JP7163847B2 - 溶射装置及び炉壁溶射方法 - Google Patents

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Description

本発明は、溶射装置及び炉壁溶射方法に関する。
石炭を乾留してコークスを生成するコークス炉は、石炭が装入される炭化室と、炭化室を高温に保持するために燃料ガスの燃焼が行われる燃焼室とからなる。炭化室と燃焼室とは、耐火煉瓦を組み合わせて形成される炉壁によって区切られており、交互に複数並んでいる。生成されたコークスは、押出機により押し出され、炭化室から排出される。
ここで、コークスの押出し時に炉壁に圧力及び摩耗による負荷がかかる。このため、コークス炉の炉壁には、縦亀裂や、縦亀裂に沿って煉瓦の角部が欠けた角欠け欠損が多数生じている。炉底付近はコークス自重による摩擦が大きく、減肉が生じやすい。減肉が進行して燃焼室まで到達するとコークスが燃焼室内に侵入し、燃焼不良を発生させる。炉底付近の炉壁が減肉すると、炉壁の強度を低下させ、炉壁の倒壊を引き起こす可能性がある。
コークス炉の炭化室の炉壁の補修に関しては、炉壁の煉瓦の減肉状態を測定し補修を行う溶射装置が従来から提案されている(例えば、特許文献1、2)。これらの溶射装置には、コークス押出方向に炭化室内へ装入されるマニピュレータの先端に、レーザー距離計と、溶射バーナーが設けられている。溶射作業では、まず、溶射の前段階にて、レーザー距離計によって補修範囲の凹凸を計測し、煉瓦の減肉状態の測定が測定される。かかる測定結果に基づき溶射量及び溶射バーナーの軌道が決定され、その後、溶射バーナーにより溶射が行われる。
特開2018-44161号公報 特許第4528361号公報
ここで、上記特許文献1等の溶射装置は、図6に示すように、機体11から延びるマニピュレータ13の先端のレーザー距離計14と溶射バーナー15とが分離して配置されている。このため、レーザー距離計14の計測可能範囲と、溶射バーナー15の溶射可能範囲とが一致しないため、レーザー距離計14と溶射バーナー15とにより同一の範囲に対して処理を行おうとすると、マニピュレータを動作させて位置合わせをする必要がある。しかし、マニピュレータの可動範囲には制限があるため、マニピュレータを動作させずに計測及び溶射が可能な範囲(以下、「処理可能範囲Q」ともいう。)に制約が生じる。炭化室の側壁下部はコークスの自重による摩耗が大きいため、計測及び溶射の必要性が高いが、炭化室の側壁下部は処理可能範囲外になってしまう。
例えば図6に示す溶射装置10では、溶射バーナー15の上にレーザー距離計14が配置されているため、炉底Sまでレーザー距離計14が近づくことができず、炉底Sから400mm程度までしか計測できない。処理可能範囲Q外については、作業者の目測によって溶射量及び溶射バーナーの軌道が決定されるため、補修作業の精度は低下する。
炭化室の側壁下部の計測及び溶射を可能とするため、上記特許文献2の溶射装置20では、図7に示すように、レーザー距離計24の先端が溶射バーナー25よりも前方に位置するように、機体21から延びるマニピュレータ23の先端のレーザー距離計14と溶射バーナー15とが配置されている。これにより、溶射バーナー25を炉底Sに近づけた際にレーザー距離計24が炉底Sに近接することが可能となり、炉底から約80mm程度上方の範囲であれば計測可能となった。しかし、依然として側壁下部に処理可能範囲Q外となる部分が存在する。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、処理可能範囲を拡大し、溶射作業の精度を高めることが可能な、新規かつ改良された溶射装置及び炉壁溶射方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、コークス炉の炭化室の炉壁の損傷部を溶射する溶射装置であって、溶射口から溶射材を溶射する溶射バーナーと、照射口からレーザー光を対象物に対して照射して対象物との距離を計測するレーザー距離計とが設けられたノズル部と、先端にノズル部が設けられ、ノズル部を所定の位置に移動させるために動作するマニピュレータと、を備え、溶射バーナー及びレーザー距離計は、溶射バーナーの溶射口とレーザー距離計の照射口とが、ノズル部の軸に対して直交する同一面内に位置し、かつ、異なる向きとなるように、ノズル部に設けられており、ノズル部は、当該ノズル部の軸回りに回転可能に構成されている、溶射装置が提供される。
