JP2018077301A - 近赤外線吸収性光学部材、およびこれを用いた画像表示デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】光学的特性および耐侯性に優れ、安価に作製できる近赤外線吸収性光学部材、および当該近赤外線吸収性光学部材を用いた画像表示デバイスを提供する。【解決手段】基材と、前記基材表面上に形成された、樹脂、金属酸化物から選ばれる1種以上を含む機能性膜とを有し、前記基材、前記機能性膜から選ばれる1種以上の材料内部に、近赤外線吸収材料が分散された近赤外線吸収性光学部材と、シート状等の樹脂が基材に挟持されている、または、シート状等の樹脂が基材に挟持されており、前記基材の少なくとも一方の表面に、樹脂、金属酸化物から選ばれる1種以上を含む機能性膜が設けられ、前記基材、前記樹脂、前記機能性膜から選ばれる1種以上に近赤外線吸収材料が分散されている近赤外線吸収性光学部材と、前記近赤外線吸収性光学部材を用いた画像表示デバイスとを提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、近赤外線を吸収する近赤外線吸収性光学部材と、この近赤外線吸収性光学部材を用いた画像表示デバイスに関するものである。
近赤外線吸収能力を有する光学フィルム等の近赤外線吸収性光学部材は、近赤外線を遮断し、可視光を通過させる性質を有しており、各種の用途に使用されている。当該用途の一例として、薄型大画面ディスプレイとしてのプラズマディスプレイがあった。プラズマディスプレイでは、当該プラズマディスプレイから放出される近赤外線により、近赤外線リモコンを使用する電子機器が誤動作を起こす問題があり、近赤外線吸収フィルムをプラズマディスプレイの前面に設け、近赤外線をカットすることが行われていた。
近赤外線吸収能力を有するフィルムとしては、(1)燐酸系ガラスに、銅や鉄などの金属イオンを含有したフィルム、(2)屈折率の異なる層を積層し、透過光を干渉させることで特定の波長を透過させる干渉フィルム、(3)共重合体に銅イオンを含有するアクリル系樹脂フィルム、(4)樹脂に色素を分散または溶解した層を積層したフィルム、が提案されていた。これらの中で(4)のフィルムは、加工性、生産性が良好で、光学設計の自由度も比較的大きく、各種の構造や製造方法が提案されてきている。
これらの構造や製造方法の中には、プラズマディスプレイから放出される近赤外線を十分に遮断する能力を有するジイモニウム塩化合物を用いるものもあった。しかしながら、近赤外線吸収フィルター、断熱フィルムおよびサングラス等に近赤外線吸収剤として広く利用されていたジイモニウム塩化合物は、末端基が直鎖のアルキル基を有する化合物が多い。したがって、これらの化合物を用いた近赤外線吸収フィルターは、一般に、熱や光を受けた際に、当該化合物が変化しやすい等の原因から、近赤外線吸収能力が低下するという問題があった。特に、熱を受けた際には、当該化合物の分解に伴いフィルター自身の可視透過率が低下し、その色調も緑みを帯びてくるという重大な課題があった。
上述した前記の課題の解決法として、示差走査熱量測定において温度220℃以上に吸熱ピークを有するジイモニウム系化合物を含有する近赤外線吸収層を有する近赤外線吸収フィルムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、熱や酸化等による劣化に対抗するフィルターの耐久性は十分満足できるレベルには到っていなかった。
また、上述した光学フィルターへは、近赤外線吸収能力を発揮させることに加え、可視光線領域における特定波長吸収能力を付与する色調調整、反射防止性能力、表面の耐傷付き性能等の機能を付与することが検討されている。例えば、近赤外線吸収能力を有する色素を透明な高分子樹脂中に分散させた近赤外線吸収フィルムと、電磁波吸収層、反射防止層、紫外線吸収層等の機能を有する機能フィルムとを、貼り合わせる方法により積層した多層近赤外線吸収フィルムが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
上述したジイモニウム系化合物を含有する近赤外線吸収層を有する近赤外線吸収フィルムの他に、高い熱線遮蔽性を有し、かつ高い可視光透過率を実現する熱線遮蔽ガラスとして、タングステン酸化物および/または複合タングステン酸化物の微粒子と、紫外線励起着色防止剤を含むコーティング膜をガラス基板上に形成したものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
上述したように、プラズマディスプレイの動作中において、前面パネルより放射される近赤外線(波長800〜1100nm程度)が周辺の電子機器に誤動作を引き起こしたり、伝送系光通信に悪影響を及ぼすことがあり、近赤外線を遮断しなければならないという課題があった。また、液晶装置においても、大型化が進み、それに伴って、液晶装置に使用するバックライトの強度も強くなってきている。一般的に、バックライトに用いられている蛍光管は、オン−オフ時に近赤外線を発する傾向にあるため、こちらもコードレスフォンやリモートコントローラ等の電子機器の誤動作を引き起こす可能性があることが指摘されていた。
上述した状況の下で、本発明者らは特許文献4として、可視光線を透過させ近赤外線を遮蔽することのできるタングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子を含んでいるPDP用近赤外線吸収フィルターを開示した。当該タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子は、耐熱性、耐候性に優れており、多様な樹脂、金属酸化物への分散が可能であり、多様な硬化方法を採ることもできるため、耐久性に優れ、生産性も高いので安価に作製できる。
加えて、波長380nm〜780nmの可視光透過率の最大値が50%以上ありながら、波長800nm〜1100nmの近赤外線透過率の最小値が30%以下と近赤外線吸収力が大きいので、プラズマディスプレイ本体の輝度を低下させることなく、当該プラズマディスプレイ本体から放出される近赤外線によって、周囲の電子機器が誤動作を生じる事態を回避することができるという優れた機能を有している。
特開2003−114323号公報 特許第3308545号公報 特開平08−281860号公報 特開2006−154516号公報
しかしながら本発明者らの検討によると、前記PDP用近赤外線吸収フィルターには、積層数や積層工程数が多いため生産コストが高いという問題があった。そこで、当該積層数をできるだけ少なくするために、近赤外線吸収機能、ネオン光吸収機能、色調調整機能のような光学フィルター機能を一層の粘着剤層に集約することで上述の問題点を解決しようと考えた。ところが、いずれのフィルターも長時間、高温高湿環境下にさらされると、近赤外線吸収機能の低下や色調変化、ヘイズの上昇が認められ、十分な実用性を有していなかった。
本発明は、この様な問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、可視光の透過率プロファイルがフラットで広く、近赤外線吸収力が大きく、耐侯性に優れ、安価に作製できる近赤外線吸収性光学部材、および、当該近赤外線吸収性光学部材を用いた、画像表示デバイスを始めとする近赤外線を放出する各種のデバイス(本発明において「画像表示デバイス」と記載する場合がある。)を提供することにある。
本発明者は、上述の課題を解決するため、近赤外線吸収性光学部材の耐候性を改善させる観点から、近赤外線を吸収する無機材料に注目して鋭意研究を行なった。そして、可視光線を透過させ近赤外線を遮蔽することのできる耐候性の良い無機材料微粒子として、平均分散粒子径が800nm以下の複合ストロンチウム酸化物微粒子に想到した。当該複合ストロンチウム酸化物微粒子を用いることによって、波長380nm〜780nm領域の可視領域における光の透過率の最大値が50%以上あり、かつ波長1000nm〜1600nm領域の近赤外領域における光の吸収の強い近赤外線吸収性光学部材が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の第1の発明は、
