JP7171347B2 - 車両用シートベルト装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両用シートベルト装置に関する。
車両に装備される車両用シートベルト装置として、車体に固定されたリトラクタから引き出されたシートベルトをシートの車幅方向外側に配置されたベルトアンカに固定すると共にシートベルトに装着されたタングプレートをシートの車幅方向内側に配置されたバックルに係合させ、シートに着座した乗員の上胴部及び腰部を拘束することにより乗員を保護する三点式のシートベルト装置が広く使用されている。
シートベルト装置のリトラクタとして、車両衝突時にシートベルトの弛みを低減して乗員を拘束するようにシートベルトを巻き取るプリテンショナ機構と、車両衝突時にシートベルトに所定値以上の荷重が作用すると乗員に作用する荷重を制限するようにシートベルトを弛めるロードリミッタ機構とを備えたものが知られている。
また、ロードリミッタ機構として、シートベルトを引き出し可能に巻き取るスプールに連結したトーションバーを用い、車両衝突時にプリテンショナ機構によってシートベルトが巻き取られた後にシートベルトに所定値以上の荷重が作用するとトーションバーが捩れてシートベルトを弛めるものが知られている。
しかしながら、ロードリミッタ機構としてトーションバーを用いるものは、シートベルトに所定値以上の荷重が作用するとトーションバーが捩れて乗員に作用する荷重を制限してシートベルトによって乗員を拘束するものの、シートベルトによる乗員の拘束荷重がトーションバーによって一定に決定されることとなる。
これに対し、例えば特許文献1には、シートベルトを引き出し可能に巻き取るスプールにモータとして電気的に短絡した直流モータを連結し、車両衝突時にシートベルトが引き出されるときにスプールに連結されたモータの回転に応じて発生するモータの回転抵抗力によってシートベルトの引き出しを抑制してシートベルトによる乗員の拘束荷重を調整するようにしたシートベルト装置が開示されている。
特開2001-270423号公報
シートベルトを引き出し可能に巻き取るスプールにモータとして電気的に短絡した直流モータを連結することで、例えば衝突速度が大きく乗員が大柄な体格を有する車両衝突時に衝突速度が小さく乗員が小柄な体格を有する車両衝突時に比してシートベルトの引出速度が大きくなるときに、モータ回転数が大きくなることによってモータの回転抵抗力を大きくして乗員の拘束荷重を大きくすることができるなど、乗員の体格や衝突速度に応じてシートベルトによる乗員の拘束荷重を調整することが可能となる。
しかしながら、前面衝突などの車両衝突時に車体前側に移動される乗員の移動に伴ってシートベルトが引き出されるときにシートベルトを巻き取るスプールに連結したモータの回転抵抗力によって、乗員の体格や衝突速度が異なる場合について乗員を好適に拘束することは実際にはなかなか困難なものとなり得る。
乗員の体格や衝突速度が異なる場合について、車両衝突時に車体前側に移動される乗員の移動に伴ってシートベルトが引き出されるとき、シートベルトを巻き取るスプールの引出方向の回転速度であるスプール回転数に対する回転抵抗力は、図5の実線L1で示す理想回転抵抗力特性に沿って発生することが望まれる。
理想回転抵抗力特性は、衝突速度が小さく乗員が小柄な体格を有する車両衝突時に乗員をシートに好適に拘束するようにスプール回転数が第1回転数N1であるときに回転抵抗力が第1所定値T1に設定され、衝突速度が大きく乗員が大柄な体格を有する車両衝突時に乗員をシートに好適に拘束するようにスプール回転数が第1回転数N1より大きい第2回転数N2であるときに回転抵抗力が第1所定値T1より大きい第2所定値T2に設定され、スプール回転数が大きくなるにつれて回転抵抗力が大きくなるように設定されている。
シートベルトを引き出し可能に巻き取るスプールに直接的にモータとして電気的に短絡した直流モータを連結する場合、図5の破線L2で示すように、スプール回転数が大きくなるにつれて回転抵抗力が大きくなると共にスプール回転数が第2回転数N2であるときに回転抵抗力が第2所定値T2となるように構成されたモータを用いることが考えられるが、かかる場合、スプール回転数が第1回転数N1であるときに回転抵抗力が第1所定値よりも小さくなることとなる。
