JP7174516B2 - 排ガス浄化用触媒 - Google Patents

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Description

本発明は、排ガス浄化用触媒に関する。詳しくは、ウォールフロー型の排ガス浄化用触媒に関する。
一般に、内燃機関から排出される排ガスには、炭素を主成分とする粒子状物質(PM:Particulate Matter)、不燃成分からなるアッシュなどが含まれ、大気汚染の原因となることが知られている。そのため、粒子状物質の排出量については、排ガスに含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などの有害成分とともに年々規制が強化されている。そこで、これらの粒子状物質を排ガスから捕集して除去するための技術が提案されている。
例えば、上記粒子状物質を捕集するためのパティキュレートフィルタが内燃機関の排気通路内に設けられている。例えばガソリンエンジンは、ディーゼルエンジンよりは少ないものの一定量の粒子状物質を排ガスとともに排出するため、ガソリンパティキュレートフィルタ(Gasoline Particulate Filter:GPF)が排気通路内に装着される場合がある。かかるパティキュレートフィルタとしては、基材が多孔質からなる多数のセルから構成され、多数のセルの入口と出口を交互に閉塞した、ウォールフロー型と呼ばれる構造のものが知られている。ウォールフロー型パティキュレートフィルタでは、セル入口から流入した排ガスは、仕切られた多孔質のセル隔壁を通過し、セル出口へと排出される。そして、排ガスが多孔質のセル隔壁を通過する間に、粒子状物質が隔壁内部の細孔内に捕集される。
また、近年ではさらなる浄化性能向上のために、パティキュレートフィルタに触媒を担持させることが検討されている。例えば、NOxを浄化することができる有用な触媒としてSCR触媒(Selective Catalytic Reduction:選択還元型NOx触媒)を備えたフィルタが用いられている。SCR触媒は、典型的には銅担持ゼオライトや鉄担持ゼオライト等のゼオライトからなり、該SCR触媒に吸着したアンモニアの還元作用(例えば4NH+2NO+2NO→4N+6HO)により排ガス中のNOxを浄化する作用を示す。また、NOx浄化で余ったアンモニアの外部排出(スリップ)を抑制するために、SCR触媒と酸化触媒とを併用したファイルの開発が進められている。この種の触媒を担持したフィルタ触媒に関する従来技術として、特許文献1が挙げられる。
特開2016-211582号公報
特許文献1には、ウォールフロー型パティキュレートフィルタにおいて、SCR触媒を隔壁の内部に配置し、酸化触媒を隔壁の壁上(壁表面)に積層したフィルタ触媒が提案されている。しかし、特許文献1に記載の技術では、SCR触媒を隔壁の壁内全体に配置しているため、PM堆積時に隔壁の細孔内が詰まりやすく、圧力損失(圧損)が上昇するという欠点がある。圧損の上昇を抑えつつ、良好な浄化性能とNHのスリップ抑制とを両立し得る排ガス浄化用触媒が求められている。
本発明は、かかる事案に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、ウォールフロー構造タイプのパティキュレートフィルタを備えた排ガス浄化用触媒において、圧損の上昇を抑えつつ、良好な浄化性能とNHのスリップ抑制とを両立し得る排ガス浄化用触媒を提供することである。
本発明に係る排ガス浄化用触媒は、内燃機関の排気通路に配置されて該内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒である。この排ガス浄化用触媒は、排ガス流入側の端部のみが開口した入側セルと、該入側セルに隣接し排ガス流出側の端部のみが開口した出側セルと、前記入側セルと前記出側セルとを仕切る多孔質の隔壁とを有するウォールフロー構造の基材と、アンモニアを吸着して排ガス中のNOxを還元するSCR触媒を含む第1触媒層と、酸化触媒を含む第2触媒層とを備える。前記第1触媒層は、前記隔壁の内部であって少なくとも前記入側セルと接する領域に、前記排ガス流入側の端部から前記隔壁の延伸方向に沿って前記隔壁の全長Lよりも短い長さで形成されている。前記第2触媒層は、前記隔壁の内部であって少なくとも前記出側セルと接する領域に、前記排ガス流出側の端部から前記隔壁の延伸方向に沿って前記隔壁の全長Lよりも短い長さで形成されている。かかる構成の排ガス浄化用触媒によると、圧損の上昇を抑えつつ、良好な浄化性能とアンモニアのスリップ抑制とが高いレベルで両立され得る。
ここに開示される排ガス浄化用触媒の好ましい一態様では、前記隔壁の延伸方向において、前記第1触媒層の長さLが、前記隔壁の全長Lの40%以上70%以下である。このような第1触媒層の長さLの範囲内であると、低圧損と良好な浄化性能との両立がより高いレベルで実現され得る。
ここに開示される排ガス浄化用触媒の好ましい一態様では、前記隔壁の延伸方向において、前記第2触媒層の長さLが、前記隔壁の全長Lの40%以上70%以下である。このような第2触媒層の長さLの範囲内であると、上述した性能向上効果(例えばアンモニアのスリップ抑制効果)がより良く発揮され得る。
ここに開示される排ガス浄化用触媒の好ましい一態様では、前記延伸方向と直交する厚み方向において、前記第1触媒層の厚みTが、前記隔壁の全体厚みTの50%以上100%以下である。このような第1触媒層の厚みTの範囲内であると、低圧損と良好な浄化性能との両立がより高いレベルで実現され得る。
ここに開示される排ガス浄化用触媒の好ましい一態様では、前記延伸方向と直交する厚み方向において、前記第2触媒層の厚みTが、前記隔壁の全体厚みTの40%以上75%以下である。このような第2触媒層の厚みTの範囲内であると、低圧損とアンモニアのスリップ低減との両立がより高いレベルで実現され得る。
