本発明は、スパイン形成を促進するための化合物および組成物を提供する。本発明の化合物および組成物は、ニューロンの樹状突起スパイン密度を増加させるのに有用であり、ニューロンに対するβアミロイドペプチドの神経毒性を低下させるのにも有用である。
I.定義
本明細書で使用される略語は、化学および生物学の分野における従来の意味を有する。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、要素を記載する文脈における(特に以下の特許請求の文脈における)、「a」および「an」および「the」などの単数冠詞および類似の指示対象は、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈により明らかに矛盾しない限り、単数形と複数形の両方を網羅すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書で別段の指示がない限り、その範囲内に入る各個別の値に個別に言及する簡略な方法として機能することを意図しているにすぎず、各個別の値は、あたかも本明細書に個別に列挙されているかのように明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供される任意のおよび全ての例または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、別段の明記がない限り、実施形態をより良く明らかにすることのみを意図しており、特許請求の範囲を限定しない。明細書の言語は、特許請求されていない何らかの要素が必須であることを示すと解釈されるべきではない。
本明細書で使用される場合、「約」は、当業者によって理解され、使用される文脈に応じてある程度変化するであろう。当業者に明らかでないこの用語の使用がある場合、これが使用される文脈を考慮すると、「約」は特定の用語のプラスまたはマイナス10%までを意味するだろう。
一般に、水素またはHなどの特定の元素への言及は、その元素の全ての同位体を含むことを意図している。例えば、R基が水素またはHを含むと定義されている場合、これは重水素およびトリチウムも含む。したがって、トリチウム、C14、P32およびS35などの放射性同位体を含む化合物は、本発明の範囲内である。このような標識を本発明の化合物に挿入する手順は、本明細書の開示に基づいて当業者には容易に明らかになるであろう。
「アルキル」は、1~10個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を有する一価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。この用語は、例として、メチル(CH3-)、エチル(CH3CH2-)、n-プロピル(CH3CH2CH2-)、イソプロピル((CH3)2CH-)、n-ブチル(CH3CH2CH2CH2-)、イソブチル((CH3)2CHCH2-)、sec-ブチル((CH3)(CH3CH2)CH-)、t-ブチル((CH3)3C-)、n-ペンチル(CH3CH2CH2CH2CH2-)およびネオペンチル((CH3)3CCH2-)などの直鎖および分岐ヒドロカルビル基を含む。
「アルケニル」は、少なくとも2個の炭素原子および少なくとも1個の二重結合を有する直鎖または分岐炭化水素を指す。アルケニルは、C2、C2~3、C2~4、C2~5、C2~6、C2~7、C2~8、C2~9、C2~10、C3、C3~4、C3~5、C3~6、C4、C4~5、C4~6、C5、C5~6およびC6などの任意の数の炭素を含むことができる。アルケニル基は、それだけに限らないが、1、2、3、4、5またはそれを超える数を含めた、任意の適切な数の二重結合を有することができる。アルケニル基の例としては、それだけに限らないが、ビニル(エテニル)、プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブテニル、ブタジエニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、イソペンテニル、1,3-ペンタジエニル、1,4-ペンタジエニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、1,5-ヘキサジエニル、2,4-ヘキサジエニルまたは1,3,5-ヘキサトリエニルが挙げられる。アルケニル基は置換されていてもまたは非置換であってもよい。
「置換アルキル」は、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アミノスルホニル、アミノスルホニルオキシ、アミノスルホニルアミノ、アミジノ、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、カルボキシル、カルボキシルエステル、(カルボキシルエステル)アミノ、(カルボキシルエステル)オキシ、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、置換シクロアルキルオキシ、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、グアニジノ、ハロ、ヒドロキシ、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、複素環、置換複素環、ヘテロシクリルオキシ、置換ヘテロシクリルオキシ ニトロ、-SO3H、置換スルホニル、置換スルホニルオキシおよびチオールからなる群から選択される1~5個、好ましくは1~3個、より好ましくは1個または2個の置換基を有するアルキル基を指す。
「置換アルケニル」は、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アミノスルホニル、アミノスルホニルオキシ、アミノスルホニルアミノ、アミジノ、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、カルボキシル、カルボキシルエステル、(カルボキシルエステル)アミノ、(カルボキシルエステル)オキシ、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、置換シクロアルキルオキシ、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、シクロアルケニルオキシ、置換シクロアルケニルオキシ、グアニジノ、ハロ、ヒドロキシル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、複素環、置換複素環、ヘテロシクリルオキシ、置換ヘテロシクリルオキシ、ニトロ、SO3H、置換スルホニル、置換スルホニルオキシおよびチオールからなる群から選択される1~3個の置換基、好ましくは1個または2個の置換基を有するアルケニル基を指し、但し、いずれのヒドロキシル置換もチオール置換もビニル(不飽和)炭素原子に結合していない。
「アルキレン」は、直鎖または分岐の1~10個の炭素原子、好ましくは1~6個、より好ましくは1~3個の炭素原子を有する二価飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。この用語は、メチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2CH2-)、n-プロピレン(-CH2CH2CH2-)、イソプロピレン(-CH2CH(CH3)-または-CH(CH3)CH2-)、ブチレン(-CH2CH2CH2CH2-)、イソブチレン(-CH2CH(CH3)CH2-)、sec-ブチレン(-CH(CH3)CH2CH2-または-CH2CH2(CH3)CH-)などの基によって例示される。同様に、「アルケニレン」は、それぞれ1個または2個の炭素炭素二重結合を含むアルキレン部分を指す。
「置換アルキレン」は、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、カルボキシルエステル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環、置換複素環およびオキソからなる群から選択される置換基で1~3個の水素原子が置き換えられたアルキレン基を指し、前記置換基は本明細書で定義される。
「アルコキシ」は、アルキルが本明細書で定義される基-O-アルキルを指す。アルコキシには、例として、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、sec-ブトキシおよびn-ペントキシが含まれる。「置換アルコキシ」は、置換アルキルが本明細書で定義される基-O-(置換アルキル)を指す。
「アシル」は、基H-C(O)-、アルキル-C(O)-、置換アルキル-C(O)-、アルケニル-C(O)-、置換アルケニル-C(O)-、シクロアルキル-C(O)-、置換シクロアルキル-C(O)-、シクロアルケニル-C(O)-、置換シクロアルケニル-C(O)-、アリール-C(O)-、置換アリール-C(O)-、ヘテロアリール-C(O)-、置換ヘテロアリール-C(O)-、複素環-C(O)-および置換複素環-C(O)-を指す。アシルは「アセチル」基CH3C(O)-を含む。
「アシルアミノ」は、基-NR47C(O)アルキル、-NR47C(O)置換アルキル、-NR47C(O)シクロアルキル、-NR47C(O)置換シクロアルキル、-NR47C(O)シクロアルケニル、-NR47C(O)置換シクロアルケニル、-NR47C(O)アルケニル、-NR47C(O)置換アルケニル、-NR47C(O)アリール、-NR47C(O)置換アリール、-NR47C(O)ヘテロアリール、-NR47C(O)置換ヘテロアリール、-NR47C(O)複素環および-NR47C(O)置換複素環(式中、R47は水素またはアルキルである)を指す。
「アシルオキシ」は、基アルキル-C(O)O-、置換アルキル-C(O)O-、アルケニル-C(O)O-、置換アルケニル-C(O)O、アリール-C(O)O-、置換アリール-C(O)O-、シクロアルキル-C(O)O-、置換シクロアルキル-C(O)O-、シクロアルケニル-C(O)O-、置換シクロアルケニル-C(O)O-、ヘテロアリール-C(O)O-、置換ヘテロアリール-C(O)O-、複素環-C(O)O-および置換複素環-C(O)O-を指す。
「アミノ」は基-NH2を指す。「置換アミノ」は、基-NR48R49(式中、R48およびR49は水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環、置換複素環、-SO2-アルキル、-SO2-置換アルキル、-SO2-アルケニル、-SO2-置換アルケニル、-SO2-シクロアルキル、-SO2-置換シクロアルキル、-SO2-シクロアルケニル、-SO2-置換シクロアルケニル、-SO2-アリール、-SO2-置換アリール、-SO2-ヘテロアリール、-SO2-置換ヘテロアリール、-SO2-複素環および-SO2-置換複素環からなる群から独立に選択され、R48およびR49は、これらに結合した窒素と一緒になって、必要に応じて結合して、複素環基または置換複素環基を形成し、但し、R48およびR49は両方ともが水素とはならない)を指す。
「アミノカルボニル」は、基-C(O)NR50R51(式中、R50およびR51は水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式および置換複素環からなる群から独立に選択され、R50およびR51は、これらに結合した窒素と一緒になって、必要に応じて結合して、複素環基または置換複素環基を形成する)を指す。
「アミノカルボニルアミノ」は、基-NR47C(O)NR50R51(式中、R47は水素またはアルキルであり;R50およびR51は水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式および置換複素環からなる群から独立に選択され、R50およびR51は、これらに結合した窒素と一緒になって、必要に応じて結合して、複素環基または置換複素環基を形成する)を指す。
「アミノカルボニルオキシ」は、基-O-C(O)NR50R51(式中、R50およびR51は水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式および置換複素環からなる群から独立に選択され、R50およびR51は、これらに結合した窒素と一緒になって、必要に応じて結合して、複素環基または置換複素環基を形成する)を指す。
「アミノスルホニル」は、基-SO2NR50R51(式中、R50およびR51は水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式および置換複素環からなる群から独立に選択され、R50およびR51は、これらに結合した窒素と一緒になって、必要に応じて結合して、複素環基または置換複素環基を形成する)を指す。
「アミノスルホニルオキシ」は、基-O-SO2NR50R51(式中、R50およびR51は水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式および置換複素環からなる群から独立に選択され、R50およびR51は、これらに結合した窒素と一緒になって、必要に応じて結合して、複素環基または置換複素環基を形成する)を指す。
「アミノスルホニルアミノ」は、基-NR47SO2NR50R51(式中、R47は水素またはアルキルであり;R50およびR51は水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式および置換複素環からなる群から独立に選択され、R50およびR51は、これらに結合した窒素と一緒になって、必要に応じて結合して、複素環基または置換複素環基を形成する)を指す。
「アミジノ」は、基-C(=NR52)NR50R51(式中、R50、R51およびR52は水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環式および置換複素環からなる群から独立に選択され、R50およびR51は、これらに結合した窒素と一緒になって、必要に応じて結合して、複素環基または置換複素環基を形成する)を指す。
「アリール」または「Ar」は、単環(例えば、フェニル)または複数の縮合した環(例えば、ナフチルもしくはアントリル)を有する6~14個の炭素原子の一価の芳香族炭素環式基を指す。縮合した環は芳香族であってもなくてもよいが(例えば、2-ベンゾオキサゾリノン、2H-1,4-ベンゾオキサジン-3(4H)-オン-7-イルなど)、但し、結合点が芳香族炭素原子にある。好ましいアリール基には、フェニルおよびナフチルが含まれる。
「置換アリール」は、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アミノスルホニル、アミノスルホニルオキシ、アミノスルホニルアミノ、アミジノ、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、カルボキシル、カルボキシルエステル、(カルボキシルエステル)アミノ、(カルボキシルエステル)オキシ、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、置換シクロアルキルオキシ、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、シクロアルケニルオキシ、置換シクロアルケニルオキシ、グアニジノ、ハロ、ヒドロキシ、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、複素環、置換複素環、ヘテロシクリルオキシ、置換ヘテロシクリルオキシ、ニトロ、SO3H、置換スルホニル、置換スルホニルオキシおよびチオールからなる群から選択される1~5個、好ましくは1~3個、より好ましくは1個または2個の置換基で置換されたアリール基を指す。
「アリーレン」は、単環または複数の縮合した環を有する6~14個の炭素原子の二価の芳香族炭素環式基を指す。「置換アリーレン」は、アリール基について定義される1~5個、好ましくは1~3個、より好ましくは1個または2個の置換基を有するアリーレンを指す。
「アリールオキシ」は、アリールが本明細書で定義される通りである基-O-アリールを指す。例示的なアリールオキシ基には、フェノキシおよびナフトキシが含まれる。「置換アリールオキシ」は、基-O-(置換アリール)を指す。
「カルボニル」は、二価の基-C(O)-(すなわち、-C(=O)-)を指す。
「カルボキシル」または「カルボキシ」は、-COOH、またはその塩を指す。
「カルボキシルエステル」または「カルボキシエステル」は、基-C(O)(O)-アルキル、-C(O)(O)-置換アルキル、-C(O)O-アルケニル、-C(O)(O)-置換アルケニル、-C(O)(O)-アリール、-C(O)(O)-置換アリール、-C(O)(O)-シクロアルキル、-C(O)(O)-置換シクロアルキル、-C(O)(O)-シクロアルケニル、-C(O)(O)-置換シクロアルケニル、-C(O)(O)-ヘテロアリール、-C(O)(O)-置換ヘテロアリール、-C(O)(O)-複素環および-C(O)(O)-置換複素環を指す。
「(カルボキシルエステル)アミノ」は、基-NR47C(O)(O)-アルキル、-NR47C(O)(O)-置換アルキル、-NR47C(O)O-アルケニル、-NR47C(O)(O)-置換アルケニル、-NR47C(O)(O)-アリール、-NR47C(O)(O)-置換アリール、-NR47C(O)(O)-シクロアルキル、-NR47C(O)(O)-置換シクロアルキル、-NR47C(O)(O)-シクロアルケニル、-NR47C(O)(O)-置換シクロアルケニル、-NR47C(O)(O)-ヘテロアリール、-NR47C(O)(O)-置換ヘテロアリール、-NR47C(O)(O)-複素環および-NR47C(O)(O)-置換複素環を指す。
「(カルボキシルエステル)オキシ」は、基-O-C(O)O-アルキル、-O-C(O)O-置換アルキル、-O-C(O)O-アルケニル、-O-C(O)O-置換アルケニル、-O-C(O)O-アリール、-O-C(O)O-置換アリール、-O-C(O)O-シクロアルキル、-O-C(O)O-置換シクロアルキル、-O-C(O)O-シクロアルケニル、-O-C(O)O-置換シクロアルケニル、-O-C(O)O-ヘテロアリール、-O-C(O)O-置換ヘテロアリール、-O-C(O)O-複素環および-O-C(O)O-置換複素環を指す。
「シアノ」は基-CNを指す。
