JP7170237B2 - 感度調整プレート、及び、センサ装置の製造方法 - Google Patents

感度調整プレート、及び、センサ装置の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、センサ装置の感度調整に用いられる感度調整プレート、及び、センサ装置の製造方法に関する。
従来、水分による赤外線の吸収を利用して、水分量を測定するセンサ装置が知られている。特許文献1には、対象物の素材の違いに起因した水分量検出の結果のばらつきを抑制して、乾燥度検出の正確性を高めることができる乾燥度センサが開示されている。
国際公開第2018/155289号
ところで、複数のセンサ装置を量産する場合には、複数のセンサ装置間で感度にばらつきが生じることを抑制することが課題である。
本発明は、複数のセンサ装置の感度のばらつきを抑制することができる感度調整プレート、及び、センサ装置の製造方法を提供する。
本発明の一態様に係る感度調整プレートは、感度調整プレートであって、前記感度調整プレートは、対象物に含まれる特定成分を検出するセンサ装置の感度の調整に用いられ、前記特定成分は、第一波長帯の光に対する吸収率よりも第二波長帯の光に対する吸収率が低く、前記センサ装置は、前記第一波長帯の光、及び、前記第二波長帯の光を含む照射光を前記対象物に向けて発する光源と、前記照射光が対象物において反射することで得られる反射光に含まれる前記第一波長帯の光を第一電気信号に変換する第一受光部と、前記反射光に含まれる前記第二波長帯の光を第二電気信号に変換する第二受光部と、前記第一電気信号、及び、前記第二電気信号に基づいて、前記対象物に含まれる前記特定成分の量を算出する演算部とを備え、前記感度調整プレートは、前記特定成分の光の吸収特性を模擬した光の透過特性を有し、前記センサ装置の感度調整工程において、光反射板と前記センサ装置との間に配置される。
本発明の一態様に係るセンサ装置の製造方法は、センサ装置の製造方法であって、前記センサ装置は、第一波長帯の光、及び、第二波長帯の光を含む照射光を対象物に向けて発する光源と、前記照射光が前記対象物において反射することで得られる反射光に含まれる前記第一波長帯の光を第一電気信号に変換する第一受光部と、前記反射光に含まれる前記第二波長帯の光を第二電気信号に変換する第二受光部と、係数が記憶される記憶部と、前記第一電気信号、前記第二電気信号、及び、前記係数を用いた演算により、前記対象物に含まれる特定成分の量を算出する演算部とを備え、前記製造方法は、光反射板と前記センサ装置との間に、前記特定成分の光の吸収特性を模擬した光の透過特性を有する感度調整プレートを配置し、前記光反射板と前記センサ装置との間に前記感度調整プレートが配置された状態で前記センサ装置によって算出される前記特定成分の量に基づいて、前記記憶部に記憶された前記係数を書き換える。
本発明によれば、複数のセンサ装置の感度のばらつきを抑制することができる感度調整プレート、及び、センサ装置の製造方法が実現される。
図1は、実施の形態に係る水分量センサの外観斜視図である。 図2は、実施の形態に係る水分量センサの内部構造を示す図である。 図3は、実施の形態に係る感度調整プレートを用いた感度調整を説明するための第一図である。 図4は、実施の形態に係る感度調整プレートを用いた感度調整を説明するための第二図である。 図5は、衣類乾燥度75%相当の対象物の水の吸光度を示す図である。 図6は、実施の形態に係る感度調整プレートの光の透過特性を示す図である。 図7は、実施の形態に係る水分量センサの製造方法のフローチャートである。 図8は、実施の形態に係る感度調整プレートの光の透過特性の変形例1を示す図である。 図9は、実施の形態に係る感度調整プレートの光の透過特性の変形例2を示す図である。 図10は、実施の形態に係る感度調整プレートの光の透過特性の変形例3を示す図である。
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
(実施の形態)
[概要]
まず、実施の形態に係る水分量センサの概要について説明する。図1は、実施の形態に係る水分量センサの外観斜視図である。図2は、実施の形態に係る水分量センサの内部構造を示す図である。
実施の形態に係る水分量センサ10は、対象物40に対して光を発し、当該対象物40からの反射光に基づいて対象物40の水分量を検出する水分量センサである。水分量センサ10は、例えば、水分量センサ10と離れた場所に位置する対象物40に含まれる水分を検出する。対象物40は、例えば、衣類である。対象物40は、シーツまたは枕カバーなどの寝具であってもよく、対象物については特に限定されない。水分量センサ10は、例えば、衣類乾燥装置などに取り付けられ、衣類の乾燥具合を確認するために使用される。このような水分量センサ10によれば、乾燥のし過ぎによる衣類の傷みの発生などを抑制することができる。
