以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明は、荷台基部およびウイング扉により構成されるトラックの荷台構造に装着される係止装置であるため、まずは、当該トラックの荷台構造について概略説明する。図1にトラックの荷台構造の概略を示している。この図に示されているように、この種のトラックTRの荷台部分1は、前後の壁面部11,12に対し、側面部分は、荷台基部13,14と、ウイング扉15,16の一部で構成されるものである。このウイング扉15,16は、断面L字状とするものであり、側面部分の一部を構成するとともに、屋根部分を同時に構成するものである。
ウイング扉15,16の開閉は、前後の壁面部11,12の上部中央に懸架される屋根フレーム17を中心に回動することによるものであり、この前後の壁面部11,12に内蔵されるシリンダ18,19によって駆動されるものである。また、シリンダ18,19は、ウイング扉15,16の屋根構成部分に対して作用するため、ウイング扉15,16の側面構成部分は、当該屋根構成部分によって吊下されるように支持された状態となるものである。このように、屋根構成部分と側面造成部分とが一体化し、同時に開放するとき、当該扉が翼(ウイング)のような形状を呈することから、この種の扉をウイング扉と称する。
上記構成において、ウイング扉15,16を閉塞するとき、荷台基部の端縁とウイング扉の端縁とが連続することにより、一体的な側面部が形成されることから、両者を係止することが必要となる。そこで、ウイング扉15,16に端縁には、複数の被係止部材2が適宜間隔に設けられ、荷台基部13,14の端縁近傍には、この被係止部材2を個別に係止するための係止手段3が複数設けられるものである。
<第1の実施形態>
そこで、この係止手段3を使用する係止装置の第1の実施形態について説明する。図2~図4は、係止手段3の全体を示す図である。なお、図2は全体の構成を示し、図3は部分的に分解した図であり、図4は、さらに分解した図である。
まず、図2に示されているように、係止手段3は、荷台基部13,14に設置するためのベースを形成するベース部4が設けられ、このベース部4に支持される起動部材5と、係止片6とを備えるものである。係止片6は、枢軸7に支承されるものであり、この枢軸7を中心に回動可能となっている。また、起動部材5と枢軸7との間は、連結部8によって連結されている。なお、ベース部4は、起動領域41と、収容領域42とに区分されており、起動領域41を上位に、収容領域42を下位にしつつ、荷台基部13,14に設置されるものであり、収容領域42は、係止片6の基端側が収容できる空間が形成されている。
図3に示すように、ベース部4は、全体的に断面略コ字状に形成されるものであり、裏面部43と、その両端に側面部44,45とを有している。なお、収容領域42は、表面部46を設けることにより、内部を中空とする筒状に構成されたものである。裏面部43には、荷台基部13,14への装着のために装着孔47,48が設けられている。この装着孔47,48に平皿ネジなどを挿通し、荷台基部13,14に締着固定するものである。
起動部材5は、二種類の揺動部材50a,50bによって構成されるものである。一方の揺動部材(第1の揺動部材)50aは、上端51aがベース部4に支持されて回動自在となっており、他方の揺動部材(第2の揺動部材)50bは、下端52bがベース部4に支持されて回動自在となっている。そして、両揺動部材50a,50bが回動するときの自由端52a,51bが相互に回動自在に連結され、連結部分を頂点として山形を形成し得るものとしている。このとき、山形の頂点の角度が小さい(鋭い)状態の場合には、当該頂点を中心とする周辺部分は、ベース部4から外方に突出することとなり(図2参照)、頂点の角度が大きく(鈍く)なるごとに、頂点部分はベース部4(両側面部44,45の中間)に埋没することとなる。従って、この山形の頂点周辺が起動部材5の中間部分として機能するものである。
これらの揺動部材50a,50bの端部51a,52bを支持するために、ベース部4の側面部44,45には、長孔53,54が設けられており、その長孔53,54に支持軸55,56を挿通することにより、両揺動部材50a,50bは回動自在となるものであり、同時に、長孔53,54に沿って摺動自在となっている。従って、支持軸55,56を中心に回動するとき、山形に形成される二つの揺動部材50a,50bの頂点の角度が変化し、第1の揺動部材50aの上端51aと、第2の揺動部材50bの下端52bとの距離が変化することとなるが、この距離の変化に応じて、各端部51a,52bは長孔53,54に沿って摺動することとなるのである。
なお、ベース部4の上位に設けられる長孔53は短尺に設けられ、下位の長孔54は長尺に設けられることにより、専ら第2の揺動部材50bの下端52bが大きく摺動するものとなる。他方の長孔53は、後述する偏心カム57の作用による軸心の移動のために設けられるものであり、長孔53とするか、または遊びを有する程度であってもよい。
このように、起動部材5は、二つの揺動部材50a,50bによって形成される山形の頂点の角度を変化させることによって、第2の揺動部材50bの下端52bを摺動させることから、この下端52bが作用部として機能することとなる。すなわち、この下端(作用部)52bには、連結部8が連結され、さらに、この連結部8には枢軸7が連結されることにより、山形に形成される起動部材5の頂角が変化することに応じて、枢軸7を昇降させる操作力を与えることとなるのである。
