(本発明の一形態を得るに至った経緯)
アノードオフガスおよびカソードオフガスを燃焼室において混合燃焼させるSOFCシステムにおいて、酸化物イオン伝導体を電解質材料に採用した酸化物イオン伝導型SOFCの場合と、プロトン伝導体を電解質材料に採用したプロトン伝導型SOFCの場合とでは燃焼場に違いが生じるものと予想される。つまり、酸化物イオン伝導型SOFCは、酸化物イオンが空気極(カソード)側から燃料極(アノード)側に電解質を通過する構成となる。一方、プロトン伝導型SOFCは水素イオンが燃料極(アノード)側から空気極(カソード)側に電解質を通過する構成となる。その結果、酸化物イオン伝導型SOFCの場合、発電によって生じる水がアノードオフガスに混入する。一方、プロトン伝導型SOFCの場合は、発電によって生じる水がカソードオフガスに混入する。そのため、酸化物イオン伝導型SOFCと、プロトン伝導型SOFCとでは燃焼場に大きな違いが生じると予測される。
また、プロトン伝導型SOFCは、酸化物イオン伝導型SOFCよりも動作温度が約600℃と低くなっており、高性能化によりさらに動作温度が低下する可能性がある。
そこで、本発明者らはSOFCシステムにおける燃焼の性状について鋭意検討を行った。その結果以下の知見を得た。
まず、本発明者らはSOFCシステムの燃焼場において、噴出孔(アノードオフガス噴出孔)61から噴出された燃料(アノードオフガス)の温度と、その燃焼状態との関係に注目して、図1に示す実験装置を用いて模擬実験を行った。図1は、SOFCシステムの燃焼場において、噴出孔61から噴出された燃料(アノードオフガス)の温度と、その燃焼状態との関係を調べる実験装置の断面構造を示す模式図である。
まず、実験装置は、図1に示すように、実際のSOFC用燃焼バーナを模擬した形状および構成となっている。すなわち、実験装置は、幅約10mm、奥行70mm、高さ15mm程度のお椀型あるいは円環状のステンレス製構造体であり、側面と底面とによって囲まれた空間に燃焼場が形成される。また、燃料を燃焼場に導入するための円孔である噴出孔61が実験装置の底面に複数個、設けられており、空気を燃焼場に導入するための円孔62が実験装置の側面に複数個、設けられている。なお、図1では説明の便宜上、図示される噴出孔61は1つだけであるが、実際は、実験装置は複数の噴出孔61を備えている。
この実験では、燃料利用率(Uf)が80%で動作するSOFCにおけるアノードオフガスを模擬するため、水素と窒素とを混合させて希薄水素燃料を作成した。そしてこの作成した希薄水素燃料を、実験装置の底面に形成された複数の噴出孔61を介して、該底面から上方に向かって噴出させた。一方、カソードオフガスである空気は、炎の拡散性を向上させるために実験装置の側面に形成された複数の円孔62を介して、側面から燃焼場の中心に向かって噴出させた。そして、燃焼場ではアノードオフガスとカソードオフガスとを拡散混合させて燃焼させた。このとき、最も燃焼にとって良好な条件(空気比:λ=1.5、燃料の吹出流速2.0~2.7m/s)を考慮して比較実験を実施した。
比較実験では、供給される希薄水素燃料および空気の温度を、実験装置の燃焼場の下方(実験装置の底面)に配置されたヒーター63によって調整した。そして、噴出孔61から噴出される燃料の温度(アノードオフガス温度)が常温(ヒーター63をoffした状態)となる場合、300℃となる場合、および600℃となる場合それぞれについて、燃焼状態を比較した。その結果、図2に示す結果を得た。図2は、SOFCシステムの燃焼場において、噴出孔61から噴出された燃料(アノードオフガス)の温度であるアノードオフガス温度と、その燃焼状態との関係を比較した表である。
図2に示すように、アノードオフガス温度がSOFCの正常動作温度に相当する600℃では正常な燃焼を維持できたが、300℃まで低下すると複数ある噴出孔61に形成された火炎のうち、数本の火炎において失火が見られた。さらに常温(ヒーター63をoffにした状態)では火炎が不安定化し燃焼場において部分失火が確認された。なお、この部分失火とは、実験装置において複数の噴出孔61が設けられており、そのうちの1ブロック(概ね、全体の4分の1)以上の火炎が失火した状態を意味する。
図2に示す実験結果によって示される現象は、拡散燃焼器を用いた模擬ガス燃焼においても一般的に発生する現象であり、この現象が生じる原因については解明されていない。このため、現状では、SOFCシステムにおける燃焼不安定性を抑制するために、経験則的に、燃焼場の温度をできるだけ高く維持できるような構成としてきた。具体的には、SOFCシステムにおいて吸熱体である蒸発器および改質器と燃焼場との間に一定の距離を設けるよう設計する等、SOFCシステムが備える各部材の配置を工夫することで対処してきた。
次に、本発明者らは、SOFCシステムの燃焼場で実施される拡散燃焼の特徴を考慮して、この燃焼状態についてさらに検討した。まずSOFCシステムにおける燃焼器による拡散燃焼は、次の特徴を有するものと考えることができる。すなわち、SOFCシステムの燃焼場は、高温(約600℃)下に曝されており、燃焼される燃料に水分が含有され、燃焼状態は希薄燃焼となる特徴がある。
次に、上記した特徴を考慮し、燃焼器における燃焼状態を検討するため、アノードオフガスおよびカソードオフガスを模擬したガスを、燃焼器で拡散燃焼させて、汎用熱流体解析ソフトウエアを用いて数値解析を実施した。各種境界条件を実際のSOFCの動作点に合わせた条件とした。具体的には、SOFCの運転条件を、AC700W(定格)相当、燃料利用率80%、空気流量45NLM、S/C=2.5とした。
まず燃焼場におけるアノードオフガス温度変化による燃焼状態の影響を数値解析によって検討するため、アノードオフガス温度を700℃から順次低下させ、排気ガスに含まれるCO濃度の変化を調べた(図3参照)。図3は、SOFCシステムの燃焼場におけるアノードオフガス温度と排ガスに含まれるCO濃度との関係の一例を示すグラフである。図3では、酸化物イオン伝導型SOFCを備えたSOFCシステムにおいてアノードオフガス温度とCO濃度との関係を、グラフ上の黒丸で示している。また、プロトン伝導型SOFCを備えたSOFCシステムにおいてアノードオフガス温度とCO濃度との関係を、グラフ上の黒で塗りつぶした四角で示している。
酸化物イオン伝導型SOFCを備えたSOFCシステムの場合、図3に示すように、燃焼場におけるアノードオフガス温度が700℃から500℃まで低下する間は、COの濃度に大きな変化なく、特に問題はない。しかしながら、アノードオフガス温度が400℃まで低下すると燃焼場において形成された火炎が不安定化し、COの濃度が大きくなった。つまり、COの排出量が大きくなった。さらに、アノードオフガス温度を200℃まで低下させると、大量のCOが排出され、火炎内での燃焼化学反応が不安定化していることがわかった。このような数値解析上の現象は、図2に示した実験結果とも一致するものであった。
一方、プロトン伝導型SOFCを備えたSOFCシステムの場合、図3に示すように、燃焼場におけるアノードオフガス温度が、700℃から500℃まで低下する間は、COの濃度に大きな変化なく、特に問題はない。しかしながら、500℃から400℃まで低下するにつれて、COの濃度が徐々に高くなっていった。つまり、500℃から400℃までアノードオフガス温度が低下するにつれ、火炎が不安定化し、順次、COの排出量が大きくなっていった。さらに常温(27℃)まで低下させた場合、大量のCOが排出され、火炎内での燃焼化学反応が不安定化していることがわかった。
そこで、本発明者らは、上記した燃焼場におけるアノードオフガス温度とCO濃度(CO排出量)との関係を分析するため、火炎内における各種化学反応について分析をした。この分析は、燃料電池のセル(固体電解質型セル)の電解質材料として、プロトン伝導体を用いた場合の構成について行っており、その分析結果を図4、5に示す。図4、5は、SOFCシステムの燃焼場の火炎における反応分布の一例を示すグラフである。
図4では、アノードオフガス温度が600℃の場合のときの、火炎における反応分布について示している。一方、図5では、アノードオフガス温度が27℃の場合のときの、火炎における反応分布について示している。また、図4、5の縦軸は火炎内で発生する化学反応、特にはOHおよびCOそれぞれの反応の割合を示している。図4、5において破線は、OHの反応率の変化を示しており、実線はCOの反応率の変化を示している。一方、図4、5の横軸は高さ方向(垂直方向)における火炎70の基端70a(後述の図6参照)からの距離を示しており、紙面左から右に向かうにつれて、距離が大きくなる。なお、高さ方向における火炎70の基端70aからの距離とは、換言すると図6に示すように、噴出孔75から噴出された燃料に着火し形成された火炎70の中心軸оに沿った、噴出孔75からの距離である。図6は、SOFCシステムの燃焼場における火炎断面の様子を模式的に示す図である。なお、火炎断面は、図6に示すように、火炎70の外縁に形成された高温部となる領域である火炎面領域71と、該火炎面領域71の内側領域である中心領域72とに分かれている。また、火炎断面において中心軸о上の最高温度位置を火炎70の先端部70bとする。