溶射バーナーの溶射口の向きとレーザー距離計の照射口の向きとは180°異なるようにしてもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、溶射装置を用いてコークス炉の炭化室の炉壁の損傷部を溶射する炉壁溶射方法であって、溶射装置は、溶射口から溶射材を溶射する溶射バーナーと、照射口からレーザー光を対象物に対して照射して対象物との距離を計測するレーザー距離計とが設けられたノズル部と、先端にノズル部が設けられ、ノズル部を所定の位置に移動させるために動作するマニピュレータと、を備え、溶射バーナー及びレーザー距離計は、溶射バーナーの溶射口とレーザー距離計の照射口とが、ノズル部の軸に対して直交する同一面内に位置し、かつ、異なる向きとなるように、ノズル部に設けられており、レーザー距離計の照射口を炉壁面と対向させ、マニピュレータを動作させて炉壁面との距離を計測する計測工程と、回転駆動部によりノズル部を当該ノズル部の軸回りに回転させて溶射バーナーの溶射口を補修対象の炉壁面と対向させ、計測工程による計測結果に基づいて損傷部に対して溶射する溶射工程と、を含む、炉壁溶射方法が提供される。
計測工程では、炉壁の高さ方向中央部を計測する際には、レーザー距離計の照射口の向きを炉壁面に対して垂直となる水平状態とし、炉壁の高さ方向下部を計測する際には、回転駆動部によりノズル部を炉底側に回転させ、レーザー距離計の照射口の向きを水平状態から斜め状態としてもよい。
溶射工程では、炉壁の高さ方向中央部を溶射する際には、溶射バーナーの溶射口の向きを炉壁面に対して垂直となる水平状態とし、炉壁の高さ方向下部を溶射する際には、回転駆動部によりノズル部を炉底側に回転させ、溶射バーナーの溶射口の向きを水平状態から斜め状態としてもよい。
以上説明したように本発明によれば、処理可能範囲を拡大し、溶射作業の精度を高めることができる。
本発明の一実施形態に係る溶射装置の構成を示す概略構成図である。 同実施形態に係る溶射装置による処理可能範囲を示す説明図である。 同実施形態に係る溶射装置のノズル部の構成を示す平面図及び部分断面図である。 設定Aとして、炉壁の高さ方向中央部に対して計測及び溶射を実施するときのノズル部の設定状態を示す模式図である。 設定Bとして、炉壁の下部に対して計測及び溶射を実施するときのノズル部の設定状態を示す模式図である。 従来の補修装置の一例を示す概略説明図である。 従来の他の補修装置の一例を示す概略説明図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.装置構成>
[1-1.溶射装置]
まず、図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態に係る溶射装置100の概略構成について説明する。図1は、本実施形態に係る溶射装置100の構成を示す概略構成図である。図2は、本実施形態に係る溶射装置100による処理可能範囲Qを示す説明図である。
溶射装置100は、コークス炉の炭化室に挿入され、予め特定された炉壁の減肉部を溶射して補修する装置である。溶射装置100は、図1に示すように、炭化室と燃焼室とが交互に配置されたコークス炉の炉団方向に移動可能な台車200に載置され、補修対象の炭化室の位置に移動可能に設けられている。
台車200は、溶射装置100の基部101が載置される載置台201と、載置台201を支持する一対の脚部202、203とからなる。脚部202、203は台車軌条211、213上に置かれており、台車200はコークス炉の炉団方向に延設された台車軌条211、213に沿って移動される。載置台201には、溶射装置100の基部101を支持する支持機構220が設けられている。支持機構220は、例えば図1に示すように、複数の支持ローラ221~224から構成されている。溶射装置100の基部101は、支持ローラ221~224上を移動することで、溶射装置100の先端部分に設けられたノズル部107を炭化室内に挿入させたり、炭化室内から退避させたりすることができる。
