以下、実施形態の電力変換装置の試験システムおよび試験方法を、図面を参照して説明する。尚、本明細書で言う「接続」とは、物理的に接続される場合に限定されず、電気的に接続される場合も含む。
図1は、実施形態の試験システム4000の構成図である。図1には、交流電源10、電力変換装置100および試験設備400が示される。試験設備400は、例えば、変圧器20、試験装置450、試験リアクトル500、制御装置600、電流検出器610、監視装置650、電流検出器660、電圧検出器670、第1リアクトル550A、第2リアクトル550Bおよびキャパシタ460A、460Bを備える。電力変換装置100は、整流器200、キャパシタ700A、700Bおよびインバータ300を備える。電力変換装置100は、実施形態の試験設備400によって試験される対象である。例えば電力変換装置100は交流可変速電動機駆動用の電力変換装置である。
交流電源10は、商用電源や発電機などであり、三相交流電力を変圧器20の一次巻線21に供給する。変圧器20は、多相トランスである。変圧器20は、例えば、一次巻線21と、二次巻線22Aと、二次巻線22Bとを備える。変圧器20は、交流電源10からの三相交流電力の供給を一次巻線21で受け、受けた三相交流電力を変圧し、二次巻線22Aと二次巻線22Bとのそれぞれから変圧した三相交流電力を出力する。二次巻線22Aから出力される三相交流電力は、R1相、S1相、T1相を有する。二次巻線22Bから出力される三相交流電力は、R2相、S2相、T2相を有する。二次巻線22Aから出力される三相交流電力のR1相、S1相、T1相と、二次巻線22Bから出力される三相交流電力のR2相、S2相、T2相との間には、所定の位相差が設けられていてもよい。
整流器200は、ダイオード型の整流器であり、変圧器20から供給される交流電力を整流して、得られた直流電力をインバータ300に供給する。整流器200は、直流電源の一例である。整流器200は、例えば、第1整流回路200Aと第2整流回路200Bを備える。第1整流回路200Aと第2整流回路200Bとのそれぞれは、例えば、三相フルブリッジ型のダイオード整流回路である。第1整流回路200Aは、変圧器20からから供給されたR1相、S1相、T1相の三相交流電力を整流して直流電力に変換し、変換した直流電力を第1整流回路正極端子202Aと第1整流回路負極端子203Aとから出力する。第2整流回路200Bは、変圧器20からから供給されたR2相、S2相、T2相の三相交流電力を整流して直流電力に変換し、変換した直流電力を第2整流回路正極端子202Bと第2整流回路負極端子203Bとから出力する。整流器200については、後述する。
第1整流回路負極端子203Aと第2整流回路正極端子202Bと整流器中性端子220Cとは接続されている。第1整流回路正極端子202Aは整流器正極端子220Pと接続されている。第2整流回路負極端子203Bは整流器負極端子220Nと接続されている。第1整流回路200Aと第2整流回路200Bとが、互いに直列に接続されるので、第1整流回路200Aの出力する電圧と第2整流回路200Bの出力する電圧の合計の電圧が、整流器正極端子220Pと整流器負極端子220Nとの間に出力される。
第1正極導電部材250Pと、第1負極導電部材250Nと、第1中性導電部材250Cのそれぞれは、例えば、銅などの金属によって構成されるプレート状等のブスバーや電線等の導電性の部材である。第1正極導電部材250Pは、整流器正極端子220Pと後述する電力変換装置正極端子302Pとを接続している。第1中性導電部材250Cは、整流器中性端子220Cと後述する電力変換装置中性端子302Cとを接続している。第1負極導電部材250Nは、整流器負極端子220Nと後述する電力変換装置負極端子302Nとを接続している。
インバータ300は、例えば、中性点クランプ型3レベルインバータ(Neutral-Point-Clamped Three-Level Inverter)である。インバータ300は、後述する制御装置600の第1PWM制御部602によってPWM(Pulse Width Modulation)制御されることにより、可変周波数および可変電圧の交流電圧を出力し電力変換動作をする。
インバータ300は、第1レグ300A、第2レグ300B、および第3レグ300Cを備える。第1レグ300Aは、第1レグ中性端子320Aと、第1レグ交流端子321Aと、第1レグ正極端子322Aと、第1レグ負極端子323Aとを備える。第2レグ300Bは、第2レグ中性端子320Bと、第2レグ交流端子321Bと、第2レグ正極端子322Bと、第2レグ負極端子323Bとを備える。第3レグ300Cは、第3レグ中性端子320Cと、第3レグ交流端子321Cと、第3レグ正極端子322Cと、第3レグ負極端子323Cとを備える。