水分量センサ10は、具体的には、筐体11と、光源12と、レンズ13と、レンズ14と、ハーフミラー15と、第一バンドパスフィルタ16aと、第一受光部17aと、第二バンドパスフィルタ16bと、第二受光部17bと、信号処理回路18と、記憶部19とを備える。以下、水分量センサ10の各構成要素について詳細に説明する。
筐体11は、光源12、レンズ13、レンズ14、ハーフミラー15、第一バンドパスフィルタ16a、第一受光部17a、第二バンドパスフィルタ16b、第二受光部17b、信号処理回路18、及び、記憶部19を収容する筐体である。筐体11は、遮光性を有する材料によって形成される。これにより、外光が筐体11内に入射するのを抑制することができる。筐体11は、具体的には、第一受光部17a及び第二受光部17bが受光する光に対して遮光性を有する樹脂材料又は金属材料によって形成される。
筐体11の外壁には、複数の開口が設けられており、これらの開口に、レンズ13と、レンズ14とが取り付けられている。
光源12は、第一波長帯の光、及び、第一波長帯と異なる第二波長帯の光とを含む照射光を対象物40に向けて発する。第一波長帯は、例えば、1420nm以上1530nm以下の波長帯であり、第二波長帯は、例えば、1530nm以上1630nm以下の波長帯である。光源12は、具体的には、赤外光を発するLED(Light Emitting Diode)素子が発光素子として用いられた発光モジュールである。
レンズ13は、光源12が発した光を、対象物40に対して集光する集光レンズである。レンズ13は、例えば、樹脂製の凸レンズであるが、特に限定されない。
レンズ14は、対象物40によって反射された反射光を第一受光部17a及び第二受光部17bに集光するための集光レンズである。レンズ14は、例えば、焦点が第一受光部17aの受光面及び第二受光部17bの受光面に位置するように筐体11に固定されている。レンズ14は、例えば、樹脂製の凸レンズであるが、特に限定されない。
ハーフミラー15は、レンズ14を透過してハーフミラー15に入射した光を分岐し、第一受光部17a及び第二受光部17bのそれぞれに出射する光学部材である。水分量センサ10においては、ハーフミラー15によって反射された光は、第一受光部17aに入射し、ハーフミラー15を透過した光は、第二受光部17bに入射する。
なお、水分量センサ10では、同軸の入射光がハーフミラー15により分配される光学系が適用されているが、水分量センサ10には、レンズを2つ設けた異軸の入射光を用いる光学系が適用されてもよい。
第一バンドパスフィルタ16aは、第一バンドパスフィルタ16aに入射した光から第一波長帯の光を抽出するバンドパスフィルタである。第一バンドパスフィルタ16aは、レンズ14と、第一受光部17aとの間に配置され、レンズ14を透過して第一受光部17aに入射する光の光路上に位置する。第一バンドパスフィルタ16aは、第一波長帯の光を透過し、かつ、それ以外の波長帯の光を吸収する。
第一受光部17aは、対象物40によって反射され、第一バンドパスフィルタ16aを透過した第一波長帯の光を受光し、第一電気信号に変換する受光素子である。第一受光部17aは、受光した第一波長帯の光を光電変換することで、当該光の受光量(すなわち、強度)に応じた第一電気信号を生成する。生成された第一電気信号は、信号処理回路18に出力される。第一受光部17aは、例えば、フォトダイオードであるが、これに限定されない。例えば、第一受光部17aは、フォトトランジスタ、又は、イメージセンサでもよい。
第二バンドパスフィルタ16bは、第二バンドパスフィルタ16bに入射した光から第二波長帯の光を抽出するバンドパスフィルタである。第二バンドパスフィルタ16bは、レンズ14と、第二受光部17bとの間に配置され、レンズ14を透過して第二受光部17bに入射する光の光路上に位置する。第二バンドパスフィルタ16bは、第二波長帯の光を透過し、かつ、それ以外の波長帯の光を吸収する。
第二受光部17bは、対象物40によって反射され、第二バンドパスフィルタ16bを透過した第二波長帯の光を受光し、第二電気信号に変換する受光素子である。第二受光部17bは、受光した第二波長帯の光を光電変換することで、当該光の受光量(すなわち、強度)に応じた第二電気信号を生成する。生成された第二電気信号は、信号処理回路18に出力される。第二受光部17bは、第一受光部17aと同形の受光素子である。つまり、第一受光部17aがフォトダイオードである場合には、第二受光部17bもフォトダイオードである。