溶射装置100は、基部101と、本体部102と、接地部103と、マニピュレータ105と、ノズル部107とを備える。基部101は、溶射装置100の本体部102から炭化室外に向かって延設されており、台車200上に載置されている。一方、接地部103、マニピュレータ105及びノズル部107は、本体部102に対して基部101とは反対側に設けられている。接地部103は、本体部102が押出機側(PS)からガイド車側(CS)へ所定の距離以上炭化室内に挿入されると、炭化室内の炉底に接地し、本体部102を支持する。マニピュレータ105は、溶射装置100の先端部分に設けられたノズル部107を所望の位置に移動させるための機構である。
マニピュレータ105は、一端が本体部102に固定され、他端に接続部105bが設けられた、炉長方向に伸縮可能な第1の位置決め装置105aと、一端が接続部105bに固定され、他端にノズル部107が設けられた、炉高方向に移動可能な第2の位置決め装置105cとからなる。なお、本実施形態に係る第2の位置決め装置105cは、図2に示すように、接続部105bを中心として炉高方向に回転することで、ノズル部107を炉高方向に上下に移動させるが、本発明はかかる例に限定されず、炉高方向に平行移動させる装置であってもよい。このようなマニピュレータ105により、溶射装置100の先端部分のノズル部107を、炉壁の所望の位置に移動させることができる。
ノズル部107は、マニピュレータ105によって炉壁に対する溶射位置へ移動される部分であり、溶射バーナー(図3の溶射バーナー110)と、レーザー距離計(図3のレーザー距離計121)とを備える。溶射バーナーは、炉壁の損傷部へ向けて溶射材の吹き付けを行う。損傷部に溶射材が吹き付けて炉壁面を平坦とすることで、炉壁は補修される。レーザー距離計は、コークス炉の炉壁表面の凹凸を計測する計測装置である。レーザー距離計は、コークス炉の炭化室に挿入され、炉長方向に炭化室側の壁面を走査する。なお、ノズル部107の詳細な構成については後述する。
以上、本実施形態に係る溶射装置100の構成について説明した。
[1-2.ノズル部]
次に、図3に基づいて、本実施形態に係る溶射装置100のノズル部107の構成を説明する。図3は、本実施形態に係る溶射装置100のノズル部107の構成を示す平面図及び部分断面図である。なお、ノズル部107は後述するように軸Cの周りに回転可能に構成されるため、図3の座標は、ノズル部107の一状態を基準としたαβγ座標を示しているが、α方向は、図2等に示すXYZ座標のX方向と一致する。
本実施形態に係る溶射装置100のノズル部107は、上述したように、筐体130内に、溶射バーナー110と、レーザー距離計121とを備える。筐体130内は、内部に設けられた機器を正常に動作させるため、水冷等により機器の耐熱温度以下に保たれている。
溶射バーナー110は、溶射装置100の基部101側から供給される溶射材を補修対象の炉壁に対して溶射する。溶射材は、溶射バーナー110の管内を通り、溶射口111から溶射される。なお、図3及び後述する図4、図5では、ノズル部107の軸Cに対し、溶射バーナー110が設けられている側を溶射部107Aとして示している。
レーザー距離計121は、レーザー光を対象物(ここでは炉壁の損傷部)に対して照射し、対象物により反射された反射光を受光することにより対象物との距離を計測する。レーザー距離計121からノズル部107の軸Cに平行な方向(以下、「軸方向」ともいう。)に向かって出射したレーザー光は、ミラー123によって進行方向を軸方向に垂直な方向に変更された後、照射口125から出射される。照射口125は、耐熱ガラス等のレーザー光を透過可能な部材が設けられている。なお、図3及び後述する図4、図5では、ノズル部107の軸Cに対し、レーザー距離計121が設けられている側を計測部107Bとして示している。
溶射バーナー110及びレーザー距離計121は、溶射バーナー110の溶射口111とレーザー距離計121の照射口125が、ノズル部107の軸Cに対して直交する同一面内に位置し、かつ、異なる向きとなるように、ノズル部107に設けられている。
