以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、「第1前段フィルタ19A」および「第2前段フィルタ19B」のように、同一、類似または対応する構成について、異なる大文字のアルファベットを付すことがある。また、この場合において、単に「前段フィルタ19」のように、大文字のアルファベットを省略して両者を区別しないことがある。
第2実施形態以降においては、基本的に、既に説明された実施形態との相違部分のみについて説明する。特に言及がない事項については、既に説明された実施形態と同様とされてよい。第2実施形態以降において、既に説明された実施形態の構成と同一又は類似する構成について、既に説明された実施形態の構成に付された符号を付すことがある。既に説明された実施形態の構成に対応(類似)する構成に対して、既に説明された実施形態の構成に付された符号とは異なる符号を付した場合においても、特に言及のない事項については、既に説明された実施形態の構成と同様とされてよい。
[第1実施形態]
(受信装置の全体構成)
図1は、第1実施形態に係る受信装置1の要部構成を示す模式図である。
受信装置1は、例えば、電波を受信して所定の処理を実行する装置として構成されている。受信装置1は、例えば、電波の受信側から順に、アンテナ3、受信モジュール5、RF-IC(Radio Frequency Integrated Circuit)7およびBB-IC(Base Band Integrated Circuit)9が接続されて構成されている。
アンテナ3は、受信した無線信号(電波)を電気信号に変換する。受信モジュール5は、アンテナ3からの電気信号を増幅するとともに、当該電気信号から所定の通過帯域(後述するように複数の通過帯域)の電気信号を取り出して出力する。RF-IC7は、例えば、受信モジュール5からの電気信号に対して、復調、周波数の引き下げ、及びデジタル化を行う。BB-IC9は、例えば、RF-IC7からの信号に対して種々の処理を行う。
受信装置1は、種々の用途に用いられてよく、その用途に応じて、搬送周波数(受信モジュール5の通過帯域の周波数)、ベースバンドの周波数およびBB-IC9の処理内容等が決定されてよい。例えば、受信装置1は、GPS(Global Positioning System)等のGNSS(Global Navigation Satellite System)に用いられるものである。受信モジュール5の通過帯域は、例えば、GNSSの規格に従って設定されてよく、一例として、1000MHz以上3000MHz以下である。
なお、この例では、受信モジュール5の出力側にRF-IC7とBB-IC9とが接続された場合を例に説明したが、この限りではない。例えば、RF-IC7とBB-IC9とが一体化されたICを用いてもよい。
(受信モジュールの構成)
受信モジュール5は、例えば、アンテナ3側から順に、前段増幅器11、前段フィルタデバイス13、後段増幅器15Aおよび後段増幅器15Bおよび後段フィルタデバイス17を有している。
前段増幅器11は、入力端子11aおよび出力端子11bを有しており、入力端子11aに入力された電気信号を増幅して出力端子11bから出力する。入力端子11aは、アンテナ3に接続されている。前段増幅器11は、例えば、いわゆる低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)によって構成されてよい。LNAのNF(Noise Figure)は、例えば、0.5dB以上1dB以下である。
なお、前段増幅器11の構成は、種々の公知の構成と同様とされてよい。特に図示しないが、前段増幅器11は、例えば、電源端子、入力信号の基準電位端子、出力信号の基準電位端子、制御用(例えば前段増幅器11のON・OFF用)端子を有している。入力端子11aは、図示の例では1つだが、2つであってもよい。このように増幅器の構成が公知の構成とされてよいことは、後段増幅器15についても同様である。
前段フィルタデバイス13は、前段増幅器11の出力端子11bに接続された複数(図示の例では4つ)の第1前段フィルタ19A~第4前段フィルタ19Dを有している。各前段フィルタ19は、入力された電気信号から所定の周波数帯(通過帯域)の信号を取り出して出力する。複数の前段フィルタ19の通過帯域は互いに異なっている。
後段増幅器15は、入力端子15aおよび出力端子15bを有しており、入力端子15aに入力された電気信号を増幅して出力端子15bから出力する。後段増幅器15は、例えば、前段増幅器11と同様に、LNAによって構成されている。なお、前段増幅器11、後段増幅器15Aおよび後段増幅器15Bは、互いに同一の構成(同一の製品)であってもよいし、互いに異なる構成であってもよい。
後段増幅器15Aの入力端子15aは、第1前段フィルタ19A~第3前段フィルタ19Cの出力端子25(図2参照)に接続されている。従って、第1前段フィルタ19A~第3前段フィルタ19Cそれぞれの通過帯域の電気信号は、1つに纏められて後段増幅器15Aに入力される。なお、図2では、出力端子25は、第1前段フィルタ19A~第3前段フィルタ19Cのそれぞれに設けられているが、これら3つの前段フィルタ19に共通して1つの出力端子25が設けられていてもよい。一方、後段増幅器15Bの入力端子15aは、第4前段フィルタ19Dの出力端子25のみに接続されている。
後段フィルタデバイス17は、後段増幅器15の出力端子15bに接続された複数(図示の例では4つ)の第1後段フィルタ21A~第4後段フィルタ21Dを有している。各後段フィルタ21は、入力された電気信号から所定の周波数帯(通過帯域)の信号を取り出して出力する。複数の後段フィルタ21の通過帯域は互いに異なっている。
複数の後段フィルタ21の数は、例えば、複数の前段フィルタ19の数と同一である。また、各後段フィルタ21の通過帯域は、符号に同一の大文字のアルファベットを付した前段フィルタ19の通過帯域と同一である。すなわち、第1後段フィルタ21Aの通過帯域は、第1前段フィルタ19Aの通過帯域と同一である。第2後段フィルタ21Bの通過帯域は、第2前段フィルタ19Bの通過帯域と同一である。第3後段フィルタ21Cの通過帯域は、第3前段フィルタ19Cの通過帯域と同一である。第4後段フィルタ21Dの通過帯域は、第4前段フィルタ19Dの通過帯域と同一である。互いに同一の通過帯域の前段フィルタ19と後段フィルタ21とは、互いに同一の構成であってもよいし、互いに異なる構成であってもよい。
第1後段フィルタ21A~第3後段フィルタ21Cは、それぞれ後段増幅器15Aの出力端子15bに接続されている。従って、第1前段フィルタ19A~第3前段フィルタ19Cそれぞれの通過帯域の電気信号は、後段増幅器15Aによって共に増幅された後、再度、第1後段フィルタ21A~第3後段フィルタ21Cによって、これらの通過帯域の信号に分けられる。一方、第4後段フィルタ21Dは、後段増幅器15Bの出力端子15bに接続されている。
複数の後段フィルタ21は、例えば、出力側が互いに接続されている。従って、複数の後段フィルタ21によってフィルタリングされた複数の通過帯域の電気信号は、1つに纏められてRF-IC7に入力される。
以上のように、受信モジュール5全体は、入力された電気信号から複数の通過帯域の信号を抽出し、これを纏めて出力する。この際、電気信号の増幅も行われる。また、信号の増幅および抽出は、受信モジュール5内において2段階で行われる。なお、前段フィルタデバイス13は、デマルチプレクサとして捉えられてよく、後段フィルタデバイス17または受信モジュール5(前段フィルタデバイス13および後段フィルタデバイス17の組み合わせ)はマルチプレクサと捉えられてよい。
RF-IC7および/またはBB-IC9は、不図示のデマルチプレクサを含んでおり、入力された電気信号を複数の前段フィルタ19(後段フィルタ21)の通過帯域(BB-IC9の場合は対応する通過帯域等)の信号に分波する。そして、BB-IC9は、分波された信号を選択的に利用する処理、および/または分波された信号を併用する処理を実行する。
(フィルタデバイスの構成)
図2は、前段フィルタデバイス13の要部構成を示す模式図である。
前段フィルタデバイス13は、既述の複数の前段フィルタ19と、複数の前段フィルタ19がそれぞれ接続されている共通端子23と、複数の前段フィルタ19毎に設けられた出力端子25とを有している。複数の前段フィルタ19は、共通端子23から見て互いに分岐している。