信号処理回路18は、光源12の発光制御を行う。また、信号処理回路18は、演算部18aを備え、演算部18aは、第一受光部17a及び第二受光部17bから出力された第一電気信号及び第二電気信号を信号処理することで、水分量を算出する。
信号処理回路18は、例えば、筐体11に収容されているが、筐体11の外側面に取り付けられていてもよい。信号処理回路18は、有線通信により第一電気信号及び第二電気信号を受信するが、無線通信によって第一電気信号及び第二電気信号を受信してもよい。信号処理回路18は、例えば、第一電気信号及び第二電気信号を増幅するオペアンプ、メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどを含むマイクロコンピュータによって実現される。
記憶部19は、演算部18aによって実行される、水分量を算出するためのコンピュープログラム(アルゴリズム)、及び、後述の吸光係数αaなどが記憶される記憶装置である。記憶部19は、信号処理回路18の一部として実現されてもよい。記憶部19は、例えば、半導体メモリによって実現される。
[水分量の算出方法]
続いて、演算部18aによる水分量の算出方法について説明する。演算部18aは、対象物40によって反射された反射光に含まれる検知光の光エネルギーPdと、対象物40によって反射された反射光に含まれる参照光の光エネルギーPrとを比較することで、対象物40に含まれる成分量を検出する。なお、光エネルギーPdは、第一受光部17aから出力される第一電気信号の強度に対応し、光エネルギーPrは、第二受光部17bから出力される第二電気信号の強度に対応する。
光エネルギーPdは、次の(式1)で表される。
(式1) Pd=Pd0×Gd×Rd×Td×Aad×Ivd
ここで、Pd0は、光源12が発した光のうち、検知光をなす第一波長帯の光の光エネルギーである。Gdは、第一波長帯の光の第一受光部17aに対する結合効率(集光率)である。具体的には、Gdは、光源12が発した光のうち、対象物40で拡散反射される成分の一部(すなわち、反射光に含まれる検知光)になる部分の割合に相当する。
Rdは、対象物40による検知光の反射率である。Tdは、第一バンドパスフィルタ16aの検知光の透過率である。Ivdは、第一受光部17aの検知光に対する受光感度である。
Aadは、対象物40に含まれる特定成分(水分)による検知光の吸収率であり、次の(式2)で表される。
(式2) Aad=10-αa×Ca×D
ここで、αaは、吸光係数であり、具体的には、成分(水分)による検知光の吸光係数である。Caは、対象物40に含まれる成分(水分)の体積濃度である。Dは、単位体積濃度あたりの検知光の吸収に寄与する成分の厚みの2倍である寄与厚みである。
より具体的には、水分が均質に分散した対象物40では、光が対象物40に入射し、内部で反射して対象物40から出射する場合において、Caは、対象物40の成分に含まれる体積濃度に相当する。また、Dは、内部で反射して対象物40から出射するまでの光路長に相当する。例えば、対象物40が繊維などの網目状の固形物、又は、スポンジなどの多孔性の固形物である場合、固形物の表面で光が反射されると仮定する。この場合、例えば、Caは、固形物を覆っている液相に含まれる水分の濃度である。また、Dは、固形物を覆っている液相の平均的な厚みとして換算される寄与厚みである。
したがって、αa×Ca×Dは、対象物40に含まれる成分量(水分量)に相当する。以上のことから、対象物40に含まれる水分量に応じて、第一電気信号の強度に相当する光エネルギーPdが変化することが分かる。なお、水分と比べて湿気の吸光度は極端に小さいので、無視することができる。
同様に、第二受光部17bに入射する参照光の光エネルギーPrは、次の(式3)で表される。
(式3) Pr=Pr0×Gr×Rr×Tr×Ivr
上述のように、吸収率Aadは、対象物40に含まれる成分(水分)による第一波長帯の検知光の吸収と、第二波長帯の参照光の吸収との差分から求められる。なお、参照光は、対象物40に含まれる成分による吸収が測定光に比べて非常に小さいため、実質的には吸収されないとみなすことができるので、(式1)と比較して分かるように、水分による吸収率Aadに相当する項は(式3)には含まれていない。