基材と、前記基材表面上に形成された、樹脂、金属酸化物から選ばれる1種以上を含む機能性膜とを有し、前記基材、前記機能性膜から選ばれる1種以上の材料内部に、近赤外線吸収材料が分散された近赤外線吸収性光学部材であって、
前記近赤外線吸収材料は、平均分散粒子径が800nm以下の、複合ストロンチウム酸化物微粒子を含み、
波長380nm〜850nmの領域における光の透過率の最大値が50%以上で、波長1000nm〜1600nmの近赤外光領域における光の透過率の最小値が30%以下であることを特徴とする近赤外線吸収性光学部材を提供する。
本発明の第2の発明は、
シート状若しくはフィルム状の樹脂が基材に挟持されている、または、シート状若しくはフィルム状の樹脂が基材に挟持されており、前記基材の少なくとも一方の表面に、樹脂、金属酸化物から選ばれる1種以上を含む機能性膜が設けられている、近赤外線吸収性光学部材であって、
前記樹脂、前記基材、前記機能性膜から選ばれる1種以上に近赤外線吸収材料が分散されており、
前記近赤外線吸収材料は、平均分散粒子径が800nm以下の、複合ストロンチウム酸化物微粒子を含み、
波長380nm〜850nmの領域における光の透過率の最大値が50%以上で、波長1000nm〜1600nmの近赤外光領域における光の透過率の最小値が30%以下であることを特徴とする近赤外線吸収性光学部材を提供する。
本発明の第3の発明は、
本発明の第1の発明、または、第2の発明において、前記樹脂、金属酸化物をから選ばれる1種以上を含む機能性膜が、屈折率を異にする2層以上の膜からなる積層体であって、前記積層体は、前記積層体を構成する膜の屈折率差による反射防止機能を有しており、前記積層体を構成する膜の少なくとも1層に、近赤外線吸収材料が分散されていることを特徴とする近赤外線吸収性光学部材を提供する。
本発明の第4の発明は、
本発明の第1〜第3の発明のいずれかにおいて、前記複合ストロンチウム酸化物が、一般式SrVO3−X(但し、0≦X<1)で表記されるメタバナジン酸ストロンチウムの微粒子、一般式Sr(V,Mo)O3−X(但し、0≦X<1、原子比でV:Mo=1:9〜3:7)で表記されるモリブデンバナジン酸ストロンチウムの微粒子、一般式Sr(Ti,Nb)O3−X(但し、0≦X<1、原子比でTi:Nb=99.95:0.5〜95:5)で表記されるニオブチタン酸ストロンチウムの微粒子、から選ばれる1種以上であることを特徴とする近赤外線吸収性光学部材を提供する。
本発明の第5の発明は、
本発明の第1〜第4の発明のいずれかにおいて、前記複合ストロンチウム酸化物微粒子の表面が、Si、Ti、Zr、Alから選択される1種類以上の元素を含む酸化物で被覆されていることを特徴とする近赤外線吸収性光学部材を提供する。
本発明の第6の発明は、
本発明の第1〜第3の発明のいずれかにおいて、前記近赤外線吸収材料が、更に、ジイモニウム系化合物、アミニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、有機金属錯体、シアニン系化合物、アゾ化合物、ポリメチン系化合物、キノン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリフェニルメタン系化合物から選択される1種以上の有機化合物を含むことを特徴とする近赤外線吸収性光学部材を提供する。
本発明の第7の発明は、
本発明の第1または第2の発明において、前記基材が、ボード状の樹脂、フィルム状の樹脂、ガラスから選択される1種以上であることを特徴とする近赤外線吸収性光学部材を提供する。
本発明の第8の発明は、
本発明の第7の発明において、前記基材に用いられる樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアリレレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂から選択される1種以上の樹脂を含むことを特徴とする近赤外線吸収性光学部材を提供する。
本発明の第9の発明は、
本発明の第1〜第3の発明のいずれかにおいて、前記機能性膜が、紫外線硬化樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂、常温硬化樹脂、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解重合物、粘着材から選択される1種類以上の成分を有することを特徴とする近赤外線吸収性光学部材を提供する。
本発明の第10の発明は、
本発明の第2の発明において、前記シート状またはフィルム状の樹脂が、ポリビニルブチラール樹脂であることを特徴とする近赤外線吸収性光学部材を提供する。
本発明の第11の発明は、
本発明の第1〜第3の発明のいずれかにおいて、更に、色調調整成分を含むことを特徴とする近赤外線吸収性光学部材を提供する。
本発明の第12の発明は、
本発明の第1〜第11の発明のいずれかに記載の近赤外線吸収性光学部材が、画像表示部前面に設置されていることを特徴とする画像表示デバイスを提供する。
本発明に係る近赤外線吸収性光学部材は、可視光線を透過させ近赤外線を遮蔽することができ、波長380nm〜780nm領域の可視領域における光の透過率の最大値が50%以上あり、かつ波長1000nm〜1600nm領域の近赤外領域における光の吸収の強い近赤外線吸収性光学部材である。当該近赤外線吸収材料は、可視光の透過率プロファイルがフラットで広く、近赤外線吸収力が大きく、耐侯性に優れ、安価に作製でき、その工業的意義は大きい。
実施例1に係るSrVO微粒子分散膜の透過率プロファイルである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の第1の態様に係る近赤外線吸収性光学部材は、基材と、前記基材表面上に、樹脂、金属酸化物から選ばれる1種以上を含む機能性膜とを有し、前記基材、前記機能性膜から選ばれる1種以上の材料内部に、近赤外線吸収材料が分散された近赤外線吸収性光学部材である。そして、前記近赤外線吸収材料は、平均分散粒子径が800nm以下の、メタバナジン酸ストロンチウム微粒子を含み、波長380nm〜850nmの領域における光の透過率の最大値が50%以上で、波長1000nm〜1600nmの近赤外光領域における光の透過率の最小値が30%以下であることを特徴としている。
本発明の第2の態様に係る近赤外線吸収性光学部材は、シート状若しくはフィルム状の樹脂が基材に挟持されている、または、シート状若しくはフィルム状の樹脂が基材に挟持されており、前記基材の少なくとも一方の表面に、樹脂、金属酸化物から選ばれる1種以上を含む機能性膜が設けられ、前記基材、前記樹脂、前記機能性膜から選ばれる1種以上に近赤外線吸収材料が分散されている、近赤外線吸収性光学部材である。そして、前記近赤外線吸収材料は、平均分散粒子径が800nm以下の、メタバナジン酸ストロンチウム微粒子を含み、波長380nm〜850nmの領域における光の透過率の最大値が50%以上で、波長1000nm〜1600nmの近赤外光領域における光の透過率の最小値が30%以下であることを特徴としている。
本発明の第3の態様に係る近赤外線吸収性光学部材は、前記樹脂、金属酸化物をから選ばれる1種以上を含む機能性膜が、屈折率を異にする2層以上の膜からなる積層体となっている。この結果、前記積層体は、前記積層体を構成する膜の屈折率差により反射防止機能を有しており、この反射防止機能を有する前記積層体を構成する膜の少なくとも1層に、近赤外線吸収材料が分散されていることを特徴としている。
以下、本発明に係る第1から第3の態様に係る近赤外線吸収性光学部材について、1)近赤外線吸収材料、2)近赤外線吸収材料の製造方法、3)近赤外線吸収性光学部材、4)屈折率差を利用した反射防止機能を有する機能性膜、5)有機化合物や金属錯体等の近赤外線吸収材料の添加、6)画像表示デバイスへの適用、の順で詳細に説明する。
1)近赤外線吸収材料
上述したように、本発明の近赤外線吸収性光学部材に用いる近赤外線吸収材料には、平均分散粒子径が800nm以下の、複合ストロンチウム酸化物微粒子を用いる。
