以下、添付図面を参照しながら本発明のその例示的な実施形態を通して説明する。
図1には、本発明の第1実施形態のインプリント装置200の構成が示されている。インプリント装置200は、基板1の上にインプリント材IMを配置し、インプリント材IMにモールド18を接触させた状態でインプリント材IMに硬化用のエネルギーを与えることによってインプリント材IMの硬化物からなるパターンを形成する。これにより、モールド18のパターンが基板1に転写される。このようにして基板1の上にインプリント材IMの硬化物からなるパターンを形成する処理をインプリント処理と呼ぶ。
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物でありうる。これらのうち、光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添モールド離モールド剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材は、インプリント材供給部(ディスペンサ)により、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に配置されうる。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。
以下では、インプリント材IMを硬化させるためのエネルギーとして紫外光を使用する例を説明する。本明細書および添付図面では、基板1の表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系において方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転をそれぞれθX、θY、θZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御または駆動を意味する。また、θX軸、θY軸、θZ軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な軸の周りの回転、Y軸に平行な軸の周りの回転、Z軸に平行な軸の周りの回転に関する制御または駆動を意味する。また、位置は、X軸、Y軸、Z軸の座標に基づいて特定されうる情報であり、姿勢は、θX軸、θY軸、θZ軸の値で特定されうる情報である。位置決めは、位置および/または姿勢を制御することを意味する。位置合わせ(アライメント)は、基板およびモールドの少なくとも一方の位置および/または姿勢の制御を含みうる。
インプリント装置200は、計測器4、計測器6、基板ステージ7、ブリッジ構造体8、計測器9、硬化用光源11、アライメント計測部12、ハーフミラー13、排気ダクト14、連結部材15およびモールドヘッド16を有する。更に、インプリント装置200は、空気ばね19、ベース定盤20、ガス供給部21、ホルダ22、インプリント材供給部(ディスペンサ)23、オフアクシススコープ24、圧力センサ25、検出部26、制御部400およびユーザインターフェース34を有する。制御部400は、ネットワーク301を介して、統括コンピュータ300と接続されている。モールドヘッド16は、パターン面Pを有するモールド18を保持するモールドチャック17を含む。モールド18のパターン面Pには、基板1に形成すべきパターンに対応する凹凸パターンが形成されている。
検出部26は、基板上のインプリント材に対するモールド18の接触状態、基板上のインプリント材のモールド18への充填状態、基板上のインプリント材からのモールド18の分離状態を画像情報として観察することが可能である。また、基板ステージ7が移動することで、基板周辺部と基板チャックの位置関係を観察することも可能である。モールドチャック17は、例えば、真空吸着によってモールド18を保持する。モールドチャック17は、モールドチャック17からのモールド18の脱落を防止する構造を有していてもよい。本実施形態では、モールドチャック17は、モールドヘッド16と強固に結合している。モールドヘッド16は、ブリッジ構造体8を基準として、少なくとも、Z軸、θX及びθYの3軸方向に移動(駆動)することが可能な機構を有しうる。モールドヘッド16は、連結部材15を介して、ブリッジ構造体8に連結され、ブリッジ構造体8によって支持されている。また、アライメント計測部12もブリッジ構造体8によって支持されている。
アライメント計測部12は、モールド18と基板1との位置合わせ(アライメント)のためのアライメント計測を行う。アライメント計測部12は、本実施形態では、モールド18に設けられたマーク及び基板ステージ7および基板1に設けられたマークを検出してアライメント信号を生成するアライメント検出系を含む。また、アライメント計測部12は、カメラ(撮像装置)を含み、検出部26と同様、紫外線の照射による基板1上のインプリント材IMの硬化状態(インプリント状態)を観察する機能を有しうる。また、アライメント計測部12は、基板1上のインプリント材に対するモールド18の接触状態、基板上のインプリント材のモールド18への充填状態および基板上のインプリント材からのモールド18の分離状態も観察する機能も有しうる。連結部材15の上方には、ハーフミラー13が配置されている。硬化用光源11からの光は、ハーフミラー13で反射され、モールド18を透過して基板1の上のインプリント材IMに照射される。基板1の上のインプリント材IMは、硬化用光源11からの光の照射によって硬化する。
ブリッジ構造体8は、床からの振動を絶縁するための空気ばね19を介して、ベース定盤20に支持されている。空気ばね19は、アクティブ防振機能として露光装置で一般的に採用されている構造を有しうる。例えば、空気ばね19は、ブリッジ構造体8及びベース定盤20に設けられたXYZ相対位置測定センサ、XYZ駆動用リニアモータ、空気ばねの内部のエア容量を制御するサーボバルブなどを含む。ブリッジ構造体8には、ホルダ22を介して、基板1にインプリント材IMを供給(塗布)するためのノズルと、その供給タイミングおよび供給量を制御する制御部とを含むインプリント材供給部23(ディスペンサ)が取り付けられている。インプリント材供給部23は、例えば、インプリント材IMの液滴を基板1に供給する。インプリント材供給部23からインプリント材IMを基板1に供給しながら基板ステージ7(即ち、基板1)を移動させることによって、基板1上の矩形形状等の任意形状のショット領域にインプリント材IMを配置することができる。
基板1は、例えば、円形状を有しうる。ショット領域は、矩形形状を有する完全ショット領域と、一部が基板1のエッジ(基板エッジ、基板の外周)によって規定される部分ショット領域とを含みうる。完全ショット領域は、例えば、33mm×26mmの寸法を有しうる。1つのショット領域は、複数のチップ領域を有しうる。
また、インプリント装置200で実施されるインプリントプロセスでは、基板1の表面上にインプリント材IMの硬化物で形成される凹凸パターンの凹部に膜が残りうる。この膜は残膜と呼ばれる。残膜は、エッチングによって除去されうる。残膜の厚さは、RLT(Residual Layer Thickness)と呼ばれる。必要なRLTに相当する厚さの膜がショット領域に形成されていない場合には、エッチングによって基板1がえぐられてしまう。本実施形態では、インプリント材供給部23によるインプリント材IMの吐出と基板ステージ7の移動との組み合わせによって、基板1の適切な領域にインプリント材IMが配置される。
基板ステージ7は、基板チャック(基板保持部)を有し、該基板チャックによって基板1を保持する。基板ステージ7は、X、Y、Z、θX、θY及びθZの6軸方向に移動することが可能な機構を有する。本実施形態では、基板ステージ7は、X方向の移動機構を含むXスライダー3、及び、Y方向の移動機構を含むYスライダー5を介して、ブリッジ構造体8によって支持されている。Xスライダー3には、Xスライダー3とYスライダー5との相対位置を計測する計測器4が設けられている。また、Yスライダー5には、Yスライダー5とブリッジ構造体8との相対位置を計測する計測器6が設けられている。従って、計測器4及び6は、ブリッジ構造体8を基準として、基板ステージ7の位置を計測する。計測器4及び6のそれぞれは、本実施形態では、エンコーダ(リニアエンコーダ)で構成されている。