(式3)において、Pr0は、光源12が発した光のうち、参照光をなす第二波長帯の光の光エネルギーである。Grは、光源12が発した参照光の第二受光部17bに対する結合効率(集光率)である。具体的には、Grは、参照光のうち、対象物40で拡散反射される成分の一部(すなわち、反射光に含まれる参照光)になる部分の割合に相当する。Rrは、対象物40による参照光の反射率である。Trは、第二バンドパスフィルタ16bによる参照光の透過率である。Ivrは、第二受光部17bの反射光に対する受光感度である。
水分量センサ10においては、光源12から照射される光、つまり、検知光と参照光とは、同軸かつ同スポットサイズで照射されるため、検知光の結合効率Gdと参照光の結合効率Grとは略等しくなる。また、検知光と参照光とはピーク波長が比較的近いので、検知光の反射率Rdと参照光の反射率Rrとが略等しくなる。
なお、参照光の中心波長が、水蒸気による吸光度が所定値よりも小さい波長となっているので、参照光は、水分量センサ10及び対象物40の間の空間中の水蒸気によって吸収されないとみなすことができる。
したがって、上記空間に含まれる水蒸気の影響を考えなくとも、(式1)と(式3)との比を取ることにより、次の(式4)が導き出される。
(式4) Pd/Pr=Z×Aad
ここで、Zは、定数項であり、(式5)で示される。
(式5)
Z=(Pd0/Pr0)×(Td/Tr)×(Ivd/Ivr)
光エネルギーPd0及びPr0はそれぞれ、光源12の初期出力として予め定められている。また、透過率Td及び透過率Trはそれぞれ、第一バンドパスフィルタ16a及び第二バンドパスフィルタ16bの透過特性により予め定められている。受光感度Ivd及び受光感度Ivrはそれぞれ、第一受光部17a及び第二受光部17bの受光特性により予め定められている。したがって、(式5)で示されるZは、定数とみなすことができる。
演算部18aは、第一電気信号に基づいて検知光の光エネルギーPdを算出し、第二電気信号に基づいて参照光の光エネルギーPrを算出する。具体的には、第一電気信号の信号レベル(電圧レベル)が光エネルギーPdに相当し、第二電気信号の信号レベル(電圧レベル)が光エネルギーPrに相当する。
したがって、演算部18aは、(式4)に基づいて、対象物40に含まれる水分の吸収率Aadを算出することができる。これにより、演算部18aは、(式2)に基づいて水分量を算出することができる。
[基準試料を用いた感度調整]
ところで、複数の水分量センサ10を製造して出荷する場合、複数の水分量センサ10の水分量の算出値のばらつきを抑えるために、出荷前に感度調整が行われる。例えば、複数の水分量センサ10のそれぞれに基準試料(つまり、感度調整用の対象物40)を対象としての水分量を算出させ、水分量の算出値が所定範囲内のものはそのまま出荷される。一方、水分量の算出値が所定範囲外の水分量センサ10については、記憶部19に記憶されている吸光係数αaの値が、水分量の算出値が所定範囲内になるように書き換えられた上で出荷される。
ここで、感度調整用の基準試料は、基準試料に含まれる水分量が乾燥などにより変化する。安定した感度調整を行うためには、基準試料の状態を一定の状態に保つ必要があるが、これは困難である。つまり、基準試料の管理に手間がかかることが課題となる。基準試料が適切に管理されずに感度調整が行われると、水分量の算出誤差の大きい水分量センサ10が出荷されてしまう原因となる。
[感度調整プレートを用いた感度調整]
そこで、以下では、感度調整プレート20を用いた感度調整方法について説明する。図3及び図4は、感度調整プレート20を用いた感度調整を説明するための図である。
感度調整プレート20を用いた感度調整においては、対象物40に相当する位置に光反射板30が配置され、水分量センサ10と光反射板30との間に感度調整プレート20が配置される。感度調整プレート20は、具体的には、レンズ14と光反射板30との間に位置し、レンズ14と対向するが、レンズ13とは対向しない。感度調整プレート20は、レンズ14及びレンズ13の両方と対向するように配置されてもよい。光反射板30としては、例えば、白色の光拡散板などが用いられる。
感度調整プレート20は、水分の光の吸収特性(あるいは、水分の光の反射特性)を模擬した光の透過特性を有する。図5は、衣類乾燥度75%相当の対象物40の水の吸光度(水分の光の吸収特性の一例)を示す図であり、図6は、感度調整プレート20の光の透過特性を示す図である。なお、図5では、(式2)のCa×Dに該当する水の光路長は0.19mm相当である。吸光度は、光の吸収率と読み代えられてもよい。
