以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
まず、図1及び図2を併せて用いて、実施形態に係るオイルポンプの固着検知装置1の構成について説明する。オイルポンプの固着検知装置1は、オイルポンプ10の全吐出状態又は半吐出状態(特許請求の範囲に記載の部分吐出状態に相当)での固着を検知するものである。なお、ここでは、本発明を無段変速機(CVT)110に適用した場合を例にして説明する。図1は、オイルポンプの固着検知装置1の構成を示す図である。図2は、オイルポンプの固着検知装置1が適用される無段変速機110の構成を示す図である。
無段変速機110は、例えば、トルクコンバータ(図示省略)を介して、エンジン160のクランク軸に接続され、エンジン160からの駆動力を変換して出力する。無段変速機110は、トルクコンバータの出力軸と接続されるプライマリ軸(入力軸)120と、該プライマリ軸120と平行に配設されたセカンダリ軸(出力軸)130とを有している。
プライマリ軸120には、プライマリプーリ121が設けられている。プライマリプーリ121は、プライマリ軸120に接合された固定プーリ121aと、該固定プーリ121aに対向して、プライマリ軸120の軸方向に摺動自在でかつ相対回転不能に装着された可動プーリ(シーブ)121bとを有し、それぞれのプーリ121a,121bのコーン面間隔、すなわちプーリ溝幅を変更できるように構成されている。一方、セカンダリ軸130には、セカンダリプーリ131が設けられている。セカンダリプーリ131は、セカンダリ軸130に接合された固定プーリ131aと、該固定プーリ131aに対向して、セカンダリ軸130の軸方向に摺動自在でかつ相対回転不能に装着された可動プーリ(シーブ)131bとを有し、プーリ溝幅を変更できるように構成されている。
プライマリプーリ121とセカンダリプーリ131との間には駆動力を伝達するチェーン140が掛け渡されている。プライマリプーリ121及びセカンダリプーリ131の溝幅を変化させて、各プーリ121,131に対するチェーン140の巻き付け径の比率(プーリ比)を変化させることにより、変速比が無段階に変更される。なお、チェーン140のプライマリプーリ121に対する巻き付け径をRpとし、セカンダリプーリ131に対する巻き付け径をRsとすると、変速比iは、i=Rs/Rpで表される。また、変速速度は、di/dtで表される。
ここで、プライマリプーリ121(可動プーリ121b)にはプライマリ駆動油室(油圧シリンダ室)122が形成されている。一方、セカンダリプーリ131(可動プーリ131b)にはセカンダリ駆動油室(油圧シリンダ室)132が形成されている。プライマリプーリ121、セカンダリプーリ131それぞれの溝幅は、プライマリ駆動油室122に導入されるプライマリ油圧と、セカンダリ駆動油室132に導入されるセカンダリ油圧とを調節することにより設定・変更される。
無段変速機110を変速させるための油圧、すなわち、上述したプライマリ油圧及びセカンダリ油圧は、コントロールバルブ(バルブボディ)によってコントロールされる。コントロールバルブは、複数のスプールバルブと該スプールバルブを動かすソレノイドバルブ(電磁弁)を用いて内部に形成された油路を開閉等することで、オイルポンプ10から吐出された油圧(以下「ライン圧」ともいう)を調圧して、上述した無段変速機110のプライマリ駆動油室122及びセカンダリ駆動油室132に供給する。なお、図1にはコントロールバルブの一部の回路(ライン圧調圧回路、及び、吐出状態切替回路)のみを示した。
オイルポンプ10は、エンジン出力によって駆動され、オイルパンに貯留されているオイル(ATF)を、第1吸入油路80A及び吸入口106を通して吸入し、昇圧して2つの吐出口(第1吐出口107A及び第2吐出口107B)から吐出する。オイルポンプ10としては、例えば、2つの吐出口を有する2ポート型のベーンポンプなどが好適に用いられる。なお、2つの吐出口(第1吐出口107A及び第2吐出口107B)それぞれに対応するように2つの吸入口を有する構成としてもよい。第1吐出口107Aには第1ライン圧油路70A(特許請求の範囲に記載の高圧油路に相当)が接続されており、第1吐出口107Aから吐出されたオイルは第1ライン圧油路70Aに圧送される。一方、第2吐出口107Bには第2ライン油路70Bが接続されており、第2吐出口107Bから吐出されたオイルは第2ライン油路70Bに圧送される。第2ライン圧油路70Bは、切替制御バルブ60を介して、第1ライン圧油路70Aと連通されるように構成されている(詳細は後述する)。
第1ライン圧油路70Aには、オイルポンプ10から吐出されるオイルの油圧(吐出圧)を無段変速機110に要求される油圧(ライン圧)に調圧するためのライン圧コントロールバルブ30が設けられている。