基板ステージ7とブリッジ構造体8とのZ方向における距離は、ブリッジ構造体8、Xスライダー3及びYスライダー5によって決まる。Xスライダー3及びYスライダー5のZ方向、チルト方向の剛性を十nm/N程度に高く維持することによって、基板ステージ7とブリッジ構造体8とのZ方向におけるインプリント動作の変動を数十nm程度の変動に抑えることができる。
計測器9は、ブリッジ構造体8に設けられ、本実施形態では、干渉計で構成されている。計測器9は、基板ステージ7に向けて計測光10を照射し、基板ステージ7の端面に設けられた干渉計用ミラーで反射された計測光10を検出することで、基板ステージ7の位置を計測する。計測器9は、基板ステージ7の基板1の保持面に対して計測器4及び6よりも近い位置において、基板ステージ7の位置を計測する。なお、図1では、計測器9から基板ステージ7に照射される計測光10を1つしか図示されていないが、計測器9は、少なくとも基板ステージ7のXY位置、回転量及びチルト量が計測できるように構成されうる。
ガス供給部21は、モールド18のパターンへのインプリント材IMの充填性を向上させるために、モールド18の近傍、具体的には、モールド18と基板1との間の空間に充填用ガスを供給する。充填用ガスは、モールド18とインプリント材との間に挟み込まれた充填用ガス(気泡)を迅速に低減させ、モールド18のパターン(凹部)へのインプリント材の充填を促進させるために、透過性ガス及び凝縮性ガスの少なくとも1つを含む。ここで、透過性ガスとは、モールド18に対して高い透過性を有し、基板1上のインプリント材にモールド18を接触させた際にモールド18を透過するガスである。また、凝縮性ガスとは、基板1上のインプリント材にモールド18を接触させた際に液化(即ち凝縮)するガスである。
オフアクシススコープ24は、モールド18を介さずに、基板ステージ7に配置された基準プレートに設けられた基準マークやアライメントマークを検出する。また、オフアクシススコープ24は、基板1(の各ショット領域)に設けられたアライメントマークを検出することも可能である。圧力センサ25は、本実施形態では、基板ステージ7に設けられ、モールド18を基板1上のインプリント材に接触させることで基板ステージ7に作用する圧力を検出する。圧力センサ25は、基板ステージ7に作用する圧力を検出することによって、モールド18と基板1上のインプリント材との接触状態を検出するセンサとして機能する。また、圧力センサ25は、モールドヘッド16に設けてもよく、モールドヘッド16及び基板ステージ7のうち少なくとも一方に設けられていればよい。
ガス供給部21から供給される充填用ガスの屈折率は、空気の屈折率とは大きく異なるため、計測器4及び6が充填用ガスに曝されると(即ち、計測器4及び6の計測光路に充填用ガスが漏れると)、計測器4及び6の計測値(計測結果)が変動してしまう。このような問題は、特に、計測光路長が長い干渉計に対して顕著であり、基板ステージ7の位置を制御する際にハイゲインとなるため、サーボエラーを起こしてしまう。また、計測光路長が短いエンコーダであっても、ナノメートルオーダーの計測精度が要求されるインプリント装置では、その影響を無視することができない。但し、エンコーダの計測光路長は干渉計の計測光路長よりも短いため、干渉計よりも影響は軽微である。また、図1に示すように、本実施形態では、ガス供給部21(の充填用ガスの供給口)から計測器4及び6までの距離を十分にとることができ、且つ、計測器4及び6をエンコーダで構成している。従って、計測器4及び6は、充填用ガスによる計測値の変動の影響を受けにくい構成となっているため、サーボエラーが起こりにくくなっている。
ガス供給部21は、上述したように、インプリント処理を行っている間において、モールド18と基板1との間の空間に充填用ガスを供給する。モールド18と基板1との間に供給された充填用ガスは、モールドヘッド16の上部から排気ダクト14を介して吸引されて、インプリント装置200の外部に排出される。また、モールド18と基板1との間に供給された充填用ガスを外部に排出するのではなく、ガス回収機構(不図示)で回収してもよい。
図2には、インプリント処理が模式的に示されている。図2(a)は、インプリント材供給部23によってインプリント材27aが供給された基板1のショット領域にモールド18のパターン面Pが接触を開始する前の状態を示している。図2(b)は、モールド18のパターン面Pと基板1のショット領域上のインプリント材とが接触した状態を示している。この状態で、硬化用光源11からの光が基板1のショット領域上のインプリント材に照射される。これによって、インプリント材27bが硬化する。図2(c)は、モールドヘッド16を上昇させて、基板1のショット領域上の硬化したインプリント材からモールド18が引き離される様子を示している。これにより、基板1のショット領域には、モールド18のパターン面Pのパターンに対応したパターン27cが残る。図2(d)は、モールド18のパターン面Pのパターンと、硬化後のインプリント材を示している。モールド18のパターンは、基板に形成すべき凸パターンに対応する凸形成パターン35と、基板に形成すべき凹パターンに対する凹形成パターン36とを有する。Pdは、パターン深さ(Pattern Depth)を表し、RLTは残膜厚(Residual Layer Thickness: RLT)を表す。
図3には、インプリント材供給部23の吐出ヘッド32の構成例が示されている。吐出ヘッド32は、複数の吐出口33を有する。複数の吐出口33の配置間隔を狭くすると、モールド18の凸形成パターン内へのインプリント材の充填に要する時間が短くなる。一方、該配置間隔が狭すぎると、吐出ヘッド32の製造が困難になるし、隣接する吐出口33から吐出されたインプリント材の液滴が干渉しうる。複数のインプリント材の液滴が干渉すると、それらが相互に結合することによって基板上に配置される液滴の位置がずれる恐れがある。図3の例では、2つの列を構成するように複数の吐出口33が配列され、列方向における吐出口33の中心間距離L1、2つの列の中心線の間隔L2が吐出口33の配置情報として使用される。
図4には、制御部400の構成例が示されている。制御部400は、例えば、プログラムが組み込まれた汎用コンピュータ、又は、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成されうる。
制御部400は、主制御部410、ドロップレシピ生成部420、インプリント制御部430および入出力インターフェース440を含みうる。主制御部410は、ドロップレシピ生成部420、インプリント制御部430および入出力インターフェース440を制御しうる。ドロップレシピ生成部420は、インプリント材供給部23によって基板1の上に供給されるインプリント材IM(液滴)の配置を示すドロップレシピを生成する。インプリント制御部430は、インプリント処理を行うようにインプリント機構IMMを制御する。インプリント機構IMMは、インプリント処理のための機構である。インプリント機構IMMは、図1を参照しながら説明された構成要素、例えば、基板1の搬送、基板1へのインプリント材IMの供給、基板ステージ7の駆動、アライメント、インプリント材IMへの光の照射、モールド18の駆動等のための構成要素を含みうる。
入出力インターフェース440は、ユーザインターフェース34に接続されるとともに、ネットワーク301を介して統括コンピュータ300に接続される。ユーザインターフェース34は、例えば、ドロップレシピの生成に関する情報をユーザから受け取ったり、ユーザに提供したりする。統括コンピュータ300は、インプリント処理を制御するための制御情報(プロセスレシピ)を制御部400に提供する。オフアクシススコープ24は、基板1の上に形成されたパターンを撮像した画像データをドロップレシピ生成部420に提供する。基板1の上に形成されたパターンを撮像した画像データは、検出部26またはアライメント計測部12からドロップレシピ生成部420に提供されてもよい。あるいは、基板1の上に形成されたパターンを撮像した画像データをドロップレシピ生成部420に提供する他の撮像部が設けられてもよい。
