JP7172713B2 - 酸化亜鉛鉱の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の酸化亜鉛鉱の製造方法は、図1に示す酸化亜鉛鉱の製造を行う全体プロセスのうち、少なくとも、湿式工程S20、乾燥加熱工程S30、及び、排ガス処理工程S40を含んでなる複合的なプロセスである。湿式工程S20は、乾燥加熱工程S30に装入する中間生成物である粗酸化亜鉛ケーキを得る工程であり、乾燥加熱工程S30は、この粗酸化亜鉛ケーキを焼成して製品である酸化亜鉛鉱を産出する工程であり、この乾燥加熱工程S30から水銀を含有する排ガスが排出される。排ガス処理工程S40は、この水銀を含有する排ガスから水銀及びその他の有害物質を分離除去する工程である。又、図1に示すように、本発明の酸化亜鉛鉱の製造方法は、これらの必須の3工程の他に、更に、還元焙焼工程S10、及び、排水処理工程S50を加えた全体プロセスとしての実施を、その代表的な実施態様とする全体プロセスである。
還元焙焼工程S10は、通常、大型の回転式加熱炉である還元焙焼ロータリーキルン(RRK)によって、鉄鋼ダスト等の原料鉱(一次原料)を、還元剤と共に高温で焙焼する工程である。還元焙焼処理の焙焼温度については、被処理物の最高温度が1050℃以上1200℃以下程度となるように還元焙焼ロータリーキルン(RRK)の炉内温度を保持管理することが好ましい。
湿式工程S20は、還元焙焼工程S10において回収された上記の粗酸化亜鉛ダストを、工業用水等でレパルプし、フッ素等の水溶性不純物を分離抽出する処理を行う工程である。
乾燥加熱工程S30は、湿式工程S20で得た粗酸化亜鉛ケーキを、乾燥加熱ロータリーキルン(DRK)等の乾燥加熱炉に装入して焼成する工程である。この乾燥加熱工程S30により、水銀を含む残留不純物を揮発させて、高品位の酸化亜鉛鉱を得ることができる。乾燥加熱処理の焼成温度については、乾燥加熱ロータリーキルン(DRK)等から産出される際の被焼成物の温度が1000℃以上1200℃以下、好ましくは、1100℃以上1150℃以下の範囲となるように炉内温度を保持管理することが好ましい。
排ガス処理工程S40は、乾燥加熱工程S30で発生した水銀等を含有する排ガスを除塵、無害化して水銀及びその他の不純物を除去し、無害化された処理済み排ガスとする工程である。この工程を行う設備としては、洗浄塔、湿式電気集塵機、水銀吸着剤が充填されている充填塔の組合せが一般的である。尚、上記の水銀吸着剤としては、粒コークス等の炭素化合物の表面に、銅精鉱、亜鉛精鉱、鉛精鉱等から選択される1種以上の硫化物を付着させたものが広く用いられている。
排水処理工程S50は、湿式工程S20において粗酸化亜鉛ダストから分離されたフッ素、カドミウム等の水溶性不純物を高濃度で含有する廃液から、カドミウム等の一部の重金属を除去し、その後、廃液中に微量に残留した重金属、及び、フッ素を消石灰による中和処理により沈殿除去し、最終的にpH調整処理ST51を施して無害の処理済み排水とする工程である。
本発明の酸化亜鉛鉱の製造方法においては、図1に示すように、中間生成物水銀含有率測定処理ST31、製品産出量測定処理ST32、及び、水銀負荷量調整処理ST33を必須の処理として行う。
中間生成物水銀含有率測定処理ST31は、湿式工程S20から排出される中間生成物であり、乾燥加熱工程S30に装入される粗酸化亜鉛ケーキの水銀含有率を、乾燥加熱工程S30への装入前の段階で測定する処理である。この測定処理は、具体的には、例えば、一定時間毎にサンプリングした粗酸化亜鉛ケーキを溶解処理して、原子吸光分析装置で測定することによって行うことができる。
製品産出量測定処理ST32は、乾燥加熱工程S30から産出される最終製品である酸化亜鉛鉱の産出量を測定する処理である。この処理は、具体的には、例えば、酸化亜鉛鉱の移送設備と貯留ホッパーの間に備えられた、ロードセルを用いた吊り下げ式の秤量器で測定することによって行うことができる。
水銀負荷量調整処理ST33は、上記の「水銀負荷量」が、所定の管理規準値範囲の上限値を超えた場合には、水銀負荷量を減少させる調整を行い、「水銀負荷量」が、所定の管理規準値範囲の下限値未満となった場合には、水銀負荷量を増加させる調整を行うことにより、「水銀負荷量」を、所定範囲内に維持する処理である。
水銀負荷量調整処理ST33における「水銀負荷量」は、乾燥加熱工程S30に装入する粗酸化亜鉛ケーキの装入量を適宜増減させることよって、適切な範囲内に維持することができる。具体的には、「水銀負荷量」が、所定の下限値未満となった場合には、乾燥加熱工程S30に装入される粗酸化亜鉛ケーキの装入量を増加させればよく、「水銀負荷量」が、所定の上限値を超えた場合には、乾燥加熱工程S30に装入される粗酸化亜鉛ケーキの装入量を減少させればよい。このような粗酸化亜鉛ケーキの装入量の増減により、「乾燥加熱工程S30から産出される酸化亜鉛鉱の産出量」を増減させて、上記の通り、「水銀負荷量」を適切な範囲内に維持することができる。