図4に示すように、アノードオフガス温度が600℃のとき、火炎70の基端70aからの距離が約7.5mmの範囲、すなわち火炎70の先端部70bの位置で最もCOが反応することが分かる。また、火炎70の基端70aから4~6mmの範囲では、OHの反応率がマイナス側に変化するとともに、COの反応率がプラス側に変化している。つまりこの4~6mmの範囲ではOHの生成反応(化学反応式(3)の逆反応)と、COとOHの反応(化学反応式(2)の正反応)とが同時に起こる、水性ガスシフト反応(化学反応式(1))が見られることが分かった。
水性ガスシフト反応:
CO+H2O⇔CO2+H2 ・・・(1)
CO+OH⇔CO2+H ・・・(2)
OH+H2⇔H2O+H ・・・(3)
つまり、SOFCシステムにおける燃焼は、上記した特徴(高温(約600℃)、燃料に水分を含有、希薄燃焼)を有するため、燃焼器においてアノードオフガスの吹出直後から該アノードオフガスに含まれる水分が高温で分解され、OHが生成される(化学反応式(3)の逆反応)。そのOHとCOとが反応して(化学反応式(2)の正反応)、CO2に変化する現象が火炎70内で生じていることが分かった。
また、アノードオフガス温度を低下させ500℃以下となると、火炎70の基端70aから4~6mmの範囲における水性ガスシフト反応の反応率が急激に低下し、常温(アノードオフガス温度が27℃)では、図5に示すようにCOおよびOHともほぼ無反応になることが分かった。
以上のように、アノードオフガス温度の低下が、火炎70の基端70aから4~6mmの範囲で発生する水性ガスシフト反応を低下させ、大量のCO排出を引き起こしている事がわかった。
また、上記した解析結果から、SOFCシステムの燃焼場において、CO、水蒸気(H2O)、H2が図6に示すように移動することを本発明者らは見出した。図6に示すように、噴出孔75から吹出したアノードオフガスのうち、温度に依存して高い拡散性を示すH2は高温となる火炎面領域71へ引き寄せられ、H2と比較してさほど拡散性の高くないCOはそのまま火炎70の中心軸оに沿って中心領域72内を上昇する。そしてCOは火炎70の中心領域72において水性ガスシフト反応によりCO2となり、H2は火炎70の火炎面領域71において反応する。このような火炎70の性状はラジカル成分を可視化した写真においても確認された。
上記のような検討から、本発明者らは、H2/CO系燃焼において火炎を不安定化させる要因として、アノードオフガス温度の低下を発見した。また、上記した水性ガスシフト反応の有無に伴う火炎の状態変化は、従来のように火炎の外炎等の温度検知では見出すことができなかった現象である。そして、本発明者らは、アノードオフガス温度が所定温度以下まで低下したとき、SOFCシステムの発電制御動作を、燃焼化学反応不良を防止する動作に切り換えることで燃焼が不安定となることを抑制することができるという知見を得た。
上記した本発明者らの知見は、これまで明らかにされていなかったものであり、顕著な作用効果を奏する新規な技術的特徴を有するものである。そこで、本発明では具体的には以下に示す態様を提供する。
本発明の第1の態様に係る固体酸化物形燃料電池システムは、燃料ガスと酸化剤ガスとを反応させて発電を行う燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックから排出されるアノードオフガスとカソードオフガスとを拡散燃焼させる燃焼器と、前記燃焼器に流入する前記アノードオフガスの温度を検知する温度検知器と、制御器と、を備え、前記制御器は、発電運転中に前記温度検知器によって検知された前記アノードオフガス温度が、所定時間継続して第1所定温度未満となった場合、および所定時間の間に第2所定温度以上低下した場合のうち、少なくともいずれか1つの場合となったと判定したとき、前記拡散燃焼における化学反応不良を防止する発電制御動作を行うように制御する。
ここで、第1所定温度は、燃焼器に流入するアノードオフガスの温度が、燃焼が不安定となりCO等が排出される温度になりうるか否か予め判定できる温度である。また、所定時間の間に低下する第2所定温度は、固体酸化物形燃料電池システムにおいて異常に伴いアノードオフガス温度が低下しているか否か判定できる、単位時間当たりの、燃焼器に流入するアノードオフガスの温度変化を示すものである。
上記構成によると、温度検知器を備えるため、制御器は燃焼器に流入するアノードオフガスの温度を把握することができる。このため、制御器はアノードオフガス温度から燃焼が不安定となりCO等が排出される状態となりうるか否か判定することができる。
また、制御器は、アノードオフガス温度が、所定時間継続して第1所定温度未満となった場合、および所定時間の間に第2所定温度以上低下した場合のうち、少なくともいずれか1つの場合となったと判定したとき、拡散燃焼における化学反応不良を防止する発電制御動作を行うことができる。
したがって、制御器は、燃焼が不安定となりCO等が排出される状態となる前に、排出されるCO濃度を抑制させるように固体酸化物形燃料電池システムを制御することができる。
よって、本発明の第1の態様に係る固体酸化物形燃料電池システムは、発電時の燃焼における化学反応不良を抑制し、高い信頼性を得ることができるという効果を奏する。
本発明の第2の態様に係る固体酸化物形燃料電池システムは、上記した第1の態様において、前記制御器は、前記発電制御動作として、前記燃料電池スタックにおける燃料利用率、前記燃料電池スタックに供給する酸化剤ガス流量、および前記燃料電池スタックによる発電量のうち少なくとも一つを低下させるように制御する構成であってもよい。
上記構成によると、制御器は、発電制御動作として、前記燃料電池スタックにおける燃料利用率を低下させるように制御することができる。ここで、制御器は、燃料電池スタックに供給する燃料ガスの流量を大きくするように制御することで、燃料利用率を低下させることができる。あるいは、燃料電池スタックでの発電量を低下させることで燃料利用率を低下させることができる。いずれの場合であってもアノードオフガスに含まれる水素濃度が高くなるため拡散燃焼における火炎の温度を高めることができる。
また、制御器は、発電制御動作として、燃料電池スタックに供給する酸化剤ガス流量を低下させるように制御することができる。このため、固体酸化物形燃料電池システム全体の温度を高めることができ、これによって火炎の温度を高めるとともに、アノードオフガスの温度も高めることができる。
また、制御器は、発電制御動作として、燃料電池スタックによる発電量を低下させるように制御することができる。このため発電量を低下させることで発電に利用されるH2を低減させ、アノードオフガスに含まれるH2濃度を高めることができるため、火炎の温度を高めることができる。
以上のように制御器は、上記した発電制御動作の少なくとも一つを実施することができるため、火炎の温度を高め、火炎内において生じる水性ガスシフト反応を促進させて排出されるCO濃度を抑制することができる。
本発明の第3の態様に係る固体酸化物形燃料電池システムは、上記した第1の態様において、前記制御器は、前記発電制御動作として、前記燃料電池スタックにおける燃料利用率および前記燃料電池スタックによる発電量のうち少なくとも一つを低下させるように制御する構成であってもよい。
本発明の第4の態様に係る固体酸化物形燃料電池システムは、上記した第1から第3の態様のいずれか1つの態様において、前記制御器は、前記発電制御動作中に、前記アノードオフガス温度が、所定時間継続して、前記第1所定温度よりも低い設定温度である第3所定温度未満となったと判定した場合、前記発電制御動作を停止させて、前記燃料ガスおよび前記酸化剤ガスの供給を継続させたまま前記燃料電池スタックにおける発電を停止させるOCV運転に切り換えるように制御してもよい。
ここで、第3所定温度は、燃焼が不安定となりCO等の排出量が大きくなり始める際の、燃焼器に流入するアノードオフガスの温度とすることができる。
上記構成によると、発電制御動作中に所定時間継続して第3所定温度未満となったと判定した場合、制御器は、OCV運転に切り換えるように制御することができる。ここでOCV運転では、燃料電池スタックから排出されたアノードオフガスは、発電に利用されるべきH2も含んだ状態となっているため、上記した発電制御動作よりも、より一層、アノードオフガスに含まれる水素濃度が高くなる。このため、発電制御動作中よりも火炎の温度を高めることができる。
したがって、燃焼器に流入するアノードオフガスの温度低下がさらに進み、CO等の排出量が大きくなり始める温度まで達したときは、OCV運転に切り換えて火炎の温度をより一層高めることで、COの水性ガスシフト反応を促進し、排気ガス中に含まれるCO等の排出量の抑制を行うことができる。