これに対し、スプール回転数が第1回転数N1であるときに回転抵抗力が第1所定値T1となるようにスプールに直接的にモータを連結することに加えてスプールに捩れ変形によって回転抵抗力を発生するトーションバーを連結することが考えられるが、図5の一点鎖線L3で示すように、スプール回転数が第2回転数N2であるときに回転抵抗力が第2所定値T2よりも大きくなることとなる。
したがって、車両衝突時にシートベルトが引き出されるときにシートベルトを巻き取るスプールの引出方向の回転に対する回転抵抗力を理想回転抵抗力特性L1に沿って発生させ、乗員の体格や衝突速度が異なる場合について、車両衝突時に乗員の拘束性能を向上させて乗員の安全性を向上させることが望まれる。また、車両衝突時にシートベルトが引き出されるときにはスプールの引出方向の回転数が非常に大きくなることから、スプールに連結されるモータを最大許容回転数以下で使用してモータの耐久性を確保することが望まれる。
そこで、本発明は、モータの耐久性を確保しつつ、乗員の体格や衝突速度が異なる場合においても、車両衝突時に乗員の拘束性能を向上させて乗員の安全性を向上させることができる車両用シートベルト装置を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
まず、本願の請求項1に記載の発明は、シートに着座した乗員を拘束するシートベルトと、前記シートベルトを引き出し可能に巻き取るリトラクタとを備えた車両用シートベルト装置であって、前記リトラクタは、回転可能に支持されて前記シートベルトを引き出し可能に巻き取るスプールと、前記スプールに連結されるモータ回転軸を有して前記シートベルトが引き出されるときに前記スプールの引出方向の回転に伴って回転される前記モータ回転軸の回転に応じて前記スプールの引出方向の回転に対する回転抵抗力を発生するモータと、前記スプールに連結されて車両衝突時に前記シートベルトが引き出されるときに前記スプールの引出方向の回転に対する回転抵抗力を発生する回転抵抗部材と、前記スプールの回転を減速して前記モータ回転軸に伝達する減速機構とを備えていることを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記減速機構は、前記モータ回転軸の回転数が前記モータの最大許容回転数以下となるように前記スプールの回転を減速して前記モータ回転軸に伝達するように構成されていることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記回転抵抗部材は、前記スプールと同軸に配置されて捩れ変形によって前記スプールの引出方向の回転に対する回転抵抗力を発生するトーションバーであることを特徴とする。
本願の請求項1に記載の発明によれば、シートベルト装置のリトラクタは、シートベルトを引き出し可能に巻き取るスプールと、スプールに連結されるモータ回転軸を有してスプールの引出方向の回転に伴って回転されるモータ回転軸の回転に応じてスプールの引出方向の回転に対する回転抵抗力を発生するモータと、スプールに連結されて車両衝突時にスプールの引出方向の回転に対する回転抵抗力を発生する回転抵抗部材と、スプールの回転を減速してモータ回転軸に伝達する減速機構とを備える。
これにより、前面衝突などの車両衝突時に車体前側に移動される乗員の移動に伴ってシートベルトが引き出されるときに、乗員の体格や衝突速度が異なる場合においても、シートベルトを巻き取るスプールに連結されたモータ及び回転抵抗部材の回転抵抗力によってシートベルトの引き出しを抑制して車両衝突時に乗員を拘束することができる。
例えば衝突速度が大きく乗員が大柄な体格を有する車両衝突時には衝突速度が小さく乗員が小柄な体格を有する車両衝突時に比してシートベルトの引出速度が大きくなるが、シートベルトの引出速度が大きい場合にはモータの回転抵抗力を大きくすることができるので、乗員の体格や衝突速度が異なる場合においても、乗員の体格や衝突速度に対応するシートベルトの引出速度に応じた回転抵抗力によってシートベルトの引き出しを抑制して車両衝突時に乗員を拘束することができる。