近赤外線吸収材料が分散された膜を有する近赤外線吸収性光学部材は、透明性を保持したまま近赤外線の効率良い吸収を行なうことが求められるが、本発明に係る複合ストロンチウム酸化物微粒子を含む近赤外線吸収性光学部材は、近赤外線領域、特に、波長900〜2200nm付近の光を大きく吸収するため、その透過色調は青色系から緑色系となる物が多い。
本発明に係る複合ストロンチウム酸化物としては、一般式SrVO3−X(但し、0≦X<1)で表記されるメタバナジン酸ストロンチウム、一般式Sr(V,Mo)O3−X(0≦X<1、原子比でV:Mo=1:9〜3:7)で表記されるモリブデンバナジン酸ストロンチウム、一般式Sr(Ti,Nb)O3−X(但し、0≦X<1、原子比でTi:Nb=99.95:0.5〜95:5)で表記されるニオブチタン酸ストロンチウムが挙げられる。
まず、本発明に係る複合ストロンチウム酸化物は、自由電子を多く保有する材料である。これは、本発明に係るメタバナジン酸ストロンチウムSrVO3−X、モリブデンバナジン酸ストロンチウムSr(V,Mo)O3−X、ニオブ添加チタン酸ストロンチウムSr(Ti,Nb)O3−Xが、電子導電性の高い材料だからである。因みにメタバナジン酸ストロンチウムSrVO3−Xの室温での導電性はITOよりも一桁程度高く、モリブデンバナジン酸ストロンチウムSr(V,Mo)O3−Xおよびニオブチタン酸ストロンチウムSr(Ti,Nb)O3−Xの室温での導電性も、同様にITOよりも一桁程度高く、十分な量の自由電子を保有していることが知見された。
また、本発明に係るモリブデンバナジン酸ストロンチウムSr(V,Mo)O3−Xにおいて、VとMoの比の好ましい範囲、即ち導電性の高くなる範囲は、原子比でV:Mo=1:9〜3:7である。さらに、原子比でSr:(V,Mo)=1.2:1〜1:1.2の範囲にあることも、導電性を高める観点から好ましい。
また、ニオブチタン酸ストロンチウムSr(Ti,Nb)O3−Xにおいて、TiとNbの比の好ましい範囲、即ち導電性の高くなる範囲は、原子比でTi:Nb=99.95:0.5〜95:5である。さらに、原子比でSr:(Ti,Nb)=1.2:1〜1:1.2の範囲にあることも、導電性を高める観点から好ましい。
ここで、通常のバルク材料であって自由電子モデルが成り立つ材料において、プラズマ共鳴振動の周波数ωPは式1で表わされる。
ωP=4πne/m・・・・・式1
(但し、nは自由電子密度、eは電子の電荷素量、mは電子の有効質量)
つまり、プラズマ共鳴振動の周波数ωPは、自由電子の密度と有効質量とに応じて決定される。この結果、材料が微粒子である場合には局在型表面プラズモンが励起される。しかしながら、実際の微粒子集団においては、電子−電子相互作用や、双極子間相互作用、電子のバンド間遷移などに起因する種々の制約や変調を受ける。この為、上述したバルク材料の自由電子モデルは厳密には成り立たなくなり、微粒子集団としてのプラズモン共鳴波長は、式1が予測する値からずれてくる。
本発明者らが、種々の赤外線遮蔽材料の微粒子集団を用いて実験した結果、観察される共鳴吸収波長はバルク状態の赤外線遮蔽材料のプラズマ波長よりも、常にやや長波長側(低エネルギー側)に観察されることが判明している。
一方、バルク状態の赤外線遮蔽材料のプラズマ波長は、後述する当該材料の誘電関数の実部ε1の値が、正の値から負の値に転じる波長として定義されている。
誘電関数とは、電気変位Dと電場Eとの比D/Eで定義される量である(キッテル「固体物理学入門」第8版、丸善、2005、p.419参照)が、固体中の自由電子集団に対しては、式2を通して、プラズマ周波数と関係付けられる。
ε(ω)=1−ωP/ω・・・・・式2
尤も、電気伝導やバンド間遷移による損失を記述するため、一般に式3のような複素関数で表わされる。
ε(ω)=ε1(ω)+iε2(ω)・・・・・式3
当該複素関数である式3において、実部ε1(ω)は電場の振動との位相差および分極の大きさを与え、虚部ε2(ω)は電気伝導やバンド間遷移による誘電損失を与える。
そして、公知の赤外線遮蔽材料において、誘電関数の実部ε1を観察したところ、当該実部ε1の値が波長700nm以上で正の値から負の値に転じる場合に、赤外線波長領域において表面プラズモン共鳴が起こることが多くの実験から帰結されている。
本発明に係る複合ストロンチウム酸化物は、誘電関数の実部ε1が700nm以上の波長で正の値から負の値に転じることから、表面プラズモン共鳴の波長が赤外域に存在していることが知見された。
上記式3において、虚部ε2は、赤外線遮蔽材料中の電子の動きに摩擦やロスが生ずることを表わす量である。従って、虚部ε2がピークを持つことや、その絶対値が大きいことは、当該材料中において電子のバンド間遷移や電気抵抗による摩擦が大きく、光の吸収が生ずることを意味する。当該光の吸収が可視光の波長領域で生ずると当該材料の着色につながる為、赤外線遮蔽材料としては、虚部ε2が可視光波長領域で極大値を持たず、その絶対値が小さいことが好ましいことに想到した。
本発明者らの検討によれば、上述した誘電関数の虚部ε2が可視光波長領域で極大値を持たず、波長550nmにおいて2以下の値であるときには、可視光の透過性が損なわれることなく近赤外線の吸収効果を得ることができることを実験から知見した。
即ち、赤外線遮蔽材料の誘電関数がこの条件を満たす時には、視覚的に着色が少なく透明感の高い日射遮蔽体を得ることが出来る。これに対し、可視光波長550nmにおいて誘電関数の虚部ε2の値が2を超える材料や、波長500〜600nm波長範囲において虚部ε2がピークを持つ材料は、当該材料の微粒子分散体に強い着色が生じることが判明した。
本発明に係る複合ストロンチウム酸化物は、誘電関数の虚部εが、500〜600nmの波長域にピークを持たず、波長550nmにおける値が2以下であることから、視覚的に着色が少なく透明感の高い日射遮蔽体を得ることが出来ることが知見された。
以上に加え、本発明に係る複合ストロンチウム酸化物は、それぞれ以下に示すような優れた特性を有している。
SrVO3−Xは可視光の透過波長に広がりがあり、赤の可視光に対する透過率が高いという長所を有している。
一方、Sr(V,Mo)O3−Xは、SrVO3−Xに比べて青みがかった色調となり、赤外線の吸収自体が、やや大きいという長所を有している。
また、Sr(Ti,Nb)O3−Xも、Sr(V,Mo)O3−Xと同様に、赤外線の吸収自体が、やや大きいという長所を有している。
上述した複合ストロンチウム酸化物微粒子を近赤外線吸収材料として用いる場合、工業的に安価で簡便な方法として、微粒子分散法を用いることが好ましい。これは、基材と、当該基材の表面上に、樹脂、金属酸化物から選ばれる1種以上を含む機能性膜とを有する近赤外線吸収性光学部材において、前記基材、機能性膜から選ばれる1種以上の材料内部に、前記複合ストロンチウム酸化物微粒子を均一に分散させる方法である。当該方法をとることにより、得られた基材、機能性膜を透過する近赤外線を吸収し遮蔽することができる。
上述した微粒子分散法で近赤外線吸収性光学部材を作製する時、前記複合ストロンチウム酸化物微粒子の平均分散粒子径は、800nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは100nm以下がよい。
複合ストロンチウム酸化物の粒子径が800nmを超えた場合、幾何学散乱によって、画像表示デバイスから放射される波長380nm〜780nmの可視光線領域の光を散乱してしまい外観上曇りガラスのようになり、鮮明な画面表示が得られなくなり好ましくない。
平均分散粒子径が800nm以下、好ましくは200nm以下になると、前記幾何学散乱が低減し、ミー散乱またはレイリー散乱領域になる。
粒子径が100nm以下になると散乱光は非常に少なくなるためさらに好ましい。レイリー散乱領域においては、散乱光は粒子径の6乗に反比例して低減するため、前記可視光線の散乱が低減し鮮明な画面表示が可能となる。一方、粒子径が1nm以上であれば、工業的な製造は比較的容易である。
上述した複合ストロンチウム酸化物微粒子を分散する方法は、乾式法、湿式法等各種挙げられるが、特に平均分散粒子径200nm以下の複合ストロンチウム酸化物微粒子を分散する場合は、湿式法が有効である。具体的には、ボールミル、サンドミル、媒体攪拌ミル、超音波照射等が挙げられる。また、微粒子分散時に、各種分散剤を添加したり、pHを調整したりすることで平均分散粒子径200nm以下の複合ストロンチウム酸化物微粒子を、安定に液体中に分散保持することが容易になる。各種分散剤は、使用する溶媒やバインダー等との相性で各種選択可能であり、代表的なものは、シランカップリング剤や各種界面活性剤が挙げられる。