本発明の第5の態様に係る固体酸化物形燃料電池システムは、上記した第1から第3の態様のいずれか1つの態様において、前記燃料電池スタックは、プロトン伝導体電解質を含む、複数の固体電解質型セルを備えていてもよい。
本発明の第6の態様に係る固体酸化物形燃料電池システムは、上記した第4の態様において、前記第3所定温度は400℃であってもよい。
本発明の第7の態様に係る固体酸化物形燃料電池システムは、上記した第4の態様において、前記第3所定温度は500℃であってもよい。
本発明の第8の態様に係る固体酸化物形燃料電池システムは、上記した第4の態様において、前記制御器は、前記OCV運転中に、前記アノードオフガス温度が、所定時間継続して、前記第3所定温度よりも低い設定温度である第4所定温度未満となったと判定した場合、当該固体酸化形燃料電池システムの運転を停止させるように制御してもよい。
本発明の第9の態様に係る固体酸化物形燃料電池システムは、上記した第8の態様において、前記第4所定温度は、200℃であってもよい。
本発明の第10の態様に係る固体酸化物形燃料電池システムは、上記した第1~第9の態様のいずれか1つの態様において、前記温度検知器は、前記燃料電池スタックの周囲に配置され、前記燃焼器に流入する前記アノードオフガスの温度を直接的に示す情報または間接的に示す情報を検知してもよい。
ここで、アノードオフガスの温度を直接的に示す情報とは、アノードオフガスの温度そのものの情報であり、間接的に示す情報とは、アノードオフガスの温度と対応して変動する例えば、燃料電池スタックの温度等である。
第11の態様に係る固体酸化物形燃料電池システムは、上記した第1~第10のいずれか1つの態様において、前記発電運転は、起動制御運転後であって、前記燃料電池スタックの温度が発電により外部負荷に対して安定的に電力を供給可能とする温度に達する前までの期間に行われる、定格出力となる電力よりも小さい電力を取り出すことにより燃料電池スタックに発電熱を発生させて該燃料電池スタックを昇温させる起動発電制御運転であってもよい。
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[実施の形態]
(SOFCシステムの構成)
まず、図7を参照して本発明の実施の形態に係るSOFCシステム100の構成について説明する。図7は、本発明の実施の形態に係るSOFCシステム100の一例を示す図である。なお、図7において(他の図面も同じ)、便宜上、同図のように「上」および「下」が取られ、重力は上から下に作用するものとする。
図7に示す例では、SOFCシステム100は、改質器2と、蒸発器4と、酸化剤ガス供給経路5と、SOFCスタック(燃料電池スタック)6と、酸化剤ガス熱交換器7と、アノードオフガス排出経路11と、改質ガス供給経路13と、混合ガス供給経路14と、燃焼器20と、第1カソードオフガス通過領域23と、第2カソードオフガス通過領域30と、制御器40、原燃料供給器41と、空気供給器42と、水供給器43と、酸化剤ガス供給器44と、を備える。
なお、本実施形態のSOFCシステム100では、SOFCシステム100の内部を改質器2、蒸発器4および燃焼器20などが収容される上部領域50Aと、SOFCスタック6などが収容される下部領域50Bとに仕切る隔壁部51が設けられている。
改質器2は、炭化水素系の原燃料を改質することで水素含有の改質ガスを生成する。本実施形態では、改質器2は、燃焼器20の上方に配置されており、内壁2Aと外壁2Bとから形成されている側壁部を備えるが、必ずしも、この構成に限定されるものではない。
但し、改質器2が側壁部を備えた構成とした場合、側壁部の厚みを適切に設定することで、改質器2の側壁部に充填された改質触媒2E全体に対して燃焼排ガスからの熱を効率よく伝えることができる。本実施の形態に係るSOFCシステム100では、例えば、改質器2内に改質触媒2Eの量を必要量(例えば、約200g程度)、確保したうえで、燃焼排ガスが保有する熱が改質触媒2E全体へ十分に伝わるように、内壁2Aと外壁2Bとの間隔(つまり、側壁部の厚み)を、約10mm程度に設定した構成とすることができる。なお、このような改質器2の具体例は例示であって、本例に限定されない。
ここで、実施の形態に係るSOFCシステム100では、改質器2の内壁2Aおよび外壁2Bは、径の異なる円筒体であるであるが、これに限らない。これらの内壁2Aおよび外壁2Bは、例えば、径の異なる矩形筒体であってもよい。
但し、実施の形態に係るSOFCシステム100の如く、改質器2の内壁2Aおよび外壁2Bを円筒体で構成した場合、これらを矩形筒体で構成した場合と比べ、製造時の溶接長さおよび溶接箇所を削減できる。このため、改質器2の製造コストの低減を図ることができる。また、改質器2の内壁2Aおよび外壁2Bを円筒体で構成した場合、ガス圧力への耐性、熱応力への耐性が向上し、円筒体の薄板化が可能となる。以上により、SOFCシステム100の低コスト化が図れる。
また、実施の形態に係るSOFCシステム100では、改質器2の側壁部の上端領域は上板部材2Uで覆われ、側壁部の下端領域は下板部材2Dで覆われている。なお、上板部材2Uの周辺部は、改質触媒2Eへ送るためのガスが通過する複数の開口部(図示せず)
が形成されている。
図7に示すように、高温の燃焼排ガスが、改質器2の外壁2BとSOFCシステム100の容器の内壁54との間の空間を通過する。これにより、改質器2の改質触媒2Eが燃焼排ガスの熱で加熱されている。
改質器2の内壁2Aの下端部近傍には、折り返し部16が設けられている。折り返し部16は、内壁2Aの周囲に沿って設けられた複数の開口部(図示せず)を備える。なお、この開口部は、改質触媒の触媒粒子の通過を阻止し、改質ガスの通気を許すような大きさ(例えば、直径1-3mm程度の丸穴)で内壁2Aに形成されている。
また、改質ガス供給経路13が、下板部材2Dを気密状態で貫通し、改質器2内の空間を鉛直上方に伸びている。なお、改質ガス供給経路13の上端部は、改質器2内の空間から改質ガス供給経路13への改質ガスの流入を阻害しない位置であって、上板部材2Uよりも下方に位置している。改質ガス供給経路13の下端部は、SOFCスタック6に接続されている。
改質器2の改質反応は、いずれの形態であってもよい。改質反応として、例えば、水蒸気改質反応、オートサーマル反応および部分酸化反応などを挙げることができる。なお、改質触媒の触媒金属には、一般的に、Pt、Ru、Rhなどの貴金属系触媒およびNiからなる群の中から選択される少なくとも1種を用いることができる。図7には示されていないが、上記の改質反応において必要となる機器は適宜設けられる。例えば、改質反応が水蒸気改質反応であれば、蒸発器4に水を供給する水供給器43(例えば、ポンプ)などが設けられる。改質反応がオートサーマル反応であれば、SOFCシステム100には、さらに、改質器2に改質用空気を供給する空気供給器42(例えば、ブロア)などが設けられる。
なお、改質器2に送る原燃料としては、メタンを主成分とする都市ガス、天然ガス、LPG等の少なくとも炭素および水素から構成される有機化合物を含む炭化水素系の原燃料ガスを用いてもよいし、アルコール、バイオ燃料、軽油などの炭化水素系の液体燃料を用いてもよい。
実施の形態に係るSOFCシステム100では、改質器2の改質反応として、水蒸気改質反応が行われている。すなわち、水蒸気と原燃料ガスとは、高温状態(約400~700℃)で、改質器2へ供給される。そして、改質器2では、その内部に充填された改質触媒2Eの層内で水蒸気改質反応によって生成されたH2、CO2、およびCOと、一部未改質ガスと、水蒸気と、からなる改質ガス(燃料ガス)が生成される。生成された改質ガスは、改質ガス供給経路13を通じてSOFCスタック6のアノードに供給される。また、改質器2の上板部材2Uの直上に、蒸発器4が設けられている。
蒸発器4は、内壁4Aと外壁4Bとで形成されている側壁部と、改質器2の上板部材2Uと下板部材4Dとで形成されている底部4Eとを備える。蒸発器4の側壁部の上端領域は、SOFCシステム100の容器の上壁52で覆われ、側壁部の下端領域は下板部材4Dで覆われている。よって、蒸発器4の側壁部および底部4Eの内部はいずれも空間となっている。そして、この側壁部内に、らせん状の流路を構成する流路部材4C(例えば、ワイヤー)が巻き付けられている。
なお、蒸発器4の外壁4Bと改質器2の外壁2Bは、同一筒体で構成されている。これにより、SOFCシステム100の部品点数を削減できる。
ここで、本実施形態のSOFCシステム100では、蒸発器4の内壁4Aおよび外壁4Bは、径の異なる円筒体であるが、これに限らない。これらの内壁4Aおよび外壁4Bは、例えば、径の異・BR>ネる矩形筒体でもよい。