図5の破線L2で示すように、スプール回転数が大きくなるにつれて回転抵抗力が大きくなると共にスプール回転数が第2回転数N2であるときに回転抵抗力が第2所定値T2となるように構成されたモータを用いる場合においても、図5の二点鎖線L4で示すようにスプールの回転を減速してモータ回転軸に伝達する減速機構によってスプール回転数の増加に対する回転抵抗力の増加の割合を低下させ、モータの回転抵抗力に加えて回転抵抗部材の回転抵抗力によって、図5の実線L1で示す理想回転抵抗力特性に沿った回転抵抗力を発生させることができる。
また、スプールの回転を減速してモータ回転軸に伝達する減速機構が設けられることにより、モータ回転軸の回転数がモータの最大許容回転数以下になるように減速機構を構成することで、モータを最大許容回転数以下で使用することができ、モータの耐久性を確保することができる。したがって、モータの耐久性を確保しつつ、乗員の体格や衝突速度が異なる場合においても、車両衝突時に乗員の拘束性能を向上させて乗員の安全性を向上させることができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、減速機構は、モータ回転軸の回転数が最大許容回転数以下となるようにスプールの回転を減速してモータ回転軸に伝達するように構成されることにより、モータを最大許容回転数以下で使用してモータの耐久性を確保することができる。
また、請求項3に記載の発明によれば、回転抵抗部材として、捩れ変形によって回転抵抗力を発生するトーションバーを設けることにより、比較的簡単な構成により、トーションバーの回転抵抗力とモータの回転抵抗力とによって車両衝突時に乗員を拘束することができる。
本発明の実施形態に係るシートベルト装置の概略構成図である。 シートベルト装置のリトラクタを示す断面図である。 リトラクタに備えられるモータを示す断面図である。 図3におけるY4-Y4線に沿ったモータの断面図である。 シートベルト装置のスプール回転数と回転抵抗力との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
本実施形態に係る車両用シートベルト装置は、車両に装備され、車室内のシートに着座した乗員を拘束することにより乗員を保護するものであり、乗員の体格や衝突速度が異なる場合について、車両衝突時に車体前側に移動される乗員の移動に伴ってシートベルトが引き出されるとき、シートベルトを巻き取るスプールの引出方向のスプール回転数に対する回転抵抗力を図5の実線L1で示す理想回転抵抗力特性に沿って発生するように構成される。
理想回転抵抗力特性は、衝突速度が小さく乗員が小柄な体格を有する車両衝突時に乗員をシートに好適に拘束するようにスプール回転数が第1回転数N1であるときに回転抵抗力が第1所定値T1に設定され、衝突速度が大きく乗員が大柄な体格を有する車両衝突時に乗員をシートに好適に拘束するようにスプール回転数が第1回転数N1より大きい第2回転数N2であるときに回転抵抗力が第1所定値T1より大きい第2所定値T2に設定され、スプール回転数が大きくなるにつれて回転抵抗力が大きくなるように設定されている。
理想回転抵抗力特性について、第1回転数N1及び第1所定値T1は、例えば、衝突速度が比較的低速である15km/hであると共に乗員が米国人成人女性の05%tile(パーセンタイル)、すなわち米国人成人女性の小さいほうから5%目に相当する体格である小柄な体格を有する車両衝突時に乗員をシートに好適に拘束するように設定され、第2回転数N2及び第2所定値T2は、例えば、衝突速度が比較的高速である50km/hであると共に乗員が米国人成人男性の95%tile(パーセンタイル)、すなわち米国人成人男性の小さいほうから95%目に相当する体格である大柄な体格を有する車両衝突時に乗員をシートに好適に拘束するように設定される。
図1は、本発明の実施形態に係るシートベルト装置の概略構成図である。図1に示すように、車両の前席シート1に備えられるシートベルト装置10は、シート1に着座した乗員の上胴部及び腰部を拘束することにより乗員を保護する三点式のシートベルト装置であり、シート1に着座した乗員を拘束するシートベルト11と、センタピラー2の車体下側に固定されてシートベルト11を引き出し可能に巻き取るリトラクタ21とを備えている。