ライン圧コントロールバルブ30は、後述するライン圧リニアソレノイド20と連通する第1制御圧油路91、第1ライン圧油路70A、及び、オイルを排出するドレン油路93と接続されている。ライン圧コントロールバルブ30は、その内部に、スプール31を軸方向に摺動自在に収容している。このスプール31の端部にはスプリング32が配設されており、ライン圧リニアソレノイド20により生成されたライン圧制御圧による押力(ライン圧制御圧×受圧面積)と、スプリング32のバネ力(付勢力)とのバランスに応じてスプール31が軸方向に駆動されることにより、第1ライン圧油路70Aからドレン油路93に排出されるオイルの量が調節され、ライン圧の調圧が行われる。
すなわち、ライン圧コントロールバルブ30は、バネ力(付勢力)がライン圧制御圧による押力よりも大きい場合に、第1ライン圧油路70Aとドレン油路93とを連通して、第1ライン圧油路70Aのオイルをドレン油路93を通して排出することによりライン圧を調節する。一方、ライン圧コントロールバルブ30は、スプリング32のバネ力(付勢力)がライン圧制御圧による押力よりも小さい場合には、第1ライン圧油路70Aとドレン油路93とを連通を遮断し、第1ライン圧油路70Aからのオイルの排出を停止する。
ライン圧リニアソレノイド20は、無段変速機110に要求されるライン圧に基づいてトランスミッション制御ユニット(以下「TCU」という)150から印加される電流値に応じてバルブを軸方向に変位させるリニアソレノイドを有しており、該リニアソレノイドに印加される電流に応じて第1ライン圧油路70Aからの供給圧とドレンとのバランスを調節することにより、ライン圧制御圧を調圧する。調圧されたライン圧制御圧が第1制御圧油路91を通してライン圧コントロールバルブ30に供給されることにより、上述したように、ライン圧コントロールバルブ30が駆動制御される。ここで、ライン圧リニアソレノイド20に印加される電流値が増大するほど、ライン圧制御圧がリニアに増大し、それに伴い、実ライン圧もリニアに増大する。
上述したように、オイルポンプ10の第2吐出口107Bは、第2ライン圧油路70B、切替制御バルブ60を介して、第1ライン圧油路70Aに連通される。また、オイルポンプ10の第2吐出口107Bは、第2ライン圧油路70B、切替制御バルブ60、第2吸入油路80Bを介して、直接的又は間接的に第1吸入油路80Aに連通されている。
切替制御バルブ60は、スプリング62のバネ力(付勢力)と、後述するスイッチ圧ソレノイド50により生成されたスイッチ油圧による押力とに基づいて、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先を、第1ライン圧油路70A(高圧油路)と、第1吸入油路80A(吸入口106)に直接的又は間接的に連通する第2吸入油路80B(低圧油路)との間で切替える。
より詳細には、切替制御バルブ60は、スイッチ圧ソレノイド50と連通する第2制御圧油路(スイッチ圧油路)92、第1ライン圧油路70A、第2吐出口107Bと連通する第2ライン圧油路70B、及び、第1吸入油路80A(吸入口106)と直接的又は間接的に連通する第2吸入油路80Bと接続されている。切替制御バルブ60は、その内部に、スプール61を軸方向に摺動自在に収容している。このスプール61の一方の端部にはスプリング62が配設されており、スプリング62のバネ力(付勢力)Fspring(=K×X(バネ潰れ代))と、スイッチ圧ソレノイド50により生成されたスイッチ油圧PSWによる押力FSW(スイッチ油圧PSW×受圧面積ASW)とのバランスに応じてスプール61が軸方向に駆動されることにより、第2ライン圧油路70Bに連通する油路が、第1ライン圧油路70Aと第2吸入油路80Bとの間で切替えられる。
より具体的には、切替制御バルブ60は、バネ力がスイッチ油圧による押力よりも大きい場合には、第2ライン圧油路70Bと第1ライン圧油路70Aとを連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第1ライン圧油路70Aとなるように切替える。一方、切替制御バルブ60は、バネ力がスイッチ油圧による押力未満の場合には、第2ライン圧油路70Bと第2吸入油路80Bとを連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bとなるように切替える。
そのため、切替制御バルブ60は、後述するスイッチ圧ソレノイド50からスイッチ油圧が供給された場合には、第2ライン圧油路70Bと第2吸入油路80Bとを連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bとなるように(半吐出状態となるように)切り替える。一方、切替制御バルブ60は、例えば、スイッチ圧ソレノイド50からスイッチ油圧が供給されない場合(スイッチ油圧がゼロの場合)には、第2ライン圧油路70Bと第1ライン圧油路70Aとを連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第1ライン圧油路70Aとなるように(全吐出状態となるように)切り替える。