ここに開示される排ガス浄化用触媒の好ましい一態様では、前記延伸方向において、前記第1触媒層の長さLと前記第2触媒層の長さLと前記Lとが、次式:L<(L+L)<2L;を満たし、前記第1触媒層と前記第2触媒層とが前記延伸方向に一部重なり合っている。第1触媒層と第2触媒層とが延伸方向に一部重なり合っていることにより、上述した性能向上効果がより好適に発揮される。
ここに開示される排ガス浄化用触媒の好ましい一態様では、前記SCR触媒として、銅または鉄を担持したゼオライト粒子を含む。かかるSCR触媒は、浄化性能(特にNOx浄化性能)の向上に効果的に寄与し得る。
ここに開示される排ガス浄化用触媒の好ましい一態様では、前記酸化触媒として、白金およびパラジウムの少なくとも一方を含む貴金属と、該貴金属を担持した担体とを含む。かかる酸化触媒は、アンモニアのスリップ抑制に効果的に寄与し得る。
図1は、一実施形態に係るハニカム排ガス浄化用触媒の基材を模式的に示す斜視図である。 図2は、図1のハニカム基材の端部を模式的に示す図である。 図3は、一実施形態に係る排ガス浄化用触媒の隔壁近傍の構成を模式的に示す拡大断面図である。 図4は、一実施形態に係る排ガス浄化用触媒の隔壁近傍の断面構成を模式的に示す要部拡大図である。
以下、図面を参照しつつ本発明の好適ないくつかの実施形態を説明する。以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚みなど)は、実際の寸法関係を必ずしも反映するものではない。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えばパティキュレートフィルタの自動車における配置に関するような一般的事項)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
<排ガス浄化用触媒>
ここに開示される排ガス浄化用触媒は、ウォールフロー構造の基材と、該基材の隔壁に設けられた2つの触媒層(第1触媒層および第2触媒層)とを備えている。図1は、基材10の一例を示す模式図である。図2は、基材10の排ガス流入側の端部10aを示す模式図である。図3は、基材10の隔壁16近傍の構成を模式的に示す断面図であり、図4は、その要部拡大図である。
図1~図4に示すように、ウォールフロー構造の基材10は、排ガス流入側の端部10aのみが開口した入側セル12と、該入側セル12に隣接し排ガス流出側の端部10bのみが開口した出側セル14と、入側セル12と出側セル14とを仕切る多孔質の隔壁16とを有する。
<基材>
基材10としては、従来のこの種の用途に用いられる種々の素材及び形態のものが使用可能である。例えば、コージェライト、炭化ケイ素(SiC)等のセラミックスまたは合金(ステンレス等)から形成された基材を好適に採用することができる。図2および図3に示す基材10は、外形が円筒形状のハニカム基材(ハニカム構造体)である。ただし、基材全体の外形については、円筒形に代えて、楕円筒形、多角筒形を採用してもよい。基材10の容量(セルの総体積)は、通常0.1L以上、好ましくは0.5L以上であり、例えば10L以下、好ましくは7L以下、より好ましくは5L以下であるとよい。基材10の延伸方向の全長(換言すれば隔壁16の延伸方向の全長L)は、通常は10mm~500mm、例えば50mm~300mm程度であるとよい。かかる基材10は、図4に示すように、排ガス流入側の端部のみが開口した入側セル12と、該入側セル12に隣接し排ガス流出側の端部のみが開口した出側セル14と、入側セル12と出側セル14とを仕切る多孔質の隔壁16とを有している。
<入側セルおよび出側セル>
入側セル12は、排ガス流入側の端部のみが開口しており、出側セル14は、入側セル12に隣接し排ガス流出側の端部のみが開口している。この実施形態では、入側セル12は、排ガス流出側の端部が封止部12aで目封じされており、出側セル14は、排ガス流入側の端部が封止部14aで目封じされている。入側セル12および出側セル14は、排ガス浄化用触媒100に供給される排ガスの流量や成分を考慮して適当な形状および大きさに設定するとよい。例えば入側セル12および出側セル14の形状は、正方形、平行四辺形、長方形、台形などの矩形、三角形、その他の多角形(例えば、六角形、八角形)、円形など種々の幾何学形状であってよい。
<隔壁>
隣接する入側セル12と出側セル14との間には、隔壁16が形成されている。この隔壁16によって入側セル12と出側セル14とが仕切られている。隔壁16は、排ガスが通過可能な多孔質構造である。隔壁16の気孔率としては特に限定されないが、概ね40%~70%(例えば50%~70%)にすることが適当であり、好ましくは55%~65%である。隔壁16の気孔率が小さすぎると、PMがすすり抜けてしまうことがあり、一方、隔壁16の気孔率が大きすぎると、フィルタ100の機械的強度が低下傾向になるため、好ましくない。隔壁16の厚みとしては特に限定されないが、概ね50μm~2000μm(例えば100μm~800μm)程度であるとよい。このような隔壁の厚みの範囲内であると、PMの捕集効率を損なうことなく圧損の上昇を抑制する効果が得られる。隔壁16の平均細孔径は、PMの捕集性能の向上や圧損抑制の観点から、通常は1μm~60μm程度、例えば10μm~40μmであるとよい。
<触媒層>
ここで開示される排ガス浄化用触媒100は、図4に示すように、第1触媒層20と第2触媒層30とを備える。第1触媒層20および第2触媒層30は、隔壁16の内部(隔壁16の内部細孔の表面)に形成されている。排ガス流れ方向において、第1触媒層20は、第2触媒層30よりも上流側に配置されている。
<第1触媒層>