また、枢軸7に対して上向きに付勢する付勢手段9が設けられており、この付勢手段による付勢力を得ることにより、起動部材5による下降方向への操作力が作用しない状態では、当該枢軸7は上方方向へ付勢されることとなる。そして、この枢軸7への付勢は、連結部8を介して第2の揺動部材50bの下端(作用部)52bにも同様の付勢力を作用させることとなり、結果的に、山形に形成される起動部材5の頂角が鋭角となる方向へ付勢することとなる。その結果として、付勢手段9の付勢力が作用するときは、起動部材5の頂点はベース部4から外方へ突出する状態となるのである。
ところで、図4に示すように、付勢手段9は、圧縮コイルバネが圧縮された際の反発力によって付勢し得る付勢部材91と、この反発力を受ける伝達部92とを有している。詳細には、伝達部92は、圧縮コイルバネ91を挿通して、その反発力を所定方向に誘導する規制軸93と、この規制軸93に対して鍔状に固定されるストッパ94とで構成され、規制軸93は、スリーブ体95を介して間接的に枢軸7に連結されるものである。ストッパ94がスリーブ体95から適宜間隔を有して設置されることにより、圧縮コイルバネがスリーブ体95に到達することなく、規制軸93を介して反発力を枢軸7に作用することができるものである。本実施形態における規制軸93は、図示のように、ベース部4の下部において二箇所を挿通するように設けられることにより、移動方向を軸線方向に一致させることができ、反発力が常に同じ方向になるようにしている。これは枢軸7との連結に際してスリーブ体95を介することから、枢軸7の周方向に回動することを避けるためである。ただし、このように、規制軸93の軸線を厳密に規制する必要はなく、概ね上向きに反発力を作用させる構成としてもよく、規制軸93の移動を円滑にするため、適度な遊びを有するものとしてよい。
従って、圧縮コイルバネ91の反発力は、ストッパ94を介して、規制軸93に作用し、この規制軸93に作用する反発力は、これに連結される枢軸7に対して作用することとなる。なお、枢軸7は、規制軸93の上端に形成されるスリーブ体95のほかに、係止片6の基端61,62に設けられる貫通孔63,64および連結部8の下端部81を同時に挿通するものであり、この枢軸7の移動により、係止片6の基端61,62および連結部8の下端81を同時に作動させるものである。
起動部材5がベース部4に没した状態を図5に示す。図5(a)は全体構造を示し、図5(b)はVB-VB断面を示す図である。ただし、図中におけるハッチングは省略するものとし、構成を明確にするために、一部の部材については断面としないものが存在する。これらの図に示されるように、二つの揺動部材50a,50bの頂点が直線状(頂角が180°)となる状態において、第2の揺動部材50bの下端(作用部)52bは、極限まで下降した状態となり、係止片6の基端61,62は、ベース部4の収容領域42の内部に深く入り込み、裏面部43と表面部46との間隙に収容され得るものである。
このとき、係止片6の外部表面がベース部4の表面部46の上端縁(収容領域42の開口端縁)に摺接することとなり、この表面部46の上端縁に摺接する部分を支点とし、かつ基端61,62を作用点として、係止片6に対する回動方向への駆動力を発生させることができるものである。そして、図示のように基端61,62が十分に下位に移動された状態で係止片6は起立状態となるものである。なお、この起立状態における係止片6の自由端65と、起動部材5(揺動部材50a,50b)の表面との間には、僅かに間隙を形成しているが、この間隙に被係止部材が配置されることにより、当該被係止部材を挟持し、結果的にウイング扉の係止を可能にするものである。
係止片6は、長尺な板状部材で構成され、その一部を二箇所で折曲して基端側と自由端側とが平行な状態としており、起立状態において自由端側がベース部4の外方に位置することができる形状としている。また、全体的な長さは、起立状態においてベース部4の上端近傍に到達する程度に設けられている。この係止片6の基端61,62は、係止片6の両側から適宜面積に相当する範囲を張り出させるように、部分的に折曲した二枚の板状体で構成しており、当該張出部分(基端部分)は全体として断面コ字状に形成されている。張り出し方向は、係止片6をベース部4に装着した際、そのベース部4の裏面部43に向かっており、かつ係止片6の表面に直交方向としている。また、係止片6の基端(張出部分)61,62に貫通孔63,64が穿設されることにより枢軸7の挿通を可能としている。この貫通孔63,64への枢軸7の挿通により、係止片6の基端61,62が支承される構成となっているのである。
このように、係止片6は、全体として基端側と、起立状態においてベース部4の外方に位置する自由端側とで構成されることにより、起立状態における重心位置を、基端側中心よりもベース部4の外方に設定することができる。また、回動の中心となる枢軸7によって支持される位置(貫通孔63,64の穿設場所)が基端(張出部分)61,62であることから、当該回動軸(枢軸)7を中心に、係止片6の重心が傾倒方向に作用する状態に設定することができる。従って、係止片6は、枢軸7を中心として傾倒する方向へ自重を作用させており、基端側が収容領域42に収容されることにより起立状態へ強制させることができるものである。