また、上述した複合ストロンチウム酸化物微粒子の表面を、Si、Ti、Zr、Alのいずれか1種類以上の元素を含む酸化物で被覆すれば、耐候性を向上させることができ、好ましい。
さらに、近赤外線吸収材料として、複合ストロンチウム酸化物微粒子と、有機化合物や金属錯体等の近赤外線吸収材料である、例えば、ジイモニウム系化合物、アミニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、有機金属錯体、シアニン系化合物、アゾ化合物、ポリメチン系化合物、キノン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリフェニルメタン系化合物から選択される1種以上の有機化合物を併用することも好ましい構成である。上述したように、有機化合物や金属錯体等の近赤外線吸収材料は、耐熱性、耐候性等に難があり単独使用には限界があったが、複合ストロンチウム酸化物微粒子と併用することで、耐候性を向上させる効果が得られることが判明した。このことから、両近赤外線吸収材料の混合使用も好ましい構成である。
2)近赤外線吸収材料(複合ストロンチウム酸化物)の製造方法
本発明に係る近赤外線吸収材料である複合ストロンチウム酸化物の製造方法について、(a)一般式SrVO3−X(但し、0≦X<1)で表記されるメタバナジン酸ストロンチウムの製造方法、(b)一般式Sr(V,Mo)O3−X(0≦X<1原子比でV:Mo=1:9〜3:7)で表記されるモリブデンバナジン酸ストロンチウムの製造方法、(c)一般式Sr(Ti,Nb)O3−X(但し、0≦X<1、原子比でTi:Nb=99.95:0.5〜95:5)で表記されるニオブチタン酸ストロンチウムの製造方法、の順で詳細に説明する。
(a)一般式SrVO3−X(但し、0≦X<1)で表記されるメタバナジン酸ストロンチウムの製造方法
メタバナジン酸ストロンチウムの粉末は、例えば、以下のように製造される。
炭酸ストロンチウムSrCOの粉末を真空中1000℃で5時間程度加熱して、酸化ストロンチウムSrOを得る。
一方、三酸化二バナジウム(V)と五酸化二バナジウム(V)を分子比でV:V=1:1になるように混合し、真空中またはNガスフロー中において800〜1000℃で、10〜48時間焼成し、二酸化バナジウム(VO)を作製する。
もっとも、ここで市販のSrOとVOとを入手しても良い。しかし、SrOとVOとには吸湿性があるので、よく乾燥した材料を用いることが好ましい。
次に、VOとSrOとが吸湿しないように注意し、原子比でSr:V=1.2:1〜1:1.2の範囲は好適な範囲であり、この範囲となるようにブレンダーを用いて十分に混合し混合粉とする。
当該混合粉を、水素1〜5%含む窒素フローなどの還元雰囲気で、1300℃以上、より好ましくは1500℃以上、1600℃以下の温度で、2〜20時間加熱焼成し、さらに、Nキャリアガス雰囲気下などの中性雰囲気下で1〜24時間焼成することで、青黒色の粉末である立方晶ペロブスカイト構造のメタバナジン酸ストロンチウムが得られる。
得られた青黒色の粉末をX線回折法で解析すると、立方晶ペロブスカイト構造のSrVOと同定される。
当該メタバナジン酸ストロンチウムにおけるバナジウム価数は4.0であるが、大気雰囲気で焼成するとバナジウム価数が5価になり易い為、還元雰囲気下における焼成が好ましい。還元雰囲気の調節と加熱温度を十分に行うことで、Sr、Sr、Sr(VOなどの、バナジウム価数が4.0を越えて5.0以下のストロンチウムバナジウム酸化物が形成されるのを回避出来る。
メタバナジン酸ストロンチウムにおける酸化数を3.0より下げて、SrVO3−X(0≦X<1)の組成にすると、表面プラズモン共鳴による吸収波長が若干短波長側へシフトする傾向が発現する。この結果を用い、太陽光の近赤外線を遮蔽するために適切にコントロールすることが可能となる。酸化数を下げるには、焼成時の雰囲気を、水素濃度を上げてより還元性の強い雰囲気に代替したり、還元雰囲気下での焼成時間を長くしたりすればよい。
(b)一般式Sr(V,Mo)O3−X(0≦X<1原子比でV:Mo=1:9〜3:7)で表記されるモリブデンバナジン酸ストロンチウムの製造方法
次に、一般式Sr(V,Mo)O3−X(0≦X<1、原子比でV:Mo=1:9〜3:7)で表記されるモリブデンバナジン酸ストロンチウムは、例えば、以下の方法で得ることができる。
前記(a)に記載した手順と同様にしてSrOとVOを用意する。MoOとSrOとVOとを原子比でSr:V:Mo=1:(0.1〜0.3):(0.9〜0.7)になるように混合し、ブレンダーで十分攪拌した後、NガスをキャリアとしたHガスを流しながら加熱し、1200〜1500℃で2〜10時間保持焼成後、Nガスでさらに1〜5時間焼成することでモリブデンバナジン酸ストロンチウムが得られる。
得られた赤色の粉末をX線回折法で解析すると、立方晶ペロブスカイト構造のSr(V,Mo)Oと同定される。
(c)一般式Sr(Ti,Nb)O3−X(但し、0≦X<1、原子比でTi:Nb=99.95:0.5〜95:5)で表記されるニオブチタン酸ストロンチウムの製造方法
次に、一般式Sr(Ti,Nb)O3−X(但し、0≦X<1、原子比でTi:Nb=99.95:0.5〜95:5)で表記されるニオブチタン酸ストロンチウムは、例えば、以下の方法で得ることができる。
二酸化チタンTiOと三酸化二ニオブNbと上述した酸化ストロンチウムSrOとを原子比でSr:Ti:Nb=3:(2.85〜2.9985):(0.15〜0.0015)になるように混合し、ブレンダーで十分攪拌した後、NガスをキャリアとしたHガスを流しながら加熱し、1400〜2000℃で5〜10時間保持焼成後、Nガスでさらに1〜5時間焼成することでニオブチタン酸ストロンチウムが得られる。
得られた青色の粉末をX線回折法で解析すると、立方晶ペロブスカイト構造のSr(Ti,Nb)Oと同定される。
3)近赤外線吸収性光学部材
上述したように、本発明の第1の態様に係る近赤外線吸収性光学部材は、基材と、前記基材表面上に、樹脂、金属酸化物から選ばれる1種以上を含む機能性膜とを有し、前記基材、前記機能性膜から選ばれる1種以上の材料内部に、近赤外線吸収材料が分散された近赤外線吸収性光学部材である。
本発明の第2の態様に係る近赤外線吸収性光学部材は、シート状若しくはフィルム状の樹脂が基材に挟持されている部材、または、シート状若しくはフィルム状の樹脂が基材に挟持されており、前記基材の少なくとも一方の表面に、樹脂、金属酸化物から選ばれる1種以上を含む機能性膜が設けられている部材であって、前記シート状若しくはフィルム状の樹脂、前記基材、前記機能性膜から選ばれる1種以上の材料内に近赤外線吸収材料が分散されている近赤外線吸収性光学部材である。
本発明の第3の態様係る近赤外線吸収性光学部材は、前記樹脂、金属酸化物をから選ばれる1種以上を含む機能性膜が、屈折率を異にする2層以上の膜からなる積層体となっており、前記積層体は、前記積層体を構成する膜の屈折率差により反射防止機能を有しており、この反射防止機能を有する前記積層体を構成する膜の少なくとも1層に、近赤外線吸収材料が分散された近赤外線吸収性光学部材である。
以上、第1から第3の態様に係る近赤外線吸収性光学部材に用いられる(a)基材および当該基材への近赤外線吸収材料の分散方法、(b)樹脂および当該樹脂への近赤外線吸収材料の分散方法、(c)基材表面上に形成された機能性膜および当該機能性膜への近赤外線吸収材料の分散方法、について説明する。
(a)基材および当該基材への近赤外線吸収材料の分散方法
本発明の近赤外線吸収性光学部材に用いられる基材としては、光透過性の高い樹脂あるいはガラスを用いることができる。
上述した基材に用いる樹脂の具体的例としては、光学的特性、機械的特性の観点より、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂の中でも、非晶質のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂が好ましく、非晶質ポリオレフィン系樹脂の中では環状ポリオレフィンが、ポリエステル系樹脂の中では、ポリエチレンテレフタレートがさらに好ましい。
