添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。図1は、レーザー加工装置2を示す斜視図である。レーザー加工装置2は、各構造を支持する基台4を備えている。基台4は、直方体状の基部6と、基部6の後端において上方に伸びる壁部8とを含む。
基部6の上方はカバー部材(不図示)で覆われており、基部6の前端の上方に位置するカバー部材の側面には、タッチパネル式の表示部8aが配置されている。表示部8aは、作業者がレーザー加工装置2に対して指示を入力する入力装置と、被加工物の画像、加工条件、加工結果等を表示する表示装置とを兼ねている。
基部6の上面には、チャックテーブル10が配置されている。チャックテーブル10の下方には、チャックテーブル10をY軸方向(即ち、割り出し送り方向)に移動させるY軸移動ユニット16が設けられている。Y軸移動ユニット16は、基部6の上面に固定されY軸方向に平行な一対のY軸ガイドレール18を備える。
Y軸ガイドレール18には、Y軸移動テーブル20がスライド可能に設置されている。Y軸移動テーブル20の裏面側(下面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Y軸ガイドレール18と平行に配置されたY軸ボールネジ22が回転可能な態様で結合されている。
Y軸ボールネジ22の一端には、Y軸パルスモータ24が連結されている。Y軸パルスモータ24でY軸ボールネジ22を回転させれば、Y軸移動テーブル20は、Y軸ガイドレール18に沿ってY軸方向に移動する。
Y軸移動テーブル20の表面側(上面側)には、チャックテーブル10をY軸方向と直交するX軸方向(即ち、加工送り方向)に移動させるX軸移動ユニット26が設けられている。X軸移動ユニット26は、Y軸移動テーブル20の上面に固定されX軸方向に平行な一対のX軸ガイドレール28を備える。
X軸ガイドレール28には、X軸移動テーブル30がスライド可能に設置されている。X軸移動テーブル30の裏面側(下面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸ガイドレール28と平行に配置されたX軸ボールネジ32が回転可能な態様で結合されている。
X軸ボールネジ32の一端には、X軸パルスモータ34が連結されている。X軸パルスモータ34でX軸ボールネジ32を回転させれば、X軸移動テーブル30は、X軸ガイドレール28に沿ってX軸方向に移動する。
X軸移動テーブル30の表面側(上面側)には、支持台36が設けられている。支持台36の上部には、略円盤状のチャックテーブル10が配置されている。チャックテーブル10は、下方に設けられた回転駆動源(不図示)と連結されており、この回転駆動源より回転可能に構成されている。
チャックテーブル10の表面側には、ポーラスセラミックス等で形成された円盤状のポーラス板が設けられている。ポーラス板はチャックテーブル10の内部に設けられた流路(不図示)を通じてエジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。吸引源が発生する負圧により、ポーラス板の表面(即ち、保持面10a)には吸引力が発生する。
保持面10a上には、レーザー加工装置2で加工される被加工物11が配置される。被加工物11は、例えば、シリコン等の半導体材料から成るウェーハである。図2は、レーザー加工装置2に載置された被加工物11の上面図である。
被加工物11は、円盤状に形成されており、表面11aから裏面11bまでの厚さが500μmから1000μm程度である。被加工物11の表面11a側には、IC(Integrated Circuit)、LSI(large-scale integrated circuit)等の機能素子(不図示)が設けられている。
なお、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、被加工物11は、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)などシリコン以外の他の半導体材料で形成されてもよい。同様に、被加工物11の機能素子の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。
被加工物11には、複数の分割予定ライン13(ストリート)が設定されている。複数の分割予定ライン13で区画された表面11a側の各領域には、デバイス15が設けられている。デバイス15は、被加工物11の表面11a側に形成されている。