スイッチ圧ソレノイド50は、無段変速機110の運転状態などに基づいて、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先を、第1ライン圧油路70Aと、第2吸入油路80Bとの間で切り替える(すなわち全吐出状態と半吐出状態とを切り替える)スイッチ油圧(切替油圧)を生成する。スイッチ圧ソレノイド50には、上述した第1ライン圧油路70A、及び第2制御圧油路(スイッチ圧油路)92が接続されている。スイッチ圧ソレノイド50が開弁されることにより、第1ライン圧油路70Aからの供給圧が、第2制御圧油路92を通して、切替制御バルブ60の一方(スプリング62と対向する側)の端部にスイッチ油圧(切替油圧)として供給される。一方、スイッチ圧ソレノイド50が閉弁されることにより、上記スイッチ油圧の供給が停止される。なお、その際に、第2制御圧油路92内のオイルがドレンされ、スイッチ油圧はゼロとされる。
スイッチ圧ソレノイド50としては、例えば、電圧が印加されることにより開弁し、電圧の印加が停止されることにより閉弁するオン・オフソレノイドが好適に用いられる。なお、電圧の印加/停止と開弁/閉弁との関係は逆(ノーマリ・オープン)であってもよい。スイッチ圧ソレノイド50の開弁/閉弁はTCU150によって制御される。
第1ライン圧油路70Aには、ライン圧(油圧)を検出するライン圧センサ153が取り付けられている。ライン圧センサ153はTCU150と電気的に接続されており、ライン圧センサ153の出力、すなわち、ライン圧に応じた電気信号(例えば電圧)は、TCU150に読み込まれる。
TCU150には、ライン圧センサ153の他、例えば、シフトレバーの選択位置を検出するレンジスイッチ151、及び無段変速機110のオイルの温度(油温)を検出する油温センサ152等を含む各種センサが接続されている。また、TCU150は、CAN(Controller Area Network)190を介して、エンジン160を総合的に制御するエンジン・コントロールユニット(以下「ECU」という)170、及び、自動加圧によるブレーキ制御とエンジン160のトルク制御により、横滑りを抑制し、旋回時の車両安定性を確保するビークルダイナミック・コントロールユニット(以下「VDCU」という)180等と相互に通信可能に接続されている。
ここで、ECU170には、エンジン160のクランクシャフトの位置を検出するクランク角センサ171や、アクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサ172等が接続されている。ECU170では、クランク角センサ171によって検出されたクランクシャフトの回転位置の変化からエンジン回転数が求められる。ECU170は、CAN190を介してエンジン回転数や、アクセルペダル開度、冷却水温度、エンジントルク等の情報をTCU150等に対して送信する。
一方、VDCU180には、車両の各車輪の回転速度(車速)を検出する車速センサ181や車両の前後加速度及び横加速度を検出する加速度センサ等が接続されている。VDCU180は、検出した車輪速(車速)や加速度等の情報を、CAN190を介してTCU150に対して送信する。
TCU150は、CAN190を介して、ECU170からエンジン回転数やアクセル開度等の情報を受信するとともに、VDCU180から車速や加速度等の情報を受信する。なお、車速情報は、セカンダリ軸130の回転数、及び、セカンダリ軸130と車輪との間の総ギヤ比から算出してもよい。また、TCU150に車速センサを接続して直接的に車速を検出する構成としてもよい。
TCU150は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するEEPROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、バッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び、入出力I/F等を有して構成されている。
TCU150は、上述した各種センサ等から取得した各種情報に基づいて、変速マップに従い、車両の運転状態(例えばアクセルペダル開度及び車速等)に応じて自動で変速比を無段階に変速する。なお、変速マップはTCU150内のEEPROMなどに格納されている。また、TCU150は、アクセルペダルが踏込まれて、アクセル開度が所定開度(例えば中間開度)以上となった場合に、無段変速機110の変速比をロー側に変化させてエンジン回転数を上昇させるように制御するキックダウン制御を実行する。さらに、TCU150は、上述したライン圧リニアソレノイド20や、スイッチ圧ソレノイド50等の駆動を制御する。すなわち、TCU150は、オイルポンプ10の吐出状態(全吐出状態と半吐出状態)を切り替える。
特に、TCU150は、オイルポンプ10が全吐出状態又は半吐出状態で固着(すなわち、吐出状態を切り替えるスイッチ圧ソレノイド50及び/又は切替制御バルブ60が固着等)しているか否かを判定する際(固着診断時)に、誤検知を防止する機能(誤検知防止機能)を有している。そのため、TCU150は、吐出状態切替部150a、目標油圧設定部150b、調圧部150c、固着判定部150d、及び、固着判定禁止部150eを機能的に備えている。TCU150では、EEPROMなどに記憶されているプログラムがマイクロプロセッサによって実行されることにより、吐出状態切替部150a、目標油圧設定部150b、調圧部150c、固着判定部150d、及び、固着判定禁止部150eの各機能が実現される。