但し、実施の形態に係るSOFCシステム100の如く、蒸発器4の内壁4Aおよび外壁4Bを円筒体で構成した場合、これらを矩形筒体で構成した場合と比べ、製造時の溶接長さおよび箇所を削減できるので、蒸発器4の製造コストの低減を図ることができる。また、蒸発器4の内壁4Aおよび外壁4Bを円筒体で構成した場合、ガス圧力への耐性、熱応力への耐性が向上し、円筒体の薄板化が可能となる。以上により、SOFCシステム100の低コスト化が図れる。
図7に示すように、高温の燃焼排ガスは、蒸発器4の外壁4BとSOFCシステム100の容器の内壁54との間の空間を通過する。これにより、蒸発器4の側壁部内が燃焼排ガスの熱で加熱されている。
蒸発器4の内壁4Aの下端部近傍には、折り返し部17が設けられている。折り返し部17は、内壁4Aの周囲に沿って設けられた複数の開口部(図示せず)を備える。また、原燃料および水蒸気の混合ガスが流通する混合ガス供給経路14が、下板部材4Dを気密状態で貫通し、蒸発器4内の空間を鉛直上方に伸びている。なお、混合ガス供給経路14の上端部は、蒸発器4内の空間から混合ガス供給経路14への混合ガスの流入を阻害しない位置であって、上壁52よりも下方に位置している。混合ガス供給経路14の下端部は、蒸発器4の底部4E内の空間から改質触媒2Eへの混合ガスの流入を阻害しない位置であって、上板部材2Uよりも上方に位置している。
なお、蒸発器4は、改質器2と接触して配置されていれば、どのような構成であっても構わない。例えば、SOFCシステム100の如く、蒸発器4と改質器2とが、上から下に向かう方向においてこの順に並んでおり、蒸発器4の側壁部と改質器2の側壁部とが、蒸発器4の底部4Eを介して接触する構成であってもよい。
以上により、蒸発器4を改質器2と接触して配置させることで、SOFCシステム100の構成を簡素化することができる。つまり、蒸発器4および改質器2を上下方向において並ぶように一体的に配置することで、例えば、蒸発器4と改質器2とを別体に設ける場合に比べ、SOFCシステム100を簡素に構成できる。
SOFCスタック6は、改質ガスと酸化剤ガスとを用いて発電する。SOFCスタック6のカソードには、酸化剤ガス供給経路5を通じて酸化剤ガスが供給され、SOFCスタック6のアノードには、改質ガス供給経路13を通じて改質ガスが供給されている。SOFCスタック6では、SOFCスタック6の単セル(図示せず)を、例えば、複数個集合し、直列に接続している。SOFCスタック6は、複数の平板形の単セルを積層して形成されていてもよいし、複数の円筒形の単セルを集合して形成されていてもよい。本実施形態では、SOFCスタック6は、平板型の単セルおよびインターコネクタなどの部材を積層した平板型スタックで構成されている。なお、SOFCシステム100には、SOFCスタック6の発電電流を取り出すための電極(図示せず)などが設けられている。SOFCスタック6の構成は、一般的なSOFCと同様であるので詳細な構成の説明は省略する。
また、SOFCスタック6の外周には、SOFCスタック6の温度を検知する第2温度検知器15が設けられている。第2温度検知器15は、SOFCスタック6の温度を検知できる位置であればよく、SOFCスタック6に直接、設けられていてもよいし、SOFCスタック6の近傍に設けられてもよい。第2温度検知器15は、例えば、熱電対、サーモパイルなどから構成することができ、検知結果を制御器40に送信する。
酸化剤ガス供給経路5は、SOFCスタック6のカソードに送るための酸化剤ガスが流通する流路である。具体的には、酸化剤ガス供給器44(例えば、ブロアなど)により酸化剤ガスが、酸化剤ガス供給経路5に供給された後、SOFCスタック6へと送られる。酸化剤ガスとして、例えば、空気などを例示できる。
酸化剤ガス供給経路5は、SOFCシステム100の容器の内壁54と外壁53との間に形成され、内壁54は、SOFCシステム100の容器の上壁52からSOFCスタック6の下方へ延伸し、SOFC1の底部を覆っている。SOFCシステム100の運転温度が、高温(例えば、600℃以上)となるので、SOFCシステム100の容器の周囲を、図示しない断熱材で覆い、外部への放熱を抑える構成を取ることが多い。
アノードオフガス排出経路11は、SOFCスタック6のアノードから排出されるアノードオフガスが流通する流路である。具体的には、SOFCスタック6の発電に使用しなかったH2と、発電によってH2から生成されたH2O(水蒸気)または原燃料に添加されたH2O(水蒸気)等を含むアノードオフガスが、アノードオフガス排出経路11に流入し、このアノードオフガス排出経路11を通過した後、燃焼器20へと送られる。実施の形態に係るSOFCシステム100では、アノードオフガス排出経路11は、SOFCスタック6のアノードから下部領域50Bおよび隔壁部51を通過して燃焼器20へ至るように延伸している。なお、ここでは、アノードオフガス排出経路11の本数は、2本であるが、これに限らない。また、アノードオフガス排出経路11には、燃焼器20に供給されるアノードオフガスの温度を検知するための第1温度検知器12が設けられている。第1温度検知器12は、例えば、熱電対、サーモパイルなどから構成することができ、検知結果を制御器40に送信する。
第1温度検知器12は燃焼器20に供給されるアノードオフガスの温度を検知できればアノードオフガス排出経路11の任意の場所に設けることができる。例えば、アノードオフガス排出経路11の端部に形成されたアノードオフガスを燃焼器20に噴出させる噴出孔近傍に第1温度検知器12を設ける構成としてもよい。また、第1温度検知器12を設ける位置は、上記したアノードオフガス排出経路11に限定されるものではなく、アノードオフガスの入口温度(アノードオフガス温度)を検知できる位置であればよく、例えば、燃焼器20の内部または燃焼器20の側面等であっても良い。
このように、実施の形態に係るSOFCシステム100は、上記した従来技術のように火炎の後流または火炎自体の温度を検知する構成ではなく、アノードオフガス排出経路11に第1温度検知器12を配置し、燃焼器20へ供給されるアノードオフガスの温度を検知する構成としている。つまり、燃焼器20から噴出されるアノードオフガスの温度(アノードオフガス温度)を検知する構成となっている。
カソードオフガス排出経路は、SOFCスタック6のカソードから排出されるカソードオフガスが流通する流路である。具体的には、SOFCスタック6の発電に使用しなかった酸化剤ガス(カソードオフオフガス)が、このカソードオフガス排出経路を通過した後、燃焼室25へと送られる。本実施形態のSOFCシステム100では、カソードオフガス排出経路は、SOFCスタック6が収容される下部領域50B内の空間と、第1カソードオフガス通過領域23と第2カソードオフガス通過領域30とによって形成されている。
酸化剤ガス熱交換器7は、酸化剤ガス供給経路5を流れる酸化剤ガスと内壁54内を流れる燃焼排ガスとの間で熱交換させる。つまり、酸化剤ガス熱交換器7では、燃焼排ガスに曝される内壁54の部分が伝熱面として機能する。これにより、常温の酸化剤ガス(空気)は、酸化剤ガス供給経路5を上から下へと流れるとき、内壁54内を下から上へと流れる燃焼排ガスとの熱交換により、高温(例えば、約600℃~700℃程度)まで加熱される。さらに、酸化剤ガスは、SOFCスタック6の内部改質の反応熱を利用し、SOFCスタック6の発電反応に必要な温度まで加熱され、SOFCスタック6を収容する容器の下部からSOFCスタック6のカソードに供給される。なお、燃焼排ガスは、適温(例えば、約100℃~200℃程度)まで冷却された後、SOFCシステム100外へ排出される。排出された燃焼排ガスは、例えば、給湯用の温水を生成するための図示しない熱交換器へと送られる構成であってもよい。
燃焼器20は、SOFCスタック6から排出されたカソードオフガスとアノードオフガスとをそれぞれ燃焼室25内に噴出させ、該燃焼室25内で拡散燃焼させる。本実施の形態に係るSOFCシステム100では、SOFCスタック6から排出されたアノードオフガスを円環状の燃焼器20に供給して燃焼室25内へ所定の速度で噴出させるとともに、SOFCスタック6から排出されたカソードオフガスを、燃焼器20の周囲から燃焼室25内へ吹き出させるように構成されている。そして、燃焼室25内においてアノードオフガスに着火させ、燃焼器20周囲から吹き出されたカソードオフガスとともに拡散燃焼させる。
具体的には、燃焼器20は、SOFCスタック6のアノードから排出されたアノードオフガスを集合させるとともに、集合したアノードオフガスを燃焼室25内に噴出させるための孔である、複数のアノードオフガス噴出孔21が設けられたアノードオフガス集合部22を備えている。アノードオフガス集合部22は、SOFCスタック6のカソードから排出されたカソードオフガスが通過する第1カソードオフガス通過領域23を囲むように形成されている。