また、起動部材5を構成する第1の揺動部材50aの上端51aは、偏心カム57が固着されており、当該上端51aの回動時には偏心カム57を同時に回動させるものとしている。さらに、この偏心カム57のカム面は、ベース部4の上部壁面部40に当接することにより、回動方向が規制されるようになっている。例えば、図5(b)に示すように、長径側を上部壁面部40に対して斜状に配置することにより、カム面は、上部壁面部40を摺動しつつ、長径方向を変更させながら回動することとなる。そのため、前述の付勢手段9による付勢力が、当該付勢手段9に対して末端となる第1の揺動部材50aの上端51aまで作用することにより、偏心カム57のカム面が上部壁面部40の相対的な位置関係により、所定方向(自由端52aをベース部4から突出させる方向)の回動に誘導させることができるのである。
上記の偏心カム57は、起動部材5がベース部4に埋没する際(山形の頂角が拡大する際)において、上部壁面部40との摺接位置を短径方向から長径方向へ移動させることとなり、第2の揺動部材50bの下端(作用部)52bを下降させる場合の可動域を拡張する方向へ移動することとなる。この可動域の拡張は僅かであるが、逆向きに(長径方向から短径方向へ)摺接位置を変化させるなどによって可動域を縮小させないことにより、枢軸7を所定位置まで十分に降下させることができることとなる。
上記のような構成により、ウイング扉の端縁に装着される被係止部材を変更することなく、当該被係止部材を係止手段3に向かって移動させることにより、当該被係止部材を係止することができることとなる。また、この係止状態は、係止片6の回動によるものであるが、昇降する枢軸7を中心として回動することから、係止片6を傾倒状態から起立状態までの範囲で変化させることができるとともに、当該枢軸7の昇降は、起動部材5による操作力と、付勢手段9による付勢力とによることから、被係止部材が起動部材5を押圧させることができることによって、係止の操作を行うことができることとなる。
<第1の実施形態の作動態様>
次に、本実施形態の作動態様について説明する。まず、被係止部材2を係止する場合について説明する。図6は、係止手段3に対して被係止部材2が接近する際の軌跡を示す図である。図6(a)に示すように、被係止部材2は、ウイング扉の端縁(側面構成部分の端縁)に設けられていることから、当該屋根構成部分に吊下される状態の側面構成部分は、閉塞される直前において、既に自重により十分に撓んでおり、その端縁はほぼ横向きに移動することとなる(図1参照)。上記のような被係止部材2の軌道により、通常状態において、被係止部材2は、その下端を係止手段3の起動部材5の突出部分(山形の頂点)よりも下位に到達する状態でほぼ横向きに(僅かに曲線的に)接近することとなるのである。
上記のような通常状態に対し、荷台に積載される荷物の重量バランスによってウイング扉が多少変形する場合や、ウイング扉が比較的小型である場合などの種々の要因が作用する場合には軌道が異なる。例えば、図6(b)に示すように、被係止部材2の横向き(僅かな曲線)軌道の傾斜が急勾配となる(または曲線の曲率が小さくなる)ことがあり得る。このような場合であっても、被係止部材2の下端は、最終的には係止手段3と係止できる位置まで移動することから、軌道の終点においては、起動部材5の突出部分(山形の頂点)近傍に到達し得るものである。
そこで、被係止部材2と係止手段3との関係とともに、被係止部材2を係止する場合の作動態様について図7および図8に基づいて説明する。被係止部材2を係止するためには、前述のウイング扉を閉鎖させる方向へ駆動(シリンダを操作)することにより、係止手段3に接近させるものである。このウイング扉の駆動により、被係止部材2は、係止手段3の起動部材5に向かって移動することとなる。そこで、まず、図7(a)に示すように、被係止部材2が起動部材5に到達するよりも前の状態は、当該起動部材5は、その中間部分(山形の頂点部分)の近傍をベース部4から突出させた状態となっている。これは、付勢手段9の付勢力によって枢軸7が上昇されることにより、連結部8を介して作用部52bも強制的に上昇されることによるものである。なお、このときの係止片6は、自重により傾倒方向へ回動しており、その自由端65は被係止部材2の移動に支障がない位置に配置されるものである。
被係止部材2がさらに移動することにより、図7(b)に示すように、被係止部材2が起動部材5に到達することができ、起動部材5を押圧することとなる。この被係止部材2による起動部材5の押圧は、具体的には、二つの揺動部材50a,50bが相互に連結される側の端縁であり、この両端縁を同時に押圧することとなる。この両端縁の押圧により、山形の頂点がベース部4に向かって誘導され、頂点の角度を拡大させながら作用部52bを下降させることとなる。
なお、ウイング扉の状態が異なることにより、被係止部材2の横向き軌道が急激に傾斜する場合であっても、被係止部材2の下端が起動部材5の中間部分(山形の頂点部分)よりも下位であれば、前記と同様に起動部材5を押圧することとなる。また、被係止部材2の下端が起動部材5の中間部分よりも上位となる場合には、二つの揺動部材50a,50の両端縁を同時に押圧しない(押圧できない)ことがあるとしても、少なくとも上方の揺動部材50aを押圧することにより、結果的に起動部材5を押圧することによって、同様の効果を得ることができる。
上記のような作用部52bの下降により、枢軸7が付勢手段9の付勢力に抗しつつ下降することとなり、係止片6の基端61,62をベース部4の収容領域42に侵入させることができる。このように、係止片6の基端61,62が収容領域42に侵入すると、係止片6の一部が、ベース部4の表面部46の上端縁に摺接することとなり、基端61,62と摺接点との相対的な位置関係により、係止片6は起立する方向へ回動することとなるのである。