固着判定禁止部150eは、固着判定中におけるオイルの流量変化と相関を有する指標値が所定の条件を満足する場合(例えば、変速動作などに起因するオイルの流量変化に伴い油圧が低下することによる誤検知が生じるおそれがある場合)には、後述する目標油圧設定部150b、調圧部150c、吐出状態切替部150a、及び、固着判定部150dによる固着診断の実行を禁止又は中断する。言い換えると、オイルポンプ10が固着しているか否かの判定を行いオイルポンプ10の固着を検知する一連のシーケンスの実行の開始を禁止又は実行を中断する。すなわち、固着判定禁止部150eは、特許請求の範囲に記載の固着判定禁止手段として機能する。
より具体的には、固着判定禁止部150eは、所定期間(例えば、5~10秒間)における車速の平均値(平均車速)と、当該所定期間における車速の最大値及び最小値それぞれとの偏差(指標値に相当)が所定速度(例えば、±2(km/h))以上の場合には固着判定(診断)の実行を禁止又は中断する。ところで、例えば、車群の流れにのって安定して定速走行しているような状態では、変速比の変化が小さく、オイルの流量変化も小さくなる(すなわち、油圧の低下も生じ難くなる)と推定される。逆に、このような走行状態にないときには、変速比の変化が大きく、オイルの流量変化も大きくなる可能性が高い(すなわち、油圧の低下も生じ易い)。そのため、固着判定禁止部150eは、このような走行状態でないときに固着判定の実行を禁止又は中断する。
また、固着判定禁止部150eは、アクセル開度の変化速度(指標値に相当)が所定値(例えば、10(deg/s))以上の場合には固着判定の実行を禁止又は中断する。ところで、アクセル開度の変化速度又は変化量が小さい状態では、変速比の変化が小さく、オイルの流量変化も小さくなる(すなわち、油圧の低下も生じ難くなる)。逆に、このような状態にないときには、変速比の変化が大きく、オイルの流量変化も大きくなる(すなわち、油圧の低下も生じ易い)。そのため、固着判定禁止部150eは、このような状態でないときに固着判定の実行を禁止又は中断する。なお、アクセル開度の変化速度に代えて、又は加えて、所定期間におけるアクセル開度の変化量が所定値以上の場合に固着判定の実行を禁止又は中断する構成としてもよい。
さらに、固着判定禁止部150eは、アクセル開度が所定開度(例えば、3(deg))だけ変化したと仮定した場合の変速比の変化量(指標値に相当)が所定値(例えば、0.5)以上の場合に固着判定の実行を禁止又は中断する。ところで、アクセル開度が所定開度(一定値)だけ変化したときの変速比の変化量は、他のパラメータ(例えば車速)などによって変化する。ここで、アクセル開度の変化量に対する変速比の変化量が大きい運転領域では、オイルの流量変化も大きくなる可能性が高い(すなわち、油圧の低下も生じ易い)。そのため、固着判定禁止部150eは、このような運転領域では固着判定の実行を禁止又は中断する。なお、その際に、変速比の変化量(予測変化量)は、例えば、実アクセル開度、及び、実アクセル開度+所定開度(例えば3(deg))それぞれで変速マップを検索して取得した検索結果(目標プライマリ回転数又は目標変速比)の差から求めることができる。
また、固着判定禁止部150eは、実アクセル開度と、変速比をロー側に変化させるキックダウンを実行するか否かを判定するためのキックダウン判定用アクセル開度との偏差が所定開度(例えば、5(deg))未満の場合に固着判定の実行を禁止又は中断する。ところで、キックダウンが実行されると、変速比が大きくダウンシフトされるため、オイルの流量変化も大きくなる可能性が高い(すなわち、油圧の低下も生じ易い)。そのため、固着判定禁止部150eは、キックダウンが実行される可能性が高い運転状態では固着判定の実行を禁止又は中断する。
なお、固着判定禁止部150eによって固着判定の実行が禁止又は中断された場合、後述する吐出状態切替部150a、目標油圧設定部150b、調圧部150c、及び、固着判定部150dそれぞれは、固着判定の実行を開始することなく通常の制御を行う(又は固着判定の実行を中断して通常制御に戻る)。
吐出状態切替部150aは、スイッチ圧ソレノイド50を駆動して、オイルポンプ10の吐出状態を、2つの吐出口(第1吐出口107A、第2吐出口107B)が第1ライン圧油路70A(高圧油路)と連通される全吐出状態、又は、2つの吐出口(第1吐出口107A、第2吐出口107B)のうち第1吐出口107Aが第1ライン圧油路70Aに連通され、第2吐出口107Bがオイルポンプ10の吸入口106(第1吸入油路80A)と直接的又は間接的に連通される半吐出状態に切り替える。すなわち、吐出状態切替部150a、スイッチ圧ソレノイド50、及び、切替制御バルブ60は、特許請求の範囲に記載の吐出状態切替手段として機能する。