電力変換装置正極端子302Pは、第1レグ正極端子322A、第2レグ正極端子322B、および第3レグ正極端子322Cに接続される。電力変換装置負極端子302Nは、第1レグ負極端子323A、第2レグ負極端子323B、および第3レグ負極端子323Cに接続される。電力変換装置中性端子302Cは、第1レグ中性端子320A、第2レグ中性端子320B、および第3レグ中性端子320Cに接続される。これにより、第1正極導電部材250Pと、第1負極導電部材250Nと、第1中性導電部材250Cとを介して、整流器200から直流電力がインバータ300に供給される。
第1レグ300Aは交流電力をR3相に出力する。第2レグ300Bは交流電力をS3相に出力する。第3レグ300Cは交流電力をT3相に出力する。R3相とS3相およびT3相により3相交流を構成している。第1レグ300A、第2レグ300B、および第3レグ300Cは、後述する制御装置600の第1PWM制御部602によってPWM制御のスイッチングに従って、上記三相交流電力への変換を行う。第1レグ交流端子321A、第2レグ交流端子321B、および第3レグ交流端子321Cは、それぞれ、第1レグ300A、第2レグ300B、および第3レグ300Cの出力する三相交流電力のR3、S3、およびT3の出力端子である。
第1レグ交流端子321Aは、電力変換装置R相交流端子330Aに接続される。第2レグ交流端子321Bは、電力変換装置S相交流端子330Bに接続される。第3レグ交流端子321Cは、電力変換装置T相交流端子330Cに接続される。
キャパシタ700A、700Bは、整流器200の出力する直流電圧と、インバータ300の出力する直流電圧とを平滑化する。キャパシタ700Aは、第1正極導電部材250Pと第1中性導電部材250Cとの間に接続され、キャパシタ700Bは、第1負極導電部材250Nと第1中性導電部材250Cとの間に接続される。つまり、キャパシタ700Aと700Bとの接続点は、第1中性導電部材250Cに接続される。
試験装置450は、インバータ300と同様のインバータである。試験装置450は、後述する制御装置600の第2PWM制御部603によってPWM制御されることにより、負荷の運転を模擬した電力変換動作をする。負荷とは、例えば、交流電動機である。試験装置450は、例えば、第1レグ450A、第2レグ450B、および第3レグ450Cを備える。第1レグ450A、第2レグ450B、および第3レグ450Cは、例えば、インバータ300の第1レグ300A、第2レグ300B、および第3レグ300Cと構成が同一であってよい。第1レグ450A、第2レグ450B、および第3レグ450Cの詳細な説明は省略する。インバータ300と試験装置450のより詳細な例は、後述する。
第1レグ450Aは、第1レグ中性端子470Aと、第1レグ交流端子471Aと、第1レグ正極端子472Aと、第1レグ負極端子473Aとを備える。第2レグ450Bは、第2レグ中性端子470Bと、第2レグ交流端子471Bと、第2レグ正極端子472Bと、第2レグ負極端子473Bとを備える。第3レグ450Cは、第3レグ中性端子470Cと、第3レグ交流端子471Cと、第3レグ正極端子472Cと、第3レグ負極端子473Cとを備える。
第1レグ交流端子471Aは、試験装置R相交流端子454Aに接続される。第2レグ交流端子471Bは、試験装置S相交流端子454Bに接続される。第3レグ交流端子471Cは、試験装置T相交流端子454Cに接続される。
試験装置正極端子452Pは、第1レグ正極端子472A、第2レグ正極端子472B、および第3レグ正極端子472Cに接続される。試験装置負極端子452Nは、第1レグ負極端子473A、第2レグ負極端子473B、および第3レグ負極端子473Cに接続される。試験装置中性端子452Cは、第1レグ中性端子470A、第2レグ中性端子470B、および第3レグ中性端子470Cに接続される。