シートベルト装置10は、リトラクタ21から引き出されたシートベルト11を、センタピラー2の車体上側に固定された上側ベルトアンカ3を介してシート1の車幅方向外側に配置された下側ベルトアンカ4に固定すると共に、シートベルト11に装着されたタングプレート5をシート1の車幅方向内側に配置されたバックル6に係合させ、シート1に着座した乗員の上胴部及び腰部を拘束することにより乗員を保護するようになっている。
図2は、シートベルト装置のリトラクタを示す断面図である。図2に示すように、シートベルト装置10のリトラクタ21は、センタピラー2に取り付けられ、シートベルト11を引き出し可能に巻き取るスプール30と、スプール30に連結されるモータ40とを備えている。
スプール30は、スプール回転軸部31と、スプール回転軸部31に固定されると共にシートベルト11が固定されて略円筒状に形成される円筒部32とを備えている。スプール回転軸部31は、円筒部32の軸方向一方側である車体後側に固定されると共に円筒部32の軸心に沿って車体後側に延びてセンタピラー2に固定されたハウジング7に回転可能に支持されている。
スプール30はまた、スプール30と同軸にスプール30の円筒部32内に配置されると共にシートベルト11が引き出されてスプール30が回転するときにスプール30の回転に対する回転抵抗力を発生する回転抵抗部材としてのトーションバー50が連結されている。
トーションバー50は、捩れ変形によってスプール30の回転に対する回転抵抗力を発生する棒状部材である。トーションバー50は、一端部50aがスプール30の車体後側においてスプール30の円筒部32に固定して連結されると共に、他端部50bがスプール30の車体前側においてロックベース部材55に固定して連結されている。
ロックベース部材55は、略円柱状に形成され、軸方向一方側である車体後側に凹部56が形成されている。ロックベース部材55は、凹部56にトーションバー50の他端部50bが嵌合固定されてトーションバー50に連結されている。ロックベース部材55は、ハウジング7に回転可能に支持されると共にスプール30に対して相対回転可能に設けられている。
シートベルト装置10では、トーションバー50とモータ40とは、トーションバー50の回転抵抗力とモータ40の回転抵抗力とによって、車両衝突時に車体前側に移動される乗員の移動に伴ってシートベルト11が引き出されるとき、スプール30の引出方向のスプール回転数に対する回転抵抗力が、図5の実線L1で示す理想回転抵抗力特性に沿って発生するように構成されている。
ハウジング7は、スプール30の軸方向両側に平行に配置されて軸受15、16を介してロックベース部材55、スプール回転軸部31をそれぞれ回転可能に支持する両側の側面部8と、スプール30の下側において両側の側面部8を連結する連結部9とを備え、断面略コ字状に形成されている。ハウジング7は、車体前側に配置される側面部8が締結部材B1を用いてセンタピラー2に固定されることにより車体に固定され、これにより、スプール30は車体に回転可能に支持されている。
スプール30は、図示されていないが、スプール30を巻き取り方向に付勢するスプリングユニットを備え、スプリングユニット内に配置された渦巻きバネにスプール30のスプール回転軸部31又は円筒部32が連結されてシートベルト11を巻き取る方向に付勢されている。
スプール30はまた、センタピラー2とハウジング7との間に、シートベルト11が引き出される方向へのロックベース部材55の回転を規制するロック機構33を備えている。ロック機構33は、周知の構成を用いることができ、車両衝突時に作動して、スプール30にトーションバー50を介して連結されたロックベース部材55のシートベルト11が引き出される方向への回転を規制するようになっている。
シートベルト装置10が装備される車両には、図示されていないが、前面衝突などの車両衝突を検出する加速度センサなどの衝突検出装置が備えられると共に、ロック機構33の作動を制御する制御ユニットが備えられ、前記制御ユニットは、前記衝突検出装置によって車両衝突が検出されるとロック機構33を作動するように制御する。