さらに、被係止部材2が移動することにより、図7(c)に示すように、さらに起動部材5は被係止部材2による押圧を受け、枢軸7を一層下方へ移動させることとなる。これにより、係止片6の基端61,62は下降し、係止片6の全体的な姿勢も起立状態へ誘導されることとなる。
また、さらに被係止部材2が起動部材5を押圧することにより、図8(a)および(b)に示すように、係止片6は、徐々に起立状態となるように角度を変化させることとなる。これにより、係止片6の自由端65は被係止部材2に接近することとなり、係止可能な状態に近づけることができる。
ここで、付勢手段9を構成する規制軸93は、ベース部4の下部において二箇所を挿通させるように設けることによって、その軸線が安定し、付勢部材(圧縮コイルバネ)91の付勢力を一定に維持し得るものである。
上記の状態からさらに、被係止部材2が起動部材5を押圧することにより、図8(c)に示すように、起動部材5を構成する二つの揺動部材50a,50bの両表面は直線状(頂角が180°)となり、枢軸7を限界状態まで下降させることとなる。このとき、係止片6の基端61,62も十分に下降することとなり、係止片6は全体として起立状態となる。この係止片6の起立状態により、自由端65は、被係止部材2の外側面に当接(または近接)した状態となり、被係止部材2を係止する状態となり得るものとなる。また、被係止部材2が起動部材5を押圧する状態に存在する限り、係止片6による係止状態は継続され得るものとなる。
次に、係止片6による被係止部材2の係止を解除する場合の作動態様を説明する。被係止部材2の係止を解除する場合は、前述のウイング扉を開放させるように駆動するのである。このウイング扉の開放方向への駆動により、被係止部材2は、起動部材5から離脱する方向へ移動し、実質的には係止状態とは逆の態様となる。すなわち、被係止部材2は、起動部材5に対する押圧を徐々に解除させ(図9(c)参照)、これに応じて係止片6を傾倒させることとなる。
すなわち、被係止部材2による起動部材5に対する押圧を解除する程度に応じ、起動部材5は、付勢手段9の付勢力により、ベース部4から突出する方向へ(二枚の揺動部材50a,50bを山形に変形するように)誘導され、これに伴って、枢軸7が上昇することとなる。この枢軸7の上昇により、係止片6の基端61,62も上昇し、開放方向への自重によって傾倒方向へ回動することとなる。ただし、係止片6の基端側がベース部4の表面部46に摺接していることから、限定的な状態となるものである(図7(b)、(c)および図8(a)参照)。その後、被係止部材2の移動が進行し、起動部材5から完全に離脱することにより、係止片6は、当初の状態まで開放することができることとなるのである(図7(a)参照)。
本実施形態の作動態様は上記のとおりであるから、係止片6による被係止部材2の係止の操作および解除の操作は、いずれもウイング扉の閉鎖および開放の操作によって行うことができる。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、図9に示すように、基本的には、第1の実施形態と同様であるが、次の二点について異なる構成としている。第1の構成は、係止片6の基端61,62における枢軸7の支持(挿通)について、遊びを有する状態とするため、貫通孔63,64を長孔に形成したものである。この長孔63,64は、少なくとも係止片6が起立状態にあるとき、上下方向への移動を許容するための遊びを形成するものである。また、第2の構成は、ベース部4の裏面43の内側において、係止片6の基端61,62の端縁に摺接し、当該基端61,62の位置を所望状態に誘導するため、裏面43を隆起させた誘導部49を設けたものである。この誘導部49は、係止片6が起立状態となった際に、その基端61,62の位置を安定させるためのものであり、基端61,62は、この誘導部49とベース部4の表面46とで形成される間隙に配置されるように誘導されるものである。
第1の構成として、基端61,62における遊びの形成により、図示のように、係止片6が起立状態となる場合には、長孔63,64の内部周縁のうちの上縁側が、枢軸7によって支持される(摺接される)状態に誘導することができる。これは、枢軸7は、起動部材5による操作力と付勢手段9による付勢力とが釣り合った状態で固定するが、係止片6はこれらによって固定されるものでないことから、起立状態の係止片6の自重が下向きに作用することによって、係止片6の下降を許容し得るのである。すなわち、長孔63,64によって形成される遊びの範囲内において、係止片6が移動自在となり、係止片6の自重が作用する方向へ移動し得るのである。
また、第2の構成として、誘導部49を設けることにより、上述のように起立状態で下降するとき、基端61,62は、表面部46と、裏面部43の誘導部49との間に侵入し、係止片6の傾倒方向への回動を制限することができるようにしている。これは、枢軸7を中心に回動する際、基端61,62の端縁の一部が誘導部49に当接することで、制限されるからである。すなわち、基端61,62の端縁(これを基端側端縁と称する場合がある)は、断面形状を弧状(円弧に限定されず、複数の円弧が連続する場合を含む)とする弧状面で構成されており、長孔63,64に挿通される枢軸7は、当該長孔63,64のいずれの位置に配置される場合であっても、この弧状面の中心点とは異なる位置に配置されるものとなっている。そのため、枢軸7を中心として係止片6が回動するとき、基端61,62は、裏面部43と表面部46との間で回動可能であるが、表面部46と誘導部49との間では回動できない状態とすることができる。特に、基端61,62が表面部46と誘導部49との間に侵入し、かつ枢軸7が長孔63,64の上端側に位置する場合に、回動時の径を長くさせる形状とすることにより、基端側端縁が誘導部49に接触することにより回動が制限されるように構成することができるのである。なお、この場合であっても、枢軸7が移動(上昇)できれば、傾倒方向への回動が可能となるため、被係止部材の係止状態を解除することができるものである。