デバイス15は、上述の機能素子と、機能素子の上方に各々位置する所定の配線層とを含む。所定の配線層は、交互に積層された低誘電率絶縁体膜(いわゆる、Low-k膜)及び金属層、ビア等で形成されている。
各デバイス15の最表面には、ターゲットパターン17(キーパターン又はアライメントマークと呼ばれる場合もある)が含まれている。図3(A)は、分割予定ライン13の交差点近傍の静止画像であり、図3(B)は、ターゲットパターン17の拡大図である。
例えば、図3(A)に示す様に、1つの分割予定ライン13の交差部を含む所定範囲をカメラ等で見た場合に、カメラの視野には少なくとも1つのターゲットパターン17が入る。ターゲットパターン17は、各デバイス15の左上側に位置する十字形状のパターンであるが、十字形状に限定されず、他の任意の形状を有してもよい。
ターゲットパターン17は、例えば、機能素子の上方に位置する所定の配線層の一部である。ターゲットパターン17は、例えば、デバイス15の上面から数μmだけ窪んだ凹部のパターンである。なお、ターゲットパターン17は、デバイス15の上面から数μmだけ突出した凸部のパターンであってもよい。
ターゲットパターン17は、各デバイス15の対応する同じ位置に設けられている。ターゲットパターン17の基準位置(例えば、分割予定ライン13と平行な一辺)から、分割予定ライン13までの距離は、一律同じとなる様に予め定められている。それゆえ、ターゲットパターン17の基準位置を特定することにより、分割予定ライン13の位置が特定される。
図1に戻って、被加工物11の周囲には、被加工物11の径よりも大きな径の開口を有する金属製の環状フレーム21が配置されている。環状フレーム21には、開口よりも大きな径を有する略円形状の保護テープ19が環状フレーム21の開口を覆うように貼り付けられている。
保護テープ19は、樹脂製のフィルムであり、粘着性を有する粘着層(不図示)と、粘着性を有しない基材層(不図示)との積層構造を有する。粘着層は、例えば、紫外線硬化型の樹脂層であり、樹脂製の基材層の一面の全体に設けられている。
保護テープ19の粘着層側を、被加工物11の裏面11b側と、環状フレーム21の外周部とに密着させて貼り付けることで、保護テープ19を介して被加工物11及び環状フレーム21が固定されたフレームユニット23が形成される。
フレームユニット23は、被加工物11の表面11a側が露出する態様で、保持面10a上に配置される。この状態で、吸引源を動作させて保持面10aに負圧を作用させることにより、被加工物11はチャックテーブル10で保持される。
チャックテーブル10の上方には、レーザービーム照射ユニット12(即ち、加工ユニット)が設けられており、レーザービーム照射ユニット12の先端部には、保持面10aと対向する態様で、加工ヘッド12aが設けられている。加工ヘッド12aからは、パルス状のレーザービームが保持面10aに向けて略垂直に照射される。
図4は、被加工物11を加工する様子を示す斜視図である。本実施形態のレーザービームLは、被加工物11に吸収される波長を有する。このレーザービームLにより被加工物11の表面11a側は、アブレーション加工される。但し、これに代えて、レーザービームLは被加工物11を透過する波長を有してもよい。
例えば、被加工物11を透過する波長のレーザービームLの集光点を被加工物11の内部に位置付けることにより、被加工物11の内部には改質層が形成される。また例えば、被加工物11を透過する波長のレーザービームLの集光点を被加工物11の内部に位置付けることにより、被加工物11の表面11aから裏面11bに貫通する細孔と、この細孔の周囲を囲む非晶質領域とを有するシールドトンネルが形成される。
図1に戻って、レーザービーム照射ユニット12のX軸方向の両側には、第1の撮像ユニット14-1及び第2の撮像ユニット14-2が設けられている。第1の撮像ユニット14-1及び第2の撮像ユニット14-2の各々は、撮像素子(不図示)を有する。
第1の撮像ユニット14-1の下端部には、保持面10aと対向する態様で第1の撮像ヘッド14-1aが設けられており、第2の撮像ユニット14-2の先端部には、保持面10aと対向する態様で第2の撮像ヘッド14-2aが設けられている。
第1の撮像ヘッド14-1a及び第2の撮像ヘッド14-2aの各々には、レンズ等が設けられている。被写体からの反射光は、レンズ等を介して撮像素子へ導かれる。撮像素子が光電変換を行うことで、被加工物11の表面11aが撮像される。