図5Aには、ショットレイアウトが例示されている。ショットレイアウトは、基板1上の複数のショット領域の配置である。前述のように、基板1上の複数のショット領域は、矩形形状を有する完全ショット領域と、一部が基板エッジ1’(基板1のエッジ、外周)によって規定される部分ショット領域とを含みうる。完全ショット領域は、フルフィールドショット領域(FFショット領域)とも呼ばれる。部分ショット領域は、パーシャルフィールドショット領域(PFショット領域)とも呼ばれる。図5Aの例では、ショット領域番号=1~20が完全ショット領域であり、ショット領域番号=22~44が部分ショット領域である。ショット領域の配置を示すショットレイアウト情報は、プロセスレシピの一部として統括コンピュータ300またはユーザインターフェース34からインプリント装置200の制御部400に提供されうる。プロセスレシピは、その他、インプリント材IMを硬化させるための制御情報(例えば、露光量(Exposure Dose))、アライメント条件を示す情報、インプリント材にモールドを接触させてからインプリント材を硬化させるまでの待ち時間(Spread Time)、インプリント材にモールドを接触する時の圧力(Imprint Force)、パターン面Pがインプリント材に接触する時にパターン面を変形させるための圧力(Cavity Pressure)を示す情報を含みうる。
基板1上の複数の完全ショット領域は、互いに同じ形状を有するので、通常は、複数の完全ショット領域に対して共通のドロップレシピが決定されうる。完全ショット領域のための共通のドロップレシピの決定は、基板の複数の完全ショット領域を使って試験的にインプリント処理を行い、これによって形成されるパターンを評価することによってなされうる。
より具体的には、完全ショット領域に供給されるインプリント材の液滴の配置情報を示すドロップレシピを決定する決定方法は、暫定ドロップレシピ(暫定配置)を準備した後、
(a)暫定ドロップレシピに従って完全ショット領域上にインプリント材を配置し、該インプリント材にモールドを接触させた状態で該インプリント材を硬化させることによってパターンを形成し、
(b)該パターンに基づいて該暫定ドロップレシピを変更する、
という単位処理を、使用する完全ショット領域を変更しながら、該パターンの品質が所定条件を満たすまで反復して実行する反復工程を含みうる。
また、該決定方法は、該パターンの品質が該所定条件を満たした段階における最新の暫定ドロップレシピに基づいてドロップレシピを決定する決定工程を含みうる。図5Aの例では、ショット領域番号=1~20が与えられた完全ショット領域の全部または一部を使用して反復工程を実施することができる。ここで、ショット領域番号=1~20が与えられた完全ショット領域の全部を使用して反復工程を実施してもパターンの品質が所定条件を満たさなかった場合には、他の基板1を使用して反復工程を続けることになりうる。
完全ショット領域とは異なり、基板1上の複数の部分ショット領域は、互いに異なる形状を有するので、通常は、個々の部分ショット領域に対して個別のドロップレシピ(部分ショット領域に供給されるインプリント材の液滴の配置情報)を決定する必要がある。
部分ショット領域のためのドロップレシピの決定は、基板1の個々の部分ショット領域を使って試験的にインプリント処理を行い、これによって形成されるパターンを評価することによってなされうる。
より具体的には、部分ショット領域のためのドロップレシピを決定する決定方法は、暫定ドロップレシピを準備した後、
(a)暫定ドロップレシピに従って当該部分ショット領域上にインプリント材を配置し、該インプリント材にモールドを接触させた状態で該インプリント材を硬化させることによってパターンを形成し、
(b)該パターンに基づいて該暫定ドロップレシピを変更する、
という単位処理を、使用する基板を変更しながら、該パターンの品質が所定条件を満たすまで反復して実行する反復工程を含みうる。
また、該決定方法は、該パターンの品質が該所定条件を満たした段階における最新の暫定ドロップレシピに基づいてドロップレシピを決定する決定工程を含みうる。図5Aの例では、ショット領域番号=21~44のうち指定された部分ショット領域のドロップレシピを決定するためにN回(Nは自然数)にわたって単位処理を実行する場合、N枚の基板を要する。
よって、部分ショット領域のためのドロップレシピを決定する処理は、完全ショット領域のためのドロップレシピを決定する処理より効率が低い。しかし、完全ショット領域のためのドロップレシピを決定するための処理の全部または一部を実行した後に、部分ショット領域を決定するための処理を行えば、効率を改善することができる。ここで、部分ショット領域を決定するための処理は、完全ショット領域のために最終決定されたドロップレシピ(または、まだ最終決定されていない場合には、最新の暫定ドロップレシピ)を最初の暫定ドロップレシピとして使って行われうる。部分ショット領域のための最初の暫定ドロップレシピは、完全ショット領域のためのドロップレシピにおけるインプリント材の配置の一部(基板に配置することができない液滴)を取り除くことによって形成されうる。
図5Bには、完全ショット領域の配置を示す完全ショットレイアウトが例示されている。図5Cには、部分ショット領域の配置を示す部分ショットレイアウトが例示されている。本実施形態では、完全ショットレイアウトに関するプロセスレシピと、部分ショット領域に関するプロセスレシピとが、統括コンピュータ300またはユーザインターフェース34からインプリント装置200の制御部400に制御部400に提供される。
図6には、インプリント装置200によって実行されるドロップレシピ生成方法の手順が示されている。この動作は、制御部400によって制御される。工程S10では、主制御部410がドロップレシピ生成部420、インプリント制御部430および入出力インターフェース440を制御して反復工程を実行する。具体的には、工程S10では、主制御部410は、入出力インターフェース440により、統括コンピュータ300および/またはユーザインターフェース34から暫定ドロップレシピを含む調整レシピを取得する。そして、主制御部410は、
(a)暫定ドロップレシピに従ってショット領域上にインプリント材を配置し、該インプリント材にモールドを接触させた状態で該インプリント材を硬化させることによってパターンを形成し、
(b)該パターンに基づいて該暫定ドロップレシピを変更する、
という単位処理を、使用する完全ショット領域を変更しながら、該パターンの品質が所定条件を満たすまで反復して実行する。ここで、(a)の処理は、主制御部410がインプリント制御部430を介してインプリント機構IMMを制御することによって実行されうる。(b)の処理は、(a)の処理で基板1の上に形成されたパターンを主制御部410がオフアクシススコープ24(計測部)に撮像させ、これによって得られる画像データをドロップレシピ生成部420に処理させることによってなされうる。
ドロップレシピ生成部420は、オフアクシススコープ24から提供される画像データに基づいて基板1の上に形成されたパターンを評価し、欠陥が除去されるように暫定ドロップレシピを変更する。例えば、ドロップレシピ生成部420は、インプリント材IMが不足している領域にインプリント材IMの液滴(ドロップ)を追加し、インプリント材IMが過剰な領域のインプリント材IMの液滴(ドロップ)を取り除く。上記の所定条件は、基板1の上に形成されるパターンに存在する欠陥領域の面積および個数等の許容範囲でありうる。
工程S20では、主制御部410は、ドロップレシピ生成部420に、基板1の上に形成されたパターンの品質が上記の所定条件を満たした段階における最新の暫定ドロップレシピに基づいてドロップレシピを決定される。