なお、図示の例では、共通端子23と複数の前段フィルタ19との間の配線(符号省略)が分岐しているが、複数の前段フィルタ19から延びる複数の配線が互いに独立に共通端子23に接続されていてもよい。出力端子25は、既述のように一部が共用されてもよく、また、本実施形態とは異なり、全部が共用されても構わない。
各前段フィルタ19は、例えば、いわゆるラダー型共振子フィルタによって構成されている。なお、図2では、4つの前段フィルタ19を代表して、第1前段フィルタ19Aおよび第2前段フィルタ19Bについて、ラダー型共振子フィルタの構成を示している。
ラダー型共振子フィルタは、共通端子23と出力端子25との間に直列に接続された複数(1つでも可)の直列共振子27Sと、その直列のライン(直列腕)と基準電位とを接続する複数(1つでも可)の並列共振子27P(並列腕)とを有している(以下、単に共振子27といい、両者を区別しないことがある。)。換言すれば、前段フィルタ19は、ラダー型に接続された複数の共振子27を有している。
複数の直列共振子27Sは、基本的に、共振周波数が互いに同等とされるとともに、反共振周波数が互いに同等とされている。複数の並列共振子27Pは、基本的に、共振周波数が互いに同等とされるとともに、反共振周波数が互いに同等とされている。また、直列共振子27Sの共振周波数と並列共振子27Pの反共振周波数とは概ね同等とされている。これにより、並列共振子27Pの共振周波数から直列共振子27Sの反共振周波数までの周波数範囲よりも若干狭い範囲を通過帯域とするフィルタが構成される。
なお、直列共振子27Sの数および並列共振子27Pの数は、前段フィルタ19毎に適宜に設定されてよい。また、最も共通端子23側または最も出力端子25側の共振子27が、直列共振子27Sおよび並列共振子27Pのいずれであるかも、前段フィルタ19毎に適宜に設定されてよい。
特に図示しないが、後段フィルタデバイス17は、例えば、図2に示す前段フィルタデバイス13と同様に、ラダー型共振子フィルタによって構成されてよい。ただし、後段フィルタデバイス17の共通端子23は、RF-IC7に接続される。また、後段フィルタデバイス17において、前段フィルタデバイス13の出力端子25に相当する端子は、入力端子として機能し、後段増幅器15の出力端子15bに接続される。共振子27の数および配置は、後段フィルタ21毎に適宜に設定されてよい。
(共振子の構成)
図3は、共振子27の要部構成を示す模式的な平面図である。
なお、共振子27は、いずれの方向が上方または下方とされてもよいが、以下では、便宜的に、D1軸、D2軸およびD3軸からなる直交座標系を定義するとともに、D3軸の正側を上方として、上面、下面等の用語を用いることがある。また、平面視または平面透視という場合、特に断りがない限りは、D3軸方向に見ることをいう。なお、D1軸は、後述する圧電基板の上面に沿って伝搬するSAWの伝搬方向に平行になるように定義され、D2軸は、圧電基板の上面に平行かつD1軸に直交するように定義され、D3軸は、圧電基板の上面に直交するように定義されている。
共振子27は、例えば、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)を利用するSAW共振子によって構成されている。より具体的には、共振子27は、例えば、いわゆる1ポートSAW共振子によって構成されており、紙面両側に図示された2つの配線29の一方から電気信号が入力されると所定の周波数において共振を生じ、その共振を生じた信号を2つの配線29の他方へ出力する。
共振子27は、例えば、圧電基板31と、圧電基板31の上面に設けられたIDT(Inter Digital Transducer)電極33と、IDT電極33の両側に位置する1対の反射器35とを含んでいる。
圧電基板31は、例えば、圧電性を有する単結晶によって構成されている。単結晶は、例えば、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)または水晶(SiO2)からなる。圧電基板31のカット角、平面形状および各種寸法は適宜に設定されてよい。圧電基板31の下面には、温度変化による共振子27の特性変化を補償するための基板が貼り合わされていてもよい。
IDT電極33および反射器35は、圧電基板31上に設けられた層状導体によって構成されている。IDT電極33および反射器35は、例えば、互いに同一の材料および厚さで構成されている。これらを構成する層状導体は、例えば、Al等の金属である。層状導体は、複数の金属層から構成されていてもよい。層状導体の厚さは、共振子27に要求される電気特性等に応じて適宜に設定される。一例として、層状導体の厚さは50nm~600nmである。
IDT電極33は、1対の櫛歯電極37を含んでいる。なお、視認性を良くするために、一方の櫛歯電極37にはハッチングを付している。各櫛歯電極37は、バスバー39と、バスバー39から互いに並列に延びる複数の電極指41と、複数の電極指41間においてバスバー39から突出するダミー電極43とを含んでいる。1対の櫛歯電極37は、複数の電極指41が互いに噛み合うように(交差するように)配置されている。
各電極指41は、例えば、一定の幅でSAWの伝搬方向に直交する方向(D2軸方向)に直線状に延びている。一方の櫛歯電極37の複数の電極指41と他方の櫛歯電極37の複数の電極指41とは、SAWの伝搬方向において、基本的には交互に配置されている。複数の電極指41のピッチp(例えば互いに隣り合う2本の電極指41の中心間距離)は、IDT電極33内において基本的に一定である。
なお、電極指41の本数、長さおよび幅等は、共振子27に要求される電気特性等に応じて適宜に設定されてよい。なお、図3は模式図であることから、電極指41の本数は少なく示されている。IDT電極33は、いわゆるアポダイズが施されてもよいし、ダミー電極43を有さないものであってもよいし、IDT電極33の一部に狭ピッチ部または広ピッチ部を有するものであってもよい。
反射器35は、例えば、SAWの伝搬方向に直交する方向に並列に延びる複数のストリップ電極(符号省略)を有する格子状に形成されている。そのピッチは、IDT電極33の電極指41のピッチと略同等である。反射器35とIDT電極33との間隔は、例えば、電極指41のピッチと略同等である。各反射器35は、例えば、電気的に浮遊状態とされてもよいし、基準電位が付与されてもよい。
なお、特に図示しないが、圧電基板31の上面は、IDT電極33および反射器35の上から、SiO2またはSi3N4等からなる保護膜によって覆われていてもよい。保護膜は、単にIDT電極33等の腐食を抑制するためのものであってもよいし、温度補償に寄与するものであってもよい。また、保護膜が設けられる場合等において、IDT電極33および反射器35の上面または下面には、SAWの反射係数を向上させるために、絶縁体または金属からなる付加膜が設けられてもよい。
IDT電極33によって圧電基板31の上面に電圧が印加されることによって圧電基板31の上面をD1軸方向に伝搬するSAWが励振され、ピッチpを半波長とするSAWの定在波が立つ。この定在波により生じた信号は、IDT電極33によって取り出される。このようにして、共振子27における共振が利用される。共振子27の共振周波数は、定在波(ピッチpを半波長とするSAW)の周波数と概ね同等となる。反共振周波数は、共振周波数と容量比とによって決定され、容量比は、主として圧電基板31によって規定され、電極指41の本数、交差幅または膜厚等によって調整される。
(圧電基板の共用)
図2に戻る。この図では、紙面左上の直列共振子27Sにおいて符号を付しているように、1つの櫛歯電極37を2叉のフォーク形状で模式的に示し、1つの反射器35を屈曲部を有する直線で模式的に示している。また、圧電基板31も模式的に示されている。
各前段フィルタ19において、複数の共振子27は、例えば、共通の圧電基板31に設けられている。また、複数の前段フィルタ19は、例えば、共通の圧電基板31に設けられている。すなわち、複数の前段フィルタ19は、圧電基板31を共用しつつ、それぞれのIDT電極33を有している。共通端子23および出力端子25は、例えば、圧電基板31上に設けられている。