第1の撮像ユニット14-1及び第2の撮像ユニット14-2と、レーザービーム照射ユニット12とは、壁部8の上部前面から前方に向かって伸びる支持アーム40の一端に固定されている。また、支持アーム40の他端は、壁部8の上部前面に固定されている。
第1の撮像ユニット14-1及び第2の撮像ユニット14-2と、レーザービーム照射ユニット12とは、Y軸移動ユニット16及びX軸移動ユニット26でチャックテーブル10をY軸及びX軸方向に動かすことにより、チャックテーブル10に対してY軸方向及びX軸方向に相対的に移動させられる。
チャックテーブル10と第1の撮像ユニット14-1及び第2の撮像ユニット14-2とをX軸方向に相対的に移動させながら、第1の撮像ユニット14-1又は第2の撮像ユニット14-2でターゲットパターン17を撮像することで、ターゲットパターン17のブレ画像を取得できる。なお、本実施形態のブレ画像とは、被写体ブレ(motion blur)が生じた画像を意味する。
例えば、チャックテーブル10のX軸方向の加工送り速度を2.0m/sとし、第1の撮像ユニット14-1のシャッター速度(即ち、撮像素子の露光時間)を30μsとする。これにより、X軸方向に生じるブレΔが60μm(=2.0m/s×30μs)であるブレ画像を取得できる。
図5(A)は、被写体ブレが生じた場合のターゲットパターン17を含む領域のブレ画像であり、図5(B)は、被写体ブレが生じた場合のターゲットパターン17の拡大図である。
図1に戻って、レーザービーム照射ユニット12、第1の撮像ユニット14-1及び第2の撮像ユニット14-2、Y軸移動ユニット16、X軸移動ユニット26等の各構成要素の動作は、レーザー加工装置2の制御部42により制御される。制御部42は、例えばコンピュータであり、ホスト・コントローラを介して相互に接続されるCPU、RAM、ROM、ハードディスクドライブ等を有する。
CPUは、例えば、RAM、ROM、ハードディスクドライブ等の記憶部分に格納されたプログラム、データ等に基づいて演算処理等を行う。CPUが記憶部分に格納されたプログラムを読み込むことにより、制御部42は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段として機能できる。
制御部42は、ターゲットパターン記憶部44を有する。ターゲットパターン記憶部44は、例えば、上述の記憶部分の一部である。ターゲットパターン記憶部44は、所定の画像を記憶する。例えば、ターゲットパターン記憶部44は、ターゲットパターン17(第1のターゲットパターン17)を含む領域のブレ画像(第1のブレ画像)を記憶する。
制御部42は、パターンマッチング部46を更に有する。なお、パターンマッチング部46及びターゲットパターン記憶部44は、加工領域を検出するプログラムである加工領域検出ユニット48の一部である。
パターンマッチング部46は、例えば上述の記憶部分に格納されたプログラムである。パターンマッチング部46は、2つの画像を比較して一致度を検出する機能を有する。パターンマッチング部46は、例えば、2つの画像の相関を、SSD(Sum of Squared Difference)やSAD(Sum of Absolute Difference)等の既知のアルゴリズムで算出する。
パターンマッチング部46は、ターゲットパターン記憶部44に記憶されている第1のブレ画像と、新たに取得された第2のターゲットパターン17を含む領域のブレ画像(第2のブレ画像)とをパターンマッチングする。第2のターゲットパターン17は、例えば、第1のターゲットパターン17とは異なる場所に位置するが、同じ場所に位置してもよい。
加工領域検出ユニット48は、パターンマッチングの結果に応じて、レーザービーム照射ユニット12が加工すべき領域を検出する。つまり、加工領域検出ユニット48は、パターンマッチングにより、第2のブレ画像のターゲットパターン17の座標位置を特定することで、分割予定ライン13の範囲(加工すべき領域)を検出する。
そして、制御部42は、加工領域検出ユニット48により検出された座標に応じて、分割予定ライン13の幅方向の中央をレーザービーム照射ユニット12で加工する様に、レーザービーム照射ユニット12とチャックテーブル10との相対的な位置を修正する。