図6に示される感度調整プレート20の光の透過特性は、図5の水の吸光度の1380nm以上1650nm以下を基本的に上下反転させた形状を有している。言い換えれば、図6に示される感度調整プレート20の光の透過特性は、光の透過率が波長によらず100%で一定の透過特性から水の吸光度に基づく吸収率を100%より減算することにより得られる。破線は吸光度に基づく透過率を忠実に置換えた波形である、実線は範囲Rにおける波長両端域(1380nm、1650nm)に吸光度をゼロとして透過率に変換し、100%を超える部分は100%とした波形である。実線の透過率特性は透過率を下げる領域が限定されるため、感度調整プレートの作製が容易になる。
図3及び図4に示されるように、水分量センサ10と光反射板30との間に感度調整プレート20が配置されれば、水分量センサ10が発する照射光は、光反射板30において反射され感度調整プレート20を透過してレンズ14に入射する。このときの入射光は、感度調整プレート20の光の透過特性は、衣類乾燥度75%相当の対象物40の水の吸光度を模擬したものであることから、照射光を衣類乾燥度75%相当の対象物40に照射することによって得られる反射光と同様の特性を有する。つまり、感度調整プレート20及び光反射板30は、上述した基準試料の代替部品として利用することができる。
感度調整プレート20は、いわゆる光学フィルタであり、例えば、ガラス基板などの透光性基板(言い換えれば、透光性基材)に、互いに屈折率が異なる複数の層が積層されることによって形成される。したがって、感度調整プレート20は、保存環境などによって特性が変化しにくく、基準試料に比べて管理が容易である。感度調整プレート20によれば、複数の水分量センサ10の水分量の算出値のばらつきを容易に抑制することができる。
[水分量センサの製造方法]
次に、上記の感度調整方法を適用した水分量センサ10の製造方法について説明する。図7は、水分量センサ10の製造方法のフローチャートである。
まず、水分量センサ10の組み立てが行われる(S11)。組み立てられた水分量センサ10の記憶部19には、吸光係数αaの初期値が記憶されている。
次に、光反射板30と水分量センサ10との間に感度調整プレート20が配置され(S12)、水分量センサ10の外部接続端子(図示せず)などに感度調整装置が電気的に接続される(S13)。感度調整装置は、言い換えれば、水分量センサ10の製造装置であり、例えば、パーソナルコンピュータなどによって実現される。
次に、水分量センサ10による水分量の算出が行われる(S14)。感度調整装置は、水分量の算出値を取得し(S15)、取得された水分量の算出値が所定の範囲内であるか否かを判定する(S16)。
感度調整装置は、水分量の算出値が所定の範囲外であると判定した場合(S16でNo)、水分量センサ10の記憶部19に記憶されている吸光係数αaの初期値を、水分量の算出値が上記所定範囲内になるように書き換える(S17)。一方、水分量の算出値が上記所定の範囲内であると判定された場合(S16でYes)には、吸光係数αaの初期値の書き換えは行われない。
なお、ステップS17で書き換えられる係数は、吸光係数αaに限定されない。例えば、(式2)においてCa×Dが小さい場合、吸収率Aadは以下の(式6)のように近似できる。
(式6) Aad=10-αa×Ca×D≒1-ka×Ca
(式6)に示されるように、ステップS17では、吸光係数αaの代わりにこれに関連した吸収係数kaの値を書き換えてもよい。つまり、感度調整において調整される係数は吸光係数αaに関連した係数であればよい。
上記の感度調整フローは一例であり、感度調整プレートの設置前後による検知光、参照光のデータに基づき吸光係数αaを算出し書き込みしてもよい。
このような水分量センサ10の製造方法は、複数の水分量センサ10の水分量の算出値のばらつきを容易に抑制することができる。
[感度調整プレートの変形例1]
図6に示される感度調整プレート20の光の透過特性は、一例である。感度調整プレート20の光の透過特性は、水分の光の吸収特性を模擬した特性であればよく、ここでの「模擬した」は、広義の意味である。水分の光の吸収特性を模擬した特性は、例えば、水分による吸光度が比較的大きい第一波長帯に透過率の最小値を有する特性である。また、水分の光の吸収特性を模擬した特性は、(水分による吸光度が比較的大きい)第一波長帯の透過率が、(水分による光の吸光度が比較的小さい)第二波長帯の透過率よりも実質的に低い特性であってもよい。
以下、水分の光の吸収特性を模擬した光の透過特性の変形例1について説明する。図8は、感度調整プレート20の光の透過特性の変形例1を示す図である。なお、図8では、光の透過特性の変形例1(実線)の比較対象として、水分の光の吸収特性を忠実に模擬した光の透過特性(破線)も示されている。