なお、圧電基板31の平面視における、共通端子23、出力端子25および複数の共振子27の配置は、適宜に設定されてよい。図2は、あくまで模式図であり、同図のように複数の前段フィルタ19が1列に並んでいる必要は無いし、各前段フィルタ19において、直列共振子27Sが直線状に並んでいる必要も無いし、各前段フィルタ19において複数の並列共振子27Pが複数の直列共振子27Sに対して同一側(紙面下方側)に位置している必要も無い。
特に図示しないが、後段フィルタデバイス17も同様である。すなわち、各後段フィルタ21において、複数の共振子27は、例えば、共通の圧電基板31に設けられている。また、複数の後段フィルタ21は、例えば、共通の圧電基板31に設けられている。なお、前段フィルタデバイス13と後段フィルタデバイス17とは、例えば、別個の圧電基板31に設けられている。ただし、これらを共通の圧電基板31に設けることも可能である。
(電極膜厚)
図4は、圧電基板31の上面の一部を示す断面図である。この図では、第1前段フィルタ19Aの一部と、第4前段フィルタ19Dの一部とを示している。
一般には、同一の圧電基板31上に形成されるIDT電極33および反射器35の膜厚(以下、電極膜厚)は、複数の共振子27間で同一である。ただし、図示のように、電極膜厚は、複数の前段フィルタ19間で異なっていてもよい。具体的には、例えば、少なくとも1つの前段フィルタ19の電極膜厚は、当該前段フィルタ19よりも通過帯域の周波数が低い(別の観点ではピッチpが大きい)他の少なくとも1つの前段フィルタ19の電極膜厚よりも薄くされてよい。
後述するように、本実施形態では、第4前段フィルタ19Dの通過帯域の周波数は、第1前段フィルタ19A~第3前段フィルタ19Cの通過帯域の周波数よりも高い。すなわち、第4前段フィルタ19Dのピッチp4は、第1前段フィルタ19Aのピッチp1よりも小さい。そして、図4では、第4前段フィルタ19Dの電極膜厚t4は、第1前段フィルタ19Aの電極膜厚t1よりも薄くされている。その差は、例えば、20nm以上200nm以下である。別の観点では、厚い電極膜厚t4に対して、電極膜厚t1が1.05~1.50としてもよい。なお、各周波数帯に最適な電極膜厚は圧電基板材料やカット角により異なるが、例えばタンタル酸リチウム(LT)基板42°YカットX伝搬であれば、概ね波長(ピッチの2倍)の6%~9%で設定される。具体的には、ピッチp4は1.23μm~1.29μmであり、電極膜厚t4は200nmとし、ピッチp1は1.58μm~1.73μmであり、電極膜厚t1は250nmとする。このように、通過帯域周波数の差によりピッチが異なり、電極膜厚も適切に設定されるが、ピッチと電極膜厚とを調整して、最適な組み合わせを設定することで、通過帯域が大きく異なり、本来LT基板のカット角を異ならせて作製するフィルタ19,21を同一基板に作製することができる。また、同一カット角の基板に複数のフィルタを作りこんでも、このように、電極膜厚を20nm以上異ならせることで、フィルタ特性を良好に保つことができる。
このような電極膜厚の差は、例えば、第1前段フィルタ19AのIDT電極33と、第4前段フィルタ19DのIDT電極33とを別個のプロセスで形成したり、第1前段フィルタ19AのIDT電極33の下部と、第4前段フィルタ19DのIDT電極33とを同一のプロセスで形成し、その後に、第1前段フィルタ19AのIDT電極33の上部を形成したりすることにより実現されてよい。膜厚が互いに異なるIDT電極33は、例えば、膜厚が異なるだけで、互いに同一の材料によって構成されている。
なお、第1前段フィルタ19A~第3前段フィルタ19Cの電極膜厚は、通過帯域の周波数が高いものほど電極膜厚が薄くなるように互いに異なっていてもよいし、これらのうち2つまたは3の前段フィルタ19の電極膜厚は互いに同一とされていてもよい。また、特に図示しないが、後段フィルタデバイス17においても、同様に、少なくとも1つの後段フィルタ21の電極膜厚は、当該後段フィルタ21よりも通過帯域の周波数が低い後段フィルタ21の電極膜厚よりも薄くされてよい。
(フィルタデバイスの通過帯域)
図5(a)および図5(b)は、前段フィルタデバイス13の通過帯域およびインピーダンスを示す図である。これらの図において、横軸fは周波数を示している。図5(a)において、縦軸|Z|はインピーダンスの絶対値を示している。図5(b)において、縦軸Re(Z)はインピーダンスの実部の値を示している。
これらの図では、第1前段フィルタ19Aの通過帯域B1、第2前段フィルタ19Bの通過帯域B2、第3前段フィルタ19Cの通過帯域B3および第4前段フィルタ19Dの通過帯域B4が示されている。図示の例では、周波数が低い順から、通過帯域B1、B2、B3、B4となっている。
また、図示の例では、相対的に、通過帯域B1~B3は互いに近く、通過帯域B4は通過帯域B1~B3から比較的離れている。一例として、通過帯域B1~B3は、1100MHz以上1300MHz以下の範囲に収まっており、通過帯域B4は、1500MHz以上1600MHz以下の範囲に収まっている。また、例えば、通過帯域B1~B3が収まっている周波数の幅は、これらのうち最も通過帯域B4に近いもの(図示の例では通過帯域B3)と、通過帯域B4との間の幅(周波数差)以下である。また、通過帯域B4が通過帯域B1~B3から比較的離れているかどうかは、隣接する各バンドの間隔を比較したときに、通過帯域B4と近接するバンド(通過帯域B3)との間隔が他の隣接バンド間隔に比べ大きくなっていることで判別することができる。
(フィルタデバイスのインピーダンス)
図5(a)において、プロットP1~P4は、前段フィルタデバイス13のインピーダンスの絶対値を示している。図5(b)において、プロットP1~P4は、前段フィルタデバイス13のインピーダンスの実部の値を示しており、図5(a)のプロットP1~P4に対応している。プロットP1~P4で示されているインピーダンスは、共通端子23から複数の前段フィルタ19側を見たインピーダンスである。別の観点では、図示のインピーダンスは、複数の前段フィルタ19全体としてのインピーダンスである。
前段フィルタデバイス13のインピーダンスは、周波数依存性を有している。ただし、一般には、前段フィルタデバイス13のインピーダンスは、少なくとも複数の通過帯域B1~B4における値が互いに同一になるように設定される。一方、図5(a)および図5(b)に示すように、本実施形態では、前段フィルタデバイス13のインピーダンスは、少なくとも1つの通過帯域における値が、他の少なくとも1つの通過帯域における値と異なっている。
より具体的には、インピーダンスの絶対値|Z|に着目すると、図5(a)に示す通り、図示の例では、4つの通過帯域B1~B4におけるインピーダンスの絶対値が互いに異なっている。また、最も周波数が高い通過帯域B4におけるインピーダンスの絶対値は、他の少なくとも1つの通過帯域(図示の例では他の全ての通過帯域)のインピーダンスの絶対値よりも小さい。
また、インピーダンスの実部Re(Z)(単位:Ω,すなわち抵抗値)を用いて評価すると、図5(b)に示す通り、最も周波数が高い通過帯域B4におけるインピーダンスの実部Re(Z)は、他の少なくとも1つの通過帯域(図示の例では他の全ての通過帯域)のインピーダンスの実部Reよりも大きな値となっている。
なお、厳密には、インピーダンスの値は、通過帯域内においても変化する。単に通過帯域のインピーダンスという場合、特に断りがない限りは、代表値をいうものとする。代表値は、例えば、通過帯域の中央の周波数におけるインピーダンスである。
図6は、スミスチャートであり、前段フィルタデバイス13のインピーダンスの値を反射係数平面において示している。
インピーダンスの実数部および虚数部の等価曲線に付した値は、正規化された値である。正規化された値の1は、適宜な大きさ(Ω)でよいが、例えば、50Ωである。プロットP1~P4は、図5(a)および図5(b)のプロットP1~P4に対応するものであり、前段フィルタデバイス13のインピーダンスについて、通過帯域B1~B4における値を示している。
前段フィルタデバイス13のインピーダンスは、既述のように、少なくとも1つの通過帯域における値が、他の少なくとも1つの通過帯域における値と異なっている。なお、この図からも理解されるように、本開示においてインピーダンスの値が異なるという場合、インピーダンスの絶対値が同一であっても、位相が異なる場合を含む。なお、インピーダンスの値が異なるといっても、製造上不可避の誤差に起因する相違は無視してよい。