第1触媒層20は、アンモニアを吸着して排ガス中のNOxを還元するSCR触媒を含む層である。SCR触媒を含む第1触媒層20を隔壁16の内部に設けることにより、圧損の上昇を抑制しつつ、排ガス中のNOxを浄化することができる。
SCR触媒としては、この種のフィルタ触媒で用いられる従来公知のSCR触媒の中から一種または二種以上を特に制限なく使用することができる。例えば、SCR触媒は、金属を担持した多孔質のゼオライト粒子であり得る。ゼオライト粒子としては、基本骨格を構成する元素として少なくともSiを含むものが挙げられる。典型的にはゼオライトのSiO四面体の骨格内にAlやPなどのカチオンが置換された(すなわちSi‐O‐AlやP‐O‐Alなどの骨格元素結合を有する)ゼオライトを用いてもよい。例えば、β型ゼオライト、シリコンアルミノリン酸塩(SAPO)系ゼオライト等が例示される。好適なゼオライトの構造を国際ゼオライト学会(IZA:International Zeolite Association)が定めるコードで示すと、AEI、AFX、AFT、AST、BEA、BEC、CHA、EAB、ETR、GME、ITE、KFI、LEV、PAU、SAS、SAT、SAV、THO、UFI、ATT、DDR、ERI、IFY、JST、LOV、LTA、OWE、RHO、RSN、SFW、TSC、UEI、VSVが挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることが望ましい。なかでも、AEI、AFX、AFT、AST、BEA、BEC、CHA、EAB、ETR、GME、ITE、KFI、LEV、PAU、SAS、SAT、SAV、THO、UFIが好ましく、チャバサイト(CHA)型のゼオライト粒子を使用することが特に好ましい。上記ゼオライト粒子におけるSi成分とAl成分との組成比率は特に限定されないが、酸化物換算のモル%で、SiO/Alのモル比が概ね1~400であることが適当であり、好ましくは3~200、より好ましくは5~100、さらに好ましくは8~50、特に好ましくは10~20である。
ゼオライト粒子には、金属が担持されている。該金属としては、銅(Cu)や鉄(Fe)が例示される。金属の担持量としては特に限定されないが、概ね0.5質量%~10質量%(好ましくは1質量%~5質量%)であり得る。ゼオライト粒子は、上述したCu、Fe、Si、AlおよびP以外の任意の金属成分を含んでいてもよい。そのような金属成分として、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、鉛(Pb)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、タングステン(W)、インジウム(In)、イリジウム(Ir)、チタン(Ti)等が例示される。ゼオライト粒子に上記金属を含有させることで、NOxをより効率良く浄化できるようになる。
上記ゼオライト粒子の平均粒径D1は特に限定されないが、概ね0.1μm以上にすることが適当である。ゼオライト粒子の平均粒径D1は、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.4μm以上である。上記平均粒径D1の上限値は特に限定されないが、概ね10μm以下にすることが適当である。後述する希土類元素含有化合物で均一に被覆する等の観点からは、ゼオライト粒子の平均粒径D1は、好ましくは8μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。例えば、平均粒径D1が0.3μm以上3μm以下であるゼオライト粒子が好適である。なお、上記ゼオライト粒子の平均粒径D1(D50径)は、レーザ散乱法または走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)観察に基づく測定により把握するものとする。
第1触媒層20は、隔壁16の内部(すなわち隔壁16の内部細孔の表面)であって少なくとも入側セル12と接する領域に、排ガス流入側の端部10aから隔壁16の延伸方向に沿って隔壁16の全長Lよりも短い長さで形成されている。隔壁16の延伸方向において、第1触媒層20の長さLは、隔壁16の全長Lよりも短ければよく特に限定されない(すなわちL<L)。第1触媒層20の長さLは、通常は、隔壁16の全長Lの90%未満(すなわちL<0.9L)、典型的には70%以下(すなわちL≦0.7L)が適当である。第1触媒層20の厚みTは、圧損を低減する等の観点から、好ましくはLの65%以下、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは55%以下である。いくつかの態様において、第1触媒層20の長さLは、Lの50%以下であってもよく、例えば45%以下であってもよい。第1触媒層20の長さLの下限は、例えば、Lの20%以上(すなわち0.2L≦L)、典型的には40%以上(すなわち0.4L≦L)であり得る。NOx浄化率の向上等の観点から、第1触媒層20の長さLは、好ましくはLの45%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは55%以上である。いくつかの態様において、第1触媒層20の長さLは、Lの60%以上であってもよく、65%以上であってもよい。例えば、第1触媒層20の長さLが0.4L≦L≦0.7L(さらには0.5L≦L≦0.6L)である排ガス浄化用触媒が、良好な浄化性能と圧損の低減とを高度に両立する観点から好適である。
なお、本明細書において、「触媒層が隔壁の内部に配置されている」とは、触媒層が隔壁の外部(典型的には表面)ではなく、隔壁の内部に主として存在することをいう。より具体的には、例えば隔壁16の断面を電子顕微鏡で観察したときの触媒層のコート量全体を100%とする。このとき、隔壁16の内部に存在するコート量分が、典型的には80%以上、例えば85%以上、好ましくは90%以上、さらには95%以上、特には実質的に100%であることをいう。したがって、例えば隔壁16の表面に触媒層を配置しようとした際に触媒層の一部が意図せずに隔壁の内部へ浸透するような場合とは明確に区別されるものである。