目標油圧(目標ライン圧)設定部150bは、オイルポンプ10が全吐出状態又は半吐出状態で固着しているか否かを判定するための診断用目標油圧を設定する。目標油圧設定部150bは、オイルポンプ10が全吐出状態又は半吐出状態で固着しているか否かを判定する固着判定(診断)を行うときに、診断用目標油圧として、半吐出状態での最大圧よりも高い値(半吐出最大圧+所定値)を設定する。なお、所定値は、各種ばらつきを考慮して誤判定しない値とすることが好ましい。すなわち、目標油圧設定部150bは、特許請求の範囲に記載の目標油圧設定手段として機能する。
より具体的には、診断用目標油圧は、半吐出状態での最大圧よりも高く、かつ、全吐出状態での最大圧よりも低い値に設定されることが好ましい。ここで、半吐出状態での最大圧、及び、全吐出状態での最大圧それぞれは、例えば、エンジン回転数と油温と各最大圧との関係を定めたマップ(半吐出最大圧マップ、全吐出最大圧マップ)を予め記憶しておき、該マップをエンジン回転数と油温とで検索することにより求めることができる。なお、エンジン回転数が高くなるほど各最大圧は高くなる。一方、油温が高くなるほど各最大圧は低くなる。なお、目標油圧設定部150bは、固着判定(診断)を行わないとき、すなわち、通常制御時には、車両の運転状態(例えば車速やアクセル開度等)に応じて目標油圧(目標ライン圧)を設定する。なお、エンジン回転数と油温と診断用目標油圧との関係を定めたマップ(診断用目標油圧マップ)を予め記憶しておき、該マップをエンジン回転数と油温とで検索することにより診断用目標油圧を直接求める構成としてもよい。上述したように設定された診断用目標油圧は、調圧部150cに出力される。
調圧部150cは、ライン圧リニアソレノイド20を駆動して、実油圧(実ライン圧)が診断用目標油圧と一致するように制御する。すなわち、調圧部150cは、特許請求の範囲に記載の調圧手段として機能する。
固着判定部150dは、オイルポンプ10が全吐出状態又は半吐出状態で固着しているか否かを判定する。すなわち、固着判定部150dは、特許請求の範囲に記載の固着判定手段として機能する。ここで、図3を併せて参照しつつ、全吐出状態又は半吐出状態での固着の検知方法について詳細に説明する。図3は、オイルポンプの固着検知装置1による固着検知方法を説明するための図であり、固着検知実行時における、診断用目標油圧(診断用目標ライン圧)、半吐出時最大圧、及び、実油圧(実ライン圧)の変化の一例を示す。なお、図3では、通常の目標油圧(通常目標ライン圧)も併せて示した。図3の横軸は時間(sec)であり、縦軸は油圧(MPa)である。図3では、実ライン圧(実油圧)を実線で、診断用目標ライン圧を破線で、半吐出状態での最大圧を点線で、通常時の目標ライン圧を一点鎖線でそれぞれ示した。
固着判定禁止部150eにより固着判定(診断)の実行が禁止又は中断されておらず(すなわち、許可されており)、オイルポンプ10の全吐出固着又は半吐出固着の診断が実行される際に、まず、吐出状態切替部150aは、スイッチ圧ソレノイド50を駆動して、オイルポンプ10の吐出状態を全吐出状態とする制御を行う(図3のt1参照)。
目標油圧設定部150bは、診断用目標油圧として、半吐出状態の最大圧よりも高い値を設定する。その際に、目標油圧設定部150bは、実油圧が追従できるように、一定の傾きを持って、半吐出状態の最大圧を超える値まで、診断用目標油圧を徐々に上げる(図3のt1~t2参照)。ここで、上記一定の傾きは、実油圧の追従性を考慮して、例えば、油温とエンジン回転数とに応じて設定される。そして、目標油圧設定部150bは、診断用目標油圧を半吐出状態の最大圧を超える値まで上昇させた後、当該診断用目標油圧をその値で保持(固定)する(図3のt2~t4参照)。なお、半吐出状態の最大圧は、上述したように、エンジン回転数と油温とに基づいて求めることができる。
調圧部150cは、ライン圧リニアソレノイド20を駆動して、実油圧が診断用目標油圧と一致するように制御する。
固着判定部150dは、診断用目標油圧が半吐出状態の最大圧を超える値まで上昇された後、所定時間が経過したときに、半吐出状態で固着しているか否かの判定(診断)を開始する。より具体的には、固着判定部150dは、実油圧が半吐出状態の最大圧を超えて上昇した場合(例えば診断用目標油圧と略一致した場合)は半吐出状態で固着していないと判定する(図3のt2~t3参照)。一方、実油圧が半吐出状態の最大圧を超えて上昇しない場合は半吐出状態で固着していると判定する。なお、半吐出固着の判定(診断)は省略してもよい。
半吐出固着判定が終了した後(半吐出固着がないと判定された場合)、吐出状態切替部150aは、スイッチ圧ソレノイド50を駆動して、オイルポンプ10の吐出状態を全吐出状態から半吐出状態に切り替える制御を行う(図3のt3参照)。