次に、図6(A)、図6(B)、図6(C)及び図7を用いて、第1実施形態に係る被加工物11の加工方法を説明する。まず、ティーチステップ(S10)が行われる。ティーチステップ(S10)では、例えば、ターゲットパターン17の静止画像を撮像し、ターゲットパターン17から分割予定ライン13までの距離が検出される。
なお、ターゲットパターン17から分割予定ライン13までの距離の情報が予め得られている場合には、静止画像を撮像する必要はない。この場合、ターゲットパターン17から分割予定ライン13までの距離の情報が、例えば、オペレーターにより表示部8aを介して制御部42へ入力される。
次に、チャックテーブル10と第1の撮像ユニット14-1及び第2の撮像ユニット14-2とを相対的に移動させる。例えば、チャックテーブル10をX軸方向に移動させながら、第1の撮像ユニット14-1で、1つのターゲットパターン17を撮像する。
これにより、ターゲットパターン17(第1のターゲットパターン17)を含む領域のブレ画像(第1のブレ画像)を撮像する。このブレ画像は、上述のターゲットパターン記憶部44に記憶される。図6(A)は、ティーチステップ(S10)での第1のターゲットパターン17を含む領域のブレ画像である。
ティーチステップ(S10)の後、アライメントステップ(S20)が行われる。アライメントステップ(S20)では、一の方向の分割予定ライン13とX軸方向とが平行になるようにチャックテーブル10を回転させる。そして、第1行目の分割予定ライン13のセンターラインAとレーザービームLのスポットの位置とが一致する様に、制御部42がチャックテーブル10等の位置を制御して、被加工物11と加工ヘッド12aとの相対位置を調整(即ち、アライメント)する。
アライメントステップ(S20)後に、1つの分割予定ライン13の加工を開始する(S30)。加工ヘッド12aからレーザービームLを照射しながら、チャックテーブル10と加工ヘッド12aとを分割予定ライン13に沿って加工送り方向に相対的に移動させる。これにより、被加工物11はレーザービームLでアブレーション加工される。
例えば、まず、レーザービームLを照射しながら、Y軸の一方向(例えば、+Y方向)の端部に位置する第1行目の分割予定ライン13に沿って、X軸の一方向(例えば、+X方向)にチャックテーブル10を移動させる(1パス目の加工)。
そして、一の方向と平行な全ての分割予定ライン13を加工していない場合(S40でNO)、制御部42は、次に加工するのは第k行目か否か判断する(S50)。なお、kは2以上の自然数であり、例えばオペレーターにより予め定められる数である。S50でYESの場合、後述する加工領域検出ステップ(S60)に進む。
これに対して、S50でNOの場合、一旦、レーザービームLの照射を停止し、チャックテーブル10をY軸の他方向(例えば、-Y方向)に所定量(即ち、所定長さ)だけインデックス送りする(S90)。これにより、第2行目の分割予定ライン13に対応する位置に加工ヘッド12aを相対的に移動させる。
そして、S30に戻り、第2行目の分割予定ライン13に沿ってレーザービームLを照射しながら、第2行目の分割予定ライン13に沿ってX軸の他方向(例えば、-X方向)にチャックテーブル10を移動させる(2パス目の加工)。
再び、S40及びS50に進み、S40及びS50の両方でNOの場合、一旦、レーザービームLの照射を停止し、チャックテーブル10をY軸の他方向(例えば、-Y方向)に所定量だけインデックス送りする(S90)。これにより、第3行目の分割予定ライン13に対応する位置に加工ヘッド12aを相対的に移動させる。
そして、第1行目と同様に、第3行目の分割予定ライン13に沿ってレーザービームLを照射しながら、第3行目の分割予定ライン13に沿ってX軸の一方向(例えば、+X方向)にチャックテーブル10を移動させる(3パス目の加工)。
この様に、分割予定ライン13に沿ったレーザービームLでの加工と、Y軸の他方向(例えば、-Y方向)への所定量のインデックス送りとを繰り返して、一の方向と平行な分割予定ライン13に沿って、被加工物11は加工される。
ところで、加工を進めるうちに、レーザー加工装置2や被加工物11で発生する熱等が原因で、チャックテーブル10のインデックス送り量が、所定のインデックス送り量から変動してしまうことがある。
特に、加工が進むにつれて、インデックス送り量の変動が累積的に加算される。これにより、レーザービームLのスポット位置が、分割予定ライン13のセンターラインAから徐々にずれることが懸念される(図6(B)参照)。