試験装置R相交流端子454A、試験装置S相交流端子454B、試験装置T相交流端子454Cは、インバータ300から試験リアクトル500を介して供給されるR4相、S4相、T4相の三相交流電力の供給を受ける。第1レグ450Aは、試験装置R相交流端子454Aから供給されるR4相の三相交流電力を直流電力に変換する。第2レグ450Bは、試験装置S相交流端子454Bから供給されるS4相の三相交流電力を直流電力に変換する。第3レグ450Cは、試験装置T相交流端子454Cから供給されるT4相の三相交流電力を直流電力に変換する。第1レグ450A、第2レグ450B、および第3レグ450Cは、後述する制御装置600の第2PWM制御部603によってPWM制御のスイッチングに従って、上記直流電力への変換を行う。第1レグ交流端子471A、第2レグ交流端子471B、第3レグ交流端子471Cは、それぞれ、第1レグ450A、第2レグ450B、および第3レグ450Cの出力する三相交流電力のR4、S4、およびT4の出力端子である。
試験装置正極端子452Pは、後述する第1リアクトル550Aを介して、インバータ300の電力変換装置正極端子302Pに接続される。試験装置負極端子452Nは、後述する第2リアクトル550Bを介して、インバータ300の電力変換装置負極端子302Nに接続される。試験装置中性端子452Cは、インバータ300の電力変換装置中性端子302Cに接続される。つまり、試験装置450は、インバータ300から試験リアクトル500を介して三相交流電力の供給を受け、受け取った三相交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力をインバータ300に出力する。
試験リアクトル500は、インバータ300の交流側と試験装置450の交流側の間に接続される。試験リアクトル500の仕様は、試験対象であるインバータ300の回路、仕様等により決定される。試験リアクトル500は、R相のリアクトル501A、S相のリアクトル501B、T相のリアクトル501Cを備える。
第2正極導電部材480P、第2中性導電部材480C、および第2負極導電部材480Nのそれぞれは、例えば、ブスバーや電線等の導電性の部材である。第2正極導電部材480Pの第1端部は、第1正極導電部材250Pに接続され、第2正極導電部材480Pの第2端部は、後述する第1リアクトル550Aの第1端部に接続される。第2負極導電部材480Nの第1端部は、第1負極導電部材250Nに接続され、第2負極導電部材480Nの第2端部は、後述する第2リアクトル550Bの第1端部に接続される。第2中性導電部材480Cの第1端部は、第1中性導電部材250Cに接続され、第2中性導電部材480Cの第2端部は、試験装置450の試験装置中性端子452Cに接続される。
第3正極導電部材481Pおよび第3負極導電部材481Nのそれぞれは、例えば、ブスバーや電線等の導電性の部材である。第3正極導電部材481Pの第1端部は、第1リアクトル550Aの第2端部に接続され、第3正極導電部材481Pの第2端部は、試験装置450の試験装置正極端子452Pに接続される。第3負極導電部材481Nの第1端部は、第2リアクトル550Bの第2端部に接続され、第3負極導電部材481Nの第2端部は、試験装置450の試験装置負極端子452Nに接続される。
キャパシタ460Aは、第3正極導電部材481Pと第2中性導電部材480Cとの間に接続される。キャパシタ460Bは、第2中性導電部材480Cと第3負極導電部材481Nとの間に接続される。つまり、キャパシタ460Aとキャパシタ460Bとの接続点は、第2中性導電部材480Cに接続される。キャパシタ460A、460Bは、試験装置450の出力する直流電圧を平滑化する。
第1リアクトル550Aの第1端部は、第2正極導電部材480Pの第2端部に接続され、第1リアクトル550Aの第2端部は、第3正極導電部材481Pの第1端部に接続される。第2リアクトル550Bは、直列リアクトルである。第2リアクトル550Bの第1端部は、第2負極導電部材480Nの第2端部に接続され、第2リアクトル550Bの第2端部は、第3負極導電部材481Nの第1端部に接続される。第1リアクトル550A、第2リアクトル550Bのそれぞれのインダクタンスは、試験対象であるインバータ300の回路、仕様等により決定される。
第4R3相導電部材580A、第4S3相導電部材580B、および第4T3相導電部材580Cのそれぞれは、例えば、ブスバーや電線等の導電性の部材である。第4R3相導電部材580Aの第1端部は、電力変換装置R相交流端子330Aに接続される。第4R3相導電部材580Aの第2端部は、試験リアクトル500のR相のリアクトル501Aの第1端部に接続される。第4S3相導電部材580Bの第1端部は、電力変換装置S相交流端子330Bに接続される。第4S3相導電部材580Bの第2端部は、試験リアクトル500のS相のリアクトル501Bの第1端部に接続される。第4T3相導電部材580Cの第1端部は、電力変換装置T相交流端子330Cに接続される。第4T3相導電部材580Cの第2端部は、試験リアクトル500のT相のリアクトル501Cの第1端部に接続される。