図8に示される感度調整プレート20の光の透過特性は、第一波長帯の少なくとも一部の波長帯に対する第一バンドストップ特性21、及び、第二波長帯の少なくとも一部の波長帯に対する第二バンドストップ特性22を含む。つまり、図8に示される感度調整プレート20の光の透過特性は、2つのバンドストップ特性(言い換えれば、バンドエリミネーション特性、または、バンドカット特性)を組み合わせて構成されている。第一バンドストップ特性21の光の透過率のボトム値は、第二バンドストップ特性22の光の透過率のボトム値よりも低い。
図8に示される光の透過特性を有する感度調整プレート20は、例えば、透光性基板(言い換えれば、透光性基材)に互いに屈折率が異なる複数の層が積層されることによって単一のプレートとして形成される。図8に示される光の透過特性を有する感度調整プレート20は、第一バンドストップ特性21を有するプレートと第二バンドストップ特性22を有するプレートの重ね合わせによって形成されてもよい。
図8に示される光の透過特性(実線)を有する感度調整プレート20は、水分の光の吸収特性を忠実に模擬した光の透過特性(図8の破線。光の透過率がなめらか、かつ、連続的に変化する光の透過特性。)を有する感度調整プレート20よりも、作製が容易である利点を有する。
[感度調整プレートの変形例2]
水分の光の吸収特性を模擬した光の透過特性の変形例2について説明する。図9は、感度調整プレート20の光の透過特性の変形例2を示す図である。なお、図9では、光の透過特性の変形例2(実線)の比較対象として、水分の光の吸収特性を忠実に模擬した光の透過特性(破線)も示されている。
図9に示される感度調整プレート20の光の透過特性は、第一波長帯の少なくとも一部の波長帯に対するバンドストップ特性23を含み、第二波長帯に対するバンドストップ特性を含まない。つまり、感度調整プレート20の光の透過特性は、バンドストップ特性を1つだけ含む。また、バンドストップ特性23の部分を除くと、光の透過率は、100%未満の所定の透過率(図9の例では96%程度)で一定である。つまり、感度調整プレート20の光の透過特性の変形例2においては、第二波長帯における光の透過率が一定である。なお、第二波長帯の少なくとも一部における光の透過率が一定であってもよい。
図9に示される光の透過特性を有する感度調整プレート20は、例えば、上記所定の透過率を有する透光性基板(言い換えれば、透光性基材)に、互いに屈折率が異なる複数の層が積層されることによって形成される。
図9に示される光の透過特性を有する感度調整プレート20は、図8に示されるバンドストップ特性を有する感度調整プレート20よりも作製が容易である利点を有する。
[感度調整プレートの変形例3]
水分の光の吸収特性を模擬した光の透過特性の変形例3について説明する。図10は、感度調整プレート20の光の透過特性の変形例3を示す図である。なお、図10では、光の透過特性の変形例3(実線)の比較対象として、水分の光の吸収特性を忠実に模擬した光の透過特性(破線)も示されている。
図10に示される感度調整プレート20の光の透過特性は、第一波長帯の少なくとも一部の波長帯に対するバンドストップ特性24を含み、第二波長帯に対するバンドストップ特性を含まない。つまり、感度調整プレート20の光の透過特性は、バンドストップ特性を1つだけ含む。バンドストップ特性24の部分を除くと、光の透過率は100%で一定である。つまり、感度調整プレート20の光の透過特性の変形例3においては、第二波長帯における光の透過率が100%で一定である。なお、第二波長帯の少なくとも一部における光の透過率が100%で一定であってもよい。ここでの100%は、厳密な意味での100%ではなく、実質的に100%(ほぼ透明であること)を意味する。
図10に示される光の透過特性を有する感度調整プレート20は、例えば、実質的に透明(透過率100%)の基板(言い換えれば、基材)に、互いに屈折率が異なる複数の層が積層されることによって形成される。
図10に示される光の透過特性を有する感度調整プレート20は、透明の基板を用いて容易に作製できる利点を有する。
[効果等]
以上説明したように、感度調整プレート20は、対象物40に含まれる水分を検出する水分量センサ10の感度の調整に用いられる。水分は、第一波長帯の光に対する吸収率よりも第二波長帯の光に対する吸収率が低い。水分量センサ10は、第一波長帯の光、及び、第二波長帯の光を含む照射光を対象物40に向けて発する光源12と、照射光が対象物40において反射することで得られる反射光に含まれる第一波長帯の光を第一電気信号に変換する第一受光部17aと、反射光に含まれる第二波長帯の光を第二電気信号に変換する第二受光部17bと、第一電気信号、及び、第二電気信号に基づいて、対象物40に含まれる水分の量を算出する演算部18aとを備える。感度調整プレート20は、水分の光の吸収特性を模擬した光の透過特性を有し、水分量センサ10の感度調整工程において、光反射板30と水分量センサ10との間に配置される。水分量センサ10は、センサ装置の一例であり、水分は、特定成分の一例である。