モータ40は、図2に示すように、ハウジング7の側面部8に平行に配設された第1プレート部材51及び第2プレート部材52を介してハウジング7に取り付けられている。モータ40は、第1プレート部材51に締結部材B2を用いて取り付けられ、第1プレート部材51は、第2プレート部材52に筒状部材53を介して締結部材B3を用いて取り付けられ、第2プレート部材52は、ハウジング7の側面部8に締結部材B4を用いて取り付けられている。
リトラクタ21はまた、スプール30の回転を減速してモータ回転軸41に伝達する減速機構60を備え、減速機構60は、スプール回転軸部31に固定して取り付けられたスプール側歯車61と、スプール側歯車61に噛み合いモータ回転軸41に固定して取り付けられたモータ側歯車62とを有している。減速機構60は、モータ側歯車62の外径がスプール側歯車61の外径より大きく形成されてスプール30の回転を減速してモータ回転軸41に伝達するようになっている。
減速機構60はまた、モータ回転軸41の回転数がモータ40の最大許容回転数以下となるようにスプール30の回転を減速してモータ回転軸41に伝達するように構成されている。減速機構60は、例えば図5の実線L1に示す理想回転抵抗力特性について設定された第2回転数N2であるスプール回転数であるとき、あるいは第2回転数N2より所定量大きいスプール回転数であるときに、モータ回転軸41の回転数がモータ40の最大許容回転数以下となるようにスプール30の回転を減速するように構成されている。
図3は、リトラクタに備えられるモータを示す断面図であり、図4は、図3におけるY4-Y4線に沿ったモータの断面図である。図3及び図4に示すように、モータ40は、スプール30に減速機構60を介して連結されるモータ回転軸41を有するブラシ付き直流モータ40である。モータ40は、電気的に短絡した状態において、シートベルト11が引き出されるときにスプール30の引出方向の回転に伴って減速機構60を介して回転されるモータ回転軸41の回転に応じて回転抵抗力を発生するようになっている。
モータ40は、磁性材料から有底円筒状に形成されてヨークとして機能するハウジング42と、略断面半円弧状に形成されてハウジング42内に固定されて対向配置される1対の永久磁石43と、モータ回転軸41を有して永久磁石43の径方向内側に回転可能に支持されるアーマチュア44と、ハウジング42の開口部を覆うようにハウジング42に装着されるブラシホルダ45とを備えている。
アーマチュア44は、モータ回転軸41を有すると共にモータ回転軸41に固定されて径方向外側に放射状に突出する複数のティース44aを備えたアーマチュアコア44bを有し、アーマチュア44のティース44a間に形成されるスロットにそれぞれ複数のアーマチュアコイル44cが巻かれている。
アーマチュア44は、モータ回転軸41が軸受37を介してハウジング42及びブラシホルダ45に回転可能に支持されることにより回転可能に支持されている。アーマチュア44はまた、モータ回転軸41の軸方向他方側にコンミテータ(整流子)46を備え、コンミテータ46は、アーマチュアコイル44cに接続されている。
ブラシホルダ45は、スプリング部材45bによって径方向内側に付勢されてコンミテータ46に押し付けられる一対のブラシ45aを備えている。一対のブラシ45aは、コンミテータ46を介してアーマチュアコイル44cに接続されるようになっている。
ブラシホルダ45は、モータ回転軸41の軸方向他方側が突出するようにハウジング42に装着され、ハウジング42にブラシホルダ45が装着された状態でハウジング42が第1プレート部材51に取り付けられている。一対のブラシ45aにはそれぞれ、図示されていないが、外部電源に接続可能である端子が接続されている。本実施形態では、一対のブラシ45aにそれぞれ接続される端子が接続されて短絡されている。
モータ40の永久磁石43は、図4に示すように、ハウジング42内に固定される永久磁石43a、43bを備え、永久磁石43a、43bは、略断面半円弧状に同一形状に形成されて対向配置されている。永久磁石43aは、径方向内側の磁極がN極とされ、永久磁石43bは、径方向内側の磁極がS極とされ、永久磁石43は、永久磁石43aのN極から永久磁石43bのS極に向かう方向に永久磁石43による磁束が形成されている。
