JP4506017B2 - 酸化亜鉛焼鉱または酸化亜鉛団鉱の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化亜鉛焼鉱または酸化亜鉛団鉱の製造方法に関し、特に、鉄鋼業の高炉、電気炉等で発生する鉄鋼ダストから回収される粗酸化亜鉛に湿式処理を施すことでハロゲン化物等の不純物を除去した後、乾燥加熱炉に装入することにより、酸化亜鉛焼鉱または酸化亜鉛団鉱を製造する方法において、フッ素化合物を効果的に除去する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄鋼業における高炉や電気炉から発生する鉄鋼ダスト等から回収された粗酸化亜鉛等には、その主成分である酸化亜鉛や酸化鉛以外に、塩素およびフッ素等のハロゲン成分が相当量含有されており、従来からこの粗酸化亜鉛中におけるハロゲン成分を除去し、低ハロゲン含有率の酸化亜鉛焼鉱または酸化亜鉛団鉱を製造している。
【0003】
図2に、従来の粗酸化亜鉛処理工程のフローチャートを示す。
【0004】
この酸化亜鉛焼鉱または酸化亜鉛団鉱の製造方法において、粗酸化亜鉛に湿式処理を施すことでハロゲン化物を除去して、乾燥加熱炉にて焼成および造粒を行う。
【0005】
鉄鋼ダスト等から回収される粗酸化亜鉛中には、8〜18質量%程度の塩素および0〜5質量%程度のフッ素等のハロゲンを、塩素化合物またはフッ素化合物等のハロゲン化物として含有している。従って、これらのハロゲン化物やその他の不純物は、Na 2 CO 3 、NaOH、あるいはその他の薬剤を用いる湿式処理を施すことで除去する。
【0006】
粗酸化亜鉛に湿式処理を施すことにより除去されたハロゲン化物は、工程液中に濃縮されており、工程液中には粗酸化亜鉛から極微量溶出した亜鉛および/または鉛成分も含有している。この亜鉛および/または鉛成分を、工程液から回収する方法として、Ca(OH)2を用いて工程液のpHを調整することにより、亜鉛化合物あるいは鉛化合物として析出させる中和処理方法がある。
【0007】
この中和処理方法で回収された亜鉛化合物あるいは鉛化合物を含有する中和処理澱物は、粗酸化亜鉛に湿式処理を施して得られる酸化亜鉛スラリーと共に、乾燥加熱炉にて焼成および造粒を行い、酸化亜鉛焼鉱または酸化亜鉛団鉱に固定させる方法が一般的に行われている。
【0008】
しかし、中和処理方法においては、工程液中のフッ素成分も、CaF2あるいはその他のカルシウム/フッ素化合物を形成し析出し、中和澱物中に含有され回収される。従って、酸化亜鉛焼鉱または酸化亜鉛団鉱のフッ素含有率が上昇する問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の方法は、フッ素含有率の低い酸化亜鉛焼鉱または酸化亜鉛団鉱の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の酸化亜鉛焼鉱または酸化亜鉛団鉱の製造方法は、(1)ハロゲン含有粗酸化亜鉛にNa 2 CO 3 およびNaOHからなる群から選ばれる1種以上を添加して行う湿式処理を施す湿式処理工程と、(2)該湿式処理工程で得られる酸化亜鉛スラリーを、酸化亜鉛ケーキと分離液に分離する第1固液分離工程と、(3)第1固液分離工程で得られる分離液にCaCl2およびCa(OH)2からなる群から選ばれる1種以上を添加することにより、フッ素成分をフッ素含有澱物として析出させる中和処理工程と、(4)該フッ素含有澱物を脱水する第2固液分離工程と、(5)第2固液分離工程で得られるフッ素濃縮ケーキを、還元炉に還元剤と共に装入することで、亜鉛化合物および/または鉛化合物を得る回収工程と、(6)第1固液分離工程で得られる酸化亜鉛ケーキに、回収工程で得られる亜鉛化合物および/または鉛化合物を添加し、乾燥加熱炉に装入して焼成・造粒する焼成・造粒工程とからなる。
【0011】
前記還元炉が、ロータリーキルン等の還元焙焼炉であることが望ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について以下に、詳述する。
【0013】
本発明の酸化亜鉛焼鉱または酸化亜鉛団鉱の製造方法は、図1のフローチャートに示すように、以下の各工程からなる。
【0014】
鉄鋼ダストから回収される粗酸化亜鉛の組成の一例を、表1に示す。
【0015】
【表1】
【0016】
(1)湿式処理工程湿式処理工程では、回収された粗酸化亜鉛に、レパルプ水にてレパルプすることで酸化亜鉛スラリーとする。レパルプ水には、淡水、工程水、Na 2 CO 3 またはNaOHを溶解した溶解液等が使用できる。
【0017】
該湿式処理により、粗酸化亜鉛に含有される塩素化合物、フッ素化合物等のハロゲン不純物を分解し、工程液中に塩素、フッ素等のハロゲン不純物が分配される。