より具体的には、例えば、相対的に、通過帯域B1~B3における値(P1~P3)は互いに近く、通過帯域B4における値(P4)は、通過帯域B1~B3における値から離れている。通過帯域B4における値(P4)と、通過帯域B1~B3における値(P1~P3)との反射係数平面における距離d1は、例えば、0.3以上である。逆に、通過帯域B1~B3の値の間の反射係数平面における距離は、例えば、0.2未満である。
なお、前段フィルタデバイス13のインピーダンスは、通過帯域B1~B4の値が互いに異なっていると述べた。しかし、図示の例では、反射係数平面において互いに近い値(P1~P3)は、第1の水準(同一の水準)に設定されており、これよりも離れている値(P4)は、第1の水準とは異なる第2の水準に設定されていると捉えられてもよい。同一の水準は、例えば、反射係数平面におけるインピーダンスの値の距離が0.25未満である。
なお、前段増幅器11の利得が最も大きくなる周波数をfxとすると、各フィルタの通過帯域の周波数とfxとの差分をとり、その差分の大きいフィルタは小さいフィルタに比べて、反射係数平面で正規化された値(1)からの距離を離している。具体的には、通過帯域B4に近い周波数帯で利得が高くなる前段増幅器11を用いた場合には、第1の水準と正規化された値との距離は、第2の基準と正規化された値との距離よりも大きくなっている。なお、各フィルタの通過帯域とfxとの比較を行なう際には、各フィルタの通過帯域の中心値で比較を行なってもよい。
虚数部の正負に着目すると、例えば、通過帯域B1~B3におけるインピーダンス(P1~P3)は、虚数部が正(すなわち誘導性)であり、通過帯域B4におけるインピーダンス(P4)は、虚数部が負(すなわち容量性)である。ただし、これらのインピーダンスは、虚数部が共に正または負であったり、上記とは正負が逆であったりしてもよい。
通過帯域毎のインピーダンスの値は、公知の種々の方法により設定されてよい。例えば、前段フィルタデバイス13の適宜な位置に、適宜な大きさのインダクタンスを有するインダクタ、および/または適宜な大きさの容量を有するキャパシタを設けることにより、通過帯域毎のインピーダンスの値が調整されてよい。また、IDT電極33の各種の寸法等を調整することによってインピーダンスの値が調整されてもよい。
なお、特に図示しないが、RF-IC7(共通端子)から見た後段フィルタデバイス17のインピーダンス、または後段増幅器15Aから見た第1後段フィルタ21A~第3後段フィルタ21C全体のインピーダンスは、通過帯域毎に異なっていてもよいし、2以上または全ての通過帯域で同等または同一水準であってもよい。
(インピーダンスの値の他の例)
図5(a)、図5(b)及び図6において、プロットP11~P14は、前段フィルタデバイス13のインピーダンスの値の他の例を示している。この例においても、通過帯域B1~B3におけるインピーダンスの値は互いに相対的に近く、通過帯域B4におけるインピーダンスの値は通過帯域B1~B3におけるインピーダンスの値から比較的離れている。また、通過帯域B1~B3におけるインピーダンスが誘導性である一方で、通過帯域B4におけるインピーダンスは容量性である。さらに、最も周波数が高い通過帯域B4におけるインピーダンスの実部の値は、他の少なくとも1つの通過帯域(図示の例では他の全ての通過帯域)のインピーダンスの実部の値よりも大きくなっている。ただし、この例では、プロットP1~P4とは異なり、最も周波数が高い通過帯域B4におけるインピーダンスの絶対値は、他の少なくとも1つの通過帯域(図示の例では他の全ての通過帯域)のインピーダンスの絶対値よりも大きくなっている。
以上のとおり、本実施形態では、前段フィルタデバイス13は、共通端子23と、複数の前段フィルタ19とを有している。複数の前段フィルタ19は、共通端子23に接続され、共通端子23から見て互いに分岐しており、互いに異なる複数の通過帯域B1~B4に対応している。共通端子23から複数の前段フィルタ19側を見たインピーダンスは、通過帯域B4における値と通過帯域B1(またはB2もしくはB3)における値とが異なっている。
別の観点では、実施形態では、受信モジュール5は、前段増幅器11と、前段増幅器11の出力端子11bに接続されている前段フィルタデバイス13とを有している。前段フィルタデバイス13は、複数の前段フィルタ19を有している。複数の前段フィルタ19は、出力端子11bに接続され、出力端子11bから見て互いに分岐しており、互いに異なる複数の通過帯域B1~B4に対応している。出力端子11bから前段フィルタデバイス13側を見たインピーダンスは、通過帯域B4における値と通過帯域B1(またはB2もしくはB3)における値とが異なっている。
従って、例えば、前段フィルタデバイス13よりも前段の素子(本実施形態では前段増幅器11)にとって好ましい後段側のインピーダンスが周波数によって異なる場合に、各通過帯域におけるインピーダンスを前段の素子にとって好ましい値にすることができる。
図7(a)~図7(d)および図8(a)~図8(d)は、上記のような作用を説明するための図である。
これらの図は、スミスチャートをベースとしており、プロットP1~P4は、図6と同様に、前段フィルタデバイス13のインピーダンスの、通過帯域B1~B4それぞれにおける値を示している。
また、図7(a)~図7(d)において、スミスチャート内の等高線図は、反射係数平面内の位置の変化に対する前段増幅器11の利得(Gain)の変化を示している。これらの図において、前段増幅器11の後段(ここでは前段フィルタデバイス13)のインピーダンスの値が矢印に沿って変化するほど、利得の値が大きくなる(利得が大きくなる。)。一方、図8(a)~図8(d)において、スミスチャート内の等高線図は、反射係数平面内の位置の変化に対する前段増幅器11のNFの変化を示している。これらの図において、前段増幅器11の後段(ここでは前段フィルタデバイス13)のインピーダンスの値が矢印に沿って変化するほど、NFの値が大きくなる(ノイズが大きくなる。)。
図7(a)および図8(a)の等高線図は、通過帯域B1における利得およびNFを示している。図7(b)および図8(b)の等高線図は、通過帯域B2における利得およびNFを示している。図7(c)および図8(c)の等高線図は、通過帯域B3における利得およびNFを示している。図7(d)および図8(d)の等高線図は、通過帯域B4における利得およびNFを示している。
これらの図に示すように、周波数によって、前段増幅器11の後段のインピーダンスと前段増幅器11の特性との関係は変化する。そして、前段フィルタデバイス13のインピーダンスは、通過帯域B1~B4間において互いに異なる値(P1~P4)に設定されることによって、いずれの通過帯域においても、利得が相対的に高くなるとともにNFが相対的に小さくなる値となっている。
別の観点では、本実施形態に係る前段フィルタデバイス13を設計する際には、インピーダンスの変化に対する前段増幅器11の特性の変化を通過帯域毎に調べ、各通過帯域において好適な特性が得られるようにインピーダンスを設定すればよい。前段フィルタデバイス13自体のインピーダンスが調整されることから、例えば、整合回路を単純化したり、または整合回路を無くしたりして、挿入損失を低減することができる。
また、本実施形態において、通過帯域B4は、複数(2以上または3以上)の通過帯域B1~B4のうち最も周波数が高い通過帯域である。前段フィルタデバイス13のインピーダンスは、通過帯域B4における絶対値が、他のいずれかの通過帯域(B1~B3)における絶対値よりも小さい、または大きい。
最も周波数が高い通過帯域は、前段フィルタデバイス13よりも前段の素子にとって、特性が良好になるインピーダンスが最も小さく、または大きくなりやすいと考えられる。実際、本願発明者の実験ではそのような傾向が現れており、図5~図8のプロットも実験結果に基づいている。従って、最も高い通過帯域B4におけるインピーダンスの絶対値を他の通過帯域におけるインピーダンスの絶対値よりも小さく、または大きくすることによって、前段フィルタデバイス13の全体として、インピーダンスが好適に設定される。