本実施形態のSOFCシステム100では、図7に示すように、アノードオフガス集合部22は、中空構造の円環体で形成されている。そして、この円環体の内側の空間と下部領域50Bとが連通するように隔壁部51には、開口部が形成されている。本実施形態では、この開口部を含む円環体の内側の空間を、第1カソードオフガス通過領域23とする。一方、隔壁部51においてアノードオフガス集合部22の外周であって、かつ内壁54よりも内側となる位置に形成された開口部を第2カソードオフガス通過領域30とする。
第1カソードオフガス通過領域23では、カソードオフガスはアノードオフガス集合部22の内側を通過し、アノードオフガス噴出孔21で火炎Fが改質ガス供給経路13に接近する内向きに形成される。よって、火炎Fの外周にカソードオフガスを行き届かせることが困難な場合がある。
そこで、本実施の形態に係るSOFCシステム100では、カソードオフガスの一部を、アノードオフガス集合部22よりも外側に位置する第2カソードオフガス通過領域30を通過させるように構成することで、火炎Fの外周でもカソードオフガスとアノードオフガスとの混合性を改善させることができる。また、カソードオフガスとアノードオフガスとの混合性を改善させることにより、燃焼器20の燃焼性をさらに向上させることができる。例えば、SOFCスタック6のカソードから排出されるカソードオフガスのトータル量の半分程度が、第2カソードオフガス通過領域30を通過する構成としてもよい。
また、アノードオフガス噴出孔21は、アノードオフガス噴出孔21から上方へ噴出するアノードオフガスが、第1カソードオフガス通過領域23を下から上へ通過するカソードオフガスに対して接近するように設けられている。つまり、アノードオフガス集合部22は、第1カソードオフガス通過領域23に向かって下方に傾斜するテーパ面22Tを備え、テーパ面22Tに、アノードオフガス噴出孔21が形成されている。
このようにして、アノードオフガス噴出孔21から噴出したアノードオフガスと第1カソードオフガス通過領域23を通過したカソードオフガスとが燃焼する。
なお、本実施形態のSOFCシステム100では、アノードオフガス集合部22を円環体で構成しているが、これに限らない。アノードオフガス集合部22を、例えば、矩形環体で構成してもよい。
但し、本実施形態のSOFCシステム100の如く、アノードオフガス集合部22を円環体で構成することにより、アノードオフガス集合部22を、例えば、矩形環体で構成する場合に比べ、製造時の溶接長さおよび箇所を削減できるので、アノードオフガス集合部22の製造コストが低減する。また、ガス圧力への耐性、熱応力への耐性が向上し、円環体の薄板化が可能となる。以上により、SOFCシステム100の低コスト化が図れる。
制御器40は、SOFCシステム100が備える各部の各種制御を行うものである。制御器40は、例えば、MPU、CPUなどで例示できる演算処理部と、メモリなどで例示できる記憶部とを備え、CPU等がメモリに記憶されたプログラムを読み出し、実行することで各種制御を実行することができる。
実施の形態に係るSOFCシステム100では、制御器40は、例えば、第1温度検知器12によって検知された検知結果(検知された情報)を受けつけ、該検知結果に基づき、燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作にSOFCシステム100の運転動作を切り換えるように制御する。なお、燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作の詳細については後述する。
(SOFCシステムの発電動作に伴うスタック温度変化)
次に、上記した構成を有するSOFCシステム100の起動から停止に至るまでの一連の発電動作に伴うSOFCスタック6のスタック温度変化について説明する。図8は、本発明の実施形態に係るSOFCシステム100における、発電動作に伴うスタックの温度変化の一例を示す図である。
図8に示すようにSOFCシステム100を起動させ、負荷に応じた発電を行う場合、常温(20℃程度)から安定発電温度(600~800℃)まで加温させる必要がある。すなわち、SOFCシステム100の制御運転(運転モード)が起動制御運転(起動制御モード)の際には、制御器40は空気供給器42および原燃料供給器41(例えば、昇圧ポンプ)を制御して、常温のSOFCスタック6のアノード側に改質用空気および炭化水素系の例えば都市ガスなどの原燃料を導入する。つまり、原燃料と、改質用空気とを予め混合させて、蒸発器4および改質器2を経由してSOFCスタック6のアノードに供給する。また、制御器40は、酸化剤ガス供給器44を制御して、カソード側には発電空気(酸化剤ガス)を導入する。そして、制御器40は不図示の着火装置を制御して、SOFCスタック6のアノード側から排出されたアノードオフガスに着火させ、カソード側から排出されたカソードオフガスと燃焼させる。
燃焼熱により改質器2が加熱され温度が上昇すると、以下の化学反応式(4)で示す部分酸化改質反応(POX)が進行する。この部分酸化改質反応(POX)は発熱反応であるので、この反応熱をSOFCシステム100の温度上昇に寄与させることができ、SOFCシステム100の起動性を良好とする事ができる。部分酸化改質反応(POX)が進行しても、燃焼室25内におけるアノードオフガスとカソードオフガスとの燃焼反応は持続する。
CmHn+m/2O2 → mCO+n/2H2 ・・・(4)
部分酸化改質反応(POX)の実行開始から所定時間経過後、あるいは設定された温度以上に改質器2が加熱された後、制御器40は、原燃料供給器41、空気供給器42、および水供給器43を制御して原燃料と改質用空気と蒸発器4で蒸発させた水蒸気とを予め混合させた状態で改質器2に供給させる。改質器2においては、部分酸化改質反応(POX)と、以下の化学反応式(5)に示す水蒸気改質反応(SR)とが併用されたオートサーマル改質反応(ATR)が行われる。このオートサーマル改質反応(ATR)は、熱的にバランスが取れるため改質器2内では熱自立しながら反応が進行する。
CmHn+mH2O → mCO+(n/2+m)H2 ・・・(5)
オートサーマル改質反応(ATR)の実行開始から所定時間経過後、あるいは設定された温度以上に改質器2が加熱された後、制御器40は、空気供給器42を制御して改質用空気の供給を停止させる。これにより、原燃料と水蒸気とを予め混合させた状態で改質器2に供給させ、オートサーマル改質反応(ATR)から水蒸気改質反応(SR)に移行させる。この水蒸気改質反応(SR)は、吸熱反応であるが、この時点では既に改質器2の周囲は十分高温(500~600℃)になっているため、SOFCスタック6を安定的に温度上昇させることができる。
温度上昇してSOFCスタック6のスタック温度が定格負荷で安定的に発電動作させる際のスタックの温度である定格温度よりも低い所定の発電温度に達したら、制御器40は不図示の開閉器等を制御してSOFCスタック6を含む発電回路を閉じる。それにより、SOFCスタック6は発電を開始し、発電回路に電流が流れる。発電にともなって、セル、スタック自体は発熱し、さらに温度上昇する。その結果、SOFCスタック6の温度を定格温度まで上昇させる事ができる。セルを構成する電解質として酸化物イオン伝導電解質を用いた酸化物イオン伝導型SOFCの場合、定格温度は600~800℃となる。一方、セルを構成する電解質としてプロトン伝導電解質を用いたプロトン伝導型SOFCの場合は約600℃となる。このため、上記した定格温度よりも低い所定の発電温度は、酸化物イオン伝導型SOFCでは500~700℃、プロトン伝導型SOFCでは約500~550℃となる。その後、SOFCシステム100において、制御器40が定格温度以上を安定して維持できると判定すると、負荷追従運転(発電制御運転)を開始させる。なお、この負荷追従運転の状態にあるときを正常運転と称する。
ところで、図8に示すように、特に、SOFCシステム100における起動制御運転後であって、SOFCスタック6の温度が、外部負荷に対して安定的に電力が供給されるように発電が行われる際の温度(約600℃)に達する前までの期間では起動発電制御運転が行われる。起動発電制御運転は、SOFCスタック6の温度が約530℃以上で600℃未満となる範囲で実施される。そして、起動発電制御運転では、定格出力となる電力よりも小さい電力を取り出すように制御することで、セルに発電熱を発生させてSOFCスタック6を昇温させている。このように、起動発電制御運転では、SOFCスタック6の温度が約600℃まで達しておらず、低温化しやすい。それ故、起動発電制御運転ではアノードオフガス温度が低下し、火炎F内での燃焼化学反応が不安定化する可能性がある。
そこで、起動発電制御運転のようにアノードオフガス温度が低下する可能性がある発電運転中において、火炎F内での燃焼化学反応が不安定化することを抑制するために、SOFCシステム100では以下に示す、燃焼における化学反応不良の抑制制御を行う。
