JP7176260B2 - 音声信号処理装置、音声信号処理方法、および補聴器 - Google Patents
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補正には静的なフィルタが用いられている。すなわち入力の音声が子音であるか否かに関わらず、常に一定のフィルタ特性が入力の音声に対して加えられる
音声信号の子音周波数帯域のエネルギを押し上げる第1エクスパンドフィルタと、前記音声信号の子音周波数帯域のエネルギを押し下げる第2エクスパンドフィルタとを組み合わせたエクスパンドフィルタと、
前記音声信号の周波数特性を検知するウオッチフィルタと、
前記ウオッチフィルタの出力信号のエネルギにより特定の周波数帯域から始まる音声を判定し、当該特定の周波数帯域から始まる音声を判定している間は前記エクスパンドフィルタの特性を平坦化させる判定部と、
を備えることを特徴とする音声信号処理装置である。
本実施形態の補聴器(集音器)は、入力波形に特定の子音の周波数特性に応じたフィルタをかけ、このフィルタをかけた音声の包絡線信号を所定の閾値でウオッチする。このフィルタは、特定の子音を聴きやすくするための周波数特性を有しており、かつ外部制御信号によりダイナミックにゲインが変化できるフィルタである。このフィルタのことを、以下「エクスパンドフィルタ」と称する。補聴器は、ウオッチしていた包絡線信号が閾値を超えたら、その超えた値に応じてエクスパンドフィルタのゲインを平坦化する。具体的には、閾値を超えた量に応じてゲインが平坦化するようにしておく。これにより、例えば、[sa]という音がきたとき[s]の音が補強され、[a]の音は補強されなくなる。
図1は、第1の実施形態における補聴器1の外観図である。
補聴器1を耳に装着するときには、図1の右側の平面部14が、外耳道の外に面して、左側の端部15が外耳道に挿入される。このように耳に装着されることで、マイク入力部2で集音された音は、この補聴器1によって補正処理され、スピーカ3から出力される。スピーカ3は利用者の外耳道に挿入されているので、利用者は、外部音を明瞭に聴くことができる。平面部14には、スピーカ3からの出力音量を調整するボリューム42と、電源ボタン41が配置されている。
補聴器1は、CPU(Central Processing Unit)11、メモリ12、操作部4、スピーカ3、DSP(Digital Signal Processor)5、マイク入力部2、A/D変換部21、サウンドシステム13を含んで構成される。操作部4は、スピーカ3からの出力音量を調整するボリューム42と、電源ボタン41を含んで構成される。
スピーカ3は、不図示のD/A変換器が出力したアナログ信号を、音として利用者の耳に出力する。この補聴器1には、不図示の電源回路と二次電池が搭載される。
最初、CPU11は、この補聴器1を初期化(イニシャライズ)する(S10)。その後、CPU11は、スイッチ処理(S11)を行い、ボリューム42と、電源ボタン41と、その他のスイッチの状態をスキャンする。これにより、利用者の操作情報を取得することができる。スイッチ処理の詳細は、後記する図4で説明する。
CPU11は、ハウリングキャンセル処理(S13)を行い、ステップS11の処理に戻る。このハウリングキャンセル処理は、ハウリングによる不快な聴こえを軽減する処理であり、詳細な説明は省略する。
CPU11は、本体側スイッチ処理(S20)を行い、電源ボタン41やボリューム42の状態を検知する。その結果、CPU11は、各スイッチに対応した動作を行う。例えば、利用者が補聴器1の電源ボタン41を押下すると、CPU11は、集音処理を開始する。利用者が補聴器1のボリューム42を変更すると、CPU11は、DSP5に対し、このボリューム42に応じた音量で出力されるように指示する。
CPU11は、マイク入力部2とA/D変換部21により音声が取り込まれると(S30)、DSP5に対して子音ブースタ処理(S31)を指示する。子音ブースタ処理の詳細は、後記する図6から図10で詳細に説明する。
ステップS32~S36の目的は、音声信号のハウリングが発生しているチャンネルを見つけ出すためである。ハウリングが発生している周波数チャンネルではピークが立つ。周波数チャンネルの時間波形のレベルと閾値とを比較してピークを検出することで、ハウリングを検出することができる。
この図では「さかな」と入力されたときの子音のみが大きく増幅される例を示す。さかなという音声が入力された際、補聴器1の信号制御は、実線で示した音声信号が伝達されるラインと、破線で示す制御信号のラインによって構成される。