【0018】
Na 2 CO 3 またはNaOHなどの薬剤の添加方法は、前記のような薬剤を溶解した溶解液を添加する方法以外に、固体状の薬剤を直接添加する方法等も使用できる。また、添加後の液のpHを測定することで、不純物の分解状況を推定し、薬剤の添加量を調整することもできる。
【0019】
ここで、粗酸化亜鉛中のフッ素またはフッ素化合物は、薬剤の添加等により分解されて、フッ素イオンまたはフッ素化合物イオンとして浸出させられ、工程液中に分配される。
【0020】
(2)第1固液分離工程
前記のように粗酸化亜鉛中のフッ素またはフッ素化合物が工程液中に除去されるので、固液分離で工程液を除去することにより、酸化亜鉛が高濃度の酸化亜鉛ケーキとし、かつそのフッ素含有率を低減することができる。
【0021】
脱水処理では、シックナー等の重力沈降式スラリー濃縮装置や真空脱水機等の水分強制脱水装置が使用できる。
【0022】
(3)中和処理工程
第1固液分離工程で得られる液に、CaCl2またはCa(OH)2を添加することにより、前記フッ素イオンまたはフッ素化合物イオンを、CaF2またはその他のカルシウム/フッ素化合物として澱物(フッ素含有澱物)中に析出させる。この際、工程液中に微量溶出している亜鉛および/または鉛成分も微量亜鉛化合物あるいは鉛化合物として同時にフッ素含有澱物中に析出する。
【0023】
CaCl2またはCa(OH)2などの薬剤の添加方法は、前記のような薬剤を溶解した溶解液を添加する方法以外に、固体状の薬剤を直接添加する方法等も使用できる。また、添加後の液体のpHを測定することで、フッ素成分の析出状況を推定し、薬剤の添加量を調整することもできる。さらに、液中のフッ素濃度を測定し、カルシウム/フッ素比率を0.5〜2.5当量の間で制御することもできる。
【0024】
(4)第2固液分離工程
前記フッ素含有澱物に脱水処理を施すことにより、水分含有率を低下させる。脱水機には、真空脱水機、圧搾型脱水機あるいはベルト型脱水機等が使用できる。また、脱水処理を施す前に、シックナー等の重力沈降式のスラリー濃縮装置を用いて、固液分離を行った後、濃縮したスラリーのみに脱水処理を施してもよい。
【0025】
(5)回収工程
得られるフッ素濃縮ケーキには、亜鉛化合物および/または鉛化合物等の重金属化合物等を、CaF2またはその他のカルシウム/フッ素化合物と共に含有している。この重金属化合物を回収するために、フッ素濃縮ケーキを、コークス、石炭等の還元剤と共に、還元炉に装入する。還元スラグまたは還元物残渣内には、カルシウム/フッ素化合物が回収される。還元炉には、ロータリーキルン等の固気反応を利用した還元焙焼炉、あるいは装入物を溶解させて液気反応を利用した還元溶融炉等が利用できる。
【0026】
コークス、石炭等の還元剤の装入では、必要に応じて石灰石や硅石等の溶剤や、亜鉛等を含有する鉄鋼ダスト等の原料を同時に装入してもよい。還元剤の配合比率は、還元炉に装入する装入物の5〜30質量%であり、必要に応じて装入する溶剤は、還元炉に装入する装入物の30質量%以下である。
【0027】
還元炉内では、フッ素濃縮ケーキから重金属化合物が揮発・除去される。CaF2またはその他のカルシウム/フッ素化合物は、還元雰囲気では揮発分解はほとんど生じない性状であり、還元炉から産出される還元物残渣あるいは還元スラグ中に固定される。
【0028】
(6)焼成・造粒工程
第1固液分離工程で得られる酸化亜鉛ケーキに、回収工程で得られる重金属化合物を添加し、乾燥加熱炉に装入して焼成することにより、フッ素含有率を低減した酸化亜鉛団鉱または酸化亜鉛焼鉱を得る。
【0029】
(実施例)
本発明の一実施例について、各工程を追って説明する。
【0030】
[実施例1]
鉄鋼ダストから回収された粗酸化亜鉛の成分品位を、表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
(1)湿式処理工程
前記粗酸化亜鉛を、淡水にてレパルプし、ソーダ灰を用いて不純物の除去を行った。レパルプした際のスラリー濃度は200g/Lとなるように調整し、ソーダ灰の添加量はpHにて制御し、pHは9.5となるように調整した。
【0033】
(2)第1固液分離工程
ソーダ灰による反応後、シックナーを用いて固液分離を行った。固液分離にて得られた酸化亜鉛濃縮スラリーの主な成分品位を表3に示す。
【0034】
【表3】
【0035】
また、得られた分離液の主な成分品位を表4に示す。
【0036】
【表4】
【0037】
(3)中和処理工程
第1固液分離工程にて得られた分離液には、塩化カルシウムを添加し、カルシウム/フッ素化合物の析出を行った。この際、塩化カルシウムの添加量は、カルシウム/フッ素比率が1.8当量となるように調整した。
