JP7159730B2 - 複合体の製造方法 - Google Patents
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Description
圧着作業に用いられる治具において、樹脂材の支持構造に加圧手段を設けることにより、作業性がさらに高まることを見出して、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
本実施形態に係る製造方法は、図1の(a),(b)に示すように、塗装金属素形材1と樹脂材4とを重ねて、塗装金属素形材1における有機樹脂層3が設けられた第1の表面6と樹脂材4の表面とが対向した被接合体5を作製する。後記する加熱処理によって、図1の(b)に示すように、有機樹脂層3を介して塗装金属素形材1と樹脂材4とが接合される。そのため、加熱処理に供される被接合体5は、塗装金属素形材1における第1の表面6と樹脂材4とが対向するように重ねた形態とすることが好ましい。
その後、図2に示すように、被接合体5において、前記第1の表面6と反対側に位置する塗装金属素形材1の第2の表面7に、発熱手段10を配置する。塗装金属素形材と樹脂材とが対向する界面領域において、後記する押圧処理及び加熱処理による加熱圧着処理が施されることから、加圧及び加熱が当該界面領域に効率よく作用させるため、当該界面領域に対応する位置に発熱手段を配置することが好ましい。
次いで、図2に示すように、発熱手段10を塗装金属素形材の第2の表面7に対し押圧する。この押圧によって塗装金属素形材1と樹脂材4とが対向する界面領域は、塗装金属素形材の有機樹脂層3と樹脂材4とが密着し、双方が密接に接触した状態になる。この押圧するとともに、当該発熱手段により被接合体を加熱することによって、当該界面領域で軟化及び溶融が生じて、塗装金属素形材と樹脂材との接合部が形成される。
本実施形態で使用される塗装金属素形材は、金属素形材の表面の片面または両面に有機樹脂層が設けられている。金属素形材を構成する金属の種類は、特に限定されない。たとえば、上記金属の種類は、鉄であってもよいし、鉄以外の金属であってもよいし、合金であってもよい。金属素形材の例には、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、Zn-Al合金めっき鋼板、Zn-Al-Mg合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、ステンレス鋼板(オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、フェライト・マルテンサイト二相系を含む)、アルミニウム板、アルミニウム合金板、銅板などの金属板や、そのプレス加工品、あるいは、アルミダイカスト、亜鉛ダイカストなどの鋳造・鍛造物や、切削加工、粉末冶金などにより成形された各種金属部材などが含まれる。金属素形材は、必要に応じて、脱脂、酸洗などの公知の塗装前処理が施されていてもよい。
本実施形態で使用される樹脂材は、とくに限定されない。ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、等を含むものに適用できる。
本実施形態に係る製造方法によって、上記の塗装金属素形材と上記の樹脂材とを接合した複合体が得られ、単位面積当りのせん断接合強度が20MPa以上である複合体を提供することができる。本明細書では、当該せん断接合強度(単位:Pa)は、引張試験で得られたピーク荷重(単位:N)を、塗装金属素形材と樹脂材とが接触する面積(mm2)で除して、その単位面積当たりのせん断接合強度として算出された数値を意味する。また、本明細書では、当該せん断接合強度を、「接合強度」ということもある。本発明に係る複合体は、そのせん断接合強度が20MPa以上であるので、軽量化を求められる多くの用途に適する。
塗装金属素形材と樹脂材との加熱圧着は、樹脂材を固定する治具を用いられる。その一例として、図4に示す位置決め用治具を使用することができる。図4に示すように、位置決め用治具11の凹部12に樹脂材4が収容される。当該位置決め用治具11は、塗装金属素形材1と同程度の長さ及び幅を有していて、樹脂材4を収容するために、所定の深さの凹部12を有する。当該凹部12は、位置決め用治具11の一端から長手方向に所定の長さ離れた位置で、かつ、幅方向でほぼ中央の位置に設けられている。凹部12に収容された樹脂材4は、所定の長さが突出した状態にある。その後、塗装金属素形材1を位置決め用治具11の上に被せて、塗装金属素形材1の有機樹脂層3と樹脂材4とが対向した状態の被接合体5が得られる。