<第2の実施形態の作動態様>
次に、本実施形態の作動態様について説明する。図10および図11に係止する場合の作動態様を示し、図12および図13に係止を解除する場合の作動態様を示す。なお、被係止部材2を係止またはその解除のために、前述のウイング扉を駆動(シリンダを操作)すること点は第1の実施形態における場合と同様である。また、被係止部材2が起動部材5に到達していない状態についても第1の実施形態の場合と基本的に同様である。ただし、図10(a)に示すように、係止片6の基端61,62における長孔63,64に挿通される枢軸7は、当該長孔63,64の内部周縁のうちの下縁側に摺接した状態となっている。これは、係止片6の傾倒による自重の作用により、ベース部4の表面部46の上端縁を支点に基端61,62が上向きに押し上げられるためである。
そこで、ウイング扉の駆動により、被係止部材2は、係止手段3の起動部材5に向かって移動し、図7(a)に示すように、被係止部材2が起動部材5に到達していない状態から、被係止部材2が徐々に起動部材5に接近し、図7(b)に示すように、被係止部材2が起動部材5に到達すると、これ以降において、起動部材5を押圧することとなる。
被係止部材2が起動部材5を押圧すると、図10(c)に示すように、第2の揺動部材50bの作用部52bが下降することとなり、連結部8を介して操作力が枢軸7に伝達される。これにより、枢軸7が付勢手段9の付勢力に抗しつつ下降することとなり、係止片6の基端61,62をベース部4の収容領域42に侵入させることができる。このときの枢軸7は、長孔63,64の内部周縁のうちの下縁側に摺接した状態を維持し、当該下縁側を押し下げることで、円滑に基端61,62を下降させることができる。このように、係止片6の基端61,62が収容領域42に侵入すると、係止片6の一部が、ベース部4の表面部46の上端縁に摺接することとなり、基端61,62と摺接点との相対的な位置関係により、係止片6は起立する方向へ回動することとなるのである。
また、さらに被係止部材2が起動部材5を押圧することにより、図11(a)および(b)に示すように、係止片6は、徐々に起立状態となるように角度を変化させることとなる。これにより、係止片6の自由端65は被係止部材2に接近することとなり、係止可能な状態に近づけることができる。
ここで、付勢手段9を構成する規制軸93は、第1の実施形態と同様に、ベース部4の下部において二箇所を挿通させるように設けることによって、その軸線93を安定させることが可能であるが、例えば、一箇所のみ挿通させる場合とすることも可能である。このような場合には、起動部材5から伝達される操作力と付勢手段による付勢力とが、枢軸7において相互に対向し、枢軸7を中心に屈曲することがある。そこで、枢軸7が適度に下降し、付勢手段9による付勢力が強力となる状態(図11(a)および(b)のような状態)においては、係止片6の基端61,62の端縁を、誘導部49によって表面部46の方向へ誘導させることにより、上記のような屈曲を解消させることができる。この場合の誘導部49は、図11(a)および(b)に示すような係止片6の基端61,62の端縁との間に間隙を形成するものではなく、摺接するような形状または隆起の状態とするものである。
上記の状態からさらに、被係止部材2が起動部材5を押圧することにより、図11(c)に示すように、起動部材5を構成する二つの揺動部材50a,50bの両表面は直線状(頂角が180°)となり、枢軸7を限界状態まで下降させることとなる。このとき、係止片6の基端61,62も十分に下降することとなり、係止片6は全体として起立状態となる。この係止片6の起立状態により、自由端65は、被係止部材2の外側面に当接(または近接)した状態となり、被係止部材2を係止する状態となり得るものとなる。
このとき、係止片6の起立状態を維持するため、基端61,62は、誘導部49によってベース部4の表面部46に向かって誘導され、その結果として、当該誘導部49と表面部46の間に配置されることとなる。このときの基端61,62は、長孔63,64による枢軸7との遊びによって移動が自在となっており、図11(c)に示されているように、枢軸7は長孔63,64の中間位置付近において支承している状態となる。
さらに、図11(d)に示すように、係止片6が起立状態となることにより、当該係止片6の自重を下向きに作用させることができることとなり、これにより、僅かながら長孔63,64によって形成される遊びの範囲内において下降することができるのである。すなわち、枢軸7は、起動部材5の可動による限界位置(最下点)まで移動して安定しており、また、係止片6は回動を制限されている一方で、枢軸7との間で遊びを形成している基端61,62の長孔63,64は、その遊びの範囲において位置の変動が可能であることから、係止片6の自重を当該遊びによって許容される方向(下向き)に作用させることができるのである。この係止片6の下降により、基端61,62は、ベース部4の表面部46と誘導部49との間に侵入し、係止片6は、その起立状態が維持されることとなる。この起立状態の維持により、係止片6の自由端65は、被係止部材2の開放を制限し、当該被係止部材2を係止することとなるのである。