固着判定部150dは、全吐出状態から半吐出状態に切り替える制御が行われた後、所定圧以上の圧力降下があったか否か、及び/又は、実油圧が所定圧(半吐出状態の最大圧)以下に低下したか否かに基づいて、全吐出状態の固着を判定する。すなわち、固着判定部150dは、全吐出状態から半吐出状態に切り替える制御が行われた後、所定時間以内に、実油圧が所定値以上低下した場合は全吐出状態で固着していないと判定する。一方、実油圧が所定値以上低下しなかった場合は全吐出状態で固着していると判定する(図3のt3~t4参照)。その際に、上記所定時間は、正常時に半吐出状態に切り替えたときの油圧の追従性を考慮して、例えば、油温とエンジン回転数とに応じて設定される。また、上記所定値は、診断用目標油圧と半吐出最大圧との差を考慮して、例えば、エンジン回転数と油温とに基づいて、又は、診断用目標油圧と半吐出最大圧との差に応じて設定される。また、固着判定部150dは、全吐出状態から半吐出状態に切り替える制御が行われた後、一定時間、実油圧が半吐出状態の最大圧以下に低下した場合は全吐出状態で固着していないと判定する。一方、実油圧が半吐出状態の最大圧以下に低下しなかった場合は全吐出状態で固着していると判定する(図3のt3~t4参照)。ここで、上記一定時間は、固着判定の確実性を低下させない範囲で短く設定することが好ましい。固着判定(診断)が終了した後は、診断用目標油圧から通常の目標油圧(目標ライン圧)に戻される(図3のt4~参照)。
次に、図3~図5を併せて参照しつつ、オイルポンプの固着検知装置1の動作(固着検知方法)について説明する。図4及び図5は、オイルポンプの固着検知装置1による固着検知処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、主としてTCU150において、所定時間毎(例えば10ms毎)に繰り返して実行される。
ステップS100では、エンジン回転数、油温、車速、及び、アクセル開度などが読み込まれる。次に、ステップS102では、所定期間(例えば、5~10秒間)における平均車速(車速の平均値)と、所定期間における車速の最大値及び最小値それぞれとの偏差が所定速度(例えば、±2(km/h))以上であるか否かについての判断が行われる。ここで、上記偏差が所定速度以上である場合には、ステップS138において、固着判定が中断された後、ステップS132に処理が移行する。一方、上記偏差が所定速度未満であるときには、ステップS104に処理が移行する。
ステップS104では、アクセル開度の変化速度が所定値(例えば、10(deg/s))以上であるか否かについての判断が行われる。ここで、アクセル開度の変化速度が所定値以上である場合には、ステップS138において、固着判定が中断された後、ステップS132に処理が移行する。一方、アクセル開度の変化速度が所定値未満のときには、ステップS106に処理が移行する。
ステップS106では、アクセル開度が所定開度(例えば、3(deg))だけ変化したと仮定した場合の変速比の変化量(予測変化量)が所定値(例えば、0.5)以上であるか否かについての判断が行われる。ここで、変速比の変化量が所定値以上である場合には、ステップS138において、固着判定が中断された後、ステップS132に処理が移行する。一方、変速比の変化量が所定値未満であるときには、ステップS108に処理が移行する。
ステップS108では、実アクセル開度と、キックダウンを実行するか否かを判定するためのキックダウン判定用アクセル開度との偏差が所定開度(例えば、5(deg))未満であるか否かについての判断が行われる。ここで、上記偏差が所定開度未満の場合には、ステップS138において、固着判定が中断された後、ステップS132に処理が移行する。一方、上記偏差が所定開度以上のときには、ステップS110に処理が移行する。
ステップS110では、スイッチ圧ソレノイド50を駆動して、オイルポンプ10の吐出状態を全吐出状態とする制御が行われる(図3のt1参照)。
続いて、ステップS112では、診断用目標油圧として、半吐出状態の最大圧よりも高い値(半吐出最大圧+所定値)が設定される。その際、実油圧が追従できるように、一定の傾きを持って、半吐出状態の最大圧を超える値まで、診断用目標油圧が徐々に上げられる。また、実油圧が診断用目標油圧と一致するように調圧される(図3のt1~t2参照)。
次に、ステップS114では、診断用目標油圧が半吐出状態の最大圧を超える値(半吐出最大圧+所定値)まで上昇(到達)したか否かについての判断が行われる。ここで、診断用目標油圧が半吐出状態での最大圧を超える値まで上昇していない場合には、ステップS112に処理が移行し、診断用目標油圧が半吐出状態の最大圧を超える値まで上昇するまで、上述したステップS112~ステップS114の処理が繰り返して実行される。一方、診断用目標油圧が半吐出状態での最大圧を超える値まで上昇したときには、ステップS116に処理が移行する。
診断用目標油圧が半吐出状態の最大圧を超える値まで上昇された場合、ステップS116では、診断用目標油圧がその値で保持(固定)される(図3のt2~t4参照)。そして、診断用目標油圧が半吐出状態の最大圧を超える値まで上昇された後、所定時間が経過したときに、ステップS118において、半吐出状態で固着しているか否かの判定(診断)が開始される。
続くステップS120では、診断が開始された後、一定時間、実油圧が半吐出状態での最大圧を超えたか否かについての判断が行われる。ここで、一定時間、実油圧が半吐出状態の最大圧を超えた場合には、ステップS122に処理が移行する。一方、一定時間、実油圧が半吐出状態での最大圧を超えていないときには、ステップS136に処理が移行する。