樹脂以外の基材としては、光学的特性、機械的特性の観点よりガラスが好ましい。
基材の厚みについては、近赤外線吸収性光学部材の使用目的に依るが、10μm〜3mmの範囲のフィルム状やボード状のものが望ましい。
次に、上述した、近赤外線吸収材料である複合ストロンチウム酸化物微粒子を液体媒質中に分散させた近赤外線吸収材料の分散液を用いて、本発明に係る近赤外線吸収性光学部材を製造する方法を以下に具体的に説明する。
以下の説明においては、近赤外線吸収性光学部材の製造方法であって、本発明の第一の態様である近赤外線吸収性光学部材を構成する樹脂基材内に複合ストロンチウム酸化物微粒子が分散されたものを例として説明する。
上述した樹脂基材に、近赤外線吸収材料である複合ストロンチウム酸化物微粒子を分散させる場合は、まず、後述する実施例において例示する複合ストロンチウム酸化物微粒子が液体媒質中に分散された近赤外線吸収材の分散液を調製し、その後、この分散液から溶剤成分を除去して当該微粒子の粉末を得る。尚、原料である複合ストロンチウム酸化物微粒子を液体媒質中に分散させることにより、当初原料段階で結合されていた微粒子同士が分離され、微細な微粒子が分散した粉末を得ることが可能となる。但し、当初の原料段階で微粒子の粒子径が微細化されている場合、当該処理については省略してもよい。
得られた複合ストロンチウム酸化物微粒子を、樹脂基材を構成する樹脂中にそのまま練り込んでプラスチックボードやプラスチックフィルムを作製することが可能である。ここで、近赤外線吸収材料の複合ストロンチウム酸化物微粒子を樹脂に練り込むとき、一般的には当該樹脂の融点付近の温度(200〜300℃前後)で加熱混合するが、従来では、近赤外線吸収材料として染料等の有機化合物を用いた場合には、当該有機化合物の耐熱性に制限され、練り込み作業が困難であった。しかし、本発明においては、耐熱性が高い無機酸化物微粒子である複合ストロンチウム酸化物微粒子を用い、樹脂の粉粒体またはペレット、および必要に応じて他の添加剤と均一に溶融混合して、樹脂に複合ストロンチウム酸化物微粒子を均一に分散した混合物を調整するため、通常の樹脂の融点である200℃〜300℃前後での混合も可能となる。
また、当該複合ストロンチウム酸化物微粒子の分散液と、高耐熱性分散剤と、樹脂の粉粒体またはペレットと、必要に応じて他の添加剤とを、リボンブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機、および、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、一軸押出機、二軸押出機等の混練機を使用して、当該分散液から溶剤を除去しながら均一に溶融混合して、樹脂に複合ストロンチウム酸化物微粒子を均一に分散した混合物を調製することができる。混錬時の温度は、使用する樹脂が分解しない温度に維持される。
そのほか、分散処理をしていない複合ストロンチウム酸化物微粒子と高耐熱性分散剤とを樹脂に直接添加し、均一に溶融混合する方法を用いることもできる。
以上のようにして、樹脂に複合ストロンチウム酸化物微粒子が均一に分散した混合物を、ベント式一軸若しくは二軸の押出機で混練し、ペレット状に加工することにより、本実施態様に係る近赤外線吸収材料が分散された樹脂基材用のマスターバッチを得ることができる。前記マスターバッチのペレットは、最も一般的な、溶融押出されたストランドをカットする方法により得ることができる。従って、その形状としては円柱状や角柱状のものを挙げることができる。また、溶融押出物を直接カットするいわゆるホットカット法を採ることも可能である。かかる場合、ペレットは球状に近い形状をとることが一般的である。
このように上述した樹脂基材用のマスターバッチは、いずれの形態または形状を採り得るものである。もっとも、本実施態様に係る樹脂基材を成形するときに、当該マスターバッチの希釈に使用される樹脂成形材料と同一の形態および形状を有していることが好ましい。
当該マスターバッチを用い、公知のTダイ成形法、カレンダー成形法、圧縮形成法、キャスティング法等を用いて成形することで、近赤外線吸収材料が分散された、透明な樹脂基材を形成することができる。
樹脂基材に対する複合ストロンチウム酸化物微粒子の配合量は、当該基材の厚さや、必要とされる光学特性に応じて任意に設定可能である。従って、当該配合量は、得られる近赤外線吸収性光学部材の光学的特性が、波長380nm〜780nmの可視光領域における透過率の最大値が50%以上、波長1000〜1600nmの近赤外線透過率の最小値が30%以下となる範囲で適宜に設定すれば良い。
(b)樹脂および当該樹脂への近赤外線吸収材料の分散方法
本発明に係る第2の態様の近赤外線吸収性光学部材では、シート状またはフィルム状の樹脂が基材に挟持されている。そして、当該シート状またはフィルム状の樹脂の内部には、上述した近赤外線吸収材料である複合ストロンチウム酸化物微粒子が、分散されて含有されている。当該構成とすることにより、近赤外線吸収性光学部材として用いることが出来る。
上述した構成の近赤外線吸収性光学部材を作製するには、樹脂としては、光学的特性、力学的性質、材料コストの観点からポリビニルアセタール樹脂等のビニル系樹脂であることが好ましく、具体的には、ビニル系樹脂の中でもポリビニルブチラール樹脂、もしくは、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。前記ビニル系樹脂を選択し、当該樹脂中に複合ストロンチウム酸化物微粒子を均一分散させた混合物を得て、公知の成形方法、例えば、カレンダーロール法、押出法、キャスティング法、インフレーション法等を用いて、シート状またはフィルム状に成形することができる。
得られたシート状またはフィルム状の樹脂を、樹脂、ガラス等の透明基材で挟持することで、ラミネート化した近赤外線吸収性光学部材も、近赤外線吸収性光学部材として好ましい構成である。
樹脂に対する複合ストロンチウム酸化物微粒子の配合量は、当該樹脂の厚さや、必要とされる光学特性に応じて任意に設定可能である。従って、当該配合量は、得られる近赤外線吸収性光学部材の光学的特性が、波長380nm〜780nmの可視光領域における透過率の最大値が50%以上、波長1000〜1600nmの近赤外線透過率の最小値が30%以下となる範囲で適宜に設定すれば良い。
(c)基材表面上に形成された機能性膜および当該機能性膜への近赤外線吸収材料の分散方法
本発明の第1の態様の近赤外線吸収性光学部材では、基材表面上に形成された、樹脂、金属酸化物から選ばれる1種以上を含む機能性膜の内部に、近赤外線吸収材料である複合ストロンチウム酸化物微粒子を分散させた機能性膜とすることで、近赤外線吸収性光学部材を作製したものである。
また、本発明の第2の態様の近赤外線吸収性光学部材では、シート状またはフィルム状の樹脂を挟持する基材の一方または両方の表面に上記樹脂、金属酸化物から選ばれる1種以上を含む機能性膜が設けられている。そして当該樹脂、金属酸化物から選ばれる1種以上を含む機能性膜の内部に、近赤外線吸収材料である複合ストロンチウム酸化物微粒子が分散させたことにより、近赤外線吸収性光学部材を作製したものである。
即ち、本発明に係る第1の態様の近赤外線吸収性光学部材では、前記基材上に形成された、樹脂、金属酸化物から選ばれる1種以上を含む機能性膜の内部に、近赤外線吸収材料である複合ストロンチウム酸化物微粒子を分散させる。
また、本発明に係る第2の態様の近赤外線吸収性光学部材では、シート状またはフィルム状の樹脂を挟持する基材の、一方または両方の表面に形成されている樹脂、金属酸化物から選ばれる1種以上を含む機能性膜の内部に、近赤外線吸収材料である複合ストロンチウム酸化物微粒子を分散させる。
上述した樹脂、金属酸化物から選ばれる1種以上を含む機能性膜の内部に分散させる複合ストロンチウム酸化物微粒子の配合量は、膜の厚さや、必要とされる光学特性に応じて任意に設定可能である。従って、当該配合量は、得られる近赤外線吸収性光学部材の光学的特性が、波長380nm〜780nmの可視光領域における透過率の最大値が50%以上、波長1000〜1600nmの近赤外線透過率の最小値が30%以下となる範囲で適宜に設定すれば良い。当該特性を確保するために、好ましくは、単位面積あたりの含有量で表した場合、0.01g/m〜10g/mの間であることが良い。含有量が0.01g/mより多ければ、十分な近赤外線吸収効果が現れ、10g/m以下であれば、十分な量の可視光線を透過できる。