なお、係止片6の下降を可能にするために、当該下降時に基端61,62の端縁が接する誘導部49の摺接面は、下向きに直線状としている。また、この下降により、枢軸7は、長孔63,64の上縁部分に当接した状態となる。そして、係止片6が傾倒方向へ回動する場合は、枢軸7を中心とすることとなるが、当該枢軸7は、上記のとおり長孔63,64の上縁に当接する位置となっており、その回動の中心が起立状態への回動の際とは異なり、基端61,62の端縁が回動する際の径が長くなるため、基端61,62の端縁は、誘導部49との摺接による変更可能な状態を越える強い接触状態となり、その回動が制限されることとなるのである。従って、係止片6の基端61,62に楔を刺した状態と同様の効果を得ることとなり、基部61,62が回動できない限り(被係止部材2が大きく離脱しない限り)、仮に付勢手段9による付勢力が作用したとしても、枢軸7は上向きに移動することができず、係止片6は傾倒方向への回動が阻止されることとなる。これにより、係止状態における振動等の影響により、不測の係止解除という事態の招来を回避し得ることとなるのである。
次に、係止片6による被係止部材2の係止を解除する場合の作動態様を図12および図13に基づいて説明する。被係止部材2の係止を解除する場合は、前述のウイング扉を開放させるように駆動(シリンダを操作)するのであるが、このときの被係止部材2の軌跡は、閉塞時とは異なるものである。すなわち、ウイング扉を開放させようとする場合、屋根構成部分がシリンダによって押し上げられ、これに吊下する状態の側面構成部分が引き上げられることから、側面構成部分の端縁(すなわち被係止部材2)は、当初上向きに移動し、適当な位置まで上昇した後に横向きへ移動することとなる。これは、係止片6によって係止されている場合は顕著であるが、係止されていない場合でもほぼ同様に移動することとなるものである。
そこで、図12(a)に示すように、被係止部材2が係止片6によって係止された状態から、ウイング扉を作動することにより、図12(b)に示すように、被係止部材2は係止された状態のまま上昇することとなる。この図に示されるように、被係止部材2の上昇の程度は少ない場合は、係止片6による係止の状態に変化は生じない。すなわち、係止片6による起立状態は維持されており、当該係止片6は傾倒することができない状態となっている。これは、ウイング扉の状態の変化に応じて係止状態が容易に解除されないためである。
そして、図12(c)に示すように、さらに被係止部材2が上昇し、被係止部材2が十分な高さまで移動することにより、その先端(下端)21は、起動部材5の頂点よりも上方に到達する。起動部材5は二つの揺動部材50a,50bによって構成されていることから、一方の揺動部材50bから離脱したのみでは、起動部材5は作動しないため、残るもう一方の揺動部材50aの約半分以下のみを当接できる位置まで、被係止部材2が上昇することにより、当該揺動部材50aが僅かに揺動(回動)できる状態となり、この僅かの回動によって、起動部材5が作動可能な状態となり、枢軸7を上昇させることができる。
このときの揺動部材50aの回動および枢軸7の上昇は、付勢手段9の付勢力による作用であり、揺動部材50aの回動方向は、偏心カム57によって、中間部分(山形の頂点となるべき部分)をベース部4の外方へ突出させる向きに誘導されるものである。
さらに、被係止部材2が上昇することにより、図12(d)に示すように、起動部材5の中間部分は一層ベース部3から突出することとなり、枢軸7は適宜位置まで上昇することとなる。この枢軸7の上昇により、係止片6の基端61,62の端縁が、ベース部4の表面部46と誘導部49の間隙部分から脱することとなり、係止片6は、枢軸7を中心とする回動が可能となる。すなわち、係止片6は、前述のように、枢軸7を中心として傾倒する方向へ自重を作用させていることから、当該係止片6が十分に上昇し、基端側が収容領域42から部分的に脱する状態において、自重により傾倒方向への回動を開始し得ることとなる。
係止片6の基端61,62が、ベース部4の表面部46と誘導部49との間隙から脱する状態となることにより、当該基端61,62は、誘導部49による回動の制限を受けることがないため、自重による傾倒方向へ回動することが可能となる。このとき、図13(a)に示すように、未だ枢軸7は、長孔63,64の内部周縁のうちの上縁側に当接した状態であり、係止片6は、この状態において枢軸7を中心に回動し得る範囲において僅かに傾倒することとなる。これは、枢軸7が係止片6(長孔63,64)に対して押し上げている状態が維持されているからである。被係止部材2がさらに上昇(または、ベース部4から離れる方向へ移動)することにより、図13(b)に示すように、起動部材5が大きくベース部4から突出し、これに伴って枢軸7が上昇する。この枢軸7の移動によって、係止片6の基端61,62はその長孔63,64の上縁側を押し上げられ、係止片6の基端側が収容領域42から部分的に脱する状態となり、大きく傾倒することができる。つまり、当該基端側が収容領域42から脱する程度に応じて、係止片6の外部表面がベース部4の表面部46の上端縁(収容領域42の開口端縁)に摺接する範囲において傾倒可能な状態となる。なお、この状態において、係止片6の傾倒とともに、基端61,62の長孔63,64の遊びの範囲で枢軸7との位置関係を変動することが可能となり、枢軸7は、その長孔63,64の中間付近に位置する状態となる。この枢軸7との相対的な位置関係の変動によっても傾倒状態は大きくなり得る。
被係止部材2が起動部材5から離脱するまで移動するとき、図13(c)に示すように、枢軸7は可能な範囲における最も上位にまで上昇し、係止片6は最大限に傾倒することができることから、当初の状態に復元させることができるのである。