この場合、レーザービームLのスポット位置を修正することが望まれる。そこで、S40でNO且つS50でYESの場合、まず、加工領域検出ステップ(S60)を行う。加工領域検出ステップ(S60)では、まず、チャックテーブル10と、第1の撮像ユニット14-1及び第2の撮像ユニット14-2並びに加工ヘッド12aとを相対的に移動させる。
このとき、レーザービームLを被加工物11に照射して第k行目の分割予定ライン13を加工しながら、第k行目に位置するターゲットパターン17(第2のターゲットパターン17)を含む領域を第1の撮像ユニット14-1又は第2の撮像ユニット14-2で撮像する。これにより、ターゲットパターン17(第2のターゲットパターン17)を含む領域のブレ画像(第2のブレ画像)が得られる。
なお、上述の様に、チャックテーブル10がX軸の一方向(例えば、+X方向)に移動する場合、第1の撮像ユニット14-1が支持アーム40の進行方向の前方に位置する。この場合、支持アーム40の進行方向の後方に位置する第2の撮像ユニット14-2で、第2のターゲットパターン17を撮像する。これにより、分割予定ライン13に沿う加工痕Bと、第2のターゲットパターン17とを同時に撮像できる。
これに対して、チャックテーブル10がX軸の他方向(例えば、-X方向)に移動する場合、第2の撮像ユニット14-2が支持アーム40の進行方向の前方に位置するので、進行方向の後方に位置する第1の撮像ユニット14-1で、第2のターゲットパターン17を撮像する。
次に、パターンマッチング部46が、撮像された第k行目のターゲットパターン17(第2のターゲットパターン17)を含む領域のブレ画像(第2のブレ画像)と、第1のブレ画像とをパターンマッチングし、パターンマッチングの結果に応じて、加工領域検出ユニット48が加工領域を検出する。つまり、第k行目では、被加工物11を加工しながら、加工領域検出ステップが並行して行われる。図6(B)は、第k行目のターゲットパターン17を含む領域のブレ画像である。
パターンマッチング部46が、第1のブレ画像と第2のブレ画像とをパターンマッチングで比較した結果を受けて、加工領域検出ユニット48が、第2のブレ画像の基準位置(X軸方向に沿う分割予定ライン13に最も近い第1のターゲットパターン17の端辺)の座標を特定する。
第2のターゲットパターン17の基準位置から第k行目の分割予定ライン13までの距離は予め定められているので、第2のターゲットパターン17の基準位置の座標から第k行目の分割予定ライン13の座標が検出される。
例えば、第1のターゲットパターン17の基準位置(X軸方向に沿う分割予定ライン13に最も近い第1のターゲットパターン17の端辺)から、第1行目の分割予定ライン13に形成された加工痕Bまでの距離がCであったとする。
これに対して、加工中に生じる熱等が原因で、インデックス送り量が変動し、第2のターゲットパターン17の基準位置(X軸方向に沿う分割予定ライン13に最も近い第2のターゲットパターン17の端辺)から、第k行目の分割予定ライン13に形成された加工痕Bまでの距離がdだけ増加して、距離(C+d)となったとする(図6(B)参照)。
この場合、レーザービームLのスポットの中心位置が分割予定ライン13のセンターラインA上に位置する様に、インデックス送り量を修正し、当初のインデックス送り量よりも距離dだけ小さくすることが望まれる。
そこで、加工領域検出ステップ(S60)後に、第1行目から第k行目までのk個の分割予定ライン13の加工を終了し(S70)、割り出し送り量修正ステップ(S80)を行う。なお、本実施形態では、S30からS70で行われる被加工物11の加工を、加工ステップと称する。
本実施形態の割り出し送り量修正ステップ(S80)では、加工領域検出ステップ(S60)でのパターンマッチングの結果に応じて、加工領域検出ユニット48が、第(k+1)行目の分割予定ライン13の座標を特定する。
このとき、加工領域検出ユニット48は、ターゲットパターン17から加工痕Bまでの距離を特定する。これにより、加工領域検出ユニット48は、レーザービームLのスポットの中心位置が分割予定ライン13のセンターラインA上に位置するためには、インデックス送り量をどれくらいの長さに修正すべきかを特定する。
加工領域検出ステップ(S60)後の第(k+1)行目の分割予定ライン13の加工時には、第1行目から第k行目までの分割予定ライン13の加工時に比べて、インデックス送り量が距離dだけ小さくなる様に調整される(割り出し送り量修正ステップ(S80))(図6(C)参照)。図6(C)は、第(k+1)行目に位置する1つのターゲットパターン17を含む領域のブレ画像である。