ハードウエアあるいはソフトウエアで処理してもよいブロックは、ノイズゲート52、ウオッチフィルタ54、閾値判定部55、エクスパンドフィルタ51,53である。
ノイズゲート52を通過した音声信号は、エクスパンドフィルタ53により、フィルタ処理が行われる。これにより、子音の周波数領域が押し下げられる。エクスパンドフィルタ53は、音声信号の子音周波数帯域のエネルギを押し下げる第2エクスパンドフィルタである。
エクスパンドフィルタ53の出力信号は、例えばハウリング処理などの他の音声信号処理が行われたのち、スピーカ3から音声として出力される。
グラフの縦軸は対数でゲインを示し、横軸は対数で周波数を示している。
ここで、ウオッチフィルタ54のフィルタ特性は、母音の周波数特性に対応した周波数特性カーブを有する。具体的にいうと、ウオッチフィルタ54は、周波数f1からf2に急峻なピークを有するフィルタである。周波数f1とf2の組合せは、例えば20Hz~500Hzであるが、母音の周波数特性に対応していればよく、限定されない。
グラフの縦軸は波高値を示し、横軸は時間を示している。この波高値は、時刻t1から時刻t2までの間で、閾値を超えている。よってDSP5は、時刻t1から時刻t2までの間、母音を検出する。つまり閾値判定部57は、ウオッチフィルタ54の出力信号のエネルギにより母音を判定する。
第1のグラフは、エクスパンドフィルタ51のフィルタ特性を示している。エクスパンドフィルタ51は、子音の周波数帯域のゲインを増幅させるフィルタであり、周波数f3からf4に急峻なピークを有するフィルタである。周波数f3とf4の組合せは、例えば1KHz~10KHzであるが、子音の周波数特性に対応していればよく、限定されない。
DSP5は先ず、マイク入力部2からの音声を取り込む(S40)。次にDSP5は、ノイズゲート52によるゲート処理(S41)を行う。このゲート処理において、前段のエクスパンドフィルタ51によるゲインアップ処理が行われる。ゲート処理の詳細は、後記する図11で説明する。
次にDSP5は、ウオッチフィルタ処理(S42)を行い、ウオッチフィルタ54の出力の包絡線信号を抽出する(S43)。DSP5は、その包絡線信号を元に、所定閾値以上の入力が有るか否かを判断し、よって母音が検出されたか否かを判定する(S44)。
DSP5は、前段のエクスパンドフィルタ51により、子音の周波数領域のゲインを最大に設定する(S50)。そして、DSP5は、包絡線のレベルが閾値以上であるか否かを判定する(S51)。DSP5は、包絡線のレベルが閾値以上ならば(Yes)、ゲートを開放して(S52)、音声信号を後段の処理に引き渡す。DSP5は、包絡線のレベルが閾値未満ならば(No)、ゲートを閉塞して(S53)、音声をミュートさせる。これにより、閾値未満の音声信号の場合に、この補聴器1をミュートすることができる。
この補聴器1のCPU11は、入力音声の子音の周波数成分をウオッチし、その成分の多少によりエクスパンドフィルタ53を制御して、実際にユーザに聴こえる音声のうち子音成分のみ補強する。これにより、例えば、[sa]という音がきたとき[s]の部分だけの音が補強されることになる。
子音が聴きやすくなり、あらゆる子音において明瞭度を増すことができる。
以上より、本実施形態の補聴器1によれば、子音が原音にくらべて聞き取りやすく明瞭度が増す。また、子音波形のアタック部分から処理されるため、更に明瞭度が増す。
第2の実施形態の補聴器1は、第1の実施形態と同様に構成されており、子音ブースタ処理とゲート処理とが異なる。以下、図12から図15を参照して子音ブースタ処理を説明し、図16を参照してゲート処理を説明する。
この図では「さかな」と入力されたときの子音のみが大きく増幅される例を示す。さかなという音声が入力された際、補聴器1の信号制御は、実線で示した音声信号が最後まで使用されるラインと、破線で示す制御信号のラインによって構成される。
ハードウエアあるいはソフトウエアで処理してもよいブロックは、ノイズゲート56、子音ウオッチフィルタ54a、母音ウオッチフィルタ54b、閾値判定部57、エクスパンドフィルタ58である。
グラフの縦軸は対数でゲインを示し、横軸は対数で周波数を示している。
ここで、子音ウオッチフィルタ54aのフィルタ特性は、子音の周波数特性に対応した周波数特性カーブを有する。具体的にいうと、子音ウオッチフィルタ54aは、周波数f3からf4に急峻なピークを有するフィルタである。周波数f3とf4の組合せは、例えば1KHz~10KHzであるが、子音の周波数特性に対応していればよく、限定されない。