調整レシピは、完全ショット領域のためのドロップレシピを決定するFFショット調整レシピ、および、部分ショット領域のためのドロップレシピを決定するPFショット調整レシピ、の少なくも1つを含みうる。調整レシピがFFショット調整レシピおよびPFショット領域レシピの双方の実行指令を含む場合は、完全ショット領域のためのドロップレシピの決定のための処理が先行され、その後、部分ショット領域のためのドロップレシピの決定のための処理がなされうる。調整レシピがFFショット調整レシピおよびPFショット調整レシピの一方のみ実行指令を含む場合は、その一方のみに関してドロップレシピの決定のための処理がなされうる。
図7および図8には、インプリント装置200によって実行されるドロップレシピ生成方法の手順のより具体的な例が示されている。この動作は、制御部400によって制御される。図7において、工程S101~S118が工程S10に相当し、工程S200が工程S20に相当する。工程S101では、主制御部410は、インプリント制御部430にモールド18と基板ステージ7とのアライメントを実行させる。具体的には、モールド搬送系(不図示)によってモールド18がインプリント装置200に搬入され、モールドチャック17に渡され、モールドチャック17によって保持される。そして、アライメント計測部12を使ってモールド18と基板ステージ7とがアライメントされる。ここで、アライメント計測部12によって検出されるマークは、専用の基準マークとして基板ステージ7に設けておいてもよいし、専用のアライメント基板に設けておいてもよい。
工程S102では、主制御部410は、インプリント制御部430に基板1を搬入させる。基板1は、基板ステージ7の基板チャックによって保持される。工程S103では、主制御部410は、インプリント制御部430にプリアライメントを実行させる。プリアライメントでは、基板1がオフアクシススコープ24の下に移動され、オフアクシススコープ24によって基板1の位置が計測される。プリアライメントは、モールド18と基板1の各ショット領域との相対位置を計測する処理である。
工程S104では、主制御部410は、プロセスレシピに含まれるショットレイアウト情報に基づいて、インプリント処理の対象のショット領域(対象ショット領域)を選択する。工程S105では、主制御部410は、インプリント制御部430にインプリント材の配置処理を実行させる。配置処理では、インプリント制御部430は、暫定ドロップレシピに従って対象ショット領域にインプリント材IMが配置されるように、基板ステージ7の移動とインプリント材供給部23からのインプリント材IMの吐出を制御する。この段階では、ガス供給部21によって、モールド18と基板1との間の空間に充填用ガスが供給されうる。
工程S106では、主制御部410は、インプリント制御部430に、基板1の対象ショット領域の上のインプリント材IMとモールド18との接触処理を実行させる。この接触処理では、インプリント制御部430は、モールドヘッド16を下降させて対象ショット領域の上のインプリント材IMにモールド18のパターン面Pを接触させる。また、インプリント制御部430は、アライメント計測部12に対象ショット領域とモールド18との相対位置を計測させ、その結果に基づいて対象ショット領域とモールド18とのアライメントを行う。このようなアライメントは、ダイバイダイアライメントと呼ばれる。
工程S107では、主制御部410は、インプリント制御部430にインプリント材IMの硬化処理を実行させる。硬化処理では、インプリント制御部430は、インプリント材IMに硬化用の光が照射されるように硬化用光源11を制御する。これにより、インプリント材IMが硬化して、硬化したインプリント材IMからなるパターンが対象ショット領域の上に形成される。
工程S108では、主制御部410は、インプリント制御部430に、基板1の対象ショット領域の上のインプリント材IMとモールド18との分離処理を実行させる。この分離処理では、インプリント制御部430は、モールドヘッド16を上昇させて、基板1の対象ショット領域の上の硬化したインプリント材IMからモールド18を分離させる。これにより、基板1の対象ショット領域の上には、モールド18のパターン面Pに対応したパターンが残る。即ち、モールド18のパターン面Pに対応したパターンが基板1の対象ショット領域の上に形成される。モールド18を硬化したインプリント材IMから分離する際には、硬化したインプリント材IMからなるパターンが破断しないように、モールド18のパターン面Pにかかるせん断力を該パターンの破断応力以下に維持しながらモールドヘッド16を上昇させる。
工程S109では、主制御部410は、オフアクシススコープ24に対象ショット領域の上の硬化したインプリント材IMからなるパターンを撮像させ、これにより得られる画像データに基づいて該パターンの品質を評価する。この評価は、本実施形態では、画像データから抽出される欠陥領域の大きさの評価を含む。工程S110では、主制御部410は、工程S109でパターンを評価した評価した欠陥領域の大きさが規格内であるかどうか(所定条件を満たすかどうか)を判断する。そして、欠陥領域の大きさが規格内である場合は、工程S200に進み、規格外である場合は、工程S111に進む。
工程S111の詳細は、図8に示されている。まず、図7を参照しながら工程S111~S118を概略的に説明する。工程S111では、現在の基板1にインプリント材を配置しパターンを形成するための空き領域が存在するかどうかを判断し、ドロップレシピが決定していないショット領域の空き領域が存在する場合には工程S112に進み、存在しない場合には工程S113に進む。ドロップレシピが決定していないショット領域は、部分ショット領域の空き領域および/または完全ショット領域の空き領域でありうる。工程S112では、主制御部410は、ドロップレシピ生成部420に暫定ドロップレシピを変更させ、工程S104に戻る。ドロップレシピ生成部420は、現在の暫定ドロップレシピ(最新のドロップレシピ)を工程S109における評価の結果に基づいて変更する。工程S111から工程S112を経て工程S104に戻る処理は、変更後の暫定ドロップレシピに従ってインプリント材を配置しパターンを形成するための空き領域が現在の基板に存在する場合に、その基板を使って工程S104~S110を繰り返すことを意味する。
工程S113では、主制御部410は、予め設定されている指定枚数(後述の”Continual Wafer Number”)の基板を処理したかどうかを判断し、指定枚数の基板を既に処理した場合には工程S114に進む。一方は、まだ指定枚数の基板を処理していない場合には、主制御部410は、工程S116に進む。ここで、指定枚数の基板を既に処理したということは、指定枚数の基板を処理したが、異常領域が規格内にならなかったこと、つまり、適切なドロップレシピの決定に失敗したことを意味する。工程S114では、主制御部410は、ユーザインターフェース34および/または統括コンピュータ300にエラー情報を出力する。エラー情報は、適切なドロップレシピの決定に失敗したことを示す情報を含みうる。工程S112では、現在の暫定ドロップレシピ(最新のドロップレシピ)を工程S109における評価の結果に基づいて変更し、工程S104に戻る。
工程S116では、主制御部410は、ドロップレシピ生成部420に暫定ドロップレシピを変更させる。ドロップレシピ生成部420は、現在の暫定ドロップレシピ(最新のドロップレシピ)を工程S109における評価の結果に基づいて変更する。工程S117では、主制御部410は、インプリント制御部430に基板1を搬出させ、工程S102に戻る。工程S113から工程S117を経て工程S102に戻る処理は、変更後の暫定ドロップレシピに従ってインプリント材を配置しパターンを形成するための空き領域が現在の基板に存在しない場合に、基板を変更して工程S104~S110を繰り返すことを意味する。このように、本実施形態では、工程S102で基板1がインプリント装置の基板チャック(基板保持部)によって保持された後、その基板1を使って反復工程が実行される間は、その基板1が該基板保持部によって保持された状態が維持される。