このような感度調整プレート20によれば、複数の水分量センサ10の水分量の算出値のばらつきを容易に抑制することができる。
また、変形例1では、感度調整プレート20の光の透過特性は、第一波長帯の少なくとも一部の波長帯に対する第一バンドストップ特性、及び、第二波長帯の少なくとも一部の波長帯に対する第二バンドストップ特性を含む。
このような感度調整プレート20は、水分の光の吸収特性を忠実に模擬した光の透過特性を有する感度調整プレート20よりも、作製が容易である利点を有する。
また、変形例2及び3では、感度調整プレート20の光の透過特性は、第一波長帯の少なくとも一部の波長帯に対するバンドストップ特性を含み、第二波長帯に対するバンドストップ特性を含まない。
このような感度調整プレート20は、変形例1の光の透過特性を有する感度調整プレート20よりも作製が容易である利点を有する。
また、変形例3では、感度調整プレート20は、第二波長帯における光の透過率が100%である。また、感度調整プレート20は、第二波長帯の少なくとも一部における光の透過率が100%であってもよい。
このような感度調整プレート20は、透明の基板を用いて容易に作製できる利点を有する。
また、感度調整プレート20は、1380nm以上1650nm以下の波長帯において、水分の光の吸収特性を模擬した光の透過特性を有する。
このような感度調整プレート20は、複数の水分量センサ10の水分量の算出値のばらつきを容易に抑制することができる。
また、水分量センサ10は、より具体的には、吸光係数αaが記憶される記憶部19を備え、演算部18aは、第一電気信号、第二電気信号、及び、吸光係数αaを用いた演算により、対象物40に含まれる水分の量を算出する。このような水分量センサ10の製造方法は、光反射板30と水分量センサ10との間に、水分の光の吸収特性を模擬した光の透過特性を有する感度調整プレート20を配置し(S12)、光反射板30と水分量センサ10との間に感度調整プレート20が配置された状態で水分量センサ10によって算出される水分の量に基づいて、記憶部19に記憶された吸光係数αaに関連する係数を書き換える(S17)。
このような水分量センサ10の製造方法によれば、複数の水分量センサ10の水分量の算出値のばらつきを容易に抑制することができる。
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施の形態では、水分量センサの感度調整に感度調整プレートを使用する例について説明されたが、感度調整プレートを用いた感度調整方法は、水分以外の特定成分を検出対象とする他のセンサ装置にも適用できる。例えば、感度調整プレートを用いた感度調整方法は、対象物に含まれる油またはアルコールなどの特定成分(液体成分)を検出するセンサ装置に適用されてもよいし、特定成分として気体成分を検出するセンサ装置に適用されてもよい。この場合、感度調整プレートは、特定成分の光の吸収特性を模擬した光の透過特性を有していればよい。なお、第一波長帯及び第二波長帯の具体的な数値範囲は、検出対象の特定成分に応じて異なる。
また、上記実施の形態では、光源は、LED素子を発光素子として用いた発光モジュールであると説明されたが、光源は、半導体レーザ素子又は有機EL素子などを発光素子として用いた光源であってもよい。
また、上記実施の形態では、1つの光源が第一波長帯の光及び第二波長帯の光を含む照射光を発したが、センサ装置は、第一波長帯の光を発する光源、及び、第二波長帯の光を発する光源の2つの光源を備えてもよい。
また、本発明の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。例えば、本発明は、上記実施の形態の感度調整装置として実現されてもよいし、感度調整装置、光反射板、及び、感度調整プレートを備える、センサ装置の製造システム(製造装置)として実現されてもよい。
また、上記実施の形態において説明された製造方法のフローチャートにおける複数の処理の順序は一例である。複数の処理の順序は、変更されてもよいし、複数の処理は、並行して実行されてもよい。
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