第1グラフの縦軸は子音の波高値を示し、横軸は時間を示している。第2グラフの縦軸は母音の波高値を示し、横軸は時間を示している。第3グラフの縦軸は母音の波高値と子音の波高値の比を示し、横軸は時間を示している。
第3グラフの波高値の比は、時刻t3から時刻t4までの間で、閾値を超えている。よってDSP5は、時刻t3から時刻t4までの間、母音を検出する。
DSP5は先ず、マイク入力部2からの音声を取り込む(S60)。
次にDSP5は、子音ウオッチフィルタ処理(S61)を行い、子音ウオッチフィルタ54aの出力の包絡線信号を抽出する(S62)。
これと並行してDSP5は、母音ウオッチフィルタ処理(S63)を行い、母音ウオッチフィルタ54bの出力の包絡線信号を抽出する(S64)。
DSP5は、その母音の包絡線信号と子音の包絡線信号の比を算出する(S66)。
DSP5は、この包絡線信号の比が所定閾値以上で有るか否かを判断し、よって母音が検出されたか否かを判定する(S67)。
DSP5は、図15に示したステップS61により、子音の周波数領域の強調を行って子音ウオッチ信号を生成している。DSP5は、この子音ウオッチ信号から包絡線信号を取得する(S80)。そして、DSP5は、包絡線のレベルが閾値以上であるか否かを判定する(S81)。DSP5は、包絡線のレベルが閾値以上ならば(Yes)、ゲートを開放して(S82)、音声信号を後段の処理に引き渡す。DSP5は、包絡線のレベルが閾値未満ならば(No)、ゲートを閉塞して(S83)、音声をミュートさせる。これにより、閾値未満の音声信号の場合に、この補聴器1をミュートすることができる。
母音の包絡線と子音の包絡線との比により、母音を判定しているので、母音のみで検知するよりも早期に母音を検出できる。これにより子音が聴きやすくなると共に母音が聞きにくくなるという副作用を防止できる。
以上より、本実施形態の補聴器1によれば、子音が原音にくらべて聞き取りやすく明瞭度が増し、子音波形のアタック部分から処理されるため、更に明瞭度が増す。更に、母音が聞きにくくなるという副作用を防止できる。
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能であり、例えば、次の(a)~(c)のようなものがある。
(c) 各母音に応じた複数のウオッチフィルタを設けると共に、複数のエクスパンドフィルタを設けてもよい。これにより、母音の検出精度を向上させると共に、各子音の明瞭度を増すことができる。
《請求項1》
音声信号の子音周波数帯域のエネルギを押し上げるエクスパンドフィルタと、
前記音声信号の周波数特性を検知するウオッチフィルタと、
前記ウオッチフィルタの出力信号のエネルギにより特定の周波数帯域から始まる音声を判定し、当該特定の周波数帯域から始まる音声を判定している間は前記エクスパンドフィルタの特性を平坦化させる判定部と、
を備えることを特徴とする音声信号処理装置。
《請求項2》
前記エクスパンドフィルタは、
音声信号の子音周波数帯域のエネルギを押し上げる第1エクスパンドフィルタと、音声信号の子音周波数帯域のエネルギを押し下げる第2エクスパンドフィルタの組合せである、
ことを特徴とする請求項1に記載の音声信号処理装置。
《請求項3》
前記ウオッチフィルタは、音声信号のうち前記特定の周波数帯域から始まる音声の周波数帯域を通過させ、
前記判定部は、前記ウオッチフィルタの出力信号が所定エネルギを超えたならば、前記特定の周波数帯域から始まる音声と判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の音声信号処理装置。
《請求項4》
前記ウオッチフィルタは、音声信号のうち前記特定の周波数帯域から始まる音声の周波数帯域を通過させる第1のフィルタ、および子音周波数帯域を通過させる第2のフィルタを含み、
前記判定部は、前記第1のフィルタの出力信号と前記第2のフィルタの出力信号のエネルギ比が所定値を超えたならば、特定の周波数帯域から始まる音声と判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の音声信号処理装置。
《請求項5》
音声信号が所定値以下ならば、当該音声信号を通過させないゲートを更に有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の音声信号処理装置。