工程S110において、工程S109でパターンを評価した欠陥領域の大きさが規格内であると判断された場合、工程S200において、主制御部410は、現在のドロップレシピ(最新のドロップレシピ)を調整済のドロップレシピとして決定する。工程S115では、主制御部410は、全てのショット領域についてドロップレシピを決定したかどうかを判断し、全てのショット領域についてドロップレシピを決定したと判断した場合は、工程S118に進む。一方、全てのショット領域についてドロップレシピをまだ決定していないと判断した場合は、工程S104に戻る。
工程S118では、主制御部410は、インプリント制御部430に基板1を搬出させる。このように、本実施形態では、工程S102で基板1がインプリント装置の基板チャック(基板保持部)によって保持された後、その基板1を使って反復工程が実行される間は、その基板1が該基板保持部によって保持された状態が維持される。
次に、図8を参照しながら工程S111の詳細を説明する。工程S121では、主制御部410は、対象ショット領域が完全ショット領域であるか部分ショット領域であるかを判断する。そして、主制御部410は、対象ショット領域が完全ショット領域である場合は、工程S122に進み、対象ショット領域が部分ショット領域である場合は、工程S125に進む。
工程S122では、主制御部410は、現在の基板1に空きの完全ショット領域が存在するかどうかを判断し、完全ショット領域が存在する場合は、工程S112に進み、完全ショット領域が存在しない場合は、工程S113に進む。
工程S125では、主制御部410は、現在の基板1にドロップレシピが決定していない空きの部分ショット領域があるかどうかを判断し、現在の基板1に空きの部分ショット領域がある場合は工程S112に進む。一方、現在の基板1に空きの部分ショット領域がない場合は、主制御部410は、工程S113に進む。
ここで、部分ショット領域のためのドロップレシピの決定のための反復工程においては、完全ショット領域のためのドロップレシピの決定のための反復工程よりも多くの基板を必要としうる。そこで、主制御部410は、完全ショット領域を使って部分ショット領域のためのドロップレシピを決定するための反復工程の全部または一部を実行してもよい。これは、部分ショット領域のための暫定ドロップレシピを使って完全ショット領域に対してインプリント処理を行い、これによって形成されるパターンを評価することによってなされうる。
以下、図17A、17B、17C、図7および図8を参照しながら部分ショット領域のためのドロップレシピの生成処理について捕捉する。図17Aには、部分ショット領域のためのドロップレシピを決定するための1枚目の基板が例示されている。図17Bには、部分ショット領域のためのドロップレシピを決定するための2枚目の基板が例示されている。図17Cには、部分ショット領域のためのドロップレシピを決定するための3枚目の基板が例示されている。
実線で示された部分ショット領域は、工程S110で欠陥領域の大きさが規格外(不合格)であると判断された部分ショット領域である。破線で示された部分ショット領域は、工程S110で欠陥領域の大きさが規格内(合格)であると判断された部分ショット領域である。ここで、欠陥領域の大きさが規格外(不合格)であると判断されたことは、その部分ショット領域についての現在のドロップレシピを変更する必要があることを意味する。一方、欠陥領域の大きさが規格内(合格)であると判断されたことは、その部分ショット領域についての現在のドロップレシピを調整済のドロップレシピとして良いことを意味する。一点鎖線で示された部分ショット領域は、既にそれに対するドロップレシピが決定しており、ドロップレシピの調整の対象から外れた部分ショット領域である。
N枚目の基板の処理において、どのショット領域をインプリント対象のショット領域とするかは、プロセスレシピに含まれるショットレイアウト情報と処理順番情報とに基づいて工程S104で判断されうる。処理順番情報は、ショットレイアウト情報における複数のショット領域をどの順番で処理するかを示す情報であり、図17A、17B、17Cでは、ショット領域を示す矩形の中に記載された数字で示されている。また、工程S110において欠陥領域の大きさが規格内であると判断されたショット領域については、そのショット領域番号がプロセスレシピに反映され、N+1枚目の基板の処理の工程S104において、インプリント対象のショット領域の候補から除外される。
図17Aに示された1枚目の基板に対する判断結果に基づいて、2枚目の基板では、ショット領域番号=22とショット領域番号=32のショット領域がインプリント対象のショット領域から除外される。図17Bに示された2枚目の基板に対する判断結果に基づいて、3枚目の基板では、ショット領域番号=22、25、32、39、40のショット領域がインプリント対象のショット領域から除外される。図17Cに示された3枚目の基板に対する判断結果に基づいて、4枚目の基板(不図示)では、ショット領域番号=22、25、32、34、36、39、40のショット領域がインプリント対象のショット領域から除外される。
図17A、17B、17Cに示された判断結果が得られた場合における図7に示されたドロップレシピ決定処理の流れを説明する。部分ショット領域のためのドロップレシピの決定処理に使われる1枚目の基板について最初に実行される工程S104では、最もショット領域番号が小さいショット領域番号=22のショット領域が選択される。ショット領域番号=22のショット領域については、工程S110において欠陥領域の大きさが規格内と判断され、工程S200において、暫定ドロップレシピが調整済のドロップレシピとして決定される。次いで、工程S115において、1枚目の基板はまだ全てのショット領域についてドロップレシピが決定されていないので、工程S104に進み、ショット領域番号=22の次にショット領域番号が小さいショット領域番号=23のショット領域が選択される。ショット領域番号=23のショット領域については、工程S110において欠陥領域の大きさが規格外と判断され、工程S111内の工程S121において対象ショット領域が完全ショット領域ではないと判断され、工程S125へ進む。工程S125では、ショット領域番号=23は基板内の最終ショット領域であるショット領域番号=44ではないので、工程S112へ進む。工程S112では、暫定ドロップレシピが変更され、工程S104へ進む。工程S104では、ショット領域番号=23の次にショット領域番号が小さいショット領域番号=24のショット領域が選択される。以上のようにして、1枚目の基板の部分ショット領域のドロップレシピ決定処理が行われる。
部分ショット領域のためのドロップレシピ決定に使われる2枚目の基板においては、工程S104では、最適なドロップレシピが決定していない最もショット領域番号が小さいショット領域番号として、ショット領域番号=23が決定される。1枚目の基板と同様に、2枚目の基板では、ショット領域番号23、32を除くショット領域のドロップレシピの決定のための処理が実行される。
以下、欠陥領域の検出と暫定ドロップレシピの変更方法(ドロップレシピの決定方法)を説明する。暫定ドロップレシピの変更(ドロップレシピの決定)は、ドロップレシピ生成部420によってなされうる。欠陥領域の種類には、モールド18と基板1との間にインプリント材IMが充填されない未充填欠陥領域と、ショット領域からインプリト材IMがはみ出すはみ出し欠陥領域とが含まれうる。まず、図9を参照しながらショット領域の外縁近傍に配置されたアライメントマークにおいて発生しうる未充填欠陥領域を低減するための暫定ドロップレシピの変更方法を例示的に説明する。