第5R4相導電部材581A、第5S4相導電部材581B、および第5T4相導電部材581Cのそれぞれは、例えば、ブスバーや電線等の導電性の部材である。第5R4相導電部材581Aの第1端部は、試験リアクトル500のR相のリアクトル501Aの第2端部に接続される。第5R4相導電部材581Aの第2端部は、試験装置450の試験装置R相交流端子454Aに接続される。第5S4相導電部材581Bの第1端部は、試験リアクトル500のS相のリアクトル501Bの第2端部に接続される。第5S4相導電部材581Bの第2端部は、試験装置450の試験装置S相交流端子454Bに接続される。第5T4相導電部材581Cの第1端部は、試験リアクトル500のT相のリアクトル501Cの第2端部に接続される。第5T4相導電部材581Cの第2端部は、試験装置450の試験装置T相交流端子454Cに接続される。
電流検出器610は、第5R4相導電部材581A、第5S4相導電部材581B、第5T4相導電部材581Cに流れる相電流IR、IS、ITをそれぞれ検出し、制御装置600に出力する。
図2は、実施形態の試験設備400の制御装置600の構成図である。制御装置600は、例えば、制御部601、第1PWM制御部602、および第2PWM制御部603を備える。制御部601は、電流検出器610から、試験リアクトル500に流れる相電流IR、IS、ITを取得し、図示しない上位装置や入力部などから、電流指令値Ii、周波数指令値Fi、および電圧指令値Viを受け取る。制御部601は、電流指令値Ii、周波数指令値Fi、および電圧指令値Viに従って、第1PWM制御部602に対する電圧指令値VC1および第2PWM制御部603に対する電圧指令値VC2を演算して、それぞれを第1PWM制御部602および第2PWM制御部603に出力する。第1PWM制御部602は、制御部601によって演算された電圧指令値VC1に従って、インバータ300を制御する。第2PWM制御部603は、制御部601によって演算された電圧指令値VC2に従って、試験装置450を制御する。試験対象であるインバータ300の性能試験を行うには、実際の電動機の力率および周波数に近い値になるように、所定の試験電流を流したときの試験リアクトル500の電圧降下を考慮し、制御部601は電流検出器610で検出されたインバータ300の出力電流とその出力電流の基本波周波数に基き試験装置450の周波数と出力電圧を決定し、所定の定められた周波数および電圧を出力するように試験装置450を制御する。また、制御部601は、インバータ300が指定された試験電流を出力するように、インバータ300の周波数と出力電圧を決定し、所定の定められた周波数および電圧を出力するようにインバータ300を制御する。例えば、インバータ300の力行動作の試験時には、制御部601は、インバータ300の出力する交流電圧の基本波の位相を試験装置450の出力する交流電圧の基本波の位相よりも進めて、且つ、インバータ300の出力する基本波電圧を試験装置450の出力する基本波電圧より大きくすることにより、インバータ300の出力するインバータ300から見た試験リアクトル500側の力率が実際の負荷である電動機の力率に近い値となるように、インバータ300に力行運転を模擬する電流を流す。すなわち電流指令値Ii、周波数指令値Fi、および電圧指令値Viはこのような試験条件を満足するような値である。尚、ここで電流指令値Ii、周波数指令値Fi、および電圧指令値Viは例えば実効値ベースの値であり、相電流IR、IS、ITおよび電圧指令値VC1と電圧指令値VC2は例えば瞬時値ベースの値である。
尚、本実施形態では、制御装置600の制御部601は、インバータ300および試験装置450を制御するものとしたが、インバータ300を制御する制御部と、試験装置450を制御する制御部とが、それぞれ別個に設けられ、互いに連携するように制御を行ってもよい。
電流検出器660は、第4R3相導電部材580A、第4S3相導電部材580B、第4T3相導電部材580Cに流れる相電流IR、IS、ITをそれぞれ検出し、監視装置650に出力する。電圧検出器670は、R3-S3相間電圧VR3S3、S3-T3相間電圧VS3T3、T3-R3相間電圧VT3R3をそれぞれ検出し、監視装置650に出力する。
監視装置650は、インバータ300の機能試験を行う。インバータ300の機能試験においては、例えば、監視装置650は、電流検出器660からインバータ300の出力電流と出力電圧の値を取得し、規定される試験条件に適合しているか否かを判定することにより、インバータ300の動作が正常か否かの機能試験を行う。