本実施形態では、前段フィルタデバイス13のインピーダンスは、通過帯域B4における値と、他のいずれかの通過帯域(B1~B3)における値とは、反射係数平面で0.3以上離れている。
従って、通過帯域毎のインピーダンスの値を異ならせた効果がより確実に奏される。なお、通常、高周波デバイスは、入出力に関するVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)が所定値以下となるように設計される。一般に、VSWRは、1.8以下であれば概ね良く、1.5以下であると良好とされている。1.5のVSWRは、正規化された反射係数平面において1の値との距離が0.2未満である。
本実施形態では、複数の前段フィルタ19それぞれは、弾性波フィルタを含んでいる。弾性波フィルタは、圧電基板31と、圧電基板31上に位置する励振電極としてのIDT電極33とを有している。
従って、例えば、IDT電極33の電極指41の本数、長さおよび/または膜厚等を適宜に調整したり、IDT電極33とともに圧電基板31上にインダクタおよび/またはキャパシタとなる導体パターンを設けたりすることによって、簡便にインピーダンスを調整することができる。
本実施形態では、複数の前段フィルタ19は、圧電基板31を共有しているとともに、それぞれのIDT電極33を有している。
本実施形態とは異なり、複数の前段フィルタ19が別個のチップとされている場合(このような態様も本開示に係る技術に含まれる。)、複数のチップが実装される実装基板が前段フィルタデバイス13のインピーダンスに影響を及ぼすおそれがある。しかし、上記のように圧電基板31の共用によって1個のチップにすることにより、そのようなおそれが低減される。すなわち、設計したインピーダンスの値を実現することが容易である。
本実施形態では、通過帯域B4は、通過帯域B1(またはB2もしくはB3)よりも周波数が高い。通過帯域B4に対応する第4前段フィルタ19Dは、通過帯域B1に対応する第1前段フィルタ19AよりもIDT電極33の膜厚が薄い。
IDT電極33では、その膜厚が薄いほど、高い周波数における損失が少なくなる傾向がある。従って、前段フィルタデバイス13内の複数のIDT電極33の膜厚を複数の前段フィルタ19の通過帯域に応じて異ならせることによって、損失を少なくすることができる。
本実施形態では、受信モジュール5は、複数の前段フィルタ19の出力側に入力端子15aが接続されている複数の後段増幅器15をさらに有している。複数の後段増幅器15は、通過帯域B4に対応する第4前段フィルタ19Dに接続されている後段増幅器15Bと、通過帯域B1に対応する第1前段フィルタ19Aに接続されている後段増幅器15Aと、を有している。
従って、例えば、設計が容易化される。具体的には、以下のとおりである。まず、後段増幅器15が設けられることにより、前段増幅器11から見て、インピーダンスに関して後段増幅器15以降は実質的に見えなくなる。これにより、設計が容易化される。また、後段増幅器15の特性は、後段増幅器15から前段を見たインピーダンスの影響が周波数によって変化する。従って、後段増幅器15から見ても、前段フィルタデバイス13のインピーダンスは、通過帯域毎に適宜に設定されていることが好ましい。そして、第1前段フィルタ19Aと第4前段フィルタ19Dとで別個の後段増幅器15が接続されることにより、後段増幅器15から前段フィルタ19を見たインピーダンスについては、前段増幅器11から前段フィルタ19を見たインピーダンスとは異なり、前段フィルタ19毎にインピーダンスを調整することができる。ひいては、設計が容易化される。
本実施形態では、複数の通過帯域は、通過帯域B4およびB1の他、通過帯域B2(またはB3)を含む。前段増幅器11の出力端子11bから前段フィルタデバイス13側を見たインピーダンスは、通過帯域B1における値と通過帯域B2における値との反射係数平面における距離が、通過帯域B4における値と通過帯域B1における値との反射係数平面における距離および通過帯域B4における値と通過帯域B2における値との反射係数平面における距離それぞれよりも小さい。後段増幅器15Aは、第1前段フィルタ19Aだけでなく、通過帯域B2に対応する第2前段フィルタ19Bにも接続されている。
従って、例えば、後段増幅器15の数を減らし、小型化、電力削減および/またはコスト削減を図ることができる。上記のように、複数の前段フィルタ19に対して別個の後段増幅器15を接続することにより、設計が容易化される。しかし、前段増幅器11から見てインピーダンスの値が互いに近い通過帯域に対応する前段フィルタ19同士については、共通の後段増幅器15に接続しても、インピーダンスの調整は軽微で済む。
本実施形態では、受信モジュール5は、複数の後段増幅器15の出力端子15bに接続されている、複数の通過帯域B1~B4に対応する複数の後段フィルタ21を有している。通過帯域B4を通過帯域とする第4後段フィルタ21Dは、後段増幅器15Bの出力端子15bに接続されている。通過帯域B1を通過帯域とする第1後段フィルタ21Aおよび通過帯域B2を通過帯域とする第2後段フィルタ21Bは、それぞれ後段増幅器15Aの出力端子15bに接続されている。
すなわち、複数の前段フィルタ19と後段増幅器15の入力端子15aとの接続に関して纏められた通過帯域は、後段増幅器15の出力端子15bと複数の後段フィルタ21との接続に関しても纏められている。このような構成により、後段増幅器15の数を減らしつつ、インピーダンスの整合の設計を容易化し、かつ前段フィルタ19および後段フィルタ21による2重のフィルタリングによって高精度に通過帯域の信号を取り出すことができる。
なお、以上の実施形態において、通過帯域B4は、第1通過帯域の一例であり、通過帯域B1~B3それぞれは、第2通過帯域の一例または第3通過帯域の一例である。後段増幅器15Bは、第1後段増幅器の一例であり、後段増幅器15Aは、第2後段増幅器の一例である。
[第2実施形態]
図9は、第2実施形態に係る受信装置201の要部構成を示す、図1と同様の模式図である。
受信装置201の受信モジュール5は、前段増幅器11と前段フィルタデバイス13との間に整合回路251を有している点のみが実施形態と相違する。整合回路251は、例えば、インダクタ253およびキャパシタ255を含んでいる。
このように受信装置201または受信モジュール5は、適宜な位置に整合回路251を有していてもよい。整合回路251は、図示の位置に加えて、または代えて、種々の位置に配置されてよく、また、整合回路251の構成も適宜に変更されてよい。
このような構成においても、前段増幅器11の出力端子11bから前段フィルタデバイス13側を見たインピーダンスが、通過帯域B4における値と通過帯域B1(またはB2もしくはB3)における値とで異なっていることにより、例えば、インピーダンスの整合が好適になされる。なお、整合回路251および前段フィルタデバイス13全体をフィルタデバイスと捉え、出力端子11bに接続される整合回路251よりも前段の不図示の端子が共通端子とみなされてもよい。
[第3実施形態]
図10は、第3実施形態に係る受信装置301の要部構成を示す、図1と同様の模式図である。
受信装置301において、第1実施形態の受信装置1との相違点としては、例えば、後段増幅器15が1つとされている点、整合回路(351、353および355)が設けられている点、複数のフィルタの一部が統合されて1つのフィルタとされている(例えば第1実施形態の19A~19Cが319にされている)点、アンテナ3に代えて多周波アンテナ303(単に「アンテナ303」ということがある。)が用いられている点が挙げられる。具体的には、以下のとおりである。
(後段増幅器)
後段増幅器15は、その入力端子15aが前段フィルタデバイス313の出力端子325(図11参照)に接続されている。これにより、後段増幅器15は、前段フィルタデバイス313の全ての前段フィルタ(319及び19D)に接続されている。なお、後述するように、前段フィルタデバイス313は、例えば、4つの通過帯域B1~B4の信号を通過させる。
また、後段増幅器15は、その出力端子15bが後段整合回路353を介して後段フィルタデバイス317の入力端子(不図示。前段フィルタデバイス313の入力端子323(図11)を参照)に接続されている。これにより、後段増幅器15は、後段フィルタデバイス317の全ての後段フィルタ(321及び21D)に接続されている。なお、後述するように、後段フィルタデバイス317は、例えば、4つの通過帯域B1~B4の信号を通過させる。