図9(a)には、工程S109においてショット領域の上の硬化したインプリト材からなるパターンをオフアクシススコープ24で撮像することによって得られる画像データが例示されている。ここで、画像データは、オフアクシススコープ24によってショット領域の全域について取得されてもよいし、オフアクシススコープ24によってショット領域の全域のうち指定された部分領域について取得されてもよい。部分領域は、後述の「Detect Area <1>」~「Detect Area <5>」に対するユーザによる入力によって指定されうる。部分領域の指定は、経験的あるいは統計的に欠陥領域となりやすい領域に対してなされうる。経験的あるいは統計的に欠陥領域となりやすい領域は、例えば、完全ショット領域および部分ショット領域の外縁付近であり、部分ショット領域については、基板エッジの近傍領域である。
図9(b)には、オフアクシススコープ24によって得られた画像データをドロップレシピ生成部420が二値化して得られた二値画像データが例示されている。ドロップレシピ生成部420は、二値画像データと予め設定された基準画像データとを比較し、単位領域ごとに欠陥の有無を判定し、欠陥領域28(未充填欠陥領域)の面積を算出する。単位領域は、欠陥の有無を判定する単位であり、図9(b)には、グリッドで規定された矩形領域として示されている。欠陥領域28(未充填欠陥領域)の面積は、欠陥(未充填欠陥)を有する単位領域をカウントすることによって求めることができる。図9(b)において、UnitCell1は、その全域が欠陥を有する単位領域であり、UnitCell2は、その一部が欠陥を有する単位領域である。
ドロップレシピ生成部420は、次のステップ1~4で暫定ドロップレシピを変更しうる。
ステップ1:欠陥領域の面積と各種情報に基づいて液滴数を算出(式1)
ステップ2:欠陥領域を算出された液滴数で分割し分割領域を決定
ステップ3:分割領域毎に重心位置を算出(式2)~(式4)
ステップ4:重心位置に最も近い未配置グリットに液滴配置
ドロップレシピ生成部420は、ステップ1において、(式1)に従って液滴数を算出しうる。
液滴数=欠陥領域の面積×(RLT+Pd×欠陥領域の凹凸比率)÷一滴量 ・・・(式1)
RLT :残膜の厚さ(Residual Layer Thickness)
Pd :パターン深さ(Pattern Depth)
一滴量 :図3の吐出口33から一回の吐出で排出されるインプリント材の液量
凹凸比率:モールド18のパターンの凹凸比率。全て凸は0%、全て凹は100%
ドロップレシピ生成部420は、ステップ3において、(式2)、(式3)、式(4)に従って重心位置を算出しうる。
Wt = ΣWi ・・・(式2)
Xg = (Σ(Xi×Wi))÷ Wt ・・・(式3)
Yg = (Σ(Yi×Wi))÷ Wt ・・・(式4)
総重量 :Wt
重心位置 :(Xg,Yg)
分割領域の中心座 :(Xi,Yi)
分割領域の重量 :Wi
分割領域の番号 :1~n
分割領域の重量については、単位領域の全域が欠陥を有する場合は100、単位領域の全域のうちの一が欠陥を有する場合には、その百分率を0~100の範囲で割り当てる。
図9(b)の例は、(式1)で計算された液滴数の近似整数が2である例を示している。欠陥領域は、ACで指定される白抜きの分割領域と、BCで指定される白抜きの分割領域とに分割されている。
欠陥領域の分割方法は、インプリント材が平面上で均等に広がることを想定し、重心から境界までの距離のバラツキがもっとも小さくなるように区分する方法でありうる。あるいは、欠陥領域の分割方法は、特表2012-506600で開示されている重心ボロノイ分割法であってもよいし、他の方法であってもよい。また、モールドのパターンの方向に沿った向きにインプリント材が広がり易い性質を考慮し、モールドのパターンの方向における分割領域の長さをモールドのパターンの方向に対して直交する方向における分割領域の長さより長くする方法も有用である。
図9(b)の例では、ACで指定される白抜きの領域では、追加の液滴が、重心位置に最も近い位置27dに配置される。また、BCで指定される白抜きの領域では、位置27fが重心位置に最も近いと計算された場合であって、位置27fに既に液滴が配置されている場合、直近の未配置の位置27eが選択される。
以下、図10を参照しながらショット領域の外縁において発生するインプリント材のはみ出しを低減するための暫定ドロップレシピの変更方法を例示的に説明する。図10(a)には、工程S109においてショット領域の上の硬化したインプリト材からなるパターンをオフアクシススコープ24で撮像することによって得られる画像データが例示されている。
E-Areaは、ショット領域の外周領域に食み出しが発生している部分の画像データであり、該画像データを拡大し、二値化して得られた二値画像データが図10(b)に例示されている。ドロップレシピ生成部420は、二値画像データと予め設定された基準画像データとを比較し、単位領域ごとに欠陥の有無を判定し、欠陥領域(はみ出し欠陥領域)の面積を算出する。
ドロップレシピ生成部420は、次のステップ1~5で暫定ドロップレシピを変更しうる。なお、この例では、算出された液滴数の近似整数が2であった場合で以降説明する。
ステップ1:欠陥領域の面積と各種情報から液滴数を算出(式1)
ステップ2:欠陥領域を液滴数で分割し分割領域を決定
ステップ3:分割領域毎に重心位置を算出(式2)~(式4)
ステップ4:重心位置に最も近い外周配置液滴を抽出
ステップ5:外周配置液滴をショット領域の中心方向に移動
図10(b)の例は、(式1)で計算された液滴数の近似整数が2である例を示している。図10(b)の例では、領域29aは、指定された許容値(はみ出し面積)以内であると判断され、補正対象とされない箇所である。また、領域29bは、指定された許容値を外れるはみ出し欠陥領域であると判断され補正対象とされる箇所である。
図11には、図10(b)の領域29b(許容値を外れるはみ出し欠陥領域)と、その近傍の液滴配置との位置関係が例示されている。領域29b1、領域29b2は、はみ出し欠陥領域である判断された領域29bを(式1)で計算された液滴数の近似整数である2で分割した分割領域である。それぞれの部分領域の重心位置は、(Xg1、Yg1)と(Xg2,Yg2)である。ここで、(Xg1、Yg1)に最も近い、変更前の暫定ドロップレシピにおける液滴の位置は、位置27gである。また、(Xg2,Yg2)に最も近い、変更前の暫定ドロップレシピにおける液滴の位置は、位置27hである。図12(a)には、変更前の暫定ドロップレシピが例示されている。図12(b)には、変更後の暫定ドロップレシピが例示されている。図12(a)における位置27g、27hをショット領域の中心方向における液滴を配置可能な位置27i、27jに移動することによって、図12(b)に例示される変更後の暫定ドロップレシピが得られる。
図13には、図10~図12を参照しながら説明された変更後の暫定ドロップレシピに従って工程S104~S109を実行し、工程S109でオフアクシススコープ24によって得られた画像データが例示されている。図13では、欠陥領域は存在しない。
ここでは、はみ出し欠陥領域が存在する場合に、液滴を移動させることによってはみ出し領域を解消する方法を例示したが、はみ出し領域に対応する液滴数を計算し、はみ出し領域の近傍の液滴を削除する方法も有用である。
図14は、ユーザインターフェース34によって提供される設定画面が例示されている。この設定画面を通して、ユーザは、ドロップレシピを調整するための条件を設定することができる。以下、設定画面における設定可能項目を説明する。「Max Iteration Count of One Wafer」は、1枚の基板について工程S104~S109の工程を、対象ショット領域を変更しながら、繰り返す回数を指定するパラメータである。工程S111では、「Max Iteration Count of One Wafer」に基づいて、空き領域の有無が判断されうる。 「Detect Tolerance Local Area」は、1つの欠陥領域の面積の許容値(規格)を指定するパラメータである。工程S110では、「Detect Tolerance Local Area」に基づいて、欠陥領域の面積が規格内であるどうかが判断されうる。工程S110では、「Detect Tolerance Local Area」を超える欠陥領域が1箇所でも存在したら、欠陥領域の面積が規格内ではないと判断されうる。