(燃焼における化学反応不良の抑制制御)
次に、上記した構成を有するSOFCシステム100において生じる燃焼における化学反応不良を抑制する制御方法について図9を参照して説明する。図9は、本発明の実施の形態に係るSOFCシステム100における、燃焼における化学反応不良の抑制制御の一例を示すフローチャートである。なお、以下において、燃焼における化学反応不良の抑制制御を単に化学反応不良の抑制制御と称する場合がある。
図9に示されるように、SOFCシステム100の発電運転中において、燃焼器20に流入するアノードオフガスの温度を第1温度検知器12によって検知する(ステップS11)。そして、制御器40は、第1温度検知器12による検知結果に基づき、検知されたアノードオフガスの温度(アノードオフガス温度)が所定時間の間継続して、第1所定温度T1未満になったか否か判定する(ステップS12)。
つまり、上記したようにアノードオフガス温度、すなわち第1温度検知器12によって検知されたアノードオフガス温度が所定温度(後述の第3所定温度T2)未満まで低下することにより燃焼室25における燃焼が不安定となり排出されるガス中のCO濃度が上がる。そこで、このステップS12によってSOFCシステム100において燃焼が不安定となる前に、燃焼が不安定となる可能性があるか否か判定している。また、「所定時間の間継続して」としたのは、誤検知等により第1温度検知器12によって検知されたアノードオフガス温度が第1所定温度T1未満となった場合を除外するためである。
したがって、第1所定温度T1は、燃焼が不安定となりCO等が排出されるアノードオフガス温度となりうるか否か判定できる温度である。具体的には、第1所定温度T1は、燃焼が不安定となりCO等が排出される際のアノードオフガス温度よりも高い温度であって、外乱の影響または設定値の変更等により生じるSOFCシステム100の運転温度の変化に連動して変化するアノードオフガス温度の変化幅を考慮し設定された温度である。
ここで、制御器40が、所定時間の間継続して、第1温度検知器12によって検知されたアノードオフガス温度が第1所定温度T1未満とならなかったと判定した場合(ステップS12において「NO」)、第1温度検知器12によるアノードオフガスの温度検知を繰り返す。
一方、制御器40が、第1温度検知器12によって検知されたアノードオフガス温度が、所定時間の間継続して第1所定温度T1未満となったと判定した場合(ステップS12において「YES」)、制御器40からの制御指示に基づき、SOFCシステム100は燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作を実施する(ステップS13)。
その後、制御器40が、アノードオフガス温度が所定時間の間継続して第1所定温度T1以上とならないと判定している間は(ステップS14において「NO」)、燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作を継続する。一方、制御器40が、アノードオフガス温度が所定時間の間継続して第1所定温度T1以上となったと判定した場合(ステップS14において「YES」)、燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作を停止して、発電運転中の発電動作に切り換え、ステップS11に戻る。
ここで、燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作とは、火炎Fの中心領域におけるCOの反応(水性ガスシフト反応)を促進させるため、例えば火炎Fの温度を上昇させるようにSOFCシステム100を制御することである。
実施の形態に係るSOFCシステム100では、上記した図9に示す化学反応不良の抑制制御を行うことができるため、火炎Fの中心領域における水性ガスシフト反応の低下を抑制し、図10に示すようにアノードオフガス温度が低下したとしてもCO等の排出を抑制することができる。図10は、本発明の実施の形態に係るSOFCシステム100において燃焼における化学反応不良の抑制制御を行う場合とこの化学反応不良の抑制制御を行わない場合とにおけるアノードオフガス温度とCO濃度との関係の一例を示すグラフである。図10において縦軸はCO濃度を示しており、上に向かうほどCO濃度が大きくなる。横軸は、アノードオフガス温度(℃)を示しており紙面の右に向かうほどアノードオフガス温度が高くなる。また、破線は、化学反応不良の抑制制御を行った場合のCO濃度とアノードオフガス温度との関係を示している。一方、実線は、化学反応不良の抑制制御を行わない場合のCO濃度とアノードオフガス温度との関係を示している。なお、図10ではプロトン伝導型SOFCを備えたSOFCシステム100を例に挙げて示している。
アノードオフガス温度が600℃前後となる範囲が、SOFCスタック6が外部負荷に対して安定的に電力を供給するように発電している範囲に相当する。図10に示すように、この範囲では化学反応不良の抑制制御を行う場合も、行わない場合もともにCO濃度に上昇は見られなかった。ところが、アノードオフガス温度が500℃より低下すると化学反応不良の抑制制御を行わない場合は、CO濃度が高くなった。一方、上記した化学反応不良の抑制制御を行う場合は、アノードオフガス温度が200℃より低下するまではCO濃度の上昇は見られなかった。したがって、上記した化学反応不良の抑制制御を行うことにより、例えば、起動発電制御運転などSOFCスタック6が低温化しやすい運転モードであっても、水性ガスシフト反応を促進し、CO排出を抑制できる。
[変形例1]
以下において図11を参照して燃焼における化学反応不良の抑制制御の変形例1について説明する。図11は、本発明の実施の形態の変形例1に係るSOFCシステム100における、燃焼における化学反応不良の抑制制御の一例を示すフローチャートである。
図11に示す実施の形態の変形例1に係る燃焼における化学反応不良の抑制制御は、図9に示す実施の形態に係る燃焼における化学反応不良の抑制制御と比較して、ステップS22およびステップS24のみが異なり、それ以外のステップについては同様である。このため、主としてステップS22およびステップS24について説明する。
ステップS22において、制御器40は、第1温度検知器12による検知結果に基づき、所定時間において検知されたアノードオフガスの温度(アノードオフガス温度)の低下が第2所定温度T1a以上か否か判定する(ステップS22)。例えば、制御器40は、所定時間として2~3分の間でアノードオフガス温度が第2所定温度T1a(5℃)以上低下したか否か判定する構成としてもよい。この所定時間と第2所定温度T1aとは、SOFCシステム100において異常に伴いアノードオフガス温度が低下しているか否か判定できる、単位時間当たりの温度変化を示すものであればよい。所定時間と第2所定温度T1aとは、異常が生じている発電運転時において発生する単位時間当たりの温度変化を予め調べておき適宜、設定してもよい。
ここで、制御器40が、所定時間におけるアノードオフガス温度の低下が、第2所定温度T1a以上とならなかったと判定した場合(ステップS22において「NO」)、第1温度検知器12によるアノードオフガスの温度検知を繰り返す。
一方、制御器40が、所定時間におけるアノードオフガス温度の低下が、第2所定温度T1a以上となったと判定した場合(ステップS22において「YES」)、制御器40の制御指示に基づき、SOFCシステム100は燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作を実施する(ステップS23)。
その後、制御器40が、所定時間におけるアノードオフガス温度の低下が、第2所定温度T1a未満とならないと判定している間は(ステップS24において「NO」)、燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作を継続する。一方、制御器40が、所定時間におけるアノードオフガス温度の低下が第2所定温度T1a未満となったと判定した場合(ステップS24において「YES」)、燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作を停止して発電運転中の発電動作に切り換え、ステップS21に戻る。
なお、変形例1に係る燃焼における化学反応不良の抑制制御では、ステップS22において制御器40は、所定時間におけるアノードオフガス温度の低下がT1a以上か否か判定し、燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作を実施するか否か判定していた。しかしながら、ステップS22における判定条件はこれに限定されるものではなく、例えば、図9に示すステップS12の判定条件と図11に示すステップS22の判定条件の両方を満たす場合に燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作を実施する構成であってもよい。