又、上記の「水銀負荷量」の調整は、原料鉱の水銀含有率の調整によることもできる。特に鉄鋼ダストのように、銘柄やロット毎に水銀含有率にバラツキがある複数の原料を用いる場合、各銘柄やロットの配合比を調整して、原料段階での「水銀含有率」を制御できるので、このような場合に、この調整方法は有効である。従来方法による場合には、原料段階での「水銀含有率」は、処理済み排ガスの水銀濃度との相関が弱く、管理指標としては必ずしも適切に機能しえなかったが、本発明の製造方法においては、中間生成物水銀含有率測定処理ST31によって、排ガスダストの水銀含有率や繰り返し量の変動も織り込んだ測定処理により「水銀負荷量」を得るプロセスとされているので、原料段階での調整も水銀負荷量を調整する手段として有効に機能する。又、これにより、組成のバラツキが大きい鉄鋼ダストをより効率よく適切な配分で利用することができるようにもなる。
尚、処理済み排ガスの水銀濃度は、上記の水銀負荷量の増減に対応して、最終的に排ガス処理工程を経て処理系外に排出される処理済み排ガスの風量を増減させる排ガス風量調整処理ST41によっても更に最終的な調整をすることができる。水銀負荷量が、所定の上限値を超えた場合には、処理済み排ガスの風量を増加させ、水銀負荷量が、所定の下限値未満となった場合には、処理済み排ガスの風量を減少させることにより、処理済み排ガスの水銀濃度の制御の精度を更に高めることができるため水銀濃度制御の補助的手段として有効である。
ここで、図2は、「水銀負荷量」に依拠して「処理済み排ガスの水銀濃度」を推定する本発明の製造方法による場合における、「水銀負荷量から推定した処理済み排ガス水銀濃度指数」と、「実際にサンプリングして分析した処理済み排ガス水銀濃度指数」との関係を示した相関図である。この方法においては、「水銀負荷量から推定した処理済み排ガス水銀濃度指数」と、「実際にサンプリングして分析した処理済み排ガス水銀濃度指数」の相関は十分に高く、「水銀負荷量から推定した処理済み排ガス水銀濃度指数」は、処理済み排ガスの水銀濃度の制御を行うための管理値としては適切であることが示されている。尚、図2における「排ガス水銀濃度指数」とは、直接的な濃度の数値を相対的な比率に換算した数値であり、例えば法定基準値の10分の1を1.00と定めてもよい。
S20 湿式工程
S30 乾燥加熱工程
ST31 中間生成物水銀含有率測定処理
ST32 製品産出量測定処理
ST33 水銀負荷量調整処理
S40 排ガス処理工程
ST41 排ガス風量調整処理
S50 排水処理工程
ST51 pH調整処理
Claims (4)
- 水銀を含有する原料鉱から酸化亜鉛鉱を製造する酸化亜鉛鉱の製造方法であって、
前記原料鉱を還元焙焼して得られる粗酸化亜鉛ダストに湿式処理を施し、水溶性不純物を除去して、粗酸化亜鉛ケーキを得る湿式工程と、
前記粗酸化亜鉛ケーキを乾燥加熱炉で焼成し、酸化亜鉛鉱を得る乾燥加熱工程と、
前記乾燥加熱工程で発生した排ガスから水銀を除去する排ガス処理工程と、
を備え、
前記湿式工程から排出される前記粗酸化亜鉛ケーキの水銀含有率を測定する中間生成物水銀含有率測定処理と、
前記乾燥加熱工程から産出される前記酸化亜鉛鉱の産出量を測定する製品産出量測定処理と、を行い、
前記産出量と前記水銀含有率との積を水銀負荷量とみなして、該水銀負荷量が、所定の上限値を超えた場合には、該水銀負荷量を減少させる調整を行い、前記水銀負荷量が、所定の下限値未満となった場合には、該水銀負荷量を増加させる調整を行う水銀負荷量調整処理を行うことによって、排ガス処理工程から排出される処理済み排ガスの水銀濃度を所定範囲内に維持する、酸化亜鉛鉱の製造方法。 - 前記湿式工程から排出される前記粗酸化亜鉛ケーキを処理系外へ排出する処理と、該処理により排出された粗酸化亜鉛ケーキを処理系内に戻して乾燥加熱工程に装入する処理と、を選択的に行うことにより、前記乾燥加熱工程に装入される前記粗酸化亜鉛ケーキの装入量を増減させる、請求項1に記載の酸化亜鉛鉱の製造方法。
- 前記原料鉱の水銀含有率を変動させることによって、前記乾燥加熱工程に装入される前記粗酸化亜鉛ケーキの水銀含有率を増減させる、請求項1又は2に記載の酸化亜鉛鉱の製造方法。
- 前記原料鉱が鉄鋼ダストを含んでなる原料鉱である、請求項1から3の何れかに記載の酸化亜鉛鉱の製造方法。
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