延伸方向と直交する厚み方向において、第1触媒層20の厚みTは特に限定されないが、例えば隔壁16の全体厚みTの20%以上(すなわち0.2T≦T)、典型的には40%以上(すなわち0.4T≦T)である。第1触媒層20の厚みTは、良好な浄化性能と圧損の低減とを高度に両立する等の観点から、好ましくはTの50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上である。いくつかの態様において、第1触媒層20の厚みTは、Tの70%以上であってもよく、例えば75%以上であってもよい。第1触媒層20の厚みTの上限は特に限定されないが、例えば、隔壁16の全体厚みTの100%以下(すなわちT≦T)であり得る。いくつかの態様において、第1触媒層20の厚みTは、Tの90%以下であってもよく、例えば80%以下であってもよい。ここに開示される技術は、例えば第1触媒層20の厚みTが隔壁16の全体厚みTの40%以上100%以下(好ましくは50%以上100%以下)である態様で実施され得る。
基材の体積1L当たりの第1触媒層20のコート量(第1触媒層の質量を基材全体の体積(セル通路の体積も含めた全体の嵩体積)で割った値をいう。)は特に限定されないが、概ね150g/L以下にすることが適当である。圧損低減等の観点から、第1触媒層20のコート量は、好ましくは120g/L以下、より好ましくは100g/L以下、さらに好ましくは80g/L以下である。いくつかの態様において、第1触媒層20のコート量は、例えば50g/L以下であってもよく、典型的には30g/L以下であってもよい。また、第1触媒層20のコート量の下限は特に限定されないが、浄化性能向上等の観点から、好ましくは5g/L以上、より好ましくは8g/L以上、さらに好ましくは10g/L以上である。例えば第1触媒層20のコート量が12g/L以上、典型的には15g/L以上であってもよい。ここに開示される技術では、基材の体積1L当たりの第1触媒層のコート量が同じであるにもかかわらず、従来に比して浄化性能を向上させることができる。この点において技術的価値が高い。
<第2触媒層>
第2触媒層30は、酸化触媒を含む層である。酸化触媒を含む第2触媒層30を隔壁16の内部であって第1触媒層30よりも排ガス流れ方向の下流側に設けることにより、第1触媒層30によるNOx浄化で余ったアンモニアが酸化触媒上で酸化反応により消費される。このことによりアンモニアの外部排出(スリップ)を抑制することができる。
酸化触媒としては、この種のフィルタ触媒で用いられる従来公知の酸化触媒の中から一種または二種以上を特に制限なく使用することができる。例えば、酸化触媒は、白金(Pt)およびパラジウム(Pd)の少なくとも一方を含む貴金属と、該貴金属を担持する担体とを含有するものであり得る。担体は、PtおよびPd以外の金属をさらに含有していてもよい。そのような金属としては、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、金(Au)などが挙げられる。また、これらの金属のうち2種以上が合金化したものを用いてもよい。さらには、アルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属など、他の金属種であってもよい。上記金属粒子の平均粒子径は通常0.1nm~20nm程度であり、例えば1nm~10nm、7nm以下、さらには5nm以下であるとよい。
好ましい一態様では、第2触媒層30は、貴金属としてPtを含んでいる。基材の体積1L当たりのPtの含有量は、概ね0.1g~10g、例えば0.3g~6g、典型的には0.5g~3gであることが好ましい。上記Ptの含有量が少なすぎると、Ptにより得られる触媒活性が不十分となることがあり、他方、Ptの担持量が多すぎると、Ptが粒成長を起こしやすくなると同時にコスト面でも不利である。
第2触媒層30は、上記触媒金属を担体に担持させることによって形成されている。かかる担体としては、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、セリア(CeO)、シリカ(SiO)、マグネシア(MgO)、酸化チタン(チタニア:TiO)等の金属酸化物、若しくはこれらの固溶体(例えばセリア-ジルコニア(CeO-ZrO)複合酸化物)が挙げられる。中でもアルミナやセリア-ジルコニア複合酸化物の使用が好ましい。これらの二種以上を併用してもよい。なお、上記担体には、副成分として他の材料(典型的には無機酸化物)が添加されていてもよい。担体に添加し得る物質としては、ランタン(La)、イットリウム(Y)等の希土類元素、カルシウムなどのアルカリ土類元素、その他遷移金属元素などが用いられ得る。上記の中でも、ランタン、イットリウム等の希土類元素は、触媒機能を阻害せずに高温における比表面積を向上できるため、安定化剤として好適に用いられる。
上記担体の形状(外形)は特に制限されないが、より大きい比表面積を確保できるという観点から、粉末状のものが好ましく用いられる。例えば、担体の平均粒子径は、例えば20μm以下、典型的には10μm以下、例えば7μm以下が好ましい。上記担体の平均粒子径が大きすぎる場合は、該担体に担持された触媒金属の分散性が低下する傾向があり、触媒の浄化性能が低下するため好ましくない。上記平均粒子径は、例えば5μm以下、典型的には3μm以下であってもよい。一方、担体の平均粒子径が小さすぎると、該担体からなる担体自体の耐熱性が低下するため、触媒の耐熱特性が低下し、好ましくない。したがって、通常は平均粒子径が凡そ0.1μm以上、例えば0.5μm以上の担体を用いることが好ましい。担体における触媒金属の担持量は特に制限されないが、第2触媒層30の触媒金属を担持する担体の全質量に対して0.01質量%~10質量%の範囲(例えば0.05質量%~5質量%、典型的には0.1質量%~1質量%)とすることが適当である。上記触媒金属の担持量が少なすぎると、触媒金属により得られる触媒活性が不十分となることがあり、他方、触媒金属の担持量が多すぎると、触媒金属が粒成長を起こしやすくなると同時にコスト面でも不利である。