10 水分量センサ(センサ装置)
12 光源
17a 第一受光部
17b 第二受光部
18a 演算部
19 記憶部
20 感度調整プレート
21 第一バンドストップ特性
22 第二バンドストップ特性
23、24 バンドストップ特性
30 光反射板
40 対象物

Claims (3)

  1. 感度調整プレートであって、
    前記感度調整プレートは、対象物に含まれる特定成分を検出するセンサ装置の感度の調整に用いられ、
    前記特定成分は、第一波長帯の光に対する吸収率よりも第二波長帯の光に対する吸収率が低く、
    前記センサ装置は、
    前記第一波長帯の光、及び、前記第二波長帯の光を含む照射光を前記対象物に向けて発する光源と、
    前記照射光が対象物において反射することで得られる反射光に含まれる前記第一波長帯の光を第一電気信号に変換する第一受光部と、
    前記反射光に含まれる前記第二波長帯の光を第二電気信号に変換する第二受光部と、
    前記第一電気信号、及び、前記第二電気信号に基づいて、前記対象物に含まれる前記特定成分の量を算出する演算部とを備え、
    前記感度調整プレートは、前記特定成分の光の吸収特性を模擬した光の透過特性を有し、前記センサ装置の感度調整工程において、光反射板と前記センサ装置との間に配置され、
    前記第一波長帯は、1420nm以上1530nm以下の波長帯であり、
    前記第二波長帯は、1530nm以上1630nm以下の波長帯であり、
    前記感度調整プレートの前記光の透過特性は、1300nm以上1700nm以下の波長範囲の中で前記第一波長帯に透過率の最小値を有し、かつ、前記第一波長帯の少なくとも一部の波長帯に対する第一バンドストップ特性、及び、前記第二波長帯の少なくとも一部の波長帯に対する第二バンドストップ特性を含み、
    前記第一バンドストップ特性における光の透過率は、少なくとも1420nm以上1500nm以下の波長範囲で一定の第一ボトム値となり、
    前記第二バンドストップ特性における光の透過率は、少なくとも1530nm以上1600nm以下の波長範囲で一定の第二ボトム値となり、
    前記第一ボトム値は、前記第二ボトム値よりも低い
    感度調整プレート。
  2. 前記特定成分は、水分であり、
    前記感度調整プレートは、1380nm以上1650nm以下の波長帯において、水分の光の吸収特性を模擬した光の透過特性を有する
    請求項に記載の感度調整プレート。
  3. センサ装置の製造方法であって、
    前記センサ装置は、
    第一波長帯の光、及び、第二波長帯の光を含む照射光を対象物に向けて発する光源と、
    前記照射光が前記対象物において反射することで得られる反射光に含まれる前記第一波長帯の光を第一電気信号に変換する第一受光部と、
    前記反射光に含まれる前記第二波長帯の光を第二電気信号に変換する第二受光部と、
    係数が記憶される記憶部と、
    前記第一電気信号、前記第二電気信号、及び、前記係数を用いた演算により、前記対象物に含まれる特定成分の量を算出する演算部とを備え、
    前記製造方法は、
    光反射板と前記センサ装置との間に、前記特定成分の光の吸収特性を模擬した光の透過特性を有する感度調整プレートを配置し、
    前記光反射板と前記センサ装置との間に前記感度調整プレートが配置された状態で前記センサ装置によって算出される前記特定成分の量に基づいて、前記記憶部に記憶された前記係数を書き換え、
    前記第一波長帯は、1420nm以上1530nm以下の波長帯であり、
    前記第二波長帯は、1530nm以上1630nm以下の波長帯であり、
    前記感度調整プレートの前記光の透過特性は、1300nm以上1700nm以下の波長範囲の中で前記第一波長帯に透過率の最小値を有し、かつ、前記第一波長帯の少なくとも一部の波長帯に対する第一バンドストップ特性、及び、前記第二波長帯の少なくとも一部の波長帯に対する第二バンドストップ特性を含み、
    前記第一バンドストップ特性における光の透過率は、少なくとも1420nm以上1500nm以下の波長範囲で一定の第一ボトム値となり、
    前記第二バンドストップ特性における光の透過率は、少なくとも1530nm以上1600nm以下の波長範囲で一定の第二ボトム値となり、
    前記第一ボトム値は、前記第二ボトム値よりも低い
    センサ装置の製造方法。
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