上述した複合ストロンチウム酸化物微粒子を、近赤外線吸収材料として適用した場合、波長380nm〜780nmにおける可視光線領域の透過率が高く、波長900nm〜2000nmにおける近赤外線領域の透過率が低くなる。上述したように、当該波長900nm〜2000nmにおける透過率の低下は、前記複合ストロンチウム酸化物中の伝導電子によるプラズモン共鳴に起因した吸収が原因であると考えられる。また、波長380nm〜780nmにおける可視光線領域では、その吸収量が少ないため、視認性が良好に保たれる。この結果、当該近赤外線吸収材料が分散された機能性膜を有する近赤外線吸収性光学部材を、画像表示デバイスの画像表示部前面に設置しても画面表示を十分鮮明に確認することが可能となり、好ましい。
次に、基材表面上に形成される、樹脂、金属酸化物から選ばれる1種以上を含む機能性膜内に近赤外線吸収材料である複合ストロンチウム酸化物微粒子が分散された近赤外線吸収性光学部材の製造方法について、(i)樹脂中への添加方法、(ii)金属酸化物を含む機能性膜中への添加方法、(iii)まとめの順に説明する。
(i)樹脂中への添加方法
機能性膜を構成する樹脂膜内へ、近赤外線吸収材料を分散させる場合について説明する。
まず、複合ストロンチウム酸化物微粒子が液体溶媒中に分散された近赤外線吸収材料の分散液を調製する。この分散液に樹脂媒体を添加した後、ボード状樹脂、フィルム状樹脂、ガラス等の基材表面に適宜コーティングして塗膜を形成し、然る後に溶媒を蒸発させて所定方法により樹脂を硬化させる。これにより、近赤外線吸収材料微粒子が樹脂媒体中に分散した薄膜(樹脂膜)の形成が可能となる。
尚、コーティングの方法は、複合ストロンチウム酸化物微粒子を含む樹脂膜(塗膜)を基材表面上に均一にコートできれば特に限定されず、バーコート法、グラビヤコート法、スプレーコート法、ディップコート法等が例示される。
また、近赤外線吸収材料微粒子を直接バインダー樹脂中に分散させた場合は、当該バインダー樹脂を基材表面に塗布後、溶媒を蒸発させる必要がないため、環境的、工業的に好ましい。
上述した樹脂媒体としては、例えば、紫外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、常温硬化型樹脂、熱可塑性樹脂等が目的に応じて適宜選定可能である。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。これ等の樹脂は、単独使用であっても混合使用であってもよい。
また、金属アルコキシドを用いたバインダーの利用も可能である。当該金属アルコキシドとしては、Si、Ti、Al、Zr等のアルコキシドが代表的である。これ等の金属アルコキシドを用いたバインダーは、加熱等により加水分解・縮重合させることで、酸化物膜を形成することが可能である。
(ii)金属酸化物を含む機能性膜中への添加方法
機能性膜を構成する金属酸化物膜内に近赤外線吸収材料を分散させる場合について説明する。
まず、近赤外線吸収材料である複合ストロンチウム酸化物微粒子と金属酸化物微粒子を、適宜な液体媒体(溶媒)中にて、粉砕と分散とを進めて近赤外線遮蔽材料微粒子の分散液を得る(共分散)。または、当該近赤外線吸収材料である複合ストロンチウム酸化物微粒子と金属酸化物微粒子を別々に液体媒体(溶媒)中にて、粉砕と分散とを進めた液を混合して分散液を得る。または、当該近赤外線吸収材料である複合ストロンチウム酸化物微粒子と金属酸化物微粒子を予め乾式混合した後、適宜な液体媒体(溶媒)中にて、粉砕と分散とを進めて近赤外線吸収材料の分散液を得る。
得られた分散液に樹脂媒体を添加した後、ボード状樹脂、フィルム状樹脂、ガラス等の基材表面へ適宜コーティングして塗膜を形成し、然る後に液体媒体(溶媒)を蒸発させ、適宜な方法により樹脂を硬化させることにより、金属酸化物を含むとともに、近赤外線吸収材料微粒子が樹脂媒体中に分散した薄膜(金属酸化物膜)の形成が可能となる。
所望により、上述した分散液へ樹脂媒体を添加することなく、金属酸化物微粒子および複合ストロンチウム酸化物微粒子が液体媒体(溶媒)中に分散された分散液を調製し、ボード状樹脂、フィルム状樹脂、ガラス等の基材表面に適宜コーティングして塗膜を形成する。然る後に液体媒体(溶媒)を蒸発させて、前記基材表面に金属酸化物微粒子および近赤外線吸収材料微粒子を含む薄膜(金属酸化物膜)を形成させることも出来る。
(iii)まとめ
機能性膜に含まれる金属酸化物は、機能性膜に具備させる特性に合わせて適宜選択される。例えば、錫含有酸化インジウム微粒子(ITO)、アンチモン含有酸化錫微粒子(ATO)を用いた場合は、近赤外線吸収材料である複合ストロンチウム酸化物微粒子と併用することによって、一定の可視光透過率を保ちながら近赤外線吸収特性をさらに向上させることができる。この結果、機能性膜に含まれる全微粒子の使用量を大幅に削減することができるので、近赤外線吸収性光学部材の摩耗強度や耐候性を向上させることが可能となる。また、機能性膜に含まれる各微粒子の添加量を制御することにより、可視光領域の吸収を自由に制御でき、明るさや色調調整等への応用も可能となる。
機能性膜に含まれる金属酸化物として酸化亜鉛微粒子を用いることにより、機能性膜に紫外線遮蔽機能を具備することができる。酸化亜鉛微粒子として、結晶子径が15nm〜20nm、比表面積が25m/g〜55m/g、平均粒子径が19nm〜41nmであり、かつX線回折における(101)ピークの半価幅が0.55以下である微粒子を用いれば、透明性と優れた紫外線遮蔽機能とを発揮する。
一方、機能性膜へ紫外線遮蔽機能を付加するために、酸化セリウム微粒子、酸化チタン微粒子を含有させることも可能である。
上述した近赤外線吸収性光学部材において、前記樹脂、金属酸化物から選ばれる1種以上の構成層の内部に近赤外線吸収材料が分散された機能性膜の膜厚を制御することで、近赤外線の吸収効率を調整することが可能である。更に、前記近赤外線吸収材料の分散液中へ、適宜な結着剤等を配合することで、基材への前記機能性膜の結着性を向上させ、前記近赤外線吸収性光学部材表面における保護機能アップや、近赤外線吸収性光学部材本体への粘着の機能付与を行うのも好ましい構成である。
4)屈折率差を利用した反射防止機能を有する機能性膜
上述した機能性膜を、屈折率を異にする2層以上の膜からなる積層体とし、当該積層体を構成する膜の屈折率差により反射防止機能を備えることができる。この反射防止機能を有する前記積層体を構成する膜の少なくとも1層に、近赤外線吸収材料を分散して、反射防止機能を備えた近赤外線吸収性光学部材を作製することができる。
可視光の透過率が高く、反射率が低い反射防止膜の構成の一例としては、基材上に、屈折率が1.90以上の高屈折率材料からなる被膜と、屈折率が1.56以下の低屈折率材料からなる被膜とを、前記基材側からこの順に交互に偶数層積層してなる反射防止機能を有する積層膜が挙げられる。前記構成の反射防止膜を具備していれば、入射角60°で当該反射防止膜側から入射した光の反射防止膜面での反射が、可視光反射率として6%以下となり、反射防止性能が十分となる。
膜の屈折率差により反射防止機能を備える積層膜の具体例として、上述した高屈折率材料からなる被膜の少なくとも1層が、酸窒化チタン層の単層膜、酸化チタン層と酸化ジルコニウム層とを含む積層膜、または酸窒化チタン層と酸化ジルコニウム層とを含む積層膜のいずれかである場合である。好ましくは、前記高屈折率材料からなる被膜の少なくとも1層が、酸窒化チタン層の単層膜、酸化チタン層と酸化ジルコニウム層との積層膜、または酸窒化チタン層と酸化ジルコニウム層との積層膜のいずれかである場合である。
一方、低屈折率材料からなる被膜は、特に限定されず、従来公知の被膜を用いることができ、具体例としては、酸化ケイ素(SiO)膜が好ましい。低屈折率材料からなる被膜の幾何学的厚さは、5〜220nmであるのが好ましく、20〜140nmであるのがより好ましい。被膜の幾何学的厚さが当該範囲であると、反射防止効果が大きくなり、また、クラックが入りにくいうえ、基体の反りも低減できる。低屈折率材料からなる被膜の屈折率は、1.56以下であればよいが、1.45以上であるのが好ましい。