図3は、実施形態の試験システム4000において電力変換装置100と試験設備400の直流回路の接続構成を説明するための図である。上述したように、第1正極導電部材250Pは、整流器正極端子220Pと電力変換装置正極端子302Pとを接続する。第1中性導電部材250Cは、整流器中性端子220Cと電力変換装置中性端子302Cとを接続する。第1負極導電部材250Nは、整流器負極端子220Nと電力変換装置負極端子302Nとを接続する。
第1正極導電部材250Pは、例えば、第1正極導電部材整流器接続端子251P、第1正極導電部材電力変換装置接続端子252P、第1正極導電部材試験装置接続端子255P、および第1正極導電部材キャパシタ接続端子257Pを備える。第1中性導電部材250Cは、例えば、第1中性導電部材整流器接続端子251C、第1中性導電部材電力変換装置接続端子252C、第1中性導電部材試験装置接続端子255C、および第1中性導電部材キャパシタ接続端子257Cを備える。第1負極導電部材250Nは、例えば、第1負極導電部材整流器接続端子251N、第1負極導電部材電力変換装置接続端子252N、第1負極導電部材試験装置接続端子255N、および第1負極導電部材キャパシタ接続端子257Nを備える。
第2正極導電部材480Pは、第1正極導電部材試験装置接続端子255Pに着脱可能に接続される。第2中性導電部材480Cは第1中性導電部材試験装置接続端子255Cに着脱可能に接続される。第2負極導電部材480Nは、第1負極導電部材試験装置接続端子255Nに着脱可能に接続される。
第1正極導電部材250Pにおいては、第1正極導電部材試験装置接続端子255Pは、第1正極導電部材キャパシタ接続端子257Pに対して、第1正極導電部材整流器接続端子251P側に設けられる。第1中性導電部材250Cにおいては、第1中性導電部材試験装置接続端子255Cは、第1中性導電部材キャパシタ接続端子257Cに対して、第1中性導電部材整流器接続端子251C側に設けられる。第1負極導電部材250Nにおいては、第1負極導電部材試験装置接続端子255Nは、第1負極導電部材キャパシタ接続端子257Nに対して、第1負極導電部材整流器接続端子251N側に設けられる。
以上、本実施形態の試験システム4000における試験設備400と電力変換装置100の関係について説明した。ここで、比較例の試験システム9000について説明する。図示されない試験システム9000は交流電源10、電力変換装置109と電力変換装置109を試験するための試験設備900を備える。図示しない試験設備900は、図1に示した試験設備400と同様の構成を備えるが、試験設備400と比べて、試験設備900は、第1リアクトル550A、第2リアクトル550Bを備えておらず、第2正極導電部材480Pの第2端部は第3正極導電部材481Pの第1端部に接続され、第2負極導電部材480Nの第2端部は第3負極導電部材481Nの第1端部に接続され、ている。電力変換装置109は、電力変換装置100の第1正極導電部材250P、第1中性導電部材250C、および第1負極導電部材250Nの代わりに、第1正極導電部材950P、第1中性導電部材950C、および第1負極導電部材950Nを備える。以下、電力変換装置100の第1正極導電部材250P、第1中性導電部材250C、および第1負極導電部材250Nと、電力変換装置109の第1正極導電部材950P、第1中性導電部材950C、および第1負極導電部材950Nを比較しながら説明する。
図4は、比較例の試験システム9000の電力変換装置109と試験設備900との接続における第1正極導電部材950P、第1中性導電部材950C、および第1負極導電部材950Nを示す図である。上述したように、第1正極導電部材950Pは、整流器正極端子220Pと電力変換装置正極端子302Pとを接続する。第1中性導電部材950Cは、整流器中性端子220Cと電力変換装置中性端子302Cとを接続する。第1負極導電部材950Nは、整流器負極端子220Nと電力変換装置負極端子302Nとを接続する。
第1正極導電部材950Pは、第1正極導電部材整流器接続端子951P、第1正極導電部材電力変換装置接続端子952P、第1正極導電部材試験装置接続端子955P、および第1正極導電部材キャパシタ接続端子957Pを備える。第1中性導電部材950Cは、第1中性導電部材整流器接続端子951C、第1中性導電部材電力変換装置接続端子952C、第1中性導電部材試験装置接続端子955C、および第1中性導電部材キャパシタ接続端子957Cを備える。第1負極導電部材950Nは、第1負極導電部材整流器接続端子951N、第1負極導電部材電力変換装置接続端子952N、第1負極導電部材試験装置接続端子955N、および第1負極導電部材キャパシタ接続端子957Nを備える。