「シクロアルキル」は、3~12個の環原子または示される原子数を含む飽和または部分不飽和の単環式、縮合二環式または架橋多環式環集合体を指す。シクロアルキルは、C3~6、C4~6、C5~6、C3~8、C4~8、C5~8、C6~8、C3~9、C3~10、C3~11およびC3~12などの任意の数の炭素を含むことができる。飽和単環式シクロアルキル環には、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロオクチルが含まれる。飽和二環式および多環式シクロアルキル環には、例えば、ノルボルナン、[2.2.2]ビシクロオクタン、デカヒドロナフタレンおよびアダマンタンが含まれる。「シクロアルケニル」は、環内に1またはそれを超える二重結合もしくは三重結合を有する部分的に不飽和のシクロアルキル基を指す。代表的な部分的に不飽和のシクロアルキル基には、それだけに限らないが、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン(1,3-および1,4-異性体)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン(1,3-、1,4-および1,5-異性体)、ノルボルネンおよびノルボルナジエンが含まれる。シクロアルキルが飽和単環式C3~8シクロアルキルである場合、例示的な基には、それだけに限らないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが含まれる。シクロアルキルが飽和単環式C3~6シクロアルキルである場合、例示的な基には、それだけに限らないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが含まれる。シクロアルキルおよびシクロアルケニル基は置換されていてもまたは非置換であってもよい。
「置換シクロアルキル」および「置換シクロアルケニル」は、オキソ、チオキソ、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アミノスルホニル、アミノスルホニルオキシ、アミノスルホニルアミノ、アミジノ、アリール、置換アリール、アリールオキシ、置換アリールオキシ、カルボキシル、カルボキシルエステル、(カルボキシルエステル)アミノ、(カルボキシルエステル)オキシ、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、置換シクロアルキルオキシ、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、シクロアルケニルオキシ、置換シクロアルケニルオキシ、グアニジノ、ハロ、ヒドロキシ、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、置換ヘテロアリールオキシ、複素環、置換複素環、ヘテロシクリルオキシ、置換ヘテロシクリルオキシ、ニトロ、SO3H、置換スルホニル、置換スルホニルオキシおよびチオールからなる群から選択される1~5個、好ましくは1~3個の置換基を有するシクロアルキルまたはシクロアルケニル基を指す。
「シクロアルキルオキシ」は、-O-シクロアルキルを指す。「置換シクロアルキルオキシ」は、-O-(置換シクロアルキル)を指す。
「シクロアルケニルオキシ」は、-O-シクロアルケニルを指す。「置換シクロアルケニルオキシ」は、-O-(置換シクロアルケニル)を指す。
「グアニジノ」は、基-NHC(=NH)NH2を指す。
「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを指す。
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は、基-OHを指す。
「ヘテロアリール」は、環原子のうちの1~5個がN、OまたはSなどのヘテロ原子である、5~16個の環原子を含む単環式または縮合二環式もしくは三環式芳香環集合体を指す。それだけに限らないが、B、Al、SiおよびPを含む追加のヘテロ原子も有用となり得る。それだけに限らないが、-S(O)-および-S(O)2-など、ヘテロ原子が酸化されていてもよい。ヘテロアリール基は、3~6、4~6、5~6、3~8、4~8、5~8、6~8、3~9、3~10、3~11または3~12個の環員などの任意の数の環原子を含むことができる。1、2、3、4もしくは5、または1~2、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5、3~4もしくは3~5などの任意の適切な数のヘテロ原子をヘテロアリール基に含めることができる。ヘテロアリール基は、5~8個の環員および1~4個のヘテロ原子、または5~8個の環員および1~3個のヘテロ原子、または5~6個の環員および1~4個のヘテロ原子、または5~6個の環員および1~3個のヘテロ原子を有することができる。ヘテロアリール基には、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-および1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾールおよびイソオキサゾールなどの基が含まれ得る。ヘテロアリール基は、フェニル環などのヘテロ原子を含んでも含まなくてもよい芳香環系に縮合して、それだけに限らないが、インドールおよびイソインドールなどのベンゾピロール、キノリンおよびイソキノリンなどのベンゾピリジン、ベンゾピラジン(キノキサリン)、ベンゾピリミジン(キナゾリン)、フタラジンおよびシンノリンなどのベンゾピリダジン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドリジンまたはベンゾチエンを含むメンバーを形成することもできる。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を含んでも含まなくてもよい非芳香環系に縮合することもでき、但し、結合点が芳香族ヘテロアリール基の原子を介する。例えば、ヘテロアリール基の窒素および/または硫黄環原子が、必要に応じて酸化されて、N-オキシド(N→O)、スルフィニルまたはスルホニル部分を提供する。一定の非限定的な例としては、ピリジニル、ピロリル、インドリル、チオフェニル、オキサゾリル、チアゾリル(thizolyl)およびフラニルが挙げられる。他のヘテロアリール基には、ビピリジンなどの、結合によって結合したヘテロアリール環が含まれる。ヘテロアリール基は置換されていてもまたは非置換であってもよい。
「置換ヘテロアリール」は、置換アリールについて定義される置換基の同じ群からなる群から選択される1~5個、好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個の置換基で置換されたヘテロアリール基を指す。
「ヘテロアリールオキシ」は、-O-ヘテロアリールを指す。「置換ヘテロアリールオキシ」は、基-O-(置換ヘテロアリール)を指す。
「複素環」または「複素環式」または「ヘテロシクロアルキル」または「ヘテロシクリル」は、3~12個の環員ならびに1~4個のN、OおよびSのヘテロ原子を有する飽和または部分飽和環系を指す。それだけに限らないが、B、Al、SiおよびPを含む追加のヘテロ原子も有用となり得る。それだけに限らないが、-S(O)-および-S(O)2-など、ヘテロ原子が酸化されていてもよい。ヘテロシクロアルキル基は、3~6、4~6、5~6、3~8、4~8、5~8、6~8、3~9、3~10、3~11または3~12個の環員などの任意の数の環原子を含むことができる。1、2、3もしくは4、または1~2、1~3、1~4、2~3、2~4もしくは3~4などの任意の適切な数のヘテロ原子をヘテロシクロアルキル基に含めることができる。ヘテロシクロアルキル基には、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、キヌクリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン(1,2-、1,3-および1,4-異性体)、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、オキサン(テトラヒドロピラン)、オキセパン、チイラン、チエタン、チオラン(テトラヒドロチオフェン)、チアン(テトラヒドロチオピラン)、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、ジオキソラン、ジチオラン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサンまたはジチアンなどの基が含まれ得る。ヘテロシクロアルキル基を芳香環系または非芳香環系に縮合してそれだけに限らないが、インドリンを含むメンバーを形成することもできる。縮合環系では、1またはそれを超える環がシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであることができ、但し、結合点が非芳香環を介する。一実施形態では、複素環式基の窒素および/または硫黄原子が、必要に応じて酸化されて、N-オキシド、スルフィニルまたはスルホニル部分を提供する。ヘテロシクロアルキル基は非置換であっても置換されていてもよい。例えば、ヘテロシクロアルキル基は、とりわけC1~6アルキル、オキソ(=O)、ニトロ(-NO2)またはスルホニル(-S(O)2-)で置換されていてもよい。
「置換複素環」または「置換ヘテロシクロアルキル」または「置換ヘテロシクリル」は、1~5個、好ましくは1~3個の置換シクロアルキルについて定義されるのと同じ置換基で置換されたヘテロシクリル基を指す。
「ヘテロシクリルオキシ」は、基-O-ヘテロシクリルを指す。「置換ヘテロシクリルオキシ」は、基-O-(置換ヘテロシクリル)を指す。
ヘテロシクリルおよびヘテロアリールの例としては、それだけに限らないが、アゼチジン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、ジヒドロインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソオキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、フタルイミド、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン、チアゾール、チアゾリジン、チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、モルホリニル、チオモルホリニル(チアモルホリニルとも呼ばれる)、1,1-ジオキソチオモルホリニル、ピペリジニル、ピロリジンおよびテトラヒドロフラニルが挙げられる。
「スピロシクロアルキル」および「スピロ環系」は、以下の構造によって例示されるスピロ結合(環の唯一の共通員である単一原子によって形成される結合)を有するシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル環を有する3~10個の炭素原子の二価環状基を指す:
「置換スルホニル」は、基-SO2-アルキル、-SO2-置換アルキル、-SO2-アルケニル、-SO2-置換アルケニル、-SO2-シクロアルキル、-SO2-置換シクロアルキル、-SO2-シクロアルケニル、-SO2-置換シクロアルケニル、-SO2-アリール、-SO2-置換アリール、-SO2-ヘテロアリール、-SO2-置換ヘテロアリール、-SO2-複素環、-SO2-置換複素環を指す。置換スルホニルには、メチル-SO2-、フェニル-SO2-および4-メチルフェニル-SO2-などの基が含まれる。
「置換スルホニルオキシ」は、基-OSO2-アルキル、-OSO2-置換アルキル、-OSO2-アルケニル、-OSO2-置換アルケニル、-OSO2-シクロアルキル、-OSO2-置換シクロアルキル、-OSO2-シクロアルケニル、-OSO2-置換シクロアルケニル、-OSO2-アリール、-OSO2-置換アリール、-OSO2-ヘテロアリール、-OSO2-置換ヘテロアリール、-OSO2-複素環および-OSO2-置換複素環を指す。
本明細書で使用される場合、「糖類」という用語は、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類などの糖を指す。単糖類には、それだけに限らないが、グルコース、リボースおよびフルクトースが含まれる。二糖類には、それだけに限らないが、スクロースおよびラクトースが含まれる。オリゴ糖類は、好ましくはα結合を通して一緒に結合した2~10個の糖を指す。オリゴ糖類の例としては、マルトース、ラクトース、スクロースなどが挙げられる。多糖類には、それだけに限らないが、セルロース、ヘミセルロースおよびリグノセルロースまたはデンプンが含まれる。本発明で有用な糖類または糖には、それだけに限らないが、そのアルドールおよびピラノース型、ならびにそのDおよびL異性体を含めた、グルコース、グルクロン酸、イズロン酸、ガラクトース、フコース、グルコサミン、N-アセチルグルコサミン、フルクトース、シアル酸などの任意のおよび全ての天然に生じる糖が含まれる。
置換された環は、1またはそれを超える縮合および/もしくはスピロ環で置換され得る。このような縮合環には、縮合シクロアルキル、縮合ヘテロシクリル、縮合アリール、縮合ヘテロアリール環が含まれ、これらの環の各々は非置換であっても置換されていてもよい。このようなスピロ環には、縮合シクロアルキルおよび縮合ヘテロシクリルが含まれ、これらの環の各々は非置換であっても置換されていてもよい。
上に定義される基は、任意の適切な数および種類の置換基によって必要に応じて置換され得る。代表的な置換基には、それだけに限らないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルコキシ、-OR’、=O、-OC(O)R’、-(O)R’、-O2R’、-ONR’R”、-OC(O)NR’R”、=NR’、=N-OR’、-NR’R”、-NR”C(O)R’、-NR’-(O)NR” R”’、-NR”C(O)OR’、-NH-(NH2)=NH、-NR’C(NH2)=NH、-NH-(NH2)=NR’、-SR’、-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-NR’S(O)2R”、-N3および-NO2が含まれる。R’、R”およびR”’は、それぞれ独立に、水素、非置換C1~6アルキルなどの非置換アルキルを指す。あるいは、R’およびR’’、またはR’’およびR”’は、同じ窒素に結合している場合、これらが結合している窒素と合わせて、上に定義されるヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリール環を形成する。
別段の指示がない限り、本明細書で明示的に定義されていない置換基の命名法は、官能基の末端部分、引き続いて結合点に向かって隣接する官能基を命名することによって到達する。例えば、置換基「アルコキシカルボニルアルキル」は、基(アルコキシ)-C(O)-(アルキル)-を指す。
上に定義される全ての置換された基で、それ自身に対するさらなる置換基で置換基を定義することによって到達されるポリマー(例えば、置換アリール基でそれ自身が置換された置換基として置換アリール基を有する置換アリール等)は本明細書に含めることを意図していないことが理解される。このような場合、このような置換基の最大数は3である。換言すれば、上記定義の各々は、例えば、置換アリール基が-置換アリール-(置換アリール)-置換アリールに限定されるという限定によって制約される。
上記の定義は、許容されない置換パターン(例えば、5つのフルオロ基で置換されたメチル)を含むことを意図していないことが理解される。このような許容されない置換パターンは、当業者に周知である。
「互変異性体」は、互変異性化または互変異性の化学反応によって容易に変換される有機化合物の構成異性体を指す。この反応は、通常、単結合と隣接する二重結合の切り替えを伴う水素原子またはプロトンの形式的な移動をもたらす。互変異性は、構造異性の特殊なケースであり、急速な相互変換のために、互変異性体は、一般に同じ化合物と見なされる。互変異性化が可能な溶液では、互変異性体の化学平衡に達するだろう。互変異性体の正確な比率は、それだけに限らないが、温度、溶媒およびpHを含むいくつかの因子に依存する。例示的な一般的な互変異性対には、それだけに限らないが、ケトンとエノール、エナミンとイミン、ケテンとイノール、ニトロソとオキシム、アミドとイミド酸、ラクタムとラクチム(複素環におけるアミドとイミド酸互変異性)、エナミンとエナミンおよび還元糖のアノマーが挙げられる。
「立体異性体」は、同じ分子式および結合原子の配列(すなわち、構成)を有しているが、空間内での原子の3次元配向が異なる異性体分子を指す。これは、同じ分子式を共有するが結合接続またはこれらの順序が異なる、構造異性体と対照的である。定義により、互いの立体異性体である分子は同じ構造異性体を表す。エナンチオマーは、反射によって互いに関連する2つの立体異性体であり、重ね合わせることができない鏡像である。一方の全ての不斉中心が、他方の立体配置と反対である。互いのエナンチオマーである2つの化合物は、偏光を回転させる方向および他の化合物の様々な光学異性体と相互作用する方法を除いて、同じ物理的特性を有する。反射動作を通して関連しないジアステレオマーおよび立体異性体は、互いの鏡像ではない。これらには、メソ化合物、シスおよびトランス(EおよびZ)異性体、非エナンチオマー光学異性体が含まれる。ジアステレオマーが同じ物理的特性を持つことはほとんどない。本開示に関して、立体異性体は、エナンチオマー、ジアステレオマーまたはその両方を指し得る。立体異性体はしばしば部分的に精製された形態で得られる。立体異性体を有する本発明の化合物について、このような部分的に精製された形態には、60%、70%、80%、90%または95%の1つの支配的な立体異性体を有するものが含まれる。
本発明の化合物は、本発明の化合物の酸塩または塩基塩などの塩形態であってもよい。「薬学的に許容され得る塩」は、本明細書に記載の化合物に見られる特定の置換基に応じて、酸または塩基で調製される活性化合物の塩を指す。負電荷基に対する対イオンとして作用する薬学的に許容され得る塩の例示的な例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、またはマグネシウム塩、または他の周知の塩が挙げられる。正電荷基に対する対イオンとして作用する薬学的に許容され得る塩の例としては、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸などのカルボン酸が挙げられる。薬学的に許容され得る塩は非毒性であると理解される。適切な薬学的に許容され得る塩に関する追加の情報は、参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1985に見出すことができる。
本発明の化合物は、非溶媒和形態、または無水形態、ならびに水和形態を含む溶媒和形態で存在することができる。水和物は、その名が推定させるように、水の分子と本発明の各分子との複合体形成を指す。溶媒和物は、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどの有機溶媒との複合体形成を指す。一般に、溶媒和形態は非溶媒和形態と同等であり、本発明の範囲に包含されることが意図されている。本発明の一定の化合物は、複数の結晶または非晶質形態で存在し得る。一般に、全ての物理的形態(例えば、無水物、溶媒和物および水和物)は、本発明により企図される使用について同等であり、本発明の範囲内にあることが意図されている。
「位置異性体」または「構成異性体」は、原子の数および種類が同じであり、したがって分子量が同じであるが、原子が異なって結合している、異なる化合物を指す。