例えば図3に示すように、溶射バーナー110の溶射口111とレーザー距離計121の照射口125とは、背中合わせに、すなわち180°異なる向きで配置されている。これにより、溶射バーナー110の溶射口111から溶射される溶射材の溶射方向と、レーザー距離計121の照射口125から出射されるレーザー光の照射方向とが180°異なる方向となる。なお、溶射バーナー110の溶射方向とレーザー距離計121の照射方向とのなす角φは、特に限定されるものではない。
ここで、本実施形態に係るノズル部107は、軸Cを回転中心として回転可能に構成されている。ノズル部107は、マニピュレータ105との接続部分に設けられた回転駆動部107Cにより回転される。なお、図3に示すノズル部107は、軸Cが溶射バーナー110のバーナー管の軸と一致しているが、これらの軸は必ずしも一致していなくともよい。ノズル部107が軸Cの周りに回転されることにより、補修対象の炉壁に対し、溶射バーナー110の溶射口111を対向させたり、レーザー距離計121の照射口125を対向させたりすることができる。図3に示すノズル部107の構成では、同一平面上で、ノズル部107を180°回転させることが可能になるため、照射口の位置と溶射口の位置を入れ替えることができる。ノズル部107を180°回転させることにより、溶射バーナー110とレーザー距離計121とは同一の範囲を処理することができる。
<2.補修方法>
上述の溶射装置100を用いたコークス炉の炭化室の炉壁の損傷部を溶射する炉壁溶射方法は、計測工程と、溶射工程とを含む。計測工程では、レーザー距離計121の照射口125を炉壁面と対向させ、マニピュレータ105を動作させて炉壁面との距離が計測される。その後、回転駆動部107Cにより軸Cを回転中心としてノズル部107を回転させて、溶射バーナー110ーの溶射口111を補修対象の炉壁面と対向させた後、計測工程による計測結果に基づいて炉壁面の損傷部への溶射が行われる。
ここで、図6、図7に示したような従来の溶射装置100では、側壁下部に処理可能範囲Q外となる部分が存在するため、当該部分については炉壁の減肉量を、レーザー距離計を用いて定量的に計測することができない。したがって、例えば炉内に挿入されている撮像装置により取得された画像に基づいて、作業者による目測で減肉量を推定し、溶射量及び溶射軌道を手作業で設定する必要がある。このため、溶射作業の精度が低下し、時間も要していた。また、溶射材を盛り過ぎて炉壁に凸部を生じさせてしまうこともあり、コークスの押出負荷を増大させ、かえって炉壁にダメージを与えてしまうこともある。
そこで、本実施形態に係る溶射装置100を用いることで、マニピュレータ105を動作させずにレーザー距離計121による計測及び溶射バーナー110による溶射が可能な処理可能範囲Qを拡大することが可能となる。その結果、レーザー距離計を用いて計測された炉壁の減肉量に基づき溶射量及び溶射軌道を決定することができるため、溶射作業の精度を高めることができる。
すなわち、本実施形態に係るノズル部107は、溶射バーナー110の溶射口111とレーザー距離計121の照射口125が、ノズル部107の軸Cに対して直交する同一面内に位置し、かつ、異なる向きとなるように溶射バーナー110及びレーザー距離計121が設けられている。このようなノズル部107を、処理内量(すなわち、計測工程か溶射工程か)や補修範囲の高さ方向位置に応じて、軸Cを回転中心として回転させる。これにより、ノズル部107を炉底Sに近接させることが可能となり、溶射バーナー110及びレーザー距離計121の処理可能範囲Qが拡大される。以下、図4及び図5に基づいて、より詳細に説明する。
(設定A:水平状態での計測・溶射)
図4に、設定Aとして、炉壁の高さ方向中央部に対して計測及び溶射を実施するときのノズル部107の設定状態を示す。図4は、炭化室の高さ方向中央部を炉長方向(X方向)から見た状態を示している。本実施形態において、炭化室の高さ方向中央部とは、マニピュレータ105を動作させることなく溶射バーナー110及びレーザー距離計121により同一位置を処理することができる高さ位置の範囲をいう。通常、炉底Sまたは天井Sから炭化室の高さ方向中央に向かって所定の長さまでの範囲以外が、炭化室の高さ方向中央部となる。