本実施形態の作動態様は上記のとおりであるから、係止片6による被係止部材2の係止の操作および解除の操作は、いずれもウイング扉の閉鎖および開放の操作によって行うことができる。また、係止状態においては、係止片6を起立状態で維持させることができることから、ウイング扉の傾きや運転中の振動により、被係止部材2が、係止手段3に対する相対的な関係が多少変化したとしても容易に係止が解除されることがなく、係止状態を十分継続させることができるものとなる。
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図14に本実施形態の概略を示す。なお、図14(a)は分解した状態を示し、図14(b)は組付けた状態を示している。これらの図に示されているように、本実施形態は、基本的に第1の実施形態と同様であって、また、係止片6の基端61,62における長孔63,64およびベース部4の裏面43に設けられる誘導部49の構成は、第2の実施形態と同様である。つまり、本実施形態では、付勢手段9を構成する伝達部92に、保持部96を追加的に装着した点において第1および第2の実施形態と異なるものである。この保持部96は、係止片6による被係止部材2を係止した状態において(係止片6が起立状態で下降したとき)、係止片6の基端61,62の端縁が当接し得るように設けられるものであり、係止の解除動作に際して、係止片6を直上に押し上げるために設けられるものである。これは、前述の実施形態2において、係止片6の基端61,62が誘導部49と表面部46との間に侵入することによって、基部61,62の回動を抑制しているため、係止片6に傾倒方向の力が作用すると、付勢手段9による上昇が阻害される可能性があるため、枢軸7の上昇時において、係止片6を傾倒させないために設けたものである。従って、枢軸7と同時に上昇できるように、伝達部92は、規制軸93と、この規制軸93に鍔状に設けられたストッパ94と、このストッパ94に一体化される保持部96とで構成されるものとしている。
保持部96をストッパ94と一体化するために、保持部96には、規制軸93を挿通し得る貫通孔97を備えており、さらに、ストッパ94と同程度の外径を有する円環部材98を装着するものとしている。従って、保持部96をストッパ94と円環部材98との中間に配置することができ、円環部材98が付勢部材(圧縮コイルバネ)91による付勢を受けることにより、保持部96をストッパ94に押圧することができるようになっている。なお、付勢部材91によって保持部96を直接押圧させる場合には、円環部材98を省略することができる。すなわち、保持部96は、付勢部材91によって付勢され、ストッパ94との間で挟持される状態とすることができる。
保持部96は、全体として四辺形の板状部材で構成され、少なくとも対向する二辺が、ベース部4の収容領域42の内側壁面(図は側面部を例示している)に当接し、当該収容領域42の内部において向きが固定化されるものとしている。また、係止片6の基端61,62の端縁に当接し得る位置に摺接面99が構成され、係止片6の基端61,62の端縁が保持部96に接近するとき、摺接面99が基端61,62の端縁に摺接することができるものとなっている。
また、図15に示すように、摺接面99は、板状部材の肉厚を徐々に変化させることにより、係止片6の基端61,62の張り出し方向へ上向きに隆起させており、その隆起形状は、起立状態となった係止片6の基端61,62の端縁と同形とするものであり、摺接時には適宜範囲において面接触され得るものとなっている(図15(a)参照)。
なお、第1の実施形態と同様に、ストッパ94は枢軸7(スリーブ体95)から適宜間隔を有して配置されることから、保持部96が設置される位置についても枢軸7(スリーブ体95)から適宜間隔を有する状態となっており、その間隔は一定となるものである。そのため、枢軸7を中心として係止片6が回動するとき、その基端61,62の端縁との間には適当な間隙が形成される状態となる(図15(b)参照)。その一方で、係止片6が起立状態となった場合には、係止片6が下降することにより摺接可能な状態なり得る(図15(a)参照)。
<第3の実施形態の作動態様>
ここで、本実施形態の作動態様として、係止片6が回動するときの保持部96との関係を中心に説明する。図16~図18は、係止片6の回動状態を示すものである。なお、図16は係止片6が傾倒状態から起立状態へ移行する場合を示し、図17および図18は、係止片6が起立状態から傾倒状態へ移行する場合を示すものである。
まず、係止片6が起立状態へ移行する場合には、図16に示されているように、係止片6が傾倒した状態において、係止片6の基端61,62は、保持部96に接近しているものの厳密には摺接されておらず、回動が自在な状態となっている(図16(a)参照)。この状態から被係止部材2が接近し、枢軸7を下降させることにより、係止片6は起立状態へ向かって回動するが、係止片6の基端61,62の末端部は、保持部96(特に隆起部分)から離れる方向へ回動することとなり、当該基端61,62と保持部96の間の間隔は拡大することとなる(図16(b)参照)。これは、基端61,62の端縁が所定の曲率による弧状面によって形成されていることによるものであり、係止片6が枢軸7を中心に回動する際、長孔63,64に挿通される枢軸7は、長孔63,64のいずれの位置においても弧状面の中心から偏った状態となるように構成されているからである。