本発明の近赤外線吸収材料である複合ストロンチウム酸化物微粒子を、前記反射防止機能を有する積層体を構成する膜の少なくとも1層に分散させることによって、反射防止機能と近赤外線吸収性能とを備えた機能性膜を有する近赤外線吸収性光学部材を作製することができる。ここで、本発明の近赤外線吸収材料である複合ストロンチウム酸化物微粒子は、屈折率が2.3以上と高いので、適宜な結着剤等と配合して当該近赤外線吸収材料が分散された被膜を、前記反射防止機能を有する積層体を構成する高屈折率の膜の少なくとも1層として適用可能である。
ここで、上述した結着剤等としては多様なものが適用可能であるが、基材の種類、近赤外線吸収性光学部材への要求特性、近赤外線吸収性光学部材の構成等によって適宜選択すればよい。具体的には、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂、常温硬化樹脂、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解重合物を使用したゾルゲル溶液、各種粘着材等を例示することができる。特に、紫外線硬化樹脂を使用した場合は、製造工程における生産効率が高く、更に当該紫外線硬化樹脂がハードコート性も兼ね備えているので、結着剤として紫外線硬化型ハードコート樹脂を使用することで、基材への耐磨耗性付与と近赤外線吸収機能を一層で達成する機能性膜を有する近赤外線吸収性光学部材を得ることが可能となる。
上述した反射防止機能を有する積層体を構成する膜の少なくとも1層に分散させる複合ストロンチウム酸化物微粒子の配合量は、膜の厚さや膜の層数、必要とされる光学特性に応じて任意に設定可能である。従って、当該配合量は、得られる近赤外線吸収性光学部材の光学的特性が、波長380nm〜780nmの可視光領域における透過率の最大値が50%以上、波長1000〜1600nmの近赤外線透過率の最小値が30%以下となる範囲で適宜に設定すれば良い。当該光学的特性を確保するために、好ましくは、単位面積あたりの含有量で表した場合、0.01g/m〜10g/mの間であることが良い。含有量が0.01g/mより多ければ、十分な近赤外線吸収効果が現れ、10g/m以下であれば、十分な量の可視光線を透過できる。
上述したように、複合ストロンチウム酸化物微粒子を近赤外線吸収材料として適用した場合、波長380nm〜780nmにおける可視光線領域の透過率が高く、波長900nm〜2000nmにおける近赤外線領域の透過率が低くなる。当該波長900nm〜2000nmにおける透過率の低下は、前記複合ストロンチウム酸化物中の伝導電子によるプラズモン共鳴に起因した吸収が原因であると考えられる。また、波長380nm〜780nmにおける可視光線領域では、その吸収量が少ないため、視認性が良好に保たれる。この結果、当該近赤外線吸収材料が分散された、反射防止機能を有する積層体を有する近赤外線吸収性光学部材は、画像表示デバイスの画像表示部前面に設置しても、反射防止機能を有するとともに画面表示を十分鮮明に確認することが可能となり、好ましい。
5)有機化合物や金属錯体等の近赤外線吸収材料の添加
近赤外線吸収材料として、複合ストロンチウム酸化物微粒子と、有機化合物や金属錯体等の近赤外線吸収材料とを併用することも好ましい構成である。上述したように、有機化合物や金属錯体等の近赤外線吸収材料は、耐熱性、耐候性等に難があり単独使用には限界があったが、複合ストロンチウム酸化物微粒子と併用することで、耐候性を向上させる効果が得られることが判明した。このことから、両近赤外線吸収材料の混合使用も好ましい構成である。
例えば、有機化合物や金属錯体等の近赤外線吸収材料は紫外線や熱によって分解するので、紫外線硬化樹脂への分散、高温硬化させる結着剤との併用、溶解性の低いアルコールや水を溶媒として使用すること等、が困難であったが、本発明においては、上述したように安定性が高い複合ストロンチウム酸化物微粒子を適用しているため、紫外線硬化樹脂への練り込みが可能である。前記有機化合物や金属錯体等の近赤外線吸収材料と、複合ストロンチウム酸化物微粒子とを均一に分散した混合物から作製した膜において、紫外線硬化は数秒間以下の照射時間で膜を硬化させることが可能であり、生産効率が非常に高い方法であることから本発明は極めて有用である。
また、近赤外線吸収性光学部材の基材としてガラスを用いる場合は、結着剤としてシリケート等の金属アルコキシドを用いることができる。複合ストロンチウム酸化物微粒子と金属アルコキシドとの混合物を、ガラス上へ均一に塗布し焼成することで、表面強度の強い近赤外線吸収性光学部材を得ることが可能となる。焼成膜の膜厚や、複合ストロンチウム酸化物微粒子の配合量は、当該近赤外線吸収性光学部材の光学的特性が、波長380nm〜780nmの可視光領域における透過率の最大値が50%以上となる範囲で、適宜に設定すれば良い。
6)近赤外線を放出する各種デバイスへの適用
上述した各種態様の近赤外線吸収性光学部材を、機械的方法または接着法等の適宜な方法により、画像表示デバイス本体を始めとする、近赤外線を放出する各種デバイスの前面に設けることで、当該近赤外線を放出する各種デバイスから放出される近赤外線を吸収することができる。この結果、当該近赤外線を放出する各種デバイスから放出される近赤外線によって、周囲の電子機器が誤動作を生じる事態を回避することができる。
また、画像表示デバイス本体の画像表示部前面ガラスを基材として、前記近赤外線吸収材料が分散された機能性膜に、結着剤として粘着性を有する材料を選択することで、近赤外線吸収層を接着層とした近赤外線吸収性光学部材とすることも可能である。
また、上述した結着剤の選定により、画像表示デバイス本体の当該画像表示部前面ガラスへ、前記本発明に係る近赤外線吸収材料の分散液を直接塗布し、溶媒を蒸発後、各種最適な硬化方法を用いることで、画像表示デバイス本体の当該画像表示部前面ガラスを基材とし、当該基材上に近赤外線吸収材料が分散された被膜が設けられた近赤外線吸収性光学部材とすることも可能である。
その他、上述した近赤外線吸収材料の分散液中へ、色調調整を目的とした色調調整成分として、染料や顔料を添加することが可能である。当該色調調整成分を含む近赤外線吸収性光学部材を用いれば、画像表示デバイス本体のコントラスト向上に寄与するような色調調整が可能となり、有効である。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるわけではない。
以下の各実施例において光の透過率測定は、JIS A 5759に準ずる方法で行った(但し、試料をガラスに貼付せず測定を行っている)。透過率測定は分光光度計(日立製作所製U―4000)を使用して、波長300nm〜2600nmの範囲において5nm間隔で測定した。
膜のヘイズ値は、村上色彩技術研究所製のHM−150を用いて、JIS K 7105に基づき測定を行なった。
平均分散粒子径は、動的光散乱法を用いた測定装置(大塚電子株式会社製 ELS−800)により測定し、得られた値を平均し測定値とした。
(実施例1)
炭酸ストロンチウムSrCOを1050℃の真空焼成炉で4時間加熱して、酸化ストロンチウムSrOを得た。また三酸化二バナジウムVと五酸化二バナジウムVとを分子比でV:V=1:1になるように混合して混合物とし、当該混合物を真空中1050℃で40時間加熱して、二酸化バナジウムVOを得た。得られた酸化ストロンチウムと二酸化バナジウムの粉末を原子比1:1で混合して混合物とし、ブレンダーで十分攪拌した後に、5%H/95%Nガスを流しながら加熱し、1500℃で3時間保持して焼成した後、Nガスのみでさらに12時間焼成した。
焼成して得られた粉末はX線回折法でメタバナジン酸ストロンチウムSrVOと同定された。
このSrVO粉末の10重量部、トルエンの85重量部、分散剤の5重量部とを混合し、ビーズミルを用いた解砕分散処理を行ない、平均分散粒子径75nmの分散液(A液)とした。このA液10重量部とハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)10重量部とを混合して近赤外線吸収材料微粒子分散液とした。