ここでは、炭化室を構成する一対の側壁S、Sのうち側壁Sに生じた損傷部Rを溶射して補修する場合を考える。設定Aは、通常の計測、溶射を実施する場合の設定であり、溶射バーナー110の溶射口111の向き及びレーザー距離計121の照射口125の向きは、炉壁面に対して垂直な水平状態とされる。
例えば、溶射工程では、図4上側に示すように、溶射バーナー110の溶射口111の向きが補修対象の炉壁Sと対向し、水平となるように、ノズル部107の回転角度が調整される。また、計測工程では、図4下側に示すように、レーザー距離計121の照射口125の向きが補修対象の炉壁Sと対向し、水平となるように、ノズル部107の回転角度が調整される。図4に示すノズル部107のように、溶射バーナー110の溶射方向とレーザー距離計121の照射方向とのなす角φが180°異なるノズル部107の場合、回転駆動部107Cによりノズル部107を180°回転させることで、同一位置の処理を行うことができる。
(設定B:斜め状態での計測・溶射)
図5に、設定Bとして、炉壁の下部に対して計測及び溶射を実施するときのノズル部107の設定状態を示す。図5は、炭化室の高さ方向下部を炉長方向(X方向)から見た状態を示している。ここでも、図4と同様、炭化室を構成する一対の側壁S、Sのうち側壁Sに生じた損傷部Rを溶射して補修する場合を考える。設定Bは、ノズル部107を設定Aとした場合ではマニピュレータ105を動作させることなく同一位置を処理することができない場合の設定である。このとき、溶射バーナー110の溶射口111の向き及びレーザー距離計121の照射口125の向きは、水平状態から炉底S側に所定角度回転された斜め状態とされる。
例えば、溶射工程では、図5上側に示すように、溶射バーナー110の溶射口111の向きが補修対象の炉壁Sと対向し、かつ、水平状態から角度θだけ炉底S側を向くように、ノズル部107の回転角度が調整される。また、計測工程では、図5下側に示すように、レーザー距離計121の照射口125の向きが補修対象の炉壁Sと対向し、かつ、水平状態から角度θだけ炉底S側を向くように、ノズル部107の回転角度が調整される。水平状態から回転される角度θは、例えば30°程度に設定される。図5に示すノズル部107のように、溶射バーナー110の溶射方向とレーザー距離計121の照射方向とが180°異なるノズル部107の場合、回転駆動部107Cによるノズル部107の回転可能角度θmaxは(180°+2θ)となる。
このように、炉底S付近ではノズル部107を軸Cの周りに回転させて、溶射バーナー110の溶射口111の向き及びレーザー距離計121の照射口125の向きを斜め下とすることで、例えば側壁S、Sと炉底Sとのコーナー部のように、炉底S近傍の側壁の計測及び溶射が可能となる。
ノズル部107を回転させる回転駆動部107Cは、溶射装置100の動作全般を制御する制御装置(図示せず。)により制御される。回転駆動部107Cは、制御装置による指示に基づき駆動し、ノズル部107を所定の角度となるように回転させる。このとき、制御装置は、処理内量や補修範囲の高さ方向位置に応じて予め設定Aと設定Bとを設定し、ノズル部107の位置に基づき設定Aと設定Bとを自動的に切り替えるようにしてもよい。
以上、本実施形態に係る溶射装置100の構成とその動作について説明した。本実施形態によれば、溶射装置100のノズル部107には、溶射バーナー110の溶射口111とレーザー距離計121の照射口125が、ノズル部107の軸Cに対して直交する同一面内に位置し、かつ、異なる向きとなるように、溶射バーナー110及びレーザー距離計121が設けられている。このようなノズル部107を、処理内量や補修範囲の高さ方向位置に応じて、軸Cを回転中心として回転させることにより、ノズル部107を炉底Sに近接させることが可能となり、図2に示すように、溶射バーナー110及びレーザー距離計121の処理可能範囲Qを拡大することができる。
その結果、レーザー距離計を用いて計測された炉壁の減肉量に基づき溶射量及び溶射軌道を決定することができるため、溶射作業の精度を高めることができる。作業者による手作業での処理も不要となるため、処理時間も短縮することができる。特に減肉が顕著な炉底付近の側壁の溶射補修が可能になるため、コークス押出負荷の軽減や、コークス押詰りによるトラブルを回避でき、コークス生産量低下を抑えることができる。また、適切な溶射補修が行われることで、炉壁の強度低下を低減でき、コークス炉の設備寿命を延長できる。