モータ40では、車両衝突時にシートベルト11が引き出されるときにスプール30の引出方向の回転に伴って減速機構60を介して回転される矢印A1で示すモータ回転軸41の回転に応じて逆起電力が発生し、モータ回転軸41の回転を抑制するように回転抵抗力が発生する。モータ40の回転抵抗力は、モータ回転数が大きくなるにつれて大きくなり、シートベルト11の引出速度が大きくなるときに大きくして乗員の拘束荷重を大きくすることができる。
シートベルト装置10では、車両衝突時にシートベルト11が引き出されるときに乗員が大柄な体格を有する場合には乗員が小柄な体格を有する場合に比して体重が大きくシートベルト11の引出速度が大きく、また衝突速度が大きい場合には衝突速度が小さい場合に比してシートベルト11の引出速度が大きくなることから、モータ40の回転抵抗力を大きくして乗員の拘束荷重を大きくすることができる。これにより、乗員の体格や衝突速度に応じてシートベルト11による乗員の拘束荷重を調整することが可能となる。
このようにして構成されたシートベルト装置10では、前面衝突などの車両衝突時に、前記衝突検出装置によって車両衝突が検出されると前記制御ユニットによってロック機構33が作動され、シートベルト11が引き出される方向へのロックベース部材55の回転が規制される。これにより、車体前側に移動される乗員の移動に伴ってシートベルト11が引き出されるとき、一端部50aがスプール30の円筒部32に固定して連結されると共に、他端部50bがロックベース部材55に固定して連結されたトーションバー50が捻じれ変形し、この捻じれ変形によって発生する回転抵抗力によってシートベルト11の引き出しが抑制される。
また、車両衝突時に、車体前側に移動される乗員の移動に伴ってシートベルト11が引き出されるとき、スプール30に減速機構60を介して連結されるモータ40の回転抵抗力によってシートベルト11の引き出しが抑制される。
シートベルト装置10では、リトラクタ21は、車両衝突時に車体前側に移動される乗員の移動に伴ってシートベルト11が引き出されるとき、モータ40の回転抵抗力とトーションバー50の回転抵抗力とによって、シートベルト11を巻き取るスプール30の引出方向のスプール回転数に対する回転抵抗力を図5の実線L1で示す理想回転抵抗力特性に沿って発生するように構成されている。
このように、本実施形態に係るシートベルト装置10では、リトラクタ21は、シートベルト11を引き出し可能に巻き取るスプール30と、スプール30に連結されるモータ回転軸41を有してスプール30の引出方向の回転に伴って回転されるモータ回転軸41の回転に応じてスプール30の引出方向の回転に対する回転抵抗力を発生するモータ40と、スプール30に連結されて車両衝突時にスプール30の引出方向の回転に対する回転抵抗力を発生する回転抵抗部材としてのトーションバー50と、スプール30とモータ回転軸41との間に設けられてスプール30の回転を減速してモータ回転軸41に伝達する減速機構60とを備える。
これにより、前面衝突などの車両衝突時に車体前側に移動される乗員の移動に伴ってシートベルト11が引き出されるときに、乗員の体格や衝突速度が異なる場合においても、シートベルト11を巻き取るスプール30に連結されたモータ40及び回転抵抗部材としてのトーションバー50の回転抵抗力によってシートベルト11の引き出しを抑制して車両衝突時に乗員を拘束することができる。
例えば衝突速度が大きく乗員が大柄な体格を有する車両衝突時には衝突速度が小さく乗員が小柄な体格を有する車両衝突時に比してシートベルト11の引出速度が大きくなるが、シートベルト11の引出速度が大きい場合にはモータ40の回転抵抗力を大きくすることができるので、乗員の体格や衝突速度が異なる場合においても、乗員の体格や衝突速度に対応するシートベルト11の引出速度に応じた回転抵抗力によってシートベルト11の引き出しを抑制して車両衝突時に乗員を拘束することができる。