さらに、被係止部材2の接近より、係止片6が回動することにより、上述と同様に、係止片6の基端61,62と保持部96との間隔は拡大し、最終的に、係止片6が起立状態となる(図16(c)参照)。この回動の途中において、係止片6の基端61,62が保持部96に接することはなく、従って、係止片6の回動が阻害されることはない。
そして、起立状態となった係止片6が、下方に移動するとき、すなわち、第2の実施形態の場合と同様に係止片6の自重を下向きに作用させることによって、係止片6が長孔63,64による遊びの範囲内で下降するとき、係止片6の基端61,62の端縁は、保持部96との間隔を縮小させ、両者が摺接することとなる(図16(d)参照)。この状態において、第2の実施形態と同様に、基端61,62が、誘導部49と表面部46との間に侵入することにより係止片6の逆向きの回動が制限されることとなる。この回動の制限によって、被係止部材2が、係止手段3から離脱することを抑制し得ることとなるのである。
次に、係止片6が傾倒状態へ移行する場合には、図17および図18に示されているように、被係止部材2が係止されている状態(図17(a)参照)から、被係止部材2が上方へ移動することにより、当該被係止部材2が起動部材5から徐々にすり抜けるように移動する(図17(b)参照)。そして、被係止部材2が適度に上昇するとき、第2の実施形態と同様に、その先端(下端)21は、起動部材5の頂点よりも上方に到達して、上位の揺動部材50aの一部のみを当接する状態となることにより、当該揺動部材50aが僅かに揺動(回動)可能となる。この起動部材5の変化に伴って枢軸7が上昇することとなる(図17(c)参照)。このとき、枢軸7は、長孔63,64の上端側に当接した状態で基端61,62を押し上げることとなる。また、基端61,62は、端縁が保持部96に当接した状態が維持されることから、係止片6は傾倒されることなく直上方向へ上昇されるものである。このように係止片6を傾倒させずに上昇させることにより、基端61,62が誘導部49と表面部46との間で膠着することなく、円滑に押し上げることができることとなる。
そして、被係止部材2がさらに上方することにより、起動部材5が一層突出し得ることとなり、枢軸7をさらに上昇させることとなる(図17(d)参照)。これに伴い、付勢手段として機能する圧縮コイルバネが伸長することとなることから、保持部96に対する付勢力が低下することとなり、低下した付勢力に抗して係止片6の回動を許容させることができることとなる。また、基端61,62は、誘導部49よりも上位に移動することとなり、この状態と相俟って回動することができるものである(図18(a)参照)。このとき、枢軸7は、基端61,62の長孔63,64の上縁側を押し上げているため、当該枢軸7は長孔63,64の上縁側に当接した状態により、係止片6が回動できる範囲で傾倒することとなる。
係止片6が回動を開始すると、被係止部材2は係止される状態から脱することとなり、さらに移動範囲が許容され、被係止部材2は、起動部材2から離れる方向へ移動する(図18(b)参照)。これにより、当該起動部材5が大きく突出し、枢軸7の上昇とともに、係止片6が大きく傾倒することとなる。このときの枢軸7と基端61,62の長孔63,64との相対的に位置関係は変動し、長孔63,64の中間付近に枢軸7が存在する状態となる。この相対的な位置関係の変動により係止片6の傾倒は大きくなり得る。さらに、被係止部材2が起動部材5から離脱するまで移動することにより、係止片6は最大限に傾倒し、係止前の状態に復元されることとなる(図18(c)参照)。
このように、保持部96は、枢軸7から一定の間隔を有して設けられることにより、係止片6の基端61,62の端縁が接近するときのみ、当該端縁に摺接し、その回動を制限することとなるのであり、その摺接可能な状態が、起立状態において下降した場合に限定されることから、係止片6による被係止部材2の係止状態を維持させるように機能させることができるのである。
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、上記実施形態は本発明の一例を示すものであって、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではない。従って、実施形態において例示した構成要素を変更し、または他の部材を追加することは可能である。
例えば、上記実施形態のベース部4は、起動領域41と収容領域42に区別し、起動領域は、裏面部43および側面部44,45によって断面コ字状とし、収容領域42は、さらに表面部46を設けて四辺形の筒状としたが、この形状は適宜変更可能である。
また、係止片6は、基端側と自由端側とを平行に構成し、中間位置において折曲部分を形成したが、この折曲部分は湾曲によって構成してもよい。また、付勢部材91として圧縮コイルバネを使用したが、これに代えて弾性体による付勢部材を構成してもよい。
さらに、上記実施形態における枢軸7は、連結部8の下端部81および付勢手段9のスリーブ体95を同時に挿通するものであり、これらの支持軸としても機能させている。そのため、係止片6の基端61,62における長孔63,64に対して遊びを有して支承し得る本来的な枢軸は、図示の枢軸7の両端近傍に限定される部分となるが、例えば、連結部8の下端部81を軸部として、これを長孔63,64に挿通する構成としてもよい。
それぞれの部材を回動自在に軸支する各軸(例えば支持軸55,56など)は、図中において単純に挿入した状態として描いているが、この両端は抜け落ち防止のピンなどが設けられることは説明するまでもないことであり、上記実施形態では省略している。