接合された試験体について、国際規格ISO 19095-2 2015(プラスチック -プラスチック・金属アセンブリの接着界面性能の評価-)の国際規格に準拠して、図10に示す引張試験装置によるせん断引張試験を行った。引張速度を5mm/minで行い、試験体が破断するピーク荷重を求めた。試験体は、塗装金属素形材1側を上側治具15で固定され、樹脂材4側を下側治具16で固定された。塗装金属素形材1は、一端が上側治具9から突出するように固定し、当該突出した一端を上側つかみ部13で把持した。樹脂材4は、その全体を下側治具16で固定し、下側治具16を下側つかみ部14で把持した。これにより、樹脂材4が下側つかみ部8で潰されるのを防止できる。引張試験装置に試験体を取り付ける際は、試験体の接合界面と下側つかみ部16の中心軸とがほぼ一致するように試験体を把持した。試験体の接合部の面積は、塗装金属素形材1と樹脂材4との接触面積に相当するから、試験体のせん断接合強度の指標として、引張試験により求めたピーク荷重(N)を接合面積(50mm2)で除した数値を用いて、これを試験体の接合強度(MPa)とした。
本実施形態に係る加熱圧着用治具により接合された試験体の接合強度について調べた。本発明例1、2は、加圧圧着用治具31を用いて、試験体への加圧力を1MPa、昇温時間を5s、保持時間を5s、加熱温度270℃の条件で接合した。また、参考例1、2として、図4に示す治具11を用いて、同様の条件で接合した試験体を作製した。その後、接合された各試験体のせん断接合強度を測定した。その試験結果を表1に示す。試験体の樹脂材には2種の樹脂を用いた。本発明例1及び参考例1は、樹脂材としてポリアミド樹脂(PA6)を用いた場合であり、本発明例2及び参考例2は、樹脂材としてポリプロピレン(PP)を用いた場合である。
本実施形態に係る加熱圧着用治具により得られた接合部の外観について調べた。試験例1のPA6の樹脂材による本発明例1及び参考例1の試験体を用いて、接合部の外観を目視で観察した。図11に撮影した外観の写真を示す。
次に、試験例1で得られた試験体を用いて、接合界面における有機樹脂層の厚みを測定した。接合部付近で試験体を板厚方向に切断した後、その断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、断面の画像において任意に3箇所の厚みを計測し、それらの平均値を得た。その結果を表1に示す。
2 金属素形材
3 有機樹脂層
4 樹脂材
5 被接合体
6 第1の表面
7 第2の表面
8 複合体
9 接合部
10 発熱手段
11 位置決め用治具
12 凹部
13 上側つかみ部
14 下側つかみ部
15 上側治具
16 下側治具
17 樹脂変形部
21 常温
22 設定温度
23 昇温時間
24 保持時間
25 冷却時間
30 加熱圧着用治具
31 本体部
32 開口
33 載置面
34 支持部
35 加圧手段
36 支持手段
37 押圧手段
38 ストッパー
Claims (2)
- 加熱圧着用治具を用いて、金属素形材における少なくとも一方の表面に有機樹脂層を有する塗装金属素形材と樹脂材成形体とを加熱圧着して、前記塗装金属素形材と前記樹脂材成形体との複合体を製造する、複合体の製造方法であって、
前記加熱圧着用治具は、前記塗装金属素形材を載置するための載置面を有する本体部と、前記載置面と反対側に位置して前記本体部に隣接して配置された支持部とを、含み、
前記本体部は、前記載置面の側に樹脂材成形体を装填して拘束するための開口を有し、前記開口を囲む内壁の高さは、前記樹脂材成形体の高さ以上であり、
前記支持部は、前記開口の内部に装填された前記樹脂材成形体を前記載置面の側へ押圧する加圧手段を備え、
前記加圧手段は、前記樹脂材成形体と接して支持する支持手段と、前記支持手段によって支持された前記樹脂材成形体を前記開口内で前記載置面の側へ移動可能な押圧手段を備える、
複合体の製造方法。 - 前記塗装金属素形材と前記樹脂材成形体とを重ねて、前記塗装金属素形材における有機樹脂層が設けられた第1の表面と樹脂材成形体の表面とが対向した被接合体であって、前記樹脂材成形体は、前記開口内に装填されて前記開口の内壁に拘束される形状であり、前記塗装金属素形材は、前記載置面に載置される前記第1の表面を有する、被接合体を作製すること、
前記被接合体の前記樹脂材成形体を前記加圧手段の前記支持手段に接して配置すること、
その後、前記被接合体において、前記第1の表面と反対側に位置する前記塗装金属素形材の第2の表面に、発熱手段を配置すること、
次いで、前記発熱手段を前記第2の表面に対し押圧して、前記第1の表面を前記載置面に当接させて、前記塗装金属素形材と前記樹脂材成形体とを密着させるとともに、前記発熱手段により前記被接合体に加熱処理を施して、前記塗装金属素形材と前記樹脂材成形体とを接合させること、
を含む、請求項1に記載の複合体の製造方法。
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