また、変形例1に係る燃焼における化学反応不良の抑制制御では、ステップS24において制御器40は、所定時間におけるアノードオフガス温度の低下が第2所定温度T1a未満となったか否か判定し、燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作を停止し、通常の発電動作に切り換えるか否か判定していた。しかしながらステップS24における判定条件はこれに限定されるものではなく、例えば、図9に示すステップS14の判定条件と図11に示すステップS24の判定条件の両方を満たす場合に燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作を停止し、通常の発電動作に切り換える構成であってもよい。
[変形例2]
以下において図12を参照して燃焼における化学反応不良の抑制制御の変形例2について説明する。図12は、本発明の実施の形態の変形例2に係るSOFCシステム100における、燃焼における化学反応不良の抑制制御の一例を示すフローチャートである。
図12に示す実施の形態の変形例2に係る燃焼における化学反応不良の抑制制御は、図9に示す実施の形態に係る燃焼における化学反応不良の抑制制御と比較して、ステップS33のみが異なり、それ以外のステップについては同様である。このため、主としてステップS33について説明する。
具体的には変形例2に係るSOFCシステム100では、実施の形態に係るSOFCシステム100においてステップS13で実施していた燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作として、ステップS33において制御器40がSOFCスタック6における燃料利用率、発電空気(酸化剤ガス)の流量、およびSOFCスタック6で発電する発電量のうち少なくとも一つを低下させるように制御する。
すなわち、制御器40は、原燃料供給器41を制御して供給する原燃料の流量を大きくすることでSOFCスタック6における燃料利用率を低下させてもよい。または、制御器40はSOFCスタック6での発電量を低下させるように制御し、燃料(改質ガス)の利用量を低下させてもよい。このように燃料利用率を低下させることでアノードオフガスに含まれるH2濃度を高めることができるため火炎Fの温度を高めることができる。これによって火炎Fの中心領域における水性ガスシフト反応を促進させることができ、排出されるCO濃度を抑制することができる。
また、制御器40は、酸化剤ガス供給器44を制御して供給する発電空気(酸化剤ガス)の流量を低下させてもよい。このように発電空気(酸化剤ガス)の流量を低下させることでSOFCシステム100全体の温度を上昇させることができる。このため、燃焼室25における火炎Fの温度を高めることができるとともに、燃焼器20から噴出されるアノードオフガスの温度(アノードオフガス温度)も高めることができる。これによって、火炎Fの中心領域における水性ガスシフト反応を促進させることができ、排出されるCO濃度を抑制することができる。
また、制御器40は、発電電力の制御を行う不図示のインバータを制御して、SOFCスタック6から取り出す電力量を小さくさせることで、SOFCスタック6での発電量を低下させてもよい。このように発電量を低下させることで、燃料利用率の低い、つまり発電に利用されるH2比率の低い運転条件にすることができ、その結果、アノードオフガスに含まれるH2濃度を高めることができる。このため、火炎Fの温度を高めることができる。これによって、火炎Fの中心領域における水性ガスシフト反応を促進させることができ、排出されるCO濃度を抑制することができる。
[変形例3]
以下において、図13を参照して燃焼における化学反応不良の抑制制御の変形例3について説明する。図13は、本発明の実施の形態の変形例3に係るSOFCシステム100における、燃焼における化学反応不良の抑制制御の一例を示すフローチャートである。
図13に示す変形例3に係る燃焼における化学反応不良の抑制制御は、ステップS41~43、ステップS47が、図9に示す実施の形態に係る燃焼における化学反応不良の抑制制御のステップS11~14と同様となる。このため、同様なステップについての説明は省略し、変形例3において新たに追加されたステップS44~46について説明する。
ステップS43において、SOFCシステム100が燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作を実施している際、制御器40は、第1温度検知器12によって検知されたアノードオフガス温度が所定時間継続して、第3所定温度T2未満となったか否か判定する(ステップS44)。なお、第3所定温度T2は、第1所定温度T1よりも低い温度であり、燃焼が不安定となりCO等の排出量が大きくなり始める際のアノードオフガス温度とすることができる。もしくは、上記した燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作を実行してもCO等の排出を抑制することができないときのアノードオフガス温度としてもよい。第3所定温度T2についての詳細は後述する。
ここで、制御器40が、アノードオフガス温度が所定時間継続して、第3所定温度T2未満とならなかったと判定した場合(ステップS44において「NO」)、ステップS47に進んで制御器40は、アノードオフガス温度が所定時間継続して、第1所定温度T1以上になったか否か判定する。制御器40が、アノードオフガス温度が所定時間継続して、第1所定温度T1以上になったと判定した場合(ステップS47において「YES」)、燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作を停止して通常の発電動作に切り換え、ステップS41に戻る。ステップS47において「NO」の場合は、燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作を継続する。
一方、ステップS44において、制御器40が、アノードオフガス温度が所定時間継続して、第3所定温度T2未満となったと判定した場合(ステップS44において「YES」)、SOFCスタック6への燃料(改質ガス)および酸化剤ガス等の供給はそのまま継続させ、SOFCスタック6において発電回路を開いて電力負荷をかけずにそのまま発電動作を継続させる、いわゆるOCV(open circuit voltage)運転(待機運転)に切り換える(ステップS45)。
SOFCシステム100がOCV運転を実施している間、制御器40は、所定時間継続してアノードオフガス温度がT2以上となったか否か判定する(ステップS46)。所定時間継続してアノードオフガス温度がT2以上となったと制御器40が判定した場合(ステップS46において「YES」)、ステップS43に戻り、制御器40からの制御指示に基づき、SOFCシステム100はOCV運転から燃焼化学反応の不良を防止する発電制御動作に切り換える。
一方、所定時間継続してアノードオフガス温度がT2以上とならなかったと制御器40が判定した場合(ステップS46において「NO」)、ステップS45に戻ってOCV運転を継続する。
以上のように、変形例3に係る燃焼における化学反応不良の抑制制御では、アノードオフガス温度の低下が継続し、燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作ではCO等の排出抑制を行うことができない状態となったとしてもOCV運転に切り換えることでCO等の排出を抑制することができる。つまり、燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作ではCO等の排出抑制を行うことができない程度までアノードオフガス温度が低下したとしても、火炎Fの中心領域の温度を上昇させ、水性ガスシフト反応を促進し、CO排出を抑制することができる。
なお、変形例3に係る燃焼における化学反応不良の抑制制御では、ステップS42に代えて、図11に示す変形例1のステップS21と同様に、制御器40が、所定時間におけるアノードオフガス温度の低下がT1a以上であるか否か判定する構成であってもよい。あるいは、制御器40が、ステップS42の条件かつステップS21の条件をともに満たすか否か判定する構成であってもよい。さらにまた、ステップS47に代えて、図11に示す変形例1のステップS24と同様に、制御器40が、所定時間におけるアノードオフガス温度の低下がT1a未満であるか否か判定する構成であってもよい。あるいは、制御器40が、ステップS47の条件かつステップS24の条件をともに満たすか否か判定する構成であってもよい。