「Defect Tolerance Total Area」は、対象ショット領域が有する全ての欠陥領域の面積の合計に対する許容値(規格)を指定するパラメータである。工程S110では、「Detect Tolerance Total Area」に基づいて、欠陥領域の合計面積が規格内であるどうかが判断されうる。「Detect Area <1> UL/DR」~「Detect Area <5> UL/DR」は、ショット領域における欠陥の検査を実施すべき検査対象領域を指定するためのパターメータである。検査対象領域は、左上の座標(UL)と右下の座標(DR)とで指定される矩形領域として設定される。ここで、<1>~<5>は、検査を行うべき順番を示す。「Add Detect Area」は、検査対象領域の追加を指示するためのチェックボックスであり、このチェックボックスがチェックされると、「Detect Area <X> UL/DR」が追加される。
「Shot Peripheral Check」は、モールドのパターンの外側領域の検査を実施するか否かを設定するためのチェックボックスであり、このチェックボックスがチェックされると、モールドのパターンの外側領域の検査が実施される。「Continual Wafer Number」は、ドロップレシピの決定のために使用する基板の枚数を指定するためのパラメータである。工程S113では、「Continual Wafer Number」に基づいて、指定枚数の基板を処理したかどうかが判断される。「FF Recipe Name」は、完全ショット領域(FFショット領域)のためのドロップレシピを決定するための調整レシピ名を設定するための入力領域である。「PF Recipe Name」は、部分ショット領域(PFショット領域)のためのドロップレシピを決定するための調整レシピ名を設定するための入力領域である。
図14の例では、欠陥検査を実施すべき領域がユーザによる画面操作により入力される。しかし、欠陥が発生しやすい領域は、モールドのパターンの領域境界、アライメントマーク位置及びその近傍であることが実験により判明している。こうした特定の領域を指定するために、制御部400は、入出力インターフェース440によってユーザインターフェース34または統括コンピュータ300からモールドの設計情報を取得し、この設計情報に基づいて特定の領域を指定してもよい。このような方法によれば、検査領域を設定する手間が省け、効率よくドロップレシピを決定することができる。モールドのパターンの境界領域は、領域ブロックによりパターン線幅が異なる場合や領域ブロックによりパターンの方向が異なる場合に、それぞれの領域ブロックが近接する領域である。
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、モールド等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。光学素子としては、マイクロレンズ、導光体、導波路、反射防止膜、回折格子、偏光素子、カラーフィルタ、発光素子、ディスプレイ、太陽電池等が挙げられる。MEMSとしては、DMD、マイクロ流路、電気機械変換素子等が挙げられる。記録素子としては、CD、DVDのような光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、磁気ヘッド等が挙げられる。センサとしては、磁気センサ、光センサ、ジャイロセンサ等が挙げられる。モールドとしては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
次に、インプリント装置によって基板にパターンを形成し、該パターンが形成された基板を処理し、該処理が行われた基板から物品を製造する物品製造方法について説明する。図15(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
図15(b)に示すように、インプリント用のモールド4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図15(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1とモールド4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zはモールド4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光をモールド4zを透して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
図15(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、モールド4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、モールドの凹部が硬化物の凸部に、モールドの凹部が硬化物の凸部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zにモールド4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
図15(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図15(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
次に、物品の別の製造方法について説明する。図16Aに示すように、石英ガラス等の基板1yを用意し、続いて、インクジェット法等により、基板1yの表面にインプリント材3yを付与する。必要に応じて、基板1yの表面に金属や金属化合物等の別の材料の層を設けても良い。
図16Bに示すように、インプリント用のモールド4yを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3yに向け、対向させる。図16Cに示すように、インプリント材3yが付与された基板1yとモールド4yとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3yはモールド4yと基板1yとの隙間に充填される。この状態で光をモールド4yを透して照射すると、インプリント材3は硬化する。
図16Dに示すように、インプリント材3yを硬化させた後、モールド4yと基板1yを引き離すと、基板1y上にインプリント材3yの硬化物のパターンが形成される。こうして硬化物のパターンを構成部材として有する物品が得られる。なお、図16Dの状態で硬化物のパターンをマスクとして、基板1yをエッチング加工すれば、モールド4yに対して凹部と凸部が反転した物品、例えば、インプリント用のモールドを得ることもできる。
以下、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態として言及しない事項は、第1実施形態に従いうる。基板1上の複数の完全ショット領域は、互いに同じ形状を有するので、通常は、複数の完全ショット領域に対して共通のドロップレシピが決定されうる。第1実施形態では、完全ショット領域のための共通のドロップレシピの決定は、基板の複数の完全ショット領域を使って試験的にインプリント処理を行い、これによって形成されるパターンを評価することによってなされる。
第2実施形態では、基板1上の複数の完全ショット領域に対して、互いに異なるインプリント条件に従って試験的にインプリント処理を行い、これによって形成されるパターンを評価することによって最適なドロップレシピを選択あるいは決定する。互いに異なるインプリント条件は、プロセスレシピにおいて設定されうる。互いに異なるインプリント条件は、個々のショット領域に対して他のショット領域とは異なるインプリント条件が設定されるように設定されうる。