尚、平均分散粒子径は、動的光散乱法を用いた測定装置(大塚電子株式会社製 ELS−800)により測定し、得られた分散粒子径の値を平均し測定値とした。
この近赤外線吸収材料微粒子分散液を、PET樹脂フィルム(HPE−50)上にバーコーターを用いて塗布、成膜した。当該成膜の膜厚は、波長380nm〜780nmの可視光領域における透過率の最大値が60〜80%程度となる膜厚とした。得られた被膜を60℃で30秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ膜を得た。
この膜の光学特性を測定したところ、波長380nm〜780nmの可視光での透過率は、波長520nmでの透過率69%を最大として、すべて60%以上であり、可視光領域の光を十分透過している事が分かった、更に、波長780nm〜2600nmの近赤外線においては、波長1450nmでの透過率8%を最小として、透過率が下がっており、熱線遮蔽率が高いことが分かった。さらにヘイズ値は0.8%であり、透明性が極めて高いことが分かった。透過色調は、美しい青色となった。ここで、一般的に画像表示デバイスは青色の輝度が低いため、当該膜が青色の色調を有していることは有効であると考えられる。
得られた膜の透過率プロファイルを図1に示す。
(比較例1)
実施例1において基材として使用した、膜厚50μmPETフィルム自体の光学特性を測定した。
すると、波長550nmで透過率88%を示し、波長380nm〜850nmの透過率の最大値が50%以上であり可視光領域の光を十分透過しているが、さらに、波長1000nmで透過率85%であり、波長1000〜1600nmの近赤外線透過率の最小値が30%を超えており、近赤外線を殆ど透過していることが分かった。
(比較例2)
有機系ジイモニウム系色素の近赤外線吸収染料(日本化薬社製IRG−022)をジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、この溶液10重量部と、ハードコート用紫外線硬化樹脂(固形分100%)10重量部とを混合して塗布液とした。この塗布液を、PET樹脂フィルム(HPE−50)上にバーコーターを用いて塗布、成膜した。この膜を60℃で30秒乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ近赤外線吸収性膜を得た。
得られた膜は、塗布直後(乾燥前)の緑色系の色調から、黄色系の色調に変化していた。これは、紫外線硬化時に当該有機系の近赤外線吸収材料が劣化したためであると考えられる。当該劣化のため、生産性の良い紫外線硬化法を用いて近赤外線吸収性光学部材を製造することは容易ではなく、工業的には製造方法を詳細に選定していく必要があり、簡便なものとはいえないことが判明した。

Claims (12)

  1. 基材と、前記基材表面上に形成された、樹脂、金属酸化物から選ばれる1種以上を含む機能性膜とを有し、前記基材、前記機能性膜から選ばれる1種以上の材料内部に、近赤外線吸収材料が分散された近赤外線吸収性光学部材であって、
    前記近赤外線吸収材料は、平均分散粒子径が800nm以下の、複合ストロンチウム酸化物微粒子を含み、
    波長380nm〜850nmの領域における光の透過率の最大値が50%以上で、波長1000nm〜1600nmの近赤外光領域における光の透過率の最小値が30%以下であることを特徴とする近赤外線吸収性光学部材。
  2. シート状若しくはフィルム状の樹脂が基材に挟持されている、または、シート状若しくはフィルム状の樹脂が基材に挟持されており、前記基材の少なくとも一方の表面に、樹脂、金属酸化物から選ばれる1種以上を含む機能性膜が設けられている、近赤外線吸収性光学部材であって、
    前記樹脂、前記基材、前記機能性膜から選ばれる1種以上に近赤外線吸収材料が分散されており、
    前記近赤外線吸収材料は、平均分散粒子径が800nm以下の、複合ストロンチウム酸化物微粒子を含み、
    波長380nm〜850nmの領域における光の透過率の最大値が50%以上で、波長1000nm〜1600nmの近赤外光領域における光の透過率の最小値が30%以下であることを特徴とする近赤外線吸収性光学部材。
  3. 前記樹脂、金属酸化物から選ばれる1種以上を含む機能性膜が、屈折率を異にする2層以上の膜からなる積層体であって、前記積層体は、前記積層体を構成する膜の屈折率差による反射防止機能を有しており、前記積層体を構成する膜の少なくとも1層に、近赤外線吸収材料が分散されていることを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外線吸収性光学部材。
  4. 前記複合ストロンチウム酸化物が、一般式SrVO3−X(但し、0≦X<1)で表記されるメタバナジン酸ストロンチウムの微粒子、一般式Sr(V,Mo)O3−X(但し、0≦X<1、原子比でV:Mo=1:9〜3:7)で表記されるモリブデンバナジン酸ストロンチウムの微粒子、一般式Sr(Ti,Nb)O3−X(但し、0≦X<1、原子比でTi:Nb=99.95:0.5〜95:5)で表記されるニオブチタン酸ストロンチウムの微粒子、から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の近赤外線吸収性光学部材。
  5. 前記複合ストロンチウム酸化物微粒子の表面が、Si、Ti、Zr、Alから選択される1種類以上の元素を含む酸化物で被覆されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の近赤外線吸収性光学部材。
  6. 前記近赤外線吸収材料が、更に、ジイモニウム系化合物、アミニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、有機金属錯体、シアニン系化合物、アゾ化合物、ポリメチン系化合物、キノン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリフェニルメタン系化合物から選択される1種以上の有機化合物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の近赤外線吸収性光学部材。
  7. 前記基材が、ボード状の樹脂、フィルム状の樹脂、ガラスから選択される1種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外線吸収性光学部材。
  8. 前記基材に用いられる樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアリレレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂から選択される1種以上の樹脂を含むことを特徴とする請求項7に記載の近赤外線吸収性光学部材。
  9. 前記機能性膜が、紫外線硬化樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂、常温硬化樹脂、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解重合物、粘着材から選択される1種類以上の成分を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の近赤外線吸収性光学部材。
  10. 前記シート状またはフィルム状の樹脂が、ポリビニルブチラール樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の近赤外線吸収性光学部材。
  11. 請求項1〜3のいずれかに記載の近赤外線吸収性光学部材であって、
    更に、色調調整成分を含むことを特徴とする近赤外線吸収性光学部材。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の近赤外線吸収性光学部材が、画像表示部前面に設置されていることを特徴とする画像表示デバイス。
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