《請求項6》
請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の音声信号処理装置と、
音声信号を収録するマイクと、
前記音声信号処理装置によって処理された音声信号を出力するスピーカと、
を備えることを特徴とする補聴器。
《請求項7》
エクスパンドフィルタにより音声信号の子音周波数帯域のエネルギを押し上げるステップと、
ウオッチフィルタにより前記音声信号の周波数特性を検知するステップと、
前記ウオッチフィルタの出力信号のエネルギにより特定の周波数帯域から始まる音声を判定するステップと、
当該特定の周波数帯域から始まる音声を判定している間は、前記エクスパンドフィルタの特性を平坦化させるステップと、
を実行することを特徴とする音声信号処理方法。
11 CPU
12 メモリ
13 サウンドシステム
14 平面部
15 端部
2 マイク入力部
21 A/D変換部
3 スピーカ
4 操作部
41 電源ボタン
42 ボリューム
5 DSP
51 エクスパンドフィルタ (第1エクスパンドフィルタ)
52 ノイズゲート
53 エクスパンドフィルタ (第2エクスパンドフィルタ)
54 ウオッチフィルタ
54a 子音ウオッチフィルタ
54b 母音ウオッチフィルタ
55,57 閾値判定部 (判定部)
56 ノイズゲート
57 閾値判定部
58 エクスパンドフィルタ
Claims (6)
- 音声信号の子音周波数帯域のエネルギを押し上げる第1エクスパンドフィルタと、前記音声信号の子音周波数帯域のエネルギを押し下げる第2エクスパンドフィルタとを組み合わせたエクスパンドフィルタと、
前記音声信号の周波数特性を検知するウオッチフィルタと、
前記ウオッチフィルタの出力信号のエネルギにより特定の周波数帯域から始まる音声を判定し、当該特定の周波数帯域から始まる音声を判定している間は前記エクスパンドフィルタの特性を平坦化させる判定部と、
を備えることを特徴とする音声信号処理装置。 - 前記ウオッチフィルタは、音声信号のうち前記特定の周波数帯域から始まる音声の周波数帯域を通過させ、
前記判定部は、前記ウオッチフィルタの出力信号が所定エネルギを超えたならば、前記特定の周波数帯域から始まる音声と判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の音声信号処理装置。 - 前記ウオッチフィルタは、音声信号のうち前記特定の周波数帯域から始まる音声の周波数帯域を通過させる第1のフィルタ、および子音周波数帯域を通過させる第2のフィルタを含み、
前記判定部は、前記第1のフィルタの出力信号と前記第2のフィルタの出力信号のエネルギ比が所定値を超えたならば、特定の周波数帯域から始まる音声と判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の音声信号処理装置。 - 音声信号の子音周波数帯域のエネルギを押し上げるエクスパンドフィルタと、
前記音声信号の周波数特性を検知するウオッチフィルタと、
前記ウオッチフィルタの出力信号のエネルギにより特定の周波数帯域から始まる音声を判定し、当該特定の周波数帯域から始まる音声を判定している間は前記エクスパンドフィルタの特性を平坦化させる判定部と、
前記音声信号が所定値以下ならば、当該音声信号を通過させないゲートと、
を備えることを特徴とする音声信号処理装置。 - 請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の音声信号処理装置と、
音声信号を収録するマイクと、
前記音声信号処理装置によって処理された音声信号を出力するスピーカと、
を備えることを特徴とする補聴器。 - エクスパンドフィルタにより音声信号の子音周波数帯域のエネルギを押し上げるステップと、
ウオッチフィルタにより前記音声信号の周波数特性を検知するステップと、
前記ウオッチフィルタの出力信号のエネルギにより特定の周波数帯域から始まる音声を判定するステップと、
当該特定の周波数帯域から始まる音声を判定している間は、前記エクスパンドフィルタの特性を平坦化させるステップと、を実行し、
前記エクスパンドフィルタは、音声信号の子音周波数帯域のエネルギを押し上げる第1エクスパンドフィルタと、前記音声信号の子音周波数帯域のエネルギを押し下げる第2エクスパンドフィルタの組み合わせである、
ことを特徴とする音声信号処理方法。
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