本明細書で使用される場合、「βアミロイド」という用語は、アミロイド前駆体タンパク質から酵素的に切断されることによって、原線維、斑および/またはアミロイド沈着の形成に関与する36~43個のアミノ酸のペプチドを指す。この用語は、例えば構造変異体などの、アミロイド様タンパク質と実質的な類似性を有するペプチドも包含する。場合によっては、ペプチドは自然に発生する、または合成的に構築できる。βアミロイドという用語は、アミロイド形成タンパク質およびアミロイド様形態を生成するタンパク質も含む。
本明細書で使用される場合、「実質的な類似性」は、2つのペプチド配列が最適に整列された場合に、少なくとも50%の配列同一性、または少なくとも60%の配列同一性、または少なくとも70%の配列同一性、または少なくとも80%の配列同一性、または少なくとも90%の配列同一性、または少なくとも95%の配列同一性、またはそれを超える配列同一性(例えば99%の配列同一性)を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置で、保存的アミノ酸置換によって異なる。保存的アミノ酸置換は、類似の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群はグリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンであり;脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群はセリンおよびスレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群はアスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群はフェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群はリジン、アルギニンおよびヒスチジンであり;硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群はメチオニンおよびシステインを含む。好ましい保存的アミノ酸置換群はバリン-ロイシン-イソロイシン;フェニルアラニン-チロシン;リジン-アルギニン;アラニン-バリン;およびアスパラギン-グルタミンである。場合によっては、同一ではない残基位置も、非天然アミノ酸またはその誘導体を含むペプチド類似体で構成される。類似体は典型的には、しばしば、保存的置換のために、1つ、2つまたは数個の位置で天然に存在するペプチドと異なる。一部の類似体は、非天然アミノ酸またはNもしくはC末端アミノ酸の1、2もしくは数個の位置の修飾も含む。非天然アミノ酸の例は、D-アミノ酸、α,α-二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、乳酸、4-ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、ε-N,N,N-トリメチルリジン、ε-N-アセチルリジン、O-ホスホセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、ω-N-メチルアルギニンおよびイソアスパラギン酸である。
本明細書で使用される場合、化合物に関して本明細書で使用される「立体化学的に純粋な」という用語は、化合物またはその組成物が、化合物の主に1つの立体異性体を含み、その化合物の他の立体異性体(単数または複数)を実質的に含まないことを意味する。例えば、1つのキラル中心を有する化合物の立体化学的に純粋な組成物は、その化合物の反対のエナンチオマーを実質的に含まないだろう。2つまたはそれを超えるキラル中心を有する化合物の立体化学的に純粋な組成物は、その化合物の他のジアステレオマーを実質的に含まないだろう。典型的な立体化学的に純粋な化合物は、約80重量%またはそれを超える化合物の1つの立体異性体と約20重量%またはそれ未満のその化合物の他の立体異性体(単数または複数)を含む。例えば、種々の実施形態では、立体化学的に純粋な化合物が、90重量%またはそれを超える化合物の1つの立体異性体と約10重量%またはそれ未満のその化合物の他の立体異性体(単数または複数);約95重量%またはそれを超える化合物の1つの立体異性体と約5重量%またはそれ未満のその化合物の他の立体異性体(単数または複数);約97重量%またはそれを超える化合物の1つの立体異性体と約3重量%またはそれ未満のその化合物の他の立体異性体(単数または複数);約98重量%またはそれを超える化合物の1つの立体異性体と約2重量%またはそれ未満のその化合物の他の立体異性体(単数または複数)、および約99重量%またはそれを超える化合物の1つの立体異性体と約1重量%またはそれ未満のその化合物の他の立体異性体(単数または複数)を含む。
「投与すること」または「投与」という用語は、患者または対象への経口投与、坐剤としての投与、局所接触、非経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、病巣内、鼻腔内もしくは皮下投与、髄腔内投与、または徐放装置、例えば、ミニ浸透圧ポンプの移植を含む任意の投与形態を指す。適切な投与経路は、当業者に周知である。
「治療上有効量」、「治療上有効用量」、「治療上十分な量」、「治療上十分な用量」または「有効または十分な量または用量」は、本発明の化合物またはその組成物がそのために投与される治療効果をもたらす、本発明の化合物またはその組成物の量または用量を指す。例えば、治療上有効量または用量は、樹状突起スパイン形成を増加させるのに十分な量、ならびに/または異常なタンパク質構造、タンパク質凝集体またはタンパク質ミスフォールディング、例えばアミロイド斑および/もしくはアミロイド沈着の神経毒性を低下させる量であり得る。このような沈着は、神経疾患または状態などのβアミロイドタンパク質に関連する疾患または状態の患者のリスクまたは存在と相関する。場合によっては、このような疾患または状態は、アミロイドベースの疾患または状態と呼ばれる。これらの疾患および状態には、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの神経疾患、例えば、軽度認知障害、レビー小体型認知症、ダウン症候群、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(オランダ型)およびグアムパーキンソン-認知症複合などの認知記憶能力の喪失を特徴とする疾患および/または状態が含まれる。βアミロイドに基づくまたは関連する他の疾患および/または状態は、進行性核上性麻痺、多発性硬化症、クロイツフェルト・ヤコブ病、HIV関連認知症、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、封入体筋炎(IBM)、成年型糖尿病、老人性心アミロイドーシス、内分泌腫瘍、ならびに皮質視力障害を含む視覚皮質;緑内障を含む前房および視神経;アミロイド様沈着による白内障を含む水晶体;眼アミロイドーシスを含む硝子体;原発性網膜変性および黄斑変性、特に加齢黄斑変性を含む網膜;視神経ドルーゼン、視神経症および視神経炎を含む視神経;および格子状ジストロフィを含む角膜などの眼の様々な組織を標的とするアミロイド関連眼疾患を含む他の疾患、ならびに単独のまたは全体としての脳損傷による認知喪失(例えば、繰返し振盪による累積的脳損傷)である。
本発明の化合物またはその組成物の正確な投与量および投与頻度は、処置される状態の重症度、患者の年齢、体重および性別、ならびに当技術分野で周知の他の因子に依存し、公知の技術を使用して当業者によって確認できるだろう(例えば、Lieberman、Pharmaceutical Dosage Forms(第1~3巻、1992);Lloyd、The Art、Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Pickar、Dosage Calculations(1999);およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、2003、Gennaro編、Lippincott、Williams&Wilkins参照)。感作細胞では、治療上有効用量が、しばしば、非感作細胞の従来の治療上有効用量よりも低くなり得る。
本発明の化合物および/または組成物は、単独でまたは1もしくはそれを超えるさらなる治療薬と組み合わせて使用することができる。組み合わせて使用する場合、本発明の化合物および/または組成物を、1もしくはそれを超えるさらなる治療薬と同時に(すなわち、同時点で)または1もしくはそれを超えるさらなる治療薬と連続して投与することができる。連続投与は、対象への治療薬(単数または複数)および本発明の化合物(単数または複数)/組成物の種々の投与順序を包含することを意図している。
「スパイン形成」という用語は、ニューロン上の新たな樹状突起スパインの成長を指す。
本明細書で使用される場合、「樹状突起」という用語は、ニューロン細胞の分岐した伸長部を指す。樹状突起は、典型的には、隣接するニューロンの軸索から送信された電気化学シグナルの受信を担う。「樹状突起スパイン(dendritic spine)」または「樹状突起スパイン(dendrite spine)」という用語は、ニューロン細胞(例えば、樹状突起)上の原形質隆起を指す。いくつかの実施形態では、樹状突起スパインが、小頭(例えば、頭)で終わり得る膜状の頸部を有するものとして記載され得、その形状:頭のない、細い、ずんぐりした、キノコまたは枝分かれに従って分類される。したがって、樹状突起スパイン密度は、ニューロン細胞の単位長さ当たりの樹状突起スパインの総数を指す。
「樹状突起スパイン形成」などの用語は、樹状突起スパインの数の増加または樹状突起スパインの発達の増加をもたらす過程を指す。「樹状突起スパイン形態」などの用語は、樹状突起スパインの物理的特性(例えば、形状および構造)を指す。
「患者」または「それを必要とする対象」は、本明細書で提供される化合物またはその医薬組成物の投与によって処置することができる状態を患っているまたはその状態になりやすい生存生物を指す。非限定的な例としては、ヒト、他の哺乳類および他の非哺乳類動物が挙げられる。
「処置する」、「処置すること」および「処置」は、軽減;寛解;症状の減少などの任意の客観的もしくは主観的パラメータを含む損傷、病態もしくは状態の処置の成功または改善の任意の兆候;損傷、病態もしくは状態を患者にとってより許容できるものにすること;変性もしくは減退の速度を遅らせること;変性の最終点をあまり衰弱性でなくすること;患者の身体的もしくは精神的健康を改善することを指す。症状の処置または改善は、身体検査、神経精神医学検査および/または精神医学的評価の結果を含む、客観的または主観的パラメータに基づくことができる。
「障害」または「状態」は、本発明の化合物で処置することができる患者または対象の存在状態または健康状態を指す。障害または状態の例としては、それだけに限らないが、ニューロンの低い樹状突起スパイン密度、ニューロンに対するβアミロイドペプチドの神経毒性、および外傷性脳損傷が挙げられる。
「外傷性脳損傷」または「TBI」は、外傷が脳に損傷を引き起こす場合の後天性の脳損傷または頭部外傷を指す。外傷には、例えば、頭部後外傷、衝撃外傷、ならびに例えば、事故によって引き起こされる外傷および/またはスポーツ傷害、脳震盪傷害、穿通性頭部外傷、脳腫瘍、脳卒中、心臓発作、髄膜炎、ウイルス性脳炎、および脳から酸素を奪う他の状態などの頭部への他の外傷が含まれる。特定の実施形態では、外傷が外部の物理的な力である。別の実施形態では、外傷が、爆発への直接的または間接的曝露によって引き起こされるTBIを指す、「爆風による外傷性脳損傷(blast-induced traumatic brain injury)」である。
「鈍力衝撃」は、頭が物体に突然激しくぶつかったが、その物体が頭蓋骨を突き破らない場合の脳損傷を指す。
「脳震盪」は、自然に急速に回復する神経機能の一時的な障害をもたらす外傷性脳損傷の軽度の形態を指し、一般的に、この状態の結果としての脳に対する著しい構造的変化はない。脳震盪は一般に、頭部への強打または他の力強い事象があった場合に発生すると考えられており、30分未満の意識消失をもたらす。
「評価」および「試験」は外傷性脳損傷の重症度を決定するために使用される評価を指し、その詳細は本明細書に記載される。
「外傷性脳損傷の症状を軽減するのに十分な量」は、患者の外傷性脳損傷の症状の軽減を観察するのに必要な外傷性脳傷害を患っている患者に投与される化合物の量を指す。外傷性脳損傷の「症状」は、患者の血液中のバイオマーカーのレベル上昇を含み得る。外傷性脳損傷を患っている患者の血液中で上昇するバイオマーカーの例は、GFAPおよびUCH-L1である。外傷性脳損傷の他の症状は、以下の機能的ドメインの欠損である:身体的、視覚、聴覚、神経行動、認知コミュニケーションおよび睡眠。バイオマーカーおよび各機能的ドメインの詳細は本明細書に記載される。外傷性脳損傷症状を有する患者に投与される十分な量の化合物は、十分な量の化合物を投与されていない外傷性脳損傷を有する患者の統計学的に有意なコホートと比較して症状の少なくとも20%~30%の減少を引き起こすだろう。
本明細書に例示的に記載される実施形態は、本明細書に具体的に開示されていない任意の1またはそれを超える要素、1またはそれを超える制限の非存在下で適切に実施され得る。したがって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」等の用語は、限定的ではなく広範に読まれるべきである。さらに、本明細書で使用される用語および表現は説明の用語として使用されており、限定の用語として使用されておらず、このような用語および表現の使用には、表示および記載される機能の任意の均等物またはその一部を除外する意図はなく、特許請求される技術の範囲内で種々の修正が可能であることが認められる。さらに、「~から本質的になる」という句は、具体的に列挙される要素、ならびに特許請求される技術の基本的なおよび新規の特性に実質的に影響しない追加の要素を含むと理解される。「からなる」という句は、指定されていないあらゆる要素を除外する。
本開示の特徴または態様がマーカッシュ群に関して記載される場合、当業者であれば、それにより、本開示がマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関しても記載されていると認識するだろう。一般的な開示に入るより狭い種および下位概念グループの各々も本発明の一部を形成する。これは、削除された材料が本明細書に具体的に列挙されているかどうかにかかわらず、属から何らかの主題を除去する但し書きまたは否定的な制限を伴う本発明の一般的な説明を含む。
当業者によって理解されるように、特に書面による説明の提供に関して、任意のおよび全ての目的のために、本明細書に開示される全ての範囲は、任意のおよび全ての可能な部分範囲ならびにこれらの部分範囲の組み合わせも包含する。任意の列挙される範囲を、同範囲を少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1等に分解することを十分に記載および可能にするものとして容易に認識できる。非限定的な例として、本明細書で論じられる各範囲は、下3分の1、中3分の1および上3分の1等に容易に分解することができる。また、当業者によって理解されるように、「~まで」、「少なくとも」、「を超える」、「未満」などの全ての言語は、列挙される数を含み、その後、上に論じられるように部分範囲に分解することができる範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲は各個々のメンバーを含む。
II.化合物
いくつかの実施形態では、本発明は、式Iおよび/もしくは式IAの化合物:
(式中、
下付き添字nおよびpは、0、1または2から独立に選択され;
各R
1はハロ、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アミノ、置換アミノ、アリール、置換アリール、カルボキシル、カルボキシルエステル、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、ヒドロキシル、チオールおよびニトロからなる群から独立に選択され;
Aは1~4個のヘテロ原子を有するアリーレンまたはヘテロアリーレンであり;
Wは-O-、-S-、-SO-、-S(O)
2-および-NR
12-からなる群から選択され、R
12は、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルおよび置換ヘテロシクロアルキルからなる群から選択され;
Xは-O-、-S-、-SO-、-S(O)
2-および-NR
12-からなる群から選択され、R
12は上に定義される通りであり、但し、Aがアリーレンであり、Yが-S-または-NR
12-である場合、Xは-S-ではなく;
Yは-O-、-S-、-SO-、S(O)
2-および-NR
12-からなる群から選択され、R
12は上に定義される通りであり;
Zは-N(CH
3)
2CH
2CH
2OC(O)CH
3および-(CH
2CH(R
13)O)
q-Tからなる群から選択され、下付き添字qは1~100から選択される整数であり、R
13は水素およびメチルからなる群から選択され、Tは水素、アルキル、置換アルキル、-L-単糖および-L-オリゴ糖からなる群から選択され、Lは結合、ホスフェートおよびサルフェートからなる群から選択される)
あるいはその薬学的に許容され得る塩、溶媒和物および/またはN-オキシドを提供する。
いくつかの実施形態では、本発明は、式II、式III、式IV、式Vおよび/もしくは式VIによる化合物:
(式中、
R
1、R
12、A、Y、Z、nおよびpは上に定義される通りであり;
下付き添字mは0、1または2から選択される)
またはその薬学的に許容され得る塩、溶媒和物および/もしくはN-オキシドを提供する。
いくつかの実施形態では、Aがピリジニレン、1,3-イミダゾリレン、フラニレン、ピロリレン、チオフェニレン、インドリレンなどから選択されるヘテロアリール(ヘテロアリーレン)基である。いくつかの実施形態では、Aがフェニレンまたはナフチレン(naphthalyene)などのアリール(アリーレン)基である。
いくつかの実施形態では、本発明は、
から選択される式Iおよび/もしくは式IAの化合物、またはその薬学的に許容され得る塩および/もしくは溶媒和物を提供する。
いくつかの実施形態では、本発明は、式VIIの化合物:
(式中、下付き添字nおよびpは0~4から独立に選択され;下付き添字qは1~20から選択される整数であり;各R
1およびR
2は、ハロ、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、アシルアミノ、アミノカルボニル、アミノスルホニル、アミノ、置換アミノ、アリール、置換アリール、カルボキシル、カルボキシルエステル、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、ヒドロキシル、スルホニル、置換スルホニル、チオール、チオアルキルおよびニトロからなる群から独立に選択される)
またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物を提供する。
本発明のいくつかの実施形態では、式(VII)の各R1およびR2が、-F;-Cl;-Br;-I;置換または非置換アルキル(例えば、C1~C8、C1~C6、C1~C4またはC1~C2);置換または非置換アルケニル(例えば、ビニル(エテニル)、プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブテニル、ブタジエニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、イソペンテニル、1,3-ペンタジエニルまたは1,4-ペンタジエニル);置換または非置換アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、sec-ブトキシまたはn-ペントキシ);アシル;アシルアミノ;アミノカルボニル(例えば、アミドまたは置換アミド);アミノスルホニル(例えば、スルホンアミドまたは置換スルホンアミド);アミノ、置換アミノ;置換または非置換アリール(例えば、フェニル、ナフチル、アントリル、2-ベンゾオキサゾリノンまたは2H-1,4-ベンゾオキサジン-3(4H)-オン-7-イル);カルボキシル;カルボキシルエステル;シアノ;置換または非置換シクロアルキル(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、ノルボルナン、[2.2.2]ビシクロオクタン、デカヒドロナフタレン、アダマンチン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン(1,3-、1,4-および1,5-異性体)、ノルボルネンまたはノルボルナジエン);置換または非置換ヘテロアリール(例えば、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾールまたはイソオキサゾール);置換または非置換ヘテロシクリル(例えば、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、キヌクリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、オキサン、オキセパン、チイラン、チエタン、チオラン、チアン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、ジオキソラン、ジチオラン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサンまたはジチアン);ヒドロキシル;スルホニル、置換スルホニル;チオール;チオアルキル;およびニトロからなる群から独立に選択される。
本発明のいくつかの実施形態では、式(VII)の各R1およびR2が、-F;-Cl;-Br;-I;置換または非置換アルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル);置換または非置換アルケニル(例えば、ビニル(エテニル)、プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブテニルまたはブタジエニル);置換または非置換アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、sec-ブトキシまたはn-ペントキシ);アシル;アシルアミノ;アミノカルボニル(例えば、アミドまたは置換アミド);アミノスルホニル(例えば、スルホンアミドまたは置換スルホンアミド);アミノ、置換アミノ;置換または非置換のアリール(例えば、フェニル、ナフチル、アントリルまたは2-ベンゾオキサゾリノン);カルボキシル;カルボキシルエステル;シアノ;置換または非置換シクロアルキル(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル);ヒドロキシル;スルホニル、置換スルホニル;チオール;チオアルキル;およびニトロからなる群から独立に選択される。
本発明のいくつかの実施形態では、式(VII)の各R1およびR2が、-F;-Cl;-Br;-I;メチル;エチル;n-プロピル、イソプロピル;置換低級アルキル;ビニル;プロペニル;メトキシ;エトキシ;n-プロポキシ;アシル;アシルアミノ;アミノカルボニル;アミノスルホニル;アミノ;置換アミノ;フェニル;カルボキシル;カルボキシルエステル;シアノ;シクロプロピル;シクロブチル;シクロペンチル;シクロヘキシル;ヒドロキシル;スルホニル;置換スルホニル;チオール;チオアルキル;およびニトロからなる群から独立に選択される。
本発明のいくつかの実施形態では、式(VII)の各R1およびR2が、ハロ、-CH3-OH、-CH2SO2NH2、-SO2NH2、-CH2CH3、シクロペンチル、-CF3、-CN、-CHCH2、-CH2CHCH2、フェニル、-CO2H、-CH2CO2H、-CH2CONH2、-COOCH3、-COCH3、-(CH2)2OCH3、-CONH2、-CON(CH3)2、-CH2SO2N(CH3)2、-OCH3、-OCF3、-OCH(CH3)2、-N(CH3)2、-NHCOCH3、-NO2、-SCH3、-SO2CH3および-SO2N(CH3)2からなる群から独立に選択される。
本発明のいくつかの実施形態では、式(VII)の各R1が、ハロ、-OH、-CN、フェニル、-CHCH2、-COCH3、-COOCH3、-CH2SO2NH2、-NHCOCH3、-N(CH3)2、-SCH3および-SO2NH2からなる群から独立に選択され;式(VII)の各R2が、ハロ、-CH3、-CH2CH3、シクロペンチル、-CF3、-CN、-CHCH2、-CH2CHCH2、フェニル、-CO2H、-CH2CO2H、-CH2CONH2、-COOCH3、-COCH3、-(CH2)2OCH3、-CONH2、-CON(CH3)2、-CH2SO2N(CH3)2、-OCH3、-OCF3、-OCH(CH3)2、-N(CH3)2、-NHCOCH3、-NO2、-SCH3、-SO2CH3および-SO2N(CH3)2からなる群から独立に選択される。
いくつかの実施形態では、式(VII)の下付き添字nおよびpが0~4から独立に選択される。いくつかの実施形態では、下付き添字nおよびpが独立に、0、1、2、3または4である。いくつかの実施形態では、下付き添字nおよびpが独立に、0、1、2または3である。いくつかの他の実施形態では、下付き添字nおよびpが独立に、0、1または2である。いくつかの実施形態では、下付き添字nおよびpが独立に、0または1である。いくつかの実施形態では、下付き添字nおよびpが独立に0または1であり、但し、下付き添字nおよびpが両方ともが1とはならない。いくつかの実施形態では、下付き添字nが1であり、下付き添字pが0である。他の実施形態では、下付き添字nが0であり、下付き添字pが1である。いくつかの実施形態では、下付き添字nおよびpが両方とも0である。
いくつかの実施形態では、式(VII)の下付き添字qが1~20の整数である。いくつかの実施形態では、下付き添字qが1~15、2~14、3~13、4~12、5~11、6~10または7~9の整数である。いくつかの実施形態では、下付き添字qが2~12、2~10、2~8、2~6、2~5または2~4の整数であり得る。他の実施形態では、下付き添字qが1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20であり得る。いくつかの実施形態では、下付き添字qが2~8の整数であり得る。他の実施形態では、下付き添字qが3~6の整数であり得る。他の実施形態では、下付き添字qが4~6の整数であり得る。他の実施形態では、下付き添字qが4または6であり得る。
いくつかの実施形態では、本発明は、式VIIの化合物:
(式中、下付き添字nおよびpは0、1または2から独立に選択され;下付き添字qは2~8から選択される整数であり;各R
1およびR
2は、ハロ、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、アシルアミノ、アミノカルボニル、アミノスルホニル、アミノ、置換アミノ、アリール、置換アリール、カルボキシル、カルボキシルエステル、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、ヒドロキシル、スルホニル、置換スルホニル、チオール、チオアルキルおよびニトロからなる群から独立に選択される)
またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物を提供する。
本発明のいくつかの実施形態では、式(VII)の下付き添字qが3~6から選択される整数であり得;下付き添字nおよびpが0、1または2から独立に選択され;R1が、ハロ、-OH、-CN、フェニル、-CHCH2、-COCH3、-COOCH3、-CH2SO2NH2、-NHCOCH3、-N(CH3)2、-SCH3および-SO2NH2からなる群から選択され;R2が、ハロ、-CH3、-CH2CH3、シクロペンチル、-CF3、-CN、-CHCH2、-CH2CHCH2、フェニル、-CO2H、-CH2CO2H、-CH2CONH2、-COOCH3、-COCH3、-(CH2)2OCH3、-CONH2、-CON(CH3)2、-CH2SO2N(CH3)2、-OCH3、-OCF3、-OCH(CH3)2、-N(CH3)2、-NHCOCH3、-NO2、-SCH3、-SO2CH3および-SO2N(CH3)2からなる群から選択される。
本発明のいくつかの実施形態では、式(VII)の下付き添字qが3~6から選択される整数であり得;下付き添字nおよびpが0または1から独立に選択され、但し、下付き添字nおよびpが両方とも1ではなく;R1が、ハロ、-OH、-CN、フェニル、-CHCH2、-COCH3、-COOCH3、-CH2SO2NH2、-NHCOCH3、-N(CH3)2、-SCH3および-SO2NH2からなる群から選択され;R2が、ハロ、-CH3、-CH2CH3、シクロペンチル、-CF3、-CN、-CHCH2、-CH2CHCH2、フェニル、-CO2H、-CH2CO2H、-CH2CONH2、-COOCH3、-COCH3、-(CH2)2OCH3、-CONH2、-CON(CH3)2、-CH2SO2N(CH3)2、-OCH3、-OCF3、-OCH(CH3)2、-N(CH3)2、-NHCOCH3、-NO2、-SCH3、-SO2CH3および-SO2N(CH3)2からなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、式(VII)の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物が、以下から選択され得る:
本発明のいくつかの実施形態では、式(VII)の各R1が、ハロ、-CH3、-OCH3、フェニルおよび-CNからなる群から独立に選択され;式(VII)の各R2が、ハロ、-CH3、-CF3、-OCH3、-OCF3、-CHCH2、-CH2CHCH2、フェニルおよび-NO2からなる群から独立に選択される。
いくつかの実施形態では、本発明は、式VIIaによる化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物:
(式中、下付き添字qは4または6から選択される整数であり;R
3、R
4、R
5およびR
6は、水素、ハロ、-CH
3および-OCH
3からなる群から独立に選択され;R
7、R
8、R
9およびR
10は、水素、ハロ、-CH
3、-CF
3、-OCH
3、-OCF
3、フェニル、-NO
2からなる群から独立に選択され;前記R基のうちの少なくとも6つは水素である)
を提供する。
いくつかの実施形態では、式(VII)または(VIIa)の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物が、式:
を有する。
いくつかの実施形態では、式(VII)または(VIIa)の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物が、式:
を有する。
III.合成
本発明の化合物は、当業者に知られている種々の方法(Comprehensive Organic Transformations、Richard C.Larock、1989参照)または一般的に周知の合成法の適切な組み合わせによって、容易に入手可能な出発材料から調製することができる。本発明の化合物の合成に有用な技術は、関連技術の当業者には容易に明らかであると同時に利用可能である。以下の議論は、本発明の化合物を組み立てる際に使用可能な多様な方法のいくつかを例示するために提供される。しかしながら、議論は、本発明の化合物の調製に有用な反応または反応順序の範囲を定義することを意図していない。当業者であれば、化合物を作製する他の方法および代替の反応条件(例えば、反応温度、時間、反応物質のモル比、溶媒、圧力など)が本発明で有用であることを理解するだろう。
さらに、当業者に明らかであるように、一定の官能基が望ましくない反応を受けるのを防ぐために、従来の保護基が必要な場合がある。種々の官能基に適した保護基、ならびに特定の官能基を保護および脱保護するための適切な条件は、当技術分野で周知である。例えば、多数の保護基が、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts、Protecting Groups in Organic Synthesis、第3版、Wiley、ニューヨーク、1999ならびにそこに引用されている参考文献に記載されている。
本発明の化合物が1またはそれを超えるキラル中心を含む場合、このような化合物を、純粋な立体異性体として(すなわち、個々のエナンチオマーとしてまたは立体異性体濃縮混合物として)調製または単離できる。このような全ての立体異性体(および濃縮混合物)は、別段の指示がない限り、本発明の範囲内に含まれる。純粋な立体異性体(または濃縮混合物)は、例えば、当技術分野で周知の光学活性出発材料または立体選択的試薬を使用して調製することができる。あるいは、そのような化合物のラセミ混合物は、例えば、キラルカラムクロマトグラフィー、キラル分割剤などを使用して分離することができる。
本発明の化合物の調製に使用される出発材料および試薬は、例えば、Sigma-Aldrich(米国ミズーリ州セントルイス)、Bachem(米国カリフォルニア州トーランス)およびEmka-Cheme(米国ミズーリ州セントルイス)などの商業的供給業者から入手可能である。あるいは、本発明の化合物の調製に使用される出発材料および試薬は、FieserおよびFieserのReagents for Organic Synthesis、第1~28巻(Wiley、2016);MarchのAdvanced Organic Chemistry、第7版(Wiley、2013);RoddのChemistry of Carbon Compounds、第1~5巻および補遺(Elsevier Science Publishers、1989);ならびにLarockのComprehensive Organic Transformations、第2版(Wiley、1999)などの参考文献に示される手順に従って、当業者に知られている方法によって調製される。反応の出発材料および中間体は、所望であれば、それだけに限らないが、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなどを含む従来技術を使用して単離および精製することができる。このような材料は、物理定数の測定およびスペクトルデータの取得を含む、従来手段を使用して特性評価できる。
本発明の化合物は、スキーム1に要約され、以下に記載される以下のアプローチによって調製され得る。スキーム1に示されるように、化合物(i)のヒドロキシル基を任意の適切な試薬によって脱プロトン化して対応する酸化物(ii)を形成できる(式中、R
1、A、X、nおよびpは本明細書に定義される通りであり、Eは対陽イオン(例えば、ナトリウム、リチウムおよびカリウム)である)。例えば、化合物(i)を金属ナトリウム、水素化ナトリウムまたはリチウムジイソプロピルアミド(LDA)などの強塩基と適切な条件下で接触させると、対応する酸化物(ii)が得られる。あるいは、適切な非プロトン性溶媒中の炭酸カリウムの使用を使用することができる。次いで、得られた酸化物(ii)を化合物(iii)(例えば、2-ハロエタノールまたは2~10個の反復オキシエチレン基のα-ハロωヒドロキシルポリオキシエチレン化合物)と接触させて、化合物(iv)を形成することができる(式中、qは本明細書に定義される通りであり、Qはハロ基または脱離基(例えば、クロロ、ブロモおよびヨード、またはトリフレート、トシレートおよびメシレート)である)。例えば、市販の(2-クロロエトキシ)エタノール(Sigma Aldrich)、2-[(2-クロロエトキシ)-2-(エトキシ)エタノール](Sigma Aldrich)などの化合物を化合物(iii)として使用してもよい。得られた生成物(iv)を、従来手段によって回収し、結晶化、クロマトグラフィー、沈殿などによって精製することができる。場合によっては、化合物(iv)のオキシアルキレン鎖を、アグリコンを生成するための標準的な手順を使用して、糖またはオリゴ糖の付加を介して修飾できる。
スキーム1
出発化合物(i)は、公知の合成経路および市販の出発試薬を使用して得ることができる。例えば、スキーム2で以下に示されるように、化合物(i-a)を、鈴木カップリング条件下で、市販の2-ブロモベンゾ[d]チアゾール(i-c)および市販の6-ブロモピリジン-3-オール(i-b)から製造することができる。ヒドロキシル基を必要に応じて保護することができる化合物(i-b)を、対応するボロン酸カップリングパートナーに変換し、(i-c)との従来の鈴木条件に供して、6-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)ピリジン-3-オール(i-a)を得る。鈴木反応の条件は文献中に十分にある。
スキーム2
当業者であれば、化合物(i)または化合物(i-a)の水素以外の、1またはそれを超えるR1基を置換するための化学結合の合成方法および原理を理解するだろう。あるいは、水素以外の1またはそれを超えるR1置換を有する(i)および(i-a)の化合物は市販されている。例えば、2-ブロモベンゾイミダゾール、2-ブロモベンゾオキサゾールおよびこれらの置換バージョンなど、他の出発材料が周知であり、市販されている。式IAの化合物は、例えば、2-ブロモインドール、2-ブロモベンゾフラン、2-ブロモベンゾチオフェンおよびこれらの置換バージョンなどの試薬から始めて、式Iの化合物と同様に調製することができる。
本発明のいくつかの具体的な実施形態では、式(VII)および式(VIIa)の化合物を、スキーム3に要約され、以下に記載される以下のアプローチによって調製することができる。スキーム3に示されるように、o-アミノチオフェノール(i)とp-ヒドロキシベンズアルデヒド(ii)の直接縮合、それに続くシッフ塩基中間体の酸化的環化により、対応する2-置換ベンゾチアゾール(iii)を形成することは、任意の適切な酸性試薬によって触媒され得る(式中、R