【0038】
(4)第2固液分離工程
塩化カルシウムによる反応後、シックナーを用いて固液分離を行った。得られた液のフッ素濃度は、100mg/L以下であった。また、得られたフッ素濃縮スラリーの主な成分品位を表5に示す。
【0039】
【表5】
【0040】
該フッ素濃縮スラリーは、圧搾型脱水機を用いて、水分40〜70質量%程度のフッ素濃縮ケーキとした。
【0041】
(5)回収工程
フッ素濃縮ケーキは、還元炉に粉状コークスと共に装入した。
【0042】
該還元炉として、鉄鋼ダストから亜鉛を回収するための還元焙焼用の回転炉を使用する。該回転炉は、外径35m、長さ50mであり、排出端側に重油燃焼バーナーを備える。粉状コークスはフッ素濃縮ケーキに対し、20質量%程度になるように添加した。還元炉にて重金属化合物等の回収後、産出された還元物残渣中のフッ素品位は、3質量%程度であり、還元物残渣(カルシウム化合物)へのフッ素固定率は80%以上であった。
【0043】
(6)焼成・造粒工程
前記酸化亜鉛ケーキに、回収された重金属化合物を添加して、乾燥加熱炉にて焼成・造粒を行うことにより、フッ素品位の低い酸化亜鉛焼鉱を得た。
【0044】
[実施例2]
(1)湿式処理工程から(4)第2固液分離工程までは、実施例1と同様に行った。
【0045】
フッ素濃縮ケーキは、還元炉に鉄鋼ダスト、粉状コークスおよび粉状石灰石と共に装入した。
【0046】
該還元炉として、実施例1と同じ還元焙焼用の回転炉を使用する。フッ素濃縮ケーキは鉄鋼ダストに対し、25質量%程度になるように、粉状コークスは鉄鋼ダストとフッ素含有澱物ケーキの統合量に対し20質量%となるように、粉状石灰石は、還元炉装入物の総合品位で、CaO/SiO2質量比が1.8程度になるように調整し、添加した。この際使用した鉄鋼ダストのZn、Pb、F成分品位を表6に示す。
【0047】
【表6】
【0048】
還元炉にて処理後、産出された還元物残渣(カルシウム化合物)のZn、Pb、F成分品位を表7に示す。
【0049】
【表7】
【0050】
還元物残渣中のフッ素品位は、1.5質量%程度であり、鉄鋼ダスト中のフッ素成分とフッ素濃縮ケーキ中のフッ素成分を統合した還元物残渣へのフッ素固定率は80%程度であった。
【0051】
【発明の効果】
以上、説明した通り、本発明の酸化亜鉛焼鉱または酸化亜鉛団鉱の製造方法により、酸化亜鉛焼鉱・団鉱中のフッ素含有率を低下させることができる。
【0052】
また、粗酸化亜鉛から液体中に浸出させたフッ素成分を、塩化カルシウムや消石灰等の薬剤を用いて、カルシウム/フッ素化合物として析出させ、フッ素濃縮ケーキとして回収後、還元炉にて処理を行うことで、還元物残渣または還元スラグ中にフッ素成分を排出することができる。フッ素成分と共に浸出し、フッ素濃縮ケーキ中に含有する亜鉛などの重金属化合物は、還元炉にて処理することで回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例を示すフローチャートである。
【図2】 従来の粗酸化亜鉛処理工程を示すフローチャートである。
Claims (4)
- (1)ハロゲン含有粗酸化亜鉛にNa 2 CO 3 およびNaOHからなる群から選ばれる1種以上を添加して行う湿式処理を施す湿式処理工程と、(2)該湿式処理工程で得られる酸化亜鉛スラリーを、酸化亜鉛ケーキと分離液に分離する第1固液分離工程と、(3)第1固液分離工程で得られる分離液にCaCl2およびCa(OH)2からなる群から選ばれる1種以上を添加することにより、フッ素成分をフッ素含有澱物として析出させる中和処理工程と、(4)該フッ素含有澱物を脱水する第2固液分離工程と、(5)第2固液分離工程で得られるフッ素濃縮ケーキを、還元炉に還元剤と共に装入することで、亜鉛化合物および/または鉛化合物を得る回収工程と、(6)第1固液分離工程で得られる酸化亜鉛ケーキ、および回収工程で得られる亜鉛化合物および/または鉛化合物を、乾燥加熱炉にて焼成・造粒する焼成・造粒工程とからなることを特徴とする酸化亜鉛焼鉱または酸化亜鉛団鉱の製造方法。
- 第1固液分離工程で得られる酸化亜鉛ケーキ中に、回収工程で得られる亜鉛化合物および/または鉛化合物を添加して焼成・造粒する請求項1に記載の酸化亜鉛焼鉱または酸化亜鉛団鉱の製造方法。
- 還元剤に加えて、鉄鋼ダストおよび石灰石を還元炉に装入する請求項1に記載の酸化亜鉛焼鉱または酸化亜鉛団鉱の製造方法。
- 前記還元炉が、還元焙焼炉であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の酸化亜鉛焼鉱または酸化亜鉛団鉱の製造方法。
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