なお、本実施形態では、後段増幅器15が1つであることから、前段増幅器11から前段フィルタデバイス313までの構成と、後段増幅器15から後段フィルタデバイス317までの構成とが同様の構成となっている。両者は、後述する各種の電子素子(例えばインダクタおよびキャパシタ)の接続関係およびインピーダンス(インダクタンスおよびキャパシタンス)も含めて、互いに同一の構成とされてもよい。
(整合回路)
第1実施形態の説明では、インダクタおよび/またはキャパシタを設けることによって通過帯域毎のインピーダンスの値が調整されてよいことについて述べた。また、第2実施形態では、整合回路の一例を示した。第3実施形態に係る受信装置301は、通過帯域毎のインピーダンスの値の調整(図5(a)~図8(d)を参照して説明したインピーダンスの実現)を容易化できる整合回路を有している。具体的には、以下のとおりである。
受信装置301(別の観点ではアンテナモジュール302または受信モジュール305)は、例えば、前段増幅器11と前段フィルタデバイス313との間に位置している前段整合回路351と、後段増幅器15と後段フィルタデバイス317との間に位置している後段整合回路353と、後段フィルタデバイス317と受信モジュール305の不図示の出力端子との間に位置している出力側整合回路355とを有している。
前段整合回路351は、前段増幅器11の出力端子11b(別の観点では前段フィルタデバイス313の入力端子323)と、基準電位部101との間で互いに並列に接続されているインダクタ357およびキャパシタ359を有している。このような前段整合回路351を設けることによって、出力端子11bから前段フィルタデバイス313側を見たインピーダンスを通過帯域同士で異ならせるように調整することが容易化される。その具体的な作用は以下のとおりである。
まず、インダクタ357のサセプタンスは、インダクタ357において損失が無いと仮定すると、-1/ωLで表される。ここで、Lはインダクタ357のインダクタンスである。ωは交流電力(信号)の角速度であり、周波数をfとしたときにω=2πfである。また、キャパシタ359のサセプタンスは、キャパシタ359において損失が無いと仮定すると、ωCで表される。ここで、Cはキャパシタ359のキャパシタンスである。そして、前段整合回路351のサセプタンスは、キャパシタ359のサセプタンスとキャパシタ359のサセプタンスの和であるωC-1/ωLである。
従って、前段整合回路351のサセプタンスは、周波数fに対して変化し、かつインダクタ357のサセプタンスおよびキャパシタ359のサセプタンスそれぞれに比較して、周波数fに対する変化率が大きい。その結果、出力端子11bから前段フィルタデバイス313側を見たインピーダンスを周波数fの変化に対して相対的に大きく変化させることができる。なお、前段整合回路351および前段フィルタデバイス313全体をフィルタデバイスと捉え、出力端子11bに接続される前段整合回路351よりも前段の不図示の端子が共通端子とみなされてもよいことは、第2実施形態と同様である。
後段整合回路353も、前段整合回路351と同様の構成である。すなわち、後段整合回路353は、後段増幅器15の出力端子15b(別の観点では後段フィルタデバイス317の入力端子(不図示))と、基準電位部101との間で互いに並列に接続されているインダクタ361およびキャパシタ363を有している。その作用も前段整合回路351と同様である。
出力側整合回路355は、例えば、後段フィルタデバイス317の不図示の出力端子(前段フィルタデバイス313の出力端子325(図11)を参照)と、基準電位部101とを接続しているインダクタ365を有している。この出力側整合回路355は、例えば、後段増幅器15の出力端子15bから後段フィルタデバイス317側を見たインピーダンス、および/または受信モジュール305(アンテナモジュール302)の出力端子302s(図13。別の観点ではRF-IC7)から後段フィルタデバイス317側を見たインピーダンスの調整に寄与している。
なお、第1実施形態の説明においては、RF-IC7から後段フィルタデバイス17側を見たインピーダンスは、通過帯域毎に異なっていてもよいし、2以上または全ての通過帯域で同等または同一水準であってもよいことを述べた。このことは、本実施形態においても同様であり、例えば、RF-IC7から後段フィルタデバイス317側を見たインピーダンスは、全ての通過帯域で同一である。
(フィルタの統合)
前段フィルタデバイス313は、通過帯域B1~B3に対応するフィルタとして、第1実施形態の第1前段フィルタ19A~第3前段フィルタ19Cに代えて、前段広帯域フィルタ319を有している。同様に、後段フィルタデバイス317は、通過帯域B1~B3に対応するフィルタとして、第1実施形態の第1後段フィルタ21A~第3後段フィルタ21Cに代えて、後段広帯域フィルタ321を有している。
図11は、前段フィルタデバイス313の構成を示す模式図である。
前段広帯域フィルタ319は、例えば、前段フィルタ19と同様に、ラダー型共振子フィルタによって構成されている。前段広帯域フィルタ319の構成は、基本的には、通過帯域B1~B3を包含する通過帯域B11(図12)の信号を通過させることが可能に広帯域化されていることを除いて、前段フィルタ19と同様でよい。前段広帯域フィルタ319を広帯域化する方法としては、種々の方法が用いられてよい。例えば、IDT電極33の静電容量を小さくすることによって広帯域化が図られてよい。
また、図示の例では、上記のような共振子27自体の構成の調整による広帯域化に加えて、または代えて、共振子27に対して並列接続されるインダクタ367A~367E(以下、A~Eを省略することがある。)を設けることによって広帯域化が図られている。インダクタ367は、図示の例のように、複数の共振子27のうち一部(1つでもよい。)に対して設けられていてもよいし、図示の例とは異なり、全ての共振子27に対して設けられていてもよい。前者の場合の一部の共振子27は、適宜に選択されてよい。また、インダクタ367は、図示の例のように、1つの共振子27に対して1つのインダクタ367が並列接続されていてもよいし、図示とは異なり、2以上の共振子27に対して1つのインダクタ367が並列接続されていてもよい。
図11では、複数のインダクタ367は、対称的に設けられている。具体的には、以下のとおりである。
前段広帯域フィルタ319においては、電気的な接続関係に関して、複数の共振子27を基準に任意の位置を特定することができる。例えば、入力端子323(第1実施形態の共通端子23に相当)または出力端子325(第1実施形態の出力端子25に相当)から任意の位置までに介在する共振子27の数によって、当該任意の位置を特定することができる。一例を挙げると、インダクタ367Aの両端の接続位置は、入力端子323との間に1つの直列共振子27Sが介在する位置、および入力端子323との間に2つの直列共振子27Sが介在する位置である。なお、直列共振子27Sだけでなく、並列共振子27Pも考慮に入れてよい。また、1つの共振子27を耐電性の観点から2つに分割しているような場合においては、その2つの分割された共振子27は、1つと数えられてもよい。
上記のように複数の共振子27の接続関係に基づいてインダクタ367の位置を考えたときに、インダクタ367Aと367Bとは、電気的に互いに対称となる位置に設けられているということができる。インダクタ367Cおよび367Eも同様である。また、インダクタ367Dは、電気的に対称な接続関係の中央に位置しているということができる。従って、全てのインダクタ367は、複数の共振子27の電気的な接続関係に関して前段広帯域フィルタ319の入力側と出力側とに対称に設けられているということができる。
電気的に互いに対称な位置にあるインダクタ357同士は互いに同一のインダクタンスを有している。すなわち、図示の例では、インダクタ367Aおよび367Bは互いに同等のインダクタンスを有している。インダクタ367Cおよび367Eは互いに同等のインダクタンスを有している。なお、同等のインダクタンスといっても、加工精度等に起因するインダクタンスの差、および/または受信装置301に要求される仕様上許容されるインダクタンスの差が存在してよいことはもちろんである。例えば、0.2nH未満もしくは0.1nH、または2つのインダクタンスのうち大きい方の5%未満もしくは2%未満の差が存在してもよい。