第1正極導電部材950Pにおいては、第1正極導電部材試験装置接続端子955Pは、第1正極導電部材キャパシタ接続端子957Pに対して、第1正極導電部材電力変換装置接続端子952P側に設けられる。第1中性導電部材950Cにおいては、第1中性導電部材試験装置接続端子955Cは、第1中性導電部材キャパシタ接続端子957Cに対して、第1中性導電部材電力変換装置接続端子952C側に設けられる。第1負極導電部材950Nにおいては、第1負極導電部材試験装置接続端子955Nは、第1負極導電部材キャパシタ接続端子957Nに対して、第1負極導電部材電力変換装置接続端子952N側に設けられる。
「着脱可能に接続される」とは、例えば、ボルトとネジ穴などによる螺合部材、係合手段などによる接続等によって電気的な接続を行うことである。
図3に示されるように、実施形態の試験システム4000の電力変換装置100では、第1正極導電部材250Pにおいては、第2正極導電部材480Pが、キャパシタ700A、700Bよりも、整流器200側において接続されている。第1中性導電部材250Cにおいては、第2中性導電部材480Cが、キャパシタ700A、700Bよりも、整流器200側において接続されている。第1負極導電部材250Nにおいては、第2負極導電部材480Nが、キャパシタ700A、700Bよりも、整流器200側において接続されている。
図4に示されるように、比較例の試験システム9000の電力変換装置109では、第1正極導電部材950Pにおいては、第2正極導電部材480Pが、キャパシタ700A、700Bよりも、インバータ300側において接続されている。第1中性導電部材950Cにおいては、第2中性導電部材480Cが、キャパシタ700A、700Bよりも、インバータ300側において接続されている。第1負極導電部材950Nにおいては、第2負極導電部材480Nが、キャパシタ700A、700Bよりも、インバータ300側において接続されている。
次に、実施形態におけるインバータ300の性能試験について説明する。インバータ300の性能試験は、制御装置600が、試験対象であるインバータ300に負荷を駆動するための電力変換動作である力行運転をさせ、試験装置450に負荷の運転を模擬した電力変換動作である回生運転をさせることにより行われる。このインバータ300の性能試験はおいては、力行運転をするインバータ300と、回生運転をする試験装置450との間で、電流が循環する。したがって、外部の交流電源10、変圧器20、整流器200を介して供給される電力は、インバータ300と試験装置450とにおける損失を補う電力を補充することに利用される。したがって、交流電源10、変圧器20の容量は、実際に電動機を負荷として使う性能試験に比べて小さくて済む。
次に、電力変換装置100および電力変換装置109で発生する直流電圧のリプルについて説明する。整流器200は3相ダイオードブリッジ型を2台直列接続した構成であるので整流器正極端子220Pと整流器中性端子220Cの間には交流電源10の6倍の周波数を中心としたリプル電圧が発生する。また、整流器中性端子220Cと整流器負極端子220Nとの間にも交流電源10の6倍の周波数を中心としたリプル電流も発生する。しかしながら、試験システム4000あるいは試験システム9000の様な構成の場合は整流器200の入力電流が小さく抑えられているので、整流器200によるリプル電流が問題になる可能性は低い。一方、インバータ300は、3相のPWM型のインバータである。PWMのキャリア周波はインバータ300の基本波交流電圧出力に比較し高周波である。そしでインバータ300の直流回路にはキャリア周波数の3倍の周波数を中心とした高周波リプル電流が発生する。この高周波リプル電流はインバータ300の出力電流の増大とともに増加する。
また、試験設備400および試験設備900内の試験装置450もPWM型の変換装置であり、直流回路にはそのキャリア周波数の3倍の周波数の高周波リプル電流が発生する。この高周波リプル電流は試験装置450の回生電流の増大とともに増加する。試験装置450の発生するリプル電流はキャパシタ460Aおよび460Bに流入するが、その一部は第2正極導電部材480P、第2中性導電部材480Cおよび第2負極導電部材480Nを介して電力変換装置100および電力変換装置109の直流回路に流入する。
