JP7154765B2 - 育毛作用の予測方法 - Google Patents
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Description
〔1〕第1発明としては、
本発明は以下の工程を含むことを特徴とする、任意の処置の育毛作用の予測方法を提供する。
(1) ヒト頭部以外の体の一部位を被験部、別部位を対象部として、試験対象の処置を行う工程
(2) 被験部および対象部からそれぞれ体毛を抜去する工程
(3) 抜去した体毛からRNAを抽出する工程
(4) 育毛に関連する遺伝子発現量を測定する工程
(5) 被験部の遺伝子発現量を対象部の遺伝子発現量と比較した場合に、毛髪成長シグナル物質をコードする少なくとも一つ以上の遺伝子発現量を増加させ、かつ男性ホルモン依存的体毛成長時特徴的に変動する物質をコードする遺伝子の発現量も変化させない処置を、育毛作用を有する処置と判断する工程
〔2〕第2発明としては、第1発明における(5)の工程において、
毛髪成長シグナル物質をコードする少なくとも一つ以上の遺伝子発現量を1.2以上に増加させる処置を、育毛作用を有するとして判断する育毛作用の予測方法。
〔3〕第3発明としては、第1、第2発明における(3)の工程において、
ホモジナイザーにより試料を破砕する工程を含む請求項1または請求項2に記載の育毛作用の予測方法。
〔4〕第4発明としては、第1乃至第3発明における、毛髪成長シグナル物質をコードする遺伝子がHGF、KGF、VEGF、またはBMP2の少なくともいずれか一つである育毛作用の予測方法。
〔5〕第5発明としては第1乃至第4発明における、男性ホルモン依存的体毛成長時特徴的に変動する物質をコードする遺伝子が、IGF1である育毛作用の予測方法。
老若男女特に限定されないが、試験への参加に同意が得られ、特に経口での薄毛治療剤の投与を受けておらず、外観上、被験部と対象部に皮膚状態や体毛生育状態などの様子に大きな差が見られないヒトの脛部、下腕部を用いることが望ましい。
抜去した毛髪試料からのRNA抽出に際する試料の破砕方法の違いがRNA分解度に与える影響を評価した。脛部から50本の体毛を抜去し、直ちにBuffer RLT 2mLに浸漬した。その後ホモジナイザーによる破砕( レベル4.5, 10秒 × 3回 ON ice, POLYTRON, KINEMATICA AG)、あるいは超音波破砕(Ampl. 20%, 30秒 ×1~3回 on ice, QSONICA)を試みた。その後RNeasy Mini Kit(QIAGEN)を利用して、RNAを抽出した。それぞれ、600ng、300ngのRNAが得られた。RNA分解度は、得られたRNAの電気泳動パターン(Agilent 2100 Bioanalyzer)を観察することで評価した。すなわち、Total RNAの分解に伴ってリボソーマルRNAの28Sサブユニットと18Sサブユニットのバンド強度比が低下し、18Sよりも分子量の小さいバンドが増えることを利用して分解の程度を評価した。電気泳動は下記の方法で行った。得られたRNAサンプルを熱処理しRNA高次構造を変性させた後、速やかに氷上に移し、急冷した。電気泳動装置Agilent 2100 Bioanalyzer内のゲルにRNAサンプルをアプライした。電圧をかけ電気泳動を行った。電気泳動後、各RNAサンプルの蛍光シグナルをバンド強度として検出した。電気泳動の結果を図1に示す。
脛部の毛髪成長シグナル物質をコードする遺伝子発現量を増加させ、かつ男性ホルモン依存的毛成長時特徴的に変動する物質をコードする遺伝子発現量を変化させない処置を選択することで頭部への育毛作用を予測することができるとの仮説を立て、その仮説を立証するための実験を行った。男性6名に依頼し、ヒト脛部の被験部(3.5cm×3.5cm)に、装置による処置の例として自作した接触型青色光照射装置(波長464nm、出力8mW)を用いて30分間青色光を照射し、薬剤塗布処置の例として1%クロレラエキス水溶液を塗布、0.1%グリチルレチン酸60%エタノール水溶液を塗布、水を塗布した。処置を行っていない部位を対象部位とした。グリチルレチン酸は、すでに頭部の男性ホルモン依存的な薄毛に対する有用性が確認された成分である。処置終了から24時間後、各被験部および処置を行っていない対象部から、それぞれ60本の体毛を抜去し、〔0025〕に記載の方法でRNAを抽出した。その後、Prime Script RT PCR KIT (TaKaRa) を用いて逆転写を行い、cDNAを合成した。得られたcDNAを鋳型として、HGF、KGF、VEGF、BMP2、IGF1、TGFB1、GAPDHの発現量を以下のプライマー及びPCR試薬SYBR Select Master Mix(Applied Biosystems)を用いて、リアルタイムPCR(7500 Real Time PCR System 、Applied Biosystems)にて測定した。TGFB1、は毛髪の休止期移行に関与する遺伝子であり、TRANSFORMING GROWTH FACTOR β 1をコードする遺伝子である。GAPDHは多くの組織や細胞中に共通して一定量発現しているためリアルタイムPCRのコントロールとして使用されるハウスキーピング遺伝子であり、GLYCERALDEHYDE-3-PHOSPHATE DEHYDROGENASEをコードする遺伝子である。