インダクタ357の構成及び位置等は適宜なものとされてよい。例えば、インダクタ357は、圧電基板31に設けられた導体層によって構成されてよい。また、例えば、圧電基板31の上面を封止するカバーが設けられている場合には、このカバーに設けられた導体によってインダクタ357が構成されてもよい。また、例えば、インダクタ357を構成するチップ型部品が圧電基板31またはカバーに実装されてもよい。
図12は、受信装置301の電気的特性を示す模式図である。この図において、横軸は周波数f(MHz)を示している。左側の縦軸は、透過特性S21(dB)を示している。線Ln1は、前段フィルタデバイス313における周波数と透過特性との関係を示している。
この図において、通過帯域B11は、前段広帯域フィルタ319の通過帯域を示している。既述のように、通過帯域B11は、通過帯域B1~B3を包含している。なお、この図は、模式図であることから、通過帯域B1の左側の境界と通過帯域B11の左側の境界とが一致しているが、実際には両者はずれていてよい。通過帯域B11の右側の境界についても同様である。また、実際には、通過帯域B11とB4との間等において線Ln1に波形が現れていてよい。
前段広帯域フィルタ319が複数の前段フィルタ19を統合したものであることは、適宜に特定することが可能である。例えば、受信装置301の仕様書またはパンフレットに基づいて、受信装置301が対象としている通過帯域(例えば通過帯域B1~B4)を特定し、そのうちの2以上の通過帯域(ここではB1~B3)に対して1つのフィルタが対応しているか否かによって、統合されたフィルタが存在するか否かが判定されてよい。
また、比帯域幅に基づいて、前段広帯域フィルタ319が複数の前段フィルタ19を統合したものであることが特定されてよい。
比帯域幅は、通過帯域の幅を通過帯域の中心周波数で割ったものであり、その単位は例えば%とされてよい。例えば、通過帯域B1、B2、B3、B4およびB11において、その幅をB1、B2、B3、B4およびB11とし、その中心周波数をf01、f02、f03、f04およびf011とする。このとき、通過帯域B1、B2、B3、B4およびB11の比帯域幅は、B1/f01×100(%)、B2/f02×100(%)、B3/f03×100(%)、B4/f04×100(%)およびB11/f011×100(%)である。
通過帯域B1~B4それぞれの比帯域幅は、例えば、5%未満である。一方、通過帯域B11の比帯域幅は、例えば、5%以上または10%以上である。このような比帯域幅となる周波数の一例を挙げる。通過帯域B1~B3それぞれにおいて、中心周波数は1100MHz以上1300MHz以下であり、幅は50MHz以下である。通過帯域B4において、中心周波数は1500MHz以上1600MHz以下であり、幅は70MHz以下である。通過帯域B11において、中心周波数は、1150MHz以上1250MHz以下であり、幅は60MHz以上、100MHz以上または120MHz以上である。
ここまで、前段フィルタデバイス313におけるフィルタの統合について述べたが、後段フィルタデバイス317についても同様である。すなわち、上述の説明において、前段フィルタデバイス313、第1前段フィルタ19A~第4前段フィルタ19Dおよび前段広帯域フィルタ319は、後段フィルタデバイス317、第1後段フィルタ21A~第4後段フィルタ21Dおよび後段広帯域フィルタ321に置き換えられてよい。
(多周波アンテナ)
既述のようにアンテナ303は、複数の通過帯域に対応する多周波アンテナによって構成されている。例えば、アンテナ303は、VSWRが所定の閾値Rt以下となる周波数帯を2以上有している。閾値Rtは、例えば、一般的に要求される仕様に照らして3.0とされてよい。なお、閾値Rtは、2.0、1.8または1.5等とされても構わない。
図12において、右側の縦軸は、VSWRを示している。線Ln3は、アンテナ303における周波数とVSWRとの関係を示している。
アンテナ303において、VSWRは、例えば、通過帯域B1~B4のそれぞれにおいて3.0以下となっている。従って、アンテナ303と前段広帯域フィルタ319(および/または後段広帯域フィルタ321)との組み合わせは、通過帯域B1~B4のそれぞれを通過帯域とするフィルタのように機能することになる。
なお、図12では、VSWRが閾値Rt(3.0)以下となる周波数帯は、通過帯域B1~B4それぞれに対して設定されている。ただし、1つの周波数帯は、通過帯域B1~B3(またはB1~B4)の2つ以上(ただし総数未満)に対して設定されてもよい。すなわち、アンテナ303の周波数帯の数は、通過帯域B1~B3(またはB1~B4)の数よりも少なくてもよい。
また、図12では、閾値Rt以下となる周波数帯それぞれの境界(別の観点では幅)と、当該周波数帯と重なる通過帯域B1~B4それぞれの境界とが一致している。実際には、両者はずれていても構わない。従って、例えば、通過帯域B11が、アンテナ303においてVSWRが閾値Rt以下となる複数の周波数帯の2つ以上に重複する帯域幅を有しているという場合、通過帯域B11の少なくとも一部と、VSWRが閾値Rt以下となる2つ以上の周波数帯それぞれの少なくとも一部とが重なっている態様も含む。例えば、帯域幅の50%以上同士または80%以上同士が重なってよい。
なお、複数の通過帯域に対応する多周波アンテナによって構成されているアンテナ303は、例えば、VSWRが所定の閾値Rt以下となる周波数帯を1以上有している。閾値Rtは、例えば、一般的に要求される仕様に照らして3.0とされてよい。なお、閾値Rtは、2.0、1.8または1.5等としてもよい。そして、VSWRが所定の閾値Rt以下となる周波数帯の1つの帯域内にすべての通過帯域が包含されていてもよい。
多周波アンテナ303は、公知の種々の構成によって実現されてよい。以下では、その一例を示す。
図13は、アンテナ303を含むアンテナモジュール302の要部構成を示す模式的な斜視図である。
アンテナモジュール302は、アンテナ303と、受信モジュール305とを含むものである(図10も参照)。アンテナモジュール302は、例えば、概して言えば、回路基板368に各種の電子部品が実装されて構成されている。
回路基板368は、単層基板、両面基板または多層基板(図示の例では両面基板または多層基板)とされてよい。回路基板368は、絶縁基板369と、絶縁基板369に配置された各種の導体(371、302g、302s等)とを有している。絶縁基板369は、例えば、セラミックまたは樹脂等の絶縁層を積層することによって構成されている。各種の導体は、絶縁層に重なる導体層および/または絶縁層を貫通するビア導体を含む。
アンテナモジュール302は、例えば、アンテナ303によって受信した信号を、受信モジュール305を介して出力するための出力端子302sと、基準電位が付与される基準電位端子302gと、を有している。これらの端子は、例えば、絶縁基板369上に位置する導体層によって構成されている。また、これらの端子は、例えば、アンテナモジュール302およびRF-IC7が実装される不図示の回路基板を介してRF-IC7に接続される。
アンテナ303は、例えば、絶縁基板369と、絶縁基板369に設けられたアンテナ導体371および不図示の地板とを有している。アンテナ導体371および地板は、絶縁基板369の主面または内部に設けられた導体層によって構成されており、絶縁基板369の絶縁層を介して互いに対向している。アンテナ導体371は、受信モジュール305等を介して出力端子302sに接続される(信号線に接続される。)。地板は、基準電位端子302gに接続される(基準電位が付与される。)。アンテナ導体371は、例えば、信号線に対する接続位置からの長さが互いに異なる4本のストリップ371a(受信モジュール305側の一部は共用されている。)を有している。4本のストリップ371aの長さは、4つの通過帯域B1~B4の電波の実効波長の1/4程度とされている。これにより、多周波アンテナが実現されている。