上記担体に触媒金属粒子を担持させる方法としては特に制限されない。例えば触媒金属塩(例えば硝酸塩)や触媒金属錯体(例えば、テトラアンミン錯体)を含有する水溶液に上記担体を含浸させた後、乾燥させ、焼成することにより調製することができる。
ここで開示される第2触媒層30には、上述した触媒金属が担持された担体のほか、触媒金属粒子を担持していない助触媒を添加することができる。助触媒としては、セリア-ジルコニア(CeO-ZrO)複合酸化物やアルミナ(Al)やシリカ(SiO)が例示される。特にセリア-ジルコニア複合酸化物やアルミナの使用が好ましい。触媒金属粒子と担体と上記助触媒との合計を100質量%としたときの助触媒の含有率は、通常は80質量%以下(例えば30質量%以上80質量%以下)であることが適当であり、例えば70質量%以下(例えば40質量%以上60質量%以下)であることが好ましい。
SCR触媒と酸化触媒とを併用することによる効果をより良く発揮させる観点から、第1触媒層20におけるSCR触媒の含有量に対する第2触媒層30における酸化触媒の含有量の比(酸化触媒/SCR触媒)は、概ね0.1以上10以下である。上記含有量の比(酸化触媒/SCR触媒)は、好ましくは0.2以上8以下、より好ましくは0.3以上5以下(例えば0.5以上6以下)、さらに好ましくは0.8以上3以下、特に好ましくは1以上2以下である。このようなSCR触媒および酸化触媒の含有量の比の範囲内であると、上述した効果がより良く発揮され得る。
第2触媒層30は、隔壁16の内部(すなわち隔壁16の内部細孔の表面)であって少なくとも出側セル14と接する領域に、排ガス流出側の端部10bから隔壁16の延伸方向に沿って隔壁16の全長Lよりも短い長さで形成されている。隔壁16の延伸方向において、第2触媒層30の長さLは、隔壁16の全長Lよりも短ければよく特に限定されない(すなわちL<L)。第2触媒層30の長さLは、通常は、隔壁16の全長Lの90%未満(すなわちL<0.9L)、典型的には70%以下(すなわちL≦0.7L)が適当である。NHのスリップを低減する等の観点から、第1触媒層20の厚みTは、好ましくはLの65%以下、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは55%以下である。いくつかの態様において、第2触媒層30の長さLは、Lの50%以下であってもよく、例えば45%以下であってもよい。第2触媒層30の長さLの下限は特に限定されないが、例えば、隔壁16の全長Lの20%以上(すなわち0.2L≦L)、典型的には40%以上(すなわち0.4L≦L)であり得る。アンモニアのスリップを低減する等の観点から、第2触媒層30の長さLは、好ましくはLの45%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは55%以上である。いくつかの態様において、第2触媒層30の長さLは、Lの60%以上であってもよく、例えば65%以上であってもよい。
延伸方向と直交する厚み方向において、第2触媒層30の厚みTは、例えば隔壁16の全体厚みTの20%以上(すなわち0.2T≦T)であり得る。第2触媒層30の厚みTは、アンモニアのスリップ抑制等の観点から、好ましくはTの25%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは35%以上である。いくつかの態様において、第2触媒層30の厚みTは、Tの40%以上であってもよく、例えば50%以上であってもよい。第2触媒層30の厚みTの上限は、例えば、隔壁16の全体厚みTの100%以下(すなわちT≦T)、典型的には75%以下(すなわちT≦0.75T)であり得る。圧損を低減する等の観点から、第2触媒層30の厚みTは、好ましくはTの70%以下、より好ましくは65%以下、さらに好ましくは60%以下である。いくつかの態様において、第2触媒層30の厚みTは、Tの55%以下であってもよく、例えば50%以下であってもよい。例えば、第2触媒層30の厚みTが0.4T≦T≦0.75T(さらには0.5T≦T≦0.7T)である排ガス浄化用触媒が、NHスリップ抑制と圧損の低減とを高度に両立する観点から好適である。
好ましい一態様では、隔壁16の全長Lと、第1触媒層20の長さLと、第2触媒層30の長さLとが、次式:L<(L+L)<2L;を満たしている。換言すれば、隔壁16の延伸方向において、第1触媒層20および第2触媒層30の一部が相互に重なり合っている。第1触媒層20と第2触媒層30とを延伸方向に敢えて重ねることで、排ガスが触媒層の形成されていない部分を通過して、未浄化のまま排出されることが未然に防止され得る。これにより、排ガス成分が的確に触媒層と接触することとなり、効果的にエミッションを低減することできる。
第1触媒層20と第2触媒層30とが延伸方向に重なり合う長さは、通常は、上記Lの2%以上、典型的には5%以上、例えば10%以上であって、概ね60%以下、典型的には50%以下、好ましくは40%以下である。いくつかの態様において、上記重なり合う長さは、Lの30%以下、例えば20%以下であってもよい。なかでも、低コストと高性能とを高度に両立する観点からは、上記Lの5~40%程度であることが好ましい。