図5の破線L2で示すように、スプール回転数が大きくなるにつれて回転抵抗力が大きくなると共にスプール回転数が第2回転数N2であるときに回転抵抗力が第2所定値T2となるように構成されたモータを用いる場合においても、図5の二点鎖線L4で示すようにスプール30の回転を減速してモータ回転軸41に伝達する減速機構60によってスプール回転数の増加に対する回転抵抗力の増加の割合を低下させ、モータ40の回転抵抗力に加えて回転抵抗部材としてのトーションバー50の回転抵抗力によって、図5の実線L1で示す理想回転抵抗力特性に沿った回転抵抗力を発生させることができる。
また、スプール30の回転を減速してモータ回転軸41に伝達する減速機構60が設けられることにより、モータ回転軸41の回転数がモータ40の最大許容回転数以下になるように減速機構60を構成することで、モータ40を最大許容回転数以下で使用することができ、モータ40の耐久性を確保することができる。したがって、モータ40の耐久性を確保しつつ、乗員の体格や衝突速度が異なる場合においても、車両衝突時に乗員の拘束性能を向上させて乗員の安全性を向上させることができる。
また、減速機構60は、モータ回転軸41の回転数が最大許容回転数以下となるようにスプール30の回転を減速してモータ回転軸41に伝達するように構成される。これにより、モータ40を最大許容回転数以下で使用してモータ40の耐久性を確保することができる。
また、回転抵抗部材として、捩れ変形によって回転抵抗力を発生するトーションバー50を設けることにより、比較的簡単な構成により、トーションバー50の回転抵抗力とモータ40の回転抵抗力とによって車両衝突時に乗員を拘束することができる。
本実施形態では、シートベルト装置10は、前席シート1に備えられているが、前席シート1より車体後側に配置される後席シートについても同様に適用可能であり、かかる場合、リトラクタ21はセンタピラー2に代えてリアピラーなどの車体に固定して取り付けられる。
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
以上のように、本発明に係る車両用シートベルト装置によれば、モータの耐久性を確保しつつ、乗員の体格や衝突速度が異なる場合においても、車両衝突時に乗員の拘束性能を向上させて乗員の安全性を向上させることが可能となるから、車両の安全技術の分野において好適に利用される可能性がある。
1 シート
10 シートベルト装置
11 シートベルト
21 リトラクタ
30 スプール
40 モータ
41 モータ回転軸
50 トーションバー(回転抵抗部材)
60 減速機構

Claims (3)

  1. シートに着座した乗員を拘束するシートベルトと、前記シートベルトを引き出し可能に巻き取るリトラクタとを備えた車両用シートベルト装置であって、
    前記リトラクタは、
    回転可能に支持されて前記シートベルトを引き出し可能に巻き取るスプールと、
    前記スプールに連結されるモータ回転軸を有して前記シートベルトが引き出されるときに前記スプールの引出方向の回転に伴って回転される前記モータ回転軸の回転に応じて前記スプールの引出方向の回転に対する回転抵抗力を発生するモータと、
    前記スプールに連結されて車両衝突時に前記シートベルトが引き出されるときに前記スプールの引出方向の回転に対する回転抵抗力を発生する回転抵抗部材と、
    前記スプールの回転を減速して前記モータ回転軸に伝達する減速機構とを備えている
    ことを特徴とする車両用シートベルト装置。
  2. 前記減速機構は、前記モータ回転軸の回転数が前記モータの最大許容回転数以下となるように前記スプールの回転を減速して前記モータ回転軸に伝達するように構成されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の車両用シートベルト装置。
  3. 前記回転抵抗部材は、前記スプールと同軸に配置されて捩れ変形によって前記スプールの引出方向の回転に対する回転抵抗力を発生するトーションバーである
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用シートベルト装置。
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