1、R
2、nおよびpは、式(VII)および式(VIIa)について本明細書に定義される通りである)。例えば、適切な条件下、適切なルイス酸触媒(例えば、FeCl
3、ZrOCl
2、In(OTf)
3、Yb(OTf)
3またはSc(OTf)
3)の存在下で化合物(i)と(ii)を組み合わせると、対応する2置換ベンゾチアゾール(iii)が得られる。次いで、得られたベンゾチアゾール(iii)を化合物(iv)(例えば、2-置換ポリエチレングリコール化合物)と接触させて、化合物(v)を形成することができる(式中、qは本明細書に定義される通りであり、Qはハロ基または脱離基(例えば、クロロ、ブロモおよびヨード、またはトリフレート、トシレートおよびメシレート)である)。例えば、市販の(2-クロロエトキシ)エタノール(Sigma Aldrich)、2-[(2-クロロエトキシ)-2-(エトキシ)エタノール](Sigma Aldrich)などの化合物を化合物(iv)として使用してもよい。得られた生成物(v)を、従来手段によって回収し、結晶化、クロマトグラフィー、沈殿などによって精製することができる。
スキーム3
IV.医薬組成物
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の本発明の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩、溶媒和物、および/もしくはN-オキシド、ならびに1またはそれを超える薬学的に許容され得る賦形剤を含む医薬組成物を提供する。本発明によって提供される医薬組成物は、有効成分が本明細書に記載される式I、式IA、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VIIおよび/または式VIIaの化合物である組成物を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物が、式(VII)もしくは式(VIIa)の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物を含有する。
本発明の医薬組成物は、治療上有効量の有効成分を含有する。本発明のいくつかの実施形態では、有効成分の治療上有効量は、その意図した目的を達成するのに有効な量である。本発明のいくつかの実施形態では、有効成分の治療上有効量が、ニューロンの樹状突起スパイン密度を増加させるのに有効な量であり得る。本発明のいくつかの実施形態では、有効成分の治療上有効量が、ニューロンに対するβアミロイドペプチドの神経毒性を低下させるのに有効な量であり得る。本発明のいくつかの実施形態では、有効成分の治療上有効量が、外傷性脳損傷の症状を軽減するのに有効な量であり得る。
特定の用途に有効な実際の量は、とりわけ、処置される状態(すなわち、低い樹状突起スパイン密度、βアミロイドペプチド神経毒性、外傷性脳損傷)に依存し得る。状態または疾患(すなわち、低い樹状突起スパイン密度、βアミロイドペプチド神経毒性、外傷性脳損傷)を処置する方法で投与される場合、このような組成物は、所望の結果を達成するのに有効な量の有効成分を含有する。本発明の化合物の治療上有効量の決定は、特に本明細書の詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
このような組成物は、多種多様な経口、非経口および局所剤形で調製および投与することができる。経口製剤には、患者による摂取に適した錠剤、丸剤、散剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ロゼンジ、カシェ、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤等が含まれる。本発明の化合物を、注射、すなわち、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内または腹腔内により投与することもできる。また、本明細書に記載される化合物を、吸入により、例えば鼻腔内に投与することができる。さらに、本発明の化合物を経皮投与することができる。本発明の化合物を、坐剤、ガス注入、粉末およびエアロゾール製剤を含む眼内、膣内、および直腸内経路によって投与することもできる(ステロイド吸入剤の例については、Rohatagi、J.Clin.Pharmacol.35:1187-1193、1995;Tjwa、Ann.Allergy Asthma Immunol.75:107-111、1995参照)、したがって、本発明はまた、薬学的に許容され得る賦形剤と、本発明の化合物または本発明の化合物の薬学的に許容され得る塩のいずれかとを含む医薬組成物も提供する。
本発明の化合物から医薬組成物を調製するために、薬学的に許容され得る賦形剤は、固体または液体のいずれかであり得る。固体製剤には、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ、坐剤および分散性顆粒剤が含まれる。固体賦形剤は、希釈剤、香味剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤またはカプセル化材料としても作用し得る1またはそれを超える物質であり得る。製剤化および投与のための技術の詳細は、科学文献および特許文献に詳しく記載されており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Maack Publishing Co、Easton PA(「Remington’s」)の最新版を参照されたい。
散剤では、賦形剤が微粉化された固体であり、微粉化された本発明の化合物との混合物である。錠剤では、本発明の化合物が、必要な結合特性を有する賦形剤と適切な割合で混合され、所望の形状およびサイズに圧縮される。散剤および錠剤は、好ましくは5%または10%~70%の本発明の化合物を含有する。
組成物は、典型的には、従来の医薬賦形剤を含み、他の薬剤、担体、アジュバント、希釈剤、組織透過促進剤、可溶化剤などをさらに含んでもよい。好ましくは、組成物は、約0.01%~約90%、好ましくは約0.1%~約75%、より好ましくは約0.1%~50%、さらにより好ましくは約0.1%~10重量%の本発明の化合物またはその組み合わせを含有し、残りは適切な医薬賦形剤からなる。適切な賦形剤は、当技術分野で周知の方法、例えば、上記のRemington’s Pharmaceutical Sciencesによって、特定の組成物および投与経路に合わせて調整することができる。
適切な固体賦形剤には、それだけに限らないが、炭酸マグネシウム;ステアリン酸マグネシウム;リン酸カルシウム;ケイ酸カルシウム;タルク;ペクチン;デキストラン、デキストリンおよびシクロデキストリン包接複合体;低融点ワックス;カカオ脂;炭水化物;それだけに限らないが、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖;それだけに限らないが、トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモまたは他の植物由来のデンプンを含むデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;ならびにアラビア、トラガントおよびアカシアを含むゴム;ならびにそれだけに限らないが、ゼラチン、コラーゲンを含むタンパク質;微結晶セルロース、水、生理食塩水、シロップ、エチルセルロースおよびCarbopol、例えばCarbopol 941、Carbopol 980、Carbopol 981等のポリアクリル酸;滑沢剤;鉱油;湿潤剤;乳化剤;懸濁化剤;ヒドロキシ安息香酸メチル、エチルおよびプロピルなど(すなわち、パラベン)の保存剤;無機および有機の酸および塩基などのpH調整剤;甘味剤;および香味剤;生分解性ポリマービーズが含まれる。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、アルギネートまたはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤または可溶化剤を添加してもよい。
薬学的に許容され得る賦形剤は、例えば、本発明の化合物を安定化する、もしくはそれらの吸収を調節するよう作用する生理学的に許容され得る化合物、または所望であれば他の賦形剤を含み得る。生理学的に許容され得る化合物には、例えば、グルコース、スクロースもしくはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸もしくはグルタチオンなどの抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質または他の安定剤もしくは賦形剤が含まれる。当業者であれば、生理学的に許容され得る化合物を含む薬学的に許容され得る賦形剤の選択が、例えば、本発明の化合物の投与経路および本発明の化合物の特定の物理化学的特性に依存することを知っているだろう。
一般に、このような賦形剤は、使用される投与量および濃度でレシピエントに対して非毒であるべきである。通常、このような組成物の調製は、治療薬と緩衝剤、アスコルビン酸などの抗酸化剤、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、グルコース、マルトース、スクロースもしくはデキストリンを含む炭水化物、EDTAなどのキレート剤、グルタチオン、ならびに他の安定剤および賦形剤などと組み合わせることを必要とする。中性緩衝生理食塩水または非特異的血清アルブミンと混合した生理食塩水が、例示的な適切な希釈剤である。
糖衣錠コアには、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに適切な有機溶媒または溶媒混合物も含有し得る濃縮糖溶液などの適切なコーティングが施される。製品識別のために、または化合物の量(すなわち、投与量)を特徴付けるために、染料または顔料を錠剤または糖衣錠コーティングに添加してもよい。本発明の医薬製剤は、例えば、ゼラチンでできた押し込み型カプセル剤、ならびにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールなどのコーティングでできた軟密封カプセル剤を使用して経口的に使用することもできる。押し込み型カプセル剤は、ラクトースまたはデンプンなどの充填剤または結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、および必要に応じて安定剤と混合された本発明の化合物を含有することができる。軟カプセル剤では、本発明の化合物を、安定剤を含むまたは含まない、脂肪油、流動パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解または懸濁してもよい。
坐剤を調製するために、脂肪酸グリセリドまたはカカオ脂の混合物などの低融点ワックスを最初に融解し、本発明の化合物を撹拌などによってその中に均質に分散させる。次いで、融解した均質な混合物を、好都合なサイズの型に注ぎ入れ、冷却させ、それによって固化させる。
液体製剤には、液剤、懸濁剤および乳剤、例えば水または水/プロピレングリコール溶液が含まれる。非経口注射の場合、液体製剤をポリエチレングリコール水溶液の溶液に製剤化できる。
経口使用に適した水性液剤は、本発明の化合物を水に溶解し、所望のように適切な着色剤、香味剤、安定剤および増粘剤を添加することによって調製することができる。経口使用に適した水性懸濁剤は、微粉化された化合物を天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントゴムおよびアカシアゴムなどの粘性材料、ならびに天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導された部分エステルの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導された部分エステルの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)などの分散剤または湿潤剤を含む水に分散させることによって作製することができる。水性懸濁剤は、エチルまたはn-プロピルp-ヒドロキシベンゾエートなどの1またはそれを超える保存剤、1またはそれを超える着色剤、1またはそれを超える香味剤、およびスクロース、アスパルテームまたはサッカリンなどの1またはそれを超える甘味剤も含有することができる。製剤を、浸透圧に合わせて調整することができる。
また、使用直前に経口投与用の液体製剤に変換することを意図した固体製剤も含まれる。このような液体形態には、液剤、懸濁剤および乳剤が含まれる。これらの製剤は、本発明の化合物に加えて、着色剤、香味剤、安定剤、緩衝剤、人工および天然甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有し得る。
油性懸濁剤は、本発明の化合物を、落花生油、オリーブ油、ゴマ油もしくはヤシ油などの植物油、または流動パラフィンなどの鉱油、またはこれらの混合物に懸濁することによって製剤化することができる。油性懸濁剤は、蜜蝋、固形パラフィンまたはセチルアルコールなどの増粘剤を含有することができる。グリセロール、ソルビトールまたはスクロースなどの甘味剤を添加して、口当たりの良い経口製剤を提供することができる。これらの製剤は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加によって保存できる。注射用油ビヒクルの例として、Minto、J.Pharmacol.Exp.Ther.281:93-102、1997を参照されたい。本発明の医薬製剤は、水中油型乳剤の形態であってもよい。油相は、上記の植物油もしくは鉱油、またはこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤には、アカシアゴムおよびトラガントゴムなどの天然に存在するゴム、大豆レシチンなどの天然に存在するホスファチド、ソルビタンモノレエートなどの脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導されるエステルまたは部分エステル、ならびにポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどのこれらの部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物が含まれる。乳剤は、シロップおよびエリキシルの製剤のように、甘味剤および香味剤を含有することもできる。このような製剤は、粘滑剤、保存剤または着色剤も含有することができる。
以下は、本発明の化合物(すなわち、有効成分)を含有する代表的な医薬組成物である。例えば、有効成分は、式(VII)もしくは式(VIIa)の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物であり得る。いくつかの実施形態では、有効成分が、式:
による化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物、またはこれらの組み合わせであり得る。
表1の成分を完全に混合し、単一割線錠剤に打錠する。
表2の成分を完全に混合し、ハードシェルゼラチンカプセルに充填する。
表3の成分を混合して、経口投与用の懸濁剤を形成する。
表5の成分を混合して、例えば2.5gの総重量を有する坐剤を形成する。Witepsol(登録商標)H-15は、飽和植物性脂肪酸トリグリセリドの混合物であり、市販されている(例えば、ニューヨークのRiches-Nelson,Inc.)。
哺乳動物に投与される本明細書に記載される化合物の治療上有効量の投与量および頻度(単回または複数回投与)は、種々の因子、例えば哺乳動物が別の状態もしくは疾患を患っているかどうか;その投与経路;レシピエントのサイズ、年齢、性別、健康、体重、ボディマス指数および食餌;処置されている疾患の症状の性質および程度、併用処置の種類、処置されている疾患からの合併症、または他の健康関連の問題に応じて変化し得る。他の治療レジメンまたは薬剤を、本発明の方法および化合物と組み合わせて使用することができる。確立された投与量(例えば、頻度および持続時間)の調整および操作は、十分に当業者の能力の範囲内である。
本明細書に記載されるいずれの化合物についても、治療上有効量を、細胞培養アッセイから最初に決定することができる。標的濃度は、本明細書に記載される方法または当技術分野で知られている方法を使用して測定される、本明細書に記載される方法を達成することができる活性化合物(単数または複数)の濃度である。
当技術分野で周知のように、ヒトで使用するための治療上有効量を動物モデルから決定することもできる。例えば、動物で有効であることが分かっている濃度を達成するために、ヒト用の用量を製剤化することができる。上記のように、化合物の有効性を監視し、投与量を上下に調整することによって、ヒトでの投与量を調整することができる。上記の方法および他の方法に基づいて、ヒトで最大の有効性を達成するために用量を調整することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
投与量は、患者および使用される化合物の要件に応じて変化し得る。本発明の文脈において、患者に投与される用量は、経時的に患者に有益な治療反応をもたらすのに十分であるべきである。いくつかの実施形態では、患者に投与される化合物の用量が、患者のニューロンの樹状突起スパイン密度を増加させるのに有効または十分であり得る。いくつかの実施形態では、患者に投与される化合物の用量が、患者のニューロンに対するβアミロイドペプチドの神経毒性を低下させるのに有効または十分であり得る。いくつかの実施形態では、患者に投与される化合物の用量が、患者の外傷性脳損傷の症状を軽減するのに有効または十分であり得る。用量のサイズは、何らかの有害な副作用の存在、性質および程度によって決定することができる。特定の状況に対する適切な投与量の決定は、開業医の技能の範囲内である。一般的に、処置は化合物の最適用量よりも少ない、より少ない投与量で開始される。その後、状況下で最適な効果に達するまで、投与量が少しずつ増やされる。
本明細書で提供される教示を利用して、実質的な毒性を引き起こさず、さらに特定の患者によって実証される臨床症状を処置するのに有効である、有効な予防的または治療的処置レジメンを計画することができる。この計画は、化合物の効力、相対的な生物学的利用能、患者の体重、有害な副作用の存在および重症度、好ましい投与様式、ならびに選択した薬剤の毒性プロファイルなどの因子を考慮することによる、活性化合物の慎重な選択を含み得る。
V.処置方法
樹状突起スパイン密度の増加およびβアミロイドペプチドの神経毒性の低下