基材の体積1L当たりの第2触媒層30のコート量(第2触媒層の質量を基材全体の体積(セル通路の体積も含めた全体の嵩体積)で割った値をいう。)は特に限定されないが、概ね200g/L以下にすることが適当である。圧力損失低減等の観点から、第1触媒層20のコート量は、好ましくは180g/L以下、より好ましくは150g/L以下、さらに好ましくは120g/L以下である。いくつかの態様において、第2触媒層30のコート量は、例えば100g/L以下であってもよく、典型的には80g/L以下(例えば60g/L以下)であってもよい。また、第2触媒層30のコート量の下限は特に限定されないが、浄化性能向上等の観点から、好ましくは5g/L以上、より好ましくは10g/L以上、さらに好ましくは15g/L以上である。例えば第2触媒層30のコート量が20g/L以上、典型的には25g/L以上であってもよい。ここに開示される技術では、基材の体積1L当たりの触媒層のコート量が同じであるにもかかわらず、従来に比して浄化性能を向上させることができる。この点において技術的価値が高い。
第1触媒層20および第2触媒層30は、異なるスラリーを基に形成するとよい。例えば、第1触媒層20を形成するための第1触媒層形成用スラリーと、第2触媒層30を形成するための第2触媒層形成用スラリーとを用意する。第1触媒層形成用スラリーには、第1触媒層20を構成する各成分(例えば銅または鉄担持ゼオライト粉末等のSCR触媒成分)が含まれる。第2触媒層形成用スラリーには、第2触媒層30を構成する各成分(例えばPt担持担体粉末等の酸化触媒成分)が含まれる。第1触媒層形成用スラリーおよび第2触媒層形成用スラリーには、上記粉末に加えて、従来公知のバインダ、酸素吸放出材、添加剤などの任意の添加成分を適宜含ませることができる。酸素吸放出材としては、担体または非担持体としてのセリア-ジルコニア複合酸化物を好適に採用し得る。また、バインダとしては、アルミナゾル、シリカゾルなどを採用し得る。
上記調製した第1触媒層形成用スラリーを、基材10の排ガス流入側の端部10aから入側セル12内に供給し、隔壁16の細孔内であって第1触媒層20が形成される部分に塗布する。具体的には、基材の端部10aから端部10b側に向かって長さLまでに当たる部分にスラリーがコートされ、かつ、隔壁16の入側セル12と接する側の表面から厚みTまでの領域にスラリーがコートされるようにスラリーを減圧吸引もしくはエアーブローにより吹き付けコートする。また、上記調製した第2触媒層形成用スラリーを、基材10の排ガス流出側の端部10bから出側セル14内に供給し、隔壁16の細孔内であって第2触媒層30が形成される部分に塗布する。具体的には、基材の端部10bから端部10a側に向かって長さLまでに当たる部分にスラリーがコートされ、かつ、隔壁16の出側セル14と接する側の表面から厚みTまでの領域にスラリーがコートされるようにスラリーを減圧吸引もしくはエアーブローにより吹き付けコートする。
上記スラリーを付与した後のハニカム基材10は、所定の温度および時間で乾燥、焼成する。スラリーの乾燥条件は基材または担体の形状及び寸法により左右されるが、典型的には80~300℃程度(例えば100~250℃)で1~10時間程度であり、焼成条件は約400~1000℃程度(例えば500~700℃)で約1~4時間程度である。これにより、排ガス浄化用触媒100を製造することができる。
ここに開示される排ガス浄化用触媒100は、前述のように圧損の上昇を抑えつつ、良好な浄化性能(例えばNOx浄化性能)とアンモニアのスリップ抑制とが高いレベルで両立され得ることから、種々の形態の排ガス浄化装置の構成要素として好ましく利用され得る。例えば、ここに開示される何れかの第1触媒層20および第2触媒層30をウォールフロー型構造の基材10に備えた排ガス浄化用触媒100と、該排ガス浄化用触媒100よりも排気通路の上流からアンモニアを生成するための還元剤溶液を供給する還元剤溶液供給手段(図示せず)と、を備えた排ガス浄化装置の構成要素として好ましく使用され得る。
上記還元剤溶液供給手段は、排ガス浄化用触媒100よりも排気管の上流側に配置されているとよい。還元剤溶液供給手段は、排ガス浄化用触媒100の排ガス流通方向における上流からアンモニアを生成するための還元剤溶液(例えば尿素水)を供給する。還元剤溶液供給手段は、典型的には噴霧ノズルとポンプとタンクとを備えている。噴霧ノズルは、ポンプを介してタンクに接続されている。ポンプは、タンク内の還元剤溶液を噴霧ノズルへ供給する。噴霧ノズルへ供給された還元剤溶液は、排気管内に噴霧され、該排気管内で上流から流れてくる排ガスとともに下流へと流されるとともに、加水分解してアンモニアを発生させる。
ここに開示される排ガス浄化用触媒100は、図3および図4に示すように、基材10の排ガス流入側の端部10aから入側セル12内に排ガスがアンモニアとともに流入する。入側セル12に流入した排ガスは、隔壁16内を通過して出側セル14に到達する。図3において、入側セル12に流入した排ガスが隔壁16を通過して出側セル14に到達するルートを矢印で示している。このとき、隔壁16は多孔質構造を有しているので、排ガスがこの隔壁16を通過する間に、PMが隔壁16の表面や隔壁16の内部の細孔内に捕集される。また、排ガス流入側の隔壁16の内部には、SCR触媒を含む第1触媒層20が設けられているので、アンモニアがSCR触媒に吸着し、該吸着したアンモニアの還元作用により排ガス中のNOxが浄化される。また、排ガス流出側の隔壁16の内部であって第1触媒層20の排ガス流れ方向の下流側には、酸化触媒を含む第2触媒層30が設けられているので、上記NOx浄化で余ったアンモニアが酸化触媒上で酸化反応により消費される。このことによりアンモニアの外部排出(スリップ)が抑制される。隔壁16を通過して出側セル14に到達した排ガスは、排ガス流出側の開口からフィルタの外部へと排出される。ここに開示される技術によれば、従来に比して圧損の上昇が抑制され、なおかつ良好なNOx浄化性能とNHスリップ抑制とが高いレベルで両立された排ガス浄化装置を実現することができる。
