換してk空間データに戻す必要はない。
第1拡大画像生成機能514Aは、シーケンスコントローラ34から送信されるMR信号としてのk空間データを第1の補間方法により逆フーリエ変換することで、撮像時のマトリクスサイズより拡大された第1の拡大画像を生成する。この場合、画像生成機能512がk空間の生データから元画像を生成する際に、ほぼ同時に第1拡大画像生成機能514Aがk空間の生データから第1の拡大画像を生成することができる。
上述した画像処理装置(コンソール50)の第1の変形例によれば、元画像よりマトリクスサイズが大きい画像を生成する際、異なる補間方法(例えば、k空間データの外縁部に0詰めを行う補間法及びバイリニア補間法)により、リンギングアーチファクト成分が効果的に抑制された第2の拡大画像を提供することができる。
(第2の変形例)
以上では、機能515~517により、第1の拡大画像から拡大差分画像を生成することで、第2拡大画像生成機能518が第1の拡大画像と拡大差分画像との差分により第2の拡大画像を生成する場合について説明した。しかし、その場合に限定されるものではない。
例えば、第2拡大画像生成機能518によって過去に生成された過去の第2の拡大画像をメモリ52に記憶させておく。そして、第2拡大画像生成機能518は、メモリ52から過去の第2の拡大画像を取得し、過去の第2の拡大画像と、新たな第1の拡大画像とを比較することで新たな第2の拡大画像を生成する。つまり、その場合、2回目以降の拡大処理については機能515~517による処理が不要である。
具体的には、第2拡大画像生成機能518は、過去の第2の拡大画像をフーリエ変換してk空間データ(以下、「過去の第2のk空間データ」という)を生成し、新たな第1の拡大画像をフーリエ変換してk空間データ(以下、「新たな第1のk空間データ」という)を生成する。第2拡大画像生成機能518は、過去の第2のk空間データと新たな第1のk空間データとを比較することでk空間フィルタを算出し、k空間フィルタを新たな第1のk空間データに適用して補正後の第1のk空間データを生成する。第2拡大画像生成機能518は、補正後のk空間データを逆フーリエ変換することで、新たな第2の拡大画像を生成する。
図8は、k空間フィルタの算出方法を説明するための図である。
図8は、過去の第2のk空間データの一部(細い実線)と、新たな第1のk空間データの一部(破線)とをグラフとして示す。第2拡大画像生成機能518は、これらk空間データのプロファイルの近似式により新たな第1のk空間データに対する重み付けに最適なラインプロファイル(太い実線)を求め、これをk空間フィルタとする。
なお、第2拡大画像生成機能518によって過去に生成された過去の第2の拡大画像が複数、メモリ52に記憶されている場合、第2拡大画像生成機能518は、複数の過去の第2の拡大画像から選択された過去の第2の拡大画像と、新たな第1の拡大画像とを比較することで新たな第2の拡大画像を生成すればよい。選択方法については、第2拡大画像生成機能518は、新たな第1の拡大画像のk空間データのプロファイルに近いk空間データのプロファイルをもつ過去の第2の拡大画像を選択することが好適である。
上述した画像処理装置(コンソール50)の第2の変形例によれば、画像縮小処理や、差分画像の生成処理や、拡大差分画像の生成処理が不要となるので、簡易な方法で、リンギングアーチファクトが効果的に抑制された第2の拡大画像を提供することができる。
なお、ここまでは、主に拡大処理について説明してきたが、上述した実施形態の補間方法は、縮小処理にもほぼ同様に適用できる。例えば、元画像のサイズを2/3に縮小する場合には、上述した補間方法を用いて元画像のサイズを、一旦、4/3倍に拡大し、その後、隣接する2画素のうち一方の画素を間引けばよい。
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態に係る画像処理装置の全体構成及び機能を示す概略図である。
図9は、医用画像システム上に設けられる画像処理装置60を示す。画像処理装置60は、コンピュータとしての一般的な構成、つまり、処理回路61と、メモリ62と、入力インターフェース63と、ディスプレイ64と、ネットワークインターフェース65とを備える。
なお、処理回路61と、メモリ62と、入力インターフェース63と、ディスプレイ64の構成は、図1に示す処理回路51と、メモリ52と、入力インターフェース53と、ディスプレイ54の構成とそれぞれ同等であるので、説明を省略する。
メモリ62は、ネットワークインターフェース65を介して受信されたMR画像等の画像を記憶することができる。
ネットワークインターフェース65は、ネットワークの形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。ネットワークインターフェース65は、この各種プロトコルに従って、画像処理装置60と、外部の医用画像管理装置(画像サーバ)や、MRI装置等の医用画像生成装置とを接続する。この接続には、電子ネットワークを介した電気的な接続等を適用することができる。ここで、電子ネットワークとは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、無線/有線の病院基幹のLAN(Local Area Network)やインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワーク及び衛星通信ネットワーク等を含む。
処理回路61は、メモリ62に記憶された、又は、処理回路61内に直接組み込まれたプログラムを読み出して実行することで、画像取得機能513と、第1拡大画像生成機能514(又は514A)と、縮小画像生成機能515と、差分画像生成機能516と、拡大差分画像生成機能517と、第2拡大画像生成機能518とを実現する。なお、図9において、図2の機能と同一機能については同一符号を付して説明を省略する。
なお、画像処理装置60の機能513~518により処理される画像は、MR画像に限定されるものではない。例えば、機能513~518により処理される画像は、X線画像、X線CT(Computed Tomography)画像、単純X線画像(投影画像)、超音波画像等であってもよい。
また、処理回路61の動作は、図3に示すステップST3~ST8と同等であるので、説明を省略する。さらに、上述した第1の変形例についても、画像処理装置60に適用できる。その場合、画像処理装置60が、MRI装置によって生成されたk空間データを外部から取得してメモリ62に記憶させておけば、第1拡大画像生成機能514Aは、k空間データを第1の補間方法により拡大することで第1の拡大画像を生成することができる。つまり、第1拡大画像生成機能514Aは、元画像をフーリエ変換してk空間データに戻す必要はない。また、上述した第2の変形例についても、画像処理装置60に適用できる。
上述した画像処理装置60によれば、元画像のマトリクスサイズを拡大する際、又は、元画像よりマトリクスサイズが大きい画像を生成する際、異なる補間方法(例えば、k空間データの外縁部に0詰めを行う補間法及びバイリニア補間法)で得た拡大画像の差分から、リンギングアーチファクトの成分を抽出でき、リンギングアーチファクトが効果的に抑制された第2の拡大画像を提供することができる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、リンギングアーチファクトが抑制された画像を提供することができる。
なお、撮像制御機能511は、「撮像制御部」の一例である。画像生成機能512は、「画像生成部」の一例である。画像取得機能513は、「画像取得部」の一例である。第1拡大画像生成機能514,514Aは、「第1拡大画像生成部」の一例である。縮小画像生成機能515は、「縮小画像生成部」の一例である。差分画像生成機能516は、「差分画像生成部」の一例である。拡大差分画像生成機能517は、「拡大差分画像生成部」の一例である。第2拡大画像生成機能518は、「第2拡大画像生成部」の一例である。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。