第(k+1)行目の分割予定ライン13の座標は、第k行目の分割予定ライン13の座標に、修正されたインデックス送り量を加算することで特定される。そして、第(k+1)行目の分割予定ライン13では、加工領域検出ステップ(S60)で検出された加工領域をレーザービーム照射ユニット12で加工する。
このように、加工領域検出ユニット48は、パターンマッチングの結果に応じて、レーザービーム照射ユニット12が加工すべき領域を検出する。これにより、インデックス送り量を修正しない場合に比べて、より正確な加工を行うことができる。
本実施形態では、加工ステップ(即ち、S30からS70)中にチャックテーブル10を停止させることなく、ターゲットパターン17を含む領域のブレ画像を取得してパターンマッチングが行われる。それゆえ、チャックテーブル10を停止させてターゲットパターン17を含む領域を撮像する場合に比べて、被加工物11の加工時間を短縮できる。
加えて、ブレ画像どうしを用いてパターンマッチングを行うので、ブレΔが無い画像とブレ画像とを用いてパターンマッチングを行う場合に比べて、正確にパターンマッチングを行うことができる。
また、第(k+1)行目の分割予定ライン13から第(2k)行目の分割予定ライン13まで順次加工を行う(S30からS50を繰り返す)。このとき、インデックス送り量は、修正後のインデックス送り量とする。
そして、第(2k)行目(即ち、インデックス送り量の修正後の第1行目からk行目)を加工するときに(即ち、S50でYES)、上述のように他のターゲットパターン17を含む領域の他のブレ画像(第2のブレ画像に対応するブレ画像)を撮像する。そして、第1のブレ画像と他のブレ画像とをパターンマッチングして、加工領域を検出し(S60)、割り出し送り量を修正し(S80)、修正後のインデックス送りを行う(S90)。
k個の分割予定ライン13毎に加工領域検出ステップ(S60)、割り出し送り量修正ステップ(S80)を繰り返すことにより、インデックス送り量の変動の影響を低減し、より正確な加工を行うことができる。
図7は、加工方法の例を示すフロー図である。上述の様に、S10及びS20の後、分割予定ライン13の加工を開始する(S30)。一の方向と平行な全ての分割予定ライン13を加工していない場合(S40でNO)、制御部42が、レーザービームLにより次に加工する分割予定ライン13は、第k行目又は修正後の第1行目からk行目かどうかを判断する。
レーザービームLで次に加工する分割予定ライン13が、第k行目、又は、修正後の第1行目からk行目でない場合、S30に戻る。これに対して、レーザービームLにより次に加工する分割予定ライン13が、第k行目、又は、修正後の第1行目からk行目(即ち、第(2k)行目、第(3k)行目、第(4k)行目…)である場合には、加工領域検出ステップ(S60)に進む。
そして、第(k+1)行目から順次分割予定ライン13に沿ってレーザービームLを照射する。S40でNO且つS50でYESの場合、第(2k)行目の分割予定ライン13に沿ってレーザービームLを照射しながら、第(2k)行目の分割予定ライン13で再び加工領域検出ステップを行う(2回目の加工領域検出ステップ(S60))。
これに対して、一の方向と平行な全ての分割予定ライン13に沿ってレーザービームLを照射した場合(S40でYES)、一の方向と平行な分割予定ライン13の加工を終了する。
例えば、一の方向と平行な分割予定ライン13の数が10であり、k=4である場合について簡単に説明する。S10及びS20の後、第1行目から第3行目まで分割予定ライン13に沿って被加工物11が加工され(S30からS50及びS90の繰り返し)、第4行目の分割予定ライン13に対してレーザービームLを照射しながら加工領域検出ステップが行われる(1回目の加工領域検出ステップ(S60))。
そして、第1行目から第4行目までの4つの分割予定ライン13の加工を終了し(S70)、割り出し送り量を修正し(S80)、修正後の割り出し送り量でインデックス送りする(S90)。この状態で、第5行目から第7行目までの分割予定ライン13を加工する(S30からS50及びS90の繰り返し)。
そして、第8行目の分割予定ライン13に対してレーザービームLを照射しながら加工領域検出ステップが行われる(2回目の加工領域検出ステップ(S60))。第5行目から第8行目までの4つの分割予定ライン13の加工を終了し(S70)、割り出し送り量を修正する(S80)。この状態で、第9目の分割予定ライン13を加工する(S30)。