以下、本発明に関する試験例を説明するが、本発明を以下の試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
(例1)
ゼオライトとしてのアルミナシリケート(CHA型、SSZ-13)をイオン交換水に分散させた後、酢酸銅を添加した。かかる分散液を80℃まで加熱して12時間攪拌した後、濾過、洗浄を行い、得られた固形物を200℃で5時間乾燥させることにより、SCR触媒としてのCuイオン交換ゼオライト(Cu担持量3質量%)を作製した。得られたCuイオン交換ゼオライト1000質量部と、シリカゾル500質量部と、純水1000質量部とを混合した後、ボールミルで1時間攪拌してスラリー1を調製した。次いで、このスラリー1を、コーディエライト製のハニカム基材(ウォールフロー構造、円筒形状、直径160mm、隔壁の全長L100mm)の排ガス流入側の端部から入側セル内に供給し、隔壁の入側セルと接する細孔内にエアーブローによりコートし、乾燥および焼成することにより、隔壁の内部に第1触媒層を形成した。第1触媒層のSCR触媒の含有量は50gとなるように調整した。第1触媒層の延伸方向の長さ(コート幅)Lは隔壁の全長Lの50%、厚みTは隔壁の全体厚みTの50%とした。
また、水にアルミナ900gを懸濁させ、硝酸白金を加えた混合物を蒸発乾固し、酸化触媒としての白金担持アルミナ粉末を作製した。アルミナに対する白金の担持量は0.2質量%とした。得られた白金担持アルミナ粉末100質量部とアルミナ100質量部と水とを混合した後、ボールミルで1時間攪拌し、スラリー2を調製した。次いで、このスラリー2を、前記ハニカム基材の排ガス流出側の端部から出側セル内に供給し、隔壁の出側セルと接する細孔内にエアーブローによりコートし、乾燥および焼成することにより、隔壁の内部に第2触媒層を形成した。第2触媒層の酸化触媒の含有量は50gとなるように調整した。第2触媒層の延伸方向の長さ(コート幅)Lは隔壁の全長Lの50%、厚みTは隔壁の全体厚みTの50%とした。
このようにして隔壁の内部に第1触媒層および第2触媒層が配置されたフィルタ触媒を作製した。
(例2)
第1触媒層の長さ(コート幅)Lを隔壁の全長Lの90%、厚みTは隔壁の全体厚みTの100%とし、かつ、第2触媒層を隔壁の内部(細孔表面)ではなく隔壁の壁上に形成したこと以外は、例1と同じ手順でフィルタ触媒を作製した。
(例3)
スラリー2を用いて第1触媒層を形成し、かつ、スラリー1を用いて第2触媒層を形成したこと以外は、例1と同じ手順でフィルタ触媒を作製した。
(例4~例19)
第1触媒層の長さL、厚みTおよび第1触媒層の長さL、厚みTを表1にように変更したこと以外は、例1と同じ手順でフィルタ触媒を作製した。
各例のフィルタ触媒について、使用した第1触媒層のコート材、長さL、厚みT、第2触媒層のコート材、長さL、厚みTを表1に纏めて示す。
Figure 0007174516000001
<圧損の測定>
各例のフィルタ触媒をエンジンの排気管に設置し、エンジンを一定時間稼働させて、排ガスをフィルタ触媒に通過させ、下流側の圧力を測定して圧力損失を測定した。具体的には、2.2Lのコモンレール式のディーゼルエンジンを使用し、回転数2000rpmで所定時間稼働させた後、フィルタ触媒の前後の圧力差を測定した。なお、上記ディーゼルエンジンとしては、回転数2000rpmで稼働させたときに5gのPMが排出されることを予め予備実験で把握したものを使用した。結果を表1の「圧損」欄に示す。
<NOx浄化率の測定>
各例のフィルタ触媒をエンジンの排気管に設置し、エンジンを一定時間稼働させて、NOx浄化率を測定した。具体的には、各例のフィルタ触媒を2.2Lのコモンレール式ディーゼルエンジンの排気管に取り付け、フィルタ触媒に対し排ガスを流通させ、NOx浄化率を測定した。フィルタ触媒よりも排気管の上流にはエンジンから排出される未燃軽油を除去するために酸化(DOC)触媒を設置した。また、フィルタ触媒よりも排気管の上流側にはインジェクタを設置し、該インジェクタからアンモニアを生成するための還元剤溶液としての尿素水を添加した。尿素水は、NOxに対するNHの当量比が1となるように調整した。ここでNOx浄化率(%)は、「(触媒入りガスのNOx濃度(ppm)-触媒出ガスのNOx濃度(ppm))/触媒入りガスのNOx濃度(ppm)」×100により算出した。また、フィルタ触媒よりも下流側にてNH濃度およびNO濃度を計測し、NOx浄化率と併せてアンモニアおよびNOのスリップを評価した。評価温度は300℃とした。結果を表1の「NH」欄および「NO」欄に示す。
表1に示すように、酸化触媒を含む第2触媒層を隔壁の壁上に配置した例2のフィルタ触媒は、第2触媒層へのガス拡散性が悪かったため、NHのスリップ量が増大傾向であった。また、例2のフィルタ触媒は、隔壁の内部において第1触媒層を略全域に亘って形成しているため、PM堆積により細孔が詰まった結果、圧損についても増大傾向を示した。一方、酸化触媒を含む触媒層を隔壁の内部の入側セルと接する領域に配置し、SCR触媒を含む触媒層を隔壁の内部の出側セルと接する領域に配置した例3のフィルタ触媒は、排ガス中のNHがSCR触媒と接する前に酸化触媒で消費されてしまい、SCR触媒に十分な量のNHが供給されなかったため、NOx浄化率が低下傾向となった。これに対し、SCR触媒を含む第1触媒層を隔壁の内部の入側セルと接する領域に隔壁の全長Lよりも短い長さで形成し、かつ、酸化触媒を含む第2触媒層を隔壁の内部の出側セルと接する領域に隔壁の全長Lよりも短い長さで形成した例1のフィルタ触媒は、例2に比べて、圧損およびNHのスリップ量で良好な結果が得られた。また、例1のフィルタ触媒は、例3に比べて、NOx浄化率で良好な結果が得られた。この結果から、SCR触媒を含む第1触媒層を隔壁の内部の入側セルと接する領域に隔壁の全長Lよりも短い長さで形成し、かつ、酸化触媒を含む第2触媒層を隔壁の内部の出側セルと接する領域に隔壁の全長Lよりも短い長さで形成することにより、圧損の上昇を抑えつつ、良好なNOx浄化性能とNHのスリップ抑制とが高いレベルで両立され得ることが確認できた。