実油圧が半吐出状態の最大圧を超えた場合(例えば診断用目標油圧と略一致した場合)、ステップS122において、半吐出状態で固着していないと判定される(図3のt2~t3参照)。
半吐出固着判定が終了した後(半吐出固着がないと判定された場合)、ステップS124では、スイッチ圧ソレノイド50を駆動して、オイルポンプ10の吐出状態を半吐出状態に切り替えるように制御が行われる(図3のt3参照)。
そして、ステップS126では、全吐出状態から半吐出状態に切り替える制御が行われた後、所定時間以内に、実油圧が所定値以上低下したか否か(すなわち、所定圧以上の圧力降下があったか否か)についての判断が行われる。ここで、所定時間以内に、実油圧が所定値以上低下(圧力降下)した場には、ステップS128に処理が移行する。一方、所定時間以内に、実油圧が所定値以上低下(圧力降下)しなかったときには、ステップS132において、全吐出状態で固着していると判定(異常判定)された後、ステップS134に処理が移行する。
ステップS128では、一定時間、実油圧が所定圧(半吐出最大圧)以下に低下したか否かについての判断が行われる。ここで、一定時間、実油圧が所定圧(半吐出最大圧)以下に低下した場合には、ステップS130において、全吐出状態で固着していないと判定(正常判定)され、その後、ステップS134に処理が移行する。一方、一定時間、実油圧が所定圧(半吐出最大圧)以下に低下しないときには、ステップS132において、全吐出状態で固着していると判定(異常判定)され、その後、ステップS134に処理が移行する(図3のt3~t4参照)。
ステップS134では、固着診断が終了され、目標油圧が、診断用目標油圧から通常の目標油圧(目標ライン圧)に戻される(図3のt4~参照)。
上述したステップS120が否定された場合、ステップS136では、さらに一定時間、実油圧が半吐出状態での最大圧以下であるか否かについての判断が行われる。ここで、一定時間、実油圧が半吐出状態での最大圧以下である場合には、ステップS138において、半吐出状態で固着していると判定(異常判定)され、その後、ステップS134に処理が移行する。一方、一定時間、実油圧が半吐出状態での最大圧以下でないときには、油圧がハンチングしていると推測され、ステップS140において、固着判定が中断された後、ステップS134に処理が移行する。
上述したように、ステップS134では、固着診断が終了され、目標油圧が、診断用目標油圧から通常の目標油圧(目標ライン圧)に戻される。
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、オイルポンプ10が固着しているか否かを判定する固着判定が行われる際に、固着判定中におけるオイルの流量変化と相関を有する指標値が所定の条件を満足する場合には、目標油圧設定部150b、調圧部150c、吐出状態切替部150a、及び、固着判定部150dによる固着判定の実行の開始が禁止又は実行が中断される。そのため、所定の条件を適切に設定することにより、固着判定を行う際に、例えば、変速動作などに起因するオイルの流量変化(流量不足)に伴い油圧が低下することによる誤検知が生じるおそれがあるときに、固着判定の実行を禁止又は中断することができる。その結果、誤検知を防止することが可能となる。
より具体的には、本実施形態によれば、所定期間における車速の平均値と、該所定期間における車速の最大値及び最小値それぞれとの偏差が所定速度以上のとき(すなわち、変速比の変化が大きく、オイルの流量変化も大きくなる可能性が高く、油圧の低下が生じ易いときに、固着判定の実行が禁止又は中断されるため、誤検知を防止することが可能となる。
また、本実施形態によれば、アクセル開度の変化速度が所定値以上のとき(すなわち、変速比の変化が大きく、オイルの流量変化が大きくなり、油圧の低下も生じ易いとき)に、固着判定の実行が禁止又は中断されるため、誤検知を防止することが可能となる。
さらに、本実施形態によれば、アクセル開度が所定開度だけ変化したと仮定した場合の変速比の変化量が所定値以上の場合(すなわち、アクセル開度の変化に対する変速比の変化幅が大きく、オイルの流量変化が大きくなる可能性が高く、油圧の低下が生じ易い場合)に固着判定の実行が禁止又は中断されるため、誤検知を防止することが可能となる。
また、本実施形態によれば、実アクセル開度と、キックダウンを実行するか否かを判定するためのキックダウン判定用アクセル開度との偏差が所定開度未満の場合(すなわち、キックダウンが実行される可能性が高い運転状態の場合)に固着判定の実行が禁止又は中断されるため、誤検知を防止することが可能となる。