いくつかの実施形態では、本発明は、ニューロンの樹状突起スパイン密度を増加させる方法であって、ニューロンの樹状突起スパイン密度を増加させるのに十分な条件下で、ニューロンを治療上有効量の本発明の化合物(すなわち、式I、式IA、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VIIおよび/または式VIIaの化合物)と接触させるステップを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、ニューロンの樹状突起スパイン密度を増加させる方法であって、ニューロンを治療上有効量の式VIIおよび/もしくは式VIIaの化合物、またはその医薬組成物と接触させるステップを含む方法を提供する。
一実施形態では、ニューロンの樹状突起スパイン密度を増加させる方法が、患者を認知喪失(短期または長期)のリスクにさらす外傷性脳損傷の後に行われる。このような脳損傷には、当技術分野で周知の外傷性脳損傷、ならびにその累積効果が患者を認知喪失のリスクにさらすという点で外傷性脳損傷と類似している他の反復性脳損傷(例えば、繰返し振盪、一過性虚血性事象など)が含まれる。外傷性脳損傷を有する患者を診断する方法、本発明の化合物および組成物を使用して外傷性脳損傷を処置する方法、ならびにその処置の有効性を測定する方法を、以下でさらに詳細に記載する。
樹状突起スパインは、脳の記憶の学習部位として作用することが認識されている。全体が参照により本明細書に組み込まれる、Songら、「A tetra(ethylene glycol)derivative of benzothiazole aniline amerliorates dendritic spine density and cognitive function in a mouse model of Alzheimer’s disease」 Exp.Neuro.、252:105-113(2014)。さらに、当技術分野は、小分子のβアミロイドへの結合が、神経毒性のβシートなどのオリゴマーの形成を阻害することを示した。なおさらに、スパイン密度の損失が、アルツハイマー病、パーキンソン病などを含む神経変性疾患で起こることが認識されている。よって、本発明の方法は、これらの損失を相殺し、したがって、このような疾患の症状を緩和する手段を提供する。
別の実施形態では、本発明は、ニューロンに対するβアミロイドペプチドの神経毒性を低下させる方法であって、βアミロイドペプチドの神経毒性を低下させるのに十分な条件下で、βアミロイドペプチドを治療上有効量の本発明の化合物(すなわち、式I、式IA、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VIIおよび/または式VIIaの化合物)と接触させるステップを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、ニューロンに対するβアミロイドペプチドの神経毒性を低下させる方法であって、βアミロイドペプチドを治療上有効量の式VIIおよび/もしくは式VIIaの化合物、またはその医薬組成物と接触させるステップを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、ニューロンがヒトニューロンである。いくつかの実施形態では、本発明の化合物が、上に詳細に提供されるβアミロイドによって媒介される疾患の処置に適している。
本明細書に記載される化合物は、樹状突起スパイン密度を増加させる方法および/またはβアミロイドペプチド神経毒性を低下させる方法において任意の適切な用量で投与することができる。一般に、化合物は、対象の体重1キログラム当たり約0.01ミリグラム~約1000ミリグラム(すなわち、約0.01~1000mg/kg)に及ぶ用量で投与される。化合物の用量は、例えば、約0.01~1000mg/kg、または約0.1~1000mg/kg、または約1~500mg/kg、または約25~250mg/kg、または約50~100mg/kgであり得る。化合物の用量は、約0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、85、90、95、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950または1000mg/kgであり得る。投与量は、患者の要件、処置される障害の重症度、および投与される特定の製剤に応じて変えることができる。患者に投与される用量は、患者に有益な治療反応をもたらすのに十分であるべきである。用量のサイズは、特定の患者への薬物の投与に伴う何らかの有害な副作用の存在、性質および程度によっても決定されるだろう。特定の状況に対する適切な投与量の決定は、典型的な開業医の技能の範囲内である。総投与量を分割し、疾患または状態を処置するのに適した期間にわたって小分けで投与することができる。
化合物を、特定の障害の性質(すなわち、低い樹状突起スパイン密度、βアミロイドペプチド神経毒性)、その重症度、および化合物が投与される対象の全体的な状態に応じて変化する期間にわたって投与することができる。投与は、例えば、1時間毎、2時間毎、3時間毎、4時間毎、6時間毎、8時間毎もしくは12時間毎を含む1日2回、またはこれらの任意の介在する間隔で行うことができる。投与は1日1回、または36時間毎もしくは48時間毎に1回、または1か月もしくは数か月毎に1回行うことができる。処置後、対象を、状態の変化および障害の症状の緩和について監視することができる。対象が特定の投与量レベルに有意に反応しない場合には、化合物の投与量を増加させることができる、または障害の症状の緩和が観察された場合、もしくは障害が救済された場合、もしくは特定の投与量で許容できない副作用が見られた場合には、投与量を減少させることができる。
治療上有効量の本発明の化合物を、投与の間に少なくとも1時間、または6時間、または12時間、または24時間、または36時間、または48時間の間隔を含む処置レジメンで対象に投与することができる。投与を、少なくとも72、96、120、144、168、192、216または240時間(すなわち、3、4、5、6、7、8、9または10日)の間隔で行うことができる。一定の実施形態では、1またはそれを超える本発明の化合物の投与が、数か月~数年に及ぶ期間にわたって慢性的な様式で行われる。したがって、本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に記載される低い樹状突起スパイン密度または大量の神経毒性βアミロイドペプチドに関連する疾患または状態(すなわち、外傷性脳損傷に関連する障害)を処置する方法であって、化合物が少なくとも1年間対象に投与される方法を提供する。いくつかの実施形態では、化合物が少なくとも10年間対象に投与される。いくつかの実施形態では、化合物が少なくとも60年間対象に投与される。
樹状突起スパイン伸長に対する候補化合物の効果を決定するためのアッセイは、共に全体が参照により本明細書に組み込まれる、Leeら、「Hexa(ethylene glycol)derivative of benzothiazole aniline promotes dendritic spine formation through the RasGRF1-Ras dependent pathway」、Biochimica et Biophysica Acta、1862(2016):284-295およびMegillら、「Tetra(Ethylene Glycol)Derivative of Benzothiazole Aniline Enhances Ras-Mediated Spinogenesis」、Journal of Neurosciences、33(22)9306-9318(2013)によって示されている。
これらのプロトコルは、このような候補化合物を試験するための公知の方法を例示しており、樹状突起スパイン伸長を提供する。さらに、本明細書に記載される化合物は、認知機能の促進にも有用である。このような活性を評価するためのプロトコルは、全体が参照により本明細書に組み込まれる、Songら、「A tetra(ethylene glycol)derivative of benzothiazole aniline ameliorates dendritic spine density and cognitive function in a mouse model of Alzheimer’s disease」 Exp.Neuro.、252:105-113(2014)によって提供される。
さらに、哺乳動物系では、アクチン束化タンパク質(約55kD)であるファシンが、複数のヒト悪性腫瘍で細胞運動性を高める。Hwangら、Neoplasia、2008(10)2:149-159。実際、ファシンは、乳がん転移抑制因子-1(BRMS1)として知られる重要な転移抑制因子タンパク質の発現および核移行を下方制御することが示されている。さらに、ファシンは、転移に不可欠なNF-κB活性を上方制御する。重要なことに、ファシンは、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)ならびにマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-2およびMMP-9などの転移の実行に重要であることが知られている他のタンパク質を上方制御する。Al-Awanら、PLoS One.2011;6(11):e27339.doi:10.1371/journal.pone.0027339.Epub 2011年11月4日。
本発明の化合物は、ファシンに結合し、よって、その活性を緩和し、したがって腫瘍転移を減少させるように設計されている。したがって、本発明の化合物は、腫瘍の転移の緩和に有用である。このような方法では、化合物が、好ましくは医薬組成物として、上記の有効量で投与される。正常な成人組織では、ファシンはニューロンおよび樹状細胞で発現される。これは、ファシンの神経学的役割を示唆している。本明細書に記載される化合物はファシンに結合するので、このような結合は、このような神経学的役割および結合がこれらの役割をどのように調節するかを理解するうえで重要な役割を果たし得る。
したがって、一態様では、ファシンを本発明の化合物と複合体化することによって、ファシンの活性を調節する方法が提供される。さらなる一実施形態では、このような調節が、ファシンの転移特性を緩和することを含む。別のさらなる実施形態では、このような調節が、ファシンの神経学的特性の上方制御または下方制御を含む。なおさらに、別の実施形態では、ファシンと1またはそれを超える本明細書に記載される式I、式IA、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VIIおよび/または式VIIaの分子の複合体が提供される。このような複合体は、イオン相互作用、親水性/疎水性相互作用、および可能であれば共有結合などの任意の適切な結合相互作用を含むと考えられる。
TBI症状を軽減する方法
いくつかの実施形態では、本発明は、治療上有効量の本発明の化合物(すなわち、式I、式IA、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VIIおよび/または式VIIaの化合物)、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物を投与することによって、外傷性脳損傷を患っている患者の外傷性脳損傷の症状を軽減する方法であって、化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物の治療上有効量が外傷性脳損傷の症状を軽減するのに十分な量である方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、患者の外傷性脳損傷の症状を軽減する方法であって、治療上有効量の式VIIおよび/もしくは式VIIaの化合物、またはその医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
外傷性脳損傷は、頭部外傷の結果として発生し得る。頭部外傷には以下のもののうちのいずれかが含まれ得る:近くの爆発もしくは貫通性頭部外傷、および/または脳の正常な機能を破壊するあらゆる種類の力が頭部に加わることの結果としての、頭部への衝突、頭部への強打、頭部への動揺、急加速、急減速、頭部の突然のねじれ、脳の圧迫。本発明のいくつかの実施形態では、TBIが、頭部外傷の結果であり得、この頭部外傷は、例えば、頭部への鈍的外傷または頭部への強打によって引き起こされ得る。
本発明のいくつかの実施形態では、外傷性脳損傷が、軽度、中等度または重度外傷性脳損傷であり得る。他の実施形態では、TBIが軽度TBI(mTBI)であり得る。いくつかの実施形態では、最も軽度の形態のTBI(mTBI)が脳震盪とも呼ばれ得、脳機能の一時的な喪失を特徴とする。例として、脳震盪患者は、数秒~30分まで一時的に意識を失うことがある。患者が外傷性脳損傷の処置(すなわち、外傷性脳損傷の症状の軽減のための処置)を受けるべきかどうかを評価する場合、患者が外傷性脳損傷を獲得したかどうかを確認することが必要である。TBI患者の神経損傷の初期レベルおよびその後のレベルを診断的に決定するために使用することができるいくつかの方法および評価が本明細書に記載される。
本発明のいくつかの実施形態では、頭部外傷を経験した患者が、患者を観察し、その後、患者が外傷性脳損傷の症状を経験していることを認識することによって、mTBIを有すると診断され得る。例えば、頭部外傷を有する患者は、患者が以下の状態のうちの1またはそれを超える数を経験した場合にmTBIを有すると診断され得る:(1)外傷時に観察されたまたは自己申告された挫傷、見当識障害、または意識障害、記憶機能障害、30分未満続く意識消失;および(2)外傷直後の頭痛、眩暈、疲労、易刺激性、記憶障害および集中力の低下などの症状。
本発明の他の実施形態では、頭部外傷を有する患者が、試験または試験の組み合わせを使用して頭部外傷の重症度を評価することによって、TBIを有すると診断され得る。例えば、グラスゴー昏睡尺度(GCS)を使用することによって、患者をTBIであると診断できる。GCSは、頭部外傷を経験した患者の開眼、言語および運動反応を測定およびスコアリングすることができる評価である。GCSスコアは、測定された各反応の合計スコアである。GCSスコアは時間と共に増加または減少し得る。スコアの一般的な定義は、重度(3~8)、中等度(9~12)および軽度(13~15)である。GCSを実施して深刻な外傷性脳損傷を経験した患者(すなわち、意識不明の患者)の反応を評価することができる。グラスゴー昏睡尺度は、患者の外傷性脳損傷を診断するための一般的に使用される方法であり、当業者に知られている(http://www.glasgowcomascale.org)。
本発明のいくつかの実施形態では、頭部外傷を有する患者が、リバーミード脳震盪後アンケート(Rivermead Post-Concussion Questionnaire)(RPQ)を使用して、TBIを有すると診断され得る。RPQは、脳震盪を有すると認められている(mTBI)患者のいくつかの症状および機能障害の重症度を判断するのに有用である。患者は、経験している症状の重症度を評価するよう求められ得る。RPQを使用して評価される症状には以下が含まれる:頭痛、眩暈、悪心および/または嘔吐、聴覚過敏、睡眠障害、疲労、霧視、複視、光感受性、不穏状態、易刺激性、欲求不満、抑うつ、記憶喪失、集中力の低下、ならびに考えるのに長い時間がかかる。これらの症状は、患者が頭部外傷を経験した24時間以内に評価することができる。RPQは、患者の外傷性脳損傷を診断するために一般的に使用される方法であり、当業者に知られている(King,N.;Crawford,S.;Wenden,F.;Moss,N.;およびWade,D.(1995)Journal of Neurology 242:587-592)。
TBIを有する患者を診断するために使用される他のいくつかの試験には、軍事急性脳震盪評価(MACE)(Kennedy,C.H.;Moore,J.L.Military Neuropsychology(2010));脳震盪直後の評価と認知テスト(Immediate Post-Concussion Assessment and Cognitive Test)(ImPACT)(https://www.impacttest.com);スポーツ脳震盪評価ツール(SCAT)(http://physicians.cattonline.com/scat/);自動化された神経心理学的評価指標(ANAM)(Archives of Clinical Neuropsychology(2007)、22、補遺1、S1-S144);およびCogstate(https://cogstate.com)が含まれる。本明細書に記載される評価は、TBIの患者を診断するために一般的に使用される方法であり、当業者に知られている。
患者の血液中の特定のバイオマーカーのレベルを監視することによって、患者が外傷性脳損傷を有すると診断できる。具体的には、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)およびユビキチンC末端加水分解酵素L1(UCH-L1)が、軽度~中等度のTBI(すなわち、GCS9~15)の患者において複数の時点で測定することができるバイオマーカーである。複数の時点で患者のGFAPおよびUCH-L1のレベルを測定する血液検査の結果が、TBIが発生したかどうかを示す。例えば、GFAPレベルとUCH-L1レベルは共にTBIの直後に上昇するが、その後1週間以内にかなり低いレベルまで低下する。バイオマーカーを使用してTBIを診断する方法は当業者に知られている(Papa,L.JAMA Neurol.(2016)73(5)、551-560)。
場合によっては、コンピュータ体軸断層撮影法(CATまたはCT)および磁気共鳴画像法(MRI)などの神経画像処理の方法を使用して、患者が外傷性脳損傷を有すると診断することができる。CTおよびMRIスキャンを使用して、脳損傷の重症度を特定できる。例えば、病院ではCTおよびMRIスキャンが脳損傷の特定によく使用され得るが、脳に明らかな損傷がないmTBIの検出にはしばしば有用ではない。いくつかの実施形態では、正常なCTまたはMRIスキャンを伴うmTBIを有する患者を、脳内出血および異常なCTまたはMRIスキャンを伴う中等度のTBIを有する患者と区別することができる。CTスキャンは、脳損傷の最初の24時間以内に実施することができ、骨性病理学およびある種の初期の脳出血を検出するのに有用となり得る。MRIスキャンは、脳損傷の48~72時間後に実施するとより役立つと考えられ、出血性皮質挫傷、点状出血、軸索損傷およびわずかな神経損傷で有用となり得る。一般的に、神経画像処理の方法は、中等度~深刻な外傷性脳損傷を経験した患者に最も有用となり得る。神経画像処理法を使用してTBIを診断する方法は、当業者に知られている(Lee,B.NeuroRX.(2005)2(2)、372-383;国際出願番号PCT/US2015/024739)。