再び、S40及びS50でのNOを経て、第10行目の分割予定ライン13が加工される。第10行目の分割予定ライン13が加工されると(S40でYES)、一の方向と平行な全ての分割予定ライン13の加工は終了する。
その後、チャックテーブル10を90度回転させ、一の方向と直交する他の方向の全ての分割予定ライン13に沿って、図7に示すフロー図に従い、再び、他の方向の全ての分割予定ライン13に沿って被加工物11を加工する。
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、ターゲットパターン記憶部44が記憶するブレ画像を、撮像して取得するのではなく、ターゲットパターン17の静止画像を画像処理することで得る。
より具体的には、チャックテーブル10と第1の撮像ユニット14-1及び第2の撮像ユニット14-2とを相対的に移動させながら第1の撮像ユニット14-1又は第2の撮像ユニット14-2でターゲットパターン17を含む領域を撮像する場合に得られるブレΔに対応するブレΔを有する様に、ターゲットパターン17の静止画像を画像処理する。これにより、ターゲットパターン記憶部44が記憶するブレ画像(第1のブレ画像)を得る。係る点が第1実施形態と異なる。
第2実施形態のティーチステップ(S10)では、まず、静止状態の第1のターゲットパターン17を第1の撮像ユニット14-1又は第2の撮像ユニット14-2で撮像する。そして、例えば、制御部42が、第1のターゲットパターン17の静止画像を、加工送り速度及びシャッター速度から算出されるブレΔと同じブレΔを反映させる画像処理を行い、静止画像を加工する。これにより、第1のブレ画像が作成され、ターゲットパターン記憶部44に記憶される。
第2実施形態でも、加工ステップ(S30からS70)中にチャックテーブル10を停止させることなく、ターゲットパターン17を含む領域のブレ画像を取得してパターンマッチングが行われる。それゆえ、チャックテーブル10を停止させてターゲットパターン17を含む領域を撮像する場合に比べて、被加工物11の加工時間を短縮できる。加えて、ブレ画像どうしを用いてパターンマッチングを行うので、ブレΔが無い画像とブレ画像とを用いてパターンマッチングを行う場合に比べて、正確にパターンマッチングを行うことができる。
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、1つの分割予定ライン13に沿って往復する様にレーザービームLを照射してもよい(即ち、1つの分割予定ライン13につき複数パスの加工を施してもよい)。また、例えば、上記実施形態は、円環状の切り刃を有する切削ブレードを有する加工ユニットで被加工物11を加工する場合にも適用できる。
更に、アブレーション加工に代えて、被加工物11の内部に改質層を形成してもよい。この場合、1つの分割予定ライン13に沿ってレーザービームを照射して、その後、被加工物11の内部における集光点の深さ位置を変えて同じ分割予定ライン13に沿ってレーザービームを照射する。1つの分割予定ライン13に沿って往復する様にレーザービームを照射して、この分割予定ライン13の異なる深さ位置に複数の改質層が形成される。
また、第1変形例として、レーザービーム照射ユニット12を用いる場合に、同一行の分割予定ライン13でレーザービーム照射ユニット12の位置を修正してもよい。つまり、第k行目の分割予定ライン13に対して行われる加工領域検出ステップ(S60)での検出結果を、ターゲットパターン17を撮像した後に加工する同じ第k行目の分割予定ライン13に対して反映してもよい。
更に、第2変形例として、第1の撮像ユニット14-1及び第2の撮像ユニット14-2は、モーター等の移動機構(不図示)により、Y軸方向に移動可能であってもよい。これにより、レーザービーム照射ユニット12等の加工ユニットに対して、第1の撮像ユニット14-1及び第2の撮像ユニット14-2の位置を移動できる。
例えば、アライメントステップ(S20)及び加工領域検出ステップ(S60)で、第1の撮像ユニット14-1及び第2の撮像ユニット14-2の少なくとも一方が、分割予定ライン13を視野に含むがターゲットパターン17を視野に含まない位置にある。そこで、ターゲットパターン17を視野に含む様に、第1の撮像ユニット14-1及び第2の撮像ユニット14-2の少なくとも一方をY軸方向に動かしてもよい。