ここで供試したフィルタ触媒の場合、隔壁の延伸方向において、第1触媒層の長さLを隔壁の全長Lの40%以上70%以下とした例1、5、6のフィルタ触媒は、例5に比べて、NOx浄化率でより良好な結果が得られた。また、例1、5、6のフィルタ触媒は、例7に比べて、圧損でより良好な結果が得られた。この結果から、フィルタ触媒における第1触媒層の長さLは、隔壁の全長Lの40%以上70%以下とすることが望ましい。
ここで供試したフィルタ触媒の場合、延伸方向と直交する厚み方向において、第1触媒層の厚みTを隔壁の全体厚みTの50%以上100%以下とした例1、13、14のフィルタ触媒は、例15に比べて、NOx浄化率でより良好な結果が得られた。また、例1、13、14のフィルタ触媒は、例16に比べて、圧損およびNOx浄化率でより良好な結果が得られた。この結果から、フィルタ触媒における第1触媒層の厚みTは、隔壁の全体厚みTの50%以上100%以下とすることが望ましい。
ここで供試したフィルタ触媒の場合、隔壁の延伸方向において、第2触媒層の長さLを隔壁の全長Lの40%以上70%以下とした例1、9、10のフィルタ触媒は、例8、11に比べて、NHのスリップ量でより良好な結果が得られた。この結果から、フィルタ触媒における第2触媒層の長さLは、隔壁の全長Lの40%以上70%以下とすることが望ましい。
ここで供試したフィルタ触媒の場合、延伸方向と直交する厚み方向において、第2触媒層の厚みTを隔壁の全体厚みTの40%以上75%以下とした例1、18のフィルタ触媒は、例17に比べて、圧損でより良好な結果が得られた。また、例1、18のフィルタ触媒は、例19に比べて、NHのスリップ量でより良好な結果が得られた。この結果から、フィルタ触媒における第2触媒層の厚みTは、隔壁の全体厚みTの40%以上75%以下とすることが望ましい。
以上、排ガス浄化用触媒100について種々の改変例を例示したが、排ガス浄化用触媒100の構造は、上述した何れの実施形態にも限定されない。
例えば、上述した実施形態では、第1触媒層20および第2触媒層30は何れも単層構造であるが、複数(例えば2~5)の層が積層された積層構造であってもよい。例えば、第1触媒層20は、隔壁内部の細孔表面において、細孔表面に近い方を下層とし相対的に遠い方を上層とする上下層を有する積層構造に形成されていてもよい。また、第2触媒層30は、隔壁内部の細孔表面において、細孔表面に近い方を下層とし相対的に遠い方を上層とする上下層を有する積層構造に形成されていてもよい。
10 基材
12 入側セル
14 出側セル
16 隔壁
20 第1触媒層
30 第2触媒層
100 排ガス浄化用触媒

Claims (7)

  1. 内燃機関の排気通路に配置されて該内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒であって、
    排ガス流入側の端部のみが開口した入側セルと、該入側セルに隣接し排ガス流出側の端部のみが開口した出側セルと、前記入側セルと前記出側セルとを仕切る多孔質の隔壁とを有するウォールフロー構造の基材と、
    アンモニアを吸着して排ガス中のNOxを還元するSCR触媒を含む第1触媒層と、
    酸化触媒を含む第2触媒層と
    を備え、
    前記第1触媒層は、前記隔壁の内部であって少なくとも前記入側セルと接する領域に、前記排ガス流入側の端部から前記隔壁の延伸方向に沿って前記隔壁の全長Lよりも短い長さで形成され、
    前記第2触媒層は、前記隔壁の内部であって少なくとも前記出側セルと接する領域に、前記排ガス流出側の端部から前記隔壁の延伸方向に沿って前記隔壁の全長Lよりも短い長さで形成されており、
    ここで、前記延伸方向において、前記第1触媒層の長さL と前記第2触媒層の長さL と前記L とが、次式:L <(L +L )<2L ;を満たし、前記第1触媒層と前記第2触媒層とが前記延伸方向に一部重なり合っており、
    電子顕微鏡観察下において、前記第1触媒層及び前記第2触媒層のコート量全体に対し、前記隔壁の内部に存在するコート量分が80%以上である、排ガス浄化用触媒。
  2. 前記隔壁の延伸方向において、前記第1触媒層の長さLが、前記隔壁の全長Lの40%以上70%以下である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
  3. 前記隔壁の延伸方向において、前記第2触媒層の長さLが、前記隔壁の全長Lの40%以上70%以下である、請求項1または2に記載の排ガス浄化用触媒。
  4. 前記延伸方向と直交する厚み方向において、前記第1触媒層の厚みTが、前記隔壁の全体厚みTの50%以上100%以下である、請求項1~3の何れか一つに記載の排ガス浄化用触媒。
  5. 前記延伸方向と直交する厚み方向において、前記第2触媒層の厚みTが、前記隔壁の全体厚みTの40%以上75%以下である、請求項1~4の何れか一つに記載の排ガス浄化用触媒。
  6. 前記SCR触媒として、銅または鉄を担持したゼオライト粒子を含む、請求項1~
    何れか一つに記載の排ガス浄化用触媒。
  7. 前記酸化触媒として、白金およびパラジウムの少なくとも一方を含む貴金属と、該貴金
    属を担持した担体とを含む、請求項1~の何れか一つに記載の排ガス浄化用触媒。
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