本発明のいくつかの実施形態では、患者が、上記の方法もしくは当技術分野で知られている方法のいずれか1つ、または上記の方法もしくは当技術分野で知られている方法の任意の組み合わせによって、外傷性脳損傷を有すると診断され得る。他の実施形態では、頭部外傷を有する患者が、GCSまたはRPQなどの評価を実施することに加えて、TBI症状の観察および認識によって、TBIと診断される。他の実施形態では、頭部外傷を有する患者が、バイオマーカーの監視に加えて、TBI症状の観察および認識によって、TBIと診断される。他の実施形態では、頭部外傷を有する患者が、GCS、RPQおよびMACEなどの複数の評価を使用して、TBIと診断される。他の実施形態では、頭部外傷を有する患者が、バイオマーカーの監視およびGCSまたはRPQなどの評価の実施に加えて、神経画像処理法を使用して、TBIと診断される。他の実施形態では、頭部外傷を有する患者が、バイオマーカーの監視に加えて、神経画像処理法を使用して、TBIと診断される。他の実施形態では、頭部外傷を有する患者が、GCSまたはRPQなどの評価の実施に加えて、神経画像処理法を使用して、TBIと診断される。いくつかの他の実施形態では、頭部外傷を有する患者が、MRIおよびCTスキャンなどの神経画像処理法を使用して、TBIと診断される。いくつかの実施形態では、頭部外傷を有する患者が、バイオマーカーのレベルを監視することによって、TBIと診断される。他の実施形態では、頭部外傷を有する患者が、TBI症状の観察および認識によって、TBIと診断される。他の実施形態では、頭部外傷を有する患者が、GCSまたはRPQなどの1つの評価を使用して、TBIと診断される。いくつかの実施形態では、頭部外傷を有する患者が、RPQ評価を使用して、TBIと診断される。
本発明のさらなる実施形態では、頭部外傷を有する患者が、頭部外傷を受けた直後、すなわち、頭部外傷を受けた0時間以内に、本明細書に記載される方法および評価のいずれかを使用して、TBIと診断される。いくつかの実施形態では、頭部外傷を有する患者が、頭部外傷を受けた約5分、10分、15分、20分、30分、45分、1時間、4時間、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間、42時間または48時間以内に、TBIと診断される。いくつかの実施形態では、頭部外傷を有する患者が、頭部外傷を受けた約0~約48時間以内、または頭部外傷を受けた約5分~約42時間、または約10分~約36時間、または約15分~約30時間、または約20分~約24時間、または約30分~約18時間、または約45分~約12時間、または約1~約4時間以内に、TBIと診断される。いくつかの実施形態では、頭部外傷を有する患者が、頭部外傷を受けた約0時間~約1時間以内に、TBIと診断される。別の実施形態では、頭部外傷を有する患者が、頭部外傷を受けた約30分以内に、TBIと診断される。
場合によっては、脳震盪/mTBIおよびより深刻なTBIと診断された患者は、神経化学物質のレベル変化およびその後のニューロン損傷によって引き起こされる神経学的効果を経験し得る。神経学的効果は、数日、数週間、数か月または数年間続くことがある。これらの神経学的効果は、以下の機能的ドメインの欠損を引き起こす:身体的、視覚、聴覚、神経行動、認知コミュニケーションおよび睡眠。身体的ドメインの欠損は、以下の症状のうちのいずれかを誘発し得る:悪心、嘔吐、眩暈、頭痛、発作、意識の変化、疲労、筋肉の衰弱、バランス障害および/または協調障害。視覚ドメインの欠損は、以下の症状のうちのいずれかを誘発し得る:光感受性、複視、視力低下、視覚無視および/または瞳孔近見反射の変化。聴覚ドメインの欠損は、以下の症状のうちのいずれかを誘発し得る:聴覚過敏、耳鳴り、難聴および/または中枢性聴覚機能障害。神経行動ドメインの欠損は、以下の症状のうちのいずれかを誘発し得る:激越、不安、抑うつ、気分変動、不穏状態、見当識障害、衝動性、易刺激性、苛立ちおよび/またはストレス障害。認知コミュニケーションドメインの欠損は、以下の症状のうちのいずれかを誘発し得る:注意欠陥、実行機能欠陥、情報処理障害、記憶障害、学習障害、メタ認知障害、空間認知障害、失語症および/または運動性言語障害。睡眠ドメインの欠損は、以下の症状のうちのいずれかを誘発し得る:不眠症、過眠症および/または睡眠障害。
いくつかの実施形態では、TBIと診断された患者が、1またはそれを超える機能的ドメインの欠損を有し得る。1またはそれを超える機能的ドメインの欠損を有するTBIと診断された患者は、治療上有効量の本発明の化合物(すなわち、式I、式IA、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VIIおよび/または式VIIaの化合物)を受けることができる。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える機能的ドメインの欠損を有するTBIと診断された患者が、治療上有効量の式VIIおよび/もしくは式VIIaの化合物、またはその医薬組成物を受けることができる。例えば、1またはそれを超える機能的ドメインの欠損を有するTBIと診断された患者は、治療上有効量の式:
による化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物、またはこれらの組み合わせを受けることができる。
投与量および間隔を個別に調整して、処置されている特定の臨床適応症に有効な投与化合物のレベルを提供することができる。これにより、外傷性脳損傷の重症度および患者の状態に釣り合った治療レジメンが提供されるだろう。
いくつかの実施形態では、活性剤(すなわち、本明細書に記載される化合物)の適切な投与量範囲が、約0.1mg~約10000mg、または約1mg~約1000mg、または約10mg~約750mg、または約25mg~約500mg、または約50mg~約250mgを含む。活性剤の適切な投与量には、約1mg、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900または1200mgが含まれる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される化合物の経口投与用の医薬組成物の投与量が、患者1人当たり約0.1mg/kg体重、または患者1人当たり0.5、1、5、10、25、50、100、250、500、750または1000mg/kg体重であり得る。他の実施形態では、本明細書に記載される化合物の経口投与用の医薬組成物の投与量が、患者1人当たり約0.1~1000mg/kg体重、または患者1人当たり約0.5~750、または約1~500、または約5~250、または約10~100、または約25~50mg/kg体重であり得る。さらに別の実施形態では、投与量が、患者1人当たり約0.5~約25mg/kg体重、または患者1人当たり約5~15mg/kg体重、または患者1人当たり約8~約12mg/kg体重、または患者1人あたり約10mg/kg体重であり得る。特に、薬物を脳脊髄液(CSF)空間などの解剖学的に隔離された部位に投与する場合、経口、血流、体腔または器官内腔に投与するのとは対照的に、より低い投与量を使用することができる。非経口投与可能な化合物製剤を調製する実際の方法は、当業者に知られているまたは明らかであり、上記のRemington’sのような刊行物により詳細に記載されている。Nieman、「Receptor Mediated Antisteroid Action」、Agarwalら編、De Gruyter、ニューヨーク、1987も参照されたい。
活性剤は、約1:100~約100:1(w/w)、または約1:50~約50:1、または約1:25~約25:1、または約1:10~約10:1、または約1:5~約5:1(w/w)などの任意の適切な重量比で本発明の組成物中に存在することができる。活性剤は、約1:100(w/w)、1:50、1:25、1:10、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、25:1、50:1または100:1(w/w)などの任意の適切な重量比で存在することができる。
本発明の一定の実施形態では、TBIと診断された患者に、治療上有効量の化合物(その実施形態、実施例および/または医薬組成物を含む)を、TBIを受けた直後、すなわち、TBIを受けた0時間以内に上記の投与量で投与することができる。いくつかの実施形態では、TBIを有する患者に、治療上有効量の化合物を、TBIを受けた約10分以内、またはTBIを受けた約20分以内、30分以内、45分以内、1時間以内、2時間以内、4時間以内、7時間以内、12時間以内、18時間以内、24時間以内、30時間以内、36時間以内、48時間以内、または72時間以内に投与することができる。いくつかの実施形態では、TBIを有する患者に、治療上有効量の化合物を、TBIを受けた約0~約72時間以内、またはTBIを受けた約10分~約48時間以内、または約20分~約36時間以内、または約30分~約30時間以内、または約45分~約24時間以内、または約1~約18時間以内、または約2~約12時間以内、または約4~約7時間以内に投与することができる。本発明の一定の他の実施形態では、TBIを有する患者に、治療上有効量の化合物を、TBIを受けた約0~24時間以内に投与することができる。本発明の他の実施形態では、TBIを有する患者に、治療上有効量の化合物を、TBIを受けた約18時間以内に投与することができる。本発明の他の実施形態では、TBIを有する患者に、治療上有効量の化合物を、TBIを受けた18時間以下以内に投与することができる。本発明の一定の実施形態では、TBIを有する患者に、治療上有効量の化合物を、TBIを受けた4時間以内に投与することができる。本発明のいくつかの他の一定の実施形態では、TBIを有する患者に、治療上有効量の化合物を、TBIを受けた1時間以内に投与することができる。
本発明のいくつかの実施形態では、TBIを有する患者に、上記の投与量の治療上有効量の化合物(その実施形態、実施例および/または医薬組成物を含む)を、30分、または1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、18時間、または24時間当たり少なくとも1回投与することができる。他の実施形態では、TBIを有する患者に、ある用量の化合物の医薬組成物を、30分~24時間当たり1回、または少なくとも1時間~18時間当たり少なくとも1回、または少なくとも2~12時間当たり1回、または3~8時間当たり少なくとも1回、または4~6時間当たり少なくとも1回投与することができる。
本発明のいくつかの実施形態では、TBIを有する患者が、任意の適切な長さの時間、上記の処置レジメン(すなわち、治療上有効量の式(VII)または式(VIIa)の化合物の投与量および投与頻度)を受けることができる。他の実施形態では、TBIを有する患者が、約1日、または2、3、5、7、10、14、20、25、30、35、45、60、または約90日間、処置レジメンを受けることができる。いくつかの実施形態では、TBIを有する患者が、約1~約90日間、または約2~約60日間、または約3~約45日間、または約5~約35日間、または約7~約30日間、または約10~約25日日間、または約14~約20日間、処置レジメンを受けることができる。別の実施形態では、TBIを有する患者が、約35日間、処置レジメンを受けることができる。
VI.TBI処置有効性の測定
上記のように外傷性脳損傷の症状を軽減するための処置を受けた外傷性脳損傷と診断された患者(すなわち、治療上有効量の化合物を投与されている患者)は、処置の有効性を決定するために患者の処置レジメンを通して定期的に評価される。治療上有効量の化合物を投与されている患者を、1またはそれを超える機能的ドメイン(すなわち、身体的、視覚、聴覚、神経行動、認知コミュニケーションおよび睡眠)の性能の改善について評価することができる。いくつかの実施形態では、TBIについて処置されている患者を、(本明細書に記載されるもしくは当技術分野で知られている)TBIを有する患者を診断するために使用される方法のいずれか1つ、またはこのような方法の任意の組み合わせを使用して、機能的ドメインの1つまたはそれを超える数の改善について評価することができる。例えば、上記の処置レジメンを受けているTBI患者を、患者の血中のGFAPおよびUCH-L1バイオマーカーのレベルを監視する、ならびに/または以下の評価のうちのいずれかを使用することによって、機能的ドメインの1またはそれを超える数の改善について評価することができる:GCS、RPQ、MACE、ImPACT、SCAT、ANAMおよび/またはCogstate。本発明のいくつかの実施形態では、処置レジメンを受けているTBI患者を、GCS、RPQおよび/またはMACEを使用して、機能的ドメインの1またはそれを超える数の改善について評価することができる。本発明の他の実施形態では、処置レジメンを受けているTBI患者を、GCSおよびRPQを使用して、機能的ドメインの1またはそれを超える数の改善について評価することができる。本発明の一定の実施形態では、処置レジメンを受けているTBI患者を、RPQを使用して、機能的ドメインの1またはそれを超える数の改善について評価することができる。
本発明の一定の実施形態では、処置を受けているTBI患者を、TBI処置レジメンの期間中、任意の適切な回数で1またはそれを超える機能的ドメインの性能の改善について評価することができる。本発明のいくつかの実施形態では、処置を受けているTBI患者を、1処置レジメン当たり少なくとも1回、または1処置レジメン当たり約2回、3回、6回、12回、15回、18回、20回、25回、30回、40回、50回、60回、80回、100回、または150回、1またはそれを超える機能的ドメインの性能の改善について評価することができる。本発明の他の実施形態では、処置を受けているTBI患者を、1処置レジメン当たり約1~約150回、または1処置レジメン当たり約2~約100回、または約3~約80回、または約6~約60回、または約12~約50回、または約15~約40回、または約18~約30回、または約20~約25回、1またはそれを超える機能的ドメインの性能の改善について評価することができる。一定の実施形態では、処置を受けているTBI患者を、1処置レジメン当たり約3~約80回、1またはそれを超える機能的ドメインの性能の改善について評価することができる。例えば、約35日間の処置レジメンを受けているTBI患者を、処置レジメンの35日間の期間中にどこでも3~80回、1またはそれを超える機能的ドメインの性能の改善について評価することができる。
本発明の実施形態では、TBI患者の外傷性脳損傷の症状の軽減を、TBI患者の1またはそれを超える機能的ドメインの性能の改善として観察することができる。あるいは、TBI患者の1またはそれを超える機能的ドメインの性能の改善を、TBI患者の外傷性脳損傷の症状の軽減として観察することができる。
TBIのための処置を受けた後、患者の1またはそれを超える機能的ドメインの測定された性能は、処置前であるが損傷後に測定された1またはそれを超える機能的ドメインの性能と比較して、あるパーセンテージ(%)だけ改善する。本発明のいくつかの実施形態では、1またはそれを超える機能的ドメインの性能が、処置前であるが損傷後に測定された1またはそれを超える機能的ドメインの性能と比較して少なくとも1%、または処置前であるが損傷後に測定された1またはそれを超える機能的ドメインの性能と比較して少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70または80%改善し得る。他の実施形態では、患者の1またはそれを超える機能的ドメインの測定された性能が、処置前であるが損傷後に測定された1またはそれを超える機能的ドメインの性能と比較して少なくとも1%~80%、または処置前であるが損傷後に測定された1またはそれを超える機能的ドメインの性能と比較して少なくとも1%~80%、または少なくとも5%~70%、または少なくとも10%~60%、または少なくとも15%~50%、または少なくとも20%~40%、または少なくとも25%~35%改善し得る。一定の実施形態では、1またはそれを超える機能的ドメインの性能が、処置前であるが損傷後に測定された1またはそれを超える機能的ドメインの性能と比較して少なくとも20%~30%改善し得る。
本発明のいくつかの実施形態では、1またはそれを超える機能的ドメインの性能が、任意の適切な処置時間内に改善し得る。他の実施形態では、1またはそれを超える機能的ドメインの性能が、処置の約24時間以内、または処置の約48時間以内、72時間以内、5日以内、7日以内、14日以内、4週間以内、6週間以内、8週間以内、12週間以内、16週間以内、または20週間以内に改善し得る。本発明のいくつかの実施形態では、1またはそれを超える機能的ドメインの性能が、処置の約24時間~約20週間以内、または処置の約48時間~約16週間以内、または約72時間~約12週間以内、または約5日~約8週間以内、または約7日~約6週間以内、または約14日~約4週間以内に改善し得る。一定の実施形態では、1またはそれを超える機能的ドメインの性能が、処置の約7日~約4週間以内に改善し得る。他の特定の実施形態では、1またはそれを超える機能的ドメインの性能が、処置の約7日以内に改善し得る。
VII.実施例
以下の実施例は、説明のために提供されるものであり、特許請求される発明を限定するものではない。
実施例1.2-(2-(2-(2-(4-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)フェノキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エタン-1-オール(3、「ベンゾチアゾール-IIIB」)の合成
スキーム4
ステップA.):4-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)フェノール(1)の調製。全ての試薬はSigma Aldrichから入手し、そのまま使用した。40mLの1:1エタノール/水溶媒混合物に、スカンジウムトリフレート(Sc(OTf)3、1g、2mmol)、2-アミノベンゼンチオール(1.2、3.6g、28.8mmol)および4-ヒドロキシベンズアルデヒド(1.1、3.6g、29.5mmol)を添加した。反応混合物を、開放フラスコ中、50℃で一晩撹拌した。酸化反応の完了後、反応物を室温(r.t.)に冷却し、濾過した。単離した固体をエーテルで洗浄し、乾燥させて、4-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)フェノール(1)を70~80%の収率で得た。
ステップB.):テトラエチレングリコールp-トルエンスルホネート(2)の調製。全ての試薬はSigma Aldrichから入手し、そのまま使用した。テトラエチレングリコール(2.2、3.88g、20mmol)の100mLのジクロロメタン中溶液に、塩化トシル(2.1、3.8g、20mmol)を添加した。次いで、反応混合物を-78℃に冷却した後、トリエチルアミン(2.01g、20mM)をゆっくり滴下により添加し、一晩撹拌した。反応混合物をr.t.にゆっくり加温した後、1Lの水で洗浄し、乾燥させて、粗生成物を得た。ISCO CombiFlash(登録商標) 80 gシリカカートリッジおよび0~100%酢酸エチル/ヘキサンを使用して精製した後、純粋なテトラエチレングリコールp-トルエンスルホネート(2)を40~50%の収率で単離した。
ステップC.):2-(2-(2-(2-(4-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)フェノキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エタン-1-オール(3)の調製。全ての試薬はSigma Aldrichから入手し、そのまま使用した。1(2.27g、10mmol)の30mLのDMF中溶液に、炭酸セシウム(3.26g、10mmol)および2(4.05g、11.6mmol)を添加した。反応混合物を60℃で一晩撹拌した。次いで、反応混合物をr.t.まで冷却した後、1Lの1:1水/酢酸エチル溶媒混合物で洗浄し、乾燥させて、粗生成物を得た。ISCO CombiFlash(登録商標)および0~100%ジクロロメタン/酢酸エチルを使用して、純粋な2-(2-(2-(2-(4-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)フェノキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エタン-1-オール(3)を得た。純粋な画分を合わせ、乾燥させ、エーテルで洗浄し、濾過し、再度乾燥させて、4gの3(収率72%)を得た。1リットル当たり1gの酢酸アンモニウムを含有する0~100%アセトニトリル/水のHPLCによって、純度を決定した。1H NMR(600MHz、DMSO-d6):δ8.15(d,1H)、8.05-8.15(m,3H)、7.6(d,1H)、7.4(d,1H)、7.1(d,2H)、4.6(m,1H)、4.25(m,2H)、3.3-3.8(m,14H)。APCI(LCQ):m/z[M+H]+C21H25NO5Sについての計算値、403.49;実測値、404.1。
実施例2.ベンゾチアゾール化合物を使用したインビトロスパイン形成。
本発明の化合物は、アクチン束化タンパク質であるファシンに結合し、長く硬いアクチン細胞骨格の形成を防ぎ、それによって樹状突起スパイン形成を促進する。(Sedeh,R.S.ら J.Mol.Biol.400、589-604(2010);Chen,L.ら Nature 464、1062-1066(2010);Jansen,S.ら J.Biol.Chem.286、30087-30096(2011);Yang,S.ら J.Biol.Chem.288、274-284(2013);Zheng,S.ら J.Med.Chem.57、6653-6667(2014)参照)。スパイン形成の促進についての本発明の化合物の有効性を実証するために、シナプス斑点(synaptic puncta)およびマウス皮質ニューロンのシナプスに対するベンゾチアゾール化合物の効果を調査した。具体的には、本発明のベンゾチアゾール-IIIAおよびベンゾチアゾール-IIIB化合物、ならびに国際出願番号PCT/US2017/012139に記載されるベンゾチアゾール-I化合物をこの試験に使用した(図1)。
初代マウス皮質ニューロンを、DIV 15で5μMのベンゾチアゾール-I、ベンゾチアゾール-IIIAまたはベンゾチアゾール-IIIBで処置した。対照として、初代マウス皮質ニューロンをビヒクル単独(10%DMSO、90%リン酸緩衝生理食塩水(PBS))で処置した。24時間後、DIV 16ニューロンを固定し、前シナプス小胞タンパク質シナプトフィジン(P38)を使用して免疫染色し、核色素DAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)で対比染色し、カウントした。免疫標識ニューロンをLeica共焦点顕微鏡で画像化した。Squashプラグインを備えたFIJIを使用してP38免疫陽性斑点の数を分析した(図2)。図2に示されるように、ベンゾチアゾール-I、ベンゾチアゾール-IIIAおよびベンゾチアゾール-IIIBは全て、ビヒクル対照と比較してシナプス斑点の数の増加を引き起こす。
同様の実験で、対照ビヒクルとして上記と同じDMSO/PBS緩衝液を使用して、初代マウス皮質ニューロンをDIV 15で1μMのベンゾチアゾール-Iまたはベンゾチアゾール-IIIBで処置した。24時間後、DIV 16ニューロンを固定し、シナプトフィジンで免疫標識し、DAPIで染色し、上記のようにカウントした。図3は、24時間後、ベンゾチアゾール-Iおよびベンゾチアゾール-IIIBが、対照と比較してシナプスの数の約100%増加を促進することを示している。
実施例3.ベンゾチアゾール化合物のインシリコファシン結合。
ベンゾチアゾール化合物がファシンに結合し、それによって、束化アクチン原線維の形成を阻害する能力を評価するために、ベンゾチアゾール化合物および利用可能なヒトファシン1の結晶構造を使用してインシリコ試験を行った。結合部位を各ファシン結晶構造の表面で特定し、引き続いて各ポケット内でベンゾチアゾール-I、ベンゾチアゾール-II、ベンゾチアゾール-IIIAおよびベンゾチアゾール-IIIB(図1)の仮想ドッキングを行って、好ましい結合立体構造を決定した。
ファシン結晶構造の分析および調製
全ての利用可能なファシン結晶構造をPDBからダウンロードし、構造分析の準備をした(Sedeh,R.S.ら J.Mol.Biol.400、589-604(2010);Chen,L.ら Nature 464、1062-1066(2010);Jansen,S.ら J.Biol.Chem.286、30087-30096(2011);Yang,S.ら J.Biol.Chem.288、274-284(2013)参照)。構造を目視およびMolSoftのICM-Proソフトウェアに組み込まれた標準的な自動プロトコルで分析した。水素原子を構造に追加し、AsnおよびGln側鎖の正しい配向、リガンドおよびタンパク質の電荷、ヒスチジンの配向およびプロトン化状態、ならびに高b因子または低占有率などの任意の結晶学的品質フラグに関して考慮した。
ポケット特定
MolSoftのICMPocketFinderアルゴリズムを使用して、全ての利用可能なファシン結晶構造内の潜在的なリガンド結合ポケットおよび空洞を特定した(An,J.ら Genome Inform.Int Conf.Genome Inform.15、31-41(2004);Kufareva,I.ら Nucleic Acids Res.40、D535-540(2012)参照)。最初に、結晶構造3LLPの活性鎖Aのポケットを、この構造が最高の解像度(1.8Å)であったため、検索した。4つの「薬物様」ポケットが、小分子の結合に適した特性を有すると確認された(図4)。
リガンドのドッキングおよびスコアリング
ベンゾチアゾール-I、ベンゾチアゾール-IIおよびベンゾチアゾール-IIIAのヘッド基およびヘッド+テールを、MolSoftのICM-Dockingソフトウェア、バージョン3.8-6a(Abagyan,R.&Totrov,M.J.Mol.Biol.235、983-1002(1994))を使用して図4に示される4つのポケットの各々にドッキングした。ポケットの各々へのドッキングスコアを表6に示す。ドッキングスコアが低いほど、「化合物-ファシン結合ポケット」相互作用が良くなる。
アクチン結合部位1に位置するポケットBは、ほとんど全てのケースで最低のドッキングスコアをもたらしたが、1つの例外はポケットDのドッキングスコアが-25のベンゾチアゾール-I(ヘッド)であった。結合ポケットBを、他のファシン結晶構造でさらに調査した。ポケットBがPDB 3P53のペンタエチレングリコール結合部位に近いことが注目された。ヘッド基をPDB 3P53のポケットBにドッキングすると、各ベンゾチアゾール化合物のヘッド基を使用して有意に優れたドッキングスコアが得られた(表7)。次いで、図8に示されるように、アンカー点としてドッキングされたヘッド基を使用して、テール基をドッキングして、最終的にエネルギー的に好ましい化合物ポーズを生成した。
3つの化合物、ベンゾチアゾール-I、ベンゾチアゾール-IIおよびベンゾチアゾール-IIIAは全て、ベンゾチアゾール環の窒素からARG 389への水素結合を形成し、最初のエチレングリコールはLYS 460と水素結合を形成する。これらの相互作用を、例としてベンゾチアゾール-Iを使用して、図9に示す。
同様のドッキング実験で、ベンゾチアゾール-IIIB(図1)のヘッド+テール基を結合ポケットBにドッキングしたところ、ドッキングスコアは-41であった。ベンゾチアゾール-IIIBのこのドッキングスコアに基づいて、また上記の所見を考慮して、ファシンのポケットB内でのベンゾチアゾール-IIIBの構造修飾を使用して、追加のドッキング試験を実施した。各修飾ベンゾチアゾール-IIIBのドッキングスコアを以下の表8に示す。
実施例4.ベンゾチアゾール化合物による成人男性のTBI症状の処置
外傷性脳損傷の前病歴のない17歳の男性患者は、フットボールの試合中にタックルされた結果、約30秒間意識不明になった後、見当識障害、眩暈および頭痛を経験している。患者の症状を観察すると、頭部外傷をTBIと診断できることが認識されている。頭部外傷を受けた後約30分以内に、現場の医療専門家が、スコア32のリバーミード脳震盪後アンケートを使用して、中等度~軽度の外傷性脳損傷という患者の診断を確認している。RPQ評価の結果は、患者が光感受性、易刺激性および失語症を経験していることも示した。患者に外傷性脳損傷のための処置を施す。
患者を、ベンゾチアゾール化合物であるベンゾチアゾール-IIIBで処置し、数週間にわたってカプセル剤の形態で1日1回、約15mg/kgの投与量で投与する。よって、約14~35日間にわたる1日当たり1155mgの範囲のベンゾチアゾール-IIIBの1日量が、TBIの有効な処置として使用される。
処置の過程で、患者の進行を、RPQ評価を行うことによって監視し、本発明の方法を使用した処置からの患者の全体的な改善のバロメータを提供する。RPQ評価を、ベンゾチアゾール-IIIBの投与前(すなわち、患者を診断するため)とベンゾチアゾール-IIIBの投与後の両方で行う。RPQ評価を、1、7、14、21、28および35日目に実施する。
患者に、35日間にわたって1日1回、1155mgのベンゾチアゾール-IIIBを経口投与する。処置の7日目までに、患者のリバーミード脳震盪後アンケートのスコアは約32から約24に低下すると予想される。これは、1またはそれを超える機能的ドメイン、特に身体的、視覚、認知コミュニケーションおよび神経行動ドメインの性能の25%の改善を示す。35日の期間後にRPQの結果を評価すると、患者は外傷性脳損傷の改善を示す。実際、患者は、35日間の処置後、影響を受けたドメインの性能が約30%~70%改善すると予想される。
この例では、比較的短期間(約35日間)にわたる、1日1回、1日当たり約1155mgの範囲のベンゾチアゾール化合物の用量が、ヒト患者の外傷性脳損傷の症状をどのように軽減すると予想されるかを示している。
上記は、明確さおよび理解を目的として、例示および例としてある程度詳細に記載されているが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲内で一定の変更および修正を実施できることを理解するだろう(例えば、本明細書に示される本発明の化合物またはその塩、医薬組成物、誘導体、プロドラッグ、代謝産物、互変異性体もしくはラセミ混合物に対する等価物の置換および他の種類の変更)。本明細書に記載される各態様および実施形態は、他の態様および実施形態のいずれかまたは全てに関して開示されるような変形または態様を含むまたは組み込むこともできる。さらに、本明細書で提供される各参考文献は、あたかも各参考文献が個別に参照により組み込まれるのと同程度に、全体が参照により組み込まれる。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
式VIIによる化合物:
[式中、
下付き添字nおよびpは0、1または2から独立に選択され;
下付き添字qは2~8から選択される整数であり;
各R
1
およびR
2
は、ハロ、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルコキシ、置換アルコキシ、アシル、アシルアミノ、アミノカルボニル、アミノスルホニル、アミノ、置換アミノ、アリール、置換アリール、カルボキシル、カルボキシルエステル、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、ヒドロキシル、スルホニル、置換スルホニル、チオール、チオアルキルおよびニトロからなる群から独立に選択される]
またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物。
(項2)
下付き添字qが3~6から選択される整数であり;
R
1
が、ハロ、-OH、-CN、フェニル、-CHCH
2
、-COCH
3
、-COOCH
3
、-CH
2
SO
2
NH
2
、-NHCOCH
3
、-N(CH
3
)
2
、-SCH
3
および-SO
2
NH
2
からなる群から選択され;
R
2
がハロ、-CH
3
、-CH
2
CH
3
、シクロペンチル、-CF
3
、-CN、-CHCH
2
、-CH
2
CHCH
2
、フェニル、-CO
2
H、-CH
2
CO
2
H、-CH
2
CONH
2
、-COOCH
3
、-COCH
3
、-(CH
2
)
2
OCH
3
、-CONH
2
、-CON(CH
3
)
2
、-CH
2
SO
2
N(CH
3
)
2
、-OCH
3
、-OCF
3
、-OCH(CH
3
)
2
、-N(CH
3
)
2
、-NHCOCH
3
、-NO
2
、-SCH
3
、-SO
2
CH
3
および-SO
2
N(CH
3
)
2
からなる群から選択される、
上記項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物。
(項3)
下付き添字nおよびpが0または1から独立に選択され、但し、下付き添字nおよびpが両方ともが1とはならない、上記項1または2に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物。
(項4)
からなる群から選択される、上記項1から3のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物。
(項5)
R
1
がハロ、-CH
3
、-OCH
3
、フェニルおよび-CNからなる群から選択され;
R
2
がハロ、-CH
3
、-CF
3
、-OCH
3
、-OCF
3
、-CHCH
2
、-CH
2
CHCH
2
、フェニルおよび-NO
2
からなる群から選択される、
上記項1から3のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物。
(項6)
式VIIa:
[式中、
下付き添字qは4または6から選択される整数であり;
R
3
、R
4
、R
5
およびR
6
は、水素、ハロ、-CH
3
および-OCH
3
からなる群から独立に選択され;
R
7
、R
8
、R
9
およびR
10
は、水素、ハロ、-CH
3
、-CF
3
、-OCH
3
、-OCF
3
、フェニル、-NO
2
からなる群から独立に選択され;
前記R基のうちの少なくとも6つは水素である]
による、上記項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物。
(項7)
からなる群から選択される、上記項1から6のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物。
(項8)
式:
を有する、上記項7に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物。
(項9)
治療上有効量の上記項1から8のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物と、1またはそれを超える薬学的に許容され得る賦形剤とを含む医薬組成物。
(項10)
前記化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物が、
からなる群から選択される、上記項9に記載の医薬組成物。
(項11)
前記化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物が、
である、上記項10に記載の医薬組成物。
(項12)
ニューロンの樹状突起スパイン密度を増加させる方法であって、ニューロンの樹状突起スパイン密度を増加させるのに十分な条件下で、前記ニューロンを治療上有効量の上記項1から8のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物と接触させるステップを含む方法。
(項13)
ニューロンの樹状突起スパイン密度を増加させる方法であって、ニューロンの樹状突起スパイン密度を増加させるのに十分な条件下で、前記ニューロンを上記項9から11のいずれか一項に記載の医薬組成物と接触させるステップを含む方法。
(項14)
前記方法が、患者が外傷性脳損傷を受けた後に行われる、上記項12または13に記載の方法。
(項15)
ニューロンに対するβアミロイドペプチドの神経毒性を低下させる方法であって、前記βアミロイドペプチドの前記神経毒性を低下させるのに十分な条件下で、前記βアミロイドペプチドを治療上有効量の上記項1から8のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物と接触させるステップを含む方法。
(項16)
ニューロンに対するβアミロイドペプチドの神経毒性を低下させる方法であって、前記βアミロイドペプチドの前記神経毒性を低下させるのに十分な条件下で、前記βアミロイドペプチドを上記項9から11のいずれか一項に記載の医薬組成物と接触させるステップを含む方法。
(項17)
治療上有効量の上記項1から8のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物を投与することによって、外傷性脳損傷を患っている患者の外傷性脳損傷の症状を軽減する方法であって、前記化合物、またはその薬学的に許容され得る塩もしくは溶媒和物の前記治療上有効量は、外傷性脳損傷の前記症状を軽減するのに十分な量である方法。
(項18)
外傷性脳損傷の症状を軽減するのに十分な条件下で、上記項9から11のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与することによって、外傷性脳損傷を患っている患者の外傷性脳損傷の症状を軽減する方法。
(項19)
前記方法が、前記外傷性脳損傷の約0~72時間以内に行われる、上記項17または18に記載の方法。
(項20)
外傷の前記症状の軽減が、処置前であるが損傷後に測定された1またはそれを超える機能的ドメインの性能と比較した、処置の約7日以内の1またはそれを超える機能的ドメインの性能の、少なくとも20%~30%の改善によって測定される、上記項17または18に記載の方法。