また、男性ホルモンは男性ホルモン依存的体毛成長時特徴的に変動する物質をコードする遺伝子IGF1を変動させる作用があることが知られているが、青色照射、クロレラエキス塗布によって男性ホルモン依存的体毛成長時特徴的に変動する物質をコードする遺伝子IGF1はほぼ変動しなかった。
つまり、これらの処置は男性ホルモン様作用のある頭部において薄毛促進する処置ではないことが予測された。
一方で、頭部の男性ホルモン依存的な薄毛に対する有用性が確認された成分であるグリチルレチン酸は毛髪成長シグナル物質をコードする遺伝子のいずれも実質的に変化していなかった。これはグリチルレチン酸の頭部での育毛作用が男性ホルモンの阻害によるものであるため、多量の活性な男性ホルモンにより生じる男性ホルモン依存的な薄毛部位では男性ホルモンの阻害により毛髪成長シグナル物質の誘導につながるものの、被験者の被験部周辺に多量の活性な男性ホルモンが存在するとは限らないため、そういった場合には男性ホルモンの阻害により必ずしも男性ホルモン依存的体毛成長時特徴的に変動する物質の減少を伴わず、体毛部位における毛髪成長シグナル物質の上昇も引き起こさなかったと考えられた。
一方、被験者の被験部周辺に多量の活性な男性ホルモンが存在する場合には、男性ホルモンの阻害により男性ホルモン依存的体毛成長時特徴的に変動する物質の減少が起きることが知られている。そのため、育毛効果を有する処置を、体毛を用いて予測する場合には、男性ホルモン依存的体毛成長時特徴的に変動する物質をコードする遺伝子の発現量を変化させない処置を、育毛作用を有するとして判断する工程を設けることが、男性ホルモン抑制作用以外の作用による育毛効果を有する処置を選抜するにあたって重要な工程であり、これにより、薄毛に対する男性ホルモンの阻害による有用性を有する成分を、育毛作用を有する処置として検出しないことができると言える。
尚、毛髪の休止期移行に関与する遺伝子であるTGFB1は実施例1、2、比較例1、2、3間で特定の傾向は示さなかった。よって、脛の体毛を用いての頭部における育毛作用の予測法として休止期関連遺伝子は指標とはならないことも確認された。
頭部の薄毛に悩む男性5名に依頼し、〔0027〕と同じ自作の接触型青色光照射装置を1日10分間、半年間にわたって頭部で薄毛が気になる部位中心に適用してもらい、前後の毛髪状態を評価した。5名の被験部位の毛髪本数、成長速度、成長期毛率の平均を算出した。毛髪状態の評価は、測定の1日目に薄毛が気になる部位に近接した1×1cm2の領域をシェーバーにて剃毛し、直後と2日後に同部位をマイクロスコープにて画像取得して、該画像を解析することにより行った。毛髪本数は、剃毛直後の画像にて、剃毛した1×1cm2の領域内に毛孔を有する毛髪の本数を計測することによって得た。成長期毛率は、剃毛した1×1cm2の領域内毛孔を有する毛髪の、剃毛直後から2日後までの伸長を計測し、その誤差よりも伸長が大きい毛髪を成長期毛、小さい毛髪を休止期毛とし、測定対象とした毛髪本数に対する成長期毛の本数を成長期毛率とした。成長速度は、成長期毛率と同じ方法で選別した成長期毛について、剃毛直後から2日後までの伸長を、直後から2日後の測定の間の時間で除することで、時間当たりの毛髪伸長を算出し、これを成長速度とした。結果を図2に示す。また、顕著に育毛作用が認められた男性の頭部の写真撮影結果を図3に示す。
頭部の薄毛に悩む男性5名に依頼し、1%クロレラエキス配合トニックを1日2回、4ヶ月間にわたって頭部で薄毛が気になる部位中心に適用してもらい、前後の毛髪状態を評価した。5名の被験部位の成長期毛率の平均を算出した。毛髪状態の評価は、育毛作用の確認試験1と同様の方法で行った。結果を図4に示す。
Claims (3)
- 以下の工程を含むヒト頭部における育毛作用の予測方法。
(1)ヒト脛部の一部位を被験部、ヒト脛部の別部位を対象部として、被験部位に試験対象の処置を行い、対象部には処置を行わない工程
(2)被験部および対象部からそれぞれ体毛を抜去する工程
(3)抜去した体毛からRNAを抽出する工程
(4)次に記載の育毛に関連する遺伝子発現量を測定する工程
(4-1)毛髪成長シグナル物質をコードする遺伝子であるHGF、KGF、VEGF、またはBMP2から選択される少なくとも一つ以上の遺伝子の発現量
及び
(4-2)男性ホルモン依存的体毛成長時特徴的に変動する物質をコードする遺伝子であるIGF1の発現量
(5)被験部の遺伝子発現量を対象部の遺伝子発現量と比較した場合に、(4-1)で測定した毛髪成長シグナル物質をコードする遺伝子であるHGF、KGF、VEGF、またはBMP2から選択される少なくとも一つ以上の遺伝子の発現量を増加させ、かつ男性ホルモン依存的体毛成長時特徴的に変動する物質をコードする遺伝子であるIGF1の発現量を変化させない処置を、育毛作用を有する処置と判断する工程 - 前記(5)の工程において、
毛髪成長シグナル物質をコードする少なくとも一つ以上の遺伝子発現量を1.2倍以上に増加させる処置を、育毛作用を有するとして判断する請求項1に記載の育毛作用の予測方法。 - 前記(3)の工程において、
ホモジナイザーにより試料を破砕する工程を含む請求項1または請求項2に記載の育毛作用の予測方法。
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