この結果、試験対象である電力変換装置109に供給される直流回路のリプルが過剰に大きくなることがある。このため、試験対象である電力変換装置109が実使用で必要とされる性能を満たしていても、規定される試験条件を満たす性能を持っていたとしても、工場での試験時に規定される性能を満たしていないと誤判定されてしまう可能性がある。
試験設備900は、試験設備400の第1リアクトル550A、第2リアクトル550Bなどの構成を備えていないので、電力変換装置109においては、工場試験時における過剰な高周波リプル電流に対応するため、キャパシタ700A、700Bの容量を大きくしたり、第1正極導電部材950P、第1負極導電部材950N、および第1中性導電部材950Cの断面積あるいは表面積を大きなものにするなどの対策が行われることがある。このような対策を行うことによって、電力変換装置109において、インバータ300が規定される試験条件を満たす性能を持っていないと誤判定されてしまう事を防ぐことがある。しかしながら、このような対策を行うと、電力変換装置109が過剰なものとなってしまいコストが増加する。
本実施形態の試験システム4000の試験設備400は、第1リアクトル550Aと第2リアクトル550Bを備えている。よって、第1リアクトル550Aと第2リアクトル550Bはいわゆるブロッキングリアクトルとして作用し、試験設備400から電力変換装置100の直流回路に流入する高周波リプル電流を低減することができる。また、上述のように、第1正極導電部材250P、第1中性導電部材250C、第1負極導電部材250Nにおいては、第2正極導電部材480P、第2中性導電部材480C、および第2負極導電部材480Nが、キャパシタ700A、700Bよりも、整流器200側において接続されている。よって、インバータ300からキャパシタ700Aおよび700Bに流れ込む高周波リプル電流と試験設備400からキャパシタ700Aおよび700Bに流れ込む高周波リプル電流が共通の部分を流れることがなくなるので、試験時の導電部材の電流値が実運転時に対して過剰に厳しくなることを防ぐことができ、また試験時のインバータ300の電力変換装置正極端子302P、電力変換装置中性端子302C、電力変換装置負極端子302Nのリプル電圧が実運転時に対して過剰に厳しくなることを防ぐことができる。
この結果、比較例の試験システム9000に於いて電力変換装置109などにおいて行われることがあった、キャパシタ700A、700Bの、容量値を過剰に大きくしたり、第1正極導電部材250P、第1負極導電部材250N、および第1中性導電部材250Cを許容電流が大きなものにするなどの対策を行わなくとも、実施形態の試験設備400においては、過剰な高周波リプル電流によって、試験対象である電力変換装置100の試験が悪影響を受けるということを抑制することができる。
なお、ここで第1リアクトル550Aと第2リアクトル550Bのインダクタンスについては、実運転において電力変換装置100のキャパシタ700Aおよび700Bに流入するリプル電流をシミュレーションその他の方法で求めておき、試験時におけるキャパシタ700Aおよび700Bに流入するリプル電流が実負荷時における値に対し、所定のマージン以上の値になるようにすればよい。尚、上記試験回路では、整流器200に定格電流を通電してない。整流器200に定格電流を通電する試験を行なう場合は、次のようにする事ができる。交流電源10に替えて、低電圧の可変交流電源を整流器200の入力端子に接続する。インバータ300と試験装置450はゲートブロック状態とする。あるいは整流器200との直流回路の接続を切り離す。さらに整流器正極端子220Pと整流器負極端子220Nとの間に直流リアクトルを接続し、可変交流電源の電圧を調整して所定(例えば定格)の電流を整流器200に通電する。尚、直流リアクトルは第1リアクトル550Aあるいは第2リアクトル550Bのどちらか片方または両方を使用しても良い。あるいは直流回路のリプル電流が問題ない場合は省略してもよい。
以下、実施形態の試験システムの変形例1と変形例2を説明する。
<変形例1>