また、変形例3に係る燃焼における化学反応不良の抑制制御では、ステップS43に実施する燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作として、変形例2に係る燃焼における化学反応不良の抑制制御のステップS34と同様に、制御器40がSOFCスタック6における燃料利用率、発電空気(酸化剤ガス)の流量、およびSOFCスタック6で発電する発電量のうち少なくとも一つを低下させるように制御する構成であってもよい。
[変形例4]
以下において、図14を参照して、燃焼における化学反応不良の抑制制御の変形例4について説明する。図14は、本発明の実施の形態の変形例4に係るSOFCシステム100における、燃焼における化学反応不良の抑制制御の一例を示すフローチャートである。
図14に示す変形例4に係る燃焼における化学反応不良の抑制制御は、ステップS51~56、ステップS59が、図13に示す変形例3に係る燃焼における化学反応不良の抑制制御のステップS41~47と同様となる。このため、同様なステップについての説明は省略し、変形例4において新たに追加されたステップS57、58について説明する。
SOFCシステム100がOCV運転を実施している際に、制御器40が所定時間継続してアノードオフガス温度が第3所定温度T2以上とならなかったと判定した場合(ステップS56において「NO」)、制御器40は、さらに所定時間継続してアノードオフガス温度が第4所定温度T3未満となったか否か判定する(ステップS57)。
ここで制御器40が、アノードオフガス温度が第4所定温度T3未満とならなかったと判定した場合(ステップS57において「NO」)、ステップS55に戻ってOCV運転を継続する。一方、アノードオフガス温度が第4所定温度T3未満となったと判定した場合(ステップS57において「YES」)、制御器40からの制御指示に基づき、SOFCシステム100は運転を停止させる(ステップS58)。例えば、制御器40は、OCV運転において動作している原燃料供給器41、空気供給器42、水供給器43、および酸化剤ガス供給器44等の補機を停止させ、SOFCシステム100の運転を停止させる。
以上のように、変形例4に係る燃焼における化学反応不良の抑制制御では、OCV運転を実施しているにもかかわらず、アノードオフガス温度が第4所定温度T3未満まで低下した場合、OCV運転を実施してもCO等の排出抑制を行うことができない状態となったと判定してSOFCシステム100の運転を停止させることができる。
(第1所定温度T1、第3所定温度T2、第4所定温度T3)
上記した第1所定温度T1と第3所定温度T2と第4所定温度T3について説明する。
SOFCスタック6の各セルは固体酸化物電解質の両面に燃料極(アノード)及び空気極(カソード)を積層し構成されており、燃料極には改質器2から改質ガス供給経路13を通じて改質ガスが供給され、空気極には酸化剤ガス供給経路5を通じて酸化剤ガスが供給される。そして、SOFCスタック6がプロトン伝導型SOFCの場合、各セルでは空気極において、下記の化学反応式(6)で示す電極反応が生起され、燃料極において、下記の化学反応式(7)で示す電極反応が生起されて、発電がなされる。
空気極:4H++O2+4e-→2H2O ・・・(6)
燃料極:2H2→4H++4e- ・・・(7)
化学反応式(6)、(7)からわかるように、プロトン伝導型SOFCの場合、燃料極側から空気極側へH2が移動し、空気極側に水分が生成され、結果的に燃料(アノードオフガス)中の含有水分が少なくなる。
ここで、図3に示すように、プロトン伝導型SOFCの場合、500℃以下になると火炎Fにおける水性ガスシフト反応が抑制されCO濃度が上昇する。そこで、第3所定温度T2を500℃とし、これに対して第1所定温度T1を第3所定温度T2よりも50℃高い550℃に設定することが好適である。SOFCスタック6がプロトン伝導型SOFCである場合、第1所定温度T1を550℃とし、第3所定温度T2を500℃に設定したとき、燃焼における化学反応不良の抑制制御の有効性を高めることができる。
なお、第1所定温度T1を第3所定温度T2よりも50℃高い温度とする理由は、SOFCシステム100において、正常な発電動作中であっても外乱の影響または設定値の変更等により運転温度に変化が生じる場合がある。そこで、正常な発電動作中に生じる運転温度の変化に連動して変化するアノードオフガス温度の変化幅を考慮し、CO濃度が上昇する第3所定温度T2よりも50℃高い温度を第1所定温度T1と設定している。なお、第1所定温度T1は必ずしも第3所定温度T2よりも50℃高い温度に限定されるものではなく、SOFCシステム100において正常な発電動作時に生じるアノードオフガス温度の変化幅に応じて適宜設定さることが好ましい。
一方、SOFCスタック6が酸化物イオン伝導型SOFCの場合、各セルでは空気極において、下記の化学反応式(8)で示す電極反応が生起され、燃料極において、下記の化学反応式(9)で示す電極反応が生起されて、発電がなされる。
空気極:1/2O2+2e-→O2- ・・・(8)
燃料極:O2-+H2→H2O+2e- ・・・(9)
化学反応式(8)、(9)からわかるように、酸化物イオン伝導型SOFCの場合、空気極側から燃料極側へ酸化物イオンが移動するため、燃料極側に水分が生成され、結果的に燃料中の含有水分が増加する。
ここで、図3に示すように、酸化物イオン伝導型SOFCの場合、400℃以下になると火炎Fにおける水性ガスシフト反応が抑制されCO濃度が上昇する。そこで、第3所定温度T2を400℃とし、これに対して第1所定温度T1を50℃高い450℃に設定することが好適である。SOFCスタック6が酸化物イオン伝導型SOFCである場合、第1所定温度T1を450℃とし、第3所定温度T2を400℃に設定したとき、燃焼における化学反応不良の抑制制御の有効性を高めることができる。
また、図10に示すように、常温近くの低温領域では燃焼における化学反応不良の抑制制御を実施してもCO濃度が上昇しており、この化学反応不良の抑制制御が有効なのは200℃までであった。そこで、変形例4においてSOFCシステム100の運転を停止させるか否かを判定するための第4所定温度T3を200℃に設定する。このように設定することで、化学反応不良の抑制制御が有効とならない低温領域では、SOFCシステム100の運転を停止させることでCO等の排出を抑制することができる。
また、SOFCシステム100では、化学反応不良の抑制制御が200℃まで有効である。ここで、SOFCシステム100の運転を停止させる停止シーケンスによっては、アノードオフガスおよびカソードオフガスを燃焼させながら停止させるシーケンスも考えられる。このような停止シーケンスではアノードオフガス温度が300℃前後まで低下する場合があるが、このような場合であってもCOの排出濃度を抑制させることができる。
上記した第1所定温度T1~第4所定温度T3とSOFCシステム100の運転動作との関係を図示すると図15に示す関係となる。図15は、本発明の実施の形態に係るSOFCシステム100の運転動作と第1所定温度T1~第4所定温度T3との関係を表す図である。図15において横軸がアノードオフガス温度を示す。
図15に示すように、アノードオフガス温度が400+50℃または500+50℃以上である場合、SOFCシステム100は正常運転が行われる。アノードオフガス温度(燃料入口温度)が低温化し、第1所定温度T1である400+50℃または500+50℃よりも低下すると、SOFCシステム100では燃焼化学反応不良を防止する発電制御動作が実施される。この発電制御動作を実施したにもかかわらず、アノードオフガス温度(燃料入口温度)の温度低下が抑制されず第3所定温度T2である400℃または500℃よりも低下すると、SOFCシステム100の運転動作をOCV運転に切り換える。OCV運転に切り替えたにもかかわらず、アノードオフガス温度(燃料入口温度)の温度低下が抑制されず第4所定温度T3である200℃よりも低下すると、SOFCシステム100の運転を停止させる。
なお、上記した実施の形態、および変形例1~4に係るSOFCシステム100では、アノードオフガス排出経路11に設けられた第1温度検知部によって検知されたアノードオフガス温度に基づき、化学反応不良の抑制制御を行う構成であったがこの構成に限定されるものではない。例えば、制御器40が不図示のメモリにSOFCスタック6のスタック温度とアノードオフガス温度との対応関係を示すテーブルを予め保持しておき、第2温度検知器15によって検知されたスタック温度に基づきテーブルを参照して制御器40がアノードオフガス温度を求める構成としてもよい。そして、この求めたアノードオフガス温度に基づき化学反応不良の抑制制御を行う構成としてもよい。
このようにSOFCシステム100を構成した場合、SOFCスタック6のスタック温度とアノードオフガス温度とを第2温度検知器15だけで検知することができる。このため、SOFCシステム100に備える検知器の種類および個数を低減させることができる。