受信モジュール305は、例えば、回路基板368と、回路基板368に実装されている各種の電子部品(チップ型部品)とを有している。各種の電子部品は、例えば、前段増幅器11、前段フィルタデバイス313、後段増幅器15および後段フィルタデバイス317である。これらは、例えば、回路基板368の配線(符号省略)によって、アンテナ導体371と出力端子302sとの間で直列に接続されている。
なお、図13に示す構成は、第3実施形態だけでなく、他の実施形態に適用されてもよい。
以上のとおり、本実施形態においても、前段フィルタデバイス313(別の観点では受信モジュール305)は、共通端子(例えば入力端子323。別の観点では前段増幅器11の出力端子11b)から見て互いに分岐しており、互いに異なる複数の通過帯域B4およびB11(またはB1~B3)に対応している複数のフィルタ(前段広帯域フィルタ319および第4前段フィルタ19D)を有している。入力端子323から複数のフィルタ側を見たインピーダンスは、通過帯域B4における値と通過帯域B11における値とが異なっている。
従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、前段フィルタデバイス313よりも前段の素子(本実施形態では前段増幅器11)にとって好ましい後段側のインピーダンスが周波数によって異なる場合に、各通過帯域におけるインピーダンスを前段の素子にとって好ましい値にすることができる。
また、本実施形態では、前段フィルタデバイス313は、複数のフィルタ(319および19D)に対して第1共通端子(例えば入力端子323)とは反対側に接続されている第2共通端子(例えば出力端子325)をさらに有している。別の観点では、受信モジュール305は、複数のフィルタに対してその出力側に入力端子15aが接続されている後段増幅器15を有している。
この場合、例えば、後段増幅器15の数を減らして受信モジュールの小型化を図ることができる。なお、第1実施形態のように、インピーダンスの水準が異なるもの同士で出力端子25を分けた場合においては、例えば、出力端子25側から前段側を見たインピーダンスの調整が容易である。
また、本実施形態では、通過帯域B4および通過帯域B11の少なくとも一方(本実施形態では通過帯域B11)は、比帯域幅が5%以上または10%以上である。
この場合、換言すれば、複数のフィルタ(第1実施形態の第1前段フィルタ19A~第3前段フィルタ19C)が前段広帯域フィルタ319に統合されているということである。このようにフィルタを統合することによって、前段フィルタデバイス313が含むフィルタの数を減らすことができる。その結果、例えば、前段フィルタデバイス313を小型化することができる。インピーダンスを同一水準とすべき(もしくは同一水準にしてよい)通過帯域B1~B3に対応するフィルタを統合しているから、インピーダンスの調整も容易化される。
また、本実施形態では、前段整合回路351は、前段増幅器11の出力端子11bと基準電位部101との間に互いに並列に接続されているインダクタ357およびキャパシタ359を有している。
この場合、例えば、既に述べたように、通過帯域毎にインピーダンスを調整することが容易化され、ひいては、図5(a)~図8(d)を参照して説明したインピーダンスを実現することが容易化される。当該効果は、本実施形態のように、後段増幅器15を1つにした場合、および/または複数のフィルタを統合した広帯域フィルタを用いた場合に有効である。なお、通常、整合回路は、インピーダンスを所定値にすることに利用されるが、本実施形態のように通過帯域間でインピーダンスを異ならせるために利用されることはない。
また、本実施形態では、前段広帯域フィルタ319は、ラダー型に接続されている複数の共振子27を有している。受信モジュール305は、前段広帯域フィルタ319の複数の共振子27の少なくとも1つに並列接続されているインダクタ367を有している。この場合、例えば、前段広帯域フィルタ319の広帯域化が容易化される。その結果、例えば、比帯域幅が5%以上または10%以上のフィルタの実現が容易化される。
また、本実施形態では、受信モジュール305は、複数の共振子27同士の接続関係に対して電気的に対称な位置に複数のインダクタ367を有している。電気的に互いに対称な位置のインダクタ367同士は互いに同等のインダクタンスを有している。この場合、例えば、所望の通過帯域が得られるインダクタンスの解を得ることが容易である。
また、本実施形態では、アンテナ303は、当該アンテナ303の出力側から見た電圧定在波比(VSWR)が3.0以下となる周波数帯を複数有している。通過帯域B1および通過帯域B11の少なくとも一方(本実施形態では通過帯域B11)は、アンテナ303の複数の周波数帯の2つ以上(本実施形態では3つ)に重複する帯域幅を有している。
この場合、換言すれば、複数のフィルタ(第1前段フィルタ19A~第3前段フィルタ19C)が前段広帯域フィルタ319に統合されているということである。このようにフィルタを統合することについての効果については既に述べた。また、アンテナ303と前段広帯域フィルタ319との全体でフィルタのように機能することから、構成を簡素化できる。
[第4実施形態]
図14は、第4実施形態に係る受信装置の一部の構成を示す模式図である。より具体的には、受信装置のうち、前段フィルタデバイス413を含む前段フィルタ構成部412が示されている。
第3実施形態では、前段広帯域フィルタ319を広帯域化するためのインダクタ367は、前段フィルタデバイス313が有していた。一方、本実施形態では、広帯域化のためのインダクタ367の一部(全部でもよい)が前段フィルタデバイス413の外部に設けられている。具体的には、例えば、前段フィルタデバイス413は、第3実施形態の前段フィルタデバイス313から、インダクタ367A、367B、367Cおよび367Eを無くした構成である。そして、インダクタ367A、367B、367Cおよび367Eは、前段フィルタデバイス413の外部に設けられている。例えば、これらのインダクタは、図13に示した回路基板368に実装されている。
なお、図14では、前段フィルタデバイスに関してのみ図示したが、後段フィルタデバイスについても同様に、後段フィルタデバイスの外部に広帯域化用のインダクタが設けられてよい。この際、後段フィルタ構成部は、前段フィルタ構成部412と同様の構成とされてよい。第3および第4実施形態は、広帯域化用のインダクタの配置等に差異があるが、受信モジュールが広帯域化用のインダクタを有していることについて相違はない。実施形態の説明では、便宜上、前段フィルタデバイス413と、インダクタ367A、367B、367Cおよび367Eとの組み合わせを前段フィルタ構成部412と呼称しているが、前段フィルタ構成部412はフィルタデバイスと捉えられてもよい。
本開示に係る技術は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
例えば、フィルタは、ラダー型共振子フィルタに限定されない。例えば、IDT電極が弾性波の伝搬方向に配列された多重モード型弾性波フィルタであってもよい。ラダー型共振子フィルタ等のフィルタを構成する共振子は、IDT電極を励振電極とするものに限定されず、例えば、圧電薄膜共振子であってもよい。弾性波は、SAWに限定されず、例えば、バルク波または弾性境界波(ただしSAWの一種と捉えられてよい。)であってもよい。
受信装置は、送受信機能を有する通信装置の一部であってもよい。受信モジュールについても同様である。受信モジュールは、2段のフィルタデバイスを有さず、前段フィルタデバイスのみを有していてもよい。後段増幅器は、複数の前段フィルタの全てに対して個別に設けられていてもよいし、逆に、第3実施形態で示したように1つのみ設けられていてもよい。
第1および第2実施形態では、前段フィルタデバイス13は、共通端子23に入力された信号を複数の前段フィルタ19によってフィルタリングするものであった。ただし、フィルタデバイスは、複数のフィルタによってフィルタリングした信号を共通端子から出力するものであってもよい。この場合であっても、例えば、共通端子から出力される信号が入力される後段の素子にとって、好ましいインピーダンスの値が通過帯域毎に異なる場合に、共通端子から複数のフィルタ側を見たインピーダンスの値を互いに異ならせることによって、適切にインピーダンスの値を設定することができる。