図5は、変形例1の試験システム4000Aの構成図である。試験システム4000Aは、実施形態の試験システム4000と同様に構成されるが、試験設備400に替えて、試験設備400Aとなり、電力変換装置100に替えて電力変換装置100Aとなっている。試験設備400Aは、試験設備400と同様に構成されるが試験設備400の第1リアクトル550Aと第2リアクトル550Bの代わりに、第1リアクトル550AAと第2リアクトル550ABを備えている。試験設備400Aは、電力変換装置100Aの試験に用いられる。電力変換装置100Aは、電力変換装置100と同様に構成されるが、電力変換装置100Aは、電力変換装置100の構成に加えて、第3リアクトル560AAと、第4リアクトル560ABとを備えている。第3リアクトル560AAの第1端子は整流器の整流器正極端子220Pに導電部材で接続され、第3リアクトル560AAの第2端子はキャパシタ700Aの正極端子と導電部材で接続される。第4リアクトル560ABの第1端子は整流器の整流器負極端子220Nに導電部材で接続され、第4リアクトル560ABの第2端子はキャパシタ700Bの負極端子と導電部材で接続される。
第2正極導電部材480Pは第3リアクトル560AAの第1端子と整流器正極端子220Pとを接続する導電部材と接続される。第2負極導電部材480Nは第4リアクトル560ABの第1端子と整流器負極端子220Nとを接続する導電部材と接続される。
電力変換装置100Aに、第3リアクトル560AAと第4リアクトル560ABとが備えられているので、試験設備400Aの第1リアクトル550AAと第2リアクトル550ABのインダクタンスは、第3リアクトル560AAと第4リアクトル560ABとを備えていない電力変換装置100の試験に用いられる試験設備400の第1リアクトル550AAと第2リアクトル550ABのインダクタンスよりも、小さくてよい。変形例1によれば、電力変換装置100Aの第3リアクトル560AAと第4リアクトル560ABを活用することにより、試験設備400Aの第1リアクトル550AAと第2リアクトル550ABのインダクタンスが、小さくて済むという効果を奏する。
<変形例2>
図6は、変形例2の試験システム4000Bの構成図である。試験システム4000Bは、実施形態の変形例1の試験システム4000Aと同様に構成されるが、試験設備400Aに替えて、試験設備400Bを備え、電力変換装置100Aに替えて電力変換装置100Bを備えている。試験設備400Bは、実施形態の試験設備400Aと同様に構成されるが、試験設備400Bは、第1リアクトル550AAと第2リアクトル550ABを備えていない。試験設備400Bは、第1リアクトル550AA、第2リアクトル550BBを備えておらず、第2正極導電部材480Pの第2端部は第3正極導電部材481Pの第1端部に接続され、第2負極導電部材480Nの第2端部は第3負極導電部材481Nの第1端部に接続されている。試験設備400Bは、電力変換装置100Bの試験に用いられる。電力変換装置100Bは、電力変換装置100Aと同様に構成されるが、電力変換装置100Bは、電力変換装置100Aの第3リアクトル560AAに替えて、第3リアクトル560BAを備え、第4リアクトル560ABに替えて第4リアクトル560BBとを備えている。
ここで電力変換装置100Bの第3リアクトル560BAと第4リアクトル560BBのインダクタンスは、電力変換装置100Aの第3リアクトル560AAと第4リアクトル560ABのインダクタンスよりも大きく、試験装置450の発生する高周波リプルを抑制するのに十分なインダクタンスである。したがって、試験設備400Bは、第1リアクトル550AAと第2リアクトル550ABを備えていなくてもよい。変形例2によれば、電力変換装置100Bの第3リアクトル560BAと第4リアクトル560BBを活用することにより、試験設備400Bにおいて第1リアクトル550AAと第2リアクトル550ABを省略することができるという効果を奏する。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、実施形態の電力変換装置の試験システムは試験設備に起因する高周波リプル電流により試験対象の電力変換装置に過剰なストレスを加えることなく、電力変換装置が必要な交流出力電流および電圧を出力しつつ、試験設備の電源容量を抑制することができる試験システムを提供することができる。
なお、実施形態では整流器200はダイオード型の整流器として説明したが、サイリスタ式整流器や自励式コンバータでもよい。尚、整流器200は順変換器の一例であり、インバータ300は逆変換器の一例である。第1リアクトル550A、第1リアクトル550AA、第2リアクトル550B、第2リアクトル550ABは、リプル抑制用のリアクトルの一例である。試験リアクトル500は交流リアクトルの一例である。
制御装置600の構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。