一方、本実施形態によれば、オイルポンプ10が全吐出状態又は半吐出状態で固着しているか否かを判定する固着判定が行われるときに、まず、オイルポンプ10の吐出状態を全吐出状態とするように制御が行われ、オイルポンプ10が全吐出状態又は半吐出状態で固着しているか否かを判定するための診断用目標油圧として、半吐出状態の最大圧よりも高い値が設定され、第1ライン圧油路70A(高圧油路)の油圧が診断用目標油圧と一致するように調圧される。すなわち、診断用目標油圧と一致するように実油圧を上昇させる際に、全吐出状態に制御することにより、正常時(すなわち半吐出固着していないとき)には、半吐出高圧状態となる時間を削減することができる。そして、その後、オイルポンプ10の吐出状態を全吐出状態から半吐出状態に切り替える制御が行われ、油圧が半吐出状態の最大圧以下に低下した場合は全吐出状態で固着していないと判定され、油圧が半吐出状態の最大圧以下に低下しなかった場合は全吐出状態で固着していると判定される。そのため、全吐出状態から半吐出状態に切り替える制御が行われた後、比較的短時間で全吐出固着の有無を判定することができる。以上のようにして、半吐出状態かつ高圧状態となる時間を短くすること、すなわち、半吐出高圧状態で発生し得る異音の発生時間を短くすることができる。
また、本実施形態によれば、オイルポンプ10の吐出状態を全吐出状態から半吐出状態に切り替える制御が行われた後、所定時間以内に、油圧が所定値以上低下し、かつ、油圧が半吐出状態の最大圧以下に低下した場合は全吐出状態で固着していないと判定され、油圧が所定値以上低下しなかった場合、又は、油圧が半吐出状態の最大圧以下に低下しなかった場合は全吐出状態で固着していると判定される。すなわち、油圧の低下量に加えて油圧の値に基づいて全吐出固着の判定が行われる。そのため、比較的短時間で(すなわち、半吐出状態での保持時間を短縮しつつ)、より確実に全吐出固着の判定を行うことが可能となる。なお、その際に、エンジン回転数と油温とに基づいて、上記所定値が設定されるため、より精度よく全吐出固着の判定を行うことが可能となる。
また、本実施形態によれば、オイルポンプ10の吐出状態が全吐出状態となるように制御されているときに、調圧された油圧が半吐出状態での最大圧を超えて上昇した場合は半吐出状態で固着していないと判定され、油圧が半吐出状態での最大圧を超えて上昇しない場合は半吐出状態で固着していると判定される。そのため、正常時(すなわち半吐出固着していないとき)には、全吐出状態を維持したままで半吐出固着の有無を判定することにより、半吐出状態となる時間を削減することができる。
また、本実施形態によれば、診断用目標油圧が半吐出状態の最大圧を超える値まで上昇された後、当該診断用目標油圧が保持(固定)され、診断用目標油圧が半吐出状態の最大圧を超える値まで上昇した後、所定時間が経過したときに、半吐出状態で固着しているか否かの判定が開始される。よって、実油圧の追従性(遅れ)を考慮して判定を開始することにより、誤判定を防止することが可能となる。
本実施形態によれば、固着判定を行う際に、実油圧が追従できるように、一定の傾きを持って、半吐出状態の最大圧を超える値まで、診断用目標油圧が徐々に上げられる。よって、実油圧の追従性(遅れ)を考慮して診断用目標油圧を上昇することにより、誤判定を防止することが可能となる。
また、本実施形態によれば、エンジン回転数と油温とに基づいて、半吐出最大圧が求められるとともに、診断用目標油圧が設定されるため、より精度よく固着判定を行うことが可能となる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、固着判定を禁止又は中断する各条件の数値(しきい値)の例を示したが、各条件の数値(しきい値)は、上記実施形態に限られることなく、求められる要件等に応じて任意に設定することができる。また、半吐出状態のときにのみ、固着判定を禁止するか否かを判断する構成としてもよい。さらに、上述した禁止・中断条件に加えて(又は代えて)、例えば、車両の加減速度が所定以下の場合に、固着判定を禁止又は中断するようにしてもよい。
上記実施形態では、本発明を無段変速機(CVT)110に適用した場合を例にして説明したが、本発明は、有段自動変速機(Step AT)やDCTなどにも適用することができる。また、上記実施形態では、本発明をチェーン式の無段変速機(CVT)110に適用したが、チェーン式の無段変速機に代えて、例えば、ベルト式の無段変速機や、トロイダル式の無段変速機等にも適用することができる。
上記実施形態では、2つの吐出口107A,107Bを有する2ポート型のオイルポンプ10を例にして説明したが、2ポート型のオイルポンプ10に代えて、3つ以上の吐出口を有するオイルポンプを用いてもよい。また、上記実施形態では、オイルポンプ10としてベーンポンプを用いたが、ベーンポンプに代えて、例えば、内接歯車式ギヤポンプやトロコイドポンプ等を用いることもできる。
なお、部分吐出状態は半吐出状態に限定されず、全吐出状態よりも吐出量(容量)の小さい運転状態であればよい。
上記実施形態では、スイッチ圧ソレノイド50として、オン・オフソレノイドを用いたが、オン・オフソレノイドに代えて、例えば、デューティソレノイドやリニアソレノイド等を用いてもよい。
上記実施形態では、全吐出状態での固着を判定するために、2つの方法(すなわち、油圧の値を用いる方法と、油圧の低下量(低下幅)を用いる方法)を併用したが、いずれか一方の方法のみを用いる構成としてもよい。また、上記実施形態では、全吐出状態で診断用目標油圧(及び実油圧)を上昇させたが、半吐出状態で診断用目標油圧(及び実油圧)を上昇させてもよい。