各インプリント条件は、
・基板とモールドの位置合わせの完了時の基板とモールドの相対位置、
・インプリント材にモールドを接触させてから硬化させるまでの時間、
・インプリント材にモールドを接触する時の圧力、
・インプリント材にモールドを接触させる時のモールドの変形、
の少なくとも1つを含みうる。
図18には、第2実施形態のインプリント装置200によって実行されるドロップレシピ生成方法の手順の具体的な例が示されている。この動作は、制御部400によって制御される。図18における工程S101~S108及びS118は、図7における工程S101~S108及びS118と同じであるので、それらについての説明を省略する。工程S301において、制御部400は、インプリント条件情報をプロセスレシピから読み取り、内部データとして格納する。
工程S302において、制御部400は、レシピ判定条件、優先順位条件情報を、入出力インターフェース440によってユーザインターフェース34または統括コンピュータ300から取得する。
工程S303において、主制御部410は、オフアクシススコープ24に対象ショット領域の上の硬化したインプリント材IMからなるパターンを撮像させ、これにより得られる画像データに基づいて該パターンの品質を評価する。
パターンの品質の評価は、本実施形態では、画像データから抽出される欠陥の大きさ、欠陥の大きさ毎に分類された各ランクにおける欠陥の数、ショット領域からのインプリント材の浸み出しにおいてはその浸み出し領域の面積の総和、に関する評価を含みうる。また、パターンの品質の評価は、膜厚計測部(不図示)によって対象ショット領域の複数の指定箇所の膜厚を計測し、その計測値の分散値を得ることを含みうる。また、上記の他、工程S106で実施されたダイダイバイアライメントの位置残差情報の評価がなされてもよい。
工程S304では、主制御部410は、ドロップレシピ生成部420に暫定ドロップレシピを変更させる。ドロップレシピ生成部420は、現在の暫定ドロップレシピ(最新のドロップレシピ)を工程S303における、画像データから抽出される欠陥領域の大きさの評価の結果に基づいて変更する。
工程S305では、主制御部410は、全てのインプリント条件(ショット領域)に対して処理が終了したか否かを判断し、終了した場合は工程S306へ進む。終了していない場合は工程S104へ戻る。工程S104へ戻ることは、変更後の暫定ドロップレシピに従ってインプリント材を配置しパターンを形成し評価する処理(S104~S304)を、プロセスレシピで設定されたショット領域の全てに対してその基板を使って繰り返すことを意味する。
工程S306では、主制御部410は、複数のショット領域のそれぞれの上に形成されたパターンの評価結果のうち所定条件を満たす評価結果を示すパターンを特定する。そして、主制御部410が、当該特定したパターンが形成されたショット領域に対するインプリント材の配置のための使用された暫定ドロップレシピに基づいてドロップレシピを決定する。
工程S306では、例えば、予め設定された評価指標の優先順位情報に基づいて、全ての評価指標が規格に入っているインプリント条件で、最も優れた評価結果を示したインプリント条件に対応する暫定ドロップレシピを選択し、ドロップレシピとして決定する。
図19の例では、最適なドロップレシピを選択あるいは決定するための、評価指標の優先順位情報、それぞれの評価指標の満足すべき規格値がユーザによる画面の操作により入力される。予め評価指標毎にPriority欄に優先順位が入力されていると、主制御部410は、Tolerance欄で指定された規格値を満たすショット領域の中から、Priority欄の優先順位の高い評価項目の中から最も優れたものを選択する。
評価指標は、相互に影響し合うかもしれない。例えば、欠陥を防止する目的でインプリント材を多く配置し過ぎると、残膜厚のバラツキが大きくなる場合がある。ショット領域からのインプリント材の浸み出しを防止する目的でインプリント材を少なめに配置すると、同様に残膜厚のバラツキが大きくなり、欠陥が発生する場合がある。またインプリト条件としての、モールドとインプリント材の接触から硬化までの時間が長くなると欠陥は減る傾向にあるが、浸み出しは増加する傾向がある。アライメント精度を高めるためのモールドおよび基板の傾き制御は浸み出しの傾向に変化を与えうる。また、半導体製造においてはその半導体パターン幅、密度、その他の傾向によって、アライメント精度を重視すべき半導体デバイスがあったり、残膜厚のバラツキを重視すべき半導体デバイスがあったりしうる。換言すると、評価指標の影響の度合いは、製造しようとする半導体デバイスによって異なりうる。こうした場合、評価項目に優先順位を付け、これに基づいてドロップパターンを決定する方法が有利となりえる。
主制御部410は以下の手順でドロップレシピを決定しうる。
ステップ1:評価された全てのショット領域の中から、全評価項目が基準を満たすショット領域を抽出する。
ステップ2:抽出されたショット領域において、最も優先したい評価指標の値で最も規格からの余裕があるショット領域を抽出する。
ステップ3:最も規格からの余裕があるショット領域の評価値が同値で複数ある場合は、順次優先順位の高い順に、選択された評価値で最も規格からの余裕があるショット領域を抽出する。
ステップ4:抽出されたショット領域に対するインプリント時に使用された暫定ドロップレシピをドロップレシピとして決定する。
ステップ1~ステップ4は工程S306で実行されうる。
図20は、主制御部410が制御部400のメモリ上で管理する、評価条件と評価指標が格納されるデータテーブルの一例である。Priority欄の値、Tolerance欄の値は、図19の画面を使って入力されうる。Shot欄には、完全ショット領域のみを使ってインプリントした場合のショット領域を特定するショット番号が示されうる。Drop Recipe欄には、使用する暫定ドロップレシピのレシピ名が示されうる。各ショット番号で使用された暫定ドロップレシピはドロップレシピ決定まで保存される。
Spread Timeの欄には、インプリント材にモールドを接触させてからインプリント材を硬化させるまでの待ち時間が示される。Cavity Pressureの欄には、パターン面Pがインプリント材に接触する時にパターン面を変形させるための圧力が示される。Imprint Forceの欄には、インプリント材にモールドを接触させる時の圧力が示される。Exposure Doseの欄には、硬化露光量が示される。これらの情報は、主制御部410がプロセスレシピから取得しうる。
Evaluation欄の評価値は、其々のショット領域における以下の情報が示されうる。
Extrusion:浸み出し面積の総和
Void Defects:欠陥の大きさにおいて分類されたランクA、B、Cごとの欠陥の個数
Alignment:X、Yそれぞれのダイダイバイアライメントの位置残差(アライメント結果)
RLTU:ショット領域内の残膜の厚さのバラツキ
この例において、主制御部410は、例えば、以下の手順でドロップレシピを決定しうる。
ステップ1:評価された全てのショット領域(ショット番号)において、全評価項目が基準を満たすショット領域4~8、12~14、19、20を抽出する。
ステップ2:抽出されたショット領域において、最も優先したい評価指標のVoid DefectsのRank A、次に優先したい評価指標のRank Bは同値なので、その次の評価指標Alignment X値で規格から余裕があるショット領域5、6を抽出する。
ステップ3:最も余裕があるショット領域の評価値が同値で複数あるので、次に優先順位の高いRank Cの規格でショット領域4を抽出する。
ステップ4:抽出されたショット領域4をインプリントする時に使用された暫定ドロップレシピをドロップレシピとして決定する。
第2実施形態のドロップレシピの決定方法によれば、評価指標が相互に影響し合う半導体製造プロセスで使われるドロップレシピを効率的に決定することが可能となる。