また、上記特許文献2の補修装置には、炉壁の2つの側壁用と炉底用の3個のレーザー距離計が搭載されている。これに対して、本実施形態に係るノズル部107は回転可能に構成されていることから、1個のレーザー距離計121を設けることで2つの側壁と炉底との距離をすべて測定することができる。これにより、溶射装置100を小型化することができ、レーザー距離計121の駆動に伴う機器も削減されるため、設備コストを低下させることもできる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
10、20、100 溶射装置
11、21 機体
13、23、105 マニピュレータ
14、24、121 レーザー距離計
15、25、110 溶射バーナー
101 基部
102 本体部
103 接地部
107 ノズル部
107A 溶射部
107B 計測部
107C 回転駆動部
111 溶射口
123 ミラー
125 照射口
130 筐体
200 台車
201 載置台
202、203 脚部
211、213 台車軌条
220 支持機構
221、222、223、224 支持ローラ

Claims (5)

  1. コークス炉の炭化室の炉壁の損傷部を溶射する溶射装置であって、
    溶射口から溶射材を溶射する溶射バーナーと、照射口からレーザー光を対象物に対して照射して前記対象物との距離を計測するレーザー距離計とが設けられたノズル部と、
    先端に前記ノズル部が設けられ、前記ノズル部を所定の位置に移動させるために動作するマニピュレータと、
    を備え、
    前記溶射バーナー及び前記レーザー距離計は、前記溶射バーナーの溶射口と前記レーザー距離計の照射口とが、前記ノズル部の軸に対して直交する同一面内に位置し、かつ、異なる向きとなるように、前記ノズル部に設けられており、
    前記ノズル部は、当該ノズル部の軸回りに回転可能に構成されている、溶射装置。
  2. 前記溶射バーナーの溶射口の向きと前記レーザー距離計の照射口の向きとは180°異なる、請求項1に記載の溶射装置。
  3. 溶射装置を用いてコークス炉の炭化室の炉壁の損傷部を溶射する炉壁溶射方法であって、
    前記溶射装置は、
    溶射口から溶射材を溶射する溶射バーナーと、照射口からレーザー光を対象物に対して照射して前記対象物との距離を計測するレーザー距離計とが設けられたノズル部と、
    先端に前記ノズル部が設けられ、前記ノズル部を所定の位置に移動させるために動作するマニピュレータと、
    を備え、
    前記溶射バーナー及び前記レーザー距離計は、前記溶射バーナーの溶射口と前記レーザー距離計の照射口とが、前記ノズル部の軸に対して直交する同一面内に位置し、かつ、異なる向きとなるように、前記ノズル部に設けられており、
    前記レーザー距離計の照射口を炉壁面と対向させ、前記マニピュレータを動作させて前記炉壁面との距離を計測する計測工程と、
    回転駆動部により前記ノズル部を当該ノズル部の軸回りに回転させて前記溶射バーナーの溶射口を補修対象の炉壁面と対向させ、前記計測工程による計測結果に基づいて前記損傷部に対して溶射する溶射工程と、
    を含む、炉壁溶射方法。
  4. 前記計測工程では、
    前記炉壁の高さ方向中央部を計測する際には、前記レーザー距離計の照射口の向きを前記炉壁面に対して垂直となる水平状態とし、
    前記炉壁の高さ方向下部を計測する際には、前記回転駆動部により前記ノズル部を炉底側に回転させ、前記レーザー距離計の照射口の向きを前記水平状態から斜め状態とする、請求項3に記載の炉壁溶射方法。
  5. 前記溶射工程では、
    前記炉壁の高さ方向中央部を溶射する際には、前記溶射バーナーの溶射口の向きを前記炉壁面に対して垂直となる水平状態とし、
    前記炉壁の高さ方向下部を溶射する際には、前記回転駆動部により前記ノズル部を炉底側に回転させ、前記溶射バーナーの溶射口の向きを前記水平状態から斜め状態とする、請求項3